音楽評論の本のおすすめ人気ランキング24選【2026年版】

監修

佐藤メバル

佐藤メバル

@shelfy_mebaru

編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ

橘ナナミ

@medias_nanami

編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。

最終更新: 2026年10月

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、音楽の評論本って、そもそも何から読めばいいんでしょう。書店の棚を見ても、クラシックの話とロックの話と、音楽メディア論みたいな本が同じ場所に並んでいて、地図がまったく見えないんです。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。音楽評論の本は「ひとつの棚」にまとまっていないからね。大きく分けると、一枚の音を言葉に変えていく演奏・作品批評、音楽と社会の関係をたどる音楽文化史、批評という営みそのものを考えるメディア論の三層になる。まず自分がどの層に惹かれているのかを見極めると、選書がぐっと楽になるよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

三層! たとえばそれぞれどんな本なんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

作品批評なら野口剛夫『私の音と言葉』。フルトヴェングラーやワルター、ブルックナーを軸に、指揮者論から「日本語で歌う第九」、佐村河内事件への論考まで収めた音楽論集だ。書店員時代、クラシックの常連さんに「評論を読みたい」と言われて真っ先に棚から抜いたのがこの一冊だった。文化史なら河口道朗『音楽文化 戦時・戦後』で、『愛国行進曲』から『リンゴの歌』へと変質していく音楽教育の流れを追う。メディア論なら加藤一陽『音楽メディア・アップデート考』、元音楽ナタリー編集長が8人のキーパーソンに取材した一冊だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど……! でも、いきなり厚い評論集から入って挫折しそうで怖いです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは安心していい。音楽評論の本は楽譜が読めなくても読めるものがほとんどだ。音を言語化した文章を読むのが先で、楽譜は後からで間に合う。平林直哉『クラシック100バカ』のように、批評の鬼が100項目を斬りつけていく痛快な本から入る読み方もある。まずは体温の高い一冊を選ぶのが、失敗しないコツだよ。

音楽評論の本の選び方

目的から選ぶ

佐藤メバル

佐藤メバル

目的は大きく三つ。ひとつめは「聴く体験を言葉にしたい」。それなら酒井順子『ユーミンの罪』がいい。ユーミンとともに駆け抜けた1973年からバブル崩壊まで、女性たちの意識と社会に何を与えたかを検証していく。自分の聴き方が時代にどう形づくられたかに気づける。ふたつめの「批評史を知りたい」なら、秋山邦晴評論集『聴く・視る・語る 1980-1995』のような定点観測の評論集が効く。みっつめの「書く・語る技術を磨きたい」なら『音楽メディア・アップデート考』だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

『音楽の黙示録』は目次を見ただけでドキッとしました。「音楽と男」「音楽の噓」「音楽と権威」……常識そのものを問い直す本なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。作曲家の森本恭正とピアニストの南博が、18の論点で権威と常識を問いなおしていく。著者自身が「読者の何割かは不愉快になるかもしれない」と書いているくらいで、賛否込みで読む価値がある。目的に「もやもやを言語化したい」を足してもいいかもしれないね。

レベルから選ぶ

佐藤メバル

佐藤メバル

入門は、音と言葉の距離が近い本がいい。冨澤一誠『大人の音楽 Age Free Music』は、時代と世代を超えて歌い継がれる300曲を紹介しながら、演歌でもJ-POPでもない「大人の音楽」という視点を立ち上げる。曲の話から入れるから、評論の作法を知らなくても読める。

橘ナナミ

橘ナナミ

中級はどのあたりになるんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

中級は、一冊でひとつのジャンルの地図が手に入る本だね。行方均『ジャズは本棚に在り』は、ジャズ書と名盤を同時に紹介していくから、読む本と聴く盤がリンクして知識が宙に浮かない。村井康司『ページをめくるとジャズが聞こえる』は村上春樹やケルアックなど文学の中のジャズを掘り下げ、Spotifyのプレイリストが聴けるQRコード付きだ。上級は青柳いづみこ『ショパン・コンクール見聞録』のように、現場の出来事を批評の目で読み解き、コンクールという制度そのものを問い直す本になる。

形式から選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

評論集、通史、対談、理論書……形式もいろいろですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

読みやすい順に並べると、対談→評論エッセイ→通史→理論書だ。対談なら田家秀樹とスージー鈴木『吉田拓郎から始めるロックスター列伝』。「吉田拓郎=フォーク」は日本音楽史上最大の誤解だ、という宣言から始まって、13人のレジェンドを語り下ろしていく。二人の会話の温度がそのまま読みやすさになる。エッセイなら三浦淳史『英国音楽大全』で、第1部のエッセイと第2部219曲の楽曲解説という二段構えになっている。通読する本と引く本を兼ねているのが強みだ。通史は『オーケストラ大国アメリカ』、理論書は『音楽の黙示録』という整理になるね。

ジャンルから選ぶ

佐藤メバル

佐藤メバル

クラシックなら石井宏『モーツァルトは「アマデウス」ではない』が面白い。モーツァルトは生前「アマデウス」と名乗ったことも署名したこともなく、自筆譜には「アマデーオ」と書いていた——その名前の謎から西洋音楽史の欺瞞に切り込んでいく。同じクラシックでも『ベルリンから見た不思議おもしろ音楽事情』は、ドレスコードや楽章間の拍手、批評家の役割まで、現地に暮らす著者ならではの目線で並ぶ。ポピュラーなら花村萬月『俺のロック・ステディ』で、60〜70年代の黄金期を俯瞰しながら「ロックとは何か」を探求する。ヒップホップの現在地は『音楽メディア・アップデート考』の渡辺志保のパートで追える。こうしてジャンル横断で地図を描くと、自分の偏りも見えてくるよ。

言語から選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

翻訳書はやっぱり原書で読むべきなんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

まず邦訳で読んでいい。『バッハの思い出』は、バッハの妻アンナ・マグダレーナの目を通して人間バッハの苦悩と喜びを綴った古典的名著だ。『ソング・オブ・サマー 真実のディーリアス』は、病に苦しむディーリアスと青年音楽家フェンビーの6年間を描いた回想録の完訳で、ヴァイオリニストの小町碧が全訳を担い、音楽学者の向井大策が監修している。翻訳の当たり外れは確かにあるけれど、訳者と監修者の名前を見て選ぶのがいちばん実用的な判断軸だ。原書は、引用箇所を自分で確かめたくなってから手を伸ばせばいい。

入手性から選ぶ

佐藤メバル

佐藤メバル

最後は現実的な話。発売から年数が経った本は新刊で並んでいないこともあるから、図書館と電子書籍と古書店を組み合わせて探す。『ワーグナーシュンポシオン(2022)』のような研究集会の論集は刷り部数が限られるので、見かけたら押さえるくらいの気持ちでいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

電子書籍やオーディオブックでも読めますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

読めるけれど、音楽評論は年譜や図版が読みの一部になっている本が多い。秋山邦晴評論集のように写真を多数掲載した年譜が組み込まれている本は、紙のほうが行き来しやすい。電子で買う前に、書店で紙の造りを確かめてみるのがおすすめだよ。

音楽評論の本をひと目で比較

橘ナナミ

橘ナナミ

えっ、24冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず

#画像名称おすすめ対象価格一言
1
秋山邦晴評論集 聴く・視る・語る 1980-1995
秋山邦晴評論集 聴く・視る・語る 1980-1995現代音楽の同時代記録を読みたい人、武満徹や実験工房の周辺に関心のある人、新聞連載コラムで時代をたどりたい人、年譜と写真を資料として手元に置きたい人。書店や図書館で音楽史の棚を担当する人、作曲家の評伝を探している人にも向きます。¥9,680現代音楽の熱い定点観測
2
無限の歓喜
無限の歓喜レコードのライナー・ノーツを愛読してきた人、70〜2000年代のロックやニュー・ウェイヴを文章から辿りたい人、音楽ライター志望で評論の文体を学びたい人、当時の雑誌記事を資料として引きたい人に向きます。¥2,640ライナー・ノーツの黄金
3
私の音と言葉
私の音と言葉戦後ヨーロッパの指揮者たちの録音を聴き込んできた人、クラシックの評論を書いてみたい人、佐村河内事件を音楽批評の側から振り返りたい人、『のだめカンタービレ』評やウォークマン文化論のような時評を読みたい人に向きます。¥2,750指揮者論と佐村河内事件
4
ユーミンの罪
ユーミンの罪ユーミンの曲をリアルタイムで聴いてきた人、70〜80年代の女性史や時代風俗に関心がある人、歌詞を社会現象として読み解きたい人、酒井順子のエッセイが好きな人、当時の空気を新書でざっと掴みたい人に向きます。¥1,078ユーミンと女性の40年
5
音楽の黙示録
音楽の黙示録音楽の「常識」に前から違和感があった人、評論や批評の書き方を考えたい人、ジャンルを横断する対話を読みたい人、AIと創造の関係に関心がある人、音楽と政治や軍隊の関係まで考えてみたい人に向きます。¥1,980NOから始まる音楽論

音楽評論の本のおすすめ人気ランキング

橘ナナミ

橘ナナミ

一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!

佐藤メバル

佐藤メバル

よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

秋山邦晴評論集 聴く・視る・語る 1980-1995
1

秋山邦晴評論集 聴く・視る・語る 1980-1995

秋山邦晴 著|アルテスパブリッシング

¥9,680(税込)

4.8

武満徹らと「実験工房」を結成し、詩人・評論家・プロデューサーとして日本の現代音楽シーンを創造した秋山邦晴。1980年から1995年までほぼ毎月、公明新聞に連載されたコラム172回を全篇集成した評論集です。音楽だけでなく舞台や映画まで縦横に論じ、メシアンとケージの死で20世紀音楽が終わったという空気まで記録されている。柴田南雄の『音楽会の手帖』とほぼ入れ違いの時期を扱い、熱い当事者の視点で書かれているのが違いです。畠中実の解説と、写真多数の詳細な年譜も収録されています。

こんな人におすすめ

現代音楽の同時代記録を読みたい人、武満徹や実験工房の周辺に関心のある人、新聞連載コラムで時代をたどりたい人、年譜と写真を資料として手元に置きたい人。書店や図書館で音楽史の棚を担当する人、作曲家の評伝を探している人にも向きます。

良い点

  • 連載172回を全篇収録した一次資料
  • 音楽・舞台・映画を横断する視点
  • 写真多数の詳細な年譜付き

気になる点

  • 価格が高く気軽には買いにくい
  • 現代音楽の前提知識が要る箇所
  • 通読には分量が重い

出版社

アルテスパブリッシング

発売日

2026年08月17日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「秋山邦晴」という名前、聞いたことはあるんですが、正直どんな人なのか説明できません。武満徹と一緒に何かを作った人なんですよね?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。秋山邦晴は詩人であり音楽評論家、そして音楽プロデューサーでもあった人。武満徹らと「実験工房」を結成して、日本の現代音楽シーンの中心で動いていた。

この本は、1980年から1995年まで公明新聞にほぼ毎月書いた連載コラム172回を全篇まとめたもので、20世紀音楽の最後の輝きがそのまま残っているんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

172回ってすごい量ですね。新聞のコラムだから、その日のコンサートや新作の話が中心なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、音楽だけでなく舞台や映画も縦横にとりあげている。作曲家の高橋悠治さんが、柴田南雄の『音楽会の手帖』とほぼ入れ違いの時期にあたると指摘しているように、1970年から1995年までを覆う証言になる。

メシアンとケージが亡くなった年を境に、ひとつの時代が終わった感じが伝わってくるのも読みどころだよ。

無限の歓喜
2

無限の歓喜

今野雄二 著|ミュージック・マガジン

¥2,640(税込)

4.7

『ミュージック・マガジン』の記事とLPのライナー・ノーツから選び抜いた一冊。1971〜79年のライナー・ノーツ篇にはピンク・フロイド『ピンク・フロイドの道』、レオン・ラッセル『カーニー』、サンタナ『キャラバンサライ』などが並び、1980〜2008年の雑誌篇ではトーキング・ヘッズ、ティム・ハーディン追悼、PILやア・サートゥン・レイシオ、マティリアルまで扱われます。レコードに添えられていた文章を読み物として味わう点が、通常の名盤ガイドと大きく違う。巻末には1980〜2009年のベスト・アルバムも収録されています。

こんな人におすすめ

レコードのライナー・ノーツを愛読してきた人、70〜2000年代のロックやニュー・ウェイヴを文章から辿りたい人、音楽ライター志望で評論の文体を学びたい人、当時の雑誌記事を資料として引きたい人に向きます。

良い点

  • ライナー・ノーツを再読できる構成
  • 1971〜2009年をほぼ通しで俯瞰
  • 巻末ベスト・アルバムも資料になる

気になる点

  • 取り上げる作品に時代の偏り
  • 音源は自分で探す必要がある
  • 予備知識なしだと人名が多い

出版社

ミュージック・マガジン

発売日

2011年08月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ライナー・ノーツって、レコードのジャケットに書いてある解説のことですよね。それが主役の本なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。LPの裏や内袋に載っていた文章を、今野雄二の記事と合わせて一冊にしたもの。ピンク・フロイド『ピンク・フロイドの道』、レオン・ラッセル『カーニー』、サンタナ『キャラバンサライ』など、レコードに添えられていた言葉がそのまま読める。

今は解説が薄くなったからこそ、この密度は貴重だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

後半は雑誌の記事なんですよね。トーキング・ヘッズとか、ティム・ハーディンの追悼とかが並んでいて。

佐藤メバル

佐藤メバル

1980年から2008年までの『ミュージック・マガジン』の記事で、PILやア・サートゥン・レイシオ、マティリアルといった名前も出てくる。

巻末には1980〜2009年のベスト・アルバムも付いていて、読み物としても索引としても使える。名盤ガイドとは違って、文章そのものが主役の一冊だよ。

私の音と言葉
3

私の音と言葉

野口剛夫 著|アルファベータブックス

¥2,750(税込)

4.6

フルトヴェングラーをライフワークとする著者が、ワルター、クナッパーツブッシュ、クレンペラー、フリッチャイらマエストロ論から、シェンカー、日本語で歌う「第九」、ブルックナー・ミーツ・エレクトーンといった演奏論、対談、音楽時評、そして佐村河内事件に関する論考までを収めた音楽論集。「フルヴェン聴きのフルヴェン識らず」になるなかれと自らに問いを突きつける姿勢が全体を貫きます。実践と経験から出た言葉が並ぶ、信念の人による一冊です。

こんな人におすすめ

戦後ヨーロッパの指揮者たちの録音を聴き込んできた人、クラシックの評論を書いてみたい人、佐村河内事件を音楽批評の側から振り返りたい人、『のだめカンタービレ』評やウォークマン文化論のような時評を読みたい人に向きます。

良い点

  • 指揮者論と演奏論が同じ熱量
  • 対談や時評まで収録が幅広い
  • 著者自身の実践に基づく記述

気になる点

  • 賛否の分かれる主張を含む
  • 人名や曲名の前提知識が要る
  • 時評は時代状況の説明が薄い

出版社

アルファベータブックス

発売日

2016年01月20日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

目次に「ブルックナー・ミーツ・エレクトーン」ってあって、思わず二度見しました。これは何なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の面白さだね。著者はフルトヴェングラーを長年のテーマにしながら、ワルター、クナッパーツブッシュ、クレンペラー、フリッチャイと並べて、自分の耳で確かめた演奏論を書く。

ブルックナーの「アダージョ」を管弦楽編曲で聴く話や、日本語で歌う「第九」の話まで、実践と経験から出た言葉が続くんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

佐村河内事件の論考も入っているんですね。ちょっと重いテーマのように思えます。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこも含めて一冊になっている。事件を「本物を見極める力」という批評の問題として捉え直しているのが特徴で、時評や演奏会評も収録されている。

「フルヴェン聴きのフルヴェン識らず」になるなかれという一文が、この本全体の姿勢をよく表しているよ。

ユーミンの罪
4

ユーミンの罪

酒井順子 著|講談社

¥1,078(税込)

4.4

ユーミンの歌を「女の業の肯定」と読み、1973年の「ひこうき雲」から1991年の「DAWN PURPLE」までアルバム単位で辿る著者初の新書。「つれてって文化」や「負け犬の源流」といった言葉で、その時代の女性の意識を歌と重ねて検証していきます。単なる歌手論ではなく、バブル期までの空気を音楽から掘り起こす社会史になっている点が、通常のミュージシャン評と違うところ。連載「文学としてのユーミン」を改題し大幅に加筆した一冊です。

こんな人におすすめ

ユーミンの曲をリアルタイムで聴いてきた人、70〜80年代の女性史や時代風俗に関心がある人、歌詞を社会現象として読み解きたい人、酒井順子のエッセイが好きな人、当時の空気を新書でざっと掴みたい人に向きます。

良い点

  • アルバム単位で20章に整理
  • 歌詞と時代の空気を重ねて読める
  • 新書として手に取りやすい厚さ

気になる点

  • 1991年以降の曲は扱わない
  • 作品の入門ガイドではない
  • 著者の世代の視点に強く寄る

出版社

講談社

発売日

2013年11月15日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

『ユーミンの罪』ってタイトルが強いですね。「罪」って何のことなんだろう。

佐藤メバル

佐藤メバル

著者はユーミンの歌を「女の業の肯定」だと捉えて、そこから1973年からバブル崩壊までの女性たちの意識を辿っていく。

たとえば「つれてって文化」の隆盛や「負け犬の源流」といった言葉で、歌詞が時代の空気とどう結びついたかを一章ずつ検証していくんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

曲の解説というよりは、時代の分析に近い感じですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

近いね。『MISSLIM』から『DAWN PURPLE』までアルバムごとに章が立てられていて、恋愛格差や上から目線など、当時の女性が抱えていた感覚が歌と並べて語られる。

著者初の新書として書かれた本で、ユーミンを聴いたことがない人でも昭和から平成の空気の変化が追えるよ。

音楽の黙示録
5

音楽の黙示録

森本恭正 著|アルテスパブリッシング

¥1,980(税込)

4.3

「音楽と男」「音楽の噓」「音楽と権威」「音楽とAIと創造」「音楽と農業」まで、18の論点で音楽の世界に蔓延する権威と常識を問いなおす対論集。作曲家・森本恭正とピアニスト・南博が、ジャンルを超えて言葉のインタープレイを交わします。根拠のない「矩」をこしらえた力へのリゼントメントというスタンスが全篇を貫く。入門書でも名盤案内でもない、痛快さと居心地の悪さが同居する一冊です。

こんな人におすすめ

音楽の「常識」に前から違和感があった人、評論や批評の書き方を考えたい人、ジャンルを横断する対話を読みたい人、AIと創造の関係に関心がある人、音楽と政治や軍隊の関係まで考えてみたい人に向きます。

良い点

  • 18章で論点が明確に分かれる
  • 対論なので思考の過程が見える
  • 音楽以外の領域にも接続する

気になる点

  • 読者を選ぶ強い語調の箇所
  • 結論より問いの提示が中心
  • 前提となる人名が多い

出版社

アルテスパブリッシング

発売日

2021年07月10日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「音楽と農業」って章があるんですが、音楽と農業って、どうつながるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の狙いでね。第1章が「音楽と男」、第2章が「音楽の噓」と続いて、権威や常識を一つずつ剥がしていく。

作曲家の森本恭正とピアニストの南博がジャンルを超えて言葉のインタープレイを交わしているから、農業でも脳でもAIでも、同じ姿勢で切り込んでいくんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

冒頭に、読者の何割かは不愉快になって怒るかもしれない、みたいなことが書いてありますよね。そんなに尖ってるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

尖っている。でもそれは、音楽の世界にいつのまにか出来上がった「矩(のり)」に対する憤激から来ている。

名盤ガイドでも入門書でもなく、NOから始まる音楽論として読む本だね。第10章「音楽と音楽評論」まで含めて、批評を書く側の人間にも突きつけてくるよ。

俺のロック・ステディ
6

俺のロック・ステディ

花村萬月 著|集英社

¥792(税込)

4.1

ブルースロック、グラムロック、アメリカンロック、ジャズロック、ブリティッシュロック、ハードロック、プログレッシブロック、日本のロック——1960〜70年代の黄金期を章立てで俯瞰するガイドブック的な側面と、「ロックとは何か?」という根本命題を追うロック論が一つになった本。冒頭は「はじめにリズムありき」、最後は「総括だ!」で締められます。作家・花村萬月がエッジの効いた文章で、初心者にも自称“通”にも届くように書いています。

こんな人におすすめ

60〜70年代のロックをこれから聴き始めたい人、手持ちの知識に抜けがあると感じている人、評論まがいのロック本に飽きた人、文章そのものを楽しみたい読書家、ロック体験史を埋め直したい中級者に向きます。

良い点

  • ジャンル別に章が整理されている
  • ガイドと論考を兼ねている
  • 作家の文章でぐいぐい読める

気になる点

  • 90年代以降のロックは扱わない
  • 著者の好みが強く出る箇所
  • 網羅的な事典ではない

出版社

集英社

発売日

2009年07月22日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

小説を書く人がロック論を書いてるんですね。花村萬月って、たしか直木賞の作家ですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、その花村萬月が「俺のロック・ステディ」という題で書いた本。ブルースロック、グラムロック、アメリカンロック、ジャズロック、ブリティッシュロック、ハードロック、プログレ、日本のロックと章が並んで、1960〜70年代の黄金期を一気に俯瞰できる。

橘ナナミ

橘ナナミ

ガイドブックとして使ってもいいし、読み物としても面白いっていうことですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

冒頭が「はじめにリズムありき」で、最後が「総括だ!」で終わる。ただのディスク案内ではなく、「ロックとは何か?」という命題を探求していく本なんだ。

自称“通”の人が自分のロック体験史の空白を埋めるのにも向いているし、初心者が最初の一冊にするにもいい。

クラシック100バカ
7

クラシック100バカ

平林直哉 著|青弓社

¥1,760(税込)

4.1

「NHKのバカ」から「われながら、バカなことをしてしまった」まで、BAKA001〜100を番号付きで並べたクラシック批評の毒舌本。偶像崇拝、唯我独尊、一知一解、付和雷同といった四字熟語が並ぶ通り、コンサートマナーから廉価盤信仰、評論家気取り、ブランド志向まで、批評の鬼が容赦なく斬っていきます。クラシック入門書とは真逆の位置にありながら、読み終えるとマナーと聴き方の輪郭がはっきり見えてくるのが不思議なところです。

こんな人におすすめ

コンサートに通い始めて周囲の作法が気になる人、クラシックの“お約束”にモヤモヤしている人、音楽評論や批評の毒を味わいたい人、笑いながら鑑賞の作法を確認したい人、投書や発信の心構えを知りたい人に向きます。

良い点

  • 100項目で好きな所から読める
  • マナー本としても役に立つ
  • 文体の勢いがとにかく楽しい

気になる点

  • 断定調が苦手な人にはきつい
  • 刊行当時までの話題に限られる
  • 同じ調子が長く続く

出版社

青弓社

発売日

2004年10月20日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「クラシック100バカ」って、クラシックをバカにする本なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

逆でね、バカを斬る本。BAKA001が「NHKのバカ」、002が「演奏の途中でメモをとるバカ」と、番号を振って100項目並んでいる。

音楽評論家の平林直哉が、偶像崇拝や一知一解といった四字熟語を並べながら、容赦なく書いていくんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

賛否が分かれそうですね。でも、コンサートのマナーを学ぶのにも使えそうな気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

実際そうで、並んだ見出しの中にはなるほどと思わせる注意が混ざっている。最後は「われながら、バカなことをしてしまった」で終わるんだけど、自分も含めてバカを数える視点があるから、ただの毒舌で終わらない。

入門書とは真逆の棚に置きながら、役に立つ一冊だよ。

大人の音楽 Age Free Music
8

大人の音楽 Age Free Music

冨澤一誠 著|ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

¥2,750(税込)

3.9

「演歌・歌謡曲でもない、J-POPでもない」という立場から、時代と世代を超えて光を放ち続ける珠玉の300曲を紹介する一冊。Music Seminar、Age Free Cafe、Music Captureという三つの場を軸に、秋川雅史、秋元順子、夏川りみといった歌い手の言葉も収録されています。ヒットチャート本とも歌謡史とも違い、聴き手の年齢を前提にしない選曲の視点が持ち味。売り場側の人の証言も入り、店の棚と音楽の関係まで見えてきます。

こんな人におすすめ

若い頃に聴いた歌をあらためて丁寧に聴き直したい人、歌謡曲とJ-POPの間で自分の棚を作りたい人、ラジオ的な語りで音楽の話を読みたい人、店の選曲や売り場づくりの参考がほしい人に向きます。

良い点

  • 300曲という紹介量の多さ
  • ゲストの生の言葉が読める
  • ジャンルの枠を外した選曲

気になる点

  • 特定の世代の好みに寄る
  • 楽譜やデータは付かない
  • 扱う時期が2011年まで

出版社

ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

発売日

2011年11月24日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「エイジフリー・ミュージック」って造語なんですか? 演歌でもJ-POPでもない大人の音楽、という説明が最初はピンとこなかったです。

佐藤メバル

佐藤メバル

著者の冨澤一誠がプロデューサーとして掲げている言葉でね、「大人が真剣に音楽を聴く姿を若者に見せよう」という考えが根本にある。

時代と世代を超えて光を放つ300曲を、Music Seminar、Age Free Cafe、Music Captureという三つの場で紹介していく構成なんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

秋川雅史さんや夏川りみさんのお話も載っているんですね。インタビュー集でもあるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

語りがそのまま残っているのが魅力だね。ユニバーサルの喜本孝さん、山野楽器の横塚仁さんといった売り場側の人の言葉も入っていて、店の棚と音楽の関係まで見えてくる。

ヒット曲の解説本とは違って、聴き手の年齢を前提にしない選曲になっているのが面白いところだよ。

音楽メディア・アップデート考
9

音楽メディア・アップデート考

加藤一陽 著|リットーミュージック

¥1,760(税込)

3.9

「批評をしない音楽ニュースメディア・音楽ナタリー」の元編集長が、鹿野淳、柴那典、大石始、柳樂光隆、石井恵梨子、若林恵、imdkm、渡辺志保の8人に取材し、Webで音楽メディアがどう変容したかを整理した一冊。誰が音楽評論を必要としているのかという柴那典の問いをはじめ、ライターの世代交代、編集者の質の変化、ネットとSNSが突きつけた問題点が並びます。批評の担い手側が読むべき現在地の記録です。

こんな人におすすめ

音楽メディアで書いたり編集したりしている人、批評を書く意味を考え始めた学生や院生、音楽ブログやnoteの発信を見直したい人、メディア論の実例を探している人、音楽ニュースの裏側を知りたい人に向きます。

良い点

  • 8人のキーパーソンの証言が並ぶ
  • 現役の編集者による整理
  • メディア論の実例として使える

気になる点

  • 近年の話に範囲が限られる
  • 全体像より個別論点が中心
  • 用語の前提知識が要る箇所

出版社

リットーミュージック

発売日

2021年03月02日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

私、大学院でメディア論をやってるので、これはかなり気になります。「音楽ナタリー」の元編集長が書いたんですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。加藤一陽が、鹿野淳、柴那典、大石始、柳樂光隆、石井恵梨子、若林恵、imdkm、渡辺志保の8人に取材して、Webで音楽メディアがどう変わったかを整理している。

誰が音楽評論を必要としているのかという柴那典の問いが、この本全体の芯になっているね。

橘ナナミ

橘ナナミ

ライターの世代交代とか編集者の質の変化とか、目次を見るだけでも今の話だなと思いました。批評の側から書かれてるのがいいですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

批評をしないメディアで編集長をしていた人が、批評の意味を聞きに行ったという構図が面白い。音楽メディアの現在地を、現場の言葉で確認できる一冊だよ。

君の研究テーマにも、一次資料として使えるんじゃないかな。

ジャズは本棚に在り ジャズ書と名盤
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ジャズは本棚に在り ジャズ書と名盤

行方均(音楽評論家) 著|シンコーミュージック・エンタテイメント

¥2,420(税込)

3.9

「JAZZ JAPAN」誌の人気連載全92回をまるごと単行本化した一冊。連載時のペンネーム雑木林進から、おなじみの行方均の名に戻して、古今東西の名著や奇書、読むべき「ジャズ書」を紹介しつつ、聴くべき「名盤」を多数追加しています。読むほどに聴くほどにジャズが身につく構成で、ディスク・ガイドでも書評集でもない往復運動が持ち味。ジャズの本棚とレコード棚を同時に作り替えてくれる本です。

こんな人におすすめ

ジャズを聴き始めて次に何を聴くか迷っている人、ジャズについて書かれた本を読むのが好きな人、ディスク・ガイドだけでは物足りない中級者、書店や図書館でジャズ本の棚に関わる人に向きます。

良い点

  • 92回分の連載がまとめて読める
  • 書評と名盤紹介を兼ねる
  • 著者の長年の蓄積が背景にある

気になる点

  • 元が連載なので話題が飛ぶ
  • 紹介盤を探す手間は残る
  • ジャズ史の通史ではない

出版社

シンコーミュージック・エンタテイメント

発売日

2018年11月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「ジャズは本棚に在り」って、ジャズの本の紹介なんですか? それとも名盤の紹介?

佐藤メバル

佐藤メバル

両方なんだよ。『JAZZ JAPAN』の人気連載全92回をまとめた本で、古今東西の名著や奇書、読むべきジャズ書を紹介しながら、聴くべき名盤を多数追加している。

連載時のペンネーム雑木林進から、行方均の名前で出し直した形だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

読んでから聴くのか、聴いてから読むのか、どっちがいいんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

どちらでもいいところがこの本の強みで、読むほどに聴くほどにジャズが身につくように組まれている。本棚とレコード棚を同時に育てる感じだね。

ディスク・ガイドだけだと物足りない人、書評だけだと音が恋しくなる人、ちょうどその中間にいる人に向いているよ。

ページをめくるとジャズが聞こえる
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ページをめくるとジャズが聞こえる

村井康司 著|シンコーミュージック・エンタテイメント

¥2,200(税込)

3.7

村上春樹、フィッツジェラルド、ボリス・ヴィアン、ジャック・ケルアック——文学作品に登場するジャズを、ジャズ評論家の村井康司が「文学の中のジャズ」として掘り下げ、実際の音と共に熱く語る一冊。462曲分のSpotifyプレイリストが聴けるQRコード付きで、ページをめくりながら本文に出てきた曲をその場で再生できます。ジャズ入門とも文学案内とも違う、読む快楽と聴く愉悦を同時に味わうための本です。

こんな人におすすめ

小説に出てくるジャズが気になっていた人、村上春樹やケルアックを読みながら音楽も辿りたい人、プレイリストを作って聴くのが好きな人、文学の側からジャズの入り口を探したい人に向きます。

良い点

  • 462曲分のプレイリスト付き
  • 文学と音楽を往復できる
  • 読書の副産物として音が残る

気になる点

  • 再生サービス前提の構成
  • 取り上げる作家に偏りがある
  • ジャズ史の網羅本ではない

出版社

シンコーミュージック・エンタテイメント

発売日

2020年04月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

QRコードから再生できるプレイリスト付きっていうのが便利ですね。462曲分って、かなりの量じゃないですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。村上春樹、フィッツジェラルド、ボリス・ヴィアン、ジャック・ケルアックといった作家たちの作品に出てくるジャズを、評論家の村井康司が「文学の中のジャズ」として掘り下げて、実際の音と一緒に語っていく。

本文を読みながらすぐ音を確かめられるのが気持ちいいんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

小説を読んでると、曲名だけ出てきて実際にどんな音か分からないまま流しちゃうことが多いので、これは助かります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこを埋める本だね。ジャズの入門書でも文学案内でもなく、読む快楽と聴く愉悦をひとつにした構成になっている。

読書の記録としても、プレイリストの材料としても使えるよ。

モーツァルトは「アマデウス」ではない
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モーツァルトは「アマデウス」ではない

石井宏 著|集英社

¥968(税込)

3.7

生前モーツァルトが「アマデウス」と呼ばれたことも名乗ったこともなく、自筆譜には「アマデーオ」、書簡には「アマデ」と署名していた——その名を死後誰が何のために引き剥がしたのかを追う一冊。モーツァルトは二度「殺された」という視点から、西洋音楽史の常識に切り込んでいきます。巻末には作品と手紙における署名一覧の付録が付き、名前という一点から夭逝した天才の渇望と苦悩に寄り添う構成です。

こんな人におすすめ

モーツァルトの映画や伝記に触れて引っかかりを覚えた人、音楽史の通説を疑ってみたい人、署名や書簡から歴史を読むのが好きな人、名前や呼称の由来に関心がある人、新書で音楽史を学び直したい人に向きます。

良い点

  • 署名一覧の付録が資料になる
  • 一点の疑問から広く展開する
  • 文体が読みやすく新書サイズ

気になる点

  • 著者の主張に強く導かれる
  • 映画の印象が先立つと戸惑う
  • 楽曲の分析は少なめ

出版社

集英社

発売日

2020年02月17日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

モーツァルトは「アマデウス」と呼ばれていなかった、って単純に驚きました。映画の印象が強すぎたんだなって。

佐藤メバル

佐藤メバル

著者の石井宏は、自筆譜には「アマデーオ」、書簡には「アマデ」と署名していた事実から始めて、死後誰がその名を引き剥がしたのかを追っていく。

生涯大切にした名前が、なぜ似て非なる「アマデウス」に改められたのか、という問いだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

巻末に署名一覧が付いてるのが、嘘か本当かを自分で確かめられる感じでいいですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがいい。作品と手紙の署名を並べてあるから、読者は自分の目で確認できる。返す刀で西洋音楽史の欺瞞にも切り込んでいくから、名前という一点から音楽史を問い直す本として読めるよ。

最良の教養としてのモーツァルト3大オペラ (Blu-ray3枚付き)
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最良の教養としてのモーツァルト3大オペラ (Blu-ray3枚付き)

岡田暁生 著|集英社

¥16,500(税込)

3.7

『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』の3大オペラを、パリ・オペラ座、英国ロイヤル・オペラ・ハウス、ミラノ・スカラ座の名舞台で収めたBlu-ray3枚と、A5判上製本96ページのブックレットのセット。すべて日本語字幕付きで、自宅にいながら超特等席の鑑賞ができます。オペラが文化の精華である理由から、作品誕生の経緯、見どころ聴きどころまで読み物としても充実させた構成です。

こんな人におすすめ

オペラをこれから観てみたい人、名門歌劇場の舞台を自宅で味わいたい人、岡田暁生や加藤浩子らの文章で基礎から学びたい人、音楽好きへの贈り物を探している人、映像と本を往復して教養を深めたい人に向きます。

良い点

  • 日本語字幕付きのBlu-ray3枚
  • 読み物96ページが付属する
  • 名門劇場の名舞台を厳選

気になる点

  • 価格が高く気軽ではない
  • 再生環境が必須になる
  • 演出の好みは分かれる

出版社

集英社

発売日

2020年12月16日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

Blu-ray3枚と96ページの本でこの価格。オペラの入門としては思い切りが要りますね。でも観て学べるのは魅力的です。

佐藤メバル

佐藤メバル

中身は濃いよ。『フィガロの結婚』はパリ・オペラ座、『ドン・ジョヴァンニ』は英国ロイヤル・オペラ・ハウス、『魔笛』はミラノ・スカラ座と、名門歌劇場の名舞台が選ばれている。

すべて日本語字幕付きだから、はじめてでも筋を追える。

橘ナナミ

橘ナナミ

ブックレットも読み物として充実してるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

岡田暁生、池辺晋一郎、檀ふみ、大野和士、加藤浩子、中野京子、室田尚子といった顔ぶれが、なぜモーツァルト・オペラが最良の教養たりえるのかを書いている。

作品誕生の経緯から見どころまで案内してくれるから、映像と本を往復しながら基礎から深いところまで一気に触れられるよ。

ワーグナーシュンポシオン(2022)
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ワーグナーシュンポシオン(2022)

アルテスパブリッシング

¥3,190(税込)

3.7

『ニュルンベルクのマイスタージンガー』をめぐる大野和士(指揮者)、ハイコ・ヘンチェル(演出家)、舩木篤也(音楽評論家)の特別鼎談を軸に、「研究から実践へ」を特集した論集。〈ラインの黄金〉序奏と自作の比較、『トーニオ・クレーガー』に見るトーマス・マンの受容、〈神々の黄昏〉初演稿復元の試みなど、論文と上演報告が同じ冊子に並びます。バイロイト音楽祭の報告や国内上演の記録、文献案内まで収めた年次刊行の一冊です。

こんな人におすすめ

ワーグナーの上演を追いかけている人、演出と指揮の現場の声を読みたい人、文献情報をまとめて確認したい人、上演と研究の橋渡しを求める人、ワーグナー協会の活動に関心がある人に向きます。

良い点

  • 鼎談で現場の議論が読める
  • 上演報告と文献案内が揃う
  • 研究と実践の橋渡しになる

気になる点

  • 前提知識がかなり要る
  • 単独では入門にならない
  • 年度版で話題が限られる

出版社

アルテスパブリッシング

発売日

2022年07月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ワーグナーって、入門するにはハードルが高いイメージがあるんですが、この本は研究書なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

どちらかというと年次の論集でね、2022年版は『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の特別鼎談から始まる。

指揮者の大野和士、演出家ハイコ・ヘンチェル、評論家の舩木篤也が演出と指揮の現場を語り合っているのが読みどころだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

〈神々の黄昏〉の初演稿を復元する試みとか、かなり専門的な内容も入っているんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、〈ラインの黄金〉序奏と自作を比較する論考や、トーマス・マンの受容を扱う論文も並ぶ。研究から実践へというテーマどおり、論文と上演報告が同じ冊子に入っているのが特徴だね。

バイロイトの報告や国内上演の記録も含めて、現在地を確認する一冊という位置づけだよ。

ショパン・コンクール見聞録 革命を起こした若きピアニストたち
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ショパン・コンクール見聞録 革命を起こした若きピアニストたち

青柳いづみこ 著|集英社

¥1,012(税込)

3.7

5年に一度開かれ、世界三大音楽コンクールで最も権威があるとされるショパン・コンクール。第18回大会は反田恭平が日本人として51年ぶりに2位、小林愛実が4位とダブル入賞し、角野隼斗、進藤実優、牛田智大、沢田蒼梧らも健闘、優勝はブルース・リウ、同率2位にガジェヴ、3位にガルシア・ガルシアという結果でした。ピアニストで文筆家の青柳いづみこが、既存の価値観を覆すような演奏が並んだ現場で何が起きていたのかを検証します。

こんな人におすすめ

第18回大会を配信で追いかけた人、コンクールの内側に関心がある人、反田恭平や角野隼斗の演奏を聴いてきた人、ピアニストが書いた文章を読みたい人、これからショパン・コンクールを聴く人に向きます。

良い点

  • 演奏家自身の筆で書かれている
  • 予選から本選までを追える
  • 同時代の記録として貴重

気になる点

  • 第18回大会に内容が限られる
  • 演奏評の好みは分かれる
  • 大会の予備知識があると入りやすい

出版社

集英社

発売日

2022年10月17日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

第18回大会って、反田恭平さんの2位と小林愛実さんの4位でものすごく盛り上がった回ですよね。リアルタイムで配信を見ていたので、これは読みたいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

ピアニストで文筆家の青柳いづみこが、その現場で何が起きていたのかを書いている。優勝したブルース・リウ、同率2位のガジェヴ、3位のガルシア・ガルシア、そして角野隼斗や進藤実優、牛田智大、沢田蒼梧ら日本勢の演奏まで、既存の価値観を覆すような演奏が並んだ大会だったと捉えているんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

演奏家が書いているから、聴きどころの指摘が具体的そうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが大きいね。音と言葉を自在に操る著者だから、予選から本選までの流れと、それぞれの演奏の何が新しいのかをコンクールの内側から描いていく。

日本ショパン協会の理事を務める人で、ショパン・コンクールについての著書もある。観客として見ていた人にも、これから聴く人にも届く一冊だよ。

音楽文化 戦時・戦後
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音楽文化 戦時・戦後

河口道朗 著|社会評論社

¥2,750(税込)

3.5

『愛国行進曲』から『リンゴの歌』へ——戦時ナショナリズムから戦後民主化にかけて音楽教育がどう変質したかを分析する昭和史研究。音感教育の提唱、音楽の軍需品化、厚生音楽運動といった具体から、戦後のうたごえ運動、新音楽教科書の出現、器楽教育の振興、音楽大学の成立までを二部構成で追います。著者自身が歩んだ音楽の道に戦争体験が影を落とす、貴重な証言でもあります。

こんな人におすすめ

戦時下の教育や文化政策を学ぶ人、学校音楽の歴史を調べたい人、音楽と政治の関係に関心がある人、うたごえ運動の背景を知りたい人、あとがきの問いを今の教育と重ねて考えたい人に向きます。

良い点

  • 一次資料に基づく記述が厚い
  • 戦時と戦後を続けて追える
  • あとがきの問いかけが鋭い

気になる点

  • 学術書寄りで読み進めにくい
  • 図版や資料の掲載は少なめ
  • 現代の音楽事情は扱わない

出版社

社会評論社

発売日

2020年04月10日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

『愛国行進曲』から『リンゴの歌』へ、という一文が目に留まりました。戦時と戦後で、学校で歌う曲がそんなに変わるものなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

戦時は「音楽報国週間」や芸能科音楽のように、音楽が国家に統合されていく時代だった。それが戦後は新教育の理念のもとで学校音楽が再建され、新音楽教科書の出現や器楽教育の振興へと移っていく。

河口道朗はその変質の過程を、音感教育の提唱や音楽の軍需品化から丁寧に追っているんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

あとがきの引用が強くて、音楽と教育に本来の自由や創造の原理がないがしろにされている、という指摘が今にも通じるように思えました。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の芯だね。戦時下の音楽教育を読むことは、いまの政策と現場の関係を考える材料にもなる。

著者自身も音楽の道を歩いてきた人で、戦争体験が文章の影に落ちている。前に出すぎない分、静かに刺さるよ。

うたのチカラ
17

うたのチカラ

日本音楽著作権協会 著|集英社

¥2,200(税込)

3.5

1982〜2013年の音楽利用ランキングデータを一挙収録し、戦後の流行歌からJ-POPまでを証言でつづる通史リポート。日本音楽著作権協会の集計データという客観的な数字を軸に、アーティストへのインタビューと豪華執筆陣のオムニバスで、近現代の大衆音楽を文化的な観点から読み解いていきます。売上や再生数とは違う「使われ方」の数字から歌の歴史を眺められる点が、類書にはない持ち味です。

こんな人におすすめ

歌謡曲からJ-POPまでの流れを一冊で押さえたい人、数字から音楽史を眺めたい人、放送やイベントで曲を使う立場の人、昭和から平成のヒット曲を資料として引きたい人、学校や図書館で音楽史を扱う人に向きます。

良い点

  • ランキングデータが一挙に載る
  • 証言とオムニバスで読みやすい
  • 戦後から2013年までを扱う

気になる点

  • データの読み方に工夫が要る
  • 2013年以降は対象外になる
  • 通史としては簡潔な面もある

出版社

集英社

発売日

2014年11月18日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

JASRACのデータが軸になっているんですね。ランキングって、ふつうのヒットチャートとは違うものなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ここで使われているのは音楽の利用に関する集計データで、1982年から2013年までのものが一挙に収録されている。

CDの売上とも配信の再生数とも違う、歌がどう使われてきたかが見える数字なんだ。それを軸に、戦後の流行歌からJ-POPまでの通史を証言でつづっていく。

橘ナナミ

橘ナナミ

インタビューと豪華な執筆陣のオムニバス構成というのも気になります。読み物としても面白いんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがいいところで、数字だけだと味気ないところを、アーティストの言葉と書き手の文章が埋めている。うたのチカラという題のとおり、歌が人と時代を動かしてきた様子が、データと証言の両方から見えてくるよ。学校や放送で曲を扱う人にも資料になる。

歌の国スウェーデン
18

歌の国スウェーデン

戸羽晟 著|新評論

¥4,180(税込)

3.5

400枚に及ぶCD・LPレコードとコンサートを聴いた著者が、知られざるスウェーデンの音楽家たちを初めて分かりやすく網羅した一冊。18世紀前半にクラシックが芽生えた頃から現代までの流れを第1部でたどり、第2部では作曲家を個別に解説します。文化王グスタフ3世の時代、ベールヴァルド、19世紀末からの黄金時代、戦火を免れた20世紀、音楽の多様化まで、美しい歌曲や合唱曲が生まれた背景に迫ります。

こんな人におすすめ

北欧の音楽をまとめて知りたい人、シベリウス以外の作曲家を探している人、合唱や歌曲のレパートリーを増やしたい人、現地の音楽事情を調べる人、時代順に作曲家を押さえたい人に向きます。

良い点

  • 18世紀から現代まで通して読める
  • 作曲家解説が第2部に分かれる
  • 実際に聴いた記録に基づく

気になる点

  • 価格が高めで頁数も多い
  • 図版や譜例は多くない
  • 関連する日本語資料が少ない

出版社

新評論

発売日

2008年07月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

スウェーデンというとポップスのイメージが強いんですが、クラシックの本なんですね。「歌の国」というのはどういう意味でつけられたんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

歌曲や合唱曲が暮らしに根づいてきた国だという意味が込められている。著者の戸羽晟は400枚に及ぶCD・LPとコンサートを聴いて、18世紀前半にクラシックが芽生えた頃から現代までをたどった。

グスタフ3世の時代、ベールヴァルド、19世紀末からの黄金時代、戦火を免れた20世紀という流れだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

第2部が作曲家の解説になっているので、辞書的に引くこともできるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、第1部で時代を通して読み、第2部で個々の作曲家を確認する形。知られざるスウェーデンの音楽家たちを初めてまとめて紹介した本だから、シベリウスやノルウェーの作曲家は知っていてもスウェーデンは穴だった、という人にちょうどいいよ。

オーケストラ大国アメリカ
19

オーケストラ大国アメリカ

山田真一(音楽評論家) 著|集英社

¥792(税込)

3.5

アメリカはクラシックの伝統がない国と思われがちだが、現代のオーケストラのスタイルは19世紀に成立し、アメリカのオケはその形成過程でヨーロッパに劣らない役割を果たした——という視点から、その歴史と実力を描く一冊。オペラハウス・ブーム、地域オーケストラの誕生、マーラーの辣腕、スター指揮者誕生、レコード業界の飛躍、幻のシカゴ響音楽監督フルトヴェングラー、セルとクリーヴランド管の遺産までを追います。

こんな人におすすめ

アメリカのオーケストラをよく聴く人、指揮者の録音史に関心がある人、クラシックの伝統がどこで作られたかを知りたい人、海外の楽団事情を調べる人、コンサートやCDの背景を立体的に掴みたい人に向きます。

良い点

  • オケ史をドラマとして読める
  • 指揮者と楽団の関係が具体的
  • 録音史の背景にも触れる

気になる点

  • 近年の動向は扱いが薄い
  • 人名が多く前提知識が要る
  • 楽曲分析の記述は少ない

出版社

集英社

発売日

2011年04月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

アメリカにクラシックの伝統はない、という言い方をときどき聞くんですが、この本はそれをひっくり返す本なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそういう一冊。現代のオーケストラのスタイルは19世紀に成立したもので、その形成過程でアメリカのオケはヨーロッパのオケに優るとも劣らない役割を果たした、という立場で書かれている。

オペラハウス・ブームから地域オーケストラの誕生まで、ドラマティックに歴史をたどっていくんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

スター指揮者や名オーケストラの実像も入っているんですね。マーラーとかフルトヴェングラーの名前も目次に見えます。

佐藤メバル

佐藤メバル

マーラーが音楽界を飛躍させた話、幻のシカゴ響音楽監督フルトヴェングラー、最後の勝利者ライナー、セルとクリーヴランド管の遺産といった具合に、指揮者と楽団の関係を軸に実力の源泉へ迫っていく。

録音業界の飛躍にも触れているから、手元のCDの背景が立体的に見えてくるよ。

ベルリンから見た不思議おもしろ音楽事情
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ベルリンから見た不思議おもしろ音楽事情

城所孝吉 著|株式会社音楽之友社

¥2,640(税込)

3.5

長年ベルリンで音楽評論家・ジャーナリストとして活動する著者が、ヨーロッパのクラシック音楽事情を硬軟織り交ぜて綴る一冊。コンサートの正しいドレスコード、アフター・コンサートの食事問題、ブーイングは正当なのか、楽章間の拍手といった身近な疑問から、ベルリン・フィルの話題、カラヤンやバーンスタイン、ハーディングの逸話、音楽批評の必要性、ポストCD時代までを幅広く扱います。

こんな人におすすめ

海外のコンサートに行く予定がある人、ベルリン・フィルの内部事情を読みたい人、クラシックの習慣に素朴な疑問がある人、音楽批評の役割を考えたい人、現地の音楽生活を覗いてみたい人に向きます。

良い点

  • 生活に即した話題が豊富
  • ベルリン・フィルの記述が厚い
  • 章立てが細かく読みやすい

気になる点

  • ドイツ中心の内容になる
  • 話題が広く深掘りは浅め
  • 近年の状況も混ざる

出版社

株式会社音楽之友社

発売日

2026年10月07日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「アフター・コンサートの食事問題」という見出しに笑ってしまいました。そういうことって、ガイドブックには載ってないですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

現地に住んでいるから書ける話だね。ドレスコード、クロークに荷物を預けるのは義務か、教会で宗教音楽を聴くには、ブーイングは正当なのか、楽章間の拍手はどうなのか、といった素朴な疑問が次々に並ぶ。

著者の城所孝吉はベルリンで長く活動してきた批評家・ジャーナリストなんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

ベルリン・フィルの話もたっぷりあるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

「ベルリン・フィルは怖い」「なぜナンバーワンなのか」「アバドの室内楽的アプローチ」「ラトルとの戦い」「ペトレンコのピークはこれから」と章が続く。

現地だからわかるベルリン・フィルの姿と、カラヤンやバーンスタインの知られざるエピソード、音楽批評の必要性まで、硬軟織り交ぜて読ませるよ。

吉田拓郎から始めるロックスター列伝
21

吉田拓郎から始めるロックスター列伝

田家秀樹 著|集英社インターナショナル

¥1,144(税込)

3.5

「吉田拓郎=フォーク」は日本の音楽史上最大の誤解である——という一文から始まる、年齢もバックグラウンドも異なるふたりの音楽評論家による語り下ろし対談本。田家秀樹とスージー鈴木が13人のレジェンドを「通説」から解き放ち、実像、功績、知られざるエピソードまでを語りつくします。沢田研二、矢沢永吉、井上陽水、中島みゆき、松任谷由実、桑田佳祐、浜田省吾、佐野元春、松田聖子と中森明菜、忌野清志郎、氷室京介まで並びます。

こんな人におすすめ

昭和から平成のJ-POPを聴いてきた人、「通説」に首をかしげたことがある人、対談形式で音楽談義を楽しみたい人、ラジオ的な語り口が好きな人、世代の違う視点の差を味わいたい人に向きます。

良い点

  • 対談なので読み口が軽い
  • 13人という軸がはっきりしている
  • ふたりの視点の差が楽しい

気になる点

  • 網羅的な人名事典ではない
  • 世代の好みに寄る箇所がある
  • 深掘りより談義が中心

出版社

集英社インターナショナル

発売日

2026年08月07日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「吉田拓郎=フォークは史上最大の誤解」って、いきなり挑発的な一文から始まるんですね。これは対談本なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

語り下ろしの対談本だね。日本のロックやポップスを創成期から取材してきた田家秀樹と、昭和歌謡から最新ヒットまで独自の視点で書くスージー鈴木。

年齢もバックグラウンドも違うふたりが、13人のレジェンドを「通説」から解き放っていく。

橘ナナミ

橘ナナミ

中島みゆきにノーベル文学賞を、という章題も気になります。こういう言い切りが続くんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、矢沢永吉論は「語れば語るほどハッピーになる」、松任谷由実は「私は天才」の所以、氷室京介は「ロックのビートを変えた声」。

実像と功績と知られざるエピソードを、ふたりの会話でぐいぐい掘っていく。音楽を語るのが楽しいと思える本だよ。

バッハの思い出
22

バッハの思い出

M・アンナ・バッハ 著|講談社

¥1,122(税込)

3.5

音楽の父と呼ばれ、モーツァルトやベートーヴェンにも影響を与えたバッハ。対位法の巨匠、永遠を語るロマン主義者と称される一方、家庭を愛し、その芸術は生活との完全な調和を奏でていた——本書は、音楽家としての波乱の65年の生涯と、名曲の背後に隠された人間バッハの苦悩と喜びを、最良の伴侶の目を通して叙述します。英独仏で多くの読者に愛され続けてきた、バッハ理解に必読の古典的名著です。

こんな人におすすめ

バッハの音楽を長く聴き込んできた人、作曲家の人間像を知りたい人、伝記の古典を味わいたい人、家族と創作の関係に関心がある人、いかめしい肖像の奥にいる人に会ってみたい人に向きます。

良い点

  • 伴侶の視点という希少さ
  • 生涯と作品が結びつく
  • 長く読まれてきた古典

気になる点

  • 刊行から時間がたつ記述
  • 訳文に時代感がある
  • 最新の研究成果は反映しない

出版社

講談社

発売日

1997年09月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

バッハの奥さんが書いた本なんですか? それはちょっと想像がつかないです。

佐藤メバル

佐藤メバル

最良の伴侶の目を通して、音楽家としての波乱の65年の生涯と、名曲の背後に隠された人間バッハの苦悩と喜びが綴られている。

家庭を愛し、その芸術が生活との調和を奏でていたという見方が、この本の土台だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

音楽の父というと、いかめしい肖像画のイメージが強いんですが、人間らしい姿が読めるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。対位法の巨匠、永遠を語るロマン主義者と称される一方で、暮らしの中にいた人として描かれる。英独仏で読み継がれてきた古典的名著だから、研究書ではなく伝記として読むのがいい。

最新の研究を求める人より、人間バッハに会いたい人に向いているよ。

ソング・オブ・サマー 真実のディーリアス
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ソング・オブ・サマー 真実のディーリアス

エリック・フェンビー 著|アルテスパブリッシング

¥2,640(税込)

3.5

英国音楽史に屹立する作曲家フレデリック・ディーリアス(1862-1934)の最晩年を、その作曲を助けた青年音楽家エリック・フェンビーが綴った回想録の完訳。盲目と全身麻痺に冒された偏屈な老人と、敬虔なカトリック信者の青年という正反対の二人の共同生活と、最晩年の名作群をともに紡ぎ出した奇跡的なコラボレーションが、みずみずしい筆致で描かれます。原著を在英のヴァイオリニスト小町碧が全訳し、向井大策が監修しました。

こんな人におすすめ

ディーリアスの音楽を愛する人、作曲家と助手の共同作業に関心がある人、ケン・ラッセル監督の映像作品の背景を知りたい人、文学作品として回想録を読みたい人、音楽と人生の関係を考えたい人に向きます。

良い点

  • 青年の瑞々しい筆で綴られる
  • 作曲の現場が具体的に描かれる
  • 解説と略年譜まで完備する

気になる点

  • ディーリアス未聴だと入りにくい
  • 宗教的な葛藤の記述が長い
  • 当時の英国音楽史の前提が要る

出版社

アルテスパブリッシング

発売日

2017年11月15日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ディーリアスって、名前は聞いたことがあるくらいで。盲目と全身麻痺の作曲家を、22歳の青年が手伝った話なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。フェンビーは大作曲家が不治の病に苦しんでいると知って手紙を送り、フランスの小村へ向かう。そこで待っていたのは正反対の二人の奇妙な共同生活だった。

ニワトコの樹の下で車椅子に座り、フェンビーが新しい開始部を書き留めるのを待っていた、という場面が残っている。

橘ナナミ

橘ナナミ

ケン・ラッセル監督が映画にしたというのも、納得のドラマですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

1936年に出た原著が『Song of Summer』として映像化されて、日本でも放送された。今回の日本語版は、英国在住のヴァイオリニスト小町碧が全訳し、音楽学者の向井大策が監修する布陣で、ディーリアスの作曲法の解説や略年譜も付いている。

音楽と人生の関係を考えさせられる一冊だよ。

英国音楽大全
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英国音楽大全

三浦淳史 著|株式会社音楽之友社

¥3,960(税込)

3.5

三浦淳史の没後25周年とヴォーン・ウィリアムズ生誕150周年を記念して編まれた、英国音楽に関する文章の集成。エッセイ27編と全219曲の楽曲解説の二部構成で、ブリテン、バターワース、ディーリアス、エルガー、ホルスト、ウォルトンらを扱い、ケテルビーやコーツ、サリヴァンといったライト・クラシカルにも目配りします。英国音楽に特化した三浦の初の一冊で、名曲解説ライブラリーの英国音楽版として使える構成です。

こんな人におすすめ

エルガーやヴォーン・ウィリアムズを聴き始めた人、演奏会の曲目解説を書く立場の人、英国音楽のレパートリーを増やしたい演奏家、CD棚の整理に困っている人、珍しい作曲家まで押さえたい人に向きます。

良い点

  • 219曲分の解説を収録する
  • エッセイと解説の二部構成
  • 珍しい作曲家まで網羅する

気になる点

  • 価格が高めで頁数も多い
  • 三浦の文章の再録が中心
  • 図版や譜例は乏しい

出版社

株式会社音楽之友社

発売日

2022年11月11日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

219曲分の楽曲解説って、かなりの量ですね。これは調べるための本として使うんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

第1部がエッセイと評論で27編、第2部が楽曲解説で全219曲。ブリテン、バターワース、ディーリアス、エルガー、ホルスト、ウォルトンはもちろん、アイアランドやフィンジ、ハーティ、マッカン、ティペット、ウォーロックまで並ぶ。

名曲解説ライブラリーの英国音楽版として使える構成なんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

ケテルビーやコーツ、サリヴァンみたいな、いわゆるライト・クラシカルにも触れているのがいいですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが三浦淳史の懐の深さでね。没後25周年とヴォーン・ウィリアムズ生誕150周年を記念して、英国音楽に特化した初の一冊としてまとめられた。

演奏会で英国ものを取り上げる演奏家にも、聴く側にも応える本だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、そもそも「音楽批評」って、感想文と何が違うんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。感想は「私がどう感じたか」で完結するけれど、批評はその感じ方がなぜ生まれたのかまで連れていく。森本恭正と南博『音楽の黙示録』は「音楽と権威」「音楽と軍隊とヒエラルキー」といった論点を立てて、音楽の世界に蔓延する常識の出どころを問うていく。感じたことを、他人もたどれる道筋に組み直すのが批評なんだ。

音楽批評の地図——三つの系譜を押さえる

佐藤メバル

佐藤メバル

系譜は大きく三つある。ひとつは同時代の現場を書き続ける「定点観測型」。秋山邦晴評論集『聴く・視る・語る 1980-1995』は、1980年9月から1995年12月までほぼ毎月続いた連載を全篇集成したもので、武満徹『双子座』初演の衝撃や、メシアンとケージの死まで、20世紀音楽の最後の輝きが生きた証言として残っている。

橘ナナミ

橘ナナミ

作曲家の高橋悠治さんの言葉も引かれていました。柴田南雄の批評が『音楽会の手帖』として出ているから、これが本になれば1970年から1995年までがカバーされる、という。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが批評史の面白さだね。同じ時代を、柴田は作曲家で冷めた観察者として、秋山は批評家で熱い当事者として書いた。読み比べると、同じ演奏会がまるで違う事件に見えてくる。ふたつめは「演奏家論・作品論型」で、野口剛夫『私の音と言葉』が代表だ。指揮者とは何かという問いを、実演と自分の耳の経験から積み上げていく。みっつめは「メディア・言説史型」。加藤一陽『音楽メディア・アップデート考』は、批評がどこで失われ、どこに残っているのかを、8人への取材で浮き彫りにする。

橘ナナミ

橘ナナミ

鹿野淳さんの「邦楽ロック・メディアから失われつつある批評性」や、imdkmさんの「切り捨てられるテキストの中に眠る批評性」というパートが気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは今の読者に直結する論点だね。批評が消えたのではなく、置き場所が変わっただけかもしれない、と考えさせられる。サブスクで何でも聴ける時代に批評を読む意味は、まさにここにある。選曲リストは「何を聴くか」を教えてくれるけれど、批評は「どう聴くか」を渡してくれるんだ。

読む前と後で、聴こえ方はどう変わるか

橘ナナミ

橘ナナミ

評論を読むと、実際の聴こえ方って変わるものですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

変わるよ。石井宏『モーツァルトは「アマデウス」ではない』を読んでから、ぼくはモーツァルトの名前の表記が気になって仕方なくなった。本人が生涯大切に使い続けた名は何だったのか、誰が何のために似て非なる名に改竄したのか——この問いを抱えたまま曲を聴くと、同じ音が「神話の作曲家」ではなく「生身の人間」の声として届く。『ユーミンの罪』も同じで、曲を聴きながら「この歌は当時の女性たちに何を肯定していたのか」を考えるようになる。批評は聴取の解像度を上げる道具なんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

逆に、読まないほうが自由に聴けるということもありますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

ある。だから最初は一冊だけ選ぶのがいい。あれもこれも読むと、耳が人の言葉で埋まってしまう。まず一冊を読み切って、その本の眼鏡でしばらく聴いてみる。物足りなくなったら次の一冊を足す。その繰り返しが、いちばん自分の聴き方を太くする。

名著と新刊、そして絶版本の探し方

橘ナナミ

橘ナナミ

古い本と新しい本は、どう使い分ければいいんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

名著は「判断の基準」を与えてくれる。『バッハの思い出』はバッハ理解に必読の古典として読み継がれてきたし、三浦淳史『英国音楽大全』は没後25年とヴォーン・ウィリアムズ生誕150年を機に、英国音楽のエッセイと楽曲解説が一冊にまとめ直された。一方、新刊は「いま何が起きているか」を持ってくる。『ショパン・コンクール見聞録』や『ワーグナーシュンポシオン(2022)』のように最近の現場を扱う本は、新刊でしか得られない。名著で座標を決めて、新刊で現在地を確かめる。この往復が強い。

橘ナナミ

橘ナナミ

でも、読みたい本が絶版だったら……。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこで諦めないのが書店員の知恵だ。まず図書館の蔵書検索、次に電子書籍、最後に古書店の在庫を当たる。それでも出会えなければ、同じテーマを扱う本で代替する。英国音楽の入門が欲しければ『英国音楽大全』があるし、北欧なら戸羽晟『歌の国スウェーデン』のように、400枚に及ぶCD・LPとコンサートを聴いた著者が音楽家たちを網羅した本がある。一冊が手に入らないことは、そのテーマを諦める理由にはならない。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど……! 探す順番まで教えてもらえると、心強いです。

よくある質問

音楽批評の本は楽譜が読めなくても読めますか

橘ナナミ

橘ナナミ

音楽批評の本は楽譜が読めなくても読めますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

読めます。音楽評論の多くは、聴いた体験を言葉にした文章が本体で、譜例は補助です。むしろ音をどう言語化するかを追うのが批評の醍醐味なので、楽譜の知識は後から足せば十分。音と言葉の距離が近い入門書から始めるのがおすすめです。

音楽評論の最初の一冊はどれがいいですか

橘ナナミ

橘ナナミ

音楽評論の最初の一冊はどれがいいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

聴く体験を言葉にしたいなら『ユーミンの罪』、曲の話から入りたいなら『大人の音楽 Age Free Music』、批評という営み自体に興味があるなら『音楽メディア・アップデート考』が入口になります。もやもやが一番強いテーマから選ぶと、読後の変化が大きくなります。

音楽史の本と音楽批評の本は何が違いますか

橘ナナミ

橘ナナミ

音楽史の本と音楽批評の本は何が違いますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

音楽史は「何が起きたか」を並べ、批評は「それがどう聴かれ、何を意味したか」を問います。たとえば『音楽文化 戦時・戦後』は戦時から戦後の音楽教育の変質をたどる文化史ですが、そこに著者自身の戦争体験を重ねる視点が批評として働きます。両者は対立せず、補い合う関係です。

クラシックに詳しくなくてもクラシック系の批評は読めますか

橘ナナミ

橘ナナミ

クラシックに詳しくなくてもクラシック系の批評は読めますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

読めます。『ベルリンから見た不思議おもしろ音楽事情』はドレスコードや楽章間の拍手、批評家の役割といった話題から入れる構成で、曲の予備知識がなくても楽しめます。『モーツァルトは「アマデウス」ではない』も、名前の謎という一点から西洋音楽史に切り込むので、構えずに読み始められます。

洋書・翻訳書は原書で読むべきですか

橘ナナミ

橘ナナミ

洋書・翻訳書は原書で読むべきですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

まず邦訳で構いません。評論は文脈の理解が優先で、訳者と監修者の名前を見て選ぶのが実用的な判断軸になります。たとえば『ソング・オブ・サマー 真実のディーリアス』は小町碧が全訳し、音楽学者の向井大策が監修しています。原書は引用箇所を自分で確かめたくなってからで十分です。

絶版・入手困難な音楽書はどうすれば読めますか

橘ナナミ

橘ナナミ

絶版・入手困難な音楽書はどうすれば読めますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

図書館の蔵書検索、電子書籍、古書店の在庫という順に当たるのが定石です。それでも出会えなければ、同じテーマを扱う本で代替します。英国音楽なら『英国音楽大全』、北欧なら『歌の国スウェーデン』のように、分野を丸ごと覆う一冊が残っていることが多いです。

自伝や小説も音楽の本に含めてよいですか

橘ナナミ

橘ナナミ

自伝や小説も音楽の本に含めてよいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

含めて構いません。音楽家の回想録は演奏論以上に音楽の現場を伝えますし、『ページをめくるとジャズが聞こえる』のように文学の中のジャズを掘り下げる本もあります。小説から入って評論へ戻る読み方は、耳と語彙の両方を育てる近道です。

電子書籍やオーディオブックでも読めますか

橘ナナミ

橘ナナミ

電子書籍やオーディオブックでも読めますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

対応している本はありますが、音楽評論は年譜や写真、譜例が読みの一部になっていることが多く、紙のほうが行き来しやすい面があります。電子で買う前に、書店で造りを確かめてから決めると失敗が少ないです。

まとめ

橘ナナミ

橘ナナミ

今日の話を聞いて、音楽評論の本が「評論の棚」ではなく「音楽との付き合い方の棚」に見えてきました。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうだね。名盤ガイドは曲を教えてくれるけれど、評論は耳の使い方を教えてくれる。同じ録音を聴いても、読む前と後では解像度が違う。

橘ナナミ

橘ナナミ

まず何から読むかで、まだ迷っています。三層のどこから入るのがいいんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

迷ったら、いま自分が一番もやもやしていることから選ぶといい。聴いても言葉にできないなら『ユーミンの罪』や『大人の音楽 Age Free Music』。評論って何だろうと思ったら『音楽メディア・アップデート考』や『音楽の黙示録』。歴史の裏側が気になるなら『音楽文化 戦時・戦後』。もやもやが強いほど、読後の変化も大きいよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

もやもやを入口にする。それなら私にも選べそうです。『音楽の黙示録』の目次、まだ頭から離れないんですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

それなら、その違和感を信じていい。読後に聴き方が変わるのは、たいてい最初に引っかかった一冊だよ。評論を読むというのは、名盤の答え合わせをするのではなく、自分の耳に新しい調弦を入れてもらう作業なんだ。読む前と後で、同じ一曲が少しずつ違う音程で鳴りはじめる。その微かなズレこそが、この手の本を読むいちばんの報酬だと思う。

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Editorial Team

編集に関わる専門家