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ゲド戦記 3 さいはての島へ (ソフトカバー版)
中級者ゲド戦記シリーズ第3巻世界的な文学賞を複数受賞したル=グウィンの代表作

【要約・書評】『ゲド戦記 3 さいはての島へ (ソフトカバー版)』の評判・おすすめポイント

アーシュラ・K・ル=グウィン|岩波書店|2006-04-07|352ページ

5.0
(4件)

この本を一言で言うと

大賢人となったゲドが若き王子レバンヌンと共に世界から魔法が消えゆく謎を追い「さいはての島」へ旅立つ——死と均衡を問う最も哲学的なゲド戦記

この本の概要

『さいはての島へ』はゲド戦記シリーズ第3巻。大賢人(大魔法使い)となったゲドと、将来世界を統べる王になる少年レバンヌンが、世界から魔法が失われていく謎を追って船で旅をする。 本作のテーマは死と生の均衡だ。世界から魔法が消えているのは、誰かが「死の国」の扉を開け放ったままにしているからだ。それを閉じるためにはゲドが全魔力を使うことになるという。犠牲と使命というテーマが物語の核に据えられている。 シリーズで最も哲学的な本作は、「均衡(バランス)」というゲド戦記全体のテーマが最も明確に描かれる。生があれば死がある、光があれば影がある——この均衡を維持することが世界の存続に繋がるというル=グウィンの世界観が、ゲドの旅を通じて示される。 第1巻で少年だったゲドが本作では初老に近い大人として登場し、知恵と限界を持つ人間として描かれる。若き王子レバンヌンの視点を通じて、ゲドの人間としての苦しみと偉大さが見える。若者の視点から老いた英雄を見るという構造が、本作に独特の感動を生む。

「死を恐れる必要はない」ということを、ファンタジーで初めて信じられた

ゲド戦記を順番に読んできて、第3巻は覚悟が必要だと聞いていた。「重い」「死の話」「涙が止まらない」という感想を事前に知っていた。 読み始めてみると確かに重いのだが、それが「暗い」重さではなくて「深い」重さだということが分かってきた。 世界から魔法が消えていく。魔法使いが力を失い、詠唱が空に消えて何も起こらない。この描写が怖かった。魔法を使う力を失ったときの虚無感と恐怖が、登場人物の言動から伝わってくる。でもそれが単なる「力の喪失」ではなく、「生きる意味の消失」として描かれているのが深い。 ゲドが老いていることが本作では重要な意味を持つ。第1巻の少年が第3巻では白髪混じりの老人になっている。若い王子レバンヌンから見て、ゲドが「ただの人間」として見える瞬間がある。強大な魔法使いも、疲れ、迷い、恐れる。その人間としての弱さがゲドをより大きな存在に見せる。 「死の国」の描写が特に印象的だった。影もなく、光もなく、喜びも悲しみもない灰色の世界。生者が踏み込んではならない場所に踏み込むゲドとレバンヌンの旅が、どこかダンテの神曲のような雰囲気を持つ。 ゲドが最後に魔力を使い果たすシーン。あれは「犠牲」というよりも「与えきる」という感覚で描かれている。全てを出し切ったあとの静けさ。それが死後の世界への恐れを消す何かを持っていた。 38歳になって、死について考えることが増えてきた。そのタイミングでゲド戦記3を読んだことは幸運だったと思う。海外ファンタジーの中で「死生観」について最も深く考えさせてくれた一冊だ。

38歳 教師、死生観について考えることが増えてきた年齢

この本で学べること

生と死の均衡というゲド戦記の核心テーマ

シリーズ全体のテーマ「均衡(バランス)」が最も明確に描かれる集大成。生があれば死があるという世界の真理をゲドの旅が体現する。

老いたゲドと若い王子という対比

少年から老人になったゲドが若者の視点から見られる。英雄の人間としての弱さと偉大さを同時に描く構造が本作の感動を生む。

死の国という衝撃的な描写

影も光も喜びも悲しみもない灰色の死の国の描写が深く印象に残る。ファンタジーとして最も哲学的な「死後」の想像力を示す。

「与えきる」という究極の犠牲

ゲドが全てを使い果たすクライマックスは悲劇ではなく静かな完結として描かれる。力の消失を恐れない姿勢がメッセージとなる。

本の目次

  1. 1失われる魔法
  2. 2レバンヌンとの出航
  3. 3世界の果ての島々
  4. 4死の国の扉
  5. 5灰色の国を歩く
  6. 6均衡の回復

良い点・気になる点

良い点

  • 死生観と均衡というテーマの深さが際立つ
  • 老いたゲドと若い王子という対比構造が美しい
  • 死の国の描写が哲学的で印象に残る
  • シリーズの集大成として完成度が高い

気になる点

  • 前2巻を読んでいることが前提
  • テーマが重いため軽いファンタジーを求める人には向かない

みんなの評判・口コミ

のり

ソリューション営業

5.0

ゲド戦記シリーズで一番好きな巻かもしれません。死について最も深く考えさせられた小説でした。ゲドが全てを使い果たすシーンは「悲しい」のではなく「完全」という感覚で、読み終えて清々しかった。

n
nao

バックエンドエンジニア

5.0

構造的に見ると老人と若者の視点の組み合わせが完璧。ゲドの弱さが若者の目を通して見えることで、彼の偉大さがより際立つ。この設計がなければこんなに感動しなかったと思います。

R
R

エンジニア

4.5

「均衡」というテーマがここで完成する感じがありました。1巻2巻で積み上げてきたものが全部ここに繋がる。死の国の描写は文章なのに映像より鮮明に浮かびました。

m
mai

データアナリスト

4.5

データ的に見ると、世界から魔法が消えていくという設定が実にうまい。具体的な現象から始まって抽象的な哲学に至る構成が一貫している。ル=グウィンの知性が全開の一冊。

こんな人におすすめ

ゲド戦記シリーズを読んでいる人

シリーズの核心テーマが最も深く描かれる集大成として読まずにはいられない

死生観について深く考えたい人

ファンタジーを通じて死と均衡という哲学的テーマに向き合いたい人に

成熟したファンタジー読者

軽快な冒険ではなく哲学的な深みを持つファンタジーを求める大人の読者に

関連書籍との比較

タイトル著者レベル評価価格
影との戦い ゲド戦記アーシュラ・K.ル=グウィン中級者★★★★★ 4.5¥902
不思議の国のアリスルイス・キャロル初心者★★★★★ 4.5¥605
モモミヒャエル・エンデ初心者★★★★★ 4.5¥880
はてしない物語ミヒャエル・エンデ中級者★★★★★ 4.5¥3,146

よくある質問

Q. 第1巻・第2巻を読んでいないと楽しめませんか?
A. 前2巻を読んでいることを強くすすめます。ゲドというキャラクターの成長が本作の感動の核にあり、前巻を知っていることで大きく響きます。
Q. 宮崎吾朗監督の映画「ゲド戦記」はこの巻が原作ですか?
A. 映画は本作(第3巻)をベースにしていますが、内容は大きく改変されています。映画を見た方も原作を読むと全く異なる体験ができます。
Q. 「死の国」の描写は怖いですか?
A. 「怖い」というよりは「静謐で悲しい」という感覚の描写です。ホラー的な怖さはなく、哲学的な「死後の無」として描かれています。
Q. シリーズはこの後も続きますか?
A. 第3巻以降もル=グウィンが後年書いた続編「テハヌー」「アースシーの風」などがあります。しかし第1〜3巻が最初の三部作として完結しています。
Q. 何歳から読めますか?
A. テーマが重いため中学生以上を目安にするとよいでしょう。死生観という哲学的テーマは大人の読者に特に深く響きます。