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劣等感と人間関係 (アドラー心理学を語る3)
中級者

【要約・書評】『劣等感と人間関係 (アドラー心理学を語る3)』の評判・おすすめポイント

野田俊作|創元社|2017-02-20|178ページ

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この本を一言で言うと

劣等感は誰もが抱えるものだが、それとどう向き合い対人関係に活かすかを、日本アドラー心理学の第一人者が平易な語りで解き明かした中級者向けの一冊。

この本の概要

野田俊作による「アドラー心理学を語る」シリーズ第3巻は、アドラー心理学の核心テーマのひとつである「劣等感」と「対人関係」を深く掘り下げた作品だ。アドラーは人間の行動すべてに「目的」があると説いたが、本書はその目的が対人関係の中でどのように劣等感と結びついているかを、具体的なエピソードを交えながら丁寧に説明する。 劣等感そのものは悪ではない、とアドラーは言う。それは人が成長しようとする原動力になりうるものだ。問題になるのは劣等感を「劣等コンプレックス」として誤用したとき、つまり「自分には無理だから」という言い訳に使い始めたときである。本書はその違いを明確に示し、劣等コンプレックスと表裏一体の「優越コンプレックス」—他者を見下すことで自分を守ろうとする心理—についても詳しく解説する。 対人関係の改善という観点では、野田俊作は「共同体感覚」という概念を軸に置く。劣等感を他者との比較でなく、「より良い自分」への指針として機能させることができれば、人間関係は協力的なものに変わっていく。本書の後半では、職場・家族・友人関係における具体的な場面を取り上げ、アドラー心理学をどう実践に落とし込むかを示している。 「アドラー心理学を語る」シリーズは講演録をもとにしており、語り口が平易で読みやすい。第3巻は第1・2巻の概念を前提に構成されているため、シリーズを通じて読むのが理想的だが、本書単体でも劣等感という切り口から十分に読み解ける内容になっている。アドラー心理学に入門し、もう一歩踏み込みたい読者にとって最適な一冊だ。

「劣等感をなくせ」じゃなくて「使い方を変えろ」という話だった

部下のモチベーション管理に悩んで手に取った本です。正直、アドラー心理学は「嫌われる勇気」でなんとなく知ってはいたんですが、あの本ってどこか「強くなれ」系の自己啓発っぽい雰囲気があって、あまり刺さらなかったんですよね。 この本はそれとは全然違って、まず「劣等感は人間なら全員持ってる、問題はそれとの付き合い方だ」という話から入ります。これだけで「あ、なくそうとしなくていいんだ」とホッとしました。 特に印象に残ったのが、劣等コンプレックスと優越コンプレックスがセットで機能するという話。「自分はダメだ」と感じている人が、別の誰かを見下すことで心のバランスを取ろうとする——これ、職場でリアルに見たことあるやつだ、と思って。名指しはしないですけど、ある同僚の行動パターンがそのまんま書いてあって、少し怖くなりました。 自分に置き換えてみると、「あの上司より早く帰るのはダメだ」とか「同期に比べて昇進が遅い」とか、ずっと比較で自分を評価してたなと気づいた。野田俊作さんはここで「比較の基準を他者でなく昨日の自分に変えなさい」と言うんですが、これがシンプルすぎてかえって難しい。 実際に試してみたこととして、チームの朝礼でメンバーを褒めるとき、以前は「○○さんより」という比較をやめて「先月より」「先週より」というフレーミングに変えました。すぐに劇的な変化があったわけじゃないけど、メンバー同士のギスギス感が少し減った気はする。 178ページと薄いし、語りかけるような文体なので2時間くらいで読める。アドラーの考え方を職場の人間関係に使いたい中間管理職には特におすすめです。ただ、シリーズの3冊目なので1冊目から読んだほうが背景がわかりやすいとは思います。

38歳 中間管理職 / 製造業・チームリーダー

この本で学べること

劣等感は人間の普遍的な動機づけ

アドラーは劣等感を「劣った存在である」という烙印ではなく、人が成長を目指す際の原動力と捉えた。生まれながらに非力な人間が環境に適応しようとする過程で自然に生まれるものであり、それ自体は病的ではない。

劣等コンプレックスは「言い訳」として機能する

劣等感が「だから自分には無理だ」という結論への飛躍と結びついたとき、劣等コンプレックスに変わる。これは課題に向き合わなくてよい理由として使われ、成長を阻害する。アドラー心理学ではこの「目的」に気づくことが治療の第一歩となる。

優越コンプレックスは劣等感の裏返し

他者を見下したり、大言壮語で自分を大きく見せようとする行動は、深い劣等感の補償行為である。劣等コンプレックスと優越コンプレックスは表裏一体であり、どちらも本質的な自己肯定感の欠如から来ている。

比較の基準を「他者」から「昨日の自分」へ

他者との比較は常に相対的で終わりがない。アドラーは自己成長の基準を昨日の自分に置くことを勧める。これにより競争的な劣等感ではなく、協力と共同体感覚に基づく対人関係が育まれる。

共同体感覚が対人関係を変える

アドラー心理学における健全な対人関係の鍵は「共同体感覚」—自分が他者や社会の一部であるという所属感と貢献意欲—にある。劣等感をバネに共同体に貢献しようとするとき、それは健全な自己向上の動機となる。

良い点・気になる点

良い点

  • 178ページと薄く、講演録ベースの平易な語り口で読みやすい
  • 劣等コンプレックスと優越コンプレックスの関係を図式的に整理していて理解しやすい
  • 職場・家族など具体的な場面に落とし込んだ実践的な説明がある
  • シリーズ第3巻だが単独でも十分に読め、テーマが絞られている分むしろ深い

気になる点

  • シリーズ前巻を読んでいないと前提概念(ライフスタイル等)の説明が省かれている箇所がある
  • 理論解説が中心で、実践ワークや演習が少なく行動変容には自分で応用する必要がある
  • 2017年刊だが内容的には野田俊作の旧講演録をまとめたものなので、事例が少々古い

著者について

こんな人におすすめ

職場の人間関係に行き詰まっている中間管理職

部下のモチベーション低下や同僚との摩擦の根底にある劣等コンプレックスのメカニズムを理解でき、対話や関わり方を変えるヒントが得られる。

自己比較や他人の評価が気になって疲れてしまう人

なぜ他者と比較し続けてしまうのかを心理学的に解説し、比較の基準を自分自身に変えるという具体的な視点の転換を提示している。

アドラー心理学の入門書を読み終え、もう一歩深めたい人

「嫌われる勇気」などを読んで興味を持ったが、より実践的・体系的に学びたい中級者に適した深度と具体性がある。

よくある質問

Q. シリーズ1・2巻を読んでいなくても理解できますか?
A. 本書単体でも読めますが、「ライフスタイル」「目的論」といったアドラー心理学の基本概念は第1・2巻で詳しく説明されています。シリーズを最初から読むか、「嫌われる勇気」などの入門書で予備知識をつけてから読むとよりスムーズです。
Q. 心理カウンセリングの専門家でなくても役立ちますか?
A. 十分に役立ちます。対象読者は一般のビジネスパーソンや家族関係・職場の人間関係に悩む人です。カウンセリング技法の解説ではなく、自分自身の行動や思考パターンを見直すための実践的な心理学として書かれています。
Q. 「嫌われる勇気」と内容はどう違いますか?
A. 「嫌われる勇気」はアドラー心理学をソクラテス的対話形式でドラマチックに紹介した入門書です。本書は野田俊作という日本の実践家が、特に「劣等感」というテーマに絞って講演した内容をまとめており、より具体的で実用的な内容が多いです。