近代建築史を学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、今回のテーマは「近代建築史の本」です。でも正直、書店の棚の前で固まっちゃいそうで……通史から読むのか、図鑑なのか、それとも巨匠の本なのか、見当がつきません。
佐藤メバル
いい質問だね。近代建築史は「産業革命から現代まで」という長い射程を持つから、一冊で完結させようとすると必ず途中で止まる。だから最初に決めるのは、どの本を読むかより先に「どの棚から開けるか」なんだよ。
橘ナナミ
棚、ですか。
佐藤メバル
そう。大きくは通史の棚、人物と論考の棚、図鑑の棚、そして現地という棚。並べ方は後ろの一覧に譲るとして、先に選び方の軸を共有しておこう。軸さえ持っていれば、書店でも図書館でも迷わなくなる。
近代建築史を学べる本の選び方
目的別 — 通史を掴む/思想を理解する/デザインを学ぶ/試験対策する
橘ナナミ
目的別だと、具体的にどう変わります?
佐藤メバル
流れを掴むなら石田潤一郎『近代建築史』や藤岡洋保『近代建築史』のような通史。思想を追うなら『近代建築理論全史1673-1968』、造形を読み解くなら日本建築学会『近代建築史図集』、試験なら演習問題と索引を備えた桐敷真次郎『近代建築史』。同じ「近代建築史」という書名でも、役割はまったく別なんだ。
レベル別 — 初学者・学生・実務家・愛好家
橘ナナミ
建築の知識がゼロだと、通史はちょっと重い気がします。
佐藤メバル
その場合は原口秀昭『ゼロからはじめる[近代建築]入門』や藤森照信『画文でわかる モダニズム建築とは何か』。イラストで空間構成と思想を追えるから肩慣らしにちょうどいい。実務家なら図集と論考を往復すると、解像度が一段上がるよ。
地域軸 — 西洋中心か日本中心か、両方を並行するか
橘ナナミ
西洋と日本、どちらを先に学ぶべきですか?
佐藤メバル
断然、並行がおすすめ。藤岡洋保の本は欧米編・日本編の二部構成だし、日埜直彦『日本近現代建築の歴史』は明治維新から現代までを一筆書きで描く。西洋の運動と日本の受容を同じ時間軸に置くと、理解がぐっと深くなる。
形式別 — 大型図鑑/新書・文庫/事典・読み物
橘ナナミ
図鑑と新書だと、読み方そのものが違いますよね。
佐藤メバル
図鑑は「引く」、新書は「読む」。大川三雄『図説近代建築の系譜』や『近代建築史図集』は手元に置いて参照する辞書的な使い方、藤森照信『日本の近代建築』のような新書は通読向き。両方あると強い。
原著か入門解説書か — 一次資料を読むか、解説で流れを掴むか
橘ナナミ
コルビュジエやライトの言説って、いきなり原典はハードルが高いですよね。
佐藤メバル
高いね。まず解説書で地図を作ってから原典へ入る。遠回りに見えて、これが一番の近道だよ。
入手性と版 — 現行版か絶版か、増補改訂・翻訳の新旧
橘ナナミ
絶版の本も多い気がします。
佐藤メバル
図書館・中古・電子を組み合わせる。翻訳書は訳者と増補改訂の版を必ず確認して。同じ書名でも中身が違うことがあるからね。
近代建築史を学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
近代建築史を学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

近代建築史
石田潤一郎 著|昭和堂
¥2,640(税込)
産業革命期の建築家が古典古代の引用を離れ、まったく新しい建築言語を手に入れるまでを描く通史。産業革命と建築、日本における西洋建築の受容、都市の近代的再編、未来派やロシア構成主義、デ・ステイル、表現主義、アメリカの近代建築、そして近代主義の成熟とポスト・モダンまで全13章。西洋と日本を往復できる骨格を持ち、図集とも講義録とも違う流れの地図として使える。
こんな人におすすめ
建築史の授業で全体像を整理したい学生、西洋と日本の流れを一冊で押さえたい社会人、最初の一冊に迷っている人。目次を見て関心のある章から拾い読みする使い方にも向く。通史を読む前に、どんな章立てかを確認しておきたい人にも。
良い点
- 西洋と日本を13章で往復
- 産業革命からポストモダンまで
- 章ごとに拾い読みしやすい
気になる点
- 図版は別途そろえたい
- 通読には根気がいる
- 作品の細部は他書で補う
出版社
昭和堂
発売日
1998年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「近代建築史」ってタイトルの本が何冊もあって、最初にどれを手に取ればいいか迷っていました。この石田さんの本は目次が細かくて、産業革命からポスト・モダンまで13章あるんですね。これ一冊で全体が見えるんでしょうか。
佐藤メバル
いい質問だね。この本の核は、19世紀末の建築家が古典古代の引用をやめて、まったく新しい建築言語を手に入れていく過程を描くところにある。
産業革命と建築、日本における西洋建築の受容、都市の近代的再編、未来派やロシア構成主義、デ・ステイル、表現主義、アメリカの近代建築、そして近代主義の成熟と変容、ポスト・モダンまで並ぶ。
流れの骨格をつかむのに向いた一冊だよ。
橘ナナミ
なるほど、地図みたいな本なんですね。じゃあ写真をたくさん見たい人が、これ一冊だけで済ませるのは物足りない感じですか。
佐藤メバル
そういう人は図集タイプと組み合わせるといい。この本は文章で流れを追うタイプだから、章立てが細かいぶん、気になる章から拾い読みしても迷子になりにくい。
書店員時代も、通史は最初から最後まで読むより、関心のある章だけつまむ学生のほうがよく伸びていったよ。

近代建築史概説
近江栄 著|彰国社
¥2,750(税込)
近江栄による近代建築史の概説。概説と名乗っていても、通史を一冊に収めようとすればこのくらいの分量になる。図版を眺めて雰囲気をつかむ本ではなく、通読して流れを頭に入れるタイプだ。まず目次を開き、西洋から入るか日本の近代化から入るかを決めてから読み進めると、厚さに負けずに最後までたどり着ける。
こんな人におすすめ
建築を学ぶ学生の副読本として、通史を一冊きちんと読み切りたい人、独学で近代建築史を整理したい社会人。薄い入門を読んだ後の二冊目として手に取る場面にも合う。目次を確認して、自分の関心と章立てが合うかを見てから選びたい。
良い点
- 概説として体系的
- 厚みのある通史
- 章立てで整理しやすい
気になる点
- 通読に時間がかかる
- 入門書の後に向く
- 図版は別途そろえたい
出版社
彰国社
発売日
1978年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
近江栄さんの『近代建築史概説』は383ページ。さっきの石田さんの本よりだいぶ厚いですね。概説なのにこの厚さって、どういうことなんでしょう。
佐藤メバル
通史をきちんと一冊に収めようとすると、このくらいの分量になるんだ。この本は彰国社から出ているテキストで、タイトルどおり近代建築史を体系的にまとめた一冊だと考えていい。
通読して流れを頭に入れるタイプで、図版を眺めて雰囲気をつかむ本とは役割が違う。まず目次を確認して、自分の関心と章立てが合うか見てみるといい。
橘ナナミ
なるほど。じゃあ、いきなりこれから始めるより、薄い入門を一冊読んでから挑むほうがよさそうですね。
佐藤メバル
そう思う。分厚い通史は、読む前に自分が何を知りたいのかを決めておくと進みやすい。西洋の流れを先に追うのか、日本の近代化から入るのか。
目的が決まっていると、ページ数が多くても案外すいすい読めるものだよ。

近代建築史図集
日本建築学会 著|彰国社
¥2,530(税込)
日本建築学会が編んだ近代建築史の定番教材。産業革命前後から1970年前後までの建築を、西洋近代・日本近代・世界現代の三部で追う。理想都市、アールヌーヴォー、バウハウス、CIAM、国際建築の普及、アルヴァ・アールトの章まで並び、巻末には作品目録・出典リスト・近代建築家年表が付く。図版と解説を往復しながら、年代の感覚をつかめる。
こんな人におすすめ
建築を学ぶ学生の講義の副読本、作品名と図版を結びつけたい人、年表で年代を確認しながら読みたい人。発表資料づくりや、建物を見に行く前の下調べの場面でも頼りになる。手元に置いて引く使い方に向く。
良い点
- 図版中心で頭に入る
- 西洋・日本・世界現代の三部
- 巻末に年表と作品目録
気になる点
- 文章量は多くない
- 詳しい物語は別書で
- 172ページで駆け足
出版社
彰国社
発売日
1976年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「図集」って聞き慣れないんですけど、普通の建築史の本と何が違うんでしょうか。名前のとおり図版が多い本だとして、どう使えばいいのか想像がつかなくて。
佐藤メバル
日本建築学会が編んだ定番の教材で、1760年代の産業革命のころから1970年前後までの建築を扱っている。
構成は西洋近代・日本近代・世界現代の三部で、理想都市やアールヌーヴォー、バウハウス、CIAM、国際建築の普及、アルヴァ・アールトの章まで並ぶ。
巻末には作品目録、出典リスト、近代建築家年表が付く。図版と解説を往復しながら、年代の感覚をつかむ本だね。
橘ナナミ
年表が付いているのは助かります。どの建物がいつ建ったのか、いまだにこんがらがってしまうので、そこだけでも価値がありそうです。
佐藤メバル
そう、年表は強い。図集は読むより引く本で、授業や発表の資料づくりにも向いている。ただ文章量は多くないから、詳しい物語は別の通史で補うことになる。
僕の棚でも、図集と通史は必ず隣に並べていたよ。

近代建築史 (建築学入門シリーズ)
藤岡洋保 著|森北出版
¥2,860(税込)
欧米編と日本編の二部構成で、近代の代表的な建築物を紹介しながら、歴史を理解するための基本的な見方を丁寧に解説するテキスト。第1部は機械の美学や自然をモデルにする建築、伝統のデザインといった視点で章を切り、第2部で富国強兵・殖産興業から近代主義への懐疑まで追う。写真が多く視覚から入れるのが強みだ。
こんな人におすすめ
建築家の名前より考え方で整理したい人、写真を見ながら近代建築史に入りたい初学者、欧米と日本を同じ物差しで見比べたい学生。192ページで通読しやすい。最初の一冊としても、授業の復習としても使える。
良い点
- 写真が多く視覚的に学べる
- 欧米編と日本編の二部構成
- 見方から章を立てている
気になる点
- 掲載作品は絞られる
- 年表や資料は別途必要
- 深掘りには通史が要る
出版社
森北出版
発売日
2011年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
藤岡洋保さんの『近代建築史』は、欧米編と日本編の二部構成なんですね。第一部と第二部で章が分かれているのを見ると、順番どおりに読むべきなんでしょうか。
佐藤メバル
この本のいいところは、建物を紹介しながら近代建築史を理解するための基本的な見方を丁寧に説明している点。
第1部は近代という時代、時代の変化と建築表現、都市計画の提案、機械の美学、自然をモデルにする建築、伝統のデザインと続き、第2部で富国強兵・殖産興業から近代主義への懐疑まで日本編を追う。
写真が多く視覚から入れるのもうれしい。
橘ナナミ
機械の美学とか、自然をモデルにする、という章の立て方が面白いです。建築家の名前より、考え方で整理しているんですね。
佐藤メバル
そこが他の通史との違いだね。人物や年号を追うのではなく、時代が建築に何を求めたかで章を切っている。日本編も同じ視点で並んでいるから、欧米と日本を同じ物差しで見比べられる。
192ページでこの整理が手に入るのは、入門としてはかなり効率的だと思うよ。

近代建築史 (建築学の基礎 5)
桐敷真次郎 著|共立出版
¥4,400(税込)
18世紀から20世紀末までの近代建築の展開を、コンパクトに要約した通史。国際政治、社会思想、科学技術、産業と経済、そして二つの世界大戦の影響とセットで、時間の経過に忠実かつ客観的に記述し、成果を公平に評価しようとする。モダニズム建築の宣伝と近代主義を主軸とした従来の近代建築史とは大きく異なるのが特色で、建築を社会の中に置き直す視点が得られる。
こんな人におすすめ
近代主義を手放しで礼賛する史観に違和感のある人、建築と社会の関係から近代を考えたい学生、演習問題や索引を使いながら教科書として読み込みたい人。図版説明と本文を突き合わせて確かめたい読者にも向く。
良い点
- 近代主義を主軸にしない
- 政治・思想とセットで記述
- 演習問題と詳細な索引
気になる点
- 分量があり時間が要る
- 痛快な物語ではない
- 入門書の後に向く
出版社
共立出版
発売日
2001年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
桐敷真次郎さんの本の紹介に、モダニズム建築の宣伝と近代主義を主軸とした従来の近代建築史と大きく異なる、って書いてあって。それって、どういう意味なんですか。
佐藤メバル
いいところに目をつけたね。近代建築史の本は、近代主義を進歩の到達点として語りがちなんだけど、この本はそれをしない。
18世紀から20世紀末までを、国際政治や社会思想、科学技術、産業と経済、そして二つの世界大戦の影響とセットで、時間の経過に忠実に、かつ客観的に記述しようとする。
公平に評価し直すのが目的だと明言されているんだ。
橘ナナミ
なるほど、建築だけを眺めてもわからない部分があるんですね。二つの世界大戦が建築に影響したというのも、考えてみれば当たり前なのに意識していませんでした。
佐藤メバル
本文と図版説明が補い合うように組まれていて、演習問題や参考図書、詳細な索引も付いている。読み物としても教科書としても使える構成だよ。
ただ、近代主義を手放しで礼賛する本を期待すると、少し戸惑うかもしれない。そこは好みが分かれるところだね。

実況・近代建築史講義
中谷礼仁 著|インスクリプト
¥1,980(税込)
早稲田大学のティーチングアワード総長賞を受賞した講義を、実況のように収録した一冊。ルネサンスのブルネレスキから藤森照信まで、全12回で近代500年を駆け抜ける。第1部はルネサンスから産業革命、第2部はモダニズムの誕生と発展、第3部は日本に舞台を移し江戸時代の近代的萌芽を探る。語りの勢いで読ませるのが持ち味で、付録に近代建築家の生没年年表が付く。
こんな人におすすめ
建築史の講義を一度受けてみたかった人、江戸時代の近代的萌芽という意外な視点に惹かれる読者、様式の変遷を批評とともに味わいたい人。読んだら建築史が好きになる、と評される語りを追体験したい場面に向く。
良い点
- 講義をまるごと収録
- ルネサンスから現代まで
- 生没年年表の付録つき
気になる点
- 語り中心で図版は控えめ
- 網羅的な辞典にはならない
- 好みが分かれる語り口
出版社
インスクリプト
発売日
2020年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『実況・近代建築史講義』って、タイトルからして普通の教科書と違いますね。実況って、何が実況されているんですか。
佐藤メバル
早稲田大学の講義をそのまま収録した本で、ティーチングアワード総長賞を受賞した講義なんだ。始まりはルネサンス、ブルネレスキから、日本の藤森照信まで。
全12回で近代500年を駆け抜ける。第1部がルネサンスから産業革命まで、第2部がモダニズムの誕生と発展、第3部で日本に舞台を移して江戸時代の近代的萌芽を探る。
語り口の勢いで読ませるのが持ち味だよ。
橘ナナミ
江戸時代に近代の芽を探す、というのが意外です。近代建築って明治以降の輸入だと思い込んでいました。
佐藤メバル
そこがこの本の面白さ。読んだら建築史が好きになる、と紹介される講義らしく、様式の変遷と、建築家たちがどんな課題に応えてきたかを批評していく。
付録に近代建築家の生没年年表も付いている。対になる『実況・比較西洋建築史講義』と並べて読むと、視点の違いも楽しめるよ。

近代建築の歴史 1851-1945
ケネスフランプトン 著|エーディーエー・エディタ・トーキョー
¥3,520(税込)
19世紀に開花したモダニズム建築の歴史を俯瞰する、近代建築史の教科書の決定版。もともと建築雑誌の別冊として出た2冊を、写真を増補して合本したもの。タイトルにあるように1851年から1945年までを対象にしているので、モダニズムが生まれ変わる過程に焦点が絞られる。年号で切ることで、幅広い通史より輪郭がはっきり見える。読めば近代建築がわかる、と評される必携書だ。
こんな人におすすめ
作品名と年代がごちゃごちゃになる人、図版から入ってモダニズムを理解したい学生、通史を読む前後に時代の空気をつかみたい読者。眺めるだけでも元が取れるタイプの一冊として、手元に置いておきたい場面にも向く。
良い点
- 写真を増補した合本
- 1851-1945に絞った俯瞰
- 建築を学ぶ人の必携書
気になる点
- 分厚く持ち歩きにくい
- 現代建築は扱わない
- 通読には根気がいる
出版社
エーディーエー・エディタ・トーキョー
発売日
2019年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『近代建築の歴史 1851-1945』は、タイトルに年号が入っているのが気になります。1851年から1945年までって、ずいぶん範囲を絞っているんですね。
佐藤メバル
もともと建築雑誌の別冊として出た2冊を、写真を増補して一冊に合本したものなんだ。19世紀に開花したモダニズム建築の歴史を俯瞰する教科書の決定版とされていて、読めば近代建築がわかる、建築を学ぶ人の必携書という位置づけ。
年号で切ることで、モダニズムが生まれ変わる過程がはっきり見えてくる。
橘ナナミ
写真を増補して一冊にまとめた、という経緯があるんですね。元が雑誌の別冊というのは、図版の充実につながっていそうです。
佐藤メバル
そう、そこは大きな強みだね。年表や用語の暗記から入るより、まず図版でこの時代の建築はこう見えるという感覚を持つ。
そのうえで文章を読むと、頭に入り方がまったく違ってくる。分厚いけれど、眺めるだけでも元が取れるタイプの一冊だよ。

近代建築の歴史
レオナルドベネヴォロ 著|鹿島出版会
¥9,460(税込)
レオナルド・ベネヴォロによる『近代建築の歴史』。商品説明に目次がなく、ネットだけでは中身の輪郭がつかみにくいので、書店で目次と図版の入れ方を確かめてから決めるのが確実だ。そのうえで言えるのは、494ページという規模と鹿島出版会という版元から、手元に置いて引く資料として設計された一冊だろうということ。最初の一冊として頭から読むには骨が折れる。
こんな人におすすめ
通史を一冊読み切った人、名前が出てきた建築家や作品をその都度確かめたい読者、図書館で試してから自分の棚に迎えるかを決めたい人。通読より参照の場面で力を発揮する。厚みを前提に置き場所を考えてから買いたい。
良い点
- 494ページの規模
- 資料として長く使える
- 鹿島出版会の一冊
気になる点
- 通読には骨が折れる
- 最初の一冊には重い
- 目次を書店で確認したい
出版社
鹿島出版会
発売日
2004年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
レオナルド・ベネヴォロの『近代建築の歴史』は、494ページで価格もかなり高いんですね。商品説明に目次がなくて、中身が想像できないんですけど。
佐藤メバル
正直に言うと、ネットの説明だけでは中身の輪郭がつかみにくい本だね。だからこそ、書店で実際に開いて、目次と図版の入れ方、註の量を確かめてから決めるのがいい。
そのうえで言えるのは、494ページという規模と鹿島出版会という版元から、通読用というより手元に置いて引く資料として設計された一冊だろうということだよ。
橘ナナミ
なるほど、通読する本と、辞書みたいに使う本があるんですね。手元に置く前提だと、選び方も変わってきそうです。
佐藤メバル
そうそう。通史を一冊読み切ったあと、名前が出てきた建築家や作品をその都度確かめたい、という人に向いている。
逆に最初の一冊として頭から読むには、少し骨が折れるかもしれない。まずは図書館で試してから、自分の本棚に迎えるかを決めるのも手だよ。

近代建築理論全史1673-1968
H.F.マルグレイヴ 著|丸善出版
¥16,500(税込)
建築の作品史ではなく、建築について書かれた理論の歴史を扱う大著。17世紀後半に理論が整備され、アカデミーの中で説き明かされ、啓蒙運動の時代に公共の場へ飛び出し、19世紀の国家的アイデンティティの勃興と建築雑誌の普及で論説が拡大し、20世紀に近代建築理論として結実する。300年を一望する構成で、西洋的価値観の大変動期までを射程に入れる。
こんな人におすすめ
建築の言説やメディアの広がりに関心のある研究者、理論の側から近代建築を読み直したい人、参考文献として長く使いたい読者。分厚さを覚悟して手に取る場面に向く。まず目次で扱う範囲を確かめてから決めたい。
良い点
- 理論史に特化している
- 17世紀から1960年代まで
- 参照文献として強力
気になる点
- 950ページと重い
- 作品史は期待できない
- 気軽には買いにくい
出版社
丸善出版
発売日
2016年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『近代建築理論全史1673-1968』って、950ページですよね。これ、建築の作品の話じゃなくて、理論の歴史なんですか。
佐藤メバル
そこが肝心なところ。これは建物のカタログではなく、建築について書かれた理論の歴史なんだ。17世紀後半に理論が整備され、アカデミーの中で講義や論文を通じて説き明かされ、啓蒙運動の時代に公共の場へ飛び出し、19世紀の国家的アイデンティティの勃興と建築雑誌の普及で論説が拡大していく。
そして20世紀に近代建築理論として結実する。300年を一望する本だよ。
橘ナナミ
建築雑誌の普及が理論を広げた、というところが面白いです。メディア論をやっているので、そこはすごく気になります。
佐藤メバル
だったら君の研究にも近いかもしれないね。理論と近代という言葉が重要性を帯びるようになった時代から、西洋的価値観の大変動期である1960年代後半までを丁寧に説き明かしている。
分厚さは覚悟がいるけれど、参考文献として長く使える類の本だよ。

テキスト建築の20世紀
本田昌昭 著|学芸出版社
¥3,740(税込)
産業革命、近代的材料の発明と利用、建築家の誕生、革新的な建築運動、建築理論の発展。近代の建築史はその意味を変えながら現代につながっている。その20世紀の建築を理解する重要性を正面から受け止め、モダニズムの歴史と理論を一冊にまとめた大学生向けテキスト。現在を理解し、未来を考えるための土台をつくる、講義の予習復習に向いた構成だ。
こんな人におすすめ
大学の講義の予習復習をしたい学生、通史と理論書の間を埋めたい読者、近代建築の意味の変化を筋道立てて追いたい社会人。読み終えた後で専門書へ進む入口として使う場面に向く。まずは流れを一本通したい人に合う。
良い点
- 歴史と理論を一冊に
- 大学生向けに整理
- 専門書への入口になる
気になる点
- 図版の豪華さはない
- 通史の代わりにはならない
- 入門書の後に向く
出版社
学芸出版社
発売日
2009年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『テキスト建築の20世紀』は、大学生向けのテキストなんですね。産業革命から建築理論の発展までを、モダニズムの歴史と理論を1冊にまとめた、とあります。
佐藤メバル
そう。産業革命、近代的材料の発明と利用、建築家という職業の誕生、革新的な建築運動、建築理論の発展。近代の建築史は、その意味を大きく変えながら現代につながっている。
この本は、その20世紀の建築を理解する重要性を正面から受け止めて、歴史と理論を一冊にまとめた講義用のテキストなんだ。
現在を理解し、未来を考えるための土台になる。
橘ナナミ
歴史と理論を一冊に、というのが、理論だけの本とは違うところですね。授業の予習復習にも使いやすそうです。
佐藤メバル
うん、その使い方がいちばん合っている。通史と理論書の間を埋める役割で、読了後に理論研究の専門書へ進む入口にもなる。
ただ、大学生向けに絞ってあるぶん、写真や図版の豪華さを期待すると物足りないかもしれないね。

図説近代建築の系譜: 日本と西欧の空間表現を読む
大川三雄 著|彰国社
¥3,520(税込)
副題に日本と西欧の空間表現を読むとあるとおり、図と説を組み合わせて近代建築の系譜をたどる一冊。系譜という言葉が示すように、作品を並べるだけでなく、つながりや影響関係を追う視点が軸になる。図版を手がかりに自分で考える余地を残していて、眺める図集と文章の通史の中間に位置する。日本と西欧を表現の違いから見比べたい人に効く。
こんな人におすすめ
空間表現の違いに関心のある学生、西洋の流れと日本の受容を並べて見たい読者、図集では物足りず通史では重すぎる人。目次を確認して興味のある章から入る読み方にも向く。手元に置いて何度も開きたい人によい。
良い点
- 図と説を組み合わせている
- 系譜としてつながりを追う
- 日本と西欧を比較できる
気になる点
- どこから読むか迷いやすい
- 図集ほどの物量はない
- 通史の代わりにはならない
出版社
彰国社
発売日
1997年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『図説近代建築の系譜』は、副題に日本と西欧の空間表現を読むとあります。空間表現って、図面を見ながら読むんでしょうか。
佐藤メバル
タイトルと副題がそのままこの本の性格を示しているね。図と説で近代建築の系譜をたどりながら、日本と西欧の空間表現を読み解くという構成。
系譜という言葉が示すように、個々の作品を並べるだけでなく、つながりや影響関係を追う視点が軸になっている。
西洋の流れと日本の受容を、表現の違いから見比べたい人に向いているよ。
橘ナナミ
読む、という動詞が使われているのが印象的です。眺める図集ではなく、読み解く本なんですね。
佐藤メバル
そう捉えてもらっていいと思う。図集と通史の中間にあって、図版を手がかりに自分で考える余地を残している。
ただ、彰国社の他の図集や入門テキストと並べると、どこから読むかで迷う人も出る。目次を確認して、興味のある章から入るのがいいよ。

近代建築の系譜: 1900年以後 (上巻) (SDライブラリー 3)
W.J.R.カーティス 著|鹿島出版会
¥5,790(税込)
1900年以後を対象にした系譜の上巻。SDライブラリーというシリーズに収められ、タイトルが示すとおり系譜として並べる視点で近代建築を扱う。まず上巻で扱われる範囲をしっかり押さえ、続きが必要かどうかを判断する読み方が現実的だ。上下巻で構成される本は、上巻の範囲を確かめてから買い足すのが失敗しない選び方になる。
こんな人におすすめ
1900年以降の展開を整理したい人、シリーズで揃えて読み進めたい読者、上巻で扱う範囲を確かめてから続きを検討したい人。著者名で探すより棚を眺めたい場面や、書店で実際に開いてから決めたい人に向く。
良い点
- 1900年以後を対象
- SDライブラリーの一冊
- シリーズで探しやすい
気になる点
- 上巻のみでは完結しない
- 下巻の内容は要確認
- 通史の代わりにはならない
出版社
鹿島出版会
発売日
1990年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『近代建築の系譜 1900年以後(上巻)』は、上巻ということは下巻もあるんですよね。まず上巻だけ読んでも大丈夫なんでしょうか。
佐藤メバル
1900年以後を対象にした系譜の上巻、という位置づけだから、まずは上巻で扱われる時代をしっかり押さえるのがいい。
SDライブラリーというシリーズに入っている本で、系譜として並べるという視点がタイトルに表れている。
下巻の内容はここでは触れられないから、続きは実際に手に取って確かめてみてほしい。
橘ナナミ
シリーズの一冊として出ているんですね。同じ棚に並ぶ本と一緒に探すと、見つけやすそうです。
佐藤メバル
そう、シリーズで揃っていると書店でも探しやすい。著者の名前で探すより、SDライブラリーの棚を覗くほうが早いこともあるよ。
上巻で扱われる範囲を自分の関心と照らし合わせてから、続きを買い足すかどうか決めるのが失敗しないやり方だね。

近代建築史の陰に (上巻)
杉山英男 著|海青社
¥8,250(税込)
木質構造分野の発展に大きく寄与した著者が、晩年に建築技術誌へ連載した記事を集成した一冊。建築通史書が触れなかった部分や、木造建築物の被害調査に基づく耐震・防災・減災の考え方が語られる。表舞台に出ない技術の話を読めるのが何よりの持ち味で、デザイン史に飽き足らなくなった人の視界を広げる。図面や調査の話が中心なので、通史の合間に挟むと飽きがこない。
こんな人におすすめ
建物の壊れ方や耐え方に関心のある技術者、デザイン史とは別の角度から近代建築を見たい読者、被害調査や防災の考え方を知りたい人。連載の読み切りとして、興味のある章から拾う使い方にも向く。
良い点
- 通史が扱わない領域
- 木質構造の専門家が執筆
- 耐震・防災の視点がある
気になる点
- 連載の集成で筋が緩い
- 上下巻に分かれる
- 入門には向かない
出版社
海青社
発売日
2019年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『近代建築史の陰に』って、ちょっと物騒なタイトルですけど、木質構造の研究者の方が書いた本なんですね。
建築通史が触れなかった部分、と紹介されています。
佐藤メバル
そう、木質構造分野の発展に大きく寄与した著者が、晩年に建築技術誌に掲載した連載記事を集成したものなんだ。
建築通史書が触れなかった部分や、木造建築物の被害調査に基づく耐震・防災・減災の考え方が語られる。表舞台に出ない技術の話を読めるのが何よりの持ち味だね。
上下巻に分かれているから、まず上巻から。
橘ナナミ
陰に、という言葉が、通史では拾われない部分という意味なんですね。建物の見た目より、壊れ方や耐え方の話なんだ。
佐藤メバル
そのとおり。デザインの歴史に飽き足らなくなった人が読むと、視界がぐっと広がる。ただ連載の集成だから、通史のような一直線の物語を期待すると戸惑うかもしれない。
章ごとの読み切りとして、興味のある技術の話から拾うのがいいよ。

日本近代建築の歴史 (NHKブックス 300)
村松貞次郎 著|NHK出版
新書の教養シリーズから出た、日本近代建築史の一冊。西洋の流れを追う通史が多いなか、日本に絞って一冊で見渡せるのが特徴だ。持ち歩けるサイズなので、気になる建物を見に行く前に読み込む、旅先に持っていく、といった使い方もできる。細かい図面や註を求める本ではないと割り切れば、最初の一冊としてちょうどいい。
こんな人におすすめ
通勤や移動の合間に読みたい人、まず日本の近代建築から入りたい読者、分厚い専門書を開く前に流れをつかみたい人。建物を見に行く前の予習として携帯したい場面にも向く。新書の分量を前提に、次の一冊へつなげる読み方が合う。
良い点
- 新書サイズで持ち歩ける
- 日本に絞った通史
- 入門として取りつきやすい
気になる点
- 図面や註は少なめ
- 細部の深掘りは別書
- 西洋の流れは扱わない
出版社
NHK出版
発売日
1977年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
村松貞次郎さんの『日本近代建築の歴史』は、NHKブックスなんですね。新書サイズで249ページなら、通勤中にも読めそうです。
佐藤メバル
そう、新書の教養シリーズから出ている日本近代建築史の一冊。西洋の流れを追う通史が多いなかで、日本に絞って一冊で見渡せるのが特徴だね。
持ち歩けるサイズだから、建物を見に行く前に読んでおく、という使い方もできる。まず日本から入りたい人には取りつきやすい。
橘ナナミ
新書だと、分厚い専門書を開くハードルが高い日でも読めそうで安心です。旅先に持っていくのもよさそうですね。
佐藤メバル
いい使い方だと思う。ただし新書の分量だから、細かい図面や註を期待すると物足りない。深く掘りたくなったら、同じ日本近代の専門書に進む前提で読むと、ちょうどいい入り口になるよ。

日本近現代建築の歴史 明治維新から現代まで (講談社選書メチエ 746)
日埜直彦 著|講談社
¥2,750(税込)
明治維新から現在までの日本の建築史を、一筆書きで描き出す試み。第一部は明治維新から1970年代までを国家のための建築という役割から描き、第二部はその役割から解放された建築がどう拡散し、複雑な様相を呈するに至ったのかを追う。従来の建築史が1970年で終わりがちだったところを、バブル経済の時代や1990年代以降の展開まで含めて通覧する。150年を一冊で見渡せる。
こんな人におすすめ
戦後以降の日本の建築史を知りたい人、街の建物がなぜそうなっているのか考えたい読者、専門知識なしで通史を読みたい社会人。建築批評で定評のある著者の筆で読む場面に向く。読みごたえのある一冊として腰を据えたい。
良い点
- 1970年以降も含む
- 二部構成で現在まで
- 専門知識がなくても読める
気になる点
- 424ページと長い
- 作品解説は多くない
- 通読の覚悟が要る
出版社
講談社
発売日
2021年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
この本の紹介に、1970年までで終わるものがほとんどで、その後の時代を包含するものはない、って書いてあって。
日本の建築史の本って、戦後で終わっちゃうんですか。
佐藤メバル
そこを埋めにいったのがこの本だね。明治維新から現在までの日本の建築史を一筆書きで描く試みで、第一部が明治維新から1970年代まで、第二部が国家のための建築という役割から解放された後の拡散と複雑化を扱う。
バブル経済の時代、1990年代以降の展開と日本人建築家の国際的な活躍まで含む。150年を通覧する壮大なドラマだよ。
橘ナナミ
第一部と第二部で、建築の役割そのものが変わるんですね。国家のための建築、という言い方が刺さります。
佐藤メバル
建築批評でも定評のある著者が、専門知識を前提にせず、歴史的な建築物を並べるだけでもなく、それぞれの時代に何が求められ、何が考えられたのかを描いている。
街を歩きながら、これはなぜこうなっているんだろうと思ったことのある人にこそ読んでほしいね。424ページ、読みごたえは十分だよ。

日本の近代建築 上: 幕末・明治篇 (岩波新書 新赤版 308)
藤森照信 著|岩波書店
副題に幕末・明治篇とある、日本近代建築史の上巻。日本の近代建築が始まる場面を、新書のサイズでぐっと寄って見る構成だ。西洋から入ってきた建築が日本の中でどう受け止められ、形になっていったか。幕末から明治という短い期間に焦点を当てるからこそ、変化の速度が伝わってくる。続きは下巻に譲るとして、明治までをこの一冊で固める読み方が素直だ。
こんな人におすすめ
日本の近代建築の出発点を知りたい人、明治期の受容の過程をじっくり追いたい読者、新書で気軽に読み始めたい人。通史の前に、始まりだけを厚く読むという使い方もできる。上巻から順に読むのが素直な入り方だ。
良い点
- 幕末・明治に焦点
- 新書で読みやすい
- 始まりをじっくり追える
気になる点
- 明治より先は扱わない
- 下巻が別途必要
- 全体像は通史で補う
出版社
岩波書店
発売日
1993年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
藤森照信さんの『日本の近代建築 上』は、副題が幕末・明治篇で岩波新書ですね。上巻ということは、明治の途中でいったん区切られるんでしょうか。
佐藤メバル
副題が示すとおり、この上巻は幕末から明治にかけての時期を扱う。日本の近代建築が始まる場面を、新書のサイズでぐっと寄って見る構成だね。
西洋から入ってきた建築が、日本の中でどう受け止められ、形になっていったか。幕末・明治という短い期間に焦点を当てるからこそ、変化の速度が伝わってくる。
橘ナナミ
明治篇だけで一冊使うというのは、それだけこの時期に濃い出来事が詰まっているということですよね。
佐藤メバル
そう思う。日本近代建築の流れをざっと知るなら通史でもいいけれど、始まりの部分をじっくり味わいたいならこの本がいい。
続きは下巻に譲るとして、まず上巻で明治までを固める。読む順番としては素直で、失敗しにくいと思うよ。

日本の近代建築: その成立過程 (上) (SD選書 152)
稲垣栄三 著|鹿島出版会
副題どおり成立過程に重心を置いた、日本近代建築史の上巻。同じ日本近代建築でも、通史が流れを追うのに対し、こちらはどうやって成立したのかという問いを立てて過程をたどる。鹿島出版会のSD選書に収められ、古典的なテーマを扱うシリーズの一冊。上巻で扱われる範囲を押さえてから、必要なら続きへ進む読み方をすすめたい。
こんな人におすすめ
通史を一冊読んだ後の二冊目を探している人、成立のメカニズムに関心のある学生、SD選書の棚を眺めるのが好きな読者。図書館や書店で中身を確かめてから選びたい場面にも向く。
良い点
- 成立過程に焦点
- SD選書の一冊
- 通史との役割分担が明確
気になる点
- 前提知識が要る
- 上巻のみでは完結しない
- 入門には向かない
出版社
鹿島出版会
発売日
1979年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
稲垣栄三さんの『日本の近代建築:その成立過程(上)』はSD選書ですね。さっきの藤森さんの本と、どう違うんでしょう。
佐藤メバル
同じ日本近代建築を扱っていても、切り口が違う。こちらは副題どおり成立過程に重心がある。どうやって成立したのかという問いを立てて、上巻でその過程を追う構成だね。
鹿島出版会のSD選書は建築の古典的なテーマを扱うシリーズだから、通史を一通り読んだあとに、成立のメカニズムを確かめたい人が開くと収まりがいい。
橘ナナミ
なるほど。歴史ではなく成立過程という言葉を選んでいるあたりに、著者の力点があるんですね。上巻だけでも通読できますか。
佐藤メバル
上巻で扱われる範囲をまず押さえて、必要なら続きへ進む、という読み方でいいと思う。ただ、いきなりこの本から入ると、前提となる時代の流れが見えにくいかもしれない。
入門書を一冊読んだあとの二冊目、という位置づけが合っているよ。

近代日本建築運動史
本多昭一 著|ドメス出版
¥2,420(税込)
建物そのものではなく、建築をめぐって人が動いたまとまりを追う一冊。運動として捉え直すと、個人の作品集では見えない対立や連帯、時代の空気が見えてくる。日本近代の建築がどんな主張とともに進んだのかを追いかけたい人に向いていて、作品カタログに少し飽きてきた読者にこそ効く。日本近代建築の通史を一冊読んでから開くと、人物の関係がすっと入ってくる。
こんな人におすすめ
建築家どうしの関係や論争に興味がある人、作品集では物足りない読者、日本近代の建築がどんな主張とともに進んだかを知りたい人。通史を一冊読んだ後に関連づけて読む場面に向く。人物名を押さえてから開くと入りやすい。
良い点
- 運動という切り口
- 対立や連帯が見える
- 通史の補完になる
気になる点
- 前提知識が要る
- 図版は期待できない
- 入門には向かない
出版社
ドメス出版
発売日
2003年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『近代日本建築運動史』というタイトル、作品ではなく運動に注目しているのが珍しい気がします。建築の運動って、具体的に何を指すんでしょう。
佐藤メバル
建物そのものではなく、建築をめぐって人が動いたまとまりを追う本だね。運動として捉え直すと、個人の作品集では見えない対立や連帯、時代の空気が見えてくる。
ドメス出版から出ている254ページの一冊で、日本近代の建築がどんな主張とともに進んだのかを追いかけたい人に向いている。
作品カタログに少し飽きてきた人にこそ効くと思う。
橘ナナミ
なるほど。建築家が誰と組み、誰とぶつかったか、という話になるんですね。それは読み物として面白そうです。
佐藤メバル
そう。図面集を眺めるのとは別の満足感がある。ただ、前提となる人物や団体の名前を知らないと、途中で置いていかれる感じはあるかもしれない。
日本近代建築の通史を一冊読んでから開くと、ぐっと入りやすくなるよ。

思想としての日本近代建築
八束はじめ 著|岩波書店
日本近代建築を、様式や技術ではなく、その背後にある考え方の集まりとして捉え直す一冊。思想として読み解くという構えがタイトルに表れていて、扱う射程の広さが厚みに反映されている。通史を一冊読んで、その先のなぜそう考えられたのかまで踏み込みたい人に向く。読み物として軽く流す本ではなく、時間をかけて議論につきあう覚悟がいる。
こんな人におすすめ
通史の次に何を読むか迷っている人、建築と思想の関係を考えたい読者、日本近代を批評的に読み直したい学生。時間をかけて読み込みたい場面に向く。最初の一冊にはしないほうがいい。
良い点
- 思想から迫る視点
- 厚みのある議論
- 通史の次の一冊に
気になる点
- 644ページと重い
- 最初の一冊には不向き
- 前提知識が必要
出版社
岩波書店
発売日
2005年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『思想としての日本近代建築』は644ページ。岩波書店から出ているということもあって、かなり本格的な本に見えます。
佐藤メバル
そう、これは読み物というより思想として読み解く本だね。日本近代建築を、様式や技術ではなく、その背後にある考え方の集まりとして捉え直す。
644ページという厚みが、扱う射程の広さをそのまま表している。日本近代建築の通史を一冊読んで、その先のなぜそう考えられたのかまで踏み込みたい人向けだよ。
橘ナナミ
通史を読んだだけだと、建物の名前と年号が並んで終わってしまう感じがあって。そういう読者には良さそうですね。
佐藤メバル
まさにその層に向いている。ただ、最初の一冊にすると、前提となる出来事や人物がわからずに苦しくなる。新書で流れをつかんでから挑む、という順番を強くすすめるよ。
時間はかかるけれど、読み終えた後の景色は変わる。
![ゼロからはじめる[近代建築]入門](https://img.shelf-y.com/items/15817.jpg)
ゼロからはじめる[近代建築]入門
原口秀昭 著|彰国社
¥3,025(税込)
ゼロからはじめるシリーズの一冊で、19世紀の黎明期からモダニズム、ポストモダンまでを概観する入門書。新古典主義、鉄骨造、オフィスビル、鉄筋コンクリート造、イギリスとアメリカの住宅、ライト、ミース、ル・コルビュジエとその影響、という章立てで、空間構成や建築家の思想をユニークなイラストでビジュアルに紹介する。技術とデザインを行き来しながら読める。
こんな人におすすめ
建築の予備知識がまったくない人、まず挫折しない一冊から始めたい読者、工学系の視点とデザインの話を同時に知りたい学生。細かい年表が欲しくなったら別書に進む前提で読む場面に向く。
良い点
- イラストで理解しやすい
- 19世紀からポストモダンまで
- 技術とデザインを横断
気になる点
- 写真で見たくなる
- 年表や註は少なめ
- 深掘りには別書が必要
出版社
彰国社
発売日
2023年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『ゼロからはじめる[近代建築]入門』、タイトルにゼロからと入っているのが安心できます。空間構成や建築家の思想をイラストで紹介するんですよね。
佐藤メバル
そう、このシリーズの17冊目で、19世紀の黎明期からモダニズム、さらにポストモダンまでを概観する。新古典主義、鉄骨造、オフィスビル、鉄筋コンクリート造、イギリスとアメリカの住宅、ライトの住宅、ミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジエとその影響、という章立てで、空間構成や建築家の思想をユニークなイラストでビジュアルに紹介していく。
橘ナナミ
建築家の名前を覚える前に、まず仕組みから入れるんですね。鉄骨造、鉄筋コンクリート造という章の切り方が、工学っぽくて新鮮です。
佐藤メバル
そこが強みでね。デザインの話と技術の話を分けずに、行き来しながら読める。ただ、イラスト中心だから写真で実物を見たくなるし、細かい年表や註が欲しくなったら別の本が必要になる。
最初の一冊を挫折しないことを優先するなら、これがいいと思うよ。

日本の近代建築ベスト50 (新潮新書)
小川格 著|新潮社
¥6(税込)
現存するモダニズム建築の傑作を50選び、豊富な写真とエピソードで徹底解説する新書。建築は時代と人々を映す鏡である、という視点で貫かれていて、読んでから出かけると街の見え方が変わる。網羅するためではなく選び抜くための50という数なので、通史で全体を押さえたうえで散歩のお供にする使い方が合う。実際に足を運べる建物ばかりだ。
こんな人におすすめ
週末に街歩きをしながら建築を見たい人、写真とエピソードで近代建築に親しみたい読者、通史の次に具体的な建物を知りたい人。新書サイズなので持ち歩きのお供にも向く。現存する建物を実際に見に行く予定のある人によい。
良い点
- 現存する50の傑作
- 写真とエピソードが豊富
- 持ち歩ける新書サイズ
気になる点
- 載らない建物もある
- 通史の代わりにはならない
- 現地に行く前提の本
出版社
新潮社
発売日
2022年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『日本の近代建築ベスト50』、新潮新書で、すぐ見に行ける傑作選と書いてあります。現存するモダニズム建築を50選んでいるんですね。
佐藤メバル
そう、そのすぐ見に行ける、というのがこの本の価値。現存するモダニズム建築の傑作を50選んで、豊富な写真とエピソードで解説している。
建築は時代と人々を映す鏡である、という視点で貫かれているから、建物の写真を見ながらその時代の空気まで受け取れる。
読んでから出かけると、街の見え方が変わるよ。
橘ナナミ
新書で写真が豊富というのは、持ち歩きにもよさそうです。週末にこれを見ながら街を歩くのは楽しそうですね。
佐藤メバル
その使い方がいちばん合っている。50という数は、網羅するためではなく選び抜くための数だから、載っていない建物もある。
通史で全体を押さえたうえで、この本を散歩のお供にする、という組み合わせがおすすめだよ。

画文でわかる モダニズム建築とは何か
藤森照信 著|彰国社
¥2,090(税込)
藤森照信のモダニズム建築論を、宮沢洋のイラストとともに学ぶ入門書。世界中の都市に鉄とガラスとコンクリートの四角い箱が立ち並ぶのはなぜか、という素朴な問いから始まり、歴史主義建築が席巻した19世紀から一転、インターナショナル・スタイルがどう生まれ世界に広がったのかを追う。素朴な疑問を入口にした構成で、日本の伝統とモダニズムの関係まで触れる。
こんな人におすすめ
街の四角いビルに一度でも疑問を持った人、イラストで気軽にモダニズムの全体像をつかみたい読者、理論書の前の肩慣らしが欲しい学生。短い章立てで読み切れる入門を探す場面に向く。
良い点
- イラストで読みやすい
- 素朴な問いから始まる
- 短い章立てで完結
気になる点
- 128ページと短い
- 専門的な深掘りはない
- 写真資料は別書で
出版社
彰国社
発売日
2022年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『画文でわかる モダニズム建築とは何か』。藤森照信さんの文章を宮沢洋さんがイラストで描く、とあります。画文って、聞き慣れない言葉です。
佐藤メバル
文字と絵を組にして読ませる、という意味合いだね。テーマははっきりしていて、世界中の都市に鉄とガラスとコンクリートの四角い箱が立ち並ぶのはなぜか、という問いから始まる。
歴史主義建築が席巻した19世紀から一転、インターナショナル・スタイルがどう生まれ、世界に広がったのか。
素朴な疑問を入口に、モダニズムの謎に迫る入門書だよ。
橘ナナミ
なぜ四角い箱ばかりなのか、って、言われてみれば誰でも一度は思うのに、正面から説明されたことがなかったです。
佐藤メバル
そういう問いに答えてくれる本は少ない。第1章から第3章までと補講2本という短い構成で、日本の伝統とモダニズムの関係まで触れる。
128ページで読み切れるから、難しい理論書の前の肩慣らしにもちょうどいい。イラストのおかげで、頭の中で図が動く感じがするよ。

建築モダニズム講義
三沢浩 著|王国社
三沢浩による講義と題されたモダニズム建築の一冊。書名から細部までは見えてこないので、書店で目次と書き出しを確かめてから決めるのが確実だ。ただ講義という言葉を選んでいる以上、語り下ろしのように読ませる形を想定した本である可能性が高い。187ページという長さも、通読を前提にした講義の分量だと考えられる。
こんな人におすすめ
理論書より語りで入りたい人、モダニズムを講義形式で学びたい読者、書店で実際に開いて選びたい人。同じモダニズムを冠する本と並べて、自分に合うほうを選ぶ場面に向く。手に取って確かめることを惜しまない人によい。
良い点
- 講義形式の一冊
- 短めで通読しやすい
- 語りで入るモダニズム論
気になる点
- 中身は書店で要確認
- 図版の量は不明
- 網羅的な通史ではない
出版社
王国社
発売日
2014年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
三沢浩さんの『建築モダニズム講義』は、王国社という出版社で187ページ。タイトルだけだと、どんな講義なのか想像がつかないんですね。
佐藤メバル
ここは正直に言うと、書名からは中身の細部までは見えてこない。ただ講義という言葉を選んでいる以上、語り下ろしのように読ませる形を想定した一冊である可能性が高い。
187ページという長さも、通読を前提にした講義の分量だね。実際の手触りは、書店で目次と書き出しを確かめてから決めるのが確実だよ。
橘ナナミ
タイトルだけで判断しないで、目次を見てから決める。書店でやるべきことを思い出しました。明日、仕事の帰りに見てきます。
佐藤メバル
いいね、その姿勢が助かる。同じモダニズムを冠する本でも、理論から入るものと講義の語りで入るものでは読み味が違う。
並べて開いて、自分の頭にすっと入るほうを選べばいい。そうやって選んだ本のほうが、最後まで読み切れるものだよ。

建築モダニズム: 近代生活の夢とかたち
大川三雄 著|エクスナレッジ
モダニズムを様式名としてではなく、近代の暮らしの夢と形として捉え直そうとする一冊。副題の近代生活の夢とかたちがそのまま狙いを示している。同じ著者の図説本が空間表現を扱っていたのに対し、こちらは生活の側からモダニズムに迫る。キッチンや家具、住まい方の変化と建築が結びついて見えてくる。通史で年号を追うだけでは残らなかったものが残る。
こんな人におすすめ
建物の形より暮らしの変化に関心がある人、生活史と建築を結びつけて考えたい読者、図版を眺めながら読み進めたい人。体系的な教科書ではなく読み物として味わう場面に向く。インテリアや住まいに関心のある人にも。
良い点
- 生活の側から迫る
- 副題どおりの切り口
- 図版を見ながら読める
気になる点
- 教科書にはならない
- 通史の代わりにはならない
- 深掘りには別書が必要
出版社
エクスナレッジ
発売日
2001年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
大川三雄さんの『建築モダニズム: 近代生活の夢とかたち』。副題に近代生活と入っているのが、建築の本なのに生活の話から始まるようで気になります。
佐藤メバル
そこがこの本の入口だね。モダニズムを様式名としてではなく、近代の暮らしの夢と形として捉え直そうとしている。
同じ著者の図説本が空間表現を扱っていたのに対し、こちらは生活の側からモダニズムに迫る一冊だ。エクスナレッジからの254ページで、図版も見ながら読み進められるつくりだよ。
橘ナナミ
建築の本なのに、暮らしや夢の話が出てくるのは面白いです。建物を見る目も変わりそうです。
佐藤メバル
そう、そこが効く。キッチンや家具、住まい方の変化と建築が結びついて見えてくるから、通史で年号を追うだけでは残らなかったものが残る。
ただ、体系的な教科書として使うより、読み物として味わう本だと考えたほうがいいね。

近代建築のコンテクスト: いま、モダニズムへの回帰のとき
北村隆夫 著|彰国社
¥6,313(税込)
近代建築を過去の様式史としてではなく、コンテクスト=文脈の中で捉え直し、いまモダニズムをもう一度読み返す意味を問う一冊。副題にいま、モダニズムへの回帰のときとあるとおり、現在とのつながりが軸になっている。通史を一冊読み終えた人が、それで今の建築はどこから来たのかを考えたいときに開く本で、読後感は重いが味わい深い。
こんな人におすすめ
通史を読んだ後に現在を考えたい人、モダニズムと現代の関係を問い直したい読者、厚い本に腰を据えて向き合いたい人。彰国社の本を並べて読んできた人の締めくくりにも向く。通史の後に開く一冊として。
良い点
- 文脈から捉え直す視点
- 現在への回帰を問う
- 厚みのある論考
気になる点
- 538ページと長い
- 入門には向かない
- 通史の後が前提
出版社
彰国社
発売日
1999年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
最後の一冊、北村隆夫さんの『近代建築のコンテクスト』は538ページ。副題にいま、モダニズムへの回帰のときとあって、現在とつながる話なんですね。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の狙いだね。近代建築を過去の様式史としてではなく、コンテクスト=文脈の中で捉え直し、いまモダニズムをもう一度読み返す意味を問うている。
538ページと厚いけれど、通史を一冊読み終えた人が、それで今の建築はどこから来たのかを考えたいときに開く本だよ。
橘ナナミ
並べてみて、通史、図集、入門、思想史、技術史と、全然違う入口があることがわかりました。最初の一冊を選ぶのがいちばん難しいですね。
佐藤メバル
いいまとめだね。選び方は簡単で、まず薄い入門か新書で流れをつかむ。次に自分の関心に合わせて、図集なら図版、思想史なら議論、技術なら現場の話へ進む。
良書かどうかは、その本が誰の、どんな場面に効くかで決まる。今日並べた本も、そうやって選んでほしい。
近代建築史の「範囲」はどこからどこまでか
橘ナナミ
そもそも「近代建築史」って、どの範囲を指すんですか? 教科書によって始まりがバラバラな気がして。
佐藤メバル
そこが最初のつまずきだね。日本建築学会『近代建築史図集』は、1760年代から1830年代にイギリスで起きた産業革命のあたりから1970年前後までを扱っている。一方で桐敷真次郎『近代建築史』は18世紀から20世紀末まで。H.F.マルグレイヴ『近代建築理論全史1673-1968』にいたっては1673年から1968年までと、理論の始まりを17世紀に置いている。
橘ナナミ
中谷礼仁『実況・近代建築史講義』はルネサンスから始まっていましたよね。
佐藤メバル
そう、近代の始まりをルネサンスに置く立場。だから「どの本が正しいか」を争わせるのではなく、「その本がどこを近代の起点に置いているか」を意識して読むといい。ケネス・フランプトン『近代建築の歴史 1851-1945』が1851年から1945年までに対象を絞っているのも、同じ判断の表れだよ。範囲が違えば、同じ時代の見え方も変わる。
モダニズムからポストモダンへ — 運動と学派のつながり
橘ナナミ
未来派、構成主義、デ・ステイル、バウハウス……名前だけは聞いたことがありますが、関係がごちゃごちゃです。
佐藤メバル
ここは年表で並べるより「誰が誰に影響したか」で追うほうが頭に入る。石田潤一郎『近代建築史』は、前衛の運動として未来派・ロシア構成主義・デ・ステイルを並べ、表現主義、アメリカにおける近代建築の形成、近代主義の成立、そしてポスト・モダンまでを一冊でつなぐ。『近代建築史図集』も、未来派からバウハウス、CIAM、国際建築の普及、アール・デコという順で運動を追える。
橘ナナミ
日本側の運動は、どうつながるんですか?
佐藤メバル
本多昭一『近代日本建築運動史』がその役割を担う。西洋の運動を受け止めた側の記録だから、西洋史と日本史を同じ章立てで重ねて読むと、受容のズレが見えてくる。八束はじめ『思想としての日本近代建築』まで進むと、運動ではなく思想の層で日本近代を捉え直せる。
絶版・高額本の入手戦略と、読書を現地訪問につなげる
橘ナナミ
気になる本が絶版だったり、値段が高かったりするんですが……。
佐藤メバル
三つを使い分けよう。まず図書館。大型の図集や理論史は蔵書になっていることが多い。次に電子。そして中古。手元に置く価値があると確信してから買う、が鉄板だよ。
橘ナナミ
翻訳書は版の違いもありそうです。
佐藤メバル
そこは要注意。たとえばフランプトンの『近代建築の歴史 1851-1945』は、1981年と1983年に別冊として出た2冊に写真を増補して合本したもの。中谷礼仁の講義本も、版を重ねた内容をそのまま継続刊行している。書名が同じでも訳者・版・増補の有無で中身が変わるから、奥付は必ず見て。杉山英男『近代建築史の陰に』のように上下巻に分かれる本は、巻の確認も忘れずにね。
橘ナナミ
読んだあと、街の見え方も変わりそうですね。
佐藤メバル
そこが本題だよ。小川格『日本の近代建築ベスト50』は「すぐ見に行ける」傑作選として、現存するモダニズム建築を写真とエピソードで解説している。読み終えたら現地へ、現地から帰ったら図集へ。この往復が、近代建築史のいちばん楽しい学び方なんだ。
よくある質問
近代建築史はまず何から読めばいいですか?
橘ナナミ
近代建築史はまず何から読めばいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
まずは通史を一冊、最後まで読むこと。石田潤一郎『近代建築史』や藤岡洋保『近代建築史』が入口になります。文章が重く感じたら、原口秀昭『ゼロからはじめる[近代建築]入門』や藤森照信『画文でわかる モダニズム建築とは何か』で全体像をつかんでから戻ると挫折しにくいです。一冊を読み切ることを最優先にしてください。
西洋建築史と日本建築史はどちらから学ぶべきですか?
橘ナナミ
西洋建築史と日本建築史はどちらから学ぶべきですかについて教えてください。
佐藤メバル
並行して学ぶのがおすすめです。藤岡洋保『近代建築史』は欧米編・日本編の二部構成なので、一冊の中で行き来できます。日本の側を通しで追いたいなら、日埜直彦『日本近現代建築の歴史』が明治維新から現代までを一筆書きで描いています。同じ時間軸に置くのが要点です。
難しくて挫折しそうなときはどの本に戻ればいいですか?
橘ナナミ
難しくて挫折しそうなときはどの本に戻ればいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
藤森照信『画文でわかる モダニズム建築とは何か』は、藤森照信のモダニズム建築論を宮沢洋のイラストとともに学べる入門書です。原口秀昭『ゼロからはじめる[近代建築]入門』もユニークなイラストで空間構成と建築家の思想を紹介しています。戻る場所をあらかじめ決めておくと安心です。
一級建築士試験や大学の講義にも役立つ本はありますか?
橘ナナミ
一級建築士試験や大学の講義にも役立つ本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
桐敷真次郎『近代建築史』は演習問題・参考図書・詳細な索引を備えた入門テキストで、確認作業に向きます。日本建築学会『近代建築史図集』は定番教材として長く使われてきた図集。藤岡洋保『近代建築史』も写真を多数のせたテキストです。用語と年表を引き直せる一冊を持っておくと講義の理解が安定します。
絶版・高額な本はどうやって入手すればいいですか?
橘ナナミ
絶版・高額な本はどうやって入手すればいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
図書館 → 電子 → 中古の順で探すのが現実的です。大型の理論史や図集は図書館の蔵書になっていることが多く、まず中身を確認できます。杉山英男『近代建築史の陰に』のように上下巻に分かれる本は巻の確認を。買う前に中身を確かめる、これが高額本で失敗しないコツです。
図鑑系の本と通史の本はどう使い分ければいいですか?
橘ナナミ
図鑑系の本と通史の本はどう使い分ければいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
通史は「読む」、図鑑は「引く」と覚えてください。日本建築学会『近代建築史図集』や大川三雄『図説近代建築の系譜』は、作品や運動を確認する参照用に向きます。まず通史で流れをつかみ、気になった作品を図鑑で開く。この順番だと、図版が単なる絵ではなく背景つきで見えてきます。
電子書籍でも近代建築史の学習はできますか?
橘ナナミ
電子書籍でも近代建築史の学習はできますかについて教えてください。
佐藤メバル
文字中心の通史や論考なら電子でも十分学べます。ただし図集や図説は、図版の大きさとレイアウトが理解に直結するので、紙のほうが有利な場面もあります。藤岡洋保『近代建築史』のように写真をのせて視覚的に理解できるよう構成したテキストは、手元の紙と電子を使い分けると効果的です。
建築の知識がない人でも読める入門書はありますか?
橘ナナミ
建築の知識がない人でも読める入門書はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
原口秀昭『ゼロからはじめる[近代建築]入門』は19世紀の黎明期からモダニズム、ポストモダンまでをイラストで概観できます。藤森照信『画文でわかる モダニズム建築とは何か』、小川格『日本の近代建築ベスト50』も入口に向きます。入門書は「わからない前提」で書かれているので、遠慮なく最初の一冊にしてください。
まとめ
橘ナナミ
佐藤さん、今日の話を聞いて、最初に読む一冊が決まった気がします。
佐藤メバル
それは何より。ただ、一冊で終わらせなくていい。通史で骨格を作り、図鑑で肉をつけ、論考で思想を入れ、最後に現地で確かめる。この順番なら、途中で分からなくなっても必ず戻る場所がある。
橘ナナミ
戻る場所があるって、安心ですね。私、いきなり分厚い理論史に挑んで心が折れる未来が見えていました。
佐藤メバル
その失敗、僕も書店員時代にやりましたよ。大型本を抱えて帰って、三日で棚の飾りになった。だから今は、まず薄い入門を一冊、と伝えている。
橘ナナミ
では最後に、この記事を読んでいる人へ一言お願いします。
佐藤メバル
近代建築史の本棚は、一度建てたら終わりの建物じゃない。通史という基礎を打ち、図鑑で窓をはめ、論考で柱を足し、街を歩くたびに増築と改修を繰り返していく——そういう、竣工のない建物なんだよ。
