大学生小説感動本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年8月
橘ナナミ
佐藤さん、大学生向けの感動小説っていろいろありますよね。読書好きの友人に「何を読めばいい?」って聞かれたんですが、うまく答えられなくて。
佐藤メバル
いい質問だね。「感動」にも質の違いがあるんだ。じんわり沁みるタイプ、どんでん返しに驚かされるタイプ、切なさで胸が締め付けられるタイプ、前向きな気持ちになれるタイプ——。今の自分がどんな感動を求めているかで、選ぶ本は変わるよ。
橘ナナミ
なるほど、感動に種類があったんですね!じゃあ大学生が本を選ぶときのポイントを教えてください。
佐藤メバル
まず「読了時間」と「テーマ」を押さえよう。大学生は授業やサークルで忙しいから、短編集なら1〜2時間で読み切れる。テーマは家族・恋愛・友情・進路あたりが、今の年代に響きやすいね。
大学生小説感動本の選び方
感動のタイプで選ぶ
橘ナナミ
タイプはどう見分ければいいですか?
佐藤メバル
たとえば「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」は連作短編集で、読後にじわりと余韻が残る余韻型。「今夜、世界からこの恋が消えても」は前向性健忘のヒロインの秘密が明かされる衝撃型だね。帯やあらすじの言葉から判断するのも手だよ。
読了までの時間で選ぶ
橘ナナミ
ページ数の目安はありますか?
佐藤メバル
「老人と海」は168ページの中編で1〜2時間、「あと少し、もう少し」は368ページだから数日かけて味わうのがおすすめ。「52ヘルツのクジラたち」は長編だけど、物語に引き込まれて一気に読める作品だよ。
テーマで選ぶ
橘ナナミ
大学生に人気のテーマは何ですか?
佐藤メバル
「家族」ならひきこもりの青年が祖母との生活で再生する「生きるぼくら」、「恋愛」なら「余命10年」や「桜のような僕の恋人」、「友情」なら駅伝を描く「あと少し、もう少し」が定番。戦争を扱った「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」も、平和について考えるきっかけになるよ。
形式で選ぶ
橘ナナミ
小説とライトノベルって何が違うんですか?
佐藤メバル
読みやすさ重視なら、電撃小説大賞受賞の「今夜、世界からこの恋が消えても」のようなライトノベル系が入り口にしやすい。純文学の短編集を読んでみたい人には「文豪たちが書いた 泣ける名作短編集」が最適だね。
入手方法で選ぶ
橘ナナミ
お金をかけずに読むには?
佐藤メバル
大学や公共の図書館の蔵書検索(OPAC)で探すのが一番。電子書籍なら場所を取らずにすぐ買えるし、古本なら数百円で手に入ることもある。「ぼくは青くて透明で」は272ページの文庫で、図書館にも置かれやすい作品だよ。
面白さの保証で選ぶ
橘ナナミ
失敗しない選び方はありますか?
佐藤メバル
文学賞や映画化はひとつの指標になる。「犬がいた季節」は本屋大賞第3位、「52ヘルツのクジラたち」は本屋大賞第1位。「少年と犬」は直木賞受賞で2025年に映画化も決定している。多くの読者が選んだ作品は、外れにくいんだよ。
大学生小説感動本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
大学生小説感動本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

ぼくは青くて透明で (文春文庫)
窪美澄 著|文藝春秋
¥880(税込)
血のつながらない母と暮らす「ぼく」。実の母も父もどこかへ行ってしまい、誰かを好きになるのが怖いような、それでも誰かに届けたいような思春期の揺れが繊細に描かれます。物語の核は、優等生の「彼」に出会い、抑えていた気持ちが少しずつあふれ出していく過程。ここでの読みどころは、「家族」と「好き」が絡まり合いながらほどけていく瞬間のリアリティです。派手な事件が起きるわけではないけれど、だからこそ読んだあと自分の記憶や人間関係と重ねてしまいます。
こんな人におすすめ
親や家族に複雑な思いを抱えながら生きる人、静かな心理描写が好きな人に。「いい家族」の呪縛から自由になりたいと感じたことがあるほど、主人公の眼差しに共感できるはず。電車の中でも読みやすい文庫サイズです。
良い点
- 血のつながらない親子の微妙な距離感
- 思春期の揺れる心情が繊細に描かれる
- 派手でなく余韻に浸れる物語
気になる点
- 展開が静かで派手さはない
- 感情を言葉にしない主人公にじれっとするかも
- 重いテーマを覚悟して読むと良い
出版社
文藝春秋
発売日
2026年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
最初のあらすじに「血の繋がらない母」とあって、普通の親子像とどう違うのか気になりました。この本では、親子ってどんなふうに描かれているんですか?
佐藤メバル
いい質問ですね。この小説の主人公は母と二人暮らしですが、血が繋がっていないからといって特別に距離があるわけではないんですよ。
むしろ「尽くしたい気持ち」と「縛られたくない気持ち」の間で揺れる、思春期ならではの身勝手さが丁寧に描かれます。
「家族だから好き」ではなく、好きになった相手がたまたま家族だったという関係が浮かび上がってくるところが窪美澄氏らしいと思います。
橘ナナミ
実の父も母もどこかに行った、っていうのが胸に刺さります。主人公はその寂しさをどう抱えているのでしょう?
佐藤メバル
寂しさを正面から訴えるのではなく、優等生の彼に対する「あふれる思い」として出てくるんですね。だからこそ、感情を言葉にしない主人公の佇まいに、読み手は自分の経験を重ねやすいんだと思います。
電車の中で読んで、不意に泣きそうになった記憶がある一冊です。

また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)
住野よる 著|双葉社
¥723(税込)
住野よる氏が「君の膵臓をたべたい」の次に放った物語。友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生、「アバズレ」と罵られる女性、静かに余生を送る老女。立場も年齢も違う彼女たちがそれぞれに問いかけるのは、同じ「幸せ」の在り方です。読みどころは、「今がうまくいかない」と感じながら生きる人たちの心が、別の誰かを思いやることでほどけていく過程。読んでいるうちに「やり直したい」と思っていた自分の過去も、少しだけ優しく見られるようになります。
こんな人におすすめ
「過去をやり直したい」と思う瞬間がある人、他人に理解されない孤独を抱える人に。自分だけの幸せの形が見つからないと感じているとき、そっと背中を押してくれます。複数の視点が交差する構成も読みどころです。
良い点
- 住野よるの透明感ある文体が楽しめる
- 複数の視点から幸せを考えられる
- 「やり直したい」に寄り添う優しさ
気になる点
- ファンタジー要素は少なめ
- 展開が静かで重い部分もある
- 前作との違いを期待すると戸惑うかも
出版社
双葉社
発売日
2018年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
タイトルの『また、同じ夢を見ていた』がすごく気になります。同じ夢って何だろう、と思って。彼女たちはどんな夢を見るんですか?
佐藤メバル
これはですね、登場人物たちはみんな「幸せになりたい」と願いながら、その定義に縛られている話なんです。
友達がいない少女は「友達がいる私」を夢見、リストカットをする女子高生も、アバズレと呼ばれる女性も、自分なりの幸せを探している。
でも夢を見るのは眠っているときだけじゃない。目を開けている間も、人は誰かの夢に生きているんですね。その仕掛けが後半で効いてきます。
橘ナナミ
なるほど……「幸せの形がひとつじゃない」ってよく言いますけど、小説でここまで多角的に描かれると深いですね。
私は自分がどの登場人物に近いか、読みながら考えてしまいそうです。
佐藤メバル
そう。だから読者も「私はどの登場人物に近いだろう」と考えながら読み進めることになります。住野よる氏らしい優しい視点で、最後は「今の自分でいいんだ」と思わせてくれる一冊です。

52ヘルツのクジラたち【特典付き】 (中公文庫)
町田そのこ 著|中央公論新社
2021年本屋大賞第1位に輝いた、町田そのこ氏の代表作。「52ヘルツのクジラ」とは、ほかのクジラには聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一匹だけのクジラ。何も届かず、何も届けられない孤独の象徴です。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。傷を負った者同士が出会い、静かに魂の物語が生まれていきます。読みどころは、孤独だからこそ人を愛することをやめなかった二人が、互いの存在で少しずつ変わっていく瞬間。心がえぐられるような痛みの先に、確かな希望があります。
こんな人におすすめ
家族に傷つけられた経験がある人、言葉にできない孤独を抱えている人に。誰にも届かないと諦めている心に、そっと寄り添い、涙を流させたい夜に。読み終えたあとの静かな温かさも魅力です。
良い点
- 本屋大賞1位の圧倒的な物語力
- 孤独な二人の出会いが胸を打つ
- 文庫化特典の書き下ろし付き
気になる点
- 虐待や搾取の描写が重い
- 読みながら感情を持っていかれる
- タイトルの意味を知ると切ない
出版社
中央公論新社
発売日
2023年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「52ヘルツのクジラ」って、実際にいるクジラの話なんですか?孤独の象徴って書いてあって、すごく惹かれます。
佐藤メバル
そう、ほかのクジラと周波数が違うため、同じ仲間と会話できないと考えられているクジラがモデルです。この物語では、それを「何も届かない、何も届けられない」存在のメタファーにしているんですね。
家族に搾取されてきた貴瑚も、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年も、まさに52ヘルツのクジラのように孤独です。
でも二人が出会うことで、周波数が違ったはずの魂が初めて響き合う。ここがこの作品のいちばんの読みどころです。
橘ナナミ
響き合う……その瞬間を思うだけで泣けます。孤独な人同士だからこそ、分かり合えることもあるんですね。
佐藤メバル
ええ。派手な展開ではないけれど、心の奥底に触れてくる作品です。本屋大賞1位も納得の読後感でした。

余命10年 (文芸社文庫NEO)
小坂流加 著|文芸社
¥682(税込)
二十歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病で余命10年を宣告されます。死への恐怖より先に「未来を諦める」ことから始まる日常。しかしこの物語は暗く沈むのではなく、「死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯生きてみるよ」という言葉が示すように、淡々としながらも力強く前を向いていきます。読みどころは、恋はしないと決めた茉莉が、それでも誰かを好きになってしまう人間の感情のやっかいさと愛おしさ。涙よりせつないラブストーリーという惹句どおり、結末は静かに、しかし深く心を揺さぶります。
こんな人におすすめ
生と死をテーマにしっかり泣きたい人、余命ものの王道を読みたい人に。明日を当たり前に思えない日に、主人公の言葉が刺さる一冊。恋愛と命の重みを同時に味わえるのも魅力です。
良い点
- 余命宣告からの心理が丁寧
- 恋愛と生への執着が繊細に描かれる
- 静かで強い余韻が残る
気になる点
- 結末が切なすぎる
- 医療描写を重く感じる人も
- 時間がかかると涙の意味が変わるかも
出版社
文芸社
発売日
2017年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「死ぬ前って、もっとワガママできると思ってた」っていう一文がすごく刺さりました。余命ものって泣けるイメージですが、この物語は一味違うんですか?
佐藤メバル
ええ。茉莉は余命を聞かされても、周囲を困らせないように「笑顔でいること」を選びます。未来を諦めることで死の恐怖を薄れさせていく、その感じがすごくリアルなんです。
主人公が恋をしないと心に決めるのも、つながれば失うものが増えるから。でも、人間の心は打算どおりにはいかない。
何となく始めた趣味に情熱を注ぐように、彼女の感情も少しずつ動き出します。
橘ナナミ
ワガママできない優しさ、わかる気がします。最後はどんなふうに迎えるんですか?
佐藤メバル
ネタバレはできないですが、「衝撃の結末」とうたわれているとおり、静かに、でも確実に心を揺さぶられます。
読んだあと、今日一日をどう生きようかと考えるきっかけになる一冊です。

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 (スターツ出版文庫)
汐見夏衛 著|スターツ出版
¥781(税込)
親や学校、すべてにイライラする中2の百合が、母とのケンカの末に家を飛び出すと、そこは70年前の戦時中だった。偶然助けられた彰に惹かれていくが、彼は特攻隊員として命を懸けて戦地に飛び立つ運命にある。この設定だけで胸が締め付けられますが、何よりすごいのは怒濤のラストの構成力。のちに百合が彰の本当の想いを期せずして知る展開は、涙なしには読めません。タイムスリップものを読み慣れている人でも、まさかそう来るか、と驚くはずです。
こんな人におすすめ
戦争と恋愛の組み合わせに弱い人、映画的な展開で泣きたい人に。今がつまらないと感じている10代も、大人になってから読んでも刺さる一冊。ラストの畳みかけは、読む人の想いを大きく揺さぶります。
良い点
- 70年前の戦時中を鮮やかに描く
- 特攻隊員との恋が切ない
- 最後のどんでん返しが圧巻
気になる点
- 戦争描写の重さがある
- タイムスリップの設定にツッコミたくなるかも
- 泣けると言われると構えてしまう
出版社
スターツ出版
発売日
2016年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
タイムスリップで戦時中に行くって、フィクションとしてはわくわくしますけど、特攻隊員と恋に落ちる……って考えるともう切なくて。
佐藤メバル
そうですね。百合は価値観の違う現代の中学生として、戦時中の常識に戸惑いながらも彰の誠実さに惹かれていきます。
ここでただの恋愛にしないのが汐見夏衛氏のうまさで、時代や立場が違っても、人を想う気持ちは変わらないということが痛いほど伝わってきます。
そして物語後半、百合がある約束や想いの真実を知るところで、それまでの景色が一気に変わります。
橘ナナミ
「怒濤のラスト」って言葉にどきどきします。ネタバレなしで教えてほしいです、どこがすごいんですか?
佐藤メバル
百合が現代に戻ってから、彰の言葉や行動の意味が反転して見えてくるんです。伏線が一気に回収される快感と、切なさが同時に来る。読後はずっと余韻が残ると思います。

今夜、世界からこの恋が消えても (メディアワークス文庫)
一条岬 著|KADOKAWA
¥770(税込)
「僕の人生は無色透明だった。日野真織と出会うまでは」。嘘の告白から始まった関係は、「お互い、本気で好きにならないこと」を条件に交わされます。しかし真織には、夜眠ると一日の記憶を失う前向性健忘という病気がありました。日ごと記憶を失う彼女と、一日限りの恋を積み重ねる日々。「覚えていられないなら、その日いっぱい好きでいよう」という切ない約束が、思わぬ形で壊れていく展開は圧巻です。第26回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞作。
こんな人におすすめ
一目で引き込まれるラブストーリーが好きな人、最後のどんでん返しに震えたい人に。記憶に残らない恋という設定の切なさを味わいながら、伏線を探して二度読みたくなります。
良い点
- 設定の切なさがとことん刺さる
- 序盤から物語に引き込まれる
- 衝撃のラストが話題になったのも納得
気になる点
- 設定を楽しむにはファンタジー要素を受け入れる必要
- 記憶喪失ものの展開に既視感があるかも
- 胸が苦しくなるラスト
出版社
KADOKAWA
発売日
2020年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「一日ごとに記憶を失う君と、二度と戻れない恋をした」って惹句だけで号泣しそうです。偽りの恋から始まるのも気になります。
佐藤メバル
そうなんです。主人公がクラスメイトに流されるまま真織に仕掛けた嘘の告白が、条件付きで受け入れられる。
ここから「本気で好きにならない」というルールの下で、二人は一日限りの恋を重ねていくんですね。ただし人間の感情にルールは効かない。
好きになったときにはもう、彼女は明日には忘れてしまうという構造が、切なさを何倍にもしています。
橘ナナミ
その構造だけで泣けます……。後半はどんなふうに変わるんですか?
佐藤メバル
やがて突然、物語は終わりを告げるんです。ここからはネタバレ厳禁ですが、読者全員が「まさか」と思う仕掛けがあります。
だからネットで驚きの声が広がったのもわかります。

少年と犬 (文春文庫)
馳星周 著|文藝春秋
¥946(税込)
2011年秋の仙台。震災で職を失った和正が、ガリガリに痩せた野良犬を拾うところから物語は始まります。多聞と名づけられたその犬は賢く、和正の仕事もなぜかうまくいくようになる。ただ、多聞はいつも南の方角を向いていた。多聞は何を求め、どこへ行こうとしているのか。傷つき、悩み、惑う人びとのそばに一匹の犬が寄り添い、やがて南へ向かっていく展開は、直木賞受賞作の名にふさわしい余韻を残します。犬を愛するすべての人に捧げる、と銘打たれた感涙の物語です。
こんな人におすすめ
犬と人の絆を描く物語が好きな人、震災や喪失をテーマにした小説を読みたい人に。犬がつなぐ人と人の縁に心を揺さぶられたいとき。南へ向かう多聞の旅を見届けたくなります。
良い点
- 一匹の犬をめぐる連作の構成が巧み
- 直木賞受賞の確かな筆力
- 映画化もされた話題作
気になる点
- 震災の傷に触れる場面があり重い
- 犬の視点ではないので切なさが募る
- 短編集のつながりを丁寧に追う必要
出版社
文藝春秋
発売日
2023年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
犬が主人公というより、犬を中心に人々の物語が続いていくんですね。多聞はなぜ南を目指すんでしょう?
佐藤メバル
そこが最大の謎で、物語全体を貫く軸になっています。仙台で和正に拾われた多聞は、そのあと出会う人びとの人生にも静かに寄り添いながら、ひたすら南を目指す。
犬には犬の理由があるんですね。読み終えたとき、「ああ、あのとき南を向いていたのはこういうことか」と腑に落ちる仕掛けが素晴らしいんです。
橘ナナミ
犬が人の人生を変えていく話って、それだけで泣けます。震災の描写もリアルなんですか?
佐藤メバル
馳星周氏はエンタメに徹しながらも、震災で職を失い、犯罪まがいの仕事をしてしまう和正の苦しみを丁寧に描いています。
犬の物語でありながら、人間の弱さと強さをまっすぐ見つめた作品です。

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)
パウロ・コエーリョ 著|KADOKAWA
¥836(税込)
羊飼いの少年サンチャゴは、同じ夢を何度も見る。ピラミッドに宝物が隠されているという夢。彼はその夢を信じ、羊を売り、ひとりエジプトへ向かいます。旅の中で出会う不思議な老人や錬金術師の導きと、さまざまな出会いと別れを通じて、「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力する」という人生の知恵を学んでいく。全世界8500万部、81カ国語に翻訳された一冊で、ノーベル平和賞受賞者も愛読書に挙げるなど、多くの人の生き方に影響を与えてきた物語です。夢を追うことの意味が、静かに心に沁みます。
こんな人におすすめ
将来に迷っている人、「本当にやりたいこと」を見失いかけている人に。自分を信じる一歩を踏み出したいとき、そっと背中を押してくれる。何度も読み返せるので、人生の節目に開きたい一冊です。
良い点
- 世界8500万部の大ベストセラー
- 抽象的な教訓が物語として胸に落ちる
- 何度読み直しても新しい発見がある
気になる点
- 寓話のため好みが分かれる
- SF的な派手さはない
- 教訓をそのまま受け取れないと苦しいかも
出版社
KADOKAWA
発売日
1997年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
全世界8500万部ってすごい数字ですが、なぜここまで多くの人に読まれてきたんですか?
佐藤メバル
「少年が宝物を探す旅」というシンプルな構造に、人生の真理がぎゅっと詰まっているからだと思います。サンチャゴは旅の途中で前兆を読み解き、心の声を聞くことを学ぶ。
「自分を信じること」を物語の形で体感できる稀有な一冊なんです。たとえば、何か新しいことを始めたいのに怖くて踏み出せない人にとって、この本は背中を押してくれる。
だからこそ世界中で読み継がれているのでしょう。
橘ナナミ
最後に宝物を見つけた意外な場所、というのも気になります。まだ読んでないので楽しみです。
佐藤メバル
その意外な場所には、物語全体が仕掛けた大きな意味が込められています。ぜひ最後まで読んで、「ああ、そういうことか」という感覚を味わってほしいですね。

クララとお日さま (ハヤカワepi文庫)
カズオイシグロ 著|早川書房
ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏が、受賞後に発表した第一作。子どもの成長を手助けする人工知能搭載ロボット=AF「クララ」が、病弱な少女ジョジョの家庭で暮らすことから始まります。クララは「お日さま」に祈りを捧げながらジョジョを支えようとしますが、家族には隠された大きな秘密があった。愛とは何か、知性とは何かという普遍的な問いを、ロボットの視点から静かに描いていくのがこの作品の核です。読後、人間らしさとは何かを考えずにはいられなくなります。
こんな人におすすめ
AIと人間の関係を考えたい人、静かなSFが好きな人に。テクノロジーが進んだ先の「心」について思索したい夜。クララの視点が持つ透明感に、知らず知らず引き込まれます。
良い点
- ノーベル賞作家の受賞後第一作
- AIの視点が新鮮で哲学的
- 隠された秘密が読ませる
気になる点
- 会話や描写が抑制的で静か
- SFというより文学の趣
- 結末に賛否が分かれるかも
出版社
早川書房
発売日
2023年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
人工知能のロボットが主人公の視点って、すごく興味深いです。でも「お日さまに祈る」っていうのが人間みたいですね。
佐藤メバル
そのギャップこそイシグロ氏が仕掛けたテーマです。クララは人工知能ですが、ジョジョの回復を願って「お日さま」に頼ろうとする。
観察者でありながら、信仰めいた感情を持つ存在として描かれています。そして家族の秘密が明らかになると、「それでもクララは愛している」という解釈が読者に問いかけられる。
技術が進んだ未来を扱いながら、古くからある人間の問いを考えさせられる作品なんです。
橘ナナミ
なるほど。AIと人間の友情って、人間同士の友情とはちょっと違うのかもしれないですね。
佐藤メバル
そうですね。クララは「知性」と「愛」の違いに戸惑いながらも、懸命にジョジョを思います。その姿が、人間の家族とは何かを反転させて見せてくれる。
文学賞をとった作家ならではの深みがあります。

星の王子さま - The Little Prince【講談社英語文庫】
サン=テグジュペリ 著|講談社インターナショナル
¥990(税込)
「ねえ、ヒツジの絵を描いて」。砂漠に不時着した飛行士のもとを訪れた星の王子さま。この不思議な出会いから、愛や友情、純真さについての静かな問いかけが始まります。そしてまた、こちらの版は講談社英語文庫。TOEIC 400点くらいから手に取りやすいレベルで、名作の言葉を英語のまま味わえるのが魅力です。日本語訳で読んでも心に残る物語ですが、原文のやさしいリズムに触れると、王子さまの声がさらに身近に感じられます。英語学習の合間に何度も読み返したくなる一冊です。
こんな人におすすめ
英語のリーディングを続けたい人、大人になってから名作を読み直したい人に。やさしい英語だけど深い言葉に触れながら、読書と学習を同時に楽しめます。TOEIC400点レベルでも挑戦しやすい一冊です。
良い点
- 英語学習に最適なレベル設定
- 短くて何度も読める
- 名作のエッセンスを原文で味わえる
気になる点
- あらすじを知っている人には驚きが少ない
- 英語の辞書なしだとやや手間
- 解説が少なめに感じるかも
出版社
講談社インターナショナル
発売日
2004年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
日本語でも読んだことがある『星の王子さま』ですが、英語だとまた違うんですか?
佐藤メバル
全然違います。サン=テグジュペリの文章は、子どもの語りかけるような単純な言葉で書かれているんですね。
英語で読むと、その単純さがそのまま心に届く。「大切なものは目に見えない」という言葉も、原文のシンプルな響きのなかでいっそう深く感じられます。
この版はTOEIC 400点レベルを目安にした講談社英語文庫なので、英語に自信がない人でも一歩踏み出しやすいと思います。
橘ナナミ
なるほど。あらすじを知っていても、英語で読むと新しい発見がありそうですね。
佐藤メバル
むしろ知っているからこそ、細かい言葉の選び方に注目できます。名作の英語に触れたい人はぜひ手に取ってみてください。

老人と海 (光文社古典新訳文庫 Aヘ 1-3)
アーネストヘミングウェイ 著|光文社
¥770(税込)
数か月の不漁で周囲から同情されてきた老漁師サンチャゴ。それでも彼は独りで舟を出し、巨大なカジキが食いつくのを待ち続けます。やがて仕掛けに食らいついた大物と、三日にわたる壮絶な闘いが始まる。読みどころは、決して屈服しない男の力強い姿と、老いゆく者の哀愁が地続きになっているところ。勝者にも敗者にもなり得る海の上で、サンチャゴが何と闘い、何を手にするのか。簡潔な文体だからこそ、一行一行の重みが増す、ヘミングウェイ文学の最高傑作です。
こんな人におすすめ
短くても深い物語を読みたい人、老いや孤独と向き合いたい人に。弱さを見せない男の美学にふれたい日に最適。サンチャゴの一喜一憂を追いながら、自分自身の生き方を考えさせられます。
良い点
- 簡潔なのに力強い文体
- 老漁師の心情描写が深い
- 文庫で短時間で読める
気になる点
- 戦いの描写が単調に感じるかも
- 寓話性が強く好みが分かれる
- 筋肉質な文体に慣れが必要
出版社
光文社
発売日
2014年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
おじいさんが巨大なカジキと闘うお話ですよね。派手な展開は少なそうですけど、なぜ名作なんですか?
佐藤メバル
実は、闘っているのはカジキだけではないんです。サンチャゴは「もう年だ」と感じながらも、男の誇りをかけて海に出る。
周囲の同情や孤独、衰えていく体力との闘いでもある。小さな舟の上の一対一に、人生のすべてが凝縮されているからこそ、世界中で読み継がれているんでしょう。
簡潔な文章だからこそ、その向こうに見える情感が深い。
橘ナナミ
孤独なおじいさんの姿に、自分のこれからを重ねられる人も多そうです。
佐藤メバル
そうですね。若い読者には「かっこいい」と映るかもしれませんが、年齢を重ねてから読むとまた違った感慨があります。
何度も読み返すたびに新しい発見がある一冊です。

青い城 (角川文庫)
モンゴメリ 著|KADOKAWA
¥1,056(税込)
『赤毛のアン』で知られるモンゴメリの幻の名作が、角川文庫で読めます。主人公は内気で陰気な独身女性ヴァランシー。心臓の持病で余命1年と診断された日から、彼女は「後悔しない毎日」を送ろうと決意します。ここから物語が思わぬ方向へ転がり出すのが最高で、周到に張られた伏線と辛口のユーモアが随所に効いています。男に縛られずに自由に生きたかった女性が、余命をきっかけに本当の自分を取り戻していく。夢見る愛の魔法に包まれた究極のロマンスです。
こんな人におすすめ
『赤毛のアン』が好きだった人、大人の女性の恋と成長を読みたい人に。余命を宣告されたヒロインの逆転劇に元気をもらえます。ユーモアと伏線の妙もぜひ味わって。
良い点
- 『赤毛のアン』とは違う大人の味わい
- 伏線とユーモアのバランスが絶妙
- ヒロインの変化が清々しい
気になる点
- 発表当時の価値観が色濃い
- 都合よく進む展開に感じるかも
- カバーや訳によって印象が変わる
出版社
KADOKAWA
発売日
2009年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『赤毛のアン』の作者さんが、こんなロマンス小説も書いていたんですね。余命ものって切ないイメージですけど。
佐藤メバル
ところがこの作品、切ないだけではないんです。ヴァランシーは余命1年と知ってから、それまで抑えていた本音を次々に口にし始める。
周囲の人は驚き、読者は気持ちよさを感じる。「どうせ余命なら、やりたいように生きよう」という覚悟がコメディタッチで描かれるんです。
しかも物語が進むにつれて、伏線が次々と回収されていく。最後はロマンスとしても大満足の展開です。
橘ナナミ
それは面白そう! タイトルの『青い城』にも意味があるんですか?
佐藤メバル
ええ。ヴァランシーが憧れる「青い城」が、彼女の生き方の象徴として出てきます。ぜひその意味を確かめながら読んでみてください。

ブルックリン (白水Uブックス/海外小説の誘惑)
コルム・トビーン 著|白水社
アイルランドの田舎町エニスコーシーに暮らすアイリーシュは、神父のあっせんである大都会ブルックリンへ移民します。慣れない下宿屋での暮らし、デパートの店員の仕事、ホームシック。しかし夜学で簿記を学び、ダンスホールでイタリア移民のトニーと恋に落ちるうちに、彼女はたくましく変わっていきます。船出から恋、そして思わぬ事件まで、移民女性の心情を細やかに描いたコスタ小説賞受賞作。郷愁と希望のあわいを行き来する主人公の心理に、どんどん引き込まれます。
こんな人におすすめ
海外移住や故郷を離れる経験がある人、1950年代の空気を味わいたい人に。どちらの土地にも帰り切れないもどかしさを繊細に描いています。恋愛と成長のバランスが絶妙な一冊です。
良い点
- 移民女性の内面が細やかに描かれる
- 舞台の空気が鮮やかに立ち上がる
- 恋愛と成長が一体になっている
気になる点
- 展開はゆっくりめ
- 派手な出来事は少ない
- 訳文に好みが出るかも
出版社
白水社
発売日
2026年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
アイルランドからニューヨークへ移民した少女の話なんですね。今の時代と比べると、すごく重い決断だったでしょうね。
佐藤メバル
そうです。1950年代のアイルランドは故郷に仕事が少なく、移民は生きるための選択でした。そしてブルックリンに着いても、アイリーシュはホームシックに悩みます。
新しい土地で生きることは、同時に古い自分を手放すことでもあるんですね。この小説は、彼女が仕事や恋愛を通じて新しい自分を見つけていく過程を丁寧に描いています。
橘ナナミ
故郷で待っている人と、新しい土地で出会った人の間で揺れる……みたいな展開もあるんでしょうか。
佐藤メバル
ええ、まさにその揺れがこの作品の読みどころです。故郷に帰ったときに再会する男性との関係や、ブルックリンに残した恋。
どちらかを選ぶことが正解ではない、複雑な感情が描かれていて、多くの読者が共感します。

「青春小説」 (中公文庫)
清水義範 著|中央公論新社
清水義範氏が描く、青春の愚かさと喜劇性。表題の「青春小説」という言葉に偽りなく、収録作はどれも青さゆえの失敗や笑いが満載です。なかでも、「三億件事件」の現場にタイムスリップした男たちを描く「三億の郷愁」は、時間旅行ものとしても青春小説としてもユニーク。そして地方からおっかなびっくり上京してきた青年を描く自伝的作品「灰色のノートから」は、誰しも感じたことのある「都会に飲み込まれそうな不安」を軽妙にすくい上げます。笑ったかと思えばじんわり泣ける、大人のための青春小説集です。
こんな人におすすめ
笑いと切なさの両方を味わいたい人、世代を超えた青春の普遍性を感じたい人に。ちょっと恥ずかしい過去を抱えている人ほど、登場人物に親近感がわきます。短編なので通勤・通学中にも読みやすい。
良い点
- 軽妙で洒脱な文体
- ユニークな設定とリアルな心情が同居
- 短編で読みやすい
気になる点
- 1980年代前後の空気に馴染みがないと面喰うかも
- 大きな感動よりじわじわ来る
- 『小説』の意味が気になる
出版社
中央公論新社
発売日
2010年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「青春」っていうタイトルなのに、三億件事件にタイムスリップする話が入っているのが意外です。どんなふうに青春と繋がるんですか?
佐藤メバル
その意外さこそ清水義範氏の真骨頂ですね。タイムスリップする男たちの動機が、実はものすごく青臭いんですよ。
「あの頃に戻れたら」という願望は、誰もが抱える青春の象徴だと思います。事件そのものよりも、過去をやり直したいという気持ちがユーモラスに描かれていて、笑いながらも切なくなる。
橘ナナミ
なるほど。タイムスリップはSFの道具であって、テーマはあくまで「青春」なんですね。
佐藤メバル
そうです。もう一篇の「灰色のノートから」も、上京した青年の不安と期待をリアルに描いています。派手さはないけれど、心に残る一冊です。

恋愛小説 (講談社文庫)
椰月美智子 著|講談社
23歳の美緒には、かっこよくて優しい彼・健太郎がいる。結婚するんだろうなと思いながら、なんとついサスケと寝てしまう。「健太郎と一緒にいるのが絶対に幸せ」なのに、それでもサスケのことも好き。この身勝手な本音を、椰月美智子氏は容赦なく描きます。読みどころは、「好き」がひとつではない現実の手触り。正しさと欲望の間で揺れる主人公の心情が、淡々とした筆致であぶり出されていきます。「恋愛大河叙事小説」という惹句のとおり、身勝手で未熟な恋が、思わぬ時間と規模に広がっていくさまは圧巻です。
こんな人におすすめ
一途な恋が美しく描かれる話に少し物足りなさを感じる人に。モラルと感情のあいだで揺れる女性の本音に、ぐっと引き込まれます。登場人物の言動にモヤモヤするのも含めて楽しめる。
良い点
- 主人公の身勝手さが生々しい
- 一見軽い題材を大河的なスケールで描く
- 読み終えたあとにモヤモヤが残る
気になる点
- 共感できない主人公にイライラするかも
- 道徳的に受け入れられない人には難しい
- 恋愛のダークサイドを見せられる
出版社
講談社
発売日
2014年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
あらすじを読むと、主人公の美緒さんはなんだか身勝手ですよね……。こんな主人公に感情移入できるんでしょうか?
佐藤メバル
そこがこの小説の挑戦です。美緒は「健太郎が好き」と心から思っているし、実際一緒にいるのが一番幸せなんですよ。
でも、サスケのことも好きという感情が芽生えてしまう。人は一人を愛しているからといって、別の感情がゼロになるわけではない。
その不都合な真実を、読者に突きつけるんですね。だから共感できない人でも、理解はできてしまう。それがこの小説の怖さであり魅力です。
橘ナナミ
確かに。好きな人がいても、他の人に気持ちが揺れることって、ないわけじゃないですもんね……。
佐藤メバル
ええ。そして美緒の恋は、単なる浮気の話で終わらず「大河叙事」と言われるほど大きなうねりになっていきます。
人間の業みたいなものを見せつけられる作品です。

小説 言の葉の庭 (角川文庫)
新海誠 著|KADOKAWA
¥902(税込)
雨の朝、高校生の孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野は出会う。雨と緑に彩られた一夏の青春小説を、監督自らが小説化した作品です。新海誠氏はアニメーションでは描き切れなかった人物やエピソードを多数織り込み、雨音や草の匂いまで感じられるテクスチャーで物語を立ち上げています。短い夏の日に交わされる言葉の一つ一つが、読む者の心に染みる。アニメを観た人なら、その後の二人の時間をより深く追体験できるはずです。映像が持つ美しさを、文章の力でここまで再現しているのに驚かされます。
こんな人におすすめ
新海誠作品が好きな人、映像の美しい世界を小説でも味わいたい人に。雨の日が待ち遠しくなる、読了後の切なさを楽しみたい方へ。アニメにはないエピソードも多数収録されています。
良い点
- 監督自らによる小説化
- アニメにはない設定が追加されている
- 映像的な情景描写が美しい
気になる点
- アニメ既知だと新鮮さは減る
- 短い物語のため物足りなさも
- 独白の多い文体が好みを分ける
出版社
KADOKAWA
発売日
2016年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
新海誠氏って、映像で心情を描くのがすごく上手ですよね。ご自身で小説化したらどうなるんだろう?と思っていました。
佐藤メバル
映像美の印象が強い新海氏ですが、小説になると登場人物のモノローグが驚くほど緻密なんです。孝雄が雪野に抱く憧れや、雪野が抱える孤独が、雨の風景と重なるように描かれていく。
アニメで描かれなかった二人の過去や、同じ時間を過ごす人々のエピソードも追加されていて、作品の解像度が上がります。
橘ナナミ
アニメを観た人も観ていない人も楽しめるんですね。どちらかというと、どっち向きですか?
佐藤メバル
アニメを観ていない人は純粋に小説として楽しめますし、観た人には「あの場面の裏側」が見える仕掛けがあって、二度おいしいと思います。
ちなみに私は、どちらを先にしてもそれぞれの良さがあると思いますよ。

夜空に泳ぐチョコレートグラミー(新潮文庫)
町田そのこ 著|新潮社
『52ヘルツのクジラたち』の町田そのこ氏のデビュー作にして原点、待望の文庫化です。すり鉢状の小さな街を舞台に、理不尽な環境の中でも懸命に成長する少年少女たちを描く5編の連作短編集。なかでもデビュー作「カメルーンの青い魚」は、大胆な仕掛けが選考委員の三浦しをん氏・辻村深月氏に絶賛されたとか。どの短編も登場人物が別の作品と静かに交差する構成になっており、読み終えると小さな街の輪郭が浮かび上がってきます。小泉今日子氏も推薦する、著者の原点にして頂点と呼べる一冊です。
こんな人におすすめ
『52ヘルツのクジラたち』に感動した人、短編から読みたい人に。小さな街の人々が重なり合う構成に、きっと二度読みしたくなります。デビュー作の衝撃を体感してください。
良い点
- デビュー作の瑞々しさと完成度
- 連作短編集の仕掛けが見事
- 『52ヘルツ』ファンなら必読
気になる点
- 短編集のため物足りなさを感じるかも
- 虐待や不条理の描写が重い
- 登場人物が多いので混乱するかも
出版社
新潮社
発売日
2021年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『52ヘルツのクジラたち』が大好きなので、デビュー作が読めるのがうれしいです。表題作から読んだほうがいいですか?
佐藤メバル
どの順番でも読めますが、表題作を最初に持ってくると、この短編集の「連作」としての仕掛けを楽しみやすいですね。
すり鉢状の小さな街に生きる人々が、別の話にふと現れる。それぞれの物語が地続きになっているのが、この作家の魅力です。
デビュー作「カメルーンの青い魚」は、大胆な仕掛けが選考委員の三浦しをん氏と辻村深月氏に絶賛されたとか。
橘ナナミ
短編なのに物語が交差するのは贅沢ですね。一話ずつじっくり味わいたいです。
佐藤メバル
そうですね。登場人物たちは理不尽な環境に置かれながらも、懸命に生きようとします。文庫になって読みやすくなったので、ぜひ気軽に手に取ってみてください。

文豪たちが書いた 泣ける名作短編集
彩図社文芸部 著|彩図社
¥649(税込)
「泣ける」をテーマに、10人の文豪による哀切な短編を集めたアンソロジー。弟を殺した男、死にゆく妻と向き合う夫、疲弊していく家族。収録作品のモチーフは、どれも生きることの苦しさにまっすぐ向き合っています。文豪の名前は知っていても、短編まで読んだことがない人には絶好の入門書になるはず。人生のどん底で見える光を切り取った短編の数々は、長編とはひと味違う切れ味があります。一編が短いので、忙しい日の夜寝る前にもぴったりです。
こんな人におすすめ
国語の教科書で文豪に触れた人、短編で読書の感覚を取り戻したい人に。文学の重厚さと短編の読みやすさを同時に楽しめます。一話完結のため、隙間時間に少しずつ読むのもおすすめ。
良い点
- 10人の文豪をまとめて味わえる
- 一編が短くて読みやすい
- テーマが明確で選びやすい
気になる点
- 暗く重い話が多い
- 好みの作家とそうでない作家が混在
- 泣ける基準は人それぞれ
出版社
彩図社
発売日
2014年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「弟を殺した男」「死にゆく妻と向き合う夫」と聞くと、すごく重い内容なのかな……と構えてしまいます。
佐藤メバル
確かにテーマは重いんですが、文豪たちは救いの光も一緒に書いているんです。苦しさの先にある小さな希望をすくい取る視点が、このアンソロジーの読みどころですね。
それに一編が短いから、一気に読もうとせず、一篇ずつ噛みしめるように読めます。文庫サイズで持ち歩いて、気になった人の作品から読むのもいいと思いますよ。
橘ナナミ
アンソロジーだと、知らない作家との出会いもあるのがうれしいですね。どの短編から読むのがおすすめですか?
佐藤メバル
タイトルで気になるものから読んで大丈夫ですが、配列も編集者が意図して構成しているので、最初から順に読むと「泣ける」テーマの広がりを感じられます。

生きるぼくら (徳間文庫)
原田マハ 著|徳間書店
¥990(税込)
いじめをきっかけにひきこもりとなった24歳の麻生人生。頼りだった母が突然いなくなり、残されたのは年賀状の束。その中に一枚だけ、記憶にある名前があった。「もう一度会えますように。私の命が、あるうちに」。人生は四年ぶりに外へ出て、祖母のいる蓼科へ向かいます。そこで待っていたのは、予想を覆す状況と、米づくりを通じて変わりゆく日常。「生きる」ことを、心ではなく身体から取り戻していく物語です。第2回徳間文庫大賞受賞作。
こんな人におすすめ
立ち直れない自分に焦りを感じている人、自然の中で再生していく物語を読みたい人に。米づくりに励む日々のなかで、ゆっくりと魂がほどけていく感覚を味わえます。蓼科の風景とともに、心が温かくなります。
良い点
- 生き直す過程が丁寧に描かれる
- 蓼科の自然が目に浮かぶ
- 徳間文庫大賞受賞の実力派
気になる点
- 展開が穏やかで劇的ではない
- ひきこもり問題の描写に重さを感じる
- 米作りの描写が細かくて読み飛ばしたくなるかも
出版社
徳間書店
発売日
2015年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ひきこもりの青年が、おばあちゃんとの米づくりで変わっていく……って、すごく現代的なテーマですね。でも米作りって想像以上に大変そうですが。
佐藤メバル
大変だからこそ、人生は変わっていくんです。作中、主人公は「体を動かしていると、考えすぎることが少なくなる」と実感します。
頭でぐるぐる考えて動けなくなっていた人間が、土や天候と向き合うことで少しずつ身体を取り戻していく。
その過程がすごく丁寧で、読んでいて励まされるんです。第2回徳間文庫大賞受賞作というのも納得の、じんわり沁みる物語です。
橘ナナミ
自然の力って大きいんですね。私も研究で煮詰まったら、散歩でもしてみようかな。
佐藤メバル
いいですね。この小説を読むと、大きな答えを出さなくても、まず今日できることをやればいいんだ、という気持ちになりますよ。

桜のような僕の恋人 (集英社文庫)
宇山佳佑 著|集英社
¥880(税込)
美容師の美咲に恋をした晴人。彼女に認めてもらいたい一心で、一度は諦めたカメラマンの夢を再び目指し、やがて晴人は恋人同士になる。しかし美咲は、人の何十倍もの速さで年老いていく難病を発症してしまう。「老婆になっていく姿を晴人にだけは見せたくない」という彼女の選択が、この物語の核です。春・夏・秋・冬と季節を追って綴られる構成も美しく、桜のように儚く散っていく恋が、どのように結ばれるのか。涙が止まらない、と銘打たれた感動作です。
こんな人におすすめ
涙活したい人、切ない恋愛映画のような物語を求めている人に。カメラマンの彼が見つめる「美しさ」の真実に触れると、また泣けます。春夏秋冬の構成が美しく、余韻に浸りたい夜に。
良い点
- 難病ものながら季節の構成が美しい
- 彼女の選択が切なく胸を打つ
- 映像的な場面が多い
気になる点
- 難病ものの王道ゆえ展開は読めやすい
- 感情を揺さぶられすぎる
- 二人の時間が短くて寂しい
出版社
集英社
発売日
2017年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
人の何十倍もの速さで年老いる病気って、すごく残酷な設定ですね。美咲さんの気持ちを考えると切なくなります。
佐藤メバル
そうですね。美咲は晴人に「好き」と伝えるけれど、症状が進んでいく自分を見せたくないと悩みます。美しさを失うことと、愛し続けることの間で板挟みになるんですね。
でも晴人はカメラマンだから、彼女の「今」を切り取っていく。その写真が物語の後半で大きな意味を持ってきます。
橘ナナミ
カメラマンという職業設定が活きているんですね。桜の季節が特に印象に残りそうです。
佐藤メバル
章ごとに季節が移り変わる構成も、人生の周期と重なって美しいんです。ぜひ最後まで、二人の季節を追いかけてみてください。

泣くな研修医 (幻冬舎文庫)
中山祐次郎 著|幻冬舎
¥792(税込)
「なんでこんなに無力なんだ、俺」。現役外科医が新人研修医の葛藤と成長を、圧倒的リアリティで描いた医療ドラマの第1弾です。主人公の雨野隆治は25歳の研修医。何もできず何もわからず、上司や先輩に怒られてばかりの毎日。それでも患者さんは待ったなしで押し寄せます。初めての救急当直、初めての手術、初めてのお看取り。「無力さ」を突きつけられながら、それでも医者として立っていこうとする姿が、読む人の胸を打ちます。医療職でなくても、新社会人の不安や焦りと重ねて読める一冊です。
こんな人におすすめ
社会人1年目の不安を思い出したくない人にも、リアルな医療現場を体験したい人にも。頑張っても報われない日々に挫けそうな人へ、そっと寄り添ってくれます。シリーズ第1弾としても読み始めやすい。
良い点
- 現役外科医によるリアルな描写
- 研修医の無力感が痛いほど伝わる
- 登場人物の成長が励みになる
気になる点
- 医療現場の緊張感で疲れる
- 失敗が続く展開に胸が痛む
- シリーズものなので続きが気になる
出版社
幻冬舎
発売日
2020年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
現役の外科医が書いた小説っていうのが、まずすごいです。医療ドラマとはやっぱり違うんですか?
佐藤メバル
全然違います。ドラマはエンタメとしてかっこよく描かれますが、この作品の主人公は本当に“ダメな研修医”なんです。
教科書の知識と現場の実践のギャップに打ちのめされる、その生々しさが最大の読みどころ。初めてのお看取りで呆然とする雨野の姿に、医療者じゃなくても「自分もこうだった」と重ねるはずです。
橘ナナミ
「泣くな」ってタイトルは、自分に言い聞かせている感じがしますね。
佐藤メバル
そうです。強がりでもあり、決意でもある。このタイトルの意味が、最後にじんわりと響いてきますよ。

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)
二宮敦人 著|TOブックス
¥715(税込)
「あなたの余命は半年です」。ある病院で医者・桐子は患者にそう告げる。彼女は「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く「死神」。一方、副院長の福原は奇跡を信じ、最後まで「生」を諦めない。対立する二人の医者が、患者たちの限られた時間にどう向き合うのかを描いた医療ドラマです。死を前にした人々の選択と、それぞれの生き様が重なり合い、息を呑む展開に。全国の書店員が「感動小説」第1位に選んだというのも納得の、涙なしでは読めない作品です。
こんな人におすすめ
生と死を真剣に考えたい人、医療ドラマにハズレを引きたくない人に。大切な人の最期をどう迎えるかを考えるきっかけが欲しいときに。重いテーマですが、読み終えたあとの希望が大きいです。
良い点
- 死生観の対立がテーマとして深い
- 書店員選出第1位の感動
- 映画化企画が進む話題作
気になる点
- 医療・終末期の描写が重い
- 対立構造がやや単純でもある
- 涙腺崩壊を覚悟する必要
出版社
TOブックス
発売日
2016年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
余命を告知する側の医者の話なんですね。「死を肯定する」ってどういうことだろう……すごく難しいテーマだと思います。
佐藤メバル
難しいからこそ、小説で描かれる価値があるんです。桐子は患者に寄り添いながら、無理に治療を続けず「死を受け入れる」ことで残された時間を豊かにしようとします。
一方の福原は、どんな状況でも最後の瞬間まで「生」に賭けることを選ぶ。どちらが正しいではなく、患者ごとに二人の向き合い方が違って見えるのがこの作品の深いところです。
橘ナナミ
医者でも答えが出ないんですね……。だからこそ読者も一緒に考えさせられます。
佐藤メバル
ええ。ラストでは、あなた自身がどちらの医者に診てもらいたいか、という問いが重くのしかかってきます。泣けてきて、それからいろいろ考えさせられる一冊です。

犬がいた季節 (双葉文庫 い 64-01)
伊吹有喜 著|双葉社
¥880(税込)
1988年夏の終わり、高校に迷い込んだ一匹の白い子犬は「コーシロー」と名付けられ、生徒とともに学校生活を送ります。初年度に卒業したある優しい少女の面影をずっと胸に秘めながら、コーシローは昭和から平成、そして令和の時代を見つめていく。犬の視点から、いくつもの18歳の逡巡や決意が描かれるのがこの小説の大きな特徴です。2021年本屋大賞第3位、山本周五郎賞候補にもなった傑作青春小説で、世代を超えて読まれる不思議な温かさがあります。
こんな人におすすめ
学校を舞台にした青春小説が好きな人、年月の流れを感じたい人に。卒業や別れを経験したすべての人に、コーシローのまなざしが染みます。何世代にもわたる物語なので、親子で読むのもおすすめです。
良い点
- 犬の視点が新鮮で温かい
- 数十年にわたる時間の流れが美しい
- 青春と老いの両方が味わえる
気になる点
- 犬の視点に違和感を覚える人も
- 時間の経過が速く物足りなさも
- 感動が静かで派手な起承転結はない
出版社
双葉社
発売日
2024年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
高校に迷い込んだ犬が、学校で暮らして、何十年も物語が続いていくっておもしろい設定ですね。犬の視点ってところが特に気になります。
佐藤メバル
コーシローは言葉を話さないけれど、校庭の風景や生徒たちの微妙な表情をじっと見つめるんです。「18歳の胸の内」が、犬の目を通すとこれほど鮮やかに見えるのかと驚かされます。
ある年は部活に打ち込む生徒、またある年は恋に悩む生徒。コーシローの記憶に残る「ある優しい少女」の面影が、物語の鍵になっていきます。
橘ナナミ
世代が変わっても、18歳の悩みには共通するものがあるんですね。
佐藤メバル
そうなんです。だからこそ、中高生にも大人にも読んでほしい作品です。本屋大賞3位になったのも納得の、やさしい傑作です。

あと少し、もう少し (新潮文庫)
瀬尾まいこ 著|新潮社
¥781(税込)
中学最後の駅伝大会に向けて、頼りない美術教師の顧問のもと、寄せ集めのメンバー6人が県大会出場を目指す青春小説です。部長の桝井、元いじめられっ子の設楽、不良の太田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。それぞれが抱えるものを持ち寄って、襷をつないでいく。「あと少し、もう少し、みんなと走りたい」という気持ちが、個々の心の距離を少しずつ縮めていきます。駅伝のレース展開はもちろん、走る前の日常パートまで丹念に描かれていて、ますます襷に込められた想いが伝わってきます。
こんな人におすすめ
部活やチームで何かに打ち込んだ人、仲間と目標を目指す物語が好きな人に。駅伝のラストシーンで涙腺が崩壊します。中学時代の自分と重ねて、応援するように読み終えられる一冊です。
良い点
- キャラクターの個性が立っている
- 駅伝の臨場感がすごい
- 群像劇としての完成度が高い
気になる点
- 青春ものの王道ゆえ展開は素直
- 陸上経験がなくても楽しめるが専門知識はない
- 最後が泣けるとわかっていても泣ける
出版社
新潮社
発売日
2015年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
寄せ集めの6人が駅伝に出るって、まるで定番の青春映画みたいな設定ですね。でも顧問が美術教師ってところがユニークです。
佐藤メバル
頼りなさそうに見えて、この美術教師がまたいい味を出しているんです。部員たちは彼に頼れないからこそ、自分たちで考えて走り、時には衝突する。
「うまくいかないチームが、どうやって一つになっていくのか」という過程を丁寧に描いています。それぞれに事情を抱えた6人の過去が、襷を介して交わっていく構成が本当に巧い。
橘ナナミ
駅伝って一人だけ速くても勝てないですもんね。チームという感じが青春に合ってるなあ。
佐藤メバル
まさに。走る順番や襷の受け渡しひとつに、それぞれの想いがこもるんです。ラストの展開は、このタイトルの意味が全部伝わってきますよ。

それでも旅に出るカフェ (双葉文庫)
近藤史恵 著|双葉社
店主の円は、世界各国で出会ったスイーツやドリンクを再現して振る舞う「カフェ・ルーズ」を営んでいます。遠いどこかで愛されるメニューを口にすれば、たちまち旅に出た気分になれる。そこは会社員の瑛子にとってかけがえのない居場所になっていました。しかし新型コロナの蔓延で店は苦境に立たされ、集う客たちもそれぞれやり場のない思いを抱えている。一杯のスイーツが、ほろ苦い謎や悩みをそっと解きほぐしていく連作短篇集です。タイトルの「それでも」に込められた小さな勇気が、読後も心に残ります。
こんな人におすすめ
おいしい食べ物が出てくる小説が好きな人、コロナ禍に翻弄された日々を振り返りたい人に。世界のスイーツをめぐる旅情と、人とのつながりを感じたいときに。短編連作なので、忙しい毎日の合間にぴったりです。
良い点
- スイーツやドリンクの描写が魅力的
- 短編連作で読みやすい
- 今の時代ならではの温かさがある
気になる点
- 新型コロナの描写に現実を思い出す
- お店のスイーツが食べたくなって腹が減る
- 大きな事件は起こらない
出版社
双葉社
発売日
2025年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
世界のスイーツを再現するカフェなんて、夢みたいな場所ですね。でも新型コロナで苦境に立たされる……というのが今の時代だなあと。
佐藤メバル
そう。この小説は決して甘いだけの物語じゃないんです。店を訪れる客人たちは、それぞれ仕事や人間関係の悩みを抱えていて、一杯のスイーツをきっかけに、自分のなかの澱みと向き合う。
連作短編として、一話ごとに違う味が楽しめます。店主の円さんも、ただ優しいだけではない過去があるようで。
橘ナナミ
「それでも旅に出る」っていうタイトルは、カフェの名前とかけているんですか?
佐藤メバル
ええ。コロナで自由に旅ができなくなった時代でも、カフェに来ればスイーツを通じて世界に思いを馳せられる。
「それでも」という言葉に、人間のしぶとさや希望が込められているんですね。読んだあと、近所のカフェに行ってみたくなりますよ。
時間がない・お金がない大学生のための読書術
橘ナナミ
大学生って読書の時間をつくるのが難しいんです。どうすれば習慣になりますか?
佐藤メバル
書店員だった頃、大学生のお客さんからよく「何から読めばいいですか」って聞かれたんだ。そのときいつもすすめていたのが短編集だよ。「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」は5編の連作短編集で1編ずつ読めるし、「それでも旅に出るカフェ」も各話が独立していて、通学中に1話ずつ読むのにぴったり。読了感を積み重ねるのが習慣化のコツなんだ。
橘ナナミ
読んだあとに深める方法はありますか?
佐藤メバル
一言書評や読書ログをつけてみよう。自分の感じ方を言葉にすると、読書体験が深まるよ。「泣くな研修医」は医療現場の葛藤を描くから、将来の働き方を考えるきっかけになる。「ブルックリン」は移民女性の成長物語で、海外で学ぶ・働くことの意味を考える役に立つ。映画化作品の原作を読むのも効果的。「少年と犬」は映像では拾いきれない細部が原作にあるんだ。
橘ナナミ
なるほど!本が「読むだけ」で終わらないんですね。
感動のバリエーションを広げる隣接ジャンルと学びの入り口
橘ナナミ
恋愛や余命もの以外にも感動する作品はありますか?
佐藤メバル
もちろん。「アルケミスト」は少年の冒険譚で、読み終わったあとに前向きな気持ちになれる。「クララとお日さま」はAIロボットの視点から人間の愛を問う、ノーベル文学賞作家のSF的感動作。「それでも旅に出るカフェ」は日常の謎が解かれていく連作短篇で、ミステリーの要素も楽しめるよ。
橘ナナミ
古典や海外文学は難しそうですが…。
佐藤メバル
「老人と海」は168ページの読みやすい訳で、海外文学の入門に最適。「青い城」は『赤毛のアン』のモンゴメリによる、余命宣告から人生が変わるロマンス。古典には時代を超えた普遍的な感動があるんだ。
橘ナナミ
2020年代の新作だと何がありますか?
佐藤メバル
「また、同じ夢を見ていた」は『君の膵臓をたべたい』の住野よる第2作で、孤独な少女たちの幸せを描く。SNS世代の大学生に響くテーマだね。「最後の医者は桜を見上げて君を想う」は、書店員が選ぶ「感動小説」第1位にも輝いた医療ドラマだよ。
橘ナナミ
読んだ本を学びにつなげることもできますか?
佐藤メバル
できるよ。「52ヘルツのクジラたち」が描く虐待や孤独は、心理学や社会学の視点で読み直すと新たな発見がある。文学研究以外の分野に橋渡ししてくれるのも、読書の大きな魅力なんだ。
よくある質問
大学生におすすめの感動小説は?
橘ナナミ
大学生におすすめの感動小説はについて教えてください。
佐藤メバル
「52ヘルツのクジラたち」がまず挙げられます。2021年本屋大賞第1位で、孤独を抱える人々の再生を描いた物語。大学生の人間関係や自己肯定感に響くテーマで、長編ながら一気に読めてしまう魅力があります。
読書が苦手な大学生でも読める短い感動小説は?
橘ナナミ
読書が苦手な大学生でも読める短い感動小説はについて教えてください。
佐藤メバル
「文豪たちが書いた 泣ける名作短編集」は192ページ、1話完結の短編が並ぶので通学時間に1編ずつ読めます。「老人と海」(168ページ)も短めで、海外文学の入門に最適です。
映画化されている感動小説で、原作がおすすめなのは?
橘ナナミ
映画化されている感動小説で、原作がおすすめなのはについて教えてください。
佐藤メバル
2025年に映画化される「少年と犬」がおすすめ。直木賞受賞作で、震災後の仙台を舞台に一匹の犬が傷ついた人々のもとを巡ります。映画では描ききれない細部や心情を、原作ならではの視点で味わえます。
泣ける小説と感動する小説の違いは?
橘ナナミ
泣ける小説と感動する小説の違いはについて教えてください。
佐藤メバル
涙が必ずしも感動の基準ではありません。「余命10年」は切なさで泣かせる作品ですが、「アルケミスト」は少年の旅から生きるヒントを得る、心を揺さぶり考えさせる作品です。どちらの体験も読書の魅力です。
就活や授業の役に立つ感動小説は?
橘ナナミ
就活や授業の役に立つ感動小説はについて教えてください。
佐藤メバル
「泣くな研修医」は現役外科医が書いた新人医師の物語で、仕事の意味やプロフェッショナリズムを考えさせます。面接での自己PRのヒントにもなるでしょう。「ブルックリン」は移民女性の成長を通して異文化理解を深められます。
図書館で借りやすい感動小説のおすすめは?
橘ナナミ
図書館で借りやすい感動小説のおすすめはについて教えてください。
佐藤メバル
文庫化されている作品は図書館に所蔵されている可能性が高いです。「犬がいた季節」「あと少し、もう少し」「また、同じ夢を見ていた」などは、発行から時間が経ち人気もあるので借りやすいでしょう。大学図書館のOPACで検索してみてください。
何冊読めば読書が習慣になりますか?
橘ナナミ
何冊読めば読書が習慣になりますかについて教えてください。
佐藤メバル
3冊読み切ることがひとつの目安です。最初から長編を狙わず、短編集や中編で読了感を積み重ねましょう。「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」のような連作短編集は、1日1編ペースで進めやすいのでおすすめです。
電子書籍と紙、どちらで読むのがおすすめ?
橘ナナミ
電子書籍と紙、どちらで読むのがおすすめについて教えてください。
佐藤メバル
一長一短があります。電子書籍は場所を取らず、通学中でもスマホですぐ読めるのが利点。紙は手触りや書店で出会う楽しさがあります。「読みたい」と思ったときにすぐ入手できる電子書籍と、お気に入りを紙で持つ使い分けがおすすめです。
まとめ
橘ナナミ
佐藤さんのおかげで、感動小説って一言で言っても本当にいろいろあるんだとわかりました。私も大学生の立場として、自分に合った一冊から読んでみたいです。
佐藤メバル
それがいいね。本は読む人の「今」を映す鏡でもあるんだ。恋愛に悩んだら「余命10年」、友情に悩んだら「あと少し、もう少し」、未来に迷ったら「アルケミスト」を開いてみて。きっと何かが響くはずだよ。
橘ナナミ
はあ。なんだか本を読むのがもっと楽しみになりました。明日さっそく図書館で探してみます!
佐藤メバル
素敵だね。大学生活という地図のない旅を進むとき、感動小説はコンパスのような存在だと思う。自分がどこにいて、どこへ向かいたいのか——物語を読むことで、その針がふっと見える瞬間がある。たくさんの物語と出会って、自分だけの座標軸を育てていってほしい。きっと、そのコンパスが君の進む道を照らしてくれるから。








