隈研吾の建築を学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】

監修

佐藤メバル

佐藤メバル

@shelfy_mebaru

編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ

橘ナナミ

@medias_nanami

編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。

最終更新: 2026年10月

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、今日のテーマは「隈研吾 建築 本」ですね。国立競技場のイメージが強くて、建築の本というと図面だらけで難しそう……と思ってしまうんですけど。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。隈さんの本は大きく4つに分かれる。自分で書いた思想の本、聞き書きや対談の本、図鑑・作品集、そして大学での講義をまとめた講義録だ。全部が専門家向けではないよ。岩波新書の『自然な建築』『小さな建築』は新書サイズで文章もやわらかい。

橘ナナミ

橘ナナミ

新書で読めるんですね! じゃあ最初から『負ける建築』に挑むのは……?

佐藤メバル

佐藤メバル

少し待ったほうがいい。『負ける建築』は岩波現代文庫の論集で、20世紀の建築史や現代思想、アートへの幅広い関心が詰まっている。最初の1冊にすると密度が濃いんだ。まず『建築家になりたい君へ』で来歴と人柄をつかんでから思想へ、という順番が歩きやすい。

橘ナナミ

橘ナナミ

人物から入って、思想へ。読書でも「推し」を作るのが大事なんですね。

隈研吾の建築を学べる本の選び方

目的別に選ぶ — 思想か、作品か、進路か、教養か

佐藤メバル

佐藤メバル

目的が違えば最適な1冊も変わる。思想を追うなら『負ける建築』『自然な建築』、作品そのものを見たいなら『隈研吾 場所の建築』や『隈研吾 異端の建築』、建築家を目指すなら『建築家になりたい君へ』、教養として眺めるなら『隈研吾建築図鑑』だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

『隈研吾建築図鑑』はイラスト中心なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

宮沢洋さんが書いた本で、国内で見ておくべき建築50件を「びっくり系」「しっとり系」「ふんわり系」「ひっそり系」というキーワードで分類している。巻頭と巻末には隈さん本人のロングインタビューも収録されていて、旅先のガイドブックとしても使える。教養の入口として優秀だよ。

レベル別に選ぶ — 入門・中級・専門

橘ナナミ

橘ナナミ

難易度の目安も知りたいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

入門は『建築家になりたい君へ』と新書の2冊。中級は『隈研吾 物質と建築』や『隈研吾 住宅らしさ』のような、素材や住宅をテーマにした本だね。専門は『隈研吾/マテリアル・ストラクチュアのディテール』『隈研吾/極小・小・中・大のディテール』で、ディテールが中心になる。大津若果さんの『隈研吾という身体』は著作と建物を横断して読み解く、研究寄りの1冊だ。

形式別に選ぶ — 新書・文庫/図鑑・作品集/対談・講義録

橘ナナミ

橘ナナミ

形式でも性格が変わるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

変わる。新書・文庫は持ち歩けて文章が主体。図鑑・作品集は写真や図版が主体で、大型のぶん価格も上がるけれど手元に置く価値がある。対談や講義録は本人の言葉が生で出てくるぶん、思想の温度が伝わりやすい。『くまの根』は東大の最終講義を書籍化したもので、22人との対話が並ぶ。『隈研吾:レクチャー/ダイアローグ』も藤本壮介さんらとの対談が収録されているよ。

時代と入手性で選ぶ — 古典と最新刊

橘ナナミ

橘ナナミ

最近の本だと何があるんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

『隈研吾 場所の建築』は2011年から2024年までの主要40プロジェクトをまとめた作品集で、「集まる」「体験する」といった6つのテーマで構成されている。一方で『隈研吾 はじまりの物語』は高知県・梼原町との出合いをたどる、原点を知るための1冊だ。思想の変遷を追いたいなら、古い本と新しい本を往復するのが面白いよ。

隈研吾の建築を学べる本をひと目で比較

橘ナナミ

橘ナナミ

えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず

#画像名称おすすめ対象価格一言
1
負ける建築 (岩波現代文庫 社会 316)
負ける建築 (岩波現代文庫 社会 316)建築の思想から隈研吾に入りたい人、新国立競技場の設計背景に関心がある読者、作品集で形を見た後に言葉で裏づけを取りたい人。美術や現代思想が好きな読者にも刺さります。通勤の往復など、まとまった時間で読み進めたい場面に向く一冊。¥1,331隈哲学の出発点
2
自然な建築 (岩波新書 新赤版 1160)
自然な建築 (岩波新書 新赤版 1160)隈研吾の思想をまず日本語で追いたい人、通勤や移動中の読書で建築論に触れたい人、『負ける建築』とあわせて思想の両輪を押さえたい読者。写真集より言葉から入りたい初学者にも。新書サイズで荷物になりません。¥968思想への入口
3
小さな建築 (岩波新書)
小さな建築 (岩波新書)大規模開発や巨大施設に違和感を覚える人、災害や環境をきっかけに住まいを見直したい人、自治体や地域づくりに関わる読者。小さな単位から考える発想を仕事に持ち帰りたい場面に向きます。¥858災害後の視点
4
隈研吾建築図鑑
隈研吾建築図鑑実際に建物を見に出かけたい人、旅先で隈建築を巡りたい読者、建築の専門知識なしで写真と図解から入りたい人。旅行計画を立てながら、あるいは訪問後の振り返りに。一家に一冊置いても使えます。¥2,640旅の街歩きガイド
5
建築家になりたい君へ (14歳の世渡り術)
建築家になりたい君へ (14歳の世渡り術)進路に迷う中高生や大学生、建築やデザインを志す人の最初の一冊、子どもに手渡したい親や先生、建築家という仕事の実際を知りたい社会人。夢中で一気に読めるはずです。¥1,69410代への手紙

隈研吾の建築を学べる本のおすすめ人気ランキング

橘ナナミ

橘ナナミ

一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!

佐藤メバル

佐藤メバル

よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

負ける建築 (岩波現代文庫 社会 316)
1

負ける建築 (岩波現代文庫 社会 316)

隈研吾 著|岩波書店

¥1,331(税込)

4.8

周囲の環境を圧倒して屹立する超高層ビルを「勝つ建築」と呼び、20世紀型のそれがいま弱さを露呈していると説く論集。外力を受け入れる「負ける建築」への転換を、建築史・現代思想・アートを横断しながら論じます。新国立競技場の設計に携わった著者自身の思考の核が詰まり、写真集ではなく言葉で建築を考える一冊。一篇ごとに独立した論考なので、気になる章から拾い読みできる気楽さもあります。

こんな人におすすめ

建築の思想から隈研吾に入りたい人、新国立競技場の設計背景に関心がある読者、作品集で形を見た後に言葉で裏づけを取りたい人。美術や現代思想が好きな読者にも刺さります。通勤の往復など、まとまった時間で読み進めたい場面に向く一冊。

良い点

  • 文庫で入手しやすい
  • 隈の思想の核がわかる
  • 建築史と現代思想を横断

気になる点

  • 図版や写真は少なめ
  • 抽象的で難所がある
  • 作品解説集ではない

出版社

岩波書店

発売日

2019年11月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「負ける建築」って、タイトルからして不思議です。建築なのに負けるって、どういうことなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。隈さんは、周囲を圧倒して自立する超高層ビルを「勝つ建築」と呼びました。でもそれは20世紀の経済や技術という前提があってこそのもので、いまはその弱さが露呈している。

だから地形や風土、使い手といった外力を素直に受け入れる「負ける建築」を探るべきだ、というのが本書の主張です。

新国立競技場の設計に携わった著者自身の、建築史や現代思想、アートへの広い関心が背景にあります。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。では作品写真を眺める本ではなく、読み物としての建築本なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そのとおり。岩波現代文庫の論集で、図版は主役ではありません。書店員時代、写真集から隈さんに入ったお客さんに、あえてこれを勧めたことがあります。

形を目で追ったあとに言葉を読むと、同じ建築がまるで違って見えてくる。一篇ずつ独立しているので、気になる章から拾い読みしても大丈夫ですよ。

自然な建築 (岩波新書 新赤版 1160)
2

自然な建築 (岩波新書 新赤版 1160)

隈研吾 著|岩波書店

¥968(税込)

4.7

書名どおり「自然な建築」をテーマに据えた岩波新書。同じ岩波書店から出ている『負ける建築』と並べると、隈さんが20世紀型の建築をどう捉え直そうとしたのかが立体的に見えてきます。240ページと新書らしくコンパクトで、分厚い作品集を開く前の肩慣らしにもなる。新書の気軽さで思想の入口に立てるのが、この一冊の強みです。

こんな人におすすめ

隈研吾の思想をまず日本語で追いたい人、通勤や移動中の読書で建築論に触れたい人、『負ける建築』とあわせて思想の両輪を押さえたい読者。写真集より言葉から入りたい初学者にも。新書サイズで荷物になりません。

良い点

  • 新書で持ち歩きやすい
  • 思想の入口になる
  • コンパクトで読み切れる

気になる点

  • 作品写真は期待できない
  • 図版中心の本ではない
  • 上級者には物足りない

出版社

岩波書店

発売日

2008年11月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

さっきの『負ける建築』と並べると、こちらはタイトルからして穏やかな印象です。どう違うんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

同じ岩波書店から出ている新書で、書名どおり「自然」を軸に建築を考え直す一冊です。『負ける建築』が論集として論点を多方向に広げているのに対し、こちらは新書というサイズで入口に立ちやすい。

書店でも「まず何から読めばいいですか」と聞かれたときに、最初に差し出しやすい本でした。

橘ナナミ

橘ナナミ

新書だと、電車の中でも読み進められそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが大きい。240ページで、通勤の往復に少しずつ読める分量です。建築の写真集は重くて値も張るので、まず言葉で隈さんに慣れてから図版の世界へ進む。

この順番だと挫折しにくい。専門用語も新書の密度なら追いやすいですよ。

小さな建築 (岩波新書)
3

小さな建築 (岩波新書)

隈研吾 著|岩波書店

¥858(税込)

4.6

強く合理的で大きなシステムは大災害の前にもろくも崩れ去る——そこから著者は、小さく自立した能動的な存在としての「小さな建築」を構想します。小さな単位を「積む」、大地に「もたれかかる」、ゆるやかに「織る」、空間を「ふくらます」。4つの動詞から建築の根源を問い直す構成が独特で、東日本大震災後の空気を知る読者ほど刺さる一冊です。

こんな人におすすめ

大規模開発や巨大施設に違和感を覚える人、災害や環境をきっかけに住まいを見直したい人、自治体や地域づくりに関わる読者。小さな単位から考える発想を仕事に持ち帰りたい場面に向きます。

良い点

  • 4つの動詞で整理
  • 震災後の視点が濃い
  • 新書で読みやすい

気になる点

  • 具体的な図面は少ない
  • 実務書ではない
  • 抽象度が高い

出版社

岩波書店

発売日

2013年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

東日本大震災のあとの本なんですよね。大きなシステムが崩れる、という一文が重いです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。強くて合理的で大きなものは、災害の前にもろくも崩れ去る。隈さんはそこで、人が大きなものに依存する受動的な存在ではなく、小さく自立した能動的な存在になることを考えた。

小さな単位を「積む」、大地に「もたれかかる」、ゆるやかに「織る」、空間を「ふくらます」。この4つの動詞で建築を組み直していくのが本書です。

橘ナナミ

橘ナナミ

「もたれかかる」って、建築の言葉としては意外です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが面白いところでね。自立して突っ張るのではなく、地面や既存のものに寄りかかる。書店員時代、建築コーナーでこの本を手に取るお客さんは、たいてい住宅や地域の話をしたがる方でした。

図面は多くないけれど、ものの見方が変わる。自治体の仕事をしている人にも勧めていた一冊です。

隈研吾建築図鑑
4

隈研吾建築図鑑

宮沢洋 著|日経BP

¥2,640(税込)

4.4

隈建築がどう進化したかをキーワードで分類し、イラスト豊富な図鑑形式で紹介する一冊。国内で見ておくべき50件を「びっくり系」「しっとり系」「ふんわり系」「ひっそり系」に分け、デザイン面・技術面の解説を添えます。巻頭巻末のロングインタビューでは本人が「M2」をトラウマと語る場面も。旅先のガイドとしても使える実用性が、他の作品集との大きな違いです。

こんな人におすすめ

実際に建物を見に出かけたい人、旅先で隈建築を巡りたい読者、建築の専門知識なしで写真と図解から入りたい人。旅行計画を立てながら、あるいは訪問後の振り返りに。一家に一冊置いても使えます。

良い点

  • 図鑑形式で見やすい
  • 国内50件を厳選
  • 旅のガイドにもなる

気になる点

  • 海外作品は対象外
  • 論考は深くない
  • 写真よりイラスト中心

出版社

日経BP

発売日

2021年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

図鑑形式っていいですね。建築の本って難しそうなイメージがあったので。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが狙いでしょうね。隈建築をキーワードで分類して、イラストをたっぷり使いながら紹介している。国立競技場や高輪ゲートウェイ駅、角川武蔵野ミュージアムといった名前が並ぶと、実際に見に行きたくなりますよね。

橘ナナミ

橘ナナミ

「びっくり系」「しっとり系」っていう分類が、ちょっと可愛らしいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこが面白い。サービス精神が表れるびっくり系、物語に引き込むしっとり系、日常を楽しくするふんわり系、外観の主張を消すひっそり系。

本人が「M2」をトラウマと語るロングインタビューも収録されていて、作品集と違って文章と図のバランスがいい。

旅先のガイドとしても使える、実用的な一冊です。

建築家になりたい君へ (14歳の世渡り術)
5

建築家になりたい君へ (14歳の世渡り術)

隈研吾 著|河出書房新社

¥1,694(税込)

4.3

10歳で建築家を志した著者が、自らの歩みをたどりながら10代に語りかける一冊。教会と「ぼろい家」、大阪万博への期待と裏切り、アフリカ旅行、2枚の畳を敷いたアパート、予算ゼロの「石の美術館」。自伝であり進路の本でもあり、建築の知識が物語として入ってきます。作品集とは違い、人間・隈研吾に会えるのが最大の違いです。

こんな人におすすめ

進路に迷う中高生や大学生、建築やデザインを志す人の最初の一冊、子どもに手渡したい親や先生、建築家という仕事の実際を知りたい社会人。夢中で一気に読めるはずです。

良い点

  • 自伝として面白い
  • 10代に語りかける文体
  • 進路のヒントになる

気になる点

  • 作品論は浅め
  • 写真は多くない
  • 大人には物足りない面も

出版社

河出書房新社

発売日

2021年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「14歳の世渡り術」ってシリーズ名がいいですね。10代に向けて書かれたんですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。10歳で建築家を志した隈さんが、自分の来し方をたどりながら書いている。教会と「ぼろい家」、大阪万博に期待して裏切られた話、アフリカへ行くまでの準備、アパートに2枚の畳を敷いた留学時代。

建築の知識が、ぜんぶ物語として入ってきます。

橘ナナミ

橘ナナミ

予算ゼロの「石の美術館」の話も気になります。建築ってお金がないと無理だと思っていました。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の面白さでね。「仕事がないことこそ大切」「建築家は長距離走者」と本人が書いている。書店員時代、進路に悩む高校生に真っ先に渡していたのがこの一冊でした。

作品集ではなく人間・隈研吾に会える本として、最初に読むのに向いています。

NA建築家シリーズ02 隈研吾 (NA建築家シリーズ2)
6

NA建築家シリーズ02 隈研吾 (NA建築家シリーズ2)

日経アーキテクチュア 著|日経BP

¥4,030(税込)

4.1

代表作品とインタビュー、対談、事務所ルポで隈研吾の変遷を綴るシリーズ第2弾。問題作「M2」に至る批評活動や方法論、転機となった「広重」など主要プロジェクトを設計アプローチ別に整理します。対談の名手としての一面も収録され、作品だけでは見えない思考の履歴が残る。単独の作品集より「なぜ変わったのか」を追えるのが違いです。

こんな人におすすめ

隈研吾の仕事を時系列で理解したい建築学生、設計者との対話に関心がある読者、作品集は持っているが背景も知りたい人。事務所の空気まで覗きたい場面に向きます。

良い点

  • 変遷を追える構成
  • 対談やルポも収録
  • 資料性が高い

気になる点

  • 価格帯は高め
  • 図版は絞られる
  • 入門には重い

出版社

日経BP

発売日

2010年6月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

このシリーズ、第2弾が隈さんなんですね。事務所ルポまで入っているのが珍しいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこが価値でね。代表作品を並べるだけではなく、インタビューや対談、事務所のルポまで含めて、隈さんがどう考え方を変えてきたかを追う構成になっている。

問題作「M2」に至る批評活動、転機になった「広重」のあたりが丁寧に扱われています。

橘ナナミ

橘ナナミ

「対談の名手」という言い方も気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

棟梁から哲学者まで、相手を選ばずに話を引き出す人ですからね。その一面を味わえる特別対談も収録されている。

作品集だけでは見えない隈研吾という人の履歴が残る一冊です。ただ厚さも値もそれなりなので、まずは新書で慣れてから手を伸ばすのがおすすめです。

隈研吾作品集 2013-2020―KENGO KUMA 2013-2020
7

隈研吾作品集 2013-2020―KENGO KUMA 2013-2020

隈研吾 著|エーディーエー・エディタ・トーキョー

¥7,315(税込)

4.1

マルセイユ現代美術センター、V&A Dundee、ダリウス・ミヨー音楽院、新国立競技場、高輪ゲートウェイ駅——海外の文化施設から国内の公共建築まで、この時期の仕事を並べた作品集。プロジェクトの一覧性が高く、竣工年月と所在地が並ぶ資料としても使えます。写真中心で読む作品集と違い、同時代の仕事を横断して眺めたい人に向く一冊です。

こんな人におすすめ

隈建築の「いま」をまとめて見たい建築ファン、海外プロジェクトに関心がある設計者、資料として手元に置きたい読者。図版をじっくり眺めたい時間に向きます。

良い点

  • 同時期の仕事を一望
  • 海外作も収録
  • 資料として使える

気になる点

  • 価格が高い
  • 文章は少なめ
  • 持ち歩きには重い

出版社

エーディーエー・エディタ・トーキョー

発売日

2020年8月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

作品集って、何冊も出ているんですね。これは2013年から2020年までですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。マルセイユ現代美術センター、V&A Dundee、ダリウス・ミヨー音楽院といった海外の文化施設から、新国立競技場や高輪ゲートウェイ駅まで。

この時期の隈さんは、海外と国内を同時に走っていたのがわかります。

橘ナナミ

橘ナナミ

竣工年と場所がずらっと並んでいると、資料としても使えそうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそこが強みです。書店の建築コーナーでも、写真を眺めるお客さんと、竣工年を確認したいお客さん、両方に応えられる。

プロジェクトの一覧性は作品集ならではです。ただし重くて値も張るので、図書館で一度見てから決めるという買い方もアリですよ。

隈研吾作品集 2006-2012―KENGO KUMA 2006-2012
8

隈研吾作品集 2006-2012―KENGO KUMA 2006-2012

隈研吾 著|ADAエディタトーキョー

¥7,315(税込)

3.9

2006年から2012年までの54作品、11プロジェクトを収めた作品集。テクノロジーと伝統、身体と自然、抽象と具体——扱う語彙が変幻自在に動く時期で、「弱い建築」の先に何が生まれたのかを見せます。ローカルから世界へ、世界からローカルへという往復がはっきり追える。前後の年代の作品集と並べると隈建築の曲がり角が浮かびます。

こんな人におすすめ

根津美術館や九州芸文館のあたりが気になる読者、2010年代の転機を整理したい建築学生、隈建築を年代順に追いたいコレクター。手元に置いて繰り返しめくりたい場面に向きます。

良い点

  • 54作品を収録
  • 転機が追える
  • 造本が美しい

気になる点

  • 価格が高い
  • 文字情報は少ない
  • 置き場所を取る

出版社

ADAエディタトーキョー

発売日

2012年11月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

54作品ってすごい数ですね。この時期の隈さんって、何か変わったんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

大きく動いた時期です。テクノロジーと伝統、身体と自然、抽象と具体——扱う語彙が変幻自在に動いて、「弱い建築」の先に何が生まれるかを探っていた。

ローカルから世界へ、世界からローカルへと往復する姿がはっきり見えます。

橘ナナミ

橘ナナミ

前の作品集と並べると、違いがわかるんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

並べると面白いですよ。書店員時代、建築書は高いので「どれか一冊」と迷うお客さんが多かった。そのときは、まず自分の好きな建物が載っている巻から入るのを勧めていました。

年代で追う楽しみは、揃えてから気づくものです。

GAアーキテクト (19) 隈研吾―世界の建築家 (GA ARCHITECT Kengo Kuma)
9

GAアーキテクト (19) 隈研吾―世界の建築家 (GA ARCHITECT Kengo Kuma)

隈研吾 著|ADAエディタトーキョー

3.9

世界の建築家を紹介してきたGAシリーズの一冊として編まれた隈研吾特集。作品を図版で追う構成で、ビジュアルから入りたい読者に向きます。同じ隈さんの本でも、論集や図鑑とは切り口が違い、シリーズならではの視点で作品が並ぶ。文章の本と図版の本、両方を手元に置く楽しさを教えてくれる一冊です。

こんな人におすすめ

隈建築をまずビジュアルで見たい人、GAシリーズを継続して集めている読者、図版を資料として手元に置きたい設計者や学生。シリーズの一冊として棚に並べたい場面に向きます。

良い点

  • シリーズで揃えやすい
  • 図版中心で見やすい
  • 世界の建築家の文脈で読める

気になる点

  • テキストは少なめ
  • 内容紹介が乏しい
  • 単体では背景が追いにくい

出版社

ADAエディタトーキョー

発売日

2005年9月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

著者名が隈研吾さんになっていますけど、これはシリーズものなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、世界の建築家を紹介してきたGAシリーズの一冊です。作品を図版で追う構成で、まず写真から隈建築に入りたい人に向いています。

日本の文脈で書かれた論集や図鑑とは切り口が違うのが面白いところです。

橘ナナミ

橘ナナミ

シリーズで揃えると、他の建築家とも比べられるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこのシリーズの良さでね。同じ判型で並ぶから、隈さんが世界の建築家のなかでどう位置づけられているかが見えてくる。

書店の棚でも、シリーズごと買っていく常連さんがいました。テキストは多くないので、論集と図版の本を一冊ずつという持ち方がおすすめです。

隈研吾/マテリアル・ストラクチュアのディテ-ル
10

隈研吾/マテリアル・ストラクチュアのディテ-ル

隈研吾建築都市設計事務所 著|彰国社

¥3,740(税込)

3.9

隈研吾建築都市設計事務所の名義でまとめられた、素材と構造のディテールに焦点を当てた一冊。136ページと薄く、細部の納まりを追うことに絞られているのが特徴です。思想や作品論を語る本とは役割がはっきり違い、設計の実務側から隈建築に近づきたい人に向く。図版を前に、手を動かしながら読むタイプの本です。

こんな人におすすめ

設計実務者や建築学生、納まりや素材の扱いを具体的に学びたい人、隈建築の細部をじっくり見たい読者。図面を読みながら机に向かう時間に向きます。

良い点

  • 細部に絞った構成
  • 実務者向けで実用的
  • 薄くて参照しやすい

気になる点

  • 思想的な解説は少ない
  • 一般読者には専門的
  • 作品全体像は掴みにくい

出版社

彰国社

発売日

2003年8月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

著者が「隈研吾建築都市設計事務所」名義になっているのが気になります。個人ではなく事務所なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、実務の側から出た本です。素材と構造のディテール、つまり細部の納まりに焦点を絞っている。隈さんの思想を語る本や作品写真集とは、役割がはっきり違います。

橘ナナミ

橘ナナミ

細部って、素人にはちょっと敷居が高い気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

一般読者にはたしかに専門的です。でも逆に言えば、設計を学ぶ人にとっては宝の山でね。書店員時代、建築学科の学生がこの手のディテール集を、図面を広げながら見比べていたのを覚えています。

136ページと薄いので、手元に置いて参照する使い方に向いていますよ。

隈研吾/極小・小・中・大のディテ-ル
11

隈研吾/極小・小・中・大のディテ-ル

隈研吾建築都市設計事務所 著|彰国社

¥3,190(税込)

3.7

「極小・小・中・大」というスケールの切り口でディテールを整理した一冊。95ページとさらに薄く、大きさごとに何が変わるかを追える構成が独特です。同じ事務所・同じ出版社から出た素材と構造の一冊と並べると、隈建築の細部を二方向から見られる。実務の資料としても、スケール感を掴みたい学生の副読本としても使えます。

こんな人におすすめ

設計事務所やゼネコンで納まりを扱う実務者、スケール感を学びたい建築学生、模型や図面から細部に入りたい読者。手元に置いて見返す資料として向きます。

良い点

  • スケール別で整理
  • 薄くて引きやすい
  • 実務の参考になる

気になる点

  • 専門的で一般向けでない
  • 文章の解説は少ない
  • 単体では文脈が薄い

出版社

彰国社

発売日

2012年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「極小・小・中・大」って、その切り口が面白いですね。家具から建物まで、という感じでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そういう見方です。同じ隈さんの細部を、大きさの階層で整理している。95ページと薄いので、必要なところを開いて参照しやすい。

素材と構造を扱った一冊と並べると、細部を二方向から見られます。

橘ナナミ

橘ナナミ

建築学生さんとかにとっては、副読本みたいな位置づけですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そうですね。書店でも、専門書の棚と学生向けの棚、両方に置きたくなる本でした。思想を語る本で「なぜ」を掴んで、こうしたディテール集で「どう作るか」を確かめる。

問いと納まりを往復すると、隈建築の解像度がぐっと上がりますよ。

隈研吾 物質と建築
12

隈研吾 物質と建築

隈研吾 著|エクスナレッジ

3.7

水、ガラス、木、竹、石、土、セラミック——素材ごとに章を分け、それぞれの物質と建築の関係をたどる一冊。水/ガラス、那珂川町馬頭広重美術館、銀山温泉 藤屋、根津美術館、ちょっ蔵広場といった具体的な仕事が素材の側から並びます。素材から入るという切り口が、年代順の作品集とは決定的に違うところです。

こんな人におすすめ

木や石など素材そのものに惹かれる人、隈建築の質感を言語化したい読者、設計で素材選びに悩む実務者。目次を眺めながら、気になる素材の章から読み進めたい場面に向きます。

良い点

  • 素材別の切り口が明快
  • 具体例が豊富
  • 目次から拾い読みできる

気になる点

  • 価格はやや高め
  • 通読向きではない
  • 写真中心ではない

出版社

エクスナレッジ

発売日

2013年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

目次がもう、水とか木とか竹とか、素材の名前で並んでいるのが面白いです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこがこの本の核でね。素材ごとに章を分けて、その物質と建築の関係を考えている。水/ガラス、那珂川町馬頭広重美術館、銀山温泉 藤屋、根津美術館——具体的な仕事が素材の側から立ち上がってきます。

橘ナナミ

橘ナナミ

年代順じゃないから、好きなところから読めるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさに拾い読み向きです。書店では、木が好きな方、石が好きな方、それぞれ違う章を開いて買っていかれました。

素材から建築を読むという方法は、図面が読めなくても入っていけるのがいい。作品集を眺めたあとにこれを読むと、なぜその形なのかが見えてきます。

隈研吾 場所の建築
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隈研吾 場所の建築

隈研吾 著|グラフィック社

¥7,920(税込)

3.7

2011年から2024年までの主要40プロジェクトを、「集まる」「体験する」「記憶する」「憩う」「つながる」「触発する」の6テーマで整理した最新作品集。国立競技場、角川武蔵野ミュージアム、南三陸311メモリアル、中橋などが並びます。建築を構造物ではなく「場所」として捉える視点が軸。本人が平易な言葉で書いた序文と解説も読みどころです。

こんな人におすすめ

隈建築を「どんな場になっているか」で見たい人、公共建築や地域施設に関わる読者、最新作までフォローしたい建築ファン。テーマから逆引きして、行きたい建物を探す場面にも向きます。

良い点

  • 6テーマで整理
  • 最新作まで収録
  • 本人のテキストが読める

気になる点

  • 価格は高め
  • 重くて持ち歩けない
  • 網羅は40件

出版社

グラフィック社

発売日

2026年8月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

6つのテーマで分かれているのが、他の作品集と違うところですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。「集まる」「体験する」「記憶する」「憩う」「つながる」「触発する」。建築を構造物としてではなく、人の行動や交流、記憶が生まれる「場所」として捉えている。

国立競技場、角川武蔵野ミュージアム、南三陸311メモリアル、中橋——並びを見るだけで、隈さんが何を作ろうとしてきたかが見えてきます。

橘ナナミ

橘ナナミ

「記憶する」に震災のメモリアルが入っているのが、重いですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこはこの本の誠実さだと思います。そして本人がとても平易な言葉で書いた序文とテーマの解説、グレース・ラさんの隈研吾論も読み応えがある。

図版と文章の両方が主役の、近年ではもっとも充実した作品集の一つです。

隈研吾 異端の建築
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隈研吾 異端の建築

高橋福生 著|三才ブックス

¥2,640(税込)

3.7

水と光の情景写真家・高橋福生が、全国の隈建築を丹念に取材して撮り下ろした写真集。代表的・特徴的な51作品を竣工年順に並べ、初期から最近までの変遷を追えます。木を多用し光を取り入れた構造の難しさゆえに「異端」と呼ばれる所以も見えてくる。写真家の目を通した隈論として、他の作品集と毛色が違います。

こんな人におすすめ

建築写真そのものを味わいたい人、竣工年順に隈建築の変化を追いたい読者、実際に訪ねる前後に見返したい人。ページをめくる時間そのものを楽しみたい場面に向きます。

良い点

  • 写真が美しい
  • 51作を竣工年順に収録
  • 写真家の視点が濃い

気になる点

  • 図面は少なめ
  • 解説は簡潔
  • 写真集ゆえ重い

出版社

三才ブックス

発売日

2024年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「異端」って言葉が強いですね。どうして異端なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

木を多用して光を取り入れ、人が自然と集まるような作品を作る。でもそれは構造的にも難度が高い。だから「異端」とも言える、というのがこの本の捉え方です。

写真家の高橋福生さんが、全国に散らばる隈建築を丹念に取材して撮っている。

橘ナナミ

橘ナナミ

写真家の目で見た隈建築、というのがポイントなんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。51作品を竣工年順に並べているので、M2から国立競技場までの変遷も追える。書店員時代、写真集は「眺めて買う」お客さんが多いけれど、これは文章も収録されているので読み物としても成立する。

光と木の質感を味わいたい人に、まず開いてほしい一冊です。

隈研吾 住宅らしさ
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隈研吾 住宅らしさ

隈研吾 著|ADAエディタトーキョー

¥2,200(税込)

3.7

個人住宅の設計を通じて、隈さんが「住宅らしさ」を考え続けた記録。住宅デビュー作「伊豆の風呂小屋」からパヴィリオン、家具、進行中の海外住宅までをインタビューで振り返り、巻末には書き下ろしエッセイも収録します。公共建築の隈さんしか知らない読者ほど、意外な一面に出会える一冊です。

こんな人におすすめ

家を建てたい・住まいを考え直したい人、住宅設計に関わる建築士、隈さんの原点である個人宅を知りたい読者。暮らしの延長として建築を読みたい場面に向きます。

良い点

  • 住宅に絞った貴重な一冊
  • インタビューで読みやすい
  • 書き下ろしエッセイ収録

気になる点

  • 大規模作品は出てこない
  • 図版は限られる
  • 専門的な記述もある

出版社

ADAエディタトーキョー

発売日

2013年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

隈さんって公共建築のイメージが強かったので、住宅の本があるのが意外です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが面白いところでね。住宅デビュー作「伊豆の風呂小屋」から、パヴィリオン、家具、進行中の海外の住宅まで、インタビューで振り返っている。

ためらいながら踏み出した個人住宅の設計を通じて、ようやく「住宅らしさ」が見えてきた、という本人の言葉が軸です。

橘ナナミ

橘ナナミ

巻末の書き下ろしエッセイも気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこまで含めて、住宅という切り口でしか見えない隈さんが残っている。書店員時代、住宅雑誌の棚からこの本に流れてくるお客さんがいましたよ。

家を建てる予定のある方は、設計士と話す前後に読むと視点が増えます。

隈研吾 はじまりの物語 ~ゆすはらが教えてくれたこと
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隈研吾 はじまりの物語 ~ゆすはらが教えてくれたこと

隈研吾 著|青幻舎

¥1,980(税込)

3.5

2000年代以降、木材を主要な素材としてきた隈さんが、なぜ木を使い始めたのか。そのきっかけが高知県・梼原町との出合いだったことを、5つの建築を年代順にたどりながら明かす。バブル崩壊で東京の仕事が消えた時期、町からのリクエストに応える形で木に向き合い始めた経緯が語られます。写真は瀧本幹也。

こんな人におすすめ

隈建築の木の使い方の原点を知りたい人、地域づくりや町おこしに関わる読者、写真家・瀧本幹也の仕事を追う人。80ページと短いので、一度に読み切れます。

良い点

  • 原点がわかる
  • 瀧本幹也の写真
  • 短く読み切りやすい

気になる点

  • ボリュームは少ない
  • 梼原以外は触れない
  • 作品図面は少なめ

出版社

青幻舎

発売日

2021年6月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「ゆすはら」って地名だったんですね。隈さんとどんな関係が?

佐藤メバル

佐藤メバル

これが隈さんの原点なんですよ。バブル経済がはじけて東京の仕事がすべてキャンセルされたとき、梼原町と出合って、はじめて町からのリクエストに応える形で木材を使い始めた。

本人は「梼原に出合って、僕は生まれ変わった」と書いています。

橘ナナミ

橘ナナミ

5つの建築を年代順に追う構成なんですね。80ページなら読み切れそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

写真は瀧本幹也さんで、情緒を排した硬質な光で木の質感を捉えている。隈さん自身が「木という物質の本質を捉えています」と評したほどです。

たった一つの町との約30年をたどることで、後の国立競技場や歌舞伎座につながる、場所との向き合い方が見えてきます。

自然とは何か 隈研吾の建築美学、22 世紀へのパースペクティブ
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自然とは何か 隈研吾の建築美学、22 世紀へのパースペクティブ

隈研吾 著|くま書店

¥3,850(税込)

3.5

姫路の歴史的建築と隈さんの思想が交差する3つの展覧会を軸に、創造の核心に迫る一冊。建築を「形」ではなく「素材」や「場所」から立ち上げる方法論を、「自然とは何か」という問いから読み解きます。「バラバラ」「コツコツ」「ツンツン」というオノマトペの思考、高田賢三へのオマージュ「コツゴツ」も登場。展覧会の記録としても貴重です。

こんな人におすすめ

展覧会の記録を手元に残したい人、書寫山圓教寺や姫路の風土に関心がある読者、隈さんの思考をオノマトペから覗きたい人。76ページのコンパクトな構成で、図版とテキストを往復したい場面に向きます。

良い点

  • 展覧会の記録になる
  • 素材と場所から論じる
  • 姫路の文脈が濃い

気になる点

  • 76ページと短い
  • 価格はやや高め
  • 一般向けの入門ではない

出版社

くま書店

発売日

2026年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

タイトルに「22世紀へのパースペクティブ」って入っているのが大胆ですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

姫路市立美術館が企画した3つの展覧会を軸にした一冊で、建築を「形」からではなく「素材」や「場所」から立ち上げる隈さんの方法論を、「自然とは何か」という根源的な問いから読み解いています。

書寫山圓教寺のような場の固有性、姫路の風土も重なってくる。

橘ナナミ

橘ナナミ

「バラバラ」「コツコツ」「ツンツン」って、建築の本なのにオノマトペが出てくるのが不思議です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが隈さんの思考らしさでね。姫路出身のデザイナー高田賢三さんへのオマージュとして「コツゴツ」という概念も出てくる。

土地と人と創造の関係を、図版と短いテキストで追体験できる。展覧会を見た人が記憶を残すために買う、そういう一冊です。

隈研吾という身体 ―自らを語る (建築・都市レビュー叢書)
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隈研吾という身体 ―自らを語る (建築・都市レビュー叢書)

大津若果 著|NTT出版

¥2,860(税込)

3.5

「負ける建築」を唱える隈研吾は、なぜ勝ち続けられるのか。建築家は能動的で前衛的という通念をひっくり返し、隈の思想の核を「受動性」に置いて読み解く評伝的論考。経歴・著作・建物を結びつけ、本人インタビューも交えながら、右手を怪我して得たもの、コンピュータを身体化する話まで掘り下げます。内側から描く隈論です。

こんな人におすすめ

隈研吾を批評的に読みたい読者、建築家論や戦後建築史に関心がある人、本人の著作を何冊か読んだ次の一歩を探す人。306ページを腰を据えて読みたい時期に向きます。

良い点

  • 本人インタビュー収録
  • 受動性という切り口
  • 著作と作品を横断

気になる点

  • 厚くて時間がかかる
  • 学術寄りの記述
  • 入門書ではない

出版社

NTT出版

発売日

2018年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「なぜ勝ち続けられるのか」という問いが、ちょっと意地悪で面白いです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の切り口でね。建築家というと、パワフルで能動的、あるいは前衛的というイメージがある。でも「負ける建築」を掲げる隈さんの思想の核は「受動性」なんだ、と。

経歴と著作と建物を結びつけながら、その矛盾を解いていく。

橘ナナミ

橘ナナミ

右手を怪我した話や、コンピュータの話も出てくるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、身体の話が軸になっているのが珍しい。本人へのインタビューも入っていて、隈研吾を外から眺める視点が手に入ります。

書店員としては、隈さんの本を何冊か読んだお客さんに最後に勧める一冊でした。厚いので、時間のある時期にどうぞ。

くまの根: 隈研吾・東大最終講義 10の対話
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くまの根: 隈研吾・東大最終講義 10の対話

隈研吾 著|東京大学出版会

¥3,180(税込)

3.5

2019年から2020年に東京大学安田講堂で行われた最終連続講義を書籍化した一冊。原広司、上野千鶴子、内田祥哉、原研哉、藤森照信、佐藤淳ら22人との10の対話を通して、創作のルーツが掘り下げられます。対談集として読むのが基本で、隈さんの半生を人脈の側からたどれるのが他の本にない強みです。

こんな人におすすめ

建築家の人間関係から思想を掴みたい読者、対談や鼎談が好きな人、東大の最終講義という形式に関心がある読者。名前を見て頁を選ぶ楽しみを味わいたい場面に向きます。

良い点

  • 22人の対話を収録
  • 創作のルーツがわかる
  • 講義の記録として貴重

気になる点

  • 424ページと分厚い
  • 対談ゆえ散らかる
  • 専門的な話題も多い

出版社

東京大学出版会

発売日

2021年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

424ページって、対談集としてはかなり厚いですね。22人も登場するんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。原広司さん、上野千鶴子さん、内田祥哉さん、原研哉さん、藤森照信さん、佐藤淳さん——各界の第一線で活躍する人たちがユニークな隈研吾論を展開する。

隈さんが「お年寄りを優先した」と書いているのが印象的で、65年を総括するための仕掛けなんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

「最終講義」って銘打たないと照れくさい、というのも人間らしいですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが読ませどころです。建築というメディアは経済も文化も政治も映す鏡だ、という視点で、二つの時代を見比べていく。

書店では、対談集の棚と建築の棚、両方に置きたくなる本でした。気になる名前の章から拾い読みしても十分楽しめます。

隈研吾:レクチャー/ダイアローグ ((LIXIL出版))
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隈研吾:レクチャー/ダイアローグ ((LIXIL出版))

隈研吾 著|INAX出版

¥2,200(税込)

3.5

家族、住宅、建築デザイン、都市計画、都市景観をめぐって隈さんが縦横に語り、藤本壮介、乾久美子、塚本由晴という気鋭の建築家との対談も収録した一冊。ダイアローグは建築に似ているという言葉どおり、対話そのものが設計の現場になります。理論と実践、世代の違いが同時に見える構成が、単独の論考集との違いです。

こんな人におすすめ

同時代の建築家の思考を並べて読みたい人、都市や景観に関わる仕事をしている読者、対談から建築に入りたい初学者。世代の異なる建築家の言葉を聞き比べたい場面に向きます。

良い点

  • 対談が3本収録
  • 論点が暮らしに近い
  • 世代差が見える

気になる点

  • 散らかった印象も
  • 図版は少なめ
  • 都市論はやや硬い

出版社

INAX出版

発売日

2007年9月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

藤本壮介さん、乾久美子さん、塚本由晴さんとの対談が入っているんですね。この三人が並ぶと、けっこう今の建築界って感じがします。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。家族、住宅、建築デザイン、都市計画、都市景観——テーマは暮らしに近いところから都市まで幅広い。

隈さんが縦横無尽に語り、若い世代とぶつかり合う。ダイアローグは建築に似ているという著者の言葉が、そのまま内容になっています。

橘ナナミ

橘ナナミ

レクチャーとダイアローグ、両方入っているのがいいですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが贅沢なところで、独白と対話を往復できる。書店員時代、建築を学び始めた学生に「対談から入ると疲れないですよ」と勧めていました。

思想の本より温度が低く、都市論に興味がある人にも届く一冊です。

隈研吾 最新プロジェクト(KENGO KUMA RECENT PROJECT)
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隈研吾 最新プロジェクト(KENGO KUMA RECENT PROJECT)

隈研吾 著|ADAエディタトーキョー

¥5,730(税込)

3.5

直近のプロジェクトをまとめた作品集。180ページという比較的コンパクトな分量で、最新の仕事を追うことに絞っているのが特徴です。年代を区切った大型の作品集と違い、動いている仕事を今のタイミングで確認できる。すでに何冊か隈さんの作品集を持っている人が、続きを埋めるように手に取る一冊です。

こんな人におすすめ

隈建築の最新作を追いかけている読者、大型作品集は持っているが続きが欲しい人、資料として手元に置きたい設計者。新作の発表を追う場面に向きます。

良い点

  • 最新作に絞られている
  • コンパクトな分量
  • 既刊の続きとして使える

気になる点

  • 価格は高め
  • 文章は少なめ
  • 入門には向かない

出版社

ADAエディタトーキョー

発売日

2009年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「最新プロジェクト」って、タイトルそのままですね。こういう本は定期的に出るんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

隈さんは仕事の数が多いので、年代を区切った作品集が何冊も出ているんです。これはその中でも直近の仕事に絞った一冊で、180ページと比較的コンパクト。

動いている仕事を今のタイミングで確認できるのが価値です。

橘ナナミ

橘ナナミ

すでに作品集を持っている人が、続きを埋める感じで買うんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそういう買われ方をします。書店では、大型の作品集を買った常連さんが、次に新しい巻を探しに来る。

棚を少しずつ埋めていく楽しみがある分野なんですよ。逆に初めての一冊には向かないので、図鑑や新書から入るのがおすすめです。

PLOT 06 隈研吾
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PLOT 06 隈研吾

ADAエディタトーキョー

¥2,750(税込)

3.5

下関市川棚温泉交流センターとアオーレ長岡を、ヴォリューム、プランニング、ストラクチャー、コンストラクション、インテリアという段階に分けて追う一冊。設計者やエンジニア本人が語るスタディの積み重ねがそのまま収録され、完成写真だけでは見えない判断の過程が残ります。作品集とも論集とも違う、設計プロセスの中身を見せる構成です。

こんな人におすすめ

設計の進め方を具体的に知りたい建築学生や若手設計者、公共建築のプロジェクトに関わる人、隈さんと藤原徹平さんらの協働に興味がある読者。打ち合わせの中身を覗きたい場面に向きます。

良い点

  • 設計過程が詳しい
  • 複数の語り手が登場
  • 作品データも収録

気になる点

  • 専門的で一般向けでない
  • 写真の鑑賞向きではない
  • 特定作に絞られる

出版社

ADAエディタトーキョー

発売日

2015年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ヴォリューム・スタディ、プランニング・スタディ……段階ごとに語り手が並んでいるのが、他の作品集と全然違います。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、設計プロセスをそのまま見せる構成なんです。下関市川棚温泉交流センターとアオーレ長岡を、5つの段階に分けて、隈さんや藤原徹平さん、佐藤淳さんたちが語っていく。

完成写真の裏側にある判断が残っている。

橘ナナミ

橘ナナミ

アオーレ長岡は市民の声も入っているんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこも含めて記録しているのが貴重です。実際に使う人の言葉が設計に入っていく過程が見える。書店では、学生より若手の設計者に売れていく本でした。

一般の読者には専門的ですが、公共建築の仕事をしている人には刺さりますよ。

建築ジャーナル 特集 隈研吾と日本社会 2021年1月号
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建築ジャーナル 特集 隈研吾と日本社会 2021年1月号

建築ジャーナル

3.5

建築ジャーナルが組んだ「隈研吾と日本社会」という特集号。単行本ではなく雑誌の特集として、建築家と社会の関係を正面から扱っているのが特徴です。作品の図版を追う本とは違い、批評や議論の側から隈さんに迫る。同じ著者の単著を読んだあとに、外からの視線を足したいときに効く一冊です。

こんな人におすすめ

建築と社会の関係を考えたい読者、メディアや批評の側から隈さんを読みたい人、雑誌の特集号を資料として保存したい読者。同時代の議論を確認したい場面に向きます。

良い点

  • 社会との関係を扱う
  • 批評の視点がある
  • 雑誌で手に取りやすい

気になる点

  • 単行本より情報は限定的
  • バックナンバー扱い
  • 図版は少なめ

出版社

建築ジャーナル

発売日

2021年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

これは本ではなく雑誌なんですね。「隈研吾と日本社会」という切り口が、他の本とはだいぶ違います。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、建築ジャーナルの特集号です。作品を紹介するのではなく、建築家と社会の関係を正面から扱っている。

単著を何冊か読んだあとに、外からの視線を足したいときに効く。

橘ナナミ

橘ナナミ

2021年1月号、ということはバックナンバーを探す感じですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうなりますね。書店員時代、雑誌の特集は流れが早くて、気づいたときには棚から消えていることが多い。同時代の議論は、出たときに手に入れておくのが大事です。

批評の側から隈さんを読むと、作品の見え方もまた変わりますよ。

丹下健三と隈研吾: 東京大会1964/2020の建築家
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丹下健三と隈研吾: 東京大会1964/2020の建築家

隈研吾 著|TOTO

¥3,300(税込)

3.5

1964年と2020年、二つの東京大会を軸に丹下健三と隈研吾の共通点と差異を比較対照する一冊。隈さん本人と建築史家・豊川斎赫の解説、石元泰博と瀧本幹也の写真で両者の建築思想を読み解きます。世界遺産登録を目指す代々木競技場の魅力にも触れる。二人を並べることでしか見えない論点があります。

こんな人におすすめ

丹下健三と隈研吾をまとめて考えたい人、五輪と建築の関係に関心がある読者、代々木競技場や新国立競技場を訪ねる前後に読みたい人。展示の図録としても手元に置けます。

良い点

  • 二人を比較できる
  • 写真が充実
  • 図録としても使える

気になる点

  • 116ページと短い
  • 価格はやや高め
  • 専門的な比較論

出版社

TOTO

発売日

2024年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

丹下健三と隈研吾さん、1964年と2020年の東京大会という並べ方、すごくきれいですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の狙いで、共通点と差異をていねいに比べている。隈さん本人と建築史家の豊川斎赫さんによる解説、写真家の石元泰博さんと瀧本幹也さんの写真で、両者の建築思想を読み解く構成です。

橘ナナミ

橘ナナミ

代々木競技場の話も出てくるんですね。世界遺産登録を目指していると聞きます。

佐藤メバル

佐藤メバル

その建築的な魅力にも触れています。パリの日本文化会館で開かれた「丹下健三と隈研吾展」の図録の和英版でもあるので、展覧会を見た人は記憶を残せる。

二人を並べると、日本の近代建築が何を引き継いできたのかが見えてきます。

旅する建築家 隈研吾の魅力
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旅する建築家 隈研吾の魅力

田實碧 著|双葉社

3.5

30年以上にわたり隈さんと親交のある空間デザイナー・田實碧が、ロングインタビューを敢行した一冊。新国立競技場のこけら落としを前にした時期の空気も背景に、名建築が生まれるまでの秘話や生い立ちを、気さくな人柄とともに綴ります。作品論でも評論でもない、人となりに迫る読み物としての位置づけが独特です。

こんな人におすすめ

隈研吾という人物そのものに惹かれる読者、建築の裏側の物語を読みたい人、インタビュー形式の読み物が好きな人。移動や寝る前に少しずつ読み進めたい場面に向きます。

良い点

  • 人柄が伝わる
  • インタビューが軸
  • 読み物として軽快

気になる点

  • 作品論は薄め
  • 写真は限られる
  • 内容は談話中心

出版社

双葉社

発売日

2019年11月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「旅する建築家」というタイトル、いいですね。世界を飛び回る隈さんらしいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

著者の田實碧さんは空間デザイナーで、隈さんとは30年以上の親交がある方。その人がロングインタビューを敢行して、生い立ちから現在まで、名建築の誕生秘話を交えながら綴っています。

橘ナナミ

橘ナナミ

専門家が書いた評伝とは、また違う読み味なんでしょうね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。「超が付くほどの人気建築家なのに、人柄は気さくで、出会った人々を魅了する」という視点が全体を貫いています。

作品論でも評論でもなく、人となりに迫る読み物。書店員時代、建築に詳しくない方にもっとも渡しやすかった隈さんの本が、実はこれでした。

「反オブジェクト」から「負ける建築」へ — 思想の変遷を読書順で追う

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、「負ける建築」という言葉は知っているんですけど、内容は正直まだ掴めていなくて。

佐藤メバル

佐藤メバル

『負ける建築』は、周囲の環境を圧倒して屹立する超高層ビルのような20世紀型の「勝つ建築」が、すでにその弱さを露呈している、という問題意識から始まる。これからの建築は、もっと様々な外力を受け入れる「負ける建築」の途を探るべきではないか、という論集だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

負ける、というのは諦めではなくて、受け入れるということなんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。『隈研吾という身体』では、隈さんの思想のキーワードを「受動性」として整理している。建築家はパワフルで能動的という一般的なイメージと真逆だ、という指摘はなるほどと思わされるよ。同じ本には「反オブジェクトとしての建築」という梼原町の文脈も出てくる。そして『自然な建築』『小さな建築』へ進むと、「小さな単位を積む」「もたれかかる」「織る」「ふくらます」といった具体的な方法論に行き着く。

橘ナナミ

橘ナナミ

オノマトペで建築を語るのは珍しい気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

『自然とは何か』では「バラバラ」「コツコツ」「ツンツン」というオノマトペによる思考が紹介されていて、姫路での展覧会を軸に、建築を形からではなく素材や場所から立ち上げる方法論が読み解かれている。言葉の選び方そのものが、隈さんの設計姿勢なんだね。

作品と本を往復する — 見る前と見た後で読む本を分ける

橘ナナミ

橘ナナミ

実際に建物を見に行くとしたら、どの本を先に読めばいいんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

見る前なら『隈研吾建築図鑑』がいい。国内で見ておくべき建築50件が、デザイン面や技術面の解説つきで整理されているから、行き先を決めるのにも使える。見た後なら『隈研吾 異端の建築』が面白い。写真家の高橋福生さんが51作品を竣工年順に写真で追っていて、50歳以前から65歳以降まで章で区切られている。自分の見た建物がどの時期の仕事なのか、位置づけられるんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

図鑑で予習、写真集で復習。

佐藤メバル

佐藤メバル

うまいまとめだね。もっと踏み込みたい人には『隈研吾 物質と建築』がおすすめ。水、木、竹、石、土、セラミックといった素材ごとに章が分かれていて、素材と作品の対応が一目でわかる。『隈研吾 はじまりの物語』を読んでから梼原町の5つの建築を訪ねる、という楽しみ方もあるよ。作品の変遷と思考をまとめて追いたいなら、作品とインタビュー、対談、事務所ルポで綴った『NA建築家シリーズ02 隈研吾』も外せない。

批判的に読む、そして最新刊と入手性

橘ナナミ

橘ナナミ

褒めるだけの記事にはしたくないんです。バランスの取れた見方ってありますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

『隈研吾という身体』は「『負ける建築』の隈研吾は、なぜ勝ち続けられるのか?」という問いを立てているところがいい。受動性を掲げながら世界的に活躍し続ける、その矛盾を正面から扱っている。『建築ジャーナル 特集 隈研吾と日本社会』も、社会との関係から捉え直す視点をくれる。『丹下健三と隈研吾』は1964年と2020年の東京大会を軸に二人を比較対照していて、隈さんを相対化する材料になる。賞賛と批評を並べて読むと、輪郭がはっきりするよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

最新の本はどうですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

『隈研吾 場所の建築』が2024年までの40プロジェクトを扱っていて、いちばん新しい景色を見せてくれる。『自然とは何か』も姫路の展覧会を軸にした近刊だ。入手性は形式で変わる。新書や文庫は比較的手に取りやすい価格帯、図鑑や大型の作品集は価格も上がる。電子版の有無は本ごとに違うから、まずは新書で試してから大型本を判断するのが失敗しない順番かな。

よくある質問

隈研吾の本は初心者がどれから読めばいい?

橘ナナミ

橘ナナミ

隈研吾の本は初心者がどれから読めばいいについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

まずは『建築家になりたい君へ』がおすすめです。10歳で建築家を志した来歴が章ごとに追えて、専門知識がなくても読み進められます。次に新書の『自然な建築』や『小さな建築』へ進むと、思想の輪郭がつかめます。いきなり大型の作品集や論集から入ると挫折しやすいので、人物から思想へという順番が安心です。

建築の知識がなくても読める入門書は?

橘ナナミ

橘ナナミ

建築の知識がなくても読める入門書はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『建築家になりたい君へ』と岩波新書の『自然な建築』『小さな建築』は、図面の読み方がわからなくても文章で読み進められます。写真やイラストから入りたいなら『隈研吾建築図鑑』がよく、国内で見ておくべき建築50件がキーワードで分類され、巻頭・巻末に本人のロングインタビューも収録されています。

隈研吾の思想が一番わかる本は?

橘ナナミ

橘ナナミ

隈研吾の思想が一番わかる本はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

思想の出発点として広く読まれているのは『負ける建築』です。20世紀型の「勝つ建築」が弱さを露呈しているという視点から、様々な外力を受け入れる建築の途を探る論集です。あわせて『隈研吾という身体』を読むと、その思想の核が「受動性」として整理され、なぜ活躍し続けられるのかという問いまで踏み込めます。

図鑑と思想書はどちらを選ぶべき?

橘ナナミ

橘ナナミ

図鑑と思想書はどちらを選ぶべきについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

目的で決めれば迷いません。建物を見に行きたい、写真や図版を眺めたいなら『隈研吾建築図鑑』や『隈研吾 異端の建築』といった図鑑・作品集が向いています。言葉で考えたいなら新書や論集へ。両方読む場合は、図鑑で作品の位置づけを知ってから思想書に進むと、専門用語が具体的な建物と結びついて理解しやすくなります。

建築家を目指す中高生におすすめの本は?

橘ナナミ

橘ナナミ

建築家を目指す中高生におすすめの本はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『建築家になりたい君へ』は、10代に向けたメッセージとして書かれた1冊で、動物好きから建築好きになった話や、アフリカ旅行、はじめての建築のエピソードまで収録されています。進路を迷っている時期にこそ読んでほしい内容です。あわせて『隈研吾 はじまりの物語』を読むと、地方の小さな町での仕事が後に大きなプロジェクトへつながった過程がわかります。

隈研吾の本でKindleで読めるものは?

橘ナナミ

橘ナナミ

隈研吾の本でKindleで読めるものはについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

電子版の有無は本ごとに異なり、掲載情報だけでは断定できません。新書や文庫は比較的電子化が進んでいますが、大型の作品集や図鑑は紙でしか出ていないものもあります。購入前に出版社のサイトや各書店の商品ページで対応形式を確認するのが確実です。

一番有名・定番の1冊は?

橘ナナミ

橘ナナミ

一番有名・定番の1冊はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

定番として名前が挙がるのは『負ける建築』です。新国立競技場の設計に携わった著者が、20世紀の建築史や現代思想、アートへの幅広い関心を背景に自らの建築哲学を語った論集で、隈研吾という建築家を語る際に必ず参照される1冊です。ただし密度が濃いので、入門の後に読むのがおすすめです。

2024年以降の最新刊には何がある?

橘ナナミ

橘ナナミ

2024年以降の最新刊には何があるについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『隈研吾 場所の建築』は2011年から2024年までの主要40プロジェクトをまとめた作品集で、「集まる」「体験する」「記憶する」など6つのテーマで構成されています。姫路の展覧会を軸にした『自然とは何か 隈研吾の建築美学、22世紀へのパースペクティブ』も近刊です。最新の仕事と思想を同時に追える2冊と言えます。

まとめ

橘ナナミ

橘ナナミ

今日の話を聞いて、最初の1冊は『建築家になりたい君へ』にしようと思いました。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい選択だね。10歳で建築家を志した人の来歴が、章を追うごとに動いていく。読み終えたら『自然な建築』『小さな建築』へ進んでごらん。

橘ナナミ

橘ナナミ

そのあとで『負ける建築』に戻る、と。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。急がなくていい。隈さんの本は、新書1冊ずつ積んでいくほうが、最後にちゃんと立つ。焦って大型本から入ると、写真はきれいなのに頭に何も残らない、ということが起きるんだよ。書店員時代に何度も見た光景だ。

橘ナナミ

橘ナナミ

うっ、心当たりがあります……。

佐藤メバル

佐藤メバル

小さな単位を積むのは、隈さんの建築の作り方そのものだ。本も同じで、1冊ずつ積んでいくと、最後には自分のなかに小さな建築が建つ。それが、あなただけの隈研吾になるんだよ。

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