音楽鑑賞を深める本のおすすめ人気ランキング12選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、音楽鑑賞の本を探していたら、クラシックの事典からジャズの名盤ガイド、吹奏楽の本、スペイン音楽の大著まで並んで、正直どこから手をつければいいのか分からなくなりました。「楽典」「音楽理論」「音楽学」という言葉も出てきて、余計に混乱しています。
佐藤メバル
いい質問だね。まず言葉をほどこう。楽典は楽譜を読むための約束事、音楽理論は「なぜその和音や進行が心地よいのか」を体系立てて考える枠組み、音楽学は音楽を歴史や社会、文化のなかで扱う学問だ。鑑賞を楽しむだけなら、この三つを順番に制覇する必要はない。楽典ゼロで最後まで読める本は、ちゃんと用意されているよ。
橘ナナミ
それは安心しました。じゃあ最初に決めるべきことは何でしょう。
佐藤メバル
目的と、本の「型」だね。鑑賞の本は通読型・辞書型・伴走型にはっきり分かれる。曲を引いて使う事典、頭から読み通す新書、コンサートの前に開くガイド。この型を見誤って分厚い理論書から入ると、たいてい途中で止まる。書店員時代、そういうお客さんを何人も見てきたよ。
橘ナナミ
型……。研究の文献でも同じ失敗をしたので耳が痛いです。選び方を教えてください。
音楽鑑賞を深める本の選び方
目的別 ── 聴く愉しみ/歴史/理論/作る側/語る
佐藤メバル
聴く愉しみを深めたいなら、『耳の解像度を上げる旅 クラシック音楽鑑賞法 入門から上級まで』が分かりやすい。コンサートで眠くなる、良い演奏と言われても何が良かったのか分からない、というところから始まり、楽器を「声」として聴く方法、旋律・リズム・和声・音色という四つの焦点、形式の聴き方へと段階を上げていく。全編に「♪急所30秒」という、実在の名曲の「ここを、こう聴く」という案内が入っていて、楽譜が読めなくても最後まで読める。
橘ナナミ
歴史から入りたい場合はどうですか?
佐藤メバル
『クラシック音楽鑑賞事典』だね。中世・16世紀の教会音楽からバロック、古典派、ロマン派、国民楽派、印象派、現代音楽までを時代順に並べ、最後に指揮者・演奏者・楽団と合唱団という「鑑賞の手引き」を置いている。曲名や作曲者を知らなくても、忘れられないメロディーから入れる作りだ。
橘ナナミ
理論を学びたい、作る側に回りたいときは?
佐藤メバル
『神曲のツボ! 「カッコいい」の構造分析』が異色だ。ジャズ・キーボーディストの坪口昌恭が、ロバート・グラスパー、ブラッド・メルドー、ウェザー・リポートからYMO、SMAP、ブルガリアン・ヴォイスまでを、コード譜・メロディー譜・リズム譜を駆使して見開き2ページで分析する。ただし譜例が前提の本だから、ここは前提スキルが要る。
読書体力・本の型で選ぶ
佐藤メバル
通読型の代表は新書サイズ。中山康樹『ジャズの名盤入門』は50枚を選んで、BGM代わりに聴くだけでは気づかない名盤の魅力と聴きかたを教える。通勤のなかで読み切れる軽さだ。
橘ナナミ
辞書型はどれでしょう。
佐藤メバル
『クラシックの「曲名」と「作曲家」がすぐわかる本』は、映画やCMで耳にした旋律から引ける検索ガイドで、定番85曲の美味しい部分を集めたCDが付く。『クラシック音楽鑑賞事典』より軽く、引きやすさに振った一冊だ。
橘ナナミ
ラズウェル細木さんのマンガはどの型ですか?
佐藤メバル
『マンガはじめてのジャズ教室』は通読型であり、同時に辞書型でもある。テーマとアドリブ、バンドの編成、レーベル、スタンダード、ジャズ史の各様式が1時限ずつ講義形式で並び、巻末に様式別の名盤セレクションがつく。分からなくなったら戻る場所としても使える。
ジャンル別の入口
佐藤メバル
クラシックはメジューエワ『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』も外せない。平均律クラヴィア曲集からドビュッシー、ラヴェル『夜のガスパール』まで9章で、作曲家は基本的に演奏家に親切で、こう弾いてほしいことは楽譜の何気ない指示にすべて書き込まれている、という現役ピアニストの視点が得られる。
橘ナナミ
オペラは? ハードルが高そうで……。
佐藤メバル
『オペラ鑑賞講座超入門』は12講の講義形式だ。アリアとレチタティーヴォの違い、声域、重唱と合唱、序曲の役割、演出の読み替えまでを押さえたうえで、『椿姫』『蝶々夫人』『トスカ』『スペインの時』『フィガロの結婚』を実践として歩く。「気楽に鑑賞するためのコツ」というスタンスが最後まで崩れない。
橘ナナミ
ジャズは3冊ありますよね。使い分けが知りたいです。
佐藤メバル
『人生が変わる55のジャズ名盤入門』は、ジャズ・ベーシストで作曲家の鈴木良雄が音楽仲間にアンケートを取って55枚を選んだ本で、演奏する側から見た選盤が魅力だ。『ジャズの名盤入門』は50枚を「名盤の時代」「レコード芸術としてのジャズ」「フュージョンを経て一巡した歴史」という流れで並べる。『マンガはじめてのジャズ教室』は用語と歴史の土台を作る。選盤から入るか、歴史から入るかで決めればいい。
橘ナナミ
吹奏楽やワールド・ミュージックはどうでしょう。
佐藤メバル
『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』は50曲を輸入編と国産編に分けて紹介し、軍楽隊として日本に入り部活動へ定着するまでの歴史もたどる。CDガイドとプレイリスト、曲名索引まで付く。スペイン音楽なら『まるごと1冊 スペイン音楽の本』で、各地域の民謡、フラメンコ、オペラやサルスエラまでを一冊で見渡せて、SpotifyやApple Musicで楽曲を聴きながら読めるつくりになっている。
橘ナナミ
邦楽やJ-POPの背景を知る本は、この中にあるんでしょうか。
佐藤メバル
正直に言うと、この顔ぶれで邦楽を正面から扱う一冊は少ない。近いところでは『神曲のツボ!』がYMOやSMAPを取り上げ、コードと言葉の両面から「なぜカッコよく聴こえるのか」を分析している。邦楽の通史を求めるなら別途あたる必要がある、というのが正確なところだ。
前提スキルと入手性で選ぶ
佐藤メバル
楽譜が読めなくても成立するか、は買う前に必ず確認したい。『耳の解像度を上げる旅』『クラシック音楽鑑賞事典』『オペラ鑑賞講座超入門』、ジャズの名盤ガイド、吹奏楽、スペイン音楽の各書は、楽典の知識がなくても読み進められる。逆に『神曲のツボ!』や『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』は譜例や弾き方に踏み込むので、楽譜に親しみがあると立ち上がりが早い。
橘ナナミ
入手しにくい本もあるんですか?
佐藤メバル
『クラシック音楽鑑賞事典』は1983年の刊行だから、新刊の店頭に並んでいるとは限らない。図書館や古書店、復刊や電子化の状況を確認するのが現実的だ。CD付きの本は中古でディスクが欠けていることがあるから、そこも見ておきたい。『音楽鑑賞指導入門』は学校の先生向けの指導法の本で、純粋に聴く愉しみを求める読者には向かない。この見極めだけでも買い方の満足度はかなり変わるよ。
音楽鑑賞を深める本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、12冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
音楽鑑賞を深める本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
【POD】耳の解像度を上げる旅 クラシック音楽鑑賞法 入門から上級まで
万象知楽編集部 著|パブファンセルフ
¥2,500(税込)
「コンサートで眠くなるのは感性のせいではなく、どこに耳を向ければいいかをまだ知らないだけ」。この本はそこから始まります。退屈の三つの正体、楽器を声として聴く方法、旋律・リズム・和声・音色という四つの焦点、演奏の良し悪しを見分ける三つの道具、聴き比べの手順、自分だけの聴取記のつけ方までを順に案内。全編の♪急所30秒が「ここを、こう聴く」と具体的に指すので、楽譜が読めなくても迷いません。段階別名曲リストや鑑賞プランといった付録も実用的です。
こんな人におすすめ
コンサートに行っても退屈してしまう人、曲は好きだが何を聴けばいいか分からない人、独学で鑑賞を体系立てたい人に。入門から上級まで段階が示されているので、自分が今どこにいるのかを見失わずに読み進められます。
良い点
- ♪急所30秒で実曲の聴きどころが具体的
- 楽譜が読めなくても通読できる構成
- 段階別名曲リストなど付録が充実
気になる点
- POD版のため書店で見かけにくい
- 円卓会議の会話は創作と注記されている
- 読み進めるには実際に音を聴く時間が要る
出版社
パブファンセルフ
発売日
2026年10月01日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
音楽鑑賞の本って、結局は「感性を磨きましょう」で終わるものが多い気がするんです。コンサートで眠くなった私には、正直ちょっとつらいなって思っていて。
佐藤メバル
いい質問だね。この本はそこを正面から否定するところから始まるんです。「眠くなるのは感性のせいではなく、どこに耳を向ければいいかをまだ知らないだけ」と。
退屈の三つの正体を挙げ、楽器を「声」として聴く方法、旋律・リズム・和声・音色という四つの焦点を順に当てていく。
耳の解像度を一段ずつ上げる設計です。
橘ナナミ
なるほど! カメラのピントみたいに、聴く場所を決めていくんですね。でも、楽譜が読めないと途中で置いていかれませんか?
佐藤メバル
そこも大丈夫。全編に「♪急所30秒」というコーナーがあって、実在の名曲の「ここを、こう聴く」を具体的に案内してくれます。
付録には段階別の名曲リスト、聴き比べガイド、用語集、作曲家ミニ年表、鑑賞プランまで付いている。まず一曲を四つの焦点で区切って聴いてみる、それが最初の一歩ですよ。
クラシック音楽鑑賞事典
神保ケイ一郎 著|講談社
¥3,520(税込)
曲名も作曲者も知らないのに、一度聴いたら忘れられないメロディーがある。本書はそんな名曲をさらに印象深くする鑑賞事典です。『カルメン』『アルルの女』の一場面、『月光』ができるまでのエピソード、楽聖たちの恋愛が音楽へ昇華するさまなど、中世・16世紀の教会音楽からバロック、古典派、ロマン派、国民楽派、印象派、現代音楽まで作曲家と作品をハンディに網羅。巻末には世界の名曲100選と、指揮者・演奏者・楽団と合唱団の鑑賞の手引きを収めています。
こんな人におすすめ
映画やCMで流れる名曲の名前を引きたい人、作曲家と作品の流れを通して押さえたい人、手元に置いて繰り返し開く辞書がほしい人に。目次が時代順に並んでいるので、拾い読みしているだけでも音楽史の地図が頭に入っていきます。
良い点
- 中世から現代まで時代順に網羅
- 曲ができた逸話が読み物として楽しい
- 世界の名曲100選など巻末資料が充実
気になる点
- ハンディゆえ各項目は簡潔に留まる
- 網羅的で通読には根気がいる
- 収録内容が広く初心者には重い
出版社
講談社
発売日
1983年11月08日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「カルメン」も「アルルの女」も名前は聞いたことがあるのに、どの曲がどっちだったか毎回あいまいで……。そういう人に効く本ってありますか?
佐藤メバル
まさにこの事典がその役ですね。曲名や作曲者の知識がなくても、忘れられないメロディーから入っていい。『カルメン』や『アルルの女』の一場面、『月光』ができるまでのエピソード、楽聖たちの恋愛が音楽へ昇華する話など、作品の背景から迫ります。
中世の教会音楽から現代音楽まで作曲家と作品を時代順に並べているので、読むうちに音楽史の流れがつながります。
橘ナナミ
辞書みたいに引く使い方もできるんですか? 今日はこの曲だけ、みたいに拾いたいときもあるので。
佐藤メバル
できますよ。第三部には指揮者・演奏者・楽団と合唱団の「鑑賞の手引き」、巻末には世界の名曲100選も付いています。
まず知っているメロディーを目次で探して、そこから前後の時代に飛んでみる。そういう寄り道ができるのが、ハンディな事典の強みなんです。
オペラ鑑賞講座超入門
神木勇介 著|青弓社
¥1,760(税込)
通年公演やテレビ放送でオペラが身近になったとはいえ、「難しいもの」と思い込んで足が止まる人は多い。本書はそんな初心者に向けて、「気楽に鑑賞するための12のちょっとしたコツ」を講座形式で開講します。オペラとは何か、ミュージカルとの違い、オペレッタとのつながり、アリアとレチタティーヴォ、重唱と合唱、序曲の役割、読み替え演出の是非まで。後半は『椿姫』『蝶々夫人』『トスカ』『フィガロの結婚』などの実践講義で、小道具を手がかりに物語をほどいていきます。
こんな人におすすめ
オペラのチケットを初めて取った人、配信で見たいが何から選べばいいか分からない人、用語でつまずいて途中で諦めた人に。第12講まで読み切れる分量なので、観る前の予習にも観た後の復習にも使えます。
良い点
- 12講形式で一歩ずつ進める
- 有名5作品の実践講義が付く
- ミュージカルとの違いから説く
気になる点
- 上演そのものの映像は付かない
- 扱う作品は有名どころに絞られる
- 入門者向けで上級者には物足りない
出版社
青弓社
発売日
2012年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
オペラって、一度チケットを取ったはいいものの、幕が開く前に眠くなりそうで怖いんです。あと、ミュージカルとの違いもよく分かっていなくて。
佐藤メバル
いい入り口だね。この本は第1講で「オペラとは何か」「ミュージカルとの違い」から始めます。オペラになくてミュージカルにあるもの、逆にオペラの楽しさはどこにあるのか。
そこを押さえてから、アリアとレチタティーヴォ、重唱と合唱、序曲の役割へと進む。12のちょっとしたコツという言い方のとおり、身構えずに読めますよ。
橘ナナミ
後半は作品の話になるんですか? 「椿姫」とか「蝶々夫人」って、名前だけは知っているんですけど。
佐藤メバル
ええ、第8講から最終講まで『椿姫』『蝶々夫人』『トスカ』『スペインの時』『フィガロの結婚』を一章ずつ扱います。
たとえば『椿姫』なら、なぜヒロインが「椿姫」と呼ばれるのか、乾杯の歌はなぜあんなに華やかなのか。「イゾルデの愛の秘薬」のような小道具コラムも挟まって、物語の勘所がつかめる仕掛けです。
ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ
イリーナ・メジューエワ 著|講談社
¥1,320(税込)
世界最高峰、ロシアピアニズムの伝統を引き継ぐ現役の女性ピアニストが、代表的なピアノ名曲を平易に解説した一冊です。バッハ『平均律クラヴィア曲集』は練習の指定が一切ないのに24曲全部を弾けばテクニックをマスターできる、ショパンは手の動きを意識して弾きやすく書かれている、ベートーヴェンは弾き手のことを考えていない——そんなプロにしか分からない視点が満載。作曲家は基本的に演奏家に親切で、望みは楽譜の何気ない指示に書き込まれている、という指摘が耳を変えます。
こんな人におすすめ
ピアノを弾いていて曲の解釈に迷う人、聴く専門だけれど演奏家の意図まで知りたい人、楽譜の指示を読み解く面白さに触れたい人に。バッハからドビュッシー・ラヴェルまで章が分かれているので、好きな作曲家からの拾い読みもできます。
良い点
- 現役ピアニストによる実践的な解説
- 作曲家ごとの章立てで拾い読み可
- 弾く人と聴く人双方に効く
気になる点
- 収録曲は定番の名曲が中心
- 楽譜そのものは掲載されていない
- 入門者には専門的に感じる箇所もある
出版社
講談社
発売日
2017年09月20日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ピアノは大学の途中でやめてしまったんですけど、聴くのは今でも好きなんです。「別れの曲」とか「ラ・カンパネラ」を、ただきれいだなで終わらせたくなくて。
佐藤メバル
それなら「弾きどころ」のパートが効きますよ。著者はロシアピアニズムの伝統を引き継ぐ現役のピアニストで、バッハは24曲全部を弾けばテクニックが身につくのに練習の指定がない、ショパンは手の動きを意識して書かれている、ベートーヴェンは弾き手のことを考えていない——と、作曲家の性格を楽譜の書き方から言い当てていきます。
橘ナナミ
作曲家の性格が楽譜に出るって、すごく面白いですね! では聴くときは、どこを意識すればいいんでしょう?
佐藤メバル
著者は「作曲家は基本的に演奏家に親切で、こうしてほしいということは楽譜の何気ない指示にすべて書き込まれている」と言います。
だから聴きながら「この強弱はなぜここにあるんだろう」と問いを立てるだけで、音楽の解像度が上がる。バッハ、モーツァルト、シューベルト、ショパン、リスト、ムソルグスキーと章があるので、好きな作曲家からどうぞ。
人生が変わる55のジャズ名盤入門
鈴木良雄 著|竹書房
¥1,210(税込)
レストランのBGM、スーパーの店内、ラジオの合間。日常に流れているジャズに興味はあるのに、何から聴けばいいか分からない。そんな人のために、日本を代表するジャズ・ベーシストで作曲家の鈴木良雄が、音楽仲間たちにアンケートを取って「これさえ聴けば大丈夫」という55枚を厳選しました。選んだのは評論家ではなく演奏する側。マイルス・デイヴィスの「ジャズで大切なことはオネスティー(正直さ)だ」という言葉どおりの正直な解説が付きます。
こんな人におすすめ
ジャズを聴きたいけれど一枚目で止まっている人、名盤ガイドの「正解」に少し疲れた人、演奏する人の言葉で選びたい人に。喫茶店や配信で流れている曲の出どころを確かめる索引代わりにもなります。
良い点
- 現役ベーシストが仲間の声を集めて選定
- 55枚という多いようで絞られた枚数
- オネスティー基準の解説が率直
気になる点
- 選盤の好みがはっきり分かれる
- 音源は付属せず自分で探す必要がある
- 入門書ゆえ各盤の記述は簡潔
出版社
竹書房
発売日
2016年02月04日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
カフェで流れてるジャズがかっこいいなと思って、何枚か買ってみたんです。でも、どれが「いい盤」なのか、正直まだ分からなくて。
佐藤メバル
その迷い、この本が想定している読者そのものですね。著者の鈴木良雄さんは日本を代表するジャズ・ベーシストで作曲家。
評論家目線ではなく、音楽仲間にアンケートを取って「これさえ聴けば大丈夫」という55枚を選んでいます。
マイルスの「ジャズで大切なことはオネスティー(正直さ)だ」という言葉のとおり、正直な解説を加えたと紹介されています。
橘ナナミ
演奏する人が選んでるっていうのがいいですね。「これを聴かないとモグリ」みたいな圧迫感が苦手だったので、少し安心しました。
佐藤メバル
そこがこの本の気楽さです。55枚という数も絶妙で、多すぎず少なすぎず。まずは一枚を決めて、そこから同じミュージシャンが絡む盤へ枝を伸ばしていく。
アンケートを取ったからこそ、複数の耳で選ばれた偏りの少なさがあるんですよ。
ジャズの名盤入門
中山康樹 著|講談社
¥924(税込)
「この50枚を聴けばジャズの真髄がわかる」——BGM代わりに流すだけでは気づかない名盤ならではの魅力を、その聴き方までつぶさに教える講談社現代新書です。PART1は新しいメディアが生んだ「名盤の時代」、PART2は60年代に頂点を迎えた「レコード芸術としてのジャズ」、PART3はフュージョンの時代を経て一巡したジャズの歴史。単なる好みの羅列ではなく、録音が作品になった経緯から選ぶのが特徴で、同じマイルスの盤でも何が違うのかが見えてきます。
こんな人におすすめ
名盤リストを「流れ」として理解したい人、録音史やレーベルの背景に関心がある人、一枚を深く聴く方法を知りたい人に。前半から順に読むと、ジャズが聴き手の音楽から作り手の芸術へ変わっていく過程がつかめます。
良い点
- 新書サイズで通読しやすい
- 50枚を歴史の流れで配置している
- 聴き方の具体が丁寧に示される
気になる点
- 音源は付属しない
- 掲載盤は執筆当時の選定になる
- 図版や譜例はほとんどない
出版社
講談社
発売日
2005年09月17日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
さっきの55枚の本と、この50枚の本って、同じジャズの名盤ガイドですよね。どう使い分けたらいいんでしょう?
佐藤メバル
いいところに気づいたね。鈴木さんの本は「演奏する側の耳」で選んだ55枚。中山康樹さんの『ジャズの名盤入門』は、新しいメディアが生んだ「名盤の時代」、60年代に頂点を迎えた「レコード芸術としてのジャズ」、フュージョンの時代を経て一巡した歴史まで、50枚を流れとして並べるのが持ち味です。
橘ナナミ
なるほど! 選曲というより、ジャズがどう聴かれてきたかの歴史なんですね。そこは全然違うんだ。
佐藤メバル
そのとおり。だから「BGM代わりに聴くだけでは気づかない名盤ならではの魅力とは」という問いが立てられる。
同じ曲でも録音が変われば何が変わるのか、聴きかたをつぶさに教えてくれます。流れから知りたい人はこちら、気軽に一枚選びたい人は鈴木さんの本、と分けるといいですね。
ラズウェル細木のマンガはじめてのジャズ教室
ラズウェル細木 著|DU BOOKS
¥1,100(税込)
『酒のほそ道』のラズウェル細木が、ジャズをマンガで懇切丁寧に解説した入門書です。「どこから聴いていいか分からない」「アドリブ、バップ、レーベル、スイングという用語が分からない」、さらには「ジャズに飽きた」「聴きたいものがなくなった」という人まで対象にしているのが面白いところ。第1部でジャズとは何かを、第2部でジャズの歴史を、第3部でジャズ喫茶の活用法やアナログのすすめまで授業形式で進み、最後に名盤セレクションが付きます。
こんな人におすすめ
活字の入門書で挫折した人、用語の意味を一度さらっておきたい人、読み物として笑いながらジャズ史をなぞりたい人に。「卒業証書」まで用意された教室なので、気負わず最初の一冊にできます。
良い点
- マンガなので用語の理解が早い
- ジャズ史を時代順に一通り追える
- 名盤セレクションがジャンル別に付く
気になる点
- 情報量より雰囲気が優先されがち
- 掲載盤の音源は付属しない
- 深い演奏分析は期待できない
出版社
DU BOOKS
発売日
2013年12月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ジャズの本を読んでも、ビバップとかハード・バップとか、横文字が続くと途中で頭が止まっちゃうんです。もう用語から逃げたい気持ちで。
佐藤メバル
それなら逃げずに済みますよ。『酒のほそ道』のラズウェル細木さんがマンガでジャズを解説した一冊です。第1部で「ジャズとは何ぞや?」からテーマとアドリブ、ヴォーカル、バンドの編成、レーベルまで、第2部でスイング、ビバップ、ハード・バップ、モード、フリー、フュージョンとジャズ史を時限ごとに進みます。
橘ナナミ
マンガで用語を追えるのは、正直すごく助かるかも。しかも「ジャズに飽きた人」にも効くって書いてあるのが意外でした。
佐藤メバル
そこがこの本の変わっているところで、対象に「ジャズに飽きた人」「聴きたいものがなくなった人」まで挙げている。
第3部はコレクションの増やし方、お気に入りの曲の見つけ方、ジャズ喫茶活用法、アナログのすすめ、ブラインド・フォールド・テストまで、いわば幸せジャズ・ファン養成講座です。
最後にジャンル別の名盤セレクションと卒業証書も付いてきますよ。
聴かずぎらいのための吹奏楽入門
漆畑奈月 著|アルテスパブリッシング
¥2,090(税込)
「聴かずぎらい」というタイトルどおり、吹奏楽の起源から輸入史、日本の作編曲家たちまでを語り尽くす画期的なガイドです。全国で演奏されてきた50曲を輸入編と国産編に分け、ホルスト、リード、兼田敏の定番からティケリ、ジョン・マッキー、挾間美帆の最新作まで、作曲家の特徴や曲の聴きどころ/吹きどころを掘り下げます。軍楽隊として日本に入り部活動として定着するまでの歴史もたどり、CDガイドとプレイリスト、索引まで充実しています。
こんな人におすすめ
コンクール曲の背景を知りたい人、吹奏楽部の顧問や保護者、楽器はやらないが音楽を深く聴きたい人に。輸入編と国産編に分かれているので、好きな作曲家から拾い読みするのも楽しい一冊です。
良い点
- 輸入編と国産編で50曲を紹介
- 軍楽隊からの歴史までたどる
- CDガイドとプレイリストが充実
気になる点
- 楽器経験を前提とした用語もある
- 音源自体は付属しない
- 扱うのは吹奏楽の定番が中心
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2023年06月26日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
吹奏楽って、部活のイメージが強くて、聴く側としてはあまり真剣に考えたことがなかったんです。でもコンクールの中継を見ると、すごい熱量で……。
佐藤メバル
その入り口にぴったりの本があります。タイトルの「聴かずぎらい」がうまい言い方で、まず「吹奏楽という島国からの脱出」から始まる。
第1部で軍楽隊として日本に入ってきた歴史をたどり、第2部は50年代から2000年代までの輸入曲のコンクール演奏史、第3部は日本の作曲家たちの作編曲史です。
50曲を輸入編と国産編に分けて紹介しています。
橘ナナミ
ホルストとかリードは名前だけ知ってますけど、最近の作曲家は全然分からないんです。それでもついていけますか?
佐藤メバル
大丈夫。ホルスト、リード、兼田敏といった定番から、ティケリ、ジョン・マッキー、挾間美帆の最新作まで並んでいます。
作曲家の特徴やプロフィール、曲の聴きどころと吹きどころ、コンクールでの位置づけまで掘り下げてくれるので、「あの曲はなぜああ鳴るのか」が分かるようになりますよ。
CDガイドとプレイリスト、曲名索引も付いています。
まるごと1冊 スペイン音楽の本
下山静香 著|アルテスパブリッシング
¥4,180(税込)
スペイン音楽、中南米音楽を専門とするピアニストの下山静香が、その世界を一冊にまとめた「スペイン音楽大全」です。序章でエキゾティシズムの正体やミの旋法、歌と踊りを押さえ、地理と歴史、作曲家と演奏家、作品紹介、踊りと歌、舞台芸術、文化と都市へと進みます。フラメンコのカンテ、ギターの爪弾き、各地域の民謡、オペラやサルスエラ、鉄板名曲10選と聴くべき名曲10選まで。SpotifyやApple Musicで音を聴きながら読める設計も嬉しい。
こんな人におすすめ
「アランフエス協奏曲」や「アストゥリアス」の背景まで知りたい人、フラメンコやサルスエラに惹かれる人、音楽からスペインという国へ入ってみたい人に。10都市の音楽散歩は旅の計画にも使えます。
良い点
- 作曲家・作品・踊り・都市まで網羅
- 名曲10選が二つのリストで示される
- 配信音源と合わせて読める
気になる点
- 分量が多く通読には覚悟がいる
- 専門的な記述も含まれる
- 音源自体は付属しない
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2023年09月25日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「アランフエス協奏曲」も「アストゥリアス」も好きなんですけど、スペインの音楽って、その二曲以外に何があるのか全然知らなくて。フラメンコ以外は空白なんですよね。
佐藤メバル
その空白を一冊で埋める本があります。スペイン音楽と中南米音楽を専門にするピアニスト、下山静香さんによる大全です。
序章でエキゾティシズムの正体やミの旋法、歌と踊りを押さえたうえで、地理と歴史、作曲家と演奏家、作品紹介、踊りと歌、舞台芸術、文化と都市へ。
鉄板名曲10選と聴くべき名曲10選という二つのリストも用意されています。
橘ナナミ
地域ごとに音楽が違うっていう話も気になります。カタルーニャとかバスクとか、名前だけは聞いたことがあって。
佐藤メバル
そこも丁寧ですよ。カスティーリャ、アンダルシア、カタルーニャ、バスク、ガリシアなどの民謡から、オペラやサルスエラまで扱います。
第6章はマドリード、グラナダ、セビリャなど10都市の音楽散歩になっていて、旅の計画にも使える。SpotifyやApple Musicで楽曲を聴きながら読めるのもありがたいですね。
神曲のツボ! 「カッコいい」の構造分析
坪口昌恭 著|アルテスパブリッシング
¥2,200(税込)
“カッコいい”曲では何が起きているのか、並の曲とどこが違うのか。東京ザヴィヌルバッハなどで活躍するジャズ・キーボーディストの坪口昌恭が、コード譜やメロディー譜、リズム譜を駆使して分析した一冊です。ロバート・グラスパー、ブラッド・メルドー、ウェザー・リポート、マイルス、チャーリー・パーカー、ディアンジェロ、デヴィッド・ボウイ、YMO、SMAP、ブルガリアン・ヴォイスまで見開き2ページに1曲。音楽誌の連載をまとめた読みやすさで、作曲とアレンジの秘密に迫ります。
こんな人におすすめ
好きな曲の「すごさ」を言葉にしたい人、コードや転調の仕掛けに興味がある人、ジャンルを横断して聴くのが好きな人に。譜面が読めなくても、たとえ話の巧みさで仕掛けの輪郭はつかめます。
良い点
- 見開き1曲で読み進めやすい
- コード譜など譜面付きの分析
- ジャズ以外のポップスも対象
気になる点
- 譜面の知識があるとより楽しめる
- 個々の分析は短めにまとまる
- 音源自体は付属しない
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2022年07月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「この曲、なんかカッコいい」って言うだけで終わっちゃうのがもったいなくて。グラスパーもメルドーも好きなんですけど、何がすごいのか説明できないんですよ。
佐藤メバル
まさにその「説明できない」を解剖する本です。著者は東京ザヴィヌルバッハなどで活躍するジャズ・キーボーディスト、坪口昌恭さん。
冨田ラボの冨田恵一さんが「緻密で具体的な理論解説をこれほどポップに文章化した本をほかに知りません」と推薦しています。
見開き2ページに1曲で、コード譜やリズム譜も使って分析していきます。
橘ナナミ
ジャズだけじゃなくて、ボウイやYMO、SMAPまで入っているのが意外でした。ジャンルをまたいでいいんですね。
佐藤メバル
ええ、ロバート・グラスパーの〈アフロ・ブルー〉、ブラッド・メルドーの〈ダスティ・マックナゲット〉、ウェザー・リポート、チャーリー・パーカー、ディアンジェロ、ジェイムズ・ブレイク、そしてブルガリアン・ヴォイスまで。
音楽誌の連載がもとになっているので一項目が短く、ツボに名前が付いているから、自分の「カッコいい」の正体を探す手がかりになりますよ。
クラシックの「曲名」と「作曲家」がすぐわかる本
久松義恭 著|シンコーミュージック・エンタテイメント
¥1,650(税込)
映画やCMでよく耳にするあの旋律、誰のなんという曲なのか即答できますか——その問いに応える検索ガイドです。章立てが生活の場面ごとに切られていて、映画で流れていたメロディー、テレビのドラマやアニメ、食品や飲料のCM、運動会や入学式・卒業式で聴いた曲、と辿れるのが便利。定番85曲の「美味しい部分」だけを集めたCD付きなのも実用的で、第四章ではパッヘルベルやパーセルら作曲家の横顔も紹介されます。
こんな人におすすめ
「あの曲なんだっけ」が日常的に発生する人、子どもと一緒にクラシックに親しみたい人、場面から曲を引きたい人に。目次がジャンル別ではなく状況別なので、思い出しやすさが段違いです。
良い点
- 場面別の章立てで探しやすい
- 定番85曲をCDで確認できる
- 作曲家の人物紹介も収録
気になる点
- 収録は定番曲に限られる
- 深い楽曲分析は目的としていない
- CDを再生する環境が必要
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2017年03月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
CMで流れてる曲とか、卒業式で聴いた曲とか、「これ誰の曲だっけ」ってなるたびに検索して、また忘れるんですよね。もっと早く引ける本はないですか?
佐藤メバル
この本はまさにその用途に振り切っています。第1章が映画、第2章がテレビのドラマやアニメ、食品・飲料のCM、第3章が運動会やスポーツ、入学・卒業式——といった具合に、生活の場面から引ける章立てです。
クラシック定番85曲の「美味しい部分」だけを集めたCDも付いています。
橘ナナミ
場面から探せるの、すごく実用的ですね。「運動会で流れてたやつ」って、曲名が出てこないときの探し方ってまさにそれなので。
佐藤メバル
そうそう。第四章はパッヘルベルやパーセルなど作曲家たちの紹介になっていて、曲から人へ進めるようにもできています。
まず曲名を確定させて、それから作曲家の章へ。クラシックの入口として、いちばん罪のない一冊かもしれませんね。
音楽鑑賞指導入門
山崎正彦 著|スタイルノート
¥2,640(税込)
音楽科の指導内容は「表現」と「鑑賞」に分かれ、鑑賞指導を避けて通ることはできません。しかし「鑑賞の授業が苦手」という先生は少なくありません。本書は、鑑賞指導が児童生徒を対象とする学習指導であり、学力を保障し定着度を評価するものだという前提に立ち、指導法を解説します。ねらいの焦点化=ピンポイント化、知覚と感受の関係、「答えは音・音楽にある」という考え方、学習指導要領の指導事項、校種別の事例、邦楽の事例、評価まで。
こんな人におすすめ
小中学校・高校で音楽を教える先生、教育実習や教員採用を控えた学生、鑑賞の授業をどう組み立てるかに悩む人に。評価の章は国語科を例にしながら考え方が示され、授業づくりの道しるべになります。
良い点
- 鑑賞指導の設計と評価を体系的に解説
- 校種別の指導事例を収録
- 邦楽の鑑賞指導事例もある
気になる点
- 教員向けで一般読者には専門的
- 楽曲そのものの鑑賞ガイドではない
- 指導案づくりの実務が前提の内容
出版社
スタイルノート
発売日
2019年09月20日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ここまで読者向けの本が続いたので、最後は毛色が違いますね。音楽鑑賞“指導”入門……これは誰が読む本なんですか?
佐藤メバル
学校の先生ですね。音楽科の指導は「表現」と「鑑賞」に分かれていて、鑑賞指導は避けて通れないのに「苦手」という先生が多い。
そこで本書は、鑑賞指導が児童生徒を対象とした学習指導であり、学力を保障して評価もしなければならないものだ、という立場から指導法を解説しています。
橘ナナミ
評価まで踏み込むんですね。音楽って正解がないイメージがあったので、どう評価するのかが気になります。
佐藤メバル
そこが核心で、まず「ねらいの焦点化」=ピンポイント化から入り、知覚と感受の関係、そして「答えは音・音楽にある」という考え方を示します。
学習指導要領の指導事項に沿って小学校低学年から中学校、高校までの事例、さらに邦楽の事例も収載。最後は生涯学力として音楽とどう関わるかまで及ぶ、息の長いガイドブックです。
読む順番と依存関係 ── 1冊目から2冊目への道筋
橘ナナミ
結局、何から読めばいいんでしょうか。
佐藤メバル
目的が「聴く愉しみ」なら、『耳の解像度を上げる旅』で焦点の当て方を覚えて、次に『クラシック音楽鑑賞事典』で時代の地図を敷く。逆順がだめというわけではないけれど、先に聴き方を知ると、事典の記述が「知識の列」ではなく「聴きどころの一覧」に見えてくる。ジャズなら、用語と歴史の土台を『マンガはじめてのジャズ教室』で作ってから、『人生が変わる55のジャズ名盤入門』か『ジャズの名盤入門』で実際の盤に降りる。選盤から入って、用語でつまずいたら教室に戻る往復でも成立する。
橘ナナミ
2冊目への道筋って、本ごとに決まっているんですね。
佐藤メバル
依存関係がある、と言うほうが正確かな。前提知識を積む本と、その前提を使う本がある。理論書の前に楽典ゼロの入門書、事典の前に聴き方の本。順番を守るだけで挫折率は下がる。
挫折しない撤退・再入場のルールと、「読む→聴く」の往復設計
佐藤メバル
分厚い理論書で止まったら、そこで読書をやめていい。ただし「撤退先」を決めておく。たとえば『神曲のツボ!』の譜例がつらいと感じたら、『マンガはじめてのジャズ教室』や『オペラ鑑賞講座超入門』に戻る。物語として読める本は復帰の足場になる。
橘ナナミ
「読む→聴く」の往復は、どう設計すればいいですか。
佐藤メバル
章を1つ読んだら、その章で挙げられた曲を1曲だけ聴く。全部聴こうとしないこと。『耳の解像度を上げる旅』の「♪急所30秒」はまさにその設計で、冒頭から順に聴くのではなく、示された箇所だけを聴く。『まるごと1冊 スペイン音楽の本』はSpotifyやApple Musicで再生しながら読める体裁になっている。『クラシックの「曲名」と「作曲家」がすぐわかる本』は付属CD、『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』はCDガイドとプレイリストが付く。最初から音源と結びついている本を選ぶと、この往復が苦にならない。
橘ナナミ
音源を探すのが面倒で、つい読むだけで終わってしまいがちです……。
用語のクセ、語る訓練、そして買い方
佐藤メバル
横文字の用語は本ごとに表記が揺れる。同じ概念でも、ある本では原語のまま、別の本では訳語になっている。だから索引や用語集のある本を1冊、辞書代わりに持つといい。『耳の解像度を上げる旅』は付録に用語集があり、『マンガはじめてのジャズ教室』は用語を講義で噛み砕いてくれる。
橘ナナミ
感想を語れるようになる練習は?
佐藤メバル
まず聴きどころの語彙を借りること。『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』は、演奏家が楽譜のどんな指示をどう読むかを語る本で、感想を書くときの言葉が手に入る。『音楽鑑賞指導入門』は知覚と感受を切り分け、「答えは音・音楽にある」と繰り返す。学校教育の本だけれど、自分の感想を組み立てる手順としても読める。
橘ナナミ
予算と買う順番も知りたいです。
佐藤メバル
最初は千円台の新書か、音源と結びついた一冊。次に事典か名盤ガイド。最後に大型本や専門書、という順番なら失敗しても痛くない。絶版・品切れの本は図書館で中身を確かめてから古書を探す。Kindle化されているかは購入前に必ず確認する。手元に置くかどうかで、鑑賞の解像度は本当に変わる。
よくある質問
楽譜が読めなくても読める音楽鑑賞の本はありますか?
橘ナナミ
楽譜が読めなくても読める音楽鑑賞の本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
あります。『耳の解像度を上げる旅』は全編に名曲の「ここを、こう聴く」という案内を収め、楽譜が読めなくても最後まで読めるよう作られています。『クラシック音楽鑑賞事典』『オペラ鑑賞講座超入門』、ジャズの名盤ガイド、吹奏楽やスペイン音楽のガイドも楽典の知識なしで読み進められます。逆に『神曲のツボ!』はコード譜やリズム譜を駆使する本なので、譜例が前提になる点だけ分けて考えるとよいでしょう。
音楽鑑賞の入門書は、最初の1冊にどれを選べばいいですか?
橘ナナミ
音楽鑑賞の入門書は、最初の1冊にどれを選べばいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
目的が「聴く愉しみを深める」なら『耳の解像度を上げる旅』、ジャンルの見取り図が欲しいなら『クラシック音楽鑑賞事典』、軽く読み通したいなら中山康樹『ジャズの名盤入門』のような新書が候補になります。迷ったら、音源やCDと結びついた本を選ぶと読みっぱなしになりません。
音楽史・音楽理論・鑑賞の本は、どの順番で読むのがいいですか?
橘ナナミ
音楽史・音楽理論・鑑賞の本は、どの順番で読むのがいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
鑑賞→歴史→理論の順が現実的です。まず聴きどころの当て方を学び、次に時代の地図を敷き、そのうえで和音や進行の仕組みへ進む。前提知識を積む本と使う本には依存関係があるので、理論書の前に楽典ゼロの入門書を置くだけで挫折率が下がります。
クラシック初心者におすすめの鑑賞入門書はどれですか?
橘ナナミ
クラシック初心者におすすめの鑑賞入門書はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
『耳の解像度を上げる旅』は眠くなる理由から説き起こし、四つの焦点や聴き比べの手順まで段階を追える入門書です。オペラなら『オペラ鑑賞講座超入門』、ピアノ曲ならメジューエワ『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』、曲名から引くなら『クラシックの「曲名」と「作曲家」がすぐわかる本』が入口になります。
J-POPや邦楽の背景を知れる本はありますか?
橘ナナミ
J-POPや邦楽の背景を知れる本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
この顔ぶれでは、邦楽を正面から通史で扱う一冊は多くありません。近いところでは『神曲のツボ! 「カッコいい」の構造分析』がYMOやSMAPを取り上げ、コードと言葉の両面から分析しています。邦楽の通史や時代背景を求める場合は、別の本をあたる必要があるというのが正直なところです。
絶版・品切れの音楽書はどこで探せばいいですか?
橘ナナミ
絶版・品切れの音楽書はどこで探せばいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
まず図書館で中身を確かめ、古書店や復刊・電子化の状況を確認するのが現実的です。たとえば『クラシック音楽鑑賞事典』は1983年の刊行なので、新刊の店頭に並んでいるとは限りません。CD付きの本は中古でディスクが欠けていることもあるため、付属品の有無を必ず確認しましょう。
Kindleで読める音楽鑑賞・音楽理論の本はありますか?
橘ナナミ
Kindleで読める音楽鑑賞・音楽理論の本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
電子化されているかは本ごとに異なり、しかも時期によって変わります。購入前に各書の電子版の有無を必ず確認してください。判断のコツは、図版や譜例が多い本ほど電子化されていても読みにくい場合があること。まず紙で中身を確かめてから、手持ちの端末に合う形式を選ぶと失敗が減ります。
音楽の感想を言葉にする練習になる本はどれですか?
橘ナナミ
音楽の感想を言葉にする練習になる本はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』は、演奏家が楽譜のどんな指示をどう読むかを語る本で、感想に使える語彙が増えます。『音楽鑑賞指導入門』は知覚と感受を切り分けて考える手順を示しており、自分の言葉で書く前の整理に役立ちます。まずは聴きどころの言葉を借りて書き、少しずつ自分の表現に置き換えていくのが近道です。
まとめ
橘ナナミ
今日いちばん印象に残ったのは「型」の話でした。通読型か辞書型か伴走型かで、同じ本でも付き合い方が変わるんですね。
佐藤メバル
そう。本を読むことと音楽を聴くことは、別々の趣味じゃない。本は耳の解像度を一段上げてくれて、上げた耳で聴き直すと、同じ演奏が違って聴こえる。
橘ナナミ
聴き直したら、また本が読みたくなります。
佐藤メバル
その往復が鑑賞そのものだよ。本は答えを渡すものではなく、聴く場所を指してくれる道具だ。
橘ナナミ
コンサートホールの席を案内してくれる係の人みたいですね。自分では選べない席を、そっと教えてくれる。
佐藤メバル
いい例えだね。最初の1冊は、その案内人との出会い。今日挙げた本のどれかが、あなたの耳に最初の一席を指してくれるはずだよ。
