ロックの歴史が学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、「音楽史 本 ロック」で調べたんですけど、通史から評伝、ディスクガイド、写真集まで出てきて、どれが入口なのか全然わからなくなっちゃいました。
佐藤メバル
いい質問だね。ロック史の本は「1冊で全部わかる」ものが存在しないジャンルなんだ。ジャンルが枝分かれしているうえ、歴史そのものが短いぶん、当事者の証言と研究者の論考が同じ棚に並んでしまう。まず自分がどの層から入りたいかを決めると、迷いがぐっと減るよ。
橘ナナミ
層、ですか?
佐藤メバル
通史→ジャンル史→評伝の3層だね。中山康樹さんの『ロックの歴史』は通史、『ジャマイカン・ミュージックの歴史』や『70年代ロックとアメリカの風景』はジャンル史・地域史、『吉田拓郎から始めるロックスター列伝』は評伝に近い。この順番で読むと、固有名詞が積み木みたいに積み上がっていくんだ。
橘ナナミ
なるほど…! まずはその3層を知ってから選べばいいんですね。
ロックの歴史が学べる本の選び方
目的別から選ぶ
橘ナナミ
目的別だと、どう分けるんですか?
佐藤メバル
「流れを掴む」「名盤を探す」「1組を深掘りする」「社会と音楽を考える」の4つだね。流れなら中山康樹さんの『ロックの歴史』、名盤探しなら三宅はるおさんの『名曲200でわかるロックの歴史と精神』、社会との関係を考えたいなら大和田俊之さんの『アメリカ音楽史』が向いている。同じ「ロック史」でも、読後に残るものがまったく違うよ。
レベル別から選ぶ
橘ナナミ
予備知識ゼロでも読めるものって、ありますか?
佐藤メバル
あるよ。『まんが音楽の歴史 バロック〜古典派〜ロマン派』は、章ごとに「まんが→年表→解説」の順で進む学習まんがで、時代ごとの理解が自然に積み上がる。音楽史の地図を先に描いてくれる本だね。逆に主要バンドは知っている人は、高階秀爾さんの『バロックの光と闇』のように、美術史の第一人者が音楽・建築・文学まで横断する論考に進むと刺激が強い。
形式別から選ぶ
橘ナナミ
新書、文庫、大著、事典、まんが…形式でも性格が変わりますよね。
佐藤メバル
変わるね。通勤中にさらっと読むなら講談社現代新書の『ロックの歴史』、手元に置いて引くなら礒山雅さんの『バロック音楽名曲鑑賞事典』のような事典型が強い。カッチーニからバッハまで名曲100曲を著者が選んで語る本で、索引的に使える。読み物として通すか、辞書として引くかで選び方が変わるんだ。
入手性から選ぶ
橘ナナミ
Kindleで読めるかどうかも、けっこう大事です。
佐藤メバル
そこは本当に重要だね。新刊で買えるもの、文庫で再刊されたもの、刊行から年数が経った研究書で図書館頼みになるものがある。たとえば2005年の『ワーグナーの力』のような論集は、まず図書館の蔵書検索をかけるのが現実的。電子版の有無は必ず各書誌ページで購入前に確認してね。ここを後回しにすると、読みたい熱が冷めてしまうから。
分量別から選ぶ
橘ナナミ
上下巻や大著は、正直ちょっと腰が重いです…。
佐藤メバル
それでいいんだよ。一冊で通史を掴むなら新書、調べるたびに開くなら事典型、と役割で分ければいい。全部を最初から最後まで読む必要はないし、目次を見て気になる章から入る読み方こそ、ロック史本の醍醐味だね。
著者別から選ぶ
橘ナナミ
著者の立場で見るのも面白そうですね。
佐藤メバル
評論家か、研究者か、現場の人かで本の性格が変わる。大和田俊之さんの『アメリカ音楽史』は2011年にサントリー学芸賞を受賞した研究書で、注や参考文献紹介までついている。『伊藤政則の“遺言”』は長年現場を取材してきた人の実体験ベースだ。どちらが正しいという話ではなく、用途が違うと考えると選びやすいよ。
ロックの歴史が学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
ロックの歴史が学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
ロックの歴史
中山康樹 著|講談社
¥990(税込)
イギリスとアメリカが互いの音楽を「洋楽」として受け取り、ときに誤読しながら進化・統合・分化していく——その過程からロックが生まれた、という視点で描く通史です。エルヴィス、ビートルズ、ストーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ウッドストック、ディランと誰もが知る名前が並びますが、本書の面白さは脇役とされてきたミュージシャンに光を当てるところ。クリフ・リチャード&シャドウズ、マディ・ウォーターズ、レオン・ラッセルらの役割を知ると、点だった知識が線になります。読み終えるとロックが歴史になったという現在地まで見えてきます。
こんな人におすすめ
ロックは好きだけど人名と曲がつながらない人。断片的な知識を一本の流れに整理したい人。年表や用語集の前に、まず物語としてのロック史を掴みたい大学生・社会人。長く聴いてきた人が自分の理解を問い直すのにも向きます。
良い点
- 英米の相互影響という軸が新鮮
- 脇役の存在意義まで拾う網羅性
- 新書サイズで通史を一気に読める
気になる点
- 個々の曲の細かい解説は少なめ
- 著者独自の解釈が強く出る箇所
- 索引的な使い方には向かない
出版社
講談社
発売日
2014年06月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ロックの歴史の本ってたくさんありますけど、佐藤さん、これは何が違うんですか?
佐藤メバル
いい質問だね。多くのロック史は名盤の並びになりがちなんです。でも中山さんは、イギリスとアメリカが互いの音楽を「洋楽」として受け取り、誤読しながら進化させたという一点から組み立てている。
だからエルヴィスやビートルズだけでなく、クリフ・リチャード&シャドウズ、マディ・ウォーターズ、レオン・ラッセルみたいに脇役扱いされがちな人たちの意味が見えてくるんだよ。
橘ナナミ
脇役に光が当たるの、いいですね。でも新書で通史をやるって、駆け足になりませんか?
佐藤メバル
そこが上手いところで、駆け足というより地図を描く感じ。ビートルズが生まれた瞬間、黒いブルースから白いロックへ、ジミ・ヘンドリックスの衝撃、そして「サージェントペパーズ」と一九六七年。
章ごとに論点がはっきりしているから、細部より流れが頭に残る。最初の一冊にちょうどいいと思います。
名曲200でわかるロックの歴史と精神
三宅はるお 著|アルファベータブックス
¥2,970(税込)
1955年から85年まで、アメリカとイギリスのポピュラー音楽からそれぞれ100曲、計200曲を選んでランク付けし、曲単位で批評する本です。著者自身がリアルタイムでその時代のシーンに触れてきた体験が随所に混ざるので、楽曲解説が当時の熱気の記録になります。有名どころだけでなく幅広いアーティストを拾い、さらにロックンロール以前のポップス、日本で独自にヒットした洋楽、Jポップ・ロックのルーツまで章を分けて短評を付ける。聴きながら読める索引性の高さが、通史タイプとの大きな違いです。
こんな人におすすめ
曲からロック史に入りたい人。プレイリストを作りながら読み進めたい人。日本の洋楽ヒットやJポップのルーツに関心がある人。年表を眺めるより、一曲ずつの批評を味わいたいリスナー向けです。
良い点
- 曲単位で批評を読める索引性
- 選曲の幅が広く偏りが少ない
- 著者の実体験が生きている
気になる点
- ランク付けの好みは分かれる
- 通史としての連続性は薄い
- 持ち歩きにはやや重め
出版社
アルファベータブックス
発売日
2021年05月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
200曲ってすごい数ですね。全部知ってる必要、ありますか?
佐藤メバル
むしろ知らない曲を見つけるために使う本だと思う。アメリカ100曲、イギリス100曲を選んでランク付けして、一曲ずつ批評していく。
黄金期のシーンにリアルタイムで接してきた著者の体験が織り込まれているから、ただの解説で終わらない。
読んでから聴く、聴いてから読む、どちらでも楽しめるよ。
橘ナナミ
ロックンロール以前のポップスとか、Jポップのルーツの章もあるんですか。それ気になります!
佐藤メバル
そう、そこがこの本の懐の深さ。洋楽が日本でどうヒットしたか、Jポップやロックのルーツに何があったか、短評付きで並んでいる。
邦楽しか聴いてこなかった人が、自分の好きな曲の源流にたどり着ける入口になる。曲名を追いながら自分のプレイリストを作る、そんな読み方が向いています。
アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで
大和田俊之 著|講談社
¥2,310(税込)
ロック、ジャズ、ブルース、ファンク、ヒップホップ——アメリカ音楽の中心を担ってきたサウンドを、ミンストレル・ショウから説き起こし、「他者を擬装する欲望」という視点で捉え直す論考です。白人/黒人という枠組みそのものを乗り越えようとする真摯な姿勢が全篇を貫き、グラミー賞の歴代受賞者たちも登場します。ロック史の前提にあるアメリカ社会の政治・文化のダイナミズムまで射程に入り、単なる音楽史ではなく音楽から見たアメリカ近現代史になっているのが読みどころです。
こんな人におすすめ
ロックやヒップホップの背景にあるアメリカ社会を知りたい人。人種や文化の境界をめぐる議論に関心のある大学生・院生。音楽批評と歴史研究の両方を同時に読みたい読書家に向いています。
良い点
- 音楽史を社会史として読める
- ラテン化の章まで射程に入る
- 参考文献紹介が充実している
気になる点
- 学術書のため読みごたえが重い
- 個々の楽曲解説は最小限
- 予備知識ゼロだと難所がある
出版社
講談社
発売日
2011年04月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは音楽の本というより、アメリカの本みたいな装いですね。
佐藤メバル
そう、まさにそこが肝。ミンストレル・ショウからヒップホップまでを、「他者を擬装する」という欲望の歴史として描き直している。
黒と白の弁証法、ブルースの発掘、スウィング・ジャズ、そしてロックンロールの誕生——音楽のジャンルが人種の境界とどう絡んできたかが、ぐっと立体的に見えてくるんだ。
橘ナナミ
ミンストレル・ショウって、聞いたことはあるけど説明できないです。
佐藤メバル
白人が黒人を演じる見世物として始まった、十九世紀のアメリカの大衆芸能だね。著者はそこを出発点に、黒人と白人の枠組みを揺さぶりながら、アメリカ音楽が擬装と混交を繰り返してきたと論じる。
学問の賞も受けた本で読み応えはしっかりある。ロックの前提に何があったのかを知りたい人には、遠回りに見えて一番の近道になるよ。
70年代ロックとアメリカの風景
長澤唯史 著|小鳥遊書房
¥2,640(税込)
反抗の矛先を見失ったと言われる70年代に、ロックのアーティストたちが自己や表現手段、メディアを積極的に構築し、時代や政治と闘った——その風景をアメリカ文学者が描き出します。キング・クリムゾン、イエス、ジェネシス、ELPからイーグルス、サンタナ、マーヴィン・ゲイ、ケンドリック・ラマーまで、個別の論考として並ぶ構成が特徴です。ブリティッシュ・ロックが黒人音楽から受けた影響、大西洋を挟んだ人種や民族の問題まで踏み込み、ウッドストック再評価も収録しています。
こんな人におすすめ
プログレや70年代ロックを社会や政治の文脈で考えたい人。文学・文化研究の視点で音楽を読みたい大学生・院生。ディランやイーグルス、ケンドリック・ラマーを一冊で横断したい人にも向きます。
良い点
- 70年代ロックを政治と接続する
- プログレ勢の論考が濃い
- ウッドストック再評価が読める
気になる点
- 論文調で読み進めにくい箇所
- 取り上げる作品は限定的
- 日本のロックは対象外
出版社
小鳥遊書房
発売日
2021年01月29日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
70年代って、ロックが商業化して勢いを失った時代みたいに言われますよね。それを「闘い」として読むのが不思議です。
佐藤メバル
そこをひっくり返す本なんだ。反抗の矛先が見えにくくなった時代だからこそ、ミュージシャンは自己やメディア、表現そのものを構築して、時代や権力と向き合った。
キング・クリムゾンやイエス、ELPのプログレ勢を、ポストモダンやアイデンティティの議論で読み解く章は、音楽評論というより文学研究の面白さだね。
橘ナナミ
プログレの章と、ディランやイーグルスの章が同じ本に入っているのが意外です。
佐藤メバル
第一部がイギリス側、第二部がアメリカの人種・歴史・空間。サンタナ、ジミ・ヘンドリックス、マーヴィン・ゲイ、そしてケンドリック・ラマーまで並ぶ。
大西洋を挟んで音楽が行き来する風景を、文学者が丁寧に追っている。骨太な読み物だから、時間をかけて一章ずつ味わうのが合っていると思うよ。
吉田拓郎から始めるロックスター列伝
田家秀樹 著|集英社インターナショナル
¥1,144(税込)
「吉田拓郎=フォーク」は日本の音楽史上最大の誤解である——この一言から始まる、語り下ろしの対談本です。創成期から取材を続ける田家秀樹と、昭和歌謡から最新ヒットまで論じるスージー鈴木という、年齢もバックグラウンドも違う二人が、13人のレジェンドを「通説」から解き放っていきます。沢田研二、矢沢永吉、井上陽水、中島みゆき、松任谷由実、桑田佳祐、浜田省吾、佐野元春、松田聖子と中森明菜、忌野清志郎、氷室京介。名前は知っていても功績を言葉にできない人ほど刺さります。
こんな人におすすめ
日本のロックやポップスの歴史を、肩の力を抜いて読みたい人。対談形式で音楽談義を味わいたい読者。名前は知っているけれど曲を聴いたことがない、という世代の入口にも向いています。
良い点
- 対談なのでスラスラ読める
- 通説を疑う視点が気持ちいい
- 邦楽ロックの入門になる
気になる点
- 洋楽ロックの話は少なめ
- 二人の好みに偏る章がある
- 曲の細かな解説は控えめ
出版社
集英社インターナショナル
発売日
2026年08月07日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
吉田拓郎さんって、フォークの人ですよね? それが誤解だなんて言われて、びっくりしました。
佐藤メバル
いいところに食いついたね。著者の一人、田家秀樹さんは創成期から日本のロックとポップスを取材してきた人で、「フォーク」というラベルが彼の仕事の大きさを覆い隠してきたと冒頭で切って捨てる。
そこから沢田研二、矢沢永吉、井上陽水、中島みゆきと、13人をめぐる語りが始まるんだ。
橘ナナミ
スージー鈴木さんと二人の対談なんですね。年齢も背景も違う二人が話すと、何が変わるんですか?
佐藤メバル
同じ人物を見る角度が違うから、議論が立体的になる。昭和歌謡から最新ヒットまで見ている人と、リアルタイムで現場を見てきた人では、評価の根拠が違うんだよ。
正解を決める本ではなく、語る楽しさを味わう本。音楽談義をしている横で聞いているような気分になれる一冊です。
洋楽ロック史を彩るライヴ伝説 ウドー音楽事務所の軌跡を辿る
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥2,420(税込)
ウドー音楽事務所の軌跡をたどりながら、洋楽ロックの来日公演史を描く一冊です。エアロスミス、ELP、エリック・クラプトン、フリートウッド・マック、ヴァン・ヘイレン、ジェネシス、ボン・ジョヴィからデヴィッド・ボウイ、ニルヴァーナ、メタリカまで、年代ごとの主な来日公演とエピソードが並びます。長年現場を支えたスタッフのインタビューや、湯川れい子、東郷かおる子、伊藤政則らによる特別寄稿も収録。アーティスト側ではなく、受け入れる側からロック史を見るのが新鮮です。
こんな人におすすめ
日本で洋楽ライブがどう根づいたのか知りたい人。コンサート体験を語りたくなる中高年ファン。音楽ビジネスやライブ運営に関心のある人にも視野が広がります。
良い点
- 受け入れる側の視点が貴重
- 年代別の来日公演史として使える
- 秘蔵品やスタッフ証言が豊富
気になる点
- 特定事務所の社史の側面が強い
- 楽曲論はほぼ含まれない
- ライブ未体験だと想像しにくい
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2021年07月29日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ウドー音楽事務所って、聞いたことはありますけど、何をした会社なんですか?
佐藤メバル
海外のアーティストを日本に呼び、ライブを成立させてきた会社だね。この本はその軌跡をたどりながら、ロックの来日公演史そのものを描いている。
アーティスト側ではなく、迎える側の視点で語られるのが珍しいんだ。エアロスミス、ELP、クラプトン、ヴァン・ヘイレン、ボン・ジョヴィ、ボウイ、ニルヴァーナ、メタリカと年代ごとに名前が並ぶよ。
橘ナナミ
スタッフさんの話も載っているんですか。ライブってアーティストだけじゃ成り立ちませんもんね。
佐藤メバル
そこが読みどころ。会場に押し寄せる客をどうさばいたか、といった現場の証言や、湯川れい子さん、東郷かおる子さん、伊藤政則さんの寄稿も入っている。
ロック史をファンの熱量の側から読む感じだね。ライブに行った記憶がある人ほど、自分の体験と重なって面白いはずです。
ジャマイカン・ミュージックの歴史
牧野直也 著|アルテスパブリッシング
¥2,090(税込)
スカ、ロック・ステディを経て、カリブ海の島国ジャマイカでレゲエが生まれ、ボブ・マーリーとともに世界を席巻するまで——その過程を丁寧に解き明かす一冊です。レコーディング・スタジオに革命を起こしたダブ、サウンド・システムとDJ、ダンスホール、UKレゲエまで射程に入り、ジャマイカ音楽の成立と発展を一望できます。ディスクガイドと名盤選、さらにプレイリストまで付くので、読みながら実際に音を追いかけられる。ロック史の外側にある巨大な源流を知る本です。
こんな人におすすめ
レゲエがどう生まれたのか、音楽的な系譜を知りたい人。ダブやサウンド・システムに惹かれるリスナー。ロックやヒップホップのルーツを掘り下げたい人にも効きます。
良い点
- ディスクガイド付きで音に繋がる
- ダブやUKレゲエまで網羅
- ラスタファリアニズムの背景も解説
気になる点
- 用語の予備知識が要る箇所
- ボブ・マーリー中心の内容ではない
- 図版はそれほど多くない
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2025年07月28日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
レゲエってボブ・マーリーのイメージが強いんですけど、この本はそこから始まらないんですね。
佐藤メバル
そう、レゲエの前にスカがあり、ロック・ステディがある。ジャマイカでどう音楽が生まれ、どう変化したかを順番に追っていくんだ。
メントとカリプソの時代、スカの誕生、レゲエの完成、そしてダブがレコーディングの世界に何をもたらしたかまで書かれている。
音の成り立ちが分かると、聴こえ方が変わるよ。
橘ナナミ
ディスクガイドが付いているのも助かります。読んだあとすぐ聴けますね。
佐藤メバル
そこがこの本の使いやすさ。名盤選に加えてプレイリストも新たに載っている。読み終えてから聴くより、章を読みながら一枚ずつ確認していくほうが頭に入ると思う。
ロックのルーツをたどると、必ずこの島に行き着く。遠回りに見えて、実は音楽史の幹なんですよ。
世界史 × 音楽史 知っておきたい! 近代ヨーロッパ史とクラシック音楽
広瀬大介 著|株式会社音楽之友社
¥2,970(税込)
クラシック音楽とヨーロッパの歴史が切り離せない関係にあることを、音楽学者が親しみやすく綴る一冊です。モーツァルト《魔笛》の鍵は啓蒙思想、シューベルト《冬の旅》は自由主義への渇望、ドヴォルザーク《スラヴ舞曲》は民族融和策から——名曲の背景が次々と明かされていきます。古典派から二十世紀半ばまでを扱い、巻末には音楽史・世界史・日本史を対比させた年表も収録。日本で同時期に何が起きていたかまで見えるので、世界史の授業が苦手だった人にも入りやすい構成です。
こんな人におすすめ
クラシックは聴くけれど背景はよく知らないという人。世界史と音楽を一緒に学び直したい社会人・学生。コンサートやCDの解説文をもっと味わいたい人に向いています。
良い点
- 音楽と歴史を往復できる
- 三つの年表が付いて便利
- 作曲家の人間像が見える
気になる点
- ロックやポピュラーは対象外
- 人名と年号が多く最初は重い
- 踏み込んだ内容で通読は骨が折れる
出版社
株式会社音楽之友社
発売日
2025年02月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
クラシックの本なんですね。ロックの記事に混ぜていいのかな、と思ってしまいました。
佐藤メバル
いい疑問だね。でもロックだって、クラシックやヨーロッパの音楽の上に成り立っている。この本を読むと、モーツァルトの《魔笛》の背景に啓蒙思想があるとか、《冬の旅》に自由主義への渇望が込められているとか、曲の意味がまるで変わるんだ。
歴史を知るだけで、聴こえ方が一段深くなる。
橘ナナミ
巻末に年表があるんですか。年号を覚えるのは苦手なんですけど……。
佐藤メバル
そこが工夫されていて、音楽史と世界史、そして日本史を並べて見られる年表になっている。日本ではその頃何があったのか、と横に目をやると、ぐっと立体的になるよ。
作曲家が王侯や検閲とどう向き合ったか、という話も出てくる。歴史の物語として音楽を聴き直す、そんな読み方ができる一冊です。
西洋音楽史を聴く バロック・クラシック・ロマン派の本質
前川誠郎 著|講談社
¥880(税込)
バロック、クラシック、ロマン派、後期ロマン派、国民楽派、二十世紀——音楽史の時代区分は独特ですが、それぞれの特徴はどこにあるのか、その音楽が何を目指したのかを、美術史を専門としながら生涯をかけて「聴く」ことに精力を傾けた著者が綴ります。バロックからクラシックへ、クラシックからロマン派へ、そして逆にクラシックからバロックへ戻る構成が独特で、一方向の年表ではありません。熟成の極みに達した愛と造詣が文章ににじみます。
こんな人におすすめ
クラシックを聴き始めて、時代の違いを言葉にしたい人。評論ではなく鑑賞の視点を大事にしたい読者。美術史と音楽を横断して楽しみたい人にも向いています。
良い点
- 時代区分の意味が腹に落ちる
- 聴く側の視点が一貫している
- 文庫で手に取りやすい
気になる点
- 体系的な入門書ではない
- ロマン派以降は駆け足気味
- 著者個人の好みが色濃い
出版社
講談社
発売日
2019年03月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
著者は美術史が専門なのに、音楽の本を書いているんですね。それって珍しくないですか?
佐藤メバル
そこが面白いところで、この人は生涯をかけて音楽を「聴く」ことに力を注いだ人なんだ。美術を見る目で音楽の時代を捉えるから記述が独特で、たとえばバロックからクラシックへ、クラシックからロマン派へと進んだあと、あえてクラシックからバロックへ戻る章が置かれる。
順番どおりに進まない構成が、時代の性格を浮かび上がらせるんだよ。
橘ナナミ
音楽史の時代区分って、テストで覚えたくらいで、意味は考えたことがなかったです。
佐藤メバル
それを一度ほどいてくれる本です。バロック、古典派、ロマン派がそれぞれ何を目指したのか、違いはどこにあるのか。
有名な曲をなぞるより、「自分はどう聴いているか」を確かめたくなる。クラシックを聴きながら、この時代はこういう空気だったのか、と考えたい人にちょうどいいと思います。
まんが音楽の歴史 バロック〜古典派〜ロマン派
ひのまどか 著|Gakken
¥1,870(税込)
音楽の歴史を、まんがと解説で小学生向けにわかりやすく紹介するシリーズの一冊です。この巻ではバロック時代からロマン派前期までの政治・宗教と音楽の関係をたどり、章ごとに「まんが→年表→解説」とまとまっているので、時代ごとの理解が進みます。楽器がどう生まれ、どう進化したのか、社会が音楽の創造にどう影響したのかが同時に見える構成。巻末には大きな折込の音楽史クイズ年表と人物年表が付き、眺めて整理する楽しみもあります。
こんな人におすすめ
子どもに音楽史を渡したい親・祖父母。音楽と世界史を一度に学びたい小学生。大人が知識の抜けを埋めるのにも案外向いています。
良い点
- まんがで取っつきやすい
- 音楽史と世界史を同時に学べる
- 巻末年表が学習に便利
気になる点
- 小学生向けで物足りない人も
- 曲の細部より流れが中心
- シリーズの一冊で完結しない
出版社
Gakken
発売日
2025年10月16日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
子ども向けの本ですよね。大人のランキングに入れるのは、ちょっと意外です。
佐藤メバル
そこが意外と効くんだよ。まんがで音楽史と世界史を同時に追える構成は、大人が抜け落ちた知識を埋めるのにも向いている。
この巻はバロックからロマン派前期までで、政治や宗教と音楽の関係を、まんがのあとに年表、そのあとに解説、という順で確認していく。
楽器の進化も追えるから、音の変化が腑に落ちるんだ。
橘ナナミ
折込の年表が付いているんですか。それは眺めるだけでも勉強になりそうです!
佐藤メバル
そう、巻末の大きな年表で、作曲家と時代を一緒に整理できる。子どもに音楽史を渡したいという人にもいいけれど、クラシックを聴いていて名前は浮かぶのに時代が混ざってしまう、という大人にこそおすすめしたい。入門はときに大人の味方ですよ。
ベートーヴェンとバロック音楽
越懸澤麻衣 著|株式会社音楽之友社
¥2,530(税込)
数々の独創的な作品を残したベートーヴェンですが、すべてをゼロから創ったわけではない——彼も多くの先人に学んでいました。「真の天才はドイツのヘンデルとバッハだけです」という手紙の言葉を手がかりに、当時すでに古臭く感じられていた二人の作品に並々ならぬ関心を示した姿を追います。当時の演奏会のレパートリー、楽譜棚、スケッチ帳への書き写し、平均律、《ディアベッリ変奏曲》《ミサ・ソレムニス》、未完のオマージュまで、実証的に積み上げていく一冊です。
こんな人におすすめ
ベートーヴェンを聴いている人で、作品の成り立ちまで知りたい人。バッハやヘンデルの受容史に関心のある読者。創作の過程を追うのが好きな人に向きます。
良い点
- 手紙や楽譜から実証する堅実さ
- スケッチ帳の章が読み応え十分
- パトロンのコラムも収録
気になる点
- 専門的で読み手を選ぶ
- 音楽用語がやや多め
- 入門書としては硬い
出版社
株式会社音楽之友社
発売日
2020年06月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ベートーヴェンって、独創の天才みたいに習いました。先人に学んでいたとは意外です。
佐藤メバル
そこが本書の出発点。手紙に「真の天才はドイツのヘンデルとバッハだけです」と書いているくらいで、当時はもう古いと見なされていた二人の作品に、あえて深く関わっている。
演奏会でどんな曲が鳴っていたか、どんな楽譜を棚に持っていたか、スケッチ帳に何を書き写したか。証拠を積み上げていくのが面白いんだ。
橘ナナミ
スケッチ帳に書き写していた、というところが気になります。それって練習みたいなものですか?
佐藤メバル
近いけれど、もっと執念深い。書き写す目的も方法も研究されていて、生涯を通じて学び続けた姿勢が浮かび上がる。
その成果が《ハンマークラヴィーア・ソナタ》や《大フーガ》、後期の弦楽四重奏につながっていく。天才は放っておいても生まれる、という思い込みを崩してくれる一冊です。
バロックの光と闇
高階秀爾 著|講談社
¥1,540(税込)
「バロック」はもともと「歪んだ真珠」を意味し、粗野で劣ったというニュアンスで使われた言葉です。一方でバッハやベルニーニの壮大な作品群もバロックと呼ばれる——ではそれは何なのか。美術史研究の第一人者が、音楽、建築、美術、演劇、文学まで縦横に駆けめぐりながら本質に迫る旅の記録です。ジャンルとしてでも時代区分としてでもなく、現代にまで至る全時代に見て取られるものとしてのバロックを探した先に、現代こそバロックの時代だという視点が浮かび上がります。
こんな人におすすめ
バロックという言葉の意味を、音楽の外まで広げて考えたい人。美術や建築と一緒に音楽を眺めたい読者。時代とジャンルを横断する読み物が好きな人に向きます。
良い点
- ジャンル横断の視野が広い
- 図版が多く眺めて楽しい
- 現代美術から説き起こす導入が新鮮
気になる点
- 音楽の記述は一部の章に限る
- 論点が多く通読は重い
- 専門用語がやや多い
出版社
講談社
発売日
2017年11月11日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
バロックって音楽のジャンルだと思っていました。これは美術の本なんですか?
佐藤メバル
美術史の本であり、音楽の本でもある、というのが正確かな。バロックという言葉は元々「歪んだ真珠」、つまり粗野で劣ったという意味だった。
それがバッハやベルニーニのような壮大な作品を指す言葉に変わっていった。そのねじれを、著者はジャンルや時代区分の枠を外して解いていくんだ。
橘ナナミ
現代の話から始まるんですね。そこも意外でした。
佐藤メバル
ポンピドゥー・センターの建築から始まって、光と闇、装飾と動勢、写実性と超越性、宮廷と市民のパトロン、都市と建築、そして文学・音楽・演劇の章へと続く。
最後に「現代こそバロックの時代だ」という視点が立ち上がる。音楽だけを追うのではなく、時代の空気をまるごと掴みたい人に向いているよ。
バロック音楽名曲鑑賞事典
礒山雅 著|講談社
¥1,155(税込)
新しく生まれたオペラ、心の奥底まで響く宗教音楽、多彩に奏で歌う協奏曲、宮廷を輝かせる典雅な調べ——バロック音楽から名曲100曲を選び、西洋音楽史研究の第一人者がその魅力をあますところなく語る鑑賞事典です。カッチーニ、モンテヴェルディ、シュッツ、クープラン、ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハなど、有名曲から隠れた一曲まで幅広く並びます。著者が無人島に持っていきたい一曲として《聖母マリアの夕べの祈り》を挙げるくだりなど、選曲の理由そのものが読みどころです。
こんな人におすすめ
バロックを聴き始めて、次に何を聴くか迷っている人。一曲ずつ解説を味わいながら鑑賞を深めたい人。CDの解説文をもっと楽しみたいリスナーにも向いています。
良い点
- 一曲ごとの解説が濃い
- 有名曲と隠れた名曲の配合
- 選曲の理由まで語られる
気になる点
- 通読より拾い読み向き
- 図版や譜例は多くない
- 著者の好みがはっきり出る
出版社
講談社
発売日
2007年02月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「事典」って、調べるための本ですよね。最初から読むものじゃないんですか?
佐藤メバル
拾い読みでいいし、むしろそのほうが楽しい。一曲ごとに独立した文章で、なぜその曲が選ばれたのかまで語られている。
たとえば著者は無人島に持っていくならモンテヴェルディの《聖母マリアの夕べの祈り》だと書いていて、同じ作曲家の《マタイ受難曲》ではない理由まで説明する。
選曲の好みが透けて見えるのが面白いんだ。
橘ナナミ
100曲もあると、どこから入ればいいか迷いそうです。
佐藤メバル
目次を眺めて、知っている名前の隣の知らない曲から入るのがいいよ。カッチーニ、シュッツ、クープラン、ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハと並ぶから、自分の偏りが見えてくる。
鑑賞の地図を一枚もらうような感覚で使える本です。
ワーグナーの力
寺倉正太郎 著|青弓社
¥2,640(税込)
独特の物語性と圧倒的な音楽の力で聴く者を揺さぶるワーグナー。その作品を《ニーベルングの指環》を中心に紹介しながら、音楽面だけでなく文学、ジェンダー、戦後の受容史といった視角から解析し、魅力と問題性を多角的に問い直します。戦後日本のワーグナー受容史、各地の演出の変遷、イギリスでの受容、バイロイト音楽祭の現在まで収録。ロック・マニアがワーグナーにはまる過程を綴った章もあり、入口が広いのも特徴です。
こんな人におすすめ
オペラは聴くけれど演出や受容史までは追えていない人。ワーグナーの両義性を考えたい読者。ロックからクラシックに興味が広がった人にも面白い入口があります。
良い点
- 受容史の視点が珍しい
- 演出論が具体的で読み応えがある
- 分野横断の論考が並ぶ
気になる点
- 専門用語と人名が密
- 作品の予備知識が要る
- 全体像の入門にはならない
出版社
青弓社
発売日
2005年03月17日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ワーグナーって、音楽のすごさと、扱いの難しいイメージが両方あって。この本はどっちなんですか?
佐藤メバル
両方だね。魅力と問題性を同時に問い直すのがこの本の姿勢で、戦後日本の受容史から説き起こし、各地の《指環》演出、イギリスでの受容、バイロイト音楽祭の現在まで並ぶ。
文学やジェンダーの視角も入ってくるから、音楽だけの評価では収まらないことがよく分かる。
橘ナナミ
「ロック・マニアからワーグナー好きへ」という章があるのを見つけてしまいました。これ、気になります!
佐藤メバル
そこ、いいところに気づいたね。ロックを聴いてきた人がワーグナーの何に引っかかるのか、という視点で書かれている。
ロックファンがこの本に入っていくなら、まずそこから読むのも手だよ。入口は人それぞれでいい。巻末には日本での上演記録も付いていて、調べ物にも使えます。
BURRN!CLASSICS(Vol.1)
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥1,980(税込)
英国ロック界の魔境と称されるバーミンガム/ウェスト・ミッドランズを総力特集した一冊です。ビル・ウォード、ギーザー・バトラー、K・K・ダウニング、マグナム、ブライアン・タトラー、アル・アトキンスらへの最新インタビューを収録し、バンドの始まりや人間関係の綾まで語られます。リー・ドリアンによる英国中西部のパンク/メタル回顧録、音盤ガイドも収録。名盤紹介とは違い、土地と人からヘヴィメタルの起源に迫る構成になっています。
こんな人におすすめ
ブラック・サバス周辺の来歴を掘りたい人。ジャンルが生まれた土地の空気を知りたい読者。バンド同士の関係や交友に興味がある人にも向きます。
良い点
- 当事者の最新インタビューが濃い
- 土地という切り口が新鮮
- 音盤ガイドとしても使える
気になる点
- 特定地域の特集で偏りがある
- 音源解説は簡潔め
- 関連する日本語資料は少なめ
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2017年06月29日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
バーミンガムって聞いても、街のイメージがわかないんです。そんなに音楽の土地なんですか?
佐藤メバル
そこを掘るのがこの特集で、英国ロック界の魔境なんて呼び方をしている。ブラック・サバスやその周辺が同じ地域から出てきたのは偶然じゃない、という視点で土地と人が丁寧に追われるんだ。
ビル・ウォードはブラック・サバスでの活動をあらためて語っているし、ギーザー・バトラーはバンドの始まりを話している。
橘ナナミ
バンド同士の関係も書かれているんですか。それは読みたいです。
佐藤メバル
ブライアン・タトラーはバンドの歴史や対立、メタリカとの関係まで話しているし、アル・アトキンスは初期の苦悩や撤退について語る。
人間関係の綾まで含めてバンド史になっているのがこの手の本の強み。音盤ガイドも付いているから、読みながら次に聴く一枚を決めていけるよ。
ROCK AND READ BAND(002)
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥1,650(税込)
Plastic Treeを巻頭の大特集で迎え、結成秘話から信念、野望までをメンバー自身の言葉で告白するロングインタビューを柱にした一冊です。全15バンド・全メンバーを掲載し、バンドの歴史をたどる構成になっています。lynch.、DEZERT、Royz、ディオーラといった特集アーティストも並び、シーンの中で活動を続けるバンドの現在地が見えてくる。アルバム評中心の音楽誌とは違い、バンドという集団の時間に焦点を当てているのが特徴です。
こんな人におすすめ
国内バンドの来歴をメンバーの言葉で読みたい人。結成から現在までを通して知りたいファン。雑誌的な誌面でシーンの空気を掴みたい読者にも向きます。
良い点
- メンバー全員の証言が読める
- 結成秘話から現在まで追える
- 特集バンドの幅が広い
気になる点
- 扱うジャンルが限られる
- 音楽史的な俯瞰は少ない
- 既存ファン向けの内容
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2018年08月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
雑誌形式の本ですね。これはファン向けという感じですか?
佐藤メバル
ファン向けではあるけれど、読み方次第で面白いんだ。結成秘話から信念、野望までを本人たちが語る構成になっていて、バンドがどう始まって、何を守ってきたのかが言葉で残る。
Plastic Treeの巻頭大特集に加えて、lynch.、DEZERT、Royz、ディオーラも並ぶ。
全15バンドの全メンバーが載っているから資料としても使えるよ。
橘ナナミ
音楽史の本を読んだあとに、こういう現在のバンドの本を読むと、逆に新鮮そうですね。
佐藤メバル
そこがいい塩梅で、歴史をたどったあとに自分たちの言葉で語るバンドの声を読むと、時間がつながる感じがする。
アルバム評だけの誌面とは違って、人が集まって続けていくことの難しさや面白さがにじむ。長く聴いている人ほど読む価値があると思います。
伊藤政則の“遺言”
伊藤政則 著|シンコーミュージック・エンタテイメント
¥2,037(税込)
人気のトークイベントを書籍化した一冊です。豊富な実体験に基づいてヘヴィ・メタル/ハードロックの歴史を読み解くトークの第1回から第5回までの内容を完全収録しています。当事者に会い、現場を見てきた人の語りなので、資料から組み立てた歴史とは温度が違います。何が起きて、誰がどう動いたのか順を追って進むので、名前は知っているけれどつながりが曖昧だったバンド同士の関係がほどけていきます。
こんな人におすすめ
ヘヴィメタルやハードロックの来歴を、現場の話として聞きたい人。語り口で歴史を味わいたいファン。バンド名は知っているけれど関係が整理できない人にも向きます。
良い点
- 実体験ベースの語りが濃い
- イベントの熱が紙面で伝わる
- バンドの関係がほどける
気になる点
- 網羅的な歴史書ではない
- 話の順序はイベント準拠
- メタル以外のジャンルは薄い
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2017年08月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
イベントをそのまま本にしたんですね。それって読み物として成立するんでしょうか。
佐藤メバル
そこが意外とよくできている。豊富な実体験に基づいてヘヴィ・メタルとハードロックの歴史を読み解くトークだから、資料の寄せ集めとは違って、誰に会った、どこで何が起きた、という話が核になる。
第1回から第5回までの内容がそのまま収録されていて、話の熱が紙に残っている感じなんだ。
橘ナナミ
バンド名は聞いたことがあっても、どうつながっているか分からないことが多いんです。
佐藤メバル
それなら効くよ。当事者の語りで線がつながるから、断片的だった知識が並び直す。歴史書を先に読んでからこの本を読むと、人物が急に血の通った存在になる。
逆にこの本から入って、詳しい人名事典に進むという順番もある。どちらでも楽しめると思います。
ヘドバン(vol.10)
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥1,430(税込)
表紙にBABYMETALを据え、メタルの進化とBABYMETALの進化を重ねて論じる特集を柱にした一冊です。日本のガールズメタル/ガールズハードロックの系譜と歴史をたどる企画では、寺田恵子のロングインタビューも収録。人間椅子とウリ・ジョン・ロートの対談、聖飢魔IIの武道館レポートなど、雑誌ならではの企画が並びます。海外のメタル史を追う本では拾えない、日本のシーンの動きが同時代の熱として残っているのが価値です。
こんな人におすすめ
日本のメタル/ハードロックの現在地を知りたい人。ガールズバンドの系譜に関心のある読者。雑誌的な企画をまとめて味わいたいファンに向いています。
良い点
- 同時代の空気が残っている
- ロングインタビューが読み応え十分
- ジャンル横断の企画が並ぶ
気になる点
- 特定アーティストの扱いが大きい
- 歴史を体系的には追えない
- 発行当時の情報で止まっている
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2016年03月28日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
表紙がBABYMETALなんですね。メタルの本でこういう表紙は新鮮です。
佐藤メバル
そこがこの号の主張で、メタルの進化とBABYMETALの進化を重ねて論じる特集が組まれている。
同時に、日本のガールズメタル、ガールズハードロックの系譜と歴史をたどる企画も入っていて、寺田恵子のロングインタビューが載っているんだ。表紙だけ見て終わらせるともったいない。
橘ナナミ
人間椅子とウリ・ジョン・ロートの対談って、どういう組み合わせなんですか……。
佐藤メバル
そこが雑誌の面白さで、ハードロック禅問答と銘打った対談になっている。聖飢魔IIの武道館レポートもあって、企画の振り幅が広い。
同時代の熱をそのまま保存した本だから、あとから読むと時代の空気が資料になる。雑誌の良さを味わいたい人に向いています。
KISS大百科事典
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥2,750(税込)
往年の音楽誌の紙面からKISS関連の記事を集めた大百科です。日本到着の瞬間を捉えた独占特写から、日本滞在記の徹底調査、メンバーが直筆で答えたQ&A、身体のサイズ一覧、ファンクラブ潜入まで、当時の誌面がそのまま残っています。中でも貴重なのは、マネージャーだけが知っていた日本公演のスケジュールをめぐる記事や、キッスの歴史を目で見るページ。熱に浮かされた当時の読者目線が、そのまま一次資料になっています。
こんな人におすすめ
KISSをリアルタイムで追った人。当時の音楽誌の紙面を味わいたいファン。来日公演の裏側やファンクラブの実態に興味のある読者に向きます。
良い点
- 当時の誌面がそのまま読める
- 日本滞在の記録が貴重
- 写真が豊富で資料性が高い
気になる点
- KISS以外の情報は皆無
- 体系的なバンド史ではない
- 現在の動向は扱わない
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2016年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
音楽誌の記事をまとめた本なんですね。今読んでも面白いんでしょうか。
佐藤メバル
当時の読者には熱すぎるし、今の人には一種の社会資料になる。日本到着の瞬間を捉えた独占特写や、メンバーが直筆で答えたQ&A、身体のサイズ一覧まで載っている。
読者目線で作られた紙面だから、ロックがどれだけ熱狂の対象だったかが伝わるんだ。
橘ナナミ
サイズ一覧って、なぜ載せたんでしょう……。でも気になります。
佐藤メバル
そこがこの時代の雑誌のサービス精神だね。ほかにもマネージャーだけが知っていた日本公演のスケジュールをめぐる記事や、ファンクラブに潜入する企画もある。
バンド史としても読み物としても面白い。ライブに行った人の記憶を呼び覚ます、そういう一冊です。
俺のロック・ステディ
花村萬月 著|集英社
¥792(税込)
ブルースロック、グラムロック、アメリカンロック、ジャズロック、ブリティッシュロック、ハードロック、プログレッシブロック、日本のロック——1960〜70年代の黄金期を俯瞰するガイドブック的な側面を持ちながら、エッジの効いた文章で「ロックとは何か」という根本を探求したロック論です。冒頭が「はじめにリズムありき」、最後が「総括だ!」で締まる構成も含め、小説家の目でジャンルを切り分けていく。既存の入門書とは語り口がまるで違います。
こんな人におすすめ
ロックの入門書を何冊か読んで、物足りなさを感じている人。小説家の文章で音楽論を読みたい読者。ジャンルごとの違いをはっきり知りたい人に向きます。
良い点
- 文章の切れ味が痛快
- ジャンル別の整理が明快
- 独自のロック論として読める
気になる点
- 語り口の強さは好みが分かれる
- 細かなデータは少ない
- 70年代以降はほぼ扱わない
出版社
集英社
発売日
2009年07月22日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
小説を書く人がロック論を書いているんですね。しかも最後が「総括だ!」で終わるって……。
佐藤メバル
そこがこの本の勢いで、1960〜70年代を俯瞰するガイドブックとしても使えるのに、通して読むとロック論になっている。
ブルースロックからグラムロック、ジャズロック、ブリティッシュロック、ハードロック、プログレ、日本のロックまで、ジャンルごとに章を立てて切り分けていく。
冒頭が「はじめにリズムありき」なのが象徴的だね。
橘ナナミ
入門書のあとに読むと面白そうですね。でも、偏っていませんか?
佐藤メバル
偏っているから面白い、という類の本だよ。データを積み上げるのではなく、自分はどう聴いてきたか、ロックとは何だったのかを突きつけてくる。
入門を一通り終えた人が読むと、知識が思想に変わる感じがする。自称「通」の人が自分の空白を確かめるのにも向いています。
オアシス2025
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥2,200(税込)
再始動後のツアーを軸に、オアシスの現在をまとめた一冊です。ツアー初日のカーディフ公演の完全レポートに加え、マンチェスター、ロンドンでの観客の声が並び、復活がどれだけ待たれていたかが伝わります。劇場公開されたネブワース関連の映像作品紹介、「モーニング・グローリー」の周年盤を聴く記事、リアムとノエルの過去インタビューの再録、全曲制覇の企画まで収録。過去と現在を行き来しながらバンドを捉え直せます。
こんな人におすすめ
オアシスをリアルタイムで追ってきた人。再始動の空気を追いたいファン。リアムやノエルの単独活動も含めて整理したいリスナーに向きます。
良い点
- ライブレポートが具体的
- 過去インタビュー再録が貴重
- 関連作までフォローしている
気になる点
- 既存ファン向けの内容
- バンド論としては浅め
- 公演の全ては網羅しない
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2025年09月29日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
2025年と書いてあるので、かなり新しい本ですね。復活があったんですよね?
佐藤メバル
そう、その熱をそのまま詰め込んだ一冊。ツアー初日のカーディフ公演の完全レポートに、マンチェスターやロンドンでの観客の声が続く。
その土地でどれだけ待たれていたかが伝わってくるよ。劇場公開されたネブワース関連の映像の紹介や、「モーニング・グローリー」の周年盤を聴く記事も入っている。
橘ナナミ
過去のインタビューの再録も載っているんですか。それは今読むと余計に沁みそうです。
佐藤メバル
リアムとノエル、それぞれのインタビューが並ぶから、同じバンドを別の口から眺めるような構成になっている。
全曲制覇の企画もあるから、聴き直しのガイドにもなる。最新の熱と、その前の長い時間の両方が入っているのがいいところだね。
フジロック20thアニバーサリー・ブック
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥2,200(税込)
フジロックの歩みを、出演アーティストのインタビューとともに振り返る一冊です。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、プライマル・スクリーム、ニール・ヤング、ピクシーズ、ベック、ザ・ストロークスから、オアシス、ミューズ、コールドプレイ、レディオヘッド、アーケード・ファイアまで、年代ごとに名前が並びます。デイヴ・グロール、デーモン・アルバーン、ノエル・ギャラガーらの証言に加え、日高正博、忌野清志郎、甲本ヒロトが語る「フジロックとは何か」も収録。フェスそのものを考える本です。
こんな人におすすめ
フジロックに通ってきた人。日本にフェス文化が根づく過程を知りたい人。野外フェスの運営や成り立ちに関心のある読者にも向きます。
良い点
- 出演者の証言が多彩
- 会場と歴史をまとめて追える
- フェス論としても読める
気になる点
- 主催フェス中心の視点
- 演奏内容の批評は少なめ
- 途中の年は駆け足気味
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2016年06月29日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
フェスの本って、写真集みたいなものが多いイメージでした。これは読み物なんですね。
佐藤メバル
そう、フジロックが何を変えたのかを、出演者と運営側の両方から追う構成になっている。デイヴ・グロールがライブ直後に語った意外な交流の話、一回目の中止を東京で晴らしたベックの胸中、ノエル・ギャラガーにとってのフェス、といった証言が並ぶ。
年代の区切りごとに見ていけるのがいいね。
橘ナナミ
日高正博さん、忌野清志郎さん、甲本ヒロトさんが語る「フジロックとは何か」のところが気になります。
佐藤メバル
そこが核心で、フェスを主催する側と、立つ側の言葉が同じ本に並ぶ。トリビアやエリアガイドもあるから、行ったことのある人なら記憶がよみがえる。
まだ行ったことがない人が、日本の野外フェスがどう育ってきたのかを知る入口にもなるよ。
ぼくらの茅ヶ崎物語
釈順正 著|シンコーミュージック・エンタテイメント
¥1,980(税込)
加山雄三の誕生から1979年までの茅ヶ崎サウンドにまつわる事象を、識者による共同作業で徹底研究した一冊です。茅ヶ崎が日本ポップス史に影響を及ぼしたことを示す詳細な年表を完備し、名盤誕生に貢献したスタッフの証言も収録。さらに伝説の「湘南ロックンロールセンター」の全容を初めて解き明かすテキストを掲載し、初蔵出しの写真も多数収録しています。一つの土地から音楽史を照らす、異色の永久保存版です。
こんな人におすすめ
湘南や茅ヶ崎にゆかりのある人。土地と音楽の関係に興味がある読者。日本ポップスの黎明期を年表で確かめたい人にも向きます。
良い点
- 年表が詳細で資料価値が高い
- スタッフ証言が貴重
- 写真が多数収録されている
気になる点
- テーマが土地限定で狭い
- ロック全般の入門にはならない
- 固有名詞が多く読み手を選ぶ
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2019年08月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
茅ヶ崎って、加山雄三さんのイメージですよね。それだけで一冊になるんですか?
佐藤メバル
そこを真面目に研究した本なんだ。加山雄三の誕生から1979年までの茅ヶ崎サウンドにまつわる事象を、識者たちが共同で追いかけている。
茅ヶ崎が日本のポップス史に何を及ぼしたのかを、詳細な年表で示しているのがポイントだね。
橘ナナミ
伝説の「湘南ロックンロールセンター」って、名前だけ聞いたことがあります。
佐藤メバル
その全容を初めて解き明かしたテキストが載っている。名盤誕生に貢献したスタッフの証言もあって、一つの土地から音楽史を照らすという切り口が効いているよ。
初蔵出しの写真も多い。湘南に縁がある人なら、頁をめくるだけで風景が見えてくるはずです。
Bollocks(No.082)
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥1,320(税込)
巻頭で人間椅子の36年の歴史と、辿り着いた理想郷を大特集した一冊です。NICKEY & THE WARRIORS、T字路s、a floood of circle、再鋭輝、KiNGONS、GASOLINE、流血ブリザード、THE AUTOCRATICS、DUCK MISSILE など、複数のバンドへのインタビューを収録し、PUNK LIVES!やKAPPUNKのイベントレポートも掲載。シーンの中心と周縁を同時に見渡せる構成で、名前を追うだけでも現在のパンクの地図になります。
こんな人におすすめ
国内のパンクシーンを追っている人。長く続けるバンドの姿を知りたい読者。ライブハウスに通う人が次の一本を見つけるのにも向きます。
良い点
- インタビューの本数が多い
- イベントレポートで空気が伝わる
- 長寿バンド特集が読み応え十分
気になる点
- 網羅的なパンク史ではない
- 発行時点の情報で止まっている
- 既存ファン向けの内容
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2025年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
表紙の名前が、知っているようで知らないバンドばかりです。パンクの本なんですね。
佐藤メバル
そう、人間椅子の36年の歴史と、辿り着いた理想郷を巻頭でどんと特集している。そこにNICKEY & THE WARRIORS、T字路s、a floood of circle、再鋭輝、KiNGONS、GASOLINE といったバンドのインタビューが続く。
イベントレポートも入っているから、いま鳴っている音の地図になるんだ。
橘ナナミ
36年って、続けること自体がすごいですね。そういう視点で読むと面白そうです。
佐藤メバル
そこが読みどころで、長く続けるということが何を意味するかが、特集の言葉から伝わってくる。ライブハウスに通っている人が次に観る一本を見つけるのにもいいし、パンクという言葉が気になっている人が、いまの現場を知る入口にもなる。雑誌の勢いをそのまま味わう一冊です。
FILTER(Volume.09)
シンコーミュージック・エンタテイメント
¥1,980(税込)
表紙に平沢進の核P-MODELを迎え、ソロ・プロジェクトとして始動した核P-MODELの新作についてのインタビューを収録した一冊です。特集は「シンセサイザーとロック」。現在ではロックにシンセが入るのは自然ですが、その活用法や立ち位置は時代とともに少しずつ変わってきた——その歴史的視点から関係を捉え直し、名演・名盤を生んだ使われ方に迫ります。定番シンセ「Minimoog」の再検証や音作りの解説、ABEDON、ハヤシヒロユキと堀江博久のインタビューも収録しています。
こんな人におすすめ
シンセの音が好きで、機材の話も読みたい人。ロックの中でシンセがどう使われてきたかを知りたい読者。打ち込みとバンドの間で考えているプレイヤーにも向きます。
良い点
- 機材と歴史の両方を扱う
- 現役ミュージシャンの解説が具体
- 普段の音楽誌と違う切り口
気になる点
- 機材知識があると物足りないかも
- 特集以外の記事は短め
- 電子音楽全般は対象外
出版社
シンコーミュージック・エンタテイメント
発売日
2025年07月31日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
シンセサイザーとロックって、いまは当たり前ですけど、昔はどうだったんですか?
佐藤メバル
そこを歴史的に捉え直すのがこの特集で、活用法や立ち位置が時代とともに変わってきた過程を追いかける。
ロックとシンセサイザーの歴史、アーティスト名鑑、定番シンセのMinimoogの再検証、音作りの解説まで、機材と音楽の両方から入っていくんだ。
橘ナナミ
表紙の平沢進さんと核P-MODELも気になります。インタビューなんですね。
佐藤メバル
そう、リニューアルしたプライベート・スタジオで行われた新作についてのインタビューが載っている。
ほかにもABEDON、ハヤシヒロユキと堀江博久の話もあって、世代の違う作り手が並ぶのが面白い。シンセの音が好きな人も、機械が苦手な人も、読みながら聴き直したくなる一冊です。
ルーツと黒人音楽、そして邦楽へ——ロック史を地続きに捉える
橘ナナミ
ロック史の本って、ビートルズやストーンズの話から始まる印象があるんですけど、その前はどうなってるんですか?
佐藤メバル
そこを埋めるのが大和田俊之さんの『アメリカ音楽史』だね。ミンストレル・ショウからブルース、ヒルビリー/カントリー、ティンパン・アレー、スウィング・ジャズ、R&Bとロックンロール、そしてソウル/ファンク、ディスコ、パンク、ヒップホップ、ラテンまでを章立てでつないでいく。ロックだけを切り出すと見えなくなる黒人音楽との接続が、ここで一気に視界に入るんだ。
橘ナナミ
「白人/黒人という枠組みをも乗り越えようとする」という紹介文も、そういうことなんですね。邦楽はどうですか?
佐藤メバル
邦楽は『吉田拓郎から始めるロックスター列伝』と『ぼくらの茅ヶ崎物語』が面白い。前者は田家秀樹さんとスージー鈴木さんが、年齢もバックグラウンドも違うふたりの対談でレジェンドたちを「通説」から解き放っていく。後者は加山雄三の誕生から茅ヶ崎サウンドにまつわる事象を年表つきで追っている。洋楽史と邦楽史は別物じゃなく、同じ川の上流と下流なんだよね。
ジャンル別史とライヴ史——枝葉を体系化する
橘ナナミ
パンク、プログレ、メタル…ジャンルごとの本は、どう整理すればいいですか?
佐藤メバル
全部を最初に揃える必要はないよ。たとえば70年代とプログレ周辺なら『70年代ロックとアメリカの風景』が、キング・クリムゾン、イエス、ジェネシス、エマーソン・レイク&パーマー、ジェフ・ベック、T・レックス、ザ・フー、ディラン、イーグルス、サンタナ、ヘンドリックス、マーヴィン・ゲイ、ケンドリック・ラマー、そしてウッドストックまで扱っている。しかも著者はアメリカ文学者で、音楽を文学・思想から読み直す視点が入る。メタルなら『伊藤政則の“遺言”』、レゲエなら『ジャマイカン・ミュージックの歴史』と、好きな枝から先に入っていい。
橘ナナミ
ライヴの本という切り口は、ちょっと意外でした。
佐藤メバル
『洋楽ロック史を彩るライヴ伝説』は、ウドー音楽事務所の軌跡を追う一冊で、1970年代から2010年代までの主な来日公演とエピソード、スタッフ・インタビュー、秘蔵品まで収録している。日本で洋楽ロックがどう受け止められてきたかの記録になる。スタジオ録音史だけでは絶対に見えない「来日史」という軸だね。
年表・図版・最新研究——形式面と2020年代の動向
橘ナナミ
年表や系譜図があると、頭の整理に助かります。
佐藤メバル
あると強いよね。『世界史×音楽史』は巻末に音楽史・世界史・日本史を対比させた総合年表がついていて、本文でも《魔笛》と啓蒙思想、《冬の旅》と自由主義といった具合に時代と作品を結びつけていく。『まんが音楽の歴史』も章末年表に加えて、全長約45cmの巻末折込年表つき。年表を先に眺めてから本文に入ると、頭の中に棚が一本できるよ。
橘ナナミ
2020年代の新刊も増えていますよね。
佐藤メバル
『ジャマイカン・ミュージックの歴史』は、2018年に刊行した『レゲエ入門』を新装した新しい版で、ディスクガイド68枚に名盤20選、さらに25曲のプレイリストまで載っている。『まんが音楽の歴史』は2025年創刊のシリーズだ。古い名著と新しい入門書を混ぜて読むのが、いまの現実的な作法だと思う。洋書や翻訳書も同じで、まず邦訳で全体像を掴んでから原著に戻る。訳者が用語をどう選んだかも含めて読むと、二度おいしいよ。
よくある質問
ロック史の本は最初にどれを読めばいい?
橘ナナミ
ロック史の本は最初にどれを読めばいいについて教えてください。
佐藤メバル
通史を1冊と決めるなら、中山康樹『ロックの歴史』が第一候補です。イギリスとアメリカが互いの音楽を「洋楽」として受容し、ときに誤読しながら進化・統合していく過程を追う構成で、ミュージシャンの歴史的位置づけも見えてきます。章ごとにテーマが切られているので、気になる章から拾い読みしても迷いません。
ロック初心者でも読める入門書はある?
橘ナナミ
ロック初心者でも読める入門書はあるについて教えてください。
佐藤メバル
あります。花村萬月『俺のロック・ステディ』は、ブルースロック、グラムロック、アメリカンロック、ジャズロック、ブリティッシュロック、ハードロック、プログレッシブロック、日本のロックという具合に60〜70年代を俯瞰しつつ、「ロックとは何か」を探った論でもあります。小説家のエッジの効いた文章なので、ガイドブックとしても読み物としても楽しめます。
ロックの歴史を1冊で学べる本はある?
橘ナナミ
ロックの歴史を1冊で学べる本はあるについて教えてください。
佐藤メバル
完全に1冊で終わる本は残念ながらありません。最も近いのは中山康樹『ロックの歴史』で、ビートルズが生まれた瞬間やディランの揺さぶり、ウッドストックの位置づけまで一冊で通します。ただし黒人音楽や邦楽の流れまで含めたいなら、大和田俊之『アメリカ音楽史』や『吉田拓郎から始めるロックスター列伝』を足す前提で考えたほうが満足度は高くなります。
ロック史の本はKindleや電子書籍で読める?
橘ナナミ
ロック史の本はKindleや電子書籍で読めるについて教えてください。
佐藤メバル
電子版の有無は書誌ごとに異なるので、購入前に各書誌ページで必ず確認してください。刊行から年数が経った研究書や論集は電子化されていないことも多く、その場合は紙の文庫・新書か図書館が現実的な選択になります。まず読みたい本の対応状況をチェックする習慣をつけると、あとで困りません。
絶版になったロック本はどう入手すればいい?
橘ナナミ
絶版になったロック本はどう入手すればいいについて教えてください。
佐藤メバル
順番は、図書館の蔵書検索→古書店→新装版や復刊の有無の確認です。たとえば牧野直也『ジャマイカン・ミュージックの歴史』は、2018年刊行の『レゲエ入門』を新装して出し直した例で、内容をアップデートした上で手に入りやすくなっています。古いから諦める前に、版が変わっていないかを調べてみてください。
ビートルズやディランの本はどれから読むべき?
橘ナナミ
ビートルズやディランの本はどれから読むべきについて教えてください。
佐藤メバル
まずは通史の中の該当章で位置づけを掴むのがおすすめです。中山康樹『ロックの歴史』にはビートルズが生まれた瞬間やボブ・ディランの揺さぶりを扱う章があり、『70年代ロックとアメリカの風景』にはディランとアメリカ詩の伝統を論じた章があります。いきなり評伝から入るより、時代の中に置いてから個別の評伝へ進むほうが理解が定着します。
邦楽ロックの歴史がわかる本はある?
橘ナナミ
邦楽ロックの歴史がわかる本はあるについて教えてください。
佐藤メバル
あります。田家秀樹・スージー鈴木『吉田拓郎から始めるロックスター列伝』は、吉田拓郎、沢田研二、矢沢永吉、井上陽水、中島みゆき、松任谷由実、桑田佳祐、浜田省吾、佐野元春、忌野清志郎、氷室京介らを対談形式で語り直します。『ぼくらの茅ヶ崎物語』は加山雄三の誕生から茅ヶ崎サウンドを年表つきで追う徹底研究で、地域から日本ポップス史を照らす一冊です。
ロック史と音楽理論はどちらを先に学ぶべき?
橘ナナミ
ロック史と音楽理論はどちらを先に学ぶべきについて教えてください。
佐藤メバル
先に歴史をおすすめします。理論は「なぜこの音がこう響くのか」を説明する道具なので、対象となる作品と時代の文脈がないと頭に入りにくいんです。たとえば前川誠郎『西洋音楽史を聴く』でバロック・クラシック・ロマン派の時代区分に慣れてから、気になった曲を掘り下げる。順番を逆にすると、用語だけが残って音楽が遠くなってしまいます。
まとめ
橘ナナミ
今日の話、かなり目から鱗でした。1冊を探すより、読む順番を設計するほうが大事なんですね。
佐藤メバル
そう。通史で骨組みを作って、ジャンル史で肉をつけて、評伝で血を通わせる。最初から完璧な1冊を探そうとすると、たぶん一生見つからないよ。
橘ナナミ
でも、途中で飽きちゃったらどうすればいいんでしょう。
佐藤メバル
積読は罪じゃない。気になるアーティストの評伝から入って、わからなくなったら通史に戻る。行き来しているうちに、知らない名前がどんどん減っていく。書店員時代、お客さんに「この本のどこが面白いか」を説明するために、結局3冊を並行で読んだことがあるよ。あれはあれで、いい読み方だった。
橘ナナミ
そんな読み方があるんですね。私もまず『ロックの歴史』から開いてみます。
佐藤メバル
いいね。ロック史の本を読むのは、自分のレコード棚を後ろから眺める作業に似ている。いま鳴っている1曲の向こうに、その曲を可能にした無数の音が並んでいる。最初の1冊を開いた瞬間から、その棚はゆっくり君のものになっていくよ。
