音楽史をわかりやすく学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、今回のテーマは「音楽史の本」ですよね。でも私、正直ちょっと身構えていて。音楽史って、作曲家の名前と年号がずらっと並んだ暗記もの、というイメージがあるんです。
佐藤メバル
そのイメージ、よくわかるよ。書店員時代、音楽史の棚の前で立ち止まったお客さんが「難しそうだから」と背を向けるのを何度も見てきた。でもね、いまの音楽史の本は全然違う。たとえば『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』は、ヨーロッパの歴史と音楽の歴史を同時に紹介していく本で、紹介された曲の聴きどころへ飛べるQRコードまで付いている。年号を覚える本じゃなくて、「この時代に、なぜこの音が生まれたのか」を追いかける本なんだ。
橘ナナミ
なるほど! 歴史と音楽をセットで覚えるんですね。じゃあ、いきなり通史から入るのが正解なんですか?
佐藤メバル
そこが一番の落とし穴なんだ。いきなり分厚い通史を開くと、たいてい中世で止まる。だから最初は「聴いたことのある曲」から入るのがいい。『すぐわかる! 4コマピアノ音楽史 ピアノの誕生〜古典派編』は、4コマとわかりやすい解説で作曲家とピアノと音楽史が一気につながる作りで、ハードルがびっくりするほど低い。入口は軽く、その後で骨太な通史に移る——この順番が挫折しないコツだよ。
橘ナナミ
ちなみに佐藤さん、25冊も挙げるとなると、クラシックだけじゃないですよね? 私、J-POPやK-POPの歴史も気になっていて。
佐藤メバル
もちろん。今回はクラシックの西洋通史と日本の伝統音楽、そしてジャズやポピュラー、K-POPまで射程に入れている。たとえば『日韓ポピュラー音楽史』は、歌謡曲から韓国演歌、J-POP、K-POPの時代まで、日本と韓国がどう反射し合ってきたかを描く一冊で、音楽史本のイメージが変わるはずだよ。
橘ナナミ
それ気になります! 聴いたことある曲も「いつ、どこで生まれたか」が分かると見え方が変わりそうです。
佐藤メバル
そう、そこが音楽史の面白さ。じゃあ、まずは選び方の軸から整理していこう。25冊を闇雲に並べても選べないからね。
音楽史をわかりやすく学べる本の選び方
読む目的別——通史か、批評か、理論か、聴く力か
橘ナナミ
目的によって選ぶ本は変わりますか?
佐藤メバル
大きく変わるよ。「流れを一本につなげたい」なら『つながりと流れがよくわかる 西洋音楽の歴史』。神の音楽から人の音楽へ、そして世界音楽の時代へという因果関係(ストーリー)で解きほぐす本で、作曲家と作品のカタログになっていないのがいい。「批評的に、文化的に読みたい」なら中公新書の『西洋音楽史』。芸術音楽と娯楽音楽がどう分裂していったかを大胆に位置づける一冊で、読み物としてぐいぐい来る。「理論やジャンルの側から整理したい」なら『図表とともに学ぶ 西洋音楽史概説』が、8つの時代と8つの観点、4つのジャンル軸で見通しよく並べてくれる。
難易度レベル別——初めての一冊/中級/専門・学習用
橘ナナミ
難易度の階段みたいなものはありますか?
佐藤メバル
あるよ。一段目は『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』や『大人の音楽史入門』。後者は参考音源CD付きで、「この曲だったのか!」という発見を楽しみながら読める。二段目は『ものがたり西洋音楽史』。コンパクトなのに中世の教会音楽からモダニズムまでを物語として通してくれる。三段目、授業やレポートで使うなら『音楽史を学ぶ 増補改訂版』や『決定版 はじめての音楽史』。後者は西洋音楽史と日本音楽史の両方を一冊で扱うのが独特だよ。段を飛ばすと必ず止まるから、一段ずつ上がるのが結局いちばん速い。
形式別——新書・文庫/図解・マンガ/教科書/大型図鑑
橘ナナミ
形式で選んでもいいんですか?
佐藤メバル
むしろ最初は形式で選んでいい。活字が重く感じたら4コマ形式、ビジュアルで一気に掴みたければ『西洋音楽史大図鑑』。初期の音楽から現代のミニマリズムまでを豊富な図版とイラストで追う大型本で、価格は張るけれど資料として長く使える。通勤・通学のすきま時間なら新書・文庫が強い。中公新書の『西洋音楽史』、岩波新書の『ものがたり西洋音楽史』『ものがたり日本音楽史』は、カバンに入るサイズで骨格が学べるよ。
扱う範囲別——西洋通史/特定時代/ジャンル/地域・日本
橘ナナミ
西洋史だけじゃなく、ジャンルや日本のものも選べるんですね。
佐藤メバル
そこが今回の記事の強みだね。日本の音楽史なら『図解 日本音楽史』が、雅楽・声明・能楽から沖縄音楽、近代音楽までを見開き2頁で整理していて辞書的に使える。『よくわかる日本音楽基礎講座』は音楽科の先生向けに作られた本だけど、用語や楽器を調べるのにも便利だ。ジャンルなら『アメリカ音楽史』——ミンストレル・ショウ、ブルース、ジャズ、ロック、ヒップホップまでを「他者を擬装する欲望」という切り口で通す論考だよ。ゲーム音楽に触れているのは『入門 ポピュラー音楽の文化史』で、YMOとゲーム音楽を扱う章がある。
入手経路・価格別——新刊/中古/Kindle/図書館/音声
橘ナナミ
予算が限られている場合はどう選べばいいですか?
佐藤メバル
まず図書館。『図解 日本音楽史』のような大型で価格が高めの本は、借りて相性を確かめてから手元に置くか決めるのが賢い。手軽な価格帯なら新書・文庫で、中公新書『西洋音楽史』、岩波新書の「ものがたり」シリーズ、光文社新書『創られた「日本の心」神話』、NHK出版新書『革命と戦争のクラシック音楽史』あたりは千円前後で持てる。電子書籍は検索が効くので人名索引がわりになるし、音源リンク付きの本はスマホと相性がいい。品薄のときは同じ著者の改訂版や別バージョン、図書館の相互貸借を当たる——これは書店員時代に何度もお客さんと一緒に探したルートだよ。
読了しやすさ別——ページ数・文体・音源連動
橘ナナミ
途中で挫折しない見極め方を教えてください。
佐藤メバル
三つ見てほしい。ひとつは音源が付いているか。『大人の音楽史入門』はCD付き、『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』はQRコードで聴きどころに飛べる、『解きながら楽しむ 大人の西洋音楽史』は演奏音源へのリンク付きで、しかも問題を解きながら読み、日付を記入して学習の記録を残せる。耳から入れると、文字だけのときより驚くほど記憶に残る。 ふたつめは文体。『ものがたり西洋音楽史』や『西洋音楽史を聴く』のように語り口で引っ張る本は、分量があっても読み切れる。みっつめは、いきなり一冊を端から端まで読まないこと。目次で「いま聴いている時代」を選んで拾い読みするくらいでちょうどいい。
音楽史をわかりやすく学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
音楽史をわかりやすく学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
大人の音楽史入門 読んでわかる!きいてわかる!クラシック音楽の歴史[改訂版]
長沼由美 著|ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
¥2,420(税込)
15年以上読み継がれてきたロングセラーの改訂版です。付属の参考音源CDには、アレルヤ唱から《惑星》より木星まで有名曲を収録。聴きながら「この曲だったのか」と結びつくのが最大の読みどころです。巻頭の西洋音楽史・世界史・日本史の対照年表も見直され、作曲家が生きた時代の日本や世界の出来事と一緒に学べます。作曲家の人生と時代背景を丁寧に追う構成で、年表と音源を往復しながら全体像をつかみたい人の最初の一冊になります。
こんな人におすすめ
クラシックは好きだけど歴史は名前しか知らない、という人が最初に通す一冊。音源を流しながら年表を眺めたい人、作曲家の人生と時代背景をセットで覚えたい人、音楽史の入口を探している人に向きます。
良い点
- 音源CD付きで耳と目を結びつけられる
- 世界史・日本史との対照年表が便利
- 改訂で年表と収録曲が見直された
気になる点
- CD再生環境がないと音源が使えない
- 作曲家個人の深掘りは控えめ
- 索引頼みで通読にはやや根気が要る
出版社
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日
2024年11月26日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
音楽史の本って、いきなり人名が並んで心が折れそうになるんです。これはCDが付いてるって聞いて、それだけで安心しました。
佐藤メバル
いいところに目をつけたね。この本は音源と年表がセットになっているのが強みで、たとえばバッハの時代に日本で何が起きていたかまで並べて確認できる。
聴く・読む・時代を見るを同時にやるから記憶に残るんだよ。
橘ナナミ
なるほど、年表と音源を行き来するんですね。曲目一覧に《トッカータとフーガ》や《モルダウ》もあって、知ってる曲が多くて助かります。
佐藤メバル
そう、収録曲が有名どころ中心なのも大きい。《四季》や《新世界》みたいに、どこかで耳にした曲が歴史のどこに位置するか分かると、次に聴くときの解像度が上がる。
改訂版では年表も収録曲も手が入っているので、古い版を持っている人にも改めて手に取る価値があります。
つながりと流れがよくわかる 西洋音楽の歴史
岸本宏子 著|アルテスパブリッシング
¥2,420(税込)
「西洋音楽の西洋って何?」という根本から始まる一冊です。古代ギリシャの音楽観、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という三大宗教、そして神の音楽から人の音楽へ、世界音楽の時代へ。因果関係のストーリーとして音楽史を解きほぐします。「西洋音楽ができるまで」「神の音楽から人の音楽へ」「西洋音楽のたわわな実り、そして…」の3部構成で、作曲家のカタログではない通史が読めます。コラムのかわいいイラストも理解の助けになります。
こんな人におすすめ
作曲家人名の暗記に飽きた人が、流れと理由をつかむために最適。なぜグレゴリオ聖歌からオペラが生まれたのか知りたい人、宗教と音楽の関係から学びたい人、美術鑑賞や旅行の下地を作りたい人にも向きます。
良い点
- 「なぜ」から説明する納得の構成
- 3部構成で流れが追いやすい
- コラムのイラストが理解を助ける
気になる点
- 情報量が多く通読は重い
- 作曲家個人の伝記は少なめ
- 図版はイラスト中心で写真は少ない
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2020年10月23日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
このタイトル、地味に刺さります。曲の解説じゃなくて『なぜそうなったか』なんですよね?
佐藤メバル
そこが他と決定的に違うところ。たとえば古代ギリシャの音楽観や、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という三つの宗教の話から始まる。
西洋音楽がどこから来たのかを、因果関係で追わせてくれる本は意外と少ないんだ。
橘ナナミ
序章の『モーツァルトやベートーヴェンの伝記を並べれば音楽史だと思っていないか』って一文、まさに私でした……。
佐藤メバル
多くの人がそこで止まっているからね。この本はバッハより何百年も前から話を始めて、神の音楽が人の音楽に変わる過程を描く。
オペラの誕生やナポリ派の隆盛、十二音技法まで川の流れのように続くので、読み終わる頃には点が線になっているよ。
人生が楽しくなる 西洋音楽史入門
山崎圭一 著|PHP研究所
¥1,980(税込)
教育YouTuberムンディ先生が、ヨーロッパ史と音楽史を同時に紹介する入門書。歴史のストーリー、その時代の事件や人物を題材にした曲、そして生きた作曲家と代表曲をセットで解説します。太古から戦後まで10章立てで、読み込むと「これ聴いたことある」「この時ここで生まれた音楽なのか」と発見が続きます。紹介曲にはYouTubeのQRコードが付き、聴きどころから再生できるのが大きな違いです。
こんな人におすすめ
世界史の授業が好きだった人や、現在のニュースとクラシックを結びつけたい人に。スマホで手軽に音源を確認したい人、学生時代の歴史の知識を音楽で復習したい人にもぴったりです。
良い点
- 世界史と音楽史を同時に追える
- QRコードで音源確認が手軽
- 全10章で時代の流れが掴みやすい
気になる点
- 紙の本だと音源はQR頼み
- 作曲家像の深掘りは浅め
- 記述はやや講義調で硬く感じる
出版社
PHP研究所
発売日
2023年08月09日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
教育YouTuberの方が書いた本なんですね。動画のノリで読めるのかなって思ったら、章立てはがっちり歴史なんですね。
佐藤メバル
そう、ここが侮れない。歴史のストーリーを説明して、その時代の事件や人物を題材にした曲を挙げ、さらに生きた作曲家と代表曲を並べる。
歴史→曲→作曲家の三段重ねだから、曲が時代の証明として響いてくるんだよ。
橘ナナミ
QRコードから聴きどころに飛べるのは、スマホ世代にはありがたいです。全部自分で探すのは絶対挫折するので……。
佐藤メバル
そこは大きな差になる。太古から戦後の世界まで10章で進むから、まず全体をざっと眺めて、気になった章だけ動画で確認する、という読み方もできる。
世界史と音楽史が同じ年表の上でつながる感覚を、負荷低く味わえる一冊です。
決定版 はじめての音楽史
久保田慶一 著|音楽之友社
¥2,200(税込)
20年以上売れ続けてきた入門書の決定版。西洋音楽史だけでなく日本音楽史、さらに日本の現代音楽まで扱うのが独自の強みです。古代ギリシャから20世紀までの西洋史に加え、能と狂言、三味線文化、伝統音楽と西洋音楽の並存の近代、現代邦楽までを追います。章間には久保田慶一の書き下ろしコラム「もうひとつの音楽史」が5本入り、理論・社会・職業・記譜法・メディアを俯瞰できます。
こんな人におすすめ
西洋音楽史と日本音楽史を一冊で押さえたい人、学校の授業やレポートの参考にしたい学生、能や三味線など邦楽にも関心のある愛好家に。資料として長く使えます。
良い点
- 西洋と日本の両史を一冊で学べる
- 書き下ろしコラムが俯瞰的で深い
- 索引が充実し調べ物にも強い
気になる点
- 分担執筆で文体に多少の差
- 写真より文字情報が中心
- 初学者には分量が多め
出版社
音楽之友社
発売日
2017年08月30日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
あれ、この本『日本音楽史』も入ってるんですか? 西洋の入門なのに?
佐藤メバル
そう、そこがこの本の独自性。第1部が西洋音楽史、第2部が日本音楽史、第3部が日本の現代音楽。一冊で両方を並べて見られるから、明治以降に西洋音楽がどう入ってきたかも立体的に分かるんだ。
橘ナナミ
能や狂言、三味線文化まで章立てであるのは意外でした。音楽史って西洋だけじゃないんですね。
佐藤メバル
決定版では章間の空きページに「もうひとつの音楽史」というコラムが5本追加された。音楽と社会、音楽の職業、記譜法、音楽メディアといったテーマを古代から現代まで俯瞰する内容で、授業にも使いやすい。
長く読まれている定番には理由があるんだよ。
ものがたり西洋音楽史
近藤譲 著|岩波書店
¥1,100(税込)
中世の教会音楽からモダニズムまでを、物語として一気に描く通史です。神への祈りの言葉から始まった単旋聖歌、多声音楽が花開いたルネサンス、オペラが生まれ楽器が解放されたバロック、そして芸術としての音楽が追究された古典派・ロマン派・モダニズム。作曲家と作品だけでなく、演奏法や作曲法、音楽についての考え方の変遷まで追います。「言葉を収める音の伽藍」など章題の言葉選びも読みどころです。
こんな人におすすめ
名前の羅列ではなく読み物として音楽史を味わいたい人、寝る前に少しずつ読み進めたい人、音楽の「考え方」がどう変わったのかに関心のある人に。通読の楽しさがあります。
良い点
- 物語として通読できる読みやすさ
- 演奏法や作曲法にも触れる
- 章題と文体が印象的で記憶に残る
気になる点
- 詳細な年表や図版は少ない
- 作曲家の細かい伝記は省略気味
- 入門書としては少し骨がある
出版社
岩波書店
発売日
2019年03月21日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『ものがたり』って付いてるだけで読めそうな気がします。でも岩波書店なので、中身はちゃんとしてそうですね。
佐藤メバル
そこが絶妙なバランスなんだ。第一章は「音楽は聖句の乗りもの」、中世のグレゴリオ聖歌から始まる。音楽が祈りの言葉を運ぶ乗り物だった時代、つまり音楽の役割そのものが変わっていく様子を、物語の文体で追わせてくれる。
橘ナナミ
『言葉を収める音の伽藍』って章題、かっこいい……。ルネサンスの多声音楽のことですよね。
佐藤メバル
そう、音で建てた大聖堂というイメージだね。この本は作曲家と作品の列挙で終わらせず、演奏法や作曲法、音楽についての考え方がどう変わったかまで踏み込む。
古典派の章では後世の手本になった器楽形式の話も出てくる。読むほどに「なぜ今こうなっているのか」が腑に落ちていくよ。
解きながら楽しむ 大人の西洋音楽史
久保田慶一 著|くもん出版
¥1,650(税込)
中世から近・現代までの流れを、問題を解きながらたどる大人向けのワークブックです。各時代の特徴や作曲家の人生・代表作を丁寧な解説で学べ、演奏音源へのリンク付きなので鑑賞の習慣づけにもなります。日付を記入して学習の記録を残せる仕組みがあり、毎日少しずつ取り組めるのが特徴。ヴィヴァルディ、バッハ、モーツァルト、ショパン、マーラー、ガーシュイン、バーンスタインまで、作曲家ごとに区切って進められます。
こんな人におすすめ
本を読むだけでは頭に入らない自覚がある人、朝や寝る前の短い時間で学習を習慣にしたい人、教養として音楽史をもう一度学び直したい大人に。
良い点
- 問題を解きながら能動的に学べる
- 日付記入で学習記録を残せる
- 音源リンクで鑑賞習慣がつく
気になる点
- 書き込み前提で中古には不向き
- 解説の分量はコンパクト
- 問題形式が合わない人もいる
出版社
くもん出版
発売日
2026年01月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ワークブックって、大人向けでもあるんですね。子ども向けのドリルしか想像してなかったです。
佐藤メバル
これがなかなかよくできていてね。中世から現代までの流れを、問題を解きながら進める。手を動かして読むと記憶の定着がまるで違うんだよ。
日付を書いて記録を残せるから、三日坊主の人にも優しい。
橘ナナミ
作曲家ごとにページが分かれてるのが助かります。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン……って一人ずつ区切られてると、今日はここまでって決めやすい。
佐藤メバル
そう、区切りが明確なのが続けやすさの秘訣だね。演奏音源へのリンクが付いているから、解説を読んだらすぐ聴ける。
ヴィヴァルディからバーンスタインまで並んでいるので、近現代のガーシュインやバーンスタインまで視野に入るのも嬉しいところです。
すぐわかる! 4コマピアノ音楽史 ピアノの誕生〜古典派編
工藤啓子 著|ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
¥2,420(税込)
ピアノの歴史や仕組みを、作曲家の変遷や名曲の成り立ちと一緒に解説する一冊。4コマ漫画とわかりやすい解説で、作曲家とピアノと音楽史が一気につながります。クラヴィコード、チェンバロからピアノ誕生へ、バッハのダメ出しによる改良、ツンペの突き上げ式とシュタインのはね上げ式、スクエアピアノの流行、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンの愛用楽器まで。楽器の進化が音楽を変えたことが見えてきます。
こんな人におすすめ
ピアノを弾く人・習っている人、発表会の前後に音楽史も知りたい人、楽器としてのピアノそのものに興味がある人に。鍵盤楽器の話として読んでも面白い一冊です。
良い点
- 4コマで取っつきやすい
- 楽器の仕組みと歴史が同時に分かる
- 監修が古楽の専門家で信頼できる
気になる点
- 古典派編までで範囲が限られる
- 漫画の分量は多くない
- 作曲技法の話は少なめ
出版社
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日
2024年08月28日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
4コマって……そんなに軽くていいんですか? ピアノの歴史って真面目な話ですよね。
佐藤メバル
軽く見えるけど、監修は古楽の第一人者の小倉貴久子さん。ツンペの突き上げ式、シュタインのはね上げ式といったアクションの違いまで、4コマと解説で噛み砕いてくれる。
楽器の仕組みが音色を決めるという当たり前を、ここで初めて腹に落とす人も多いんだよ。
橘ナナミ
バッハがピアノにダメ出しして改良された、ってエピソードが気になります。大作曲家がダメ出しするんですね……。
佐藤メバル
そういう現場の話が面白いところ。ハイドンが3種の鍵盤楽器の生き証人だったとか、モーツァルトは軽やかな響きのヴァルターのピアノとともに生きたとか、作曲家と楽器の相性まで見えてくる。
ピアノを弾く人なら、自分の楽器の来歴として読める一冊です。
西洋音楽史
岡田暁生 著|中央公論新社
¥990(税込)
18世紀後半から20世紀前半の西洋音楽史を、芸術音楽と娯楽音楽が分裂していくプロセスとして描く一冊。「クラシック音楽」という呼び名そのものを問い直し、その前史である中世・ルネサンス・バロックで何が用意されたのか、そして「クラシック後」に何が変質したのかまで大胆に位置づけます。音楽史という大河を一望のもとに眺めわたす、概念から入るタイプの通史で、読み物としても切れ味があります。
こんな人におすすめ
「クラシックって何なのか」という根本を考えたい人、音楽と社会の関係に関心のある読書家、通史を一度は俯瞰しておきたい人に。厚さより切れ味を求める人向け。
良い点
- クラシック概念を根底から問う
- 前史とその後まで射程に入れる
- 文庫で手頃に読める
気になる点
- 作曲家の網羅的な解説はない
- 知識ゼロだと少し難しい
- 図版や年表は付いていない
出版社
中央公論新社
発売日
2005年10月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これ、新書なんですね。音楽史の本って大判の図鑑か、教科書みたいな厚い本ばかりだと思ってました。
佐藤メバル
この本は厚さより切れ味で選ばれている。18世紀後半から20世紀前半にかけて、芸術音楽と娯楽音楽が分かれていく、そのプロセスこそが「クラシック音楽」の正体だ、という見取り図を提示してくれる。
ジャンルができていく過程を描く音楽史なんだ。
橘ナナミ
中世やルネサンスで何が用意されたか、まで入ってるのは嬉しいです。いきなり古典派から始まると置いていかれるので。
佐藤メバル
そう、その前史と「クラシック後」まで入っているのがポイント。ベートーヴェンやショパンの話も当然出てくるけれど、それは大河の一部として位置づけられる。
音楽史を一望したいとき、最初に手に取るのに向いている一冊だよ。
図解 日本音楽史
田中健次 著|東京堂出版
¥3,850(税込)
雅楽・声明・能楽・琵琶・尺八・箏・三味線・民謡・沖縄音楽・近代音楽まで、日本音楽の全貌を総合的に図解したハンドブックです。邦楽の理解に必要な事項を、見開き2頁に解説と図表で整理。増補改訂では沖縄音楽と近代音楽に新たに章が設けられました。楽器の構造と用法を扱う章もあり、調べながら読める実用性が持ち味。入門書としても資料としても使えます。
こんな人におすすめ
邦楽に興味を持ち始めた人、三味線・箏・尺八などを習っている人、学校や地域行事で日本音楽を扱う人、用語を手元で確認したい人に。
良い点
- 見開き完結で調べやすい
- 沖縄音楽・近代音楽の章を増補
- 楽器の構造まで図解されている
気になる点
- 価格はやや高め
- 通読向きの語りではない
- 専門用語はそれなりに多い
出版社
東京堂出版
発売日
2018年09月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
日本音楽って範囲が広すぎて、どこから手を付ければいいのか分からなかったんです。雅楽も民謡も、同じ本に入るんですね。
佐藤メバル
それを見開き2頁で整理してくれるのがこの本の強み。雅楽、声明、能楽、琵琶楽、尺八、筝曲、三味線楽、民謡、そして沖縄音楽と近代音楽。
知りたい項目から開けるハンドブックなんだよ。
橘ナナミ
三味線楽が地歌・浄瑠璃・歌舞伎・近代歌曲と4章に分かれてるの、すごく助かります。一口に三味線って言っても全然違うんですね。
佐藤メバル
そう、そこが日本音楽の面白さであり難しさ。増補改訂で沖縄音楽と近代音楽に章が立てられたのも大きい。楽器の構造と用法の章もあるから、実際に音を出す人にも役立つ。困ったときにそばに置いておく一冊だよ。
ものがたり日本音楽史
徳丸吉彦 著|岩波書店
¥1,034(税込)
縄文の鈴や石の笛から現代邦楽まで、日本の音楽の歴史をコンパクトに描く通史です。仏教音楽の伝来、雅楽・能楽・歌舞伎・文楽の誕生と変化、文明開化による西洋音楽の導入。政治や宗教と深く結びついた音楽の歩みをたどると、日本の歴史の流れも見えてきます。琉球の音楽やアイヌ音楽にも章が割かれ、音楽から日本史を眺め直す面白さがあります。
こんな人におすすめ
日本史と音楽を一緒に味わいたい人、岩波新書で通史を読みたい人、雅楽や能楽の背景を知りたい人、本土以外の音楽にも視野を広げたい人に。
良い点
- 縄文から現代までの射程の長さ
- 琉球・アイヌ音楽も扱う
- 新書で手頃に読める
気になる点
- 細かい譜例や図版は少ない
- 個々のジャンルの深掘りは控えめ
- 前知識なしだと用語が多い
出版社
岩波書店
発売日
2019年12月22日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
縄文時代の楽器から始まるんですか! てっきり雅楽より後の話かと……。
佐藤メバル
そこがこの本の面白さでね。鈴や石の笛といった素朴な楽器から始まり、仏教音楽の伝来、雅楽、能楽、歌舞伎、文楽、そして文明開化の西洋音楽導入へ。
音楽の歴史をたどると日本の歴史が見えるという構成になっている。
橘ナナミ
琉球の音楽とアイヌ音楽の章があるのも意外でした。本土だけの話じゃないんですね。
佐藤メバル
そう、そこまで視野に入れているから「日本音楽史」としての厚みが出る。しかもコンパクト。政治や宗教と音楽がどう結びついてきたかを追うと、教科書の日本史が少し違って見えてくるよ。
よくわかる日本音楽基礎講座〜雅楽から民謡まで 増補・改訂版
福井昭史 著|音楽之友社
¥2,640(税込)
小・中学校の学習指導要領で必須とされる「我が国の音楽」を指導するために必要な基礎事項を網羅した音楽指導ブックです。雅楽・能楽・三味線音楽などを体系的に分類・整理し、入門書としても用語や音階、楽器を調べる資料としても使えます。序章の分類、各ジャンルの「見どころ・ききどころ」、リズム・楽式・音階といった特質の解説、学校教育との関わりまで。教える側の視点が通底しています。
こんな人におすすめ
音楽科教員や教員志望の学生、大学で日本音楽概論を学ぶ人、子どもの音楽教育に関わる人、伝統音楽の用語を手元で確認したい人に。
良い点
- 分類と整理が体系的で分かりやすい
- 見どころ・ききどころが具体的
- 資料として振り返りやすい
気になる点
- 純粋な読み物としては硬め
- 図版は控えめ
- 指導者向けの色が濃い
出版社
音楽之友社
発売日
2020年03月23日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『基礎講座』って書いてあるので、一般の愛好家が読んでも大丈夫なんでしょうか?
佐藤メバル
大丈夫。もともと学校で日本音楽を教える人のために作られた本だけど、雅楽から民謡までの分類が体系的で、用語や音階、楽器をいつでも振り返れる。
教える前提で整理されているぶん、分からない側にも親切なんだよ。
橘ナナミ
『見どころ・ききどころ』で具体的な曲を挙げてくれているのがありがたいです。《越天楽》とか《六段の調》とか、名前は聞いたことがある曲ばかりで。
佐藤メバル
そこから入るのがいい。リズムや楽式、音階といった特質の章では、拍節的でないリズムが多いことや、次第に速くなるテンポなど、西洋音楽と違う感覚も説明される。
増補改訂で新しい指導要領にも対応しているので、教員志望の人には特に頼りになる一冊です。
図解 近現代日本音楽史
田中健次 著|東京堂出版
¥3,520(税込)
西洋音楽の影響で発展した日本の近代音楽を、子どもの歌・軍歌・はやり唄・学生歌という4ジャンルに分けて俯瞰する一冊です。音楽取調掛にはじまる音楽教育の礎、「君が代」の国歌創造譚、検定唱歌集、鉄道唱歌の功罪、戦争が作る軍歌、自由民権運動と壮士節、演歌屋、寮歌と応援歌まで。図解と年表で、学校で習わなかった音楽史が見えてきます。
こんな人におすすめ
唱歌や軍歌、寮歌の背景を知りたい人、近代日本史と音楽を重ねて学びたい人、昭和の歌謡に関心のある人、副読本として近代史を掘りたい人に。
良い点
- 4ジャンルで切り口が明快
- 近代日本音楽史年表付き
- 図解で流れが追いやすい
気になる点
- 取り上げる範囲が近代に限定
- 価格はやや高め
- 個々の曲の楽譜は少ない
出版社
東京堂出版
発売日
2022年01月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
軍歌とか学生歌って、音楽史の本で扱われることあるんですか? クラシックの本では見たことないです。
佐藤メバル
そこがこの本の狙いでね。子どもの歌、軍歌、はやり唄、学生歌という4ジャンルに分けて、近代日本の音楽を通して見る。
学校では教わらなかった歌の来歴が、図解と年表でどんどん繋がっていくんだよ。
橘ナナミ
『鉄道唱歌の功罪』とか、タイトルだけで気になります。唱歌が全国に広まった経緯もあったんですね。
佐藤メバル
そう。音楽取調掛から検定唱歌集へ、そして「君が代」がどう国歌になっていったか、といった話も丁寧に追う。
寮歌や応援歌が学生の自治精神と結びついていた時代の空気まで見える。近代史の副読本としても面白い一冊です。
〈裏〉日本音楽史
齋藤桂 著|春秋社(千代田区)
¥2,640(税込)
西洋化と日本らしさの確立に揺れた近代。その過程で、神話や都市伝説、怪談を持ち出して大真面目に「日本音楽とは何か」を説く音楽家や学者が現れました。非合理なのに魅惑的な言説の数々を、伝統音楽・軍歌・唱歌・民謡を題材に読み解いていく一冊です。表の音楽史では扱わない言説の裏側から、近代という時代そのものを捉え直します。
こんな人におすすめ
音楽史を斜めから眺めてみたい人、近代日本の言説やイデオロギーに関心のある人、通史を一通り読んで少し飽きてきた読み手、資料で裏を取るのが好きな人に。
良い点
- 切り口が独特で飽きない
- 伝統音楽と軍歌・唱歌を横断
- 近代の言説を資料で追う
気になる点
- 通史の代わりにはならない
- 専門的で難解な箇所がある
- 図版や譜例は少なめ
出版社
春秋社(千代田区)
発売日
2015年04月24日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『裏』って付いてる本、ちょっと怪しさもあるんですけど……でも春秋社なので真面目なんでしょうね。
佐藤メバル
真面目も真面目、大真面目だよ。西洋化と日本らしさの間で揺れた近代に、神話や都市伝説、怪談を持ち出して「日本音楽とは何か」を説いた人たちがいた。
非合理なのに魅惑的な言説を、資料で丁寧に追っていく本なんだ。
橘ナナミ
そんな大真面目に怪談を……。でも、そこで何を説こうとしていたかは気になります。
佐藤メバル
そこが見どころ。伝統音楽、軍歌、唱歌、民謡を題材に、なぜその時代の人たちが「日本らしさ」を必死に探したのかが見えてくる。
音楽史の通史を読んだあとに挟むと、ぐっと視界が広がる。通史の代わりではなく、裏口から近代を覗く一冊です。
創られた「日本の心」神話
輪島裕介 著|光文社
¥1,045(税込)
「演歌は日本の心」という言説を、膨大な資料で解体していく一冊です。明治の自由民権運動の中で現れ、当時は「歌による演説」を意味していた演歌が昭和初期に衰退。それが1960年代後半に別な文脈で復興し、やがて「真正な日本の文化」とみなされていく過程を、レコード歌謡の歴史とともに論じます。誰が、何のために「演歌」を創ったのかを問う大衆音楽史です。
こんな人におすすめ
演歌や昭和歌謡が好きで、その来歴を知りたい人、日本の大衆文化史に関心のある人、当たり前を疑う視点を持ちたい人、文庫でがっつり読みたい人に。
良い点
- 資料と具体例が膨大で説得力がある
- 大衆音楽史の入門にもなる
- 文庫で手頃に読める
気になる点
- 歌そのものの解説ではない
- 論証が細かく読み応えが必要
- 図版や写真は少ない
出版社
光文社
発売日
2010年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
演歌が『たかだか40年程度の歴史しかない』って……え、美空ひばりさんは演歌歌手じゃないんですか?
佐藤メバル
その問いがまさにこの本の出発点。明治の自由民権運動の中で生まれた「演歌」は、当時は歌による演説という意味だった。
それが昭和初期にいったん衰退して、1960年代後半に別な文脈で復興していく。誰が、どういう目的で創ったのかを資料で追うんだ。
橘ナナミ
なるほど……。『日本の心』って言われると疑う余地もない気がしてましたけど、けっこう新しいものなんですね。
佐藤メバル
そう、そこを丁寧に論じる。レコード歌謡の歴史を三部に分けて、五木寛之の「艶歌」の観念化や、昭和三〇年代の流しの話も出てくる。
演歌が好きな人ほど、読むと聴き方が変わると思うよ。
入門 ポピュラー音楽の文化史
輪島裕介 著|ミネルヴァ書房
¥3,080(税込)
スターとその楽曲、あるいはアメリカの影響からの歴史記述ではなく、もっと多様にポピュラー音楽の歴史を読み直すための視点と方法を扱う入門書です。「越境」「現場」「ジャンル」の三部構成で、《支那の夜》が太平洋を渡った話、YMOとゲーム音楽、戦後韓国の倭色歌謡規制とトロットの誕生、世界歌謡祭とニューミュージック、カラオケ喫茶、シティ・ポップのジャンル史、日本のタンゴ文化史まで。歴史の書き方そのものを学べます。
こんな人におすすめ
ポピュラー音楽を研究・考察したい人、シティ・ポップや韓国歌謡の文脈を知りたい人、大学のゼミやレポートに取り組む学生、スターの伝記に飽きた読み手に。
良い点
- 視点と方法から学べる構成
- 日韓・環太平洋まで射程が広い
- 各章に注と索引があり研究向き
気になる点
- 価格は高め
- 読み物としては硬質
- スターの伝記は扱わない
出版社
ミネルヴァ書房
発売日
2024年08月26日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ポピュラー音楽の本なのに、『スターの歴史ではない』って宣言してるのが逆に気になります。
佐藤メバル
そこが学術的というか、この本の誠実さなんだ。誰が売れたかではなく、どう歴史を書き直すかを扱う。
越境、現場、ジャンルの三部で、たとえば《支那の夜》が海を渡って「スキヤキ」になっていく過程を追う。
橘ナナミ
YMOとゲーム音楽、カラオケ喫茶、シティ・ポップのジャンル史……テーマがばらばらに見えて、実は全部つながってるんですか?
佐藤メバル
つながっているんだよ。日本のポピュラー音楽が、アメリカやアジアとの交渉の中でどう形作られてきたか。日本のタンゴ文化史なんて章もある。
スターの物語に飽きた人が、音楽を社会と結びつけて考え直すための入門です。
アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで
大和田俊之 著|講談社
¥2,310(税込)
ミンストレル・ショウからブルース、ジャズ、ロック、ファンク、ヒップホップ、そしてラテン化まで、アメリカ音楽の歴史を描く論考です。鍵になるのは「他者を擬装する」という欲望。黒と白の弁証法、憂鬱の正統性、ティンパン・アレーの規格の創造性、スウィングの速度、ロックンロールと若者の誕生、サンプリングとポストモダニズム。白人/黒人という枠組みそのものを乗り越えようとします。サントリー学芸賞を受賞した一冊です。
こんな人におすすめ
ロックやヒップホップの「なぜ」を掘りたい人、人種と文化の関係を考えたい人、音楽を社会史として読みたい読書家、参考文献を辿って深掘りしたい人に。
良い点
- ジャンル横断の射程が広い
- 歴史記述の枠組みを問い直す
- 参考文献紹介が充実
気になる点
- 学術書で読み応えが必要
- 価格は高め
- 楽曲の細かい分析は限定的
出版社
講談社
発売日
2011年04月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ロックもヒップホップも同じ本で扱うんですね。ジャンルが違いすぎる気がするんですけど……。
佐藤メバル
そこをつなぐ鍵が「他者を擬装する欲望」なんだ。ミンストレル・ショウから始まって、ブルース、ジャズ、ロック、ソウル、ヒップホップ、そしてラテン化まで。
白人が黒人を演じるという欲望が、アメリカ音楽の通奏低音として流れている。
橘ナナミ
擬装……。そんな視点で聴いたことなかったです。サントリー学芸賞を取った本でもあるんですね。
佐藤メバル
そう、学術書として評価された一冊。ティンパン・アレーの規格の創造性、スウィングの速度、ロックンロールと若者の誕生、サンプリングとポストモダニズム。
音楽を社会と文化のダイナミズムの中でとらえ直す。ロックが好きな人ほど読む価値があるよ。
西洋音楽史大図鑑
スティーヴ・コリッソン 著|ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
¥4,840(税込)
豊富な図版とイラストで、作曲家の人生、作曲技法の変遷、作品の成り立ちを解説する大図鑑です。「はじめて真のオペラを書いたのは誰か」「記譜法のシステムの起源はどこか」といった疑問に答える形で、初期の単旋聖歌の誕生から現代のミニマリズムまでを追います。イギリスのDorling Kindersleyの「BIG IDEAS SIMPLY EXPLAINED」シリーズの一冊で、見開きごとにテーマが完結する誌面が読みやすさの源です。
こんな人におすすめ
眺めているだけで音楽史が頭に入る本が欲しい人、図鑑や事典が好きな人、音楽好きへの贈り物を探している人、手元に置いて長く使いたい人に。
良い点
- 図版とイラストが圧倒的に豊富
- 疑問形式で引き込まれる
- 現代までカバーする射程
気になる点
- 価格はかなり高め
- 持ち歩きには重い
- 文章量は多くない
出版社
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日
2021年12月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
うわ、これ大きい……。でも図鑑って、机に置いてパラパラめくるだけで楽しいですよね。開いた瞬間に好きになりました。
佐藤メバル
その使い方でいいんだよ。最初の音楽、ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派、ナショナリズム、近代、現代と、時代ごとに見開きでテーマが完結する。
疑問から入れる構成だから、辞書のように引くことも、絵本のように眺めることもできる。
橘ナナミ
『はじめて真のオペラを書いたのは誰?』『作曲家はどうやって交響曲を書くの?』って問いが並んでるの、つい答えを知りたくなります。
佐藤メバル
そこがうまいんだよね。しかもイギリスのDKのシリーズで、図版の質が高い。単旋聖歌から現代のミニマリズムまで追うから、最初の一冊としても、最後に棚に置いておく一冊としても使える。
価格は張るけれど、その分の情報量はあるよ。
世界史 × 音楽史 知っておきたい! 近代ヨーロッパ史とクラシック音楽
広瀬大介 著|株式会社音楽之友社
¥2,970(税込)
古典派の時代から20世紀半ばまでのクラシック音楽を、同時期のヨーロッパの政治・社会・思想と重ねて読み解く一冊です。《魔笛》の鍵は啓蒙思想か、《冬の旅》は自由主義への渇望か、《スラヴ舞曲》は民族融和策から生まれたのか、ヴェルディは統一イタリアの英雄だったのか、ワーグナーが加担した革命とは何か。巻末には音楽史・世界史・日本史を対比させた総合年表も付きます。名曲の背景にある「ヒミツ」を解き明かす構成です。
こんな人におすすめ
歴史ものが好きなクラシック愛好家、オペラや歌曲の背景を知りたい人、世界史と音楽をまとめて学び直したい人、図書館の調べ物に使いたい人に。
良い点
- 政治史と作品を結ぶ視点が明快
- 音楽史・世界史・日本史の総合年表付き
- 著者は音楽学者で歴史にも通じる
気になる点
- 古典派以降に範囲が限られる
- 価格はやや高め
- 楽曲分析は控えめ
出版社
株式会社音楽之友社
発売日
2025年02月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
《魔笛》の鍵が啓蒙思想って……オペラってそういうふうに読むものなんですね。曲だけ聴いてたら絶対気づかないです。
佐藤メバル
だから面白いんだよ。貴族社会から市民社会へという転換の中で、《フィガロの結婚》がなぜ問題作だったのか、ハプスブルク帝国の検閲が作曲家をどう苦しめたのか。
音楽と政治は切っても切れないということが、具体的な作品で見えてくる。
橘ナナミ
ショパンが祖国ポーランドに寄せる想いとか、メンデルスゾーンがユダヤ教とキリスト教のはざまで揺れた話も気になります。
佐藤メバル
そういう人の物語として読めるのが強みだね。普仏戦争以降のフランスとドイツ、二つの世界大戦と作曲家まで続く。
巻末の音楽史・世界史・日本史を並べた年表は、時代の姿を立体的に見せてくれる。調べ物にも向いているよ。
革命と戦争のクラシック音楽史
片山杜秀 著|NHK出版
¥880(税込)
「クラシック音楽は第一級の歴史史料だ」という視点で、革命と戦争から音楽史をながめる一冊です。ハプスブルク軍国主義とモーツァルト、フランス革命とベルリオーズ、反革命とハイドン、ナポレオン戦争とベートーヴェン。トルコ軍楽がウィーンを包囲した歴史、ギロチンとチェンバロ、軍歌としての「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」など、お上品な芸術の不都合な真実が次々に立ち上がります。博覧強記の著者による新教養。
こんな人におすすめ
歴史の裏側から音楽を眺めたい人、モーツァルトやベートーヴェンの時代背景を掘りたい人、新書で気軽に教養を広げたい人、世界史の知識を音楽で確かめたい人に。
良い点
- 切り口が大胆で惹き込まれる
- 年表付きで時代が追える
- 新書で手頃に読める
気になる点
- 古典派以前の扱いは薄い
- 著者の持論が強めに出る
- 網羅的な通史ではない
出版社
NHK出版
発売日
2019年09月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『私たちが《四季》を聴けるのはムッソリーニのおかげ?』って……この一文だけでちょっと怖いんですけど、どういうことですか。
佐藤メバル
その問いの立て方がこの本の持ち味でね。戦争と暴力が音楽を進化させてきたという「不都合な真実」を、大胆に料理していく。
音楽史はナイーヴではありえないというのが著者の立場なんだ。
橘ナナミ
ハプスブルク軍国主義とモーツァルト、反革命とハイドン……章の並びがもう物騒で、逆に読みたくなります。
佐藤メバル
そう、モーツァルトのあの軽やかな曲が軍楽と結びついていた話、フランス革命がベルリオーズの《幻想交響曲》を生んだ話、ナポレオン戦争とベートーヴェンの関係まで、具体的な作品で語られる。
巻末には関連年表も付いている。歴史が好きな人ほど面白がれる一冊だよ。
西洋音楽史を聴く バロック・クラシック・ロマン派の本質
前川誠郎 著|講談社
¥880(税込)
美術史を専門としながら、生涯をかけて「聴く」ことに精力を傾けた著者による音楽史論です。バロックからクラシックへ、クラシックからロマン派へ、そして諸国の音楽、クラシックの終焉、二十世紀の音楽まで。時代区分の特徴と、それぞれの音楽が何を目指したのかを、熟成した愛と造詣で綴ります。音楽史を頭でなく耳で捉える、そんな姿勢が全篇を貫く味わい深い一冊です。
こんな人におすすめ
CDを聴きながら音楽史を味わいたい人、評論やエッセイとしての音楽史が好きな人、時代区分の意味を考えたい人、静かに読書を楽しみたい人に。
良い点
- 「聴く」視点が一貫している
- 文章が成熟していて読み味が良い
- 文庫で手頃に読める
気になる点
- 図表や年表は付かない
- 網羅的な人名解説はない
- 著者の好みが濃く出る
出版社
講談社
発売日
2019年03月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
著者の方は美術史が専門なのに、音楽の本を書いてるんですね。しかも『聴く』ことが生涯のテーマだったと。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の面白さ。バロック、クラシック、ロマン派、後期ロマン派、国民楽派、二十世紀、時代区分の特徴を、実際に耳で確かめてきた人の言葉で語る。分析より体験が先に来るんだ。
橘ナナミ
第一章が『バロックからクラシックへ』で、第四章が『クラシックからバロックへ』って逆になってるのも気になります。行って戻るんですか?
佐藤メバル
そこが味わいどころでね。古典派を基準に置いて、そこから見直すとバロックの姿が変わって見える。時代を一方向に進むだけの歴史ではなく、聴き手の側から捉え直す音楽史なんだ。
CDを片手に読むと、いっそう深く響くよ。
音楽史を学ぶ増補改訂版
久保田慶一 著|教育芸術社
¥990(税込)
古代ギリシャ・ローマから21世紀までを、時代と社会、音楽史の流れ、トピック、コラム、聴いておきたい名曲、用語解説という流れで学ぶ教科書です。ピュタゴラスの音程の発見、グレゴリオ聖歌、ノートルダム楽派、ルネサンスの楽派、オペラの誕生、古典派ソナタ、ロマン派、12音技法、コンピュータ音楽、そして明治・大正・昭和・平成の日本の動きまで。膨大な項目を一冊に畳み込んだ決定版です。
こんな人におすすめ
音楽史を体系的に一から学びたい人、授業や試験の対策が必要な学生、用語を辞書的に引きたい人、独学の地図がほしい人に。長く使える基本書です。
良い点
- 古代から21世紀まで網羅
- 名曲・用語の解説が充実
- 日本の近代以降も収録
気になる点
- 教科書的な硬さがある
- 図版は多くない
- 通読には根気が必要
出版社
教育芸術社
発売日
2024年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これ、目次の項目数がすごいことになってますね……。古代ギリシャから初音ミクまで一冊ですか。
佐藤メバル
そう、そこが増補改訂版の凄みでね。ピュタゴラスの音程の発見から、12音技法、電子音楽、サウンドスケープ、ネット配信の時代まで並ぶ。
学ぶ側の地図として徹底的に作られているんだ。
橘ナナミ
明治・大正・昭和・平成まで章が続くのが嬉しいです。日本で洋楽がどう入ってきたかも一緒に追えるんですね。
佐藤メバル
滝廉太郎や山田耕筰、戦時体制下の音楽、武満徹や團伊玖磨まで入っている。各時代に「聴いておきたい名曲」と「知っておきたい音楽用語」が付くから、読みながら知識を固定できる。
教科書としても独学の地図としても使える一冊だよ。
図表とともに学ぶ 西洋音楽史概説
村田千尋 著|春秋社
¥3,520(税込)
西洋音楽史の全体像を、8つの時代と8つの観点で整理し、宗教音楽・世俗音楽・オペラ・器楽の4つの軸で通時的に概観する一冊です。音楽の基本構造、楽譜、ジャンル、表現内容、音楽の場、担い手、演奏と聴取、民族性という観点から、音楽文化・芸術音楽の成り立ちが見えてきます。多くの図表とともに歴史の流れをつかめる構成で、終章では歴史相対主義にも触れます。
こんな人におすすめ
音楽史を図表で整理して理解したい人、授業のテキストとして使いたい学生、宗教音楽やオペラなどジャンル史から全体を組み立てたい人に。復習にも向きます。
良い点
- 8時代×8観点の整理が明快
- 4ジャンルの軸で見通しが良い
- 図表が豊富で復習しやすい
気になる点
- 価格は高め
- 読み物としての軽さはない
- 用語の予備知識が要る場面も
出版社
春秋社
発売日
2026年02月03日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
8つの時代と8つの観点、4つの軸……数字で整理されると、なんだか安心します。音楽史って範囲が広すぎて、いつも迷子になるので。
佐藤メバル
そこを地図にしてくれるのがこの本の強み。時代を縦に、観点を横に置いて、宗教音楽・世俗音楽・オペラ・器楽という4つのジャンル史で通時的に概観する。
同じ時代を別の角度から何度も見るから、理解が積み上がるんだ。
橘ナナミ
『音楽の場』や『担い手』って観点も入るんですね。誰がどこで演奏していたか、まで考えると像が変わってきそうです。
佐藤メバル
そう、楽譜や表現内容、民族性まで観点に入っている。終章では歴史相対主義、つまり時代ごとの価値観で歴史を見るという話まで踏み込む。
図表が多いから、読み終えたあとの復習にも向いているよ。
西洋音楽史講義
岡田暁生 著|KADOKAWA
¥1,210(税込)
ドレミファ音階、拍子、ハーモニー。今日の世界標準となった音楽語法のほとんどが西洋音楽史の中で生まれた、という視点から語る全15講です。グレゴリオ聖歌からオペラの誕生、バロック、ウィーン古典派、ロマン派、20世紀のポピュラー音楽まで。「古楽」「クラシック」「現代音楽」という三つの画期に着目し、千年の変遷を通史として描きます。好みや感性で語られがちな音楽を分析的・具体的に聴くヒントに満ちています。
こんな人におすすめ
音楽をなんとなくではなく構造から理解したい人、岡田暁生の『西洋音楽史』を読んでさらに進みたい人、ポピュラー音楽との接続に関心がある人に。
良い点
- 全15講でリズムよく学べる
- 三つの画期という切り口が明快
- 文庫で手頃に読める
気になる点
- 人名の網羅的な解説はない
- 予備知識なしだと難しい箇所も
- 図版や譜例は少ない
出版社
KADOKAWA
発売日
2024年08月23日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『西洋音楽史』の文庫化、という理解でいいんですか? 以前のを読んだ友達が勧めてくれて。
佐藤メバル
もとになった放送大学のテキストに加筆・修正して改題したものだね。ドレミファ音階や拍子、ハーモニーといった、今は世界標準になっている語法が、実は西洋音楽史の中で生まれた。
その過程を15講で追う。分析的に聴くための手引きなんだ。
橘ナナミ
『古楽・クラシック・現代音楽』という三つの画期に着目するのが面白いです。ただの時代順じゃないんですね。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の骨格。最後はクラシックと現代音楽とポピュラーが並ぶところまで行く。感性で語られがちな音楽を、構造から捉え直す。
歴史の見取り図を持ったうえで聴くと、同じ曲が別のものに聞こえるよ。
西洋音楽史の原風景ー国境を越え、時代を超えー
岸田文夫 著|幻冬舎
¥1,760(税込)
モンテヴェルディからベートーヴェン、ワーグナー、ドビュッシー、武満徹まで、名曲に隠された物語をひもときながら、従来の音楽史では語られない音楽の原風景をたどる一冊です。ベートーヴェンに思う、春愁淡きシューマンの和声、さすらいの調べ、音楽と自然、《トリスタンとイゾルデ》における意志と表象、ヴェルディ讃、古楽器演奏によるモーツァルトのオペラの新発見まで。旋律が生まれた背景に迫ります。
こんな人におすすめ
クラシックを長く聴いてきた愛好家、エッセイとしての音楽論を楽しみたい人、自然や思想と音楽の関係に関心のある人、愛聴盤の物語を読みたい人に。
良い点
- 書き手の実体験に基づく臨場感
- 幅広い作曲家を横断する
- 音楽と自然・思想を結ぶ視点
気になる点
- 体系的通史ではない
- 愛好家向けで予備知識が要る
- 図版や譜例はほぼない
出版社
幻冬舎
発売日
2025年10月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『忘れ得ぬステージから』『私の愛聴盤から』って章があるの、ちょっと親しみが湧きます。評論というより手記に近いんですか?
佐藤メバル
そこがこの本の体温でね。長年聴き続けてきた人が、ベートーヴェンに思いを巡らせ、シューマンの和声に春愁を感じ、《トリスタンとイゾルデ》で意志と表象を考える。
音楽が立ち上がってくる現場を書き留めているんだ。
橘ナナミ
モンテヴェルディから武満徹まで、時代も国も飛び越えてますね。武満さんが出てくるのは意外でした。
佐藤メバル
国境を越え、時代を超えるという副題どおりだよ。古楽器演奏によるモーツァルトのオペラの新発見の話もあれば、ドビュッシーやワーグナーも来る。
通史のあとに読むと、名曲の背景にあった空気が立ち上がってくる。長く聴いている人ほど沁みる一冊です。
日韓ポピュラー音楽史
金成玟 著|慶應義塾大学出版会
¥2,750(税込)
BTS、TWICE、BLACKPINK、NewJeans。世界的人気を誇るK-POPアーティストたちの活躍の裏にある、数十年にわたる日韓の歴史を描く一冊です。歌謡曲から韓国演歌、J-POP、K-POPの時代まで、日本と韓国がいかに自己と他者のイメージを構築し、欲望し合ったかを追います。倭色歌謡の規制とトロットの誕生、世界歌謡祭、BoAから始まるK-POP史、シティ・ポップ・ブームまで。もうひとつの日韓戦後史です。
こんな人におすすめ
K-POPや韓国ドラマが好きで背景を知りたい人、日韓の文化交流に関心のある人、ポピュラー音楽を歴史として読みたい人、注や索引を使って深掘りしたい人に。
良い点
- アーティスト名が豊富で具体的
- 政治史と音楽史を重ねる構成
- 注と索引が充実している
気になる点
- 価格はやや高め
- 学術書で読み応えが必要
- クラシックの話は出てこない
出版社
慶應義塾大学出版会
発売日
2024年01月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
BTSやTWICEの名前が出てくる音楽史って初めて見ました。K-POPが好きな友達に教えたら喜びそうです。
佐藤メバル
その友達にこそ読んでほしい本だね。歌謡曲の時代、J-POPの時代、K-POPの時代と三部に分けて、李美子、李成愛、チョー・ヨンピル、BoA、少女時代、TWICE、BTSまで辿る。
音楽を通して日韓がどう向き合ってきたかが見えてくる。
橘ナナミ
『倭色歌謡』の規制って初めて聞きました。音楽が政治に揺さぶられていたんですね……。
佐藤メバル
そう遠い話じゃないんだよ。倭色歌謡の規制とトロットの誕生、世界歌謡祭とニューミュージック、渋谷系と弘大の小さな日韓、シティ・ポップ・ブームまで続く。
アーティストの名前を追いながら、もうひとつの戦後史として読める。ポピュラー音楽を歴史として読む醍醐味がある一冊です。
「わかりやすい」の限界と、挫折しない三段ロードマップ
橘ナナミ
「わかりやすい本」って、いいことしかない気がします。落とし穴はありますか?
佐藤メバル
いい質問だね。はっきり言うと、わかりやすさと網羅性はトレードオフなんだ。ページ数を絞って物語として読ませる本は、どうしても省略する時代や作曲家が出る。親しみやすい入門書は19世紀のロマン派が厚くて、中世やルネサンスはわずか数ページ、ということも珍しくない。逆に全体をまんべんなく扱う本は、情報量が多いぶん最初から通読するには向かない。「わかりやすい本で骨格をつかむ→網羅的な本で穴を埋める」この順番が正解だよ。
橘ナナミ
では、具体的な順番を教えてください。
佐藤メバル
一段目は「曲と出会う」。『すぐわかる! 4コマピアノ音楽史』でピアノと作曲家のつながりをつかむ、あるいは『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』で歴史の流れと一緒に曲を聴く。二段目は「流れをつなぐ」。『つながりと流れがよくわかる 西洋音楽の歴史』か『ものがたり西洋音楽史』で、中世から現代までを一本の線にする。ここで初めて「点」が「線」になる。三段目は「面にひらく」——『世界史 × 音楽史』で政治や社会と重ね、『西洋音楽史講義』で「古楽・クラシック・現代音楽」という三つの画期から見直す。ここまで来ると、音楽史は暗記ではなく構造として見えてくる。
橘ナナミ
点・線・面……なんだか図形みたいですね。
佐藤メバル
そう、まさにその感覚。あと、名著が品薄で手に入らないときは、同じ著者の別バージョンを探すのが定石だ。久保田慶一の『はじめての音楽史』と『音楽史を学ぶ』は役割が近く、片方が見つからなければもう片方で代用がきく。図書館の相互貸借も、書店員時代に何度も使わせてもらったよ。
クラシック偏重をやめる——ジャズ・ポピュラー・邦楽・ゲーム音楽へ
橘ナナミ
音楽史というとクラシックのイメージですが、ほかのジャンルはどうなんですか?
佐藤メバル
ここが今回いちばん差がつくところだね。日本の伝統音楽なら『図解 日本音楽史』が雅楽から沖縄音楽・近代音楽までを図解し、『ものがたり日本音楽史』は縄文の楽器から現代邦楽までをコンパクトに通す。どちらも「日本音楽史」と聞いて身構える人にこそ勧めたい。近代の混乱を描くなら『〈裏〉日本音楽史』——西洋化と「日本らしさ」の確立に揺れた時代に、神話や怪談まで持ち出して「日本音楽とは何か」を説いた言説をたどる本で、読み物としてかなり刺激的だよ。
橘ナナミ
ポピュラーはどうでしょう?
佐藤メバル
『アメリカ音楽史』は外せない。ミンストレル・ショウからヒップホップまで、白人と黒人という枠組みそのものを乗り越えようとする論考で、読み応えは十分。日本の大衆音楽なら『創られた「日本の心」神話』が痛快だ。「演歌は日本の心」という通説に、「いや、それは四十年程度の新しいものだ」と切り込んでいく。K-POPまで一気に見たいなら『日韓ポピュラー音楽史』。歌謡曲とトロット、J-POPとK-POPがどう交差してきたかを描く、もうひとつの日韓戦後史だね。
橘ナナミ
ゲーム音楽の話も出ましたよね?
佐藤メバル
出たよ。『入門 ポピュラー音楽の文化史』には、YMOとゲーム音楽をアフロ=アジアの環太平洋的文化交渉として読む章がある。あの本はスターと楽曲の列伝ではなく、「どう歴史を読み直すか」という視点と方法を並べた本だから、シティ・ポップやタンゴまで射程に入る。クラシックの通史を一本読んだあとに開くと、視野がぐっと広がるよ。
読書と配信を連携させる「聴きながら読む」実践法
橘ナナミ
音楽史の本は、やっぱり音と一緒じゃないともったいないですか?
佐藤メバル
語弊がある言い方だけど、音があると理解の速度が変わるのは確かだね。やり方は簡単。読む前に、章の冒頭に挙がっている作曲家を配信サービスで検索してプレイリストを作る。読書中に「この曲が分からない」と思ったらすぐ再生する。『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』はQRコードで聴きどころから再生できる作りだし、『大人の音楽史入門』は有名曲を収めた参考音源CDが付く。『解きながら楽しむ 大人の西洋音楽史』は音源リンク付きのワークブック形式だから、鑑賞の習慣づけにも向いている。
橘ナナミ
逆に、音源がない本はどうすればいいですか?
佐藤メバル
書名や作曲家名で検索すれば、たいてい配信で見つかる。コツは「全部聴こうとしない」こと。一曲、主題の30秒だけでもいい。音楽史の本は、聴いたことのある曲がひとつ増えるたびに、急に面白くなるからね。
よくある質問
楽譜が読めなくても音楽史の本は読めますか?
橘ナナミ
楽譜が読めなくても音楽史の本は読めますかについて教えてください。
佐藤メバル
読めます。音楽史の入門書は、譜面を追うのではなく「その時代に何が起きて、どんな音が生まれたか」を言葉で説明する作りがほとんどです。『ものがたり西洋音楽史』や『ものがたり日本音楽史』のように、社会の変化と音楽の関係を語り口で追う本なら譜面の知識は不要ですし、音源付きの本を使えば耳から確かめられます。楽典の知識は後から足せば十分です。
最初に読むべき一冊はどれですか?
橘ナナミ
最初に読むべき一冊はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
「作曲家の名前を覚えたい」なら『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』、とにかくハードルを下げたいなら『すぐわかる! 4コマピアノ音楽史 ピアノの誕生〜古典派編』が入りやすいです。逆に、いきなり全体像を一本の線でつかみたい人には『つながりと流れがよくわかる 西洋音楽の歴史』が向いています。最初の一冊は「読み切れるかどうか」で選ぶのが正解で、難易度の高い本を途中で捨てるより、薄い本を一冊終えるほうが次につながります。
音楽史と音楽理論はどちらを先に学ぶべきですか?
橘ナナミ
音楽史と音楽理論はどちらを先に学ぶべきですかについて教えてください。
佐藤メバル
目的次第ですが、読み物として楽しむなら音楽史が先です。なぜその和音や形式が生まれたのかという背景が分かってから理論を読むと、用語が「暗記」ではなく「理由」として入ってきます。『図表とともに学ぶ 西洋音楽史概説』のように、音楽の基本構造や楽譜の観点を章立てに組み込んだ概説書を使えば、史実と理論を行き来しながら学べます。
クラシックに詳しくなくても楽しめますか?
橘ナナミ
クラシックに詳しくなくても楽しめますかについて教えてください。
佐藤メバル
楽しめます。『大人の音楽史入門』は有名曲を収めた参考音源CD付きで、「この曲だったのか!」という発見を軸に読めるよう作られています。『西洋音楽史を聴く』のように、聴くことそのものを深く掘り下げた本もあり、曲名を知らなくても読み進められます。むしろ「知らない曲」を入口にしたほうが、発見が多くなります。
マンガや図解の入門書は入門に役立ちますか?
橘ナナミ
マンガや図解の入門書は入門に役立ちますかについて教えてください。
佐藤メバル
役立ちます。4コマ形式や図解は情報量が少ないのではなく、頭の中に「棚」を作るのが得意な形式です。『図解 日本音楽史』は見開き2頁で項目を整理しており、通読にも辞書的な参照にも使えます。ビジュアルで全体を掴んでから文字の通史に移ると、理解の定着がぐっと早くなります。
中古や図書館、Kindleでも入手できますか?
橘ナナミ
中古や図書館、Kindleでも入手できますかについて教えてください。
佐藤メバル
はい。大型の図鑑や概説書は価格が高めなので、まず図書館で借りて相性を確かめるのがおすすめです。新書・文庫はもともと手に取りやすい価格帯で、電子版なら人名検索が効くため索引がわりにも使えます。品薄のときは同じ著者の改訂版や別バージョン、図書館の相互貸借を当たるという手もあります。
作曲家の名前が覚えられないときのコツはありますか?
橘ナナミ
作曲家の名前が覚えられないときのコツはありますかについて教えてください。
佐藤メバル
名前を単独で覚えようとすると苦しくなります。「この時代の、この街で、誰が何を変えたか」というセットで覚えるのがコツです。『世界史 × 音楽史』のように政治や社会の出来事と作曲家を並べて語る本や、巻頭に西洋音楽史・世界史・日本史の対照年表を置いた本を使うと、名前が物語の登場人物として残ります。
ポピュラー音楽やジャズの歴史も学べますか?
橘ナナミ
ポピュラー音楽やジャズの歴史も学べますかについて教えてください。
佐藤メバル
学べます。『アメリカ音楽史』はミンストレル・ショウ、ブルース、ジャズ、ロック、ヒップホップまでを扱い、『入門 ポピュラー音楽の文化史』は越境・現場・ジャンルという切り口で読み直す視点を提供します。日本の大衆音楽なら『創られた「日本の心」神話』、日韓の往来まで含めるなら『日韓ポピュラー音楽史』が射程に入れてくれます。
まとめ
橘ナナミ
今日の話、けっこう目から鱗でした。音楽史の本って、年表を覚えるための道具だと思っていたんです。
佐藤メバル
それが覆ったなら、今日は成功だね。
橘ナナミ
ええ、もう。「わかりやすい本で入口を作って、網羅的な本で穴を埋めて、最後は配信で音を連れていく」——この順番なら、私でも最後まで行けそうな気がします。
佐藤メバル
それでいいと思う。最後にひとつだけ。音楽史の本は、地図に似ているんだ。最初は全体がぼんやりした一枚の地図でも、一冊読むたびに道が一本ずつ描き込まれていく。読む前に何気なく聴いていた曲が「この道の途中にあったのか」と分かった瞬間、地図は急に立体になる。25冊すべてを読む必要はないよ。自分の今いる場所から、いちばん近い道を一本選べばいい。
