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丕緒の鳥
上級者

【要約・書評】『丕緒の鳥』の評判・おすすめポイント

小野不由美|新潮社|2013-06-25|352ページ

4.5
(4件)

この本を一言で言うと

王の物語を下から見上げる——市井の人々の視点で描かれた十二国記の深化

この本の概要

十二国記シリーズ初の短編集。王でも仙でもなく、国の礼を整える官吏・親を亡くした職人・動物を愛する女官など、市井に生きる人々を主役にした4篇を収録。 新潮社移籍後に刊行された作品で、2000年代のブランクを経て帰ってきた小野不由美が新たな視点から十二国記の世界を描き直した作品集。本シリーズを読み込んだ読者ほど味わい深い。 「丕緒の鳥」「落照の獄」「青条の蘭」「風信」の4篇を収録。それぞれが独立した物語でありながら、十二国記の世界観の奥行きを大きく広げる。 冒険やアクションは一切なく、本物のファンタジーが持つ哲学的な深さを体現した作品集。「異世界転生ものとは一線を画す、本物のファンタジー」という評を多数得ている。

ファンタジーってこういう深さが出せるんだ、と改めて思った

十二国記シリーズを全部読んでいる人間として、この1冊の位置づけが特殊だというのは最初から分かっていた。主役が王でも麒麟でもなく、普通の官吏や職人だから。 「丕緒の鳥」は礼を整える官吏が主人公で、「落照の獄」は徐々に崩れていく国で死刑の執行を迷う官吏が主役。「青条の蘭」は薬草を愛する女の話。「風信」は信頼する主君に反逆するかもしれない噂に揺れる家臣の話。全部、地味といえば地味。 でもこれが面白い。というか、シリーズを読んできた人間には刺さりすぎる。十二国記って王が動いて世界が変わるイメージがあるけど、実際に世界を動かしているのは名もない人たちで、その人たちが何を信じてどう生きているかを初めてちゃんと描いたのがこの作品集だから。 「落照の獄」は特にすごい。崩れていく国の中で、法律は法律として守るべきか、それとも目の前の人間としての判断を優先すべきか。答えがない問いを淡々と描くんだけど、読後感が重くて長く引きずった。 日本のファンタジー、こんなに哲学的なことができるんだな、というのが正直な感想。ライトノベル的な面白さを求めて読むと肩透かしかもしれないけど、十二国記という世界の深さを最大限に堪能したい人には必読。

十二国記を全巻読んだ社会人・30代男性

この本で学べること

十二国記初の短編集・市井の人々が主役

王や麒麟ではなく、職人・官吏・女官など名もない市井の人々を主役にした4篇を収録。シリーズの世界観に奥行きをもたらす。

小野不由美のブランクを経た新境地

2000年代のブランクを経て新潮社から刊行した作品集。より成熟した視点で十二国記の世界を描き直した意欲作。

冒険なしの純粋なファンタジー

バトルも異世界転生もなく、人が何を信じて生きるかを問い続ける哲学的な4篇。「本物のファンタジー」と評される。

「落照の獄」は十二国記屈指の名篇

崩壊していく国で法の番人として揺れ続ける官吏の物語。十二国記の中でも特に哲学的な深みがある篇として高く評価される。

本の目次

  1. 1丕緒の鳥
  2. 2落照の獄
  3. 3青条の蘭
  4. 4風信

良い点・気になる点

良い点

  • 十二国記の世界観に新たな奥行きを加える
  • 市井の視点から描くことで共感しやすいキャラクター
  • 哲学的な深みがあり読後も長く考えさせられる
  • 短編集なので1篇ずつ読み進められる

気になる点

  • シリーズ未読だと世界観の理解が浅く感じられる
  • 冒険や爽快感を求める読者には合わない

みんなの評判・口コミ

5.0

「落照の獄」だけでも読む価値があります。崩れていく国の中で、法と人情の間で揺れる官吏の苦悩が圧倒的で。答えのない問いを突き付けてくる感じが、シリーズの中でも別格だと思う。

4.5

十二国記を全部読んでからだと染み方が全然違う。王が動かす世界じゃなくて、名もない人たちが支えている世界の話。ファンタジー世界のリアリティがここにある。

4.0

本物のファンタジーってこういうことなんだな、と改めて実感しました。派手さはゼロだけど、読後に長く引きずる重さがある。特に「落照の獄」。

4.0

市井の人々の目線で描かれることで、十二国記の世界がより立体的になる。シリーズへの入口としては向かないけど、深めるには最適な1冊。

著者について

こんな人におすすめ

十二国記シリーズを読み込んでいる人

王や英雄でなく市井の視点から描くファンタジーが好きな人

哲学的な深みのある読書体験を求めている人

関連書籍との比較

タイトル著者レベル評価価格
月の影 影の海小野不由美中級者★★★★★ 4.5¥693
精霊の守り人上橋菜穂子中級者★★★★★ 4.5¥825
鹿の王上橋菜穂子上級者★★★★★ 4.5¥1,207

よくある質問

Q. 十二国記を読んでいなくても楽しめますか?
A. 世界観を知らないと登場人物の状況や制度への理解が薄くなります。シリーズの他の作品を先に読むことを強くおすすめします。
Q. 4篇の中でどれが一番おすすめですか?
A. 「落照の獄」が圧倒的な評価を受けています。崩れゆく国の中で死刑執行の是非を迷う官吏の物語で、十二国記屈指の哲学的な篇として知られています。
Q. 長編と短編、どちらが先に読むべきですか?
A. 長編(月の影・風の万里など)を先に読んでから本作を読む方が、世界観の理解が深まります。本作はシリーズの「深化版」として位置づけると理解しやすいです。