音楽の科学が学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、今回のテーマ「音楽と科学」なんですけど……正直、棚の前に立って固まっちゃいました。音大の友達は「脳の話が面白い」って言うし、理系の友達は「音律なんて数学だよ」って言うし、同じテーマなのに全然違う本を勧めてくるんです。
佐藤メバル
それ、すごくいいところに気づいたね。音楽の科学はひとつの山じゃなくて、四つの峰が並んでいるようなものなんだ。聴覚心理学、認知神経科学、音響物理学、そして音楽理論と数学。書店員だった頃、この四つを同じ棚に並べたら、お客さんがどれを選べばいいか分からなくなってね。分野ごとに分けたら「欲しかったのはこれ」と手に取ってくれる率がぐっと上がった。だから今日は、まず地図を渡すところから始めよう。
橘ナナミ
地図! それ助かります。でも、いきなり専門書を買って積んじゃう気もしてて……。
佐藤メバル
そこは安心して。いまは『Newton別冊 音楽と科学』や『超絵解本 音楽と科学』のように、図版で全体を眺められる本がある。数式の頁を飛ばして読んでも、音が波として伝わる仕組みや、ドレミが数学から生まれた経緯はちゃんと頭に残る。まずはこの層で輪郭をつかんで、面白いと感じた章から次の一冊に進むのが、いちばん失敗が少ないよ。
橘ナナミ
なるほど……! じゃあ、いきなり分厚い本に行かなくてもいいんですね。
佐藤メバル
そう。フィリップ・ボールの『音楽の科学』は、なぜ人は音楽を聴くのか、音色やハーモニーをなぜ認識できるのかまで踏み込む名著で、いつかは通ってほしい道なんだけど、最初から挑むと途中で息切れしやすい。山登りと同じで、麓の眺めを知ってから登るほうが、頂上の景色がよく分かるんだ。
音楽の科学が学べる本の選び方
目的別で選ぶ
橘ナナミ
目的別って言われても、まだ「なんとなく面白そう」くらいで……。
佐藤メバル
それで十分。ただ、自分が知りたいのは「音そのもの」か「心」か「体」かを確かめてみるといい。音を物理として知りたいなら『音と音楽の科学』が体系的で、純音から倍音、残響、オーディオ機器の原理まで一本の線でつながる。心なら『音楽心理学ことはじめ』、体や演奏なら『ピアニストの脳を科学する』や『歌と身体のメカニズム』だね。
橘ナナミ
治療に使う話は?
佐藤メバル
『音楽療法はどれだけ有効か』がいい。認知症や失語症、パーキンソン病への活用を、エビデンスがどこまで確立しているかという目線で丁寧に仕分けしている。期待だけで語らない誠実さがあって、健康系の音楽本が増えた今、基準としても役に立つよ。
レベル別で選ぶ
橘ナナミ
入門・中級・上級って、どう見分ければいいんでしょう。
佐藤メバル
目次を見て、数式と用語の密度で判断するといい。入門は『Newton別冊 音楽と科学』『超絵解本 音楽と科学』、そして『音律と音階の科学 新装版』。ドレミがなぜそう決まったのかを簡単な数学で追う本で、読み物として軽いのに中身は深い。中級は『科学で読み解く クラシック音楽入門』『音と音楽の科学』『音楽する脳』あたりが入口になる。
橘ナナミ
上級はもう、別世界ですか。
佐藤メバル
別世界というより、研究の入口だね。『音楽と脳科学』のような包括的レビュー、『音楽・数学・言語』のように情報科学と言語学へ踏み込む本、物理学から文化人類学まで越境する『音楽の原理』。読むのに体力はいるけれど、ここまで来ると「音楽とは何か」という問いの解像度が一段上がる。
形式別で選ぶ
橘ナナミ
図解が多い本が好きなんですが、そういう選び方もアリですか。
佐藤メバル
もちろん。ビジュアルならニュートンの別冊や『超絵解本』、『音のなんでも小事典』も強い。小事典は項目が短く区切られていて、コンサートホールの音響から絶対音感、赤ちゃんが聞いている音まで拾い読みで知識が増える。新書サイズなら『音楽心理学ことはじめ』『音楽する脳』が持ち歩きやすい。
橘ナナミ
電子書籍でも読めます?
佐藤メバル
あるものはあるけど、図版のレイアウトが命の本は紙が強い。文章中心の新書は電子でも読みやすい。図書館で借りてから判断するのも、立派な選び方だよ。
科学的アプローチで選ぶ
橘ナナミ
実験心理学、神経科学、物理学、数学、情報科学……アプローチが多すぎません?
佐藤メバル
そこがこのテーマの面白さでもある。実験心理学なら『音楽心理学ことはじめ』、神経科学なら『音楽と脳科学』や『音大生・音楽家のための脳科学入門講義』、物理学なら『音と音楽の科学』、数学なら『音律と音階の科学 新装版』、情報科学なら『音楽・数学・言語』。『音大生・音楽家のための脳科学入門講義』は講義形式で、実際に受けた質問に答えながら進むから、独学でも置いていかれにくい。
実践との距離で選ぶ
橘ナナミ
演奏や作曲に活かしたい場合はどうでしょう。
佐藤メバル
『作曲の科学』は、和音と不協和音の違いや明るい曲・暗い曲の作り方を、書き下ろし曲を例に手ほどきしてくれる。『音楽する脳』は演奏家の超絶技巧や脳の予測の話から、自分の練習を見直す材料になる。『歌と身体のメカニズム』は発声を筋肉のバランスから説明していて、歌う人には実践そのものだね。教養として広げるなら、心理学が音楽理論に何を与えてきたかをたどる『音楽と心の科学史』、物理学者とオルガニストの対談『音楽は、宇宙の響き』がいい。
出版年・邦訳の有無で選ぶ
橘ナナミ
古い本だと内容が古くなっていませんか。
佐藤メバル
見分けは必要だね。音律や音響の基礎は古典でも古びない。たとえば『音の科学』はステレオ技術や自動採譜といった先端技術の話題を含みつつ、聴覚と錯覚の章はいま読んでも基本の確認になる。逆に脳画像の研究は進みが速いから、そこは新しい本やレビューで補う。
橘ナナミ
邦訳されていない本はどうすれば。
佐藤メバル
原書で当たるか、国立国会図書館のデジタルコレクション、大学図書館の蔵書を頼る。所属大学がない人は公立図書館の相互貸借という手もあるよ。
橘ナナミ
そんな手が……! 覚えておきます。
音楽の科学が学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
音楽の科学が学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
Newton別冊 音楽と科学
ニュートンプレス
¥1,980(税込)
音は空気を伝わる波であり、ドレミは数学的手法でつくられた音律にもとづく——そんな音楽と科学のつながりを、音と数の関係、楽器が鳴る物理、脳科学、デジタル技術まで章立てで追うNewton別冊です。耳に届いた音が感情を動かすしくみや、アインシュタイン、ファインマン、寺田寅彦ら科学者の音楽エピソード、量子力学を音楽で表現する試みまで収録。図版中心で最新の話題に触れられるのが強みで、読み物としての音楽科学入門とはひと味違います。
こんな人におすすめ
音そのものの正体から音楽の楽しみ方まで、科学の目で一望したい人に。理系の高校生・大学生が音楽に興味を持った入口としても、楽器経験者が演奏の裏側を知るのにも向きます。
良い点
- 図解で音と数学の関係が掴める
- 脳科学から科学者エピソードまで網羅
- 最新研究まで話題の幅が広い
気になる点
- 数式の本格的な導出は少なめ
- 話題が広く各論は概要で終わる
- 図版中心で文章の読み物ではない
出版社
ニュートンプレス
発売日
2025年11月08日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
音楽と科学って、正直あまりつながる気がしないんです。歌ったり弾いたりするのと、実験や計算は別の世界というか……。
佐藤メバル
いい質問だね。実は逆で、音そのものが物理現象なんだ。何かが振動して生まれた波が空気を伝わって鼓膜を震わせる。
だからこのNewton別冊は「音と数のふしぎな関係」から入って、グランドピアノと指数関数、ピタゴラスと音楽、音と三角関数なんてところを丁寧に追いかける。
読み終わると、ドレミが数学から生まれた道具に見えてくるよ。
橘ナナミ
ドレミが数学から生まれた道具……それは気になります! でも、数式がずらっと並んでいたら読み切れるか不安です。
佐藤メバル
そこは図版中心のNewtonらしさで、構成は5章立て。楽器が音をかなでるしくみ、音楽に感動する秘密は脳にある、デジタル技術、そして音楽を愛した科学者たち。
アインシュタインやファインマン、寺田寅彦、ブライアン・メイのエピソードや、量子力学を音楽で表現する試みまで載っている。
数式の導出より、つながりを眺める本として読むのがいいよ。
音楽の科学
フィリップ・ボール 著|河出書房新社
¥4,180(税込)
音楽の起源から構造、音楽が伝える意味、音楽が脳にもたらすものまで——「なぜ人は音楽を聴くのか」「音色やハーモニーをなぜ認識できるのか」といった素朴な疑問に、科学で正面から答える一冊です。音楽を「聴く」能力の謎に迫る、この分野の決定版とされる名著。音そのものの解説から意味や脳の話へと一冊で通して読める構成が、手軽な入門書とも専門書とも違う厚みを生んでいます。
こんな人におすすめ
音楽は好きだが理屈は苦手という人が、「なぜ好きなのか」を一度言葉で確かめたいときに。音楽理論の勉強を始める前の土台としても、演奏家が聴き手の側に立つ視点を得るのにも向きます。
良い点
- 音楽の起源から脳まで一冊で追える
- 素朴な疑問に正面から答える構成
- 決定版とされる網羅性と厚み
気になる点
- 分量が多く通読は覚悟がいる
- 専門用語も出てくる
- 手軽な入門ではない
出版社
河出書房新社
発売日
2018年01月12日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは……「音楽の科学」というタイトルだけで、もう気になります。なぜ人は音楽を聴くんでしょうね。
佐藤メバル
その問いを正面から扱ったのがこの本だよ。フィリップ・ボールという科学ライターが、音楽の起源から構造、音楽が伝える意味、そして音楽が脳にもたらすものまで——「音色やハーモニーをなぜ認識できるのか」「音楽は意味を伝えるのか」という疑問に科学で答えていく。
音楽を聴く能力の謎に迫った、この分野では決定版と言われる一冊だね。
橘ナナミ
決定版、ということはけっこう難しいんでしょうか。読み切れる自信が……。
佐藤メバル
厚みはあるから覚悟はいる。でも順番が親切で、音そのものの話から始まって、だんだん意味や脳へ進む流れだから、知識ゼロでも引きずられて読める。
音楽は好きだけど理屈は苦手、という人が「自分はなぜこれが好きなのか」を言葉で確かめるのに向いているよ。
超絵解本 音楽と科学
ニュートンプレス
¥1,479(税込)
「超絵解本」の名のとおり、図をたっぷり使って音楽と科学の関係をひもとく入門書です。ドレミの音階が数学的考察から生まれたこと、音が空気の振動であること、楽器が鳴るしくみを物理で理解できること——身近な疑問から入って、楽器の違い、脳のメカニズム、デジタル技術、科学者たちの章まで展開します。朝日新聞の連載とコラボした特別企画も収録され、同じテーマの姉妹書より取っつきやすさが際立ちます。
こんな人におすすめ
カラオケや楽器、ライブが好きで、「そういえばなぜ?」を軽い気持ちで知りたい人に。科学が苦手でも絵から入れるので、中高生の入門や、音大生・演奏家が常識を確認するのにも向きます。
良い点
- 図が多く初学者でも入りやすい
- 身近な疑問から始まる親切設計
- 吹奏楽を科学する特別企画を収録
気になる点
- 深い数式や理論の追究には不足
- 図解中心で文章の密度は薄め
- 最先端の研究紹介は控えめ
出版社
ニュートンプレス
発売日
2026年08月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これ、カラオケとかライブが好きな人向けですか? 「超絵解本」というのに惹かれました。
佐藤メバル
そう、まさにその入口の本だね。ドレミの音階が数学的な考察から生まれた話、音が空気の振動だという話、楽器がどう鳴るか、なぜ音色が違うのかを物理で説明していく。
「音楽演奏の評価の決め手は音ではない?」「音楽は“おなか”で感じている?」みたいに、身近な疑問から入るから読みやすい。
橘ナナミ
吹奏楽の話もあるって聞いたんですが、それも気になります!
佐藤メバル
うん、朝日新聞の連載「すいエンス! 吹奏楽を科学する」とコラボした特別企画が入っている。金管楽器のカビの話とか、生成AIでピアノ譜から吹奏楽譜を生み出す話とか、実際の現場に近い話題が並ぶんだ。
絵が多くてページも進みやすいから、科学が苦手な人でも最後までたどり着けると思うよ。
音と音楽の科学
岩宮眞一郎 著|技術評論社
¥2,508(税込)
音と聴覚のしくみから、音の物理と心理、音楽のしくみ、音の空間性、オーディオ機器の歴史、楽器の分類まで——音と音楽に関わる科学を、体系立てて一冊に収めた入門書です。デシベルやマスキング、絶対音感、音律、協和と不協和、リズムとグルーブ感、コンサートホールの残響まで、項目ごとに基礎から積み上げる構成が特徴。用語を確かめながら学びたい人に向く教科書的な一冊です。
こんな人におすすめ
音響や音楽科学を体系的に学びたい学生・技術者に。音大生が音の物理や心理の基礎を押さえるのにも、オーディオやホール音響に関わる人が用語を確認するのにも使えます。
良い点
- 音から音楽まで体系立てて学べる
- 心理・物理・空間・機器を広く収録
- 図解と項目立てで参照しやすい
気になる点
- 通読にはかなりの根気が要る
- 専門用語の解説はやや硬め
- 話題が広く焦点は絞られない
出版社
技術評論社
発売日
2020年03月04日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
目次がもう、音の話と音楽の話でびっしりですね。これ一冊で全部わかるんでしょうか。
佐藤メバル
全部、と言えるくらい広いよ。第1章で音と聴覚のしくみ、第2章で音の物理と心理、第3章で音楽のしくみ、第4章で音の空間性、第5章がオーディオ機器の歴史と原理、第6章が楽器の分類。
うなり、マスキング、絶対音感、協和と不協和、グルーブ感、残響時間——基礎から積み上げる教科書的な作りなんだ。
橘ナナミ
絶対音感もグルーブ感も出てくる……それは気になります! でも分厚そうで、通読できるか不安です。
佐藤メバル
そこは参照型の本だと思って、気になるところからめくればいい。岩宮先生は音響心理学の分野で長く教えてきた人で、項目が細かく立ててあるから辞書的に使える。
用語をきちんと押さえたい学生や、オーディオ・ホール音響に関わる人ほど、手元に置いて損はない一冊だよ。
音楽する脳 天才たちの創造性と超絶技巧の科学
大黒達也 著|朝日新聞出版
¥990(税込)
バッハやベートーヴェンら作曲家、グレン・グールドら超絶技巧の演奏家の脳はどうなっているのか——を軸に、音楽と数学、宇宙、脳科学を横断するコンパクトな一冊です。音楽と科学の歴史、音の高さと並び方と数学、宇宙の音楽、脳の記憶と作曲、演奏と脳の予測、音楽の脳疾患への効果までを追います。専門書のような分厚さが苦手な人でも、クラシックを論理的に味わう入口になります。
こんな人におすすめ
クラシックは聴くけれど、なぜ心を動かされるのか理屈で知りたい人に。演奏家が超絶技巧の裏側を脳から知るのにも、音楽と数学・宇宙のつながりに興味がある人にも向きます。
良い点
- 作曲家と演奏家の脳を両方扱う
- 数学・宇宙・脳を横断する視点
- コンパクトで通読しやすい
気になる点
- 各テーマの深掘りは限られる
- 専門的な実験の詳細は少なめ
- 入門の次を求める人には物足りない
出版社
朝日新聞出版
発売日
2022年02月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「天才たちの創造性と超絶技巧の科学」……サブタイトルにぐっときました。グレン・グールドの名前も出てきますね。
佐藤メバル
そう。この本はクラシックがなぜ人の心を動かすのか、作曲家と演奏家の脳の両方から迫る。第1章が音楽と数学、第2章が宇宙の音楽と脳の音楽、第3章が記憶と作曲、第4章が超絶技巧の秘密、第5章が音楽を聴くと頭がよくなる?
——と、問いの立て方がうまいんだ。
橘ナナミ
「音楽を聴くと頭がよくなる?」って、よく聞く話ですけど、それ気になります!
佐藤メバル
そこもきちんと章を立てて扱っている。音楽の脳疾患への効果や、音楽が心の中を「見える化」するという話まで行き着く。
コンパクトな厚みで最後まで読めるのがありがたい。クラシックを論理的に味わいたい人にぴったりだよ。
ピアニストの脳を科学する
古屋晋一 著|春秋社(千代田区)
¥2,200(税込)
超絶技巧を可能にする脳、音を動きに変換するしくみ、音楽家の耳、楽譜を読み記憶する脳、故障、省エネ術、感動を生み出す演奏——ピアニストの営みを脳科学と身体運動学からひもとく一冊です。演奏家の「身体」側に重心があるのが特徴で、同じ音楽と脳の本でも認知や心理を扱うものとは読み味が違います。練習や故障に悩む演奏者にとって、根拠のあるヒントが詰まっています。
こんな人におすすめ
ピアノや楽器を弾いていて、練習の効率や故障、本番の身体の使い方に悩んでいる人に。演奏家が自分の身体と脳を客観視するのにも、指導者が生徒のつまずきを理解するのにも役立ちます。
良い点
- 超絶技巧を脳と身体の両面から
- 故障や省エネ術まで踏み込む
- 演奏者に直結する話題が豊富
気になる点
- ピアノ中心で他楽器は薄め
- 脳科学の予備知識はやや必要
- 刊行から年数が経った記述もある
出版社
春秋社(千代田区)
発売日
2012年01月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ピアニストの脳を科学する」って、演奏する人向けですよね。私は弾かないので、ちょっと遠いかなと思ったんですが……。
佐藤メバル
演奏する人には直球だけど、読み物としても面白いよ。超絶技巧を可能にする脳、音を動きに変換するしくみ、音楽家の耳、楽譜を読み記憶する脳。
そして第5章が「ピアニストの故障」、第6章が「ピアニストの省エネ術」——身体運動学の視点が入っているのが、他の音楽と脳の本と大きく違うところなんだ。
橘ナナミ
故障と省エネ術! それは弾く人じゃなくても気になります。練習のしすぎで手を痛めた、みたいな話ですか?
佐藤メバル
そう、まさにそこ。感動を生み出す演奏の章まで含めて、演奏家の悩みに寄り添う構成になっている。ピアノ以外の楽器の人には少し遠い部分もあるけれど、指導する側が生徒のつまずきを理解するのにも役立つよ。
長く読まれているだけのことはある一冊だね。
音楽と脳科学
S.ケルシュ 著|北大路書房
¥5,500(税込)
なぜ音楽は私たちを魅了するのか——この問いに、言語の獲得と同じように生来備わる学習能力を基盤とした認知過程と、それを支える神経基盤から答える包括的レビューです。耳と聴覚、音楽理論の背景、ピッチと和声の知覚、ERPやMEG、fMRIとPETといった測定法、音楽の統語論・意味論、運動、情動まで。脳機能測定の知見を体系的に整理した、研究の土台になる一冊です。
こんな人におすすめ
音楽と脳の研究を本格的に学びたい大学院生・研究者に。実験手法や理論の枠組みを押さえたい人、論文を読む前の地図がほしい人、音楽心理学から神経科学へ踏み出したい人に向きます。
良い点
- 測定法から理論まで網羅的
- ERP・fMRI研究の知見を整理
- 訳者陣が各章を分担し専門的
気になる点
- 研究書で一般読者には難解
- 前提知識がないと厳しい
- 分厚く通読は容易でない
出版社
北大路書房
発売日
2016年04月21日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは……ずいぶん専門的そうな表紙ですね。ERPとかfMRIとか、聞いたことはありますが意味は曖昧です。
佐藤メバル
そこを最初に押さえてくれるのがこの本の親切なところ。第4章で神経の電気活動から事象関連電位(ERP)と事象関連磁場へ、第5章でERP成分、第7章でfMRIとPET——測り方の原理から入る構成なんだ。
だから「なぜ音楽は人を魅了するのか」という大きな問いに、認知過程と神経基盤の両側から答えにいく。
橘ナナミ
音楽の統語論とか意味論なんて章もある……言語みたいに扱うんですね。それは気になります!
佐藤メバル
そう、言語の獲得と同じく生来の学習能力を基盤に据えるのがこの本の立場。音楽の統語論、意味論、運動、情動まで、最新の測定技術による知見を踏まえて包括的にレビューしている。
大学院生や研究者が論文を読む前の地図として持つには、これ以上ない一冊だよ。ただし一般向けではないから、覚悟は必要だけどね。
音大生・音楽家のための脳科学入門講義
田中昌司 著|コロナ社
¥1,980(税込)
「私は音楽家の脳を研究しています」——実験に参加した音大生・音楽家が脳科学に強い興味を持つを見て書かれた、講義形式の脳科学入門です。脳の進化と構造から、感覚・知覚、記憶と学習、運動制御と演奏、感情、共感、情景、そして音楽家の脳まで8回分の講義を収録。対話とQ&Aを多く盛り込んだスタイルで、実際に受けた質問にも答えながら進みます。
こんな人におすすめ
音大生や音楽家が、自分の演奏や練習の裏側を脳から知りたいときに。脳科学を学びたい高校生・大学生の入門としても、半期の講義テキストとしても使える構成です。
良い点
- 講義形式とQ&Aで読みやすい
- 基礎から音楽家の脳まで8講
- 一般読者にも配慮した説明
気になる点
- 専門研究の詳細には踏み込まない
- 例示は音楽家向けに偏る
- 演習問題などは付いていない
出版社
コロナ社
発売日
2021年04月08日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「音大生・音楽家のための」とありますけど、そうでない人には関係ない本なんでしょうか。
佐藤メバル
いや、まえがきに「一般の方々や大学生・高校生にも楽しんで読んでいただけるように心掛けました」とある。
脳の進化と構造から始まって、感覚・知覚、記憶、運動制御と演奏、感情、共感、情景、そして音楽家の脳——全8回の講義として組み立てられているんだ。
橘ナナミ
講義形式って、教科書っぽくて眠くなりませんか?
佐藤メバル
そこが工夫されていて、対話の部分を多くして、受講者からの質問にも答えながら進むスタイルなんだ。実際に受けた質問も多く含まれている。
記憶、感情、共感、情景、音楽家の脳の話はとくに盛り上がったと著者が書いているくらいで、読み物としても楽しい。
半期の特別講義のテキストにもなる構成だよ。
音楽心理学ことはじめ
エリザベス・ヘルムス・マーギュリス 著|福村出版
¥2,640(税込)
なぜある音楽は頭から離れず、身体でリズムをとりたくなるのか——誰もが抱く疑問に、音楽心理学の最新の研究成果と方法で答える入門書です。理論と実践、生物学的起源、言語としての音楽、テンポの知覚、演奏の心理学、人間の音楽性、音楽への熱望、そしてビッグデータまで。研究の「やり方」から紹介するのが特徴で、結論だけでなくどう調べるかがわかります。
こんな人におすすめ
音楽心理学にこれから触れる学生や一般読者に。耳に残る曲や音楽の好み、演奏の表現力に関心がある人、心理学の研究手法を知りたい人に向きます。
良い点
- 研究方法から丁寧に紹介する
- 耳に残る曲など身近な疑問が豊富
- 最新研究まで幅広く収録
気になる点
- 教科書寄りで通読はやや堅い
- 日本語の事例は限られる
- 個別テーマの深掘りは別書が必要
出版社
福村出版
発売日
2022年01月24日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「なぜある音楽は頭から離れず、身体でリズムをとりたくなるのか」——この一文だけで、私の知りたいことが書いてありそうです。
佐藤メバル
まさにそこが出発点の本だね。音楽とこころの研究の歴史にはじまって、コンピュータ・モデリング、コーパス研究、行動研究、認知的神経科学、臨床的アプローチ、質的アプローチ——研究のやり方そのものを紹介するのが特徴なんだ。
橘ナナミ
答えだけじゃなくて、どう調べるかがわかるんですね。それは気になります!
佐藤メバル
そう。音楽脳、音楽と健康、動物は音楽的なのか、音楽の文法と表現力、拍子とリズムの知覚、演奏の表現力、練習が差異を生む、頭から離れない曲……と、素朴な疑問が章ごとに並ぶ。
音楽心理学にこれから触れる人にとって、地図になる一冊だよ。少し教科書寄りだから、じっくり読むつもりで手に取るといい。
音楽と心の科学史
西田紘子 著|春秋社
¥3,080(税込)
〈音〉とは何か、〈音楽〉とは何か——19世紀後半以降、音楽のしくみを音響現象や心の反応として捉える流れが生まれ、心理学は「心の言語」と呼ばれる音楽の本質を探る重要な参照先になりました。本書は音楽学が他分野と交流し軋轢を経て知を形成してきた歴史を、心理学との関わりを軸にたどります。理論書でも入門書でもない、科学史としての音楽論という珍しい立ち位置が光ります。
こんな人におすすめ
音楽理論や美学の背景にある思想史を知りたい人に。音楽学・心理学を学ぶ学生が研究の来歴を押さえるのにも、音楽と科学の関係を思想から考えたい読者にも向きます。
良い点
- 音楽学と心理学の関係を歴史から
- リーマンや田辺尚雄ら人物像が立つ
- コラムで周辺領域にも目配り
気になる点
- 学術書で一般読者には難解
- 実践的な演奏論ではない
- 前提となる人名知識が要る
出版社
春秋社
発売日
2023年04月26日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「音楽と心の科学史」……これ、音楽の入門書ではないですよね。歴史の本ですか?
佐藤メバル
そう、科学史としての音楽論なんだ。19世紀後半以降、音楽の理論や美学を、音そのものや音響現象に還元して考えようとする流れが生まれる。
心理学は「心の言語」と呼ばれる音楽の本質を探る参照先になっていく。その交流と軋轢の歴史をたどるのがこの本だね。
橘ナナミ
リーマンとか田辺尚雄とか、人名が並んでいますね。そういう人が出てくるんですか。
佐藤メバル
そう。音心理学に対抗するリーマンの音想像論、ヴァラシェクの「タクト」概念、田辺尚雄の日本音楽論と心理学、マイヤーとロスナーの協働——人と理論の物語として読める。
理論書でも入門書でもない、珍しい立ち位置の本だよ。音楽学や心理学を学ぶ人が、自分の研究の来歴を押さえるのに向いている。
科学で読み解く クラシック音楽入門
横山真男 著|技術評論社
¥2,618(税込)
音楽を専門としない人に向けて、科学的に見たクラシック音楽の理論や作曲を解説する入門書です。理系の人には音楽理論を譜例つきで、文系の人には物理学や数学をなるべく数式を使わずに——と、どちらの立場からも入れる二重の配慮がされています。音と音楽、ハーモニー、リズム、メロディ、作曲の5章で、平均律と純正律の聴き比べや自動作曲まで扱います。
こんな人におすすめ
理系出身でクラシックの理論をこれから学びたい人、逆に文系で音の科学に踏み込みたい人に。演奏者やスコアを読む人が、和声やリズムの背景を確かめるのにも向きます。
良い点
- 理系にも文系にも入口を用意
- 譜例つきで音楽理論を解説
- 自動作曲など最新の話題も収録
気になる点
- 数式を避ける分、厳密さは控えめ
- クラシック中心で他ジャンルは薄い
- 初心者にはやや盛りだくさん
出版社
技術評論社
発売日
2021年05月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「理系の方にとっては音楽理論を、文系の方には物理学や数学を」——両方に配慮するって、欲張りな本ですね。
佐藤メバル
そこがうまいんだ。理系の読者には実際の譜例を示しながら音楽理論をイメージできるように、文系の読者にはなるべく数式を使わずに科学の側を説明する。
音と音楽、ハーモニー、リズム、メロディ、作曲の5章立てで、立場の違う読者が同じ本で合流できる作りになっている。
橘ナナミ
平均律と純正律の違いを実際に体験できるって、目次にありました。それ気になります!
佐藤メバル
そう、プログラムを走らせて聴き比べる仕掛けまで用意されている。和声の禁則や対位法、ソナタ形式、十二音技法、ジョン・ケージ、そして機械学習で作曲、と話題も広い。
クラシックの理論を学びたい理系の人にも、音の科学に足を踏み入れたい文系の人にも、ちょうどいい橋渡しになるよ。
作曲の科学 美しい音楽を生み出す「理論」と「法則」
フランソワ・デュボワ 著|講談社
¥1,122(税込)
「作曲とは数学である」——その心を、作曲は「足し算」である(横軸)、作曲は「かけ算」である(縦軸)という切り口で解き明かす一冊です。楽器の個性を知って語彙を増やし、書き下ろし3曲でプロのテクニックを教える構成。読者のための音源付きで、理屈と耳を往復しながら学べるのが強み。ユーミンと童謡の意外な共通点など、身近な例も楽しい。
こんな人におすすめ
作曲をこれから始めたい、あるいは独学で行き詰まっている人に。DTMやバンドで曲を作る人が和音やメロディの理屈を確かめるのにも、音楽理論を実践につなげたい人にも向きます。
良い点
- 足し算・かけ算の切り口が明快
- 音源付きで耳と理屈を往復できる
- 書き下ろし曲で実践まで導く
気になる点
- 楽典の基礎は前提になる
- 紙面は簡潔で詰め込み型
- 音源の利用環境が必要
出版社
講談社
発売日
2019年09月19日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「作曲は数学である」って、なんだか身構えてしまいます。数学、苦手なんですけど……。
佐藤メバル
大丈夫、この本でいう数学は計算ドリルじゃない。第1楽章が「作曲は足し算である」で、メロディという横軸の話。
第2楽章が「作曲はかけ算である」で、和音という縦軸の話。横と縦に分けて考えるだけで、曲作りの見通しが立つんだ。
橘ナナミ
足し算とかけ算で分ける……なるほど! 音源が付いているのも気になります。
佐藤メバル
そこが実用的で、著者が書き下ろした新曲を例に、基礎の基礎から手ほどきしてくれる。フランスで最も栄誉ある音楽勲章を最年少で受章した人だから、説得力がある。
ユーミンと童謡の共通点なんて話も出てきて、読み物としても面白い。作曲を始めたい人、独学で行き詰まっている人に向いているよ。
音律と音階の科学 新装版 ドレミ…はどのように生まれたか
小方厚 著|講談社
¥1,100(税込)
なぜ音楽は音をデジタル化し、ドレミを使うのか——そもそもドレミはどう決まったのか、なぜ特定の和音は心地よいのかを、簡単な数学で解き明かす一冊です。ピタゴラスの実験から音律の推移、和音とコード進行、テトラコルド、楽器の個性まで。「音楽は音をデジタル化している」という視点が核で、人気作に新たな内容を加えた新装版として読めます。
こんな人におすすめ
ドレミの成り立ちを数学から納得したい人に。楽器を弾く人が音律やコード進行の原理を知るのにも、モーツァルトからピンク・レディーまでの名曲の裏側を覗きたい人にも向きます。
良い点
- ピタゴラスから音律史を追える
- コード進行まで数学で説明
- 新装版で内容が加筆されている
気になる点
- 数学が苦手だと一部きつい
- 入門書としてはやや踏み込む
- 楽譜の読み手向けの記述もある
出版社
講談社
発売日
2018年05月16日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ドレミ…はどのように生まれたか」——ドレミって、当たり前にあるものだと思っていました。生まれた瞬間があるんですね。
佐藤メバル
そこがこの本の出発点。ピタゴラスが1オクターブを構成する12音を決めた実験から話が始まる。しかもその実験はシンプルで、私たちにも再現できるんだ。
音楽が決まった音=ドレミを使うというのは、裏を返せばそれ以外の周波数を使えないということ——音楽は音をデジタル化しているという見方につながる。
橘ナナミ
音楽がデジタル化……それは気になります! でも、数学が出てくると聞くと少し身構えます。
佐藤メバル
使うのは学校で習った程度の数列の話だから、そこまで怖がらなくていい。音律の推移、なぜドレミが好きなのかという心理と物理、コード進行、民族音楽のテトラコルド、楽器の個性、そして新しい音階を求める冒険まで進む。
長く読み継がれてきた人気作に内容を加えた新装版だから、まずはここから始めるのがいいよ。
音楽表現の科学
須藤貢明 著|アルテスパブリッシング
¥2,640(税込)
音楽を聴いて人によって感想が違うのはなぜか、音楽は言語とどう違うのか、楽器が弾けるまでなぜあれほど時間がかかるのか——感性的な領域に認知心理学から挑んだ理論書です。楽音と楽曲の違い、記号としての言語理論、モリスの記号論、そして楽曲の認知心理学まで。「曲想」という曖昧な言葉を理論の中心に据えた、他に類を見ない一冊です。
こんな人におすすめ
音楽を理論と心理学の両側から考えたい人に。音楽療法や音楽教育に関わる人が、表現や認知の枠組みを得るのにも、音楽の意味を言語と比べて考えたい人にも向きます。
良い点
- 曲想という概念を理論化している
- 記号論や情報理論も取り入れる
- 音楽療法にも接続する内容
気になる点
- 理論書で一般読者には難しい
- 出版から年数が経っている
- 用語の前提知識が必要
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2010年02月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「音楽を聴くとき、人によってちがった感想をいだくのはなぜか」——これ、ずっと気になっていたことです。
佐藤メバル
その問いを認知心理学から攻めた本だよ。楽音と楽曲は同じではない、楽曲として認知できる音とは何か、言語と楽曲はコミュニケーション・メディアとしてどう違うのか。
第1部では「曲想」という言葉を軸に、メロディ・パターンとイメージの形成を組み立てていく。広辞苑にはあるのに音楽辞典にはない、あの曖昧な言葉を理論の真ん中に置いたのが面白いところなんだ。
橘ナナミ
楽想とか曲想って、なんとなく使っていましたけど、定義するのは難しそうですね。
佐藤メバル
だからこそ画期的なのさ。第2部では脳幹聴性反応や脳波、大脳皮質と楽曲の聴取、覚醒水準といった神経心理学的な研究も紹介される。
聴覚障害児がピアノや太鼓の楽曲を識別できるという研究も入っていて、音楽療法の専門家にも有用だと言われている。
理論書だから覚悟はいるけれど、音楽の表現を正面から考えたい人には価値があるよ。
音楽・数学・言語
東条敏 著|近代科学社
¥4,840(税込)
音楽のある側面を言語化し、構造化・記号化できるのか——この問いに、数学と言語学、そしてコンピュータから迫る専門書です。「音楽の意味を計算する機械」「白鍵と黒鍵の数学」「言語から見た音楽」「バークリーメソッド」「暗意-実現モデル」「楽曲の木構造解析」「GTTMの展開」と、章ごとに独立性を持たせた深い解説。情報科学の音楽応用に関心がある読者に応える一冊です。
こんな人におすすめ
情報科学や言語理論を音楽に応用することに関心がある人に。数学の学芸分野への応用を考えたい人、自動作曲や楽曲解析を学ぶ学生にも向きます。
良い点
- 音楽を計算・言語の側から扱う
- GTTMなど理論的名前を網羅
- 章ごとに独立して読みやすい
気になる点
- 専門的で前提知識が必要
- 音楽の実践的な解説ではない
- 図版中心ではない文章主体
出版社
近代科学社
発売日
2017年05月29日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「音楽の意味を計算する機械」って章があるんですか。音楽を計算するって、どういうことでしょう。
佐藤メバル
そこがこの本の核心でね。音楽のある側面を言語化し、構造化・記号化できるのか——という問いに対して、近年は形式言語による知識表現と推論で、音楽による心や脳の働きを模倣できる時代になってきた。
音楽と数学と言語学の結びつきを強めているのはコンピュータだ、というのが著者たちの立場なんだ。
橘ナナミ
GTTMとか聞いたことがない言葉が並んでいて……。暗意-実現モデルってなんでしょう?
佐藤メバル
楽曲の構造を木のように解析する理論や、聴き手が無意識に予想する展開を扱うモデルの名前だよ。「言語から見た音楽」、バークリーメソッド、楽曲の木構造解析、GTTMの展開と、章ごとに独立性が高いから、関心のある章からつまめる。
音楽専門の人だけでなく、言語理論や情報科学の応用に興味がある人に向けた、深い一冊だね。
音楽の原理
近藤秀秋 著|アルテスパブリッシング
¥8,800(税込)
物理学、心理学、認知科学、文化人類学、音楽学、音楽理論——あらゆる知の領域を越境し、音はなぜ音楽になるのかという問いに挑む大著です。原理・コンテクスト・実践の三部構成で、身体性、内観、外観、体制化、経験世界と文化、世界各地の音楽、作曲まで。音楽の普遍に挑んだ冒険の書として、作曲家や演奏家からの推薦も寄せられています。
こんな人におすすめ
音楽を分野の枠を越えて根本から考えたい人に。演奏家や作曲家が自分の営みを理論の側から見直すのにも、音楽人類学や音楽美学に関心がある読者にも向きます。
良い点
- 物理学から文化人類学まで越境する
- 音楽の普遍を正面から問う
- 演奏家・作曲家の推薦が並ぶ
気になる点
- 大著で通読の負荷が大きい
- 哲学・科学の前提知識が必要
- 実用的なハウツーではない
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2016年11月24日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
本多俊之さん、小鍛冶邦隆さん、片山杜秀さん……推薦の言葉がすごい顔ぶれですね。これ、どんな本なんですか。
佐藤メバル
「音はなぜ音楽になるのか」——音楽家なら誰もが抱くこの問いに答えを出そうとした本だよ。物理学、心理学、認知科学、文化人類学、音楽学、音楽理論と、あらゆる知の領域を越境する。
原理・コンテクスト・実践の三部構成で、身体性や内観、外観、体制化から、世界各地の音楽、そして作曲まで進む。
橘ナナミ
世界の音楽がこんなに細かく並んでいる……イタリア、スペイン、イラン、インド、アフリカ、中南米まで。壮大すぎませんか。
佐藤メバル
壮大だよ。でも著者は「音楽と書いておきながらクラシックに限る書籍は少なくないが、そういうことはしない」と明言している。
音楽の多様性を見るには、他の音楽と接触する以前の音楽を見るのがふさわしいという立場なんだ。演奏家や作曲家が自分の営みを根っこから見直すために、折に触れて立ち返る本になるだろうね。
音楽は、宇宙の響き
佐治晴夫 著|春秋社
¥2,530(税込)
戦争中に聴いたバッハに魅了され、オルガンを愛し続ける物理学者・佐治晴夫と、奇跡のような偶然に導かれてオルガニストの道をたどった石丸由佳。まったく背景の異なるふたりが、パイプオルガンの魅力を語りつくす異色の対談です。武者修行で知る文化の多様性、宇宙の歴史と星のかけら、残響やレジストレーション、ゆらぎの心地よさまで。宇宙視点と演奏現場が交差する一冊です。
こんな人におすすめ
パイプオルガンやバッハが好きな人、宇宙と音楽のつながりを語り合う空気に浸りたい人に。音楽と数字、黄金比、胎児の音楽教育といった話題に関心がある読者にも向きます。
良い点
- 物理学者とオルガニストの異色対談
- 宇宙と楽器を並べて語る視点
- 各地のオルガンの現場話が豊富
気になる点
- 対談で論理は行きつ戻りつする
- 体系的な解説書ではない
- パイプオルガン中心の話題
出版社
春秋社
発売日
2026年07月21日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
物理学者とオルガニストの対談……ずいぶん組み合わせが意外ですね。「音楽は、宇宙の響き」という題名も大げさな気がします。
佐藤メバル
ところが、これが似合ってしまうんだ。佐治晴夫さんは戦争中に聴いたバッハに魅了され、オルガンを愛し続けてきた物理学者。
石丸由佳さんは奇跡のような偶然に導かれてオルガニストの道をたどった人。背景がまったく違うふたりが、パイプオルガンを軸に宇宙と演奏を語り合う。
橘ナナミ
オルガニストは「風使い」なんて言葉も出てきますね。宇宙に吹く風の話にもつながるのが面白いです。
佐藤メバル
そう、風のふしぎ、宇宙に吹く風、パイプオルガンは宇宙の響き、レジストレーションの魔法、残響を操る話。
武者修行で知った文化の多様性や「神さまがいる!」という実感の話も入る。音楽にひそむ数字、黄金比と白銀比、ゆらぎはなぜ心地いいのか——理屈と体験が行き来する、珍しい読書になるよ。
音の科学
難波精一郎 著|朝倉書店
¥4,290(税込)
ステレオ技術、建築音響、放送技術、コンピュータを駆使した音声合成・音声認識、音楽の自動採譜——音をめぐる最先端の話題を、第一線の執筆陣が章ごとに提供する一冊です。聴覚と錯覚、音場の再生、音と建築、人間と音声、動物のボーカルコミュニケーション、文化と騒音、超音波の世界まで。人間と機械の適合にどう工夫が凝らされているかが見えてきます。
こんな人におすすめ
音響・放送・音声認識など音を扱う技術に携わる人に。音の錯覚や建築音響に関心がある人、機械と人の界面を考えたい学生にも向きます。
良い点
- 第一線の執筆陣による章立て
- ステレオから超音波まで幅広い
- 技術と人間の関係を丁寧に扱う
気になる点
- 刊行から年数が経つ技術の話題
- 論文集寄りで通読には根気
- 初学者には前提知識が要る
出版社
朝倉書店
発売日
1989年01月01日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ステレオ技術、建築音響、放送技術、音声合成・音声認識、自動採譜」……これ、研究の本ですよね。ずいぶん幅が広いです。
佐藤メバル
そう、第一線の執筆陣が章ごとに分担した一冊なんだ。聴覚と錯覚、音場の再生、音と建築、人間と音声、動物のボーカルコミュニケーション、コンピュータと音声、音楽の記録としての自動採譜、文化と騒音、放送における音、超音波の世界——音をめぐる技術の見取り図になっている。
橘ナナミ
音楽の自動採譜って、歌を楽譜にする話ですよね。それ気になります!
佐藤メバル
そう、歌唱を楽譜化する研究が一章を占めている。この本の面白さは、人間と機械のよき適合のために、どれだけ多くの工夫が凝らされているかが見えるところなんだ。
音を扱う技術に携わる人にも、音の錯覚や建築音響に関心がある人にも、読み応えがあるよ。ただし刊行から年数が経っているから、最新の技術動向は別途追う必要があるね。
生活に生かす音の科学
山田伸志 著|パワー社
¥1,760(税込)
身の回りの音から音楽、騒音まで、具体的な例を挙げながら音の科学的な考え方を説く一冊です。音とは何か、音と音楽、オーディオのうそとほんと、騒音と人間生活、低周波音の不思議、音いろいろ——暮らしの中で音とどうつきあうかに焦点を当てているのが特徴。専門書というより、生活者の目線で音を捉え直す読み物です。
こんな人におすすめ
騒音や音環境に日常で悩んでいる人に。マンションの音、オーディオ選び、低周波音の正体が気になる人、音とのつきあい方を生活目線で考えたい読者に向きます。
良い点
- 生活目線の具体例が豊富
- 騒音と低周波音まで扱う
- オーディオの誤解にも触れる
気になる点
- 刊行から年数が経つ内容
- 専門的な数値の更新はない
- 学術書ほどの厳密さはない
出版社
パワー社
発売日
1996年07月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「オーディオのうそとほんと」という章が気になります。うそ、って何なんですか。
佐藤メバル
そこは面白いところだね。この本は身近な具体例を挙げながら、音を科学的に考えるとはどういうことかを説いていく。
第1章が音とは何、第2章が音と音楽、第3章がオーディオのうそとほんと、第4章が騒音と人間生活、第5章が低周波音の不思議、第6章が音いろいろ——暮らしの中の音が軸になっている。
橘ナナミ
低周波音って、マンションで「あの音のせいで眠れない」みたいな話を聞いたことがあります。それ気になります!
佐藤メバル
そう、生活者の実感に近いテーマを扱っているのがいいところ。専門書というより読み物に近くて、音と上手につきあう方法を考えさせてくれる。
ただし刊行から年数が経っているから、機器や規格の最新情報は別で確かめるといい。音環境に悩んでいる人の入り口としては、とても取っつきやすいよ。
音のなんでも小事典
日本音響学会 著|講談社
¥1,386(税込)
邪魔な騒音は音で消し、水中では画像も音で運ぶ。コンサートホールは建築音響技術の粋——音の性質から先端技術への応用、心理や生理まで、あらゆる角度から徹底解説する小事典です。音が曲がる、遮音と吸音、水の中の音、声の解剖、カクテルパーティー現象、赤ちゃんと音、外国語上達法、カラオケのハイテク、音痴のメカニズム、無限に続く音階まで。項目を拾い読みする楽しさが際立ちます。
こんな人におすすめ
音にまつわる素朴な疑問を気軽に拾い読みしたい人に。音響・音声・音楽の周辺用語を確かめたい人の手元にも、小鳥の歌やコウモリの聴能力など生き物の話が好きな人にも向きます。
良い点
- 項目が多く拾い読みしやすい
- 技術から生き物まで守備範囲が広い
- 日本音響学会編で信頼感がある
気になる点
- 各項目は短く深掘りは不可
- 刊行から年数が経つ記述もある
- 索引的に使うと物足りない場合
出版社
講談社
発売日
1996年12月19日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「邪魔な騒音は音で消し、水中では画像も音で運ぶ」——この一文、すごくないですか。音で画像を運ぶって。
佐藤メバル
そう、音には意外な使い道がたくさんある。これは日本音響学会が編んだ小事典で、音が曲がる仕組み、遮音と吸音、水の中の音の世界、声を解剖する、カクテルパーティー現象、赤ちゃんと音、そして小鳥の歌の秘密なんて項目まで並ぶ。
一問一答的に拾い読みできるのが気持ちいいんだ。
橘ナナミ
「音痴のメカニズム」とか「1人で歌う二重唱」とか、音楽の項目も面白そうですね。それ気になります!
佐藤メバル
カラオケはハイテクのかたまり、絶対音感、平均律は妥協の産物、鳴き竜とエコー、よいコンサートホールとは——と、音楽の科学の章も充実している。
語学の上達法なんて項目まであって、音にまつわる素朴な疑問を気軽に拾い読みするのに向いている。手元に置いて、気になった見出しから開くのが楽しい一冊だよ。
歌と身体のメカニズム
石野健二 著|アルテスパブリッシング
¥2,200(税込)
多くの有力合唱団のヴォイストレーナー、指揮者として活躍する著者が、自然で無理のない発声とは何かを人体の構造にもとづいて実証した一冊です。発声のしくみ、声のトレーニング、歌唱の実践の三部で、喉頭や呼吸筋、声区、響きのとらえ方を具体的に解説。発声における筋肉の支えを「動的バランス」として捉える視点が核で、イメージで語られがちな声の作り方を科学の側から支えます。
こんな人におすすめ
合唱や声楽を本気で練習している人と、指導する立場の人に。イメージに頼らず発声を理屈から組み立てたい人、日本歌曲やイタリア歌曲の実践に結びつけたい人に向きます。
良い点
- 発声を身体の構造から説明する
- イラストで補助運動まで図解
- 具体的な曲を例に実践へつなぐ
気になる点
- 歌唱経験がないと実感しにくい
- イラスト理解に一定の慣れが要る
- ポピュラー発声の比重は小さい
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2020年08月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「これまでイメージで語られてきた『美しい声のつくり方』が科学的に実証される」——この一文に惹かれました。
歌って、根性とか才能の話になりがちですよね。
佐藤メバル
そこを身体の構造から組み立てたのがこの本だよ。著者の石野健二さんは多くの有力合唱団のヴォイストレーナー、指揮者として活躍してきた人で、序で発声法のあり方を整理し、第1部で喉頭や呼吸筋、声区、響きのとらえ方を解説する。
筋肉の支えを「動的バランス」として捉えるのが核なんだ。
橘ナナミ
「太い息」「細い息」って練習があるんですね。なんだか面白いです。
佐藤メバル
そう、第2部では姿勢づくりや呼吸練習、胸声・頭声・中声の発声練習まで具体的に進む。第3部は《この道》や《Caro mio ben》《An die Musik》《魔王》といった実際の曲を例に、練習の組み立てを示す。
イメージではなく構造から声を作りたい人、指導する立場の人に向いているよ。
「音」と身体のふしぎな関係
セス・S.ホロウィッツ 著|柏書房
¥2,750(税込)
音響兵器は作れるか、音で人を操れるか、音楽とは何か——音と身体をめぐる刺激的な問いを、動物の聴覚からイヤーワーム、ジングル、聴覚的脳ハッキングまで幅広く扱う一冊です。魚類やカエルの低周波聴、コウモリの超高周波、19ヘルツの音、耳にこびりつく音、そして「あなたに聞こえるものがあなたなのだ」という結びまで。科学読み物として読ませる筆力が光ります。
こんな人におすすめ
音や音楽の意外な話を読み物として楽しみたい人に。イヤーワームやCMソングの謎、動物の聴覚、音響技術の話題に関心がある読者、脳科学の雑学を深めたい人にも向きます。
良い点
- 動物から音楽まで題材が広い
- イヤーワームなど身近な現象を扱う
- 読み物として引きが強い
気になる点
- 話題が散らばり体系性は薄い
- 刺激的な題材で誤解を招きうる
- 専門用語の説明は最小限
出版社
柏書房
発売日
2015年05月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「音響兵器は作れるか」「音で人を操れるか」——目次が物騒で、逆に気になります。
佐藤メバル
そこから入るのがうまいんだよ。ハチの羽音が恐怖を誘発する話、ジングルになぜ惹きつけられるのか、イヤーワーム——頭から離れない曲のことだね。
眼が見えない動物はいるのに耳が聞こえない動物はいない、コウモリは10億分の数秒の音を関知する、19ヘルツの音……音と身体の関係を、生き物から音楽まで横断して見せる。
橘ナナミ
「耳を通して脳をハックする」なんて章もあって、少し怖いけど気になります!
佐藤メバル
怖がらせるだけの本じゃなくて、最後は「あなたに聞こえるものがあなたなのだ」で締める。科学読み物として筆がうまいから、するすると読めるよ。
話題が広いぶん体系性は薄いけれど、音の意外な一面を楽しむには最適だね。
日本の学校吹奏楽を科学する!
新山王政和 著|スタイルノート
¥2,200(税込)
中学・高校の吹奏楽指導に何が必要で、何が不必要なのか——様々な実験や研究の成果をまとめた論文集です。バンド活動における音楽教育の可能性、音楽能力の発達過程、フットタッピングとテンポマッチング、マーチング・ステップとビート音のズレ、指揮動作の初心者と熟達者の違い、ピッチマッチングの精度、外部指導者システムまで15編。経験や受け売りを、データで確かめ直す一冊です。
こんな人におすすめ
吹奏楽やマーチングを指導している人、これから指導する人に。音楽教育の研究に関心がある学生、部活動の運営や外部指導者との連携を考える人にも向きます。
良い点
- 15編の実験研究を収録
- 指導で使える言葉やコラムも付く
- 運営や外部指導者まで踏み込む
気になる点
- 論文集で通読には根気が要る
- 吹奏楽経験がないと実感しにくい
- 研究の内容はやや専門的
出版社
スタイルノート
発売日
2013年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「中学校吹奏楽部員における音楽能力の実験調査」「フットタッピングとテンポマッチング」……これは指導者のための研究書なんですね。
佐藤メバル
そう、中高の吹奏楽指導に何が必要で何が不必要なのかを、実験や研究の成果からまとめた論文集なんだ。15編の論文に加えて、現場で使えるコラムも入っている。
経験に基づく指導を、データで確かめ直すのが狙いだね。
橘ナナミ
「カリスマ指導者の受け売りや、勘に頼った場当たり的な指導」という記述に、ドキッとしました。私、吹奏楽はやっていませんが気になります。
佐藤メバル
著者はそれを冷静に見直そうとしている。マーチングの足の着地とビート音のズレ、指揮の動作タイミング、ピッチマッチングの精度、パフォーマンスの「かたまり」、そして外部指導者システムの考察まで。
生徒を「音芸人」ではなく「音の伝道師」に育てたい——という言葉が、この本の姿勢をよく表しているよ。指導する立場の人ほど、手元に置きたい一冊だね。
音楽療法はどれだけ有効か
佐藤正之 著|化学同人
¥1,100(税込)
音楽の心理的・社会的・生理的な効果を医療に役立てる音楽療法——認知症、失語症、パーキンソン病などへの活用が期待される一方、エビデンスは十分に確立されているとは言えません。本書はエビデンスとは何かから説き起こし、認知症、失語症、パーキンソン病、脳卒中、睡眠障害や痛みまで、有効性の検証がどこまで進んでいるかを自身の体験も交えて整理します。
こんな人におすすめ
音楽療法に関心のある医療・福祉・介護の現場の人に。音楽療法士を目指す学生、家族のケアを考える人、EBMの考え方を知りたい読者にも向きます。
良い点
- エビデンスの考え方から説明する
- 疾患ごとに有効性を検証する
- 著者自身の取り組みも語られる
気になる点
- 専門用語が多く一般向けではない
- 疾患ごとの記述はやや硬い
- 音楽そのものの魅力を語る本ではない
出版社
化学同人
発売日
2023年02月13日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「音楽療法はどれだけ有効か」——ずばりな題名ですね。音楽って、聞くだけで気分がよくなるから、治療にもいい気がしますけど。
佐藤メバル
そこを「気がする」で終わらせないのがこの本だよ。第1章でエビデンスとは何か、コクラン・ライブラリーやハゲタカジャーナルの注意まで含めて説明する。
そのうえで認知症、失語症、パーキンソン病、脳卒中、睡眠障害や痛みと、疾患ごとに検証の現状を整理していく。
有効性が確立したものと研究途上のものが入り混じっているのが現実なんだ。
橘ナナミ
認知症への音楽療法はよく聞きますが、それも確立しているとは言い切れないんですね。
佐藤メバル
中核症状への有効性、BPSDへの音楽療法、コストパフォーマンス、原因疾患による違い——と細かく分けて見ていく。
失語症にはメロディック・イントネーション・セラピーの日本語版の話、パーキンソン病にはメンタル・シンギングの話と、具体的な取り組みも豊富だ。
医療や福祉の現場の人、音楽療法士を目指す人には必読と言っていいよ。
パーキンソン病のための歌による発声リハビリテーション
羽石英里 著|春秋社(千代田区)
¥2,530(税込)
楽しみながら発声・発話の改善を目指す音楽療法ボイスプログラム=MTVP。パーキンソン病と発声・発話の障害、音声学と音声治療の視点からの発声・発話・歌の科学、これまでの研究、そしてセッションの形態・準備から構成・実施方法、ポイントと応用までを一冊にまとめた実践的な手引きです。患者さんとご家族に向けた章を最後に置いているのが、この本の姿勢を表しています。
こんな人におすすめ
パーキンソン病の人とその家族、リハビリに関わる医療・介護職に。音楽療法士が発声のプログラムを組み立てるのにも、歌を使ったリハビリに関心がある人にも向きます。
良い点
- セッションの実際まで具体的
- 音声学の視点から発声を解説
- 家族向けの章を最後に置く
気になる点
- 対象疾患が限られる
- 音楽療法全体を扱う本ではない
- 専門用語の予備知識が必要
出版社
春秋社(千代田区)
発売日
2012年01月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
パーキンソン病のための、歌によるリハビリ……。病気の本だから、身構えてしまいます。
佐藤メバル
でもこの本の基調は「楽しみながら」なんだ。音楽療法ボイスプログラム=MTVPという方法で、発声・発話の改善を目指す。
第1章でその始まり、第2章でパーキンソン病と発声・発話の障害、第3章で音声学と音声治療の視点から発声・発話・歌の科学を押さえる。
リハビリと歌を切り離さないのが特徴だね。
橘ナナミ
セッションの構成や実施方法まで書かれているんですね。家族向けの章まであるのが気になります。
佐藤メバル
そう、第5章から第7章がセッションの形態・準備、構成・実施方法、ポイントと応用で、第8章が患者さんとご家族に向けた章になっている。
医療や介護の現場で発声のリハビリに関わる人、音楽療法士を目指す人にとって、実践の手引きになるよ。対象は限られるけれど、そのぶん踏み込んだ内容になっている。
四つの象限とロードマップ——何から読むか
橘ナナミ
佐藤さん、さっきの四象限をもう少し詳しく聞きたいです。それぞれ最初の一冊はどれですか。
佐藤メバル
聴覚心理学なら『音と音楽の科学』。第1章で耳の仕組み、第2章でデシベルやラウドネス、マスキング、音色の多次元性まで一歩ずつ進む。認知神経科学なら『音大生・音楽家のための脳科学入門講義』か『音楽と脳科学』。前者は講義形式で入りやすく、後者は事象関連電位やfMRIの研究史まで踏み込む包括的レビューだから、研究したい人向けだね。
橘ナナミ
物理と数学は?
佐藤メバル
物理学は『超絵解本 音楽と科学』や『音と音楽の科学』の楽器の章。弦が共鳴する仕組み、開管と閉管の波の違い、コンサートホールの壁の硬さまで、日常の疑問がそのまま説明されていく。数学は『音律と音階の科学 新装版』で、ピタゴラス音律から平均律までをたどる。さらに踏み込むなら『音楽・数学・言語』の「白鍵と黒鍵の数学」やGTTMの章。楽曲を木構造として解析する話は、言語学と情報科学の交差点だ。
橘ナナミ
感情の話はどこに入るんですか。
佐藤メバル
音楽の感情科学は認知神経科学の中心テーマで、『音楽心理学ことはじめ』の「音楽への熱望」、『音楽と脳科学』の情動の章が詳しい。緊張と弛緩、期待と報酬、ドーパミン。絶対音感と相対音感も同じ層で、『音と音楽の科学』は絶対音感者が周りの音をドレミで認識することや無限音階を扱っている。『超絵解本 音楽と科学』は絶対音感の習得に年齢の壁がある一方、相対音感は大人でも伸ばせると整理している。実感と研究が食い違って見えるところこそ、丁寧に読みたい。
橘ナナミ
読む順番を一本もらえたら嬉しいです。
佐藤メバル
なら、図解本で全体→音の物理と心理(『音と音楽の科学』)→脳(『音楽する脳』か『音大生・音楽家のための脳科学入門講義』)→関心のある専門(音律、作曲、音楽療法、AI)→原典、という順番。科学者と音楽の歴史に寄り道したくなったら、『Newton別冊 音楽と科学』や『超絵解本 音楽と科学』の資料編、『音楽と心の科学史』を開くといい。アインシュタイン、ヘルムホルツ、寺田寅彦、ファインマン、ブライアン・メイ——研究者が音楽とどう付き合ったかが並んでいて、ここを読むと本編の数式が急に人間くさく見えてくるよ。
競合が手薄なところ——AI、進化、無料で読める一次文献
橘ナナミ
最近の研究やAIの話は、どの本で追えますか。
佐藤メバル
AIと音楽なら『科学で読み解く クラシック音楽入門』が強い。自動採譜、自動コード付与、確率モデル、機械学習による作曲、ニューラルネットワークまで、プログラムの例も交えて扱っている。『音楽・数学・言語』も「音楽の意味を計算する機械」から始まり、形式言語で音楽を扱う流れを追う。競合の記事があまり触れていない領域だから、押さえておくと差がつく。
橘ナナミ
進化の話も気になります。
佐藤メバル
入口は『音楽心理学ことはじめ』の「音楽心理学の生物学的起源」。人間以外の動物は音楽的なのか、音楽の進化の起源は何か、という問いを正面から扱っている。あとは『「音」と身体のふしぎな関係』。音で人を操れるか、耳を通して脳をハックするとはどういうことか、聴覚が生き延びることとどう結びついてきたかを軽快に広く見渡せる。コウモリがきわめて短い音を関知する話など、読み物としても楽しい。
橘ナナミ
お金をかけずに読めるものってありますか。
佐藤メバル
あるよ。国立国会図書館のデジタルコレクションで、戦前の音響学や音楽心理学の文献が読める。図書館送信や複写の仕組みを使えば、自宅からでも辿れる。大学に所属していれば学術論文のデータベース、そうでなくてもオープンアクセスの論文は増えている。ただ、論文は結論だけ拾うと誤読しやすい。症例報告なのか、対照群のある研究なのか、メタアナリシスなのか——エビデンスの強さを見る癖をつけておくと、本の主張も立体的に見えるようになる。
「脳に良い音楽」をどう疑うか
橘ナナミ
「音楽を聴くと頭がよくなる」みたいな話も、そこを見ればいいんですね。
佐藤メバル
まさに。モーツァルト効果の検証や音楽の脳疾患への効果は『科学で読み解く クラシック音楽入門』や『音楽する脳』でも扱っている。『音楽療法はどれだけ有効か』は、エビデンスとは何か、なぜコクラン・ライブラリーが参照されるのか、ハゲタカジャーナルにどう注意するかまで書いていて、健康系の音楽本を読む前の免疫になる。
橘ナナミ
科学的に検証された練習法の本はありますか。
佐藤メバル
『ピアニストの脳を科学する』は、音を動きに変換する仕組み、楽譜を読み記憶する脳、故障と省エネ術、感動を生み出す演奏まで、練習と直結する話題を並べている。『日本の学校吹奏楽を科学する!』は実験や研究の成果をまとめた論文集で、指導法と音楽能力の関わり、テンポ同期、ピッチの知覚エラーなど、現場の疑問にデータで答える。教則本の「気合いで」を「根拠で」に置き換えたい人に向いているよ。
橘ナナミ
教材そのものが研究対象になるんですね。
よくある質問
音楽と科学の本は何から読めばいい?
橘ナナミ
音楽と科学の本は何から読めばいいについて教えてください。
佐藤メバル
まずは図解で全体を眺められる本から始めるのがおすすめです。『Newton別冊 音楽と科学』や『超絵解本 音楽と科学』は、音が波として伝わる仕組み、音律と数学、楽器の鳴るしくみ、脳と音楽の話まで一冊で見渡せます。輪郭をつかんでから『音と音楽の科学』のような体系的な入門書に進むと迷いません。最初の一冊は「全部わからなくてもいい本」を選ぶのがコツです。
音楽心理学の本で初心者向けは?
橘ナナミ
音楽心理学の本で初心者向けはについて教えてください。
佐藤メバル
『音楽心理学ことはじめ』が読みやすい入門書です。理論と方法、生物学的起源、言語としての音楽、演奏の心理学、情動反応、ビッグデータと章が分かれ、最新の研究方法も紹介されています。もう少し軽く読める新書なら『音楽する脳』。拾い読みから入りたい人は『音のなんでも小事典』の音楽の章も楽しいです。
脳科学と音楽の本でおすすめは?
橘ナナミ
脳科学と音楽の本でおすすめはについて教えてください。
佐藤メバル
入門なら講義形式の『音大生・音楽家のための脳科学入門講義』、読み物として楽しむなら『ピアニストの脳を科学する』や『音楽する脳』、研究として深く読むなら『音楽と脳科学』です。後者は事象関連電位やfMRIの方法論から情動、音楽と言語の関係まで扱う包括的なレビューで、研究の現在地を知りたいならこれという一冊です。
音楽理論と科学の両方を学べる本は?
橘ナナミ
音楽理論と科学の両方を学べる本はについて教えてください。
佐藤メバル
『科学で読み解く クラシック音楽入門』がちょうどその交点にあります。音と音楽の科学から始まり、ハーモニー、リズム、メロディ、作曲と進み、和声や対位法の基礎も押さえます。『作曲の科学』も、作曲を「足し算」と「かけ算」として説明してくれる。理論書が苦手な人ほど科学的な説明が助けになります。
音律や音階について科学的に学べる本は?
橘ナナミ
音律や音階について科学的に学べる本はについて教えてください。
佐藤メバル
『音律と音階の科学 新装版』が第一候補です。ドレミがなぜそう決まったのか、ピタゴラス音律から平均律までを簡単な数学で追います。『音と音楽の科学』の音律の章も比較が丁寧で、協和と不協和が生まれる仕組みまでつながります。「平均律は妥協の産物」と知ると音楽史が変わって見えます。
音楽療法の科学的本は?
橘ナナミ
音楽療法の科学的本はについて教えてください。
佐藤メバル
『音楽療法はどれだけ有効か』が信頼できます。エビデンスの考え方から始まり、認知症、失語症、パーキンソン病、脳卒中への適用を、確立した部分と研究途上の部分に分けて説明します。パーキンソン病の発声に特化した実践書なら『パーキンソン病のための歌による発声リハビリテーション』。期待と根拠を分けて読むのが大切です。
絶対音感について科学的に知りたい
橘ナナミ
絶対音感について科学的に知りたいについて教えてください。
佐藤メバル
『音と音楽の科学』は、絶対音感者が周囲の音をドレミで認識する性質や、ピッチが上下し続けて聞こえる無限音階を扱っています。『超絵解本 音楽と科学』は、絶対音感の習得に年齢の壁がある一方、相対音感は大人でも身につけられると整理しています。『音楽する脳』は絶対音感と言語機能の関係にも触れます。音楽家に重要なのは実は相対音感という指摘は多くの人に効きます。
図解やイラストが多い本は?
橘ナナミ
図解やイラストが多い本はについて教えてください。
佐藤メバル
『Newton別冊 音楽と科学』『超絵解本 音楽と科学』が図版中心で、楽器の仕組みや音律の図が豊富です。『音のなんでも小事典』も短い項目と図で拾い読みに向きます。『歌と身体のメカニズム』は発声の身体感覚をイラストと補助運動で図解しています。図で全体像、文章で細部という使い分けがおすすめです。
まとめ
橘ナナミ
佐藤さん、今日の話を聞いて、棚の見え方が変わりました。同じ「音楽と科学」でも、音を物理として見る本、脳として見る本、数学として見る本が並んでいたんですね。
佐藤メバル
そう。どれか一冊が正解というわけじゃない。自分の入口から入って、隣の峰に渡っていけばいい。
橘ナナミ
私はまず図解本で全体を見て、それから『音と音楽の科学』に行ってみます。あ、でも歌のことも気になってて……。
佐藤メバル
それなら『歌と身体のメカニズム』を横に置くといい。発声を筋肉の支えと呼吸のバランスから説明しているから、音の物理の章と並べると、理屈と体感がつながる。演奏や作曲に活かすなら『作曲の科学』、教養として広げるなら『音楽は、宇宙の響き』。読み終えたときに、音楽が少し違って聴こえたら、その本はあなたにとって当たりだよ。
橘ナナミ
少し違って聴こえる……いいですね、それ。
佐藤メバル
音律の本を読んだ翌日、ピアノの和音が「あ、いま響きがきれい」と急に意識に上がってきたりする。楽譜は同じでも、耳が受け取る情報量が変わるんだ。音楽の科学の本は、演奏を変える前に、まず聴き方を変えてくれる。イヤホンを外したあとの街の音まで、少しだけ編曲されて聞こえてくる。それがこの分野のいちばん気持ちのいい副作用だよ。
