音楽ジャンルの歴史を学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
「音楽 ジャンル 歴史 本」で検索したら、西洋音楽史の入門書ばかり出てきて……ロックやジャズ、邦楽の歴史はどこで学べばいいんですか?
佐藤メバル
いい質問だね。それ、書店の棚でも同じことが起きているんだ。音楽史の棚はクラシック中心で、ポピュラーは別、邦楽はまた別。読者から見れば「音楽の歴史」は一本につながっているのに、棚が分断されている。
橘ナナミ
まさに迷子です。ジャンルをまたいで読める本はないんですか?
佐藤メバル
あるよ。たとえば『歴史を知ればもっと楽しい!西洋音楽史の教科書』は、古代ギリシャから説き起こして、後半でブルース、ジャズ、ゴスペル、ロックンロール、ヒップホップ、テクノ、EDMまでを一冊でつなぐ。棚の分断を本の中で埋めてくれる。逆に一つの時代を深く掘るなら、『西洋音楽史』や『バロックの光と闇』のように焦点を絞った一冊が要る。
橘ナナミ
浅く広くか、深く狭くか。じゃあ選び方の軸を教えてください。
音楽ジャンルの歴史を学べる本の選び方
読む目的別に選ぶ
橘ナナミ
目的で分けると、どう変わりますか?
佐藤メバル
大きく四つ。通史を通覧したいなら岡田暁生の『西洋音楽史』で、「クラシック以前」と「クラシック以後」まで一望できる。様式を譜例から学びたいなら『楽譜でわかるクラシック音楽の歴史』。社会との関係から読みたいなら片山杜秀の『革命と戦争のクラシック音楽史』で、戦争や革命が音楽をどう変えたかを史料として読む。音楽を語る言葉を鍛えたいなら、美術史の視点から音楽まで論じる高階秀爾の『バロックの光と闇』が効くよ。
読者タイプ別に選ぶ
橘ナナミ
聴くだけの人と、演奏する人、作る人でも違いますか?
佐藤メバル
違う。ただ聴くのが好きな人は『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』。歴史の流れと、その時代の出来事を題材にした曲が並び、参考動画に読み込みで飛べる。演奏する人は『大人の音楽史入門』で、付属のCDを聴きながら様式の変化を耳で追える。作る・書く側なら『西洋音楽史講義』や『西洋音楽史〔新訂〕』がいい。作品がどんな考え方や社会状況の上に成立したかを考えさせる本だから、手を動かす前に効いてくる。
難易度別に選ぶ
橘ナナミ
難易度の見分け方ってありますか?
佐藤メバル
まず新書やワークブックから。『ものがたり西洋音楽史』は中世からモダニズムまで物語として読める。『解きながら楽しむ 大人の西洋音楽史』は問題を解きながら進むから挫折しにくい。中級は『つながりと流れがよくわかる 西洋音楽の歴史』で、「西洋とは何か」から入って流れを因果で追う。上級・研究者寄りは『西洋音楽史〔新訂〕』や『図表とともに学ぶ 西洋音楽史概説』。後者は八つの時代と八つの観点、四つのジャンル軸で整理する構成で、独学の地図にもなる。
対象ジャンル別に選ぶ
橘ナナミ
クラシック以外だと、どれを選べば?
佐藤メバル
ポピュラーなら『ロックの歴史』。イギリスとアメリカが互いの音楽を「洋楽」として受容し、ときに誤読しながら進化させる過程を追う。日本ジャズなら『至高の日本ジャズ全史』で、参考音源リスト付きなのがありがたい。邦楽は『図解 日本音楽史』が雅楽から沖縄音楽、近代音楽まで見開きで整理している。西洋と日本を一冊で扱う『決定版 はじめての音楽史』も貴重だ。非西洋や世界音楽の視点は、『図表とともに学ぶ 西洋音楽史概説』の「民族性と音楽」の章が手がかりになる。
形式別に選ぶ
橘ナナミ
図鑑、教科書、評論……形式もいろいろですよね。
佐藤メバル
そう。図版で掴むなら『西洋音楽史大図鑑』で、初期の音楽から現代のミニマリズムまでを図とイラストで追う。網羅的な教科書は『音楽史を学ぶ 増補改訂版』で、古代ギリシャから電子音楽、サウンドスケープ、ネット配信の時代まで届く。教会音楽に絞るなら『教会音楽史と賛美歌学』、演奏解釈に踏み込むならアーノンクールの『古楽とは何か』。評論なら、ベートーヴェンから武満徹まで名曲の背景をたどる『西洋音楽史の原風景』がある。
入手性別に選ぶ
橘ナナミ
昔の本は手に入りにくいですか?
佐藤メバル
『古楽とは何か』や『教会音楽史と賛美歌学』は刊行から年数が経っているから、書店で見つけたらラッキーだと思っていい。逆に『大人の音楽史入門』は改訂版が出て、年表も収録曲も更新されている。『決定版 はじめての音楽史』も増補改訂を経て書き下ろしコラムが加わった版だ。版で内容が変わる本は、古い版で我慢せず最新版から入るのが鉄則だよ。
音楽ジャンルの歴史を学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
音楽ジャンルの歴史を学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
西洋音楽史
岡田暁生 著|中央公論新社
¥990(税込)
「クラシック音楽とは何か」を根本から問う中公新書の名著です。一八世紀後半から二〇世紀前半の音楽史を、芸術音楽と娯楽音楽が分裂していくプロセスとして捉え、中世・ルネサンス・バロックの前史、そして「クラシック後」の変質までを一望します。作曲家の列伝ではなく、音楽という制度の変化を描く点が入門書と一線を画し、図鑑や通史を読んだ後の視点の組み替えにも効きます。
こんな人におすすめ
クラシックは好きだが「なぜこれが芸術とされるのか」と引っかかっている人、偉人の物語ではなく音楽という制度の変化を追いたい人、最初の一冊より二冊目として手元に置きたい読者。
良い点
- 音楽を制度として捉える独自の視点
- 前史と「クラシック後」まで射程
- 薄さの割に論点が鋭い
気になる点
- 作曲家ごとの細かい事実は少なめ
- 予備知識ゼロだとやや難しい
- 楽曲解説は控えめ
出版社
中央公論新社
発売日
2005年10月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「クラシック音楽史」って聞くと、バッハから始まるイメージでした。でもこの本は「クラシックって何?」から入るんですね。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。岡田さんは、いま「クラシック」と呼んでいるものが、じつは一八世紀後半から二〇世紀前半に、芸術音楽と娯楽音楽が分かれていく過程でできたものだ、と見る。
だからバッハより前の前史と、その後の変質まで視野に入る。作曲家を並べる本とは、地図の引き方がまるで違うんだ。
橘ナナミ
地図の引き方が違う、か。じゃあ図鑑で曲を知ってから読むと、景色が変わりそうですね。読む順番も工夫できそうです。
佐藤メバル
そう、図鑑で個々の作品を押さえてから読むと効きがいい。逆にこれを先に読むと、有名曲が「芸術」として扱われ始めた時代の産物に見えてくる。
書店員のころ、この本を棚の入口に置くと、厚い通史を買った人が後日戻ってきて二冊目に選ぶことが多かったんだ。
西洋音楽史大図鑑
スティーヴ・コリッソン 著|ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
¥4,840(税込)
単旋聖歌の誕生から現代のミニマリズムまでを、豊富な図版とイラストで追うDK社の「BIG IDEAS SIMPLY EXPLAINED」シリーズです。作曲家の人生、作曲技法の変遷、作品の成り立ちを、オペラや記譜法の起源といった疑問から解きほぐします。初期の音楽から現代までを一冊で見渡せる構成は、文字中心の通史と並べると強みがはっきりします。
こんな人におすすめ
家に置いて何度もめくりたい人、文字だけの通史で挫折した人、オペラや楽譜の起源など素朴な疑問から入りたい人、図版で作曲家のイメージをつかみたい読者。
良い点
- 図版が豊富で眺めているだけで楽しい
- 時代ごとの区切りが明快
- オペラや記譜法の起源も解説
気になる点
- 価格が高めで気軽には買いにくい
- 詳細な論考は少なめ
- 持ち歩きには向かない重さ
出版社
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日
2021年12月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
うわ、きれい……。これ、図鑑なんですね。クラシックの本で「図鑑」って珍しい気がします。眺めているだけで楽しいです。
佐藤メバル
そう。イギリスのDK社が「BIG IDEAS」を掲げて作るシリーズの一冊でね。特長は、疑問から入る構成なんだ。
「はじめて本格的なオペラを書いたのは誰か」「記譜法の起源はどこか」——答えを探しながら図版で追う。初期の聖歌から現代のミニマリズムまで、この範囲を図で見せる本は多くないよ。
橘ナナミ
「作曲技法の変遷」ってところも気になります。曲の作り方そのものが歴史なんだ……。学校で習った音楽史とは別物みたいです。
佐藤メバル
そうなんだ。たとえば交響曲がどう組み立てられるようになったか、という視点で並べていくと、作曲家が何を新しくしようとしたかが見える。
文字の通史と違って、目次が時代でスパッと切ってあるから、気になる章から開けるのもいい。辞書的に使うにも向いているよ。
つながりと流れがよくわかる 西洋音楽の歴史
岸本宏子 著|アルテスパブリッシング
¥2,420(税込)
「クラシックはどこから来てどこへ向かうのか」を、神の音楽から人の音楽へ、そして世界音楽の時代へ、という流れで解きほぐす一冊です。古代ギリシャの音楽観や三大宗教の影響から説き起こし、作曲家カタログではなく因果関係のストーリーで見せるのが特徴。中世の記譜法の歴史や年表まで収録され、コラムにはイラストも添えられています。
こんな人におすすめ
バッハ以前でつまずいた人、作曲家の名前は知っていても「なぜそうなったか」が知りたい人、歴史の因果から音楽を理解したい読者、ギリシャ神話やキリスト教の背景もまとめて押さえたい人。
良い点
- 因果関係で語る「納得の音楽史」
- 古代ギリシャや宗教の背景が厚い
- コラムのイラストが親しみやすい
気になる点
- 複数著者で語り口がやや均質
- 中世ルネサンスの比重が大きい
- ポピュラー音楽には触れない
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2020年10月23日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
副題に「つながりと流れが」とありますけど、音楽史ってつながりで見るものなんですか? 年表を暗記するイメージでした。
佐藤メバル
そこが肝でね。この本は、モーツァルトやベートーヴェンの伝記を並べるのではなく、なぜその音楽が生まれたのかを因果で追う。
まず「西洋とは何か」から始めて、古代ギリシャの音楽観、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の影響を押さえる。土台から説明する入門書は貴重なんだ。
橘ナナミ
土台から、か。私、グレゴリオ聖歌とか名前だけ知ってて、何がすごいのか全然わかってなかったです。
佐藤メバル
その感覚でいい。この本は「教会の歌」から始めて、記譜法がどう変わったかまで丁寧に追う。目で見る記譜法の歴史というコラムもあって、音符がどう進化したかが分かると、後の音楽の見え方も変わる。
年表も付いているから、辞書的に引く使い方もできるよ。
ものがたり西洋音楽史
近藤譲 著|岩波書店
¥1,100(税込)
中世の教会音楽からモダニズムまで、「音楽は聖句の乗りもの」「言葉を収める音の伽藍」といった章題で語り下ろす通史です。作曲家と作品、演奏法や作曲法、音楽についての考え方の変遷を、物語のように追えるのが持ち味。楽典や譜面の知識がなくても読み進められる平易さがあり、専門書の前段としても、大人の学び直しにも収まりがいい一冊です。
こんな人におすすめ
音楽史の本を開いては閉じてしまう人、通学や通勤のすきま時間に読みたい人、中高生の子どもと一緒に学びたい大人、まず流れをつかんでから詳しい本に進みたい読者。
良い点
- 語り口が平易で読み通しやすい
- 章題が詩的で記憶に残る
- 演奏法や作曲法の変遷も触れる
気になる点
- 専門的な踏み込みは控えめ
- 図版や譜例は少ない
- 索引頼みの調べ物には不向き
出版社
岩波書店
発売日
2019年03月21日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ものがたり」って書いてある。音楽史を物語として読むって、どういうことなんでしょう? 小説みたいな感じですか?
佐藤メバル
近藤譲さんは作曲家でもある人でね。章題が「音楽は聖句の乗りもの」「言葉を収める音の伽藍」——つまり、その時代に音楽が何を運んでいたか、という視点で綴られる。
年号や人名の暗記ではなく、音楽の役割の移り変わりを追う物語なんだ。岩波ジュニア新書なので、用語の壁も低い。
橘ナナミ
伽藍って、教会の建物ですよね。音で建物を作る……響きが想像できます。ルネサンスの多声音楽のことなのかな。
佐藤メバル
まさにそこ。ルネサンスの章では多声音楽を「美しい音の建築物」と呼んでいる。中世の単旋聖歌、印刷楽譜の登場、宗教改革と音楽、マドリガーレ——言葉と音の関係が変わっていく様子が、建物を建てるように積み上がっていく。
読み終えると、曲の聴こえ方が少し変わるよ。
人生が楽しくなる 西洋音楽史入門
山崎圭一 著|PHP研究所
¥1,980(税込)
教育YouTuberムンディ先生こと山崎圭一が、ヨーロッパの歴史と音楽史を同時に紹介する入門書です。時代の事件や人物を題材にした曲、その時代に生きた作曲家と代表曲を並べ、聴きどころから再生されるYouTube動画のQRコードを用意。太古・古代から戦後の世界まで全10章で、「聴いたことある」曲が歴史のどこに置かれるかが見えてきます。
こんな人におすすめ
世界史と音楽をまとめて学び直したい人、スマホで音を確かめながら読みたい人、「この曲どこかで聴いた」から入りたい初心者、学校の授業の補助や大人の学び直しに使いたい人。
良い点
- 歴史と音楽を同時に学べる
- QRコードで音源に飛べる
- 章立てが年代順で追いやすい
気になる点
- YouTube視聴が前提の構成
- 曲の分析は浅め
- 著者の語りに好みが分かれる
出版社
PHP研究所
発売日
2023年08月09日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
QRコードで聴きどころから再生できるの、いいですね。スマホで音を確かめながら読めるの、ありがたいです。
佐藤メバル
そこがこの本の売りでね。ムンディ先生は教育系YouTuberとして知られる人だけど、本では歴史のストーリーと音楽を並べて進める。
フランス革命の時代にはこの曲、といった具合に、世界史の出来事と曲が結びつく。音楽史と世界史を別々に覚えてきた人には、かなり効くと思う。
橘ナナミ
あ、私まさに別々に覚えてきました。世界史の年号は辛うじて、音楽は名前だけ……。この本ならつながりそうです。
佐藤メバル
その「つながっていない」状態を解くのが狙いなんだろうね。太古・古代から中世、ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派、20世紀、戦後まで10章。
作曲家の人生と代表作を押さえつつ、その曲が生まれた瞬間の時代が同時に見える。読み終えたらプレイリストを作りたくなるよ。
大人の音楽史入門 読んでわかる!きいてわかる!クラシック音楽の歴史[改訂版]
長沼由美 著|ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
¥2,420(税込)
15年以上読まれてきたロングセラーの改訂版で、参考音源CDと、西洋音楽史・世界史・日本史の対照年表が付くのが最大の特徴です。ジョスカン・デ・プレからショスタコーヴィチまで、時代ごとに主要作曲家とできごとを整理。年表で作曲家が生きた時代の日本や世界の出来事と並べて見られるので、音楽史が孤立した暗記になりません。
こんな人におすすめ
音を聴きながら学びたい人、世界史や日本史と並べて年表で確認したい人、独学の大人の入門書を探している人、ピアノなど楽器を学ぶ人の副読本。
良い点
- CDと対照年表という実用装備
- 主要作曲家をバランスよく収録
- 改訂で年表と収録曲を更新
気になる点
- 内容の踏み込みは入門レベル
- CD再生環境が必要
- レイアウトは教科書的
出版社
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日
2024年11月26日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
CD付きって、今どき珍しいですね。逆にうれしいかも。世界史と日本史の年表もあるんですか?
佐藤メバル
そう、そこがロングセラーたる所以でね。年表で作曲家が生きた時代の日本や世界の出来事を並べて見られるから、「モーツァルトの時代、日本は何をしていたか」と頭の中で結びつく。
音楽史が孤立した暗記にならない工夫がある本なんだ。
橘ナナミ
収録曲も定番が多いと聞きました。聴いたことある曲で学べるのは助かります。
佐藤メバル
うん、アレルヤ唱から始まって、ヴィヴァルディの『四季』、バッハの『トッカータとフーガ』、モーツァルト、ベートーヴェン、ロマン派、近現代まで、誰もが一度は耳にした曲が並ぶ。
学びながら聴ける。改訂版では年表を時代に合わせて見直し、収録曲も一部変わっているよ。
決定版 はじめての音楽史
久保田慶一 著|音楽之友社
¥2,200(税込)
20年以上売れ続ける入門書の決定版。類を見ないのは、第1部が西洋音楽史、第2部が日本音楽史という構成です。古代ギリシャから20世紀までを押さえたうえで、日本音楽史の始まりから能と狂言、近世の三味線文化、近代の並存、現代邦楽まで追えます。今回は5箇所に書き下ろしコラム「もうひとつの音楽史」が加わりました。
こんな人におすすめ
日本音楽も一緒に押さえたい人、大学や高校の授業のテキストが欲しい人、音楽を職業や社会の側から見たい人、西洋史と日本史を一冊で往復したい読者。
良い点
- 西洋と日本の両方を一冊で扱う
- 後半の日本音楽史が貴重
- 書き下ろしコラムが視点を広げる
気になる点
- 日本史部分の分量は限られる
- 複数著者でトーンに差
- 図版は多くない
出版社
音楽之友社
発売日
2017年08月30日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
え、第2部が日本音楽史なんですか。西洋音楽史の本かと思っていました。
佐藤メバル
そこがこの本の独自性でね。一冊で西洋と日本の両方を扱う入門書は、実はかなり少ない。第2部は日本音楽史の始まりから能と狂言、近世の三味線文化、近代の伝統音楽と西洋音楽の並存、さらに現代邦楽まで。
3部構成で日本の現代音楽も置かれている。
橘ナナミ
三味線文化って、江戸の頃ですよね。西洋のバロックと同じ時期に並べると、けっこう面白いかも。
佐藤メバル
そう、並べると発見があるんだ。今回は加筆として、久保田さんの「もうひとつの音楽史」というコラムが5箇所入った。
音楽理論、音楽と社会、音楽の職業、記譜法、音楽メディア——俯瞰的な観点が挟まるから、古代から21世紀までを太い線で見渡せる。授業のテキストにも使いやすい作りだよ。
楽譜でわかるクラシック音楽の歴史
広瀬大介 著|音楽之友社
¥2,750(税込)
譜例を数多く掲載した音楽史という珍しい一冊です。前古典派から新ウィーン楽派まで、作曲家が得意とした様式上の特徴を実際の作品から具体的に学びます。ギャラント様式、ソナタ形式の確立、オペラ改革、ベルカント、楽劇、交響曲から交響詩へ——各段階に譜例が付くので、「様式が変わった」という言葉が耳だけでなく目で確認できます。
こんな人におすすめ
楽譜が読める人、演奏や作曲を学んでいる人、様式の違いを実物で確かめたい読者、大学の講義の予復習に使いたい学生、独学で和声や形式を追っている人。
良い点
- 譜例掲載の音楽史は類例が少ない
- 様式の特徴が具体的に見える
- 作品ごとの着目点が明快
気になる点
- 楽譜が読めないと厳しい
- 通史としての網羅性は限定的
- 価格はやや高め
出版社
音楽之友社
発売日
2014年07月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
譜例がたくさん載ってる……これ、楽譜が読めないと楽しめない本ですか?
佐藤メバル
正直、読めたほうが断然おいしい本だね。この本は大学の一般教養のテキストとして作られていて、作曲家が得意とした様式上の特徴を実際の作品から確かめるのが目的なんだ。
たとえばマンハイム楽派のクレッシェンドの作り方、モーツァルトの協奏ソナタ形式——譜面で見ると「そういうことか」と腹に落ちる。
橘ナナミ
言葉で「ソナタ形式」と聞いても、いまいちピンとこなかったんです。譜例で見たら違うんでしょうね。
佐藤メバル
そう、そこなんだ。ハイドンの変奏曲、モーツァルトの発展したソナタ形式、グルックのオペラ改革のレチタティーヴォ、ヴェルディの狂乱の場、ワーグナーの前奏曲——それぞれに譜例が付く。
通史を読んで「様式が変わった」とわかった気になっていた人が、実物で裏を取れる本だよ。
歴史を知ればもっと楽しい!西洋音楽の教科書
明石潤祐 著|ナツメ社
¥1,870(税込)
古代ギリシャの音楽から現代のポピュラー音楽までを一冊で扱うのが持ち味です。前半は中世・ルネサンス・バロック・古典派・ロマン派・20世紀とクラシックを時代ごとに追い、よく使われた楽器も紹介。後半はブルース、ジャズ、ゴスペル、ロックンロール、レゲエ、パンク、ヒップホップ、EDMなどのジャンル史を年代順に整理します。
こんな人におすすめ
クラシックとポピュラーをつなげて理解したい人、ロックやヒップホップのルーツを知りたい人、図版多めの教科書で通読したい人、音楽全般を俯瞰したい読者。
良い点
- クラシックとポピュラーの橋渡し
- ジャンル史を年代順に整理
- 使われた楽器の紹介も入る
気になる点
- 各項目の深さは入門レベル
- クラシック部分は圧縮気味
- 好みのジャンルで濃淡が出る
出版社
ナツメ社
発売日
2023年07月18日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「西洋音楽の教科書」なのに、ヒップホップやEDMまで載ってる。これ、クラシックの本ですよね?
佐藤メバル
そこが面白いところでね。この本は二部構成で、Part1がクラシック、Part2がポピュラー音楽の時代。
19世紀以降、新大陸で音楽が融合して多様なジャンルが生まれ、ロックンロール、レゲエ、ヒップホップと枝分かれしていく。
クラシックとポピュラーを地続きで見せる入門書は多くないんだ。
橘ナナミ
ロックのルーツがブルースにある、と聞いたことはありましたけど、その前段の話は知らなかったです。
佐藤メバル
そう、その前段が大事なんだ。年代が1800年から2020年まで区切られていて、どの時代に何が生まれたかが追える。
クラシック側でも、その時代に使われた楽器を紹介しているから、「音が変わると音楽も変わる」という感覚がつかめる。
棚で一冊だけ選ぶなら、守備範囲の広さでこれだね。
西洋音楽史講義
岡田暁生 著|KADOKAWA
¥1,210(税込)
ドレミファ音階、拍子、ハーモニー——今日の世界標準となった音楽語法の多くが西洋音楽史の中で生まれた、という視点から描く全15講です。「古楽」「クラシック」「現代音楽」という三つの画期に着目し、千年の変遷を通史として捉えます。放送大学の教材を加筆・修正して文庫化したもので、感性ではなく分析的に聴くためのヒントに満ちています。
こんな人におすすめ
音階や拍子といった仕組みから音楽史を考えたい人、同じ著者の入門書を読んだ後の二冊目を探している人、大学の講義のような密度で学びたい読者、ポピュラー音楽まで視野に入れたい人。
良い点
- 三つの画期という明快な軸
- 音楽語法の成立から説き起こす
- 最終講でポピュラーまで接続
気になる点
- 講義録なので図版は少ない
- やや硬質な文体
- 入門には一冊目として重め
出版社
KADOKAWA
発売日
2024年08月23日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
さっきの『西洋音楽史』と同じ著者ですよね。あれと、これは何が違うんですか?
佐藤メバル
いい質問だね。こちらは放送大学の講義をもとにした文庫で、「古楽」「クラシック」「現代音楽」という三つの画期から千年を組み直す構成なんだ。
音階や拍子、ハーモニーといった語法がどこで生まれたかに踏み込む。好みで語られがちな音楽を、具体的・分析的に聴くための講義だと思えばいい。
橘ナナミ
講義、か。読むのに体力がいりそうだけど、15講なら区切りをつけて読めますね。
佐藤メバル
そう、一章ずつ刻めるのがいい。バッハを「音楽の父」として位置づける章、ウィーン古典派と市民音楽の始まり、ロマン派の制度と美学、前衛への越境——最後の講でクラシックと現代音楽とポピュラーの関係まで来る。
気になった章から入って、行きつ戻りつ読むのが向いているよ。
西洋音楽史〔新訂〕
津上英輔 著|放送大学教育振興会
¥3,080(税込)
西洋芸術音楽の歴史を、作品だけでなく、その前提となる考え方や社会状況、楽器や演奏法にも力点を置いて辿る放送大学のテキストです。「聞こえない『音楽』」から始まり、古代ギリシャの音楽理論と今日の西洋音楽のつながりを扱う構成が独特。作品を思想的、理論的、社会的背景から理解し、立体的に把握することを目標に掲げています。
こんな人におすすめ
音楽を思想や社会から考えたい人、放送大学や大学の講義で学ぶ人、作品を背景込みで立体的に捉えたい読者、バッハ演奏の変遷のような論点に関心がある人。
良い点
- 理論・社会・演奏法まで射程
- 「聞こえない音楽」の章が独創的
- バッハ演奏史の講義で締める
気になる点
- テキストなので独習には重い
- 価格は高め
- 図版は多くない
出版社
放送大学教育振興会
発売日
2021年03月20日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「聞こえない『音楽』」って章題が気になりすぎます。どういうことなんですか?
佐藤メバル
いいところに目をつけたね。この本は作品そのものより、その前提にある考え方や社会状況、楽器や演奏法に力点を置く。
古代ギリシャの音楽理論が今日の西洋音楽にどうつながるか、という問いから始まって、音として残っていないけれど当時の人が「音楽」と考えていたものまで視野に入れる。
橘ナナミ
音が残ってないのに、音楽として扱う。なんだか研究みたいで面白いです。
佐藤メバル
実際、大学の講義のテキストなんだよ。中世の多声音楽の芽生え、ルネサンスの聖と俗、オペラの誕生、啓蒙主義と古典派、ロマン派の鍵盤音楽、19世紀ドイツとイタリア・フランスのオペラ——最後はバッハ演奏の変遷で締める。
同じ曲でも時代によって弾き方が違う、という視点が持ち帰れるはずだよ。
音楽史を学ぶ増補改訂版
久保田慶一 著|教育芸術社
¥990(税込)
古代ギリシャ・ローマから明治・大正・昭和・平成まで、時代と社会、音楽史の流れ、聴いておきたい名曲、知っておきたい音楽用語をセットで整理したテキストです。明治以降の日本、初音ミクやインターネット時代まで扱うのが特徴で、洋楽導入や音楽取調掛、山田耕筰、戦時下の音楽、現代邦楽まで射程に入ります。価格も手頃で通読しやすい構成です。
こんな人におすすめ
日本近代の音楽史まで押さえたい人、授業の副読本や独学の一冊目を探している人、名曲と用語をセットで覚えたい人、価格を抑えて通史を持ちたい読者。
良い点
- 古代から平成まで一本で追える
- 名曲と用語が各章に付く
- 日本の近代・現代まで扱う
気になる点
- 図版は少なめ
- 項目が箇条書き的
- 深掘りは苦手
出版社
教育芸術社
発売日
2024年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
え、初音ミクの項目があるんですか。しかも手頃な価格。これ、教科書なんですよね?
佐藤メバル
そう、教育芸術社のテキストでね。古代ギリシャから中世、ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派、現代までを追ったあとに、明治・大正・昭和・平成の日本の音楽が続く。
洋楽導入、音楽取調掛、滝廉太郎、山田耕筰、戦時下の音楽、そしてインターネット時代の音楽と初音ミクまで。射程の長さが売りだよ。
橘ナナミ
西洋の話のあとに日本の話が来る流れ、いいですね。自分のいる場所から歴史が続いてる感じがします。
佐藤メバル
その感覚は大事だと思う。各章に「聴いておきたい名曲」と「知っておきたい音楽用語」が付くから、読みながら音源と用語を押さえられる。
教会旋法、ネウマ譜、通奏低音、固定楽想、図形楽譜——用語の索引としても使える。まず流れだけ掴みたい人にちょうどいい。
西洋音楽史の原風景ー国境を越え、時代を超えー
岸田文夫 著|幻冬舎
¥1,760(税込)
モンテヴェルディからベートーヴェン、ワーグナー、ドビュッシー、武満徹まで、名曲の背景にある自然や作曲家の思索、時代の息吹をたどるエッセイ風の一冊です。「ベートーヴェンに思う」「春愁淡きシューマンの和声」「音楽と自然」など、従来の音楽史では語られない原風景に光を当てます。古楽器演奏によるモーツァルトのオペラの新発見など、切り口も多彩です。
こんな人におすすめ
音楽史の通史を一通り読んだ人、作曲家の内面や自然との関係に惹かれる読者、エッセイとして音楽を読みたい人、愛聴盤の背景を深掘りしたい愛好家。
良い点
- エッセイとして読み物として面白い
- 武満徹まで射程が広い
- 愛聴盤の背景が深まる
気になる点
- 通史としての網羅性はない
- 著者の主観が強い
- 入門には向かない
出版社
幻冬舎
発売日
2025年10月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「原風景」って言葉がいいですね。音楽史というより、エッセイに近いんでしょうか。
佐藤メバル
そう、通史ではなく読み物なんだ。「ベートーヴェンに思う」「音楽と自然」「私の愛聴盤から」——章題からして、著者が名曲と向き合った記録だね。
旋律が生まれた背景にある自然や思索、時代の息吹をたどる。音楽史の本を何冊か読んだ人が、最後に開く一冊という趣がある。
橘ナナミ
ワーグナーの章に「意志と表象」ってありますけど、哲学の話も入るんですか?
佐藤メバル
入るね。『トリスタンとイゾルデ』をショーペンハウアーの「意志と表象」という枠組みから読み解く章があって、これは音楽史の教科書にはまず出てこない。
ほかにもモンテヴェルディ、ヴェルディ讃、古楽器で聴くモーツァルトのオペラ、忘れ得ぬステージの記憶。知識より、聴く喜びの側から書かれた本だよ。
解きながら楽しむ 大人の西洋音楽史
久保田慶一 著|くもん出版
¥1,650(税込)
中世から近・現代までを、問題を解きながら読み進めるワークブック形式で学ぶ大人向けの入門書です。各時代の特徴や作曲家の人生・代表作をていねいな解説で押さえつつ、演奏音源へのリンク付きで鑑賞の習慣づけにも向きます。日付を記入して学習の記録を残せるので、少しずつ積み上げたい人にぴったりです。
こんな人におすすめ
毎日少しずつ学びたい人、手を動かさないと頭に入らないタイプの人、音源リンクで鑑賞を習慣にしたい人、定年後の学び直しや独学の計画を立てたい読者。
良い点
- 問題形式で手を動かせる
- 学習記録を日付で残せる
- 音源リンクで鑑賞につながる
気になる点
- じっくり読む通史には不向き
- 問題の難易度は控えめ
- 答え合わせ前提の構成
出版社
くもん出版
発売日
2026年01月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「解きながら」って、問題集なんですか? 音楽史を勉強し直したいけど、読むだけだと流れちゃうんですよね。
佐藤メバル
そこを突いた本でね。中世から近・現代まで、各時代の特徴や作曲家の人生と代表作を問題を解きながら進める。
毎日少しずつ取り組めて、日付を書いて記録を残せるから、机に向かう習慣を作りたい人に向いている。
演奏音源へのリンクが付いているのも助かるね。
橘ナナミ
ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン……と並んで、最後にバーンスタインまである。
佐藤メバル
そう、ロマン派もロッシーニからシベリウス、リヒャルト・シュトラウスまで広い。ガーシュインやバーンスタインまで入るのが今っぽいところだね。
クラシックにまつわる読み物コラムも多数収録されているから、問題に飽きたらコラムだけ拾い読みしてもいい。
気楽に続けられるのがいちばん大事だから。
図表とともに学ぶ 西洋音楽史概説
村田千尋 著|春秋社
¥3,520(税込)
西洋音楽史の全体像を、8つの時代と8つの観点で整理し、宗教音楽・世俗音楽・オペラ・器楽という4つのジャンル史として通時的に概観する構成が特徴です。音楽の基本構造、楽譜、ジャンル、表現内容、音楽の場、担い手、演奏と聴取、民族性という観点から、音楽文化と芸術音楽の成り立ちが見えてきます。
こんな人におすすめ
図表で整理しながら学びたい人、ジャンルごとに歴史を追いたい人、音楽の場や担い手といった社会側から見たい読者、講義のテキストを探している人、最後に歴史相対主義まで考えたい人。
良い点
- 4つのジャンル軸で整理される
- 図表が多く流れを追いやすい
- 音楽と社会の関係まで踏み込む
気になる点
- 価格が高く気軽ではない
- 初学者には密度が濃い
- 索引頼みの通読になる
出版社
春秋社
発売日
2026年02月03日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
8つの時代と8つの観点、さらに4つのジャンル……整理されすぎてて、逆にどう読めばいいか迷います。
佐藤メバル
そこは安心していい。順に読まなくても、「宗教音楽」「世俗音楽」「オペラ」「器楽」のどれかを縦に追うだけで一つの歴史が見える作りなんだ。
同じ時代でもジャンルによって様子が違う、というのがこの本の主張でもある。図表が多いから、頭の中に地図を描きながら読めるよ。
橘ナナミ
器楽の章だけ追う、みたいな読み方もできるんですね。それなら私でも迷わなそうです。
佐藤メバル
そう。序章で音楽史の考え方を押さえて、第2部でジャンル史、第3部で音楽様式・音楽と社会・民族性と音楽を振り返る。
最後に「歴史の流れと歴史相対主義」で締めるのが、この本がいちばん面白いところかもしれない。通史を一つ上の段から見直したい人に向いているよ。
革命と戦争のクラシック音楽史
片山杜秀 著|NHK出版
¥880(税込)
クラシック音楽を第一級の歴史史料として読むという大胆な視点の新書です。モーツァルトの軍隊調、フランス革命とベルリオーズ、反革命とハイドン、ナポレオン戦争とベートーヴェン——「第九」とナポレオン、『四季』とムッソリーニといった具合に、世界史と音楽史を交差させます。お上品な芸術がときに戦争で進化した、という不都合な真実から眺め直す一冊です。
こんな人におすすめ
世界史と音楽の交差点に興味がある人、教科書の音楽史に物足りなさを感じる人、歴史の裏側から名曲を読み直したい読者、新書で一気に読了したい人。
良い点
- 歴史史料として音楽を読む視点
- 新書サイズで読み切りやすい
- 年表も付いて参照しやすい
気になる点
- 著者の大胆な解釈が好みを分ける
- 作曲家の網羅性は低い
- 細部の事実確認は別途必要
出版社
NHK出版
発売日
2019年09月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「第九を作ったのはナポレオン?」って、それ大げさすぎません?
佐藤メバル
ところが大げさでもなくてね。この本は音楽を歴史の史料として読む。ナポレオン戦争の時代に、ベートーヴェンが何を新しくしようとしたか、モーツァルトの「トルコ行進曲」の背景にオスマン帝国のウィーン包囲があること——曲の外側の事情から音楽史を組み直すと、驚くほど像が変わるんだ。
橘ナナミ
『四季』を聴けるのがムッソリーニのおかげ、というのも気になります。そんなこと、習ったことないです。
佐藤メバル
そういう「習っていない線」が次々出てくる。ハプスブルクの軍国主義、フランス革命とベルリオーズ、反革命とハイドン、ナポレオン戦争とベートーヴェン——四章立てで一気に読める。
巻末に関連年表も付いているから、世界史の教科書を横に置いて読むと、いっそう面白いよ。
バロックの光と闇
高階秀爾 著|講談社
¥1,540(税込)
もともと「歪んだ真珠」を意味し、「粗野な」「劣った」というニュアンスで使われたバロックという語。その一方でバッハやベルニーニの雄大な作品群も「バロック」と呼ばれます。ジャンルとしてでも時代区分としてでもなく、現代にまで通じるものとしてのバロックを、西洋美術史研究の第一人者が音楽・建築・美術・演劇・文学を縦横に駆けめぐって探る決定版です。
こんな人におすすめ
バロック音楽は好きだが言葉の意味が気になる人、美術や建築とあわせて理解したい読者、図版を眺めながら読みたい人、学術文庫でしっかり読みたい人。
良い点
- ジャンルを横断する視点が刺激的
- 多数の図版を収録
- 「バロックとは何か」に答える
気になる点
- 音楽の比重はやや低い
- 専門的で読み応え重視
- 通史ではない
出版社
講談社
発売日
2017年11月11日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「バロック」って、音楽のジャンルの名前だと思ってました。「歪んだ真珠」が語源なんですか。
佐藤メバル
そう、もともとは「いびつな真珠」という形容でね。粗野な、価値の低い、というニュアンスで使われた言葉が、いまではバッハの音楽やサン・ピエトロ大聖堂前の列柱廊を指す。
その二つの顔をどう結びつけるか——高階秀爾さんは、ジャンルや時代区分ではなく、現代にまで通じるものとしてのバロックを探しに行く。
橘ナナミ
音楽だけの本じゃないんですね。美術や演劇まで出てくるなら、考え方が広がりそうです。
佐藤メバル
そう、パリのポンピドゥー・センターの建築から始まって、対抗宗教改革のイメージ戦略、光と闇、ロココ、そして「永遠のバロック」で新古典派とロマン派まで行く。
バッハを聴きながらこの本を読むと、同じ時代の光と闇が見えてくるよ。図版が多いのも嬉しいところだね。
古楽とは何か
アーノンクール,N.(ニコラウス) 著|音楽之友社
¥4,070(税込)
指揮者ニコラウス・アーノンクールが、古楽器や記譜法、テンポ、アーティキュレーション、音組織といった実践的な論点から、音楽をどう解釈するかを論じた名著です。ヴィオラ・ダ・ガンバとヴァイオリンの歴史、バロック・オーケストラ、イタリア様式とフランス様式、リュリとラモーのオペラ、モーツァルトの手紙まで。演奏する人にも聴く人にも効く一冊です。
こんな人におすすめ
古楽やピリオド演奏に関心がある人、演奏する側の視点から音楽史を知りたい人、アーノンクールの演奏の背景を理解したい愛好家、記譜法やテンポの考え方に踏み込みたい読者。
良い点
- 演奏解釈の古典として価値が高い
- 譜面と響きの関係に踏み込む
- バロックからモーツァルトまで論じる
気になる点
- 専門的で難度が高い
- 価格が高め
- 入門書ではない
出版社
音楽之友社
発売日
1997年06月01日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
アーノンクールって指揮者の名前ですよね。演奏家が書いた音楽史の本なんですか?
佐藤メバル
そう、古楽演奏の第一人者でね。この本は歴史の概説ではなく、音楽をどう解釈するかを実践の側から論じたものだ。
記譜法の問題、アーティキュレーション、テンポ、音組織と音程法、響き、古楽器は是か否か——演奏に踏み込むからこそ、聴く側の解像度も上がる。
橘ナナミ
「古楽器は是か否か」って、そんなに議論になるものなんですか。
佐藤メバル
なるんだよ。当時の楽器で弾くべきか、現代楽器で弾くべきか。アーノンクールはそこで、解釈の優先度をどう並べるかまで踏み込む。
第2章ではヴィオラ・ダ・ガンバとヴァイオリンの歴史、バロック・オーケストラ、第3章ではヴィヴァルディ、テレマン、ヘンデル、バッハの組曲、そしてモーツァルトの手紙まで。読み応えは相当なものだよ。
教会音楽史と賛美歌学
横坂康彦 著|日本基督教団出版局
¥1,980(税込)
キリスト教音楽とは何かから始まり、ユダヤ教の音楽と初期キリスト教の音楽、中世の教会音楽、宗教改革期、17世紀後半から18世紀半ばまで、そして18世紀後半から20世紀、アメリカの教会音楽、日本とアジアのキリスト教音楽までを扱います。最後に賛美歌の用い方まで踏み込む、実践にも開かれた通史です。
こんな人におすすめ
教会音楽や賛美歌に関心がある人、礼拝で音楽を担う立場の人、グレゴリオ聖歌から宗教改革、アメリカ、日本・アジアまでの流れを知りたい読者、教会史と音楽を重ねて学びたい人。
良い点
- 日本とアジアの教会音楽まで扱う
- 賛美歌の実践的な使い方も
- 初期キリスト教から通史で追える
気になる点
- 発行年が古く情報は限られる
- 一般の音楽史とは視点が異なる
- 専門用語が多め
出版社
日本基督教団出版局
発売日
1993年07月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「賛美歌学」って、聞き慣れない言葉です。賛美歌を研究する分野があるんですね。
佐藤メバル
あるんだよ。この本はキリスト教音楽とは何かから始めて、中世の教会音楽、宗教改革期、17〜18世紀、18世紀後半から20世紀、そしてアメリカの教会音楽、日本とアジアのキリスト教音楽までを扱う。
最後の章は「賛美歌の用い方」で、実践に開かれているのが特徴だね。
橘ナナミ
日本とアジアの章があるのが気になります。キリスト教音楽がどう入ってきたのか、知りたいです。
佐藤メバル
そこは貴重なところだね。西洋音楽史の本だと、教会音楽は中世やルネサンスで触れて終わりになりがちだから。
礼拝で歌う側の人、賛美歌の背景を知りたい人には、ほかに代わる本が見つけにくい。発行年が古いぶん最新の研究は別途当たってほしいけれど、骨格をつかむには頼りになるよ。
ロックの歴史
中山康樹 著|講談社
¥990(税込)
イギリスとアメリカが互いの音楽を「洋楽」として受容し、時に誤読しながら進化・統合し、現在のロックが生まれるまでを描く一冊です。エルヴィス・プレスリーの限界、ビートルズが生まれた瞬間、黒いブルースから白いロックへ、リヴァプールだった理由、ジミ・ヘンドリックス、ウッドストック、ディラン。通史の脇役だった人たちにも光を当てます。
こんな人におすすめ
ロック好きで歴史を体系的に知りたい人、ビートルズやストーンズの前史を知りたい人、ブルースとロックの関係を押さえたい読者、新書で一気に読みたい人。
良い点
- 英米の相互受容という視点が新鮮
- 脇役ミュージシャンに光を当てる
- 新書で読みやすい
気になる点
- 1990年代以降は薄い
- 好みのバンドは出てこないかも
- 著者の解釈が強い
出版社
講談社
発売日
2014年06月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ロックの歴史って、バンドの列伝かと思ってました。英米が互いの音楽を「洋楽」として聴く、という視点が新鮮です。
佐藤メバル
そこが中山さんの独自性でね。イギリスとアメリカが互いの音楽を外国の音楽として受け取り、ときに誤読しながら進化させていく——その過程でロックが生まれた、と説く。
エルヴィス・プレスリーの限界、ビートルズが生まれた瞬間、リヴァプールだった理由まで、順に組み立てていく。
橘ナナミ
クリフ・リチャードやマディ・ウォーターズみたいな、教科書では脇役の人が出てくるのも面白いです。
佐藤メバル
そう、既存のロック史では主役にならなかった人たちの役割に光を当てるところが、この本のいちばん面白いところだ。
ジミ・ヘンドリックスの衝撃、『サージェント・ペパーズ』と一九六七年、ウッドストック、ディランの揺さぶり——最後はロックが帰っていく場所まで見届ける。読むとプレイリストを作りたくなるよ。
至高の日本ジャズ全史
相倉久人 著|集英社
¥814(税込)
ニューオーリンズでジャズが生まれてわずか一、二年後の大正年間の日本に、すでにジャズを演奏する日本人がいた——そこから始まる日本ジャズ史です。戦後の混乱期から現場に居合わせた著者が、ジャズ喫茶やナイトクラブの熱狂、コルトレーンやモンク来日の舞台裏、山下洋輔の登場、ミュージシャン同士の対立と別離までを綴ります。
こんな人におすすめ
日本のジャズを聴きたい人、ジャズ喫茶やライブの空気を知りたい人、来日ミュージシャンの舞台裏に興味がある読者、参考音源リストを手がかりに聴き進めたい人。
良い点
- 当事者ならではの現場感
- 参考音源リストが付く
- 大正期から戦後まで射程
気になる点
- 著者の記憶に依存する部分がある
- 菊地成孔との対談は好みが分かれる
- 音楽理論的な分析は少ない
出版社
集英社
発売日
2012年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
大正年間に日本でジャズを演奏する人がいた、って本当ですか? もっと後の話だと思ってました。
佐藤メバル
そこから始まるのがこの本でね。ニューオーリンズでジャズが生まれて一、二年後に、もう日本に演奏者がいたという。
その後、戦後の混乱期のジャズ喫茶やナイトクラブの熱狂、コルトレーンやモンクの来日、山下洋輔の登場——その現場に居合わせた著者が綴るから、細部に体温がある。
橘ナナミ
参考音源リストが付いてるのもいいですね。読んでから聴くと、耳の準備ができそうです。
佐藤メバル
そう、各時代ごとに厳選した音源リストがあるから、読み終えたら順に聴いていける。ミュージシャン同士の対立と別離まで書かれているのは、歴史というより記録に近い。
ジャズ喫茶の空気を知らない世代が読むと、知らない街を歩くような気分になると思うよ。
日本の吹奏楽史
戸ノ下達也 著|青弓社
¥2,200(税込)
サックスやトランペットの音色が人々を躍らせてきた吹奏楽の歩みを、明治期の軍楽隊からたどる入門書です。学校教育や職場、三越少年音楽隊、スクールバンド、厚生音楽運動——プロとアマチュアの垣根を越えて社会に広がった過程を、複数の執筆者が論じます。吹奏楽の過去といまがよくわかる構成です。
こんな人におすすめ
吹奏楽をやってきた人や指導する人、学校や職場と音楽の関係に興味がある人、明治以降の音楽文化史を学びたい読者、ブラスバンドの戦前史を知りたい人。
良い点
- 軍楽隊から戦後まで通史で追う
- 学校・職場という視点が独自
- コラムが充実している
気になる点
- 研究書寄りで硬めの文体
- 一般の音楽史とは接続が薄い
- 図版は少なめ
出版社
青弓社
発売日
2013年12月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
吹奏楽って、部活のイメージでした。明治の軍楽隊から始まる歴史があるんですね。
佐藤メバル
そう、明治期に軍楽隊として発展して、大正・昭和には学校教育や職場に広がっていく。三越少年音楽隊のような存在が新しい音楽文化を形づくり、スクールバンドが普及し、戦時下では厚生音楽運動として職場の吹奏楽が振興される。
音楽が社会の制度と結びつく過程が見えるんだ。
橘ナナミ
「職場の吹奏楽」って、会社で楽団を持っていたってことですか。想像がつかないです。
佐藤メバル
そう、石川島造船所の自彊吹奏楽団のような事例が紹介されていてね。戦後は「戦犯」からの復権という視点まで出てくる。
さらに「ブラスはオケより格下なのか?」というコラムもあって、ヒエラルキーをめぐる議論まで踏み込む。吹奏楽経験者なら、自分の来歴が歴史に接続する感覚があるはずだよ。
〈裏〉日本音楽史
齋藤桂 著|春秋社(千代田区)
¥2,640(税込)
西洋化と日本らしさの確立に揺れた近代、その過程で神話や都市伝説、怪談を持ち出して大真面目に「日本音楽とは何か」を説く音楽家や学者が現れました。非合理なのに魅惑的な言説の数々を、伝統音楽・軍歌・唱歌・民謡を題材に読み解き、近代を捉え直します。表の音楽史では出てこない論点が並ぶ一冊です。
こんな人におすすめ
日本音楽史を斜めから読みたい人、近代の言説やイデオロギーに関心がある読者、民謡や唱歌の背景を知りたい人、音楽史研究の方法論に触れたい学生。
良い点
- 近代の言説を史料として読む
- 軍歌や唱歌まで題材にする
- 視点が独特で刺激的
気になる点
- 専門的で読み手を選ぶ
- 通史としては使えない
- 図版は少なめ
出版社
春秋社(千代田区)
発売日
2015年04月24日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
タイトルの「〈裏〉」が気になります。表の日本音楽史があるとして、裏では何が語られてきたんでしょう。
佐藤メバル
そこが面白いところでね。西洋化と日本らしさの確立に揺れた近代、神話や都市伝説、怪談を持ち出してまで「日本音楽とは何か」を説こうとした音楽家や学者がいた。
非合理なのに魅惑的な言説を、伝統音楽、軍歌、唱歌、民謡を題材に読み解いていく。表の歴史を裏から照らす本だよ。
橘ナナミ
軍歌や唱歌まで入るんですね。学校で習う音楽史の外側って感じがします。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の強みだ。誰かが「これが日本の音楽だ」と主張するとき、何を都合よく切り取っているのか。
それを疑いながら読むと、近代の音楽観そのものが見えてくる。研究の作法としても勉強になるから、音楽史を書きたい人にもすすめたい一冊だよ。
〈雅楽〉の誕生
鈴木聖子 著|春秋社
¥3,850(税込)
近代日本で科学を通して日本音楽を研究し、現代われわれが知る〈雅楽〉の概念を作り上げた田辺尚雄に迫る論考です。当時最先端の音響学や進化論を踏まえ、日本音階の探究から出発して雅楽を核とする日本音楽史を編み上げ、さらにシルクロードの向こうへ雅楽の響きを追い求めた姿を描きます。
こんな人におすすめ
雅楽に関心がある人、概念がどう作られたかを知りたい読者、近代の音楽研究史を学びたい人、日本音楽史を批判的に読みたい学生。
良い点
- 〈雅楽〉という概念自体を問う
- 音響学や進化論の文脈がわかる
- 日本音楽史の形成過程を追える
気になる点
- 専門書で難度が高い
- 価格は高め
- 雅楽の入門解説ではない
出版社
春秋社
発売日
2019年01月28日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
〈雅楽〉の誕生、って鍵括弧つきなのが意味深です。昔からあるものが、あらためて「誕生」なんですか。
佐藤メバル
そこがこの本の核心でね。現代われわれが知る〈雅楽〉の概念を作り上げたのは田辺尚雄という人物だ、と著者は言う。
彼は当時最先端の音響学や進化論を踏まえて日本音楽を研究し、日本音階の探究から出発して雅楽を核とする日本音楽史を編み上げた。
つまり、見え方には後から作られた部分がある。
橘ナナミ
音階を探すところから始まるんですね。そしてシルクロードまで追いかける……ロマンがあります。
佐藤メバル
そう、遠くシルクロードの向こうに雅楽の悠久の響きを追い求めた、というところまで行く。音楽史が学者の情熱と時代の思想で形づくられる過程そのものが見えてくる。
雅楽を聴くときの解像度が一段上がる本だよ。
図解 日本音楽史
田中健次 著|東京堂出版
¥3,850(税込)
雅楽・声明、能楽、琵琶、尺八、箏、三味線、民謡、沖縄音楽、近代音楽まで、広範で意外と難解な日本音楽の全貌を図解したハンドブックです。見開き2頁に解説と図表を配し、邦楽の理解に必要な事項を整理。増補改訂では沖縄音楽と近代音楽に新たに章が設けられ、全体の情報も更新されています。
こんな人におすすめ
邦楽の全体像をつかみたい人、辞書的に手元に置きたい人、雅楽から沖縄音楽まで一冊で見たい読者、和楽器を学ぶ人の副読本、近代音楽の章から入りたい人。
良い点
- 見開き完結で引きやすい
- 沖縄音楽と近代音楽を増補
- 楽器の構造と用法も解説
気になる点
- 価格が高め
- 通読には向かない
- 専門用語はそれなりに出る
出版社
東京堂出版
発売日
2018年09月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
え、沖縄音楽の章があるんですか。日本音楽史の本で見たことないです。
佐藤メバル
増補改訂で新たに章が設けられたところでね。雅楽・声明、能楽、琵琶楽、尺八楽、筝曲、三味線楽は地歌・浄瑠璃・歌舞伎と分けて整理されている。
見開き2頁で完結する図解だから、知りたい項目だけ開ける。楽器の構造と用法の章があるのも、邦楽ならではだね。
橘ナナミ
三味線だけで4章もあるんですね。地歌、浄瑠璃、歌舞伎、近代……こんなに広いとは。
佐藤メバル
そう、そこが「意外と難解」と言われる所以だ。民謡、沖縄音楽、近代音楽と続いて、最後は参考文献と索引。
通読する本というより、手元に置いて引く本だね。和楽器を習っている人なら、自分のやっていることが歴史のどこに位置するか確認できる。棚の辞書として長く使える一冊だよ。
クラシック偏重をほどく系譜マップ
橘ナナミ
さっき「一本につながる」と言いましたけど、実際どうつながるんですか?
佐藤メバル
三層で考えるといい。第一層は西洋芸術音楽の流れで、『西洋音楽史』『ものがたり西洋音楽史』『西洋音楽史講義』が担う。第二層がポピュラー。『歴史を知ればもっと楽しい!西洋音楽の教科書』がブルース、ジャズ、ロックンロール、ヒップホップ、EDMへと19世紀以降を追い、『ロックの歴史』がその一部を深掘りする。第三層が邦楽と日本で、『図解 日本音楽史』『決定版 はじめての音楽史』そして神話や都市伝説まで動員して「日本音楽とは何か」を問うた言説を追う『〈裏〉日本音楽史』が並ぶ。三層を別々の本で持つと、片方だけでは見えない因果が見えてくる。
橘ナナミ
では、この一覧で手薄なところはどこでしょう?
佐藤メバル
正直に言うと、女性音楽家やジェンダーの視点から音楽史を読み直す本は、このラインナップには入っていない。電子音楽や録音テクノロジーも、『音楽史を学ぶ 増補改訂版』の電子音楽・コンピュータ音楽・サウンドスケープの項目や、『歴史を知ればもっと楽しい!西洋音楽の教科書』のテクノ、EDM、インターネット以降の記述が入口になる程度だ。通史を一本持ったうえで、自分で穴を探しにいくのが次の段階だと思う。
難易度・前提知識・読了時間の目安
橘ナナミ
買う前に、どれくらい時間がかかるか知りたいです。
佐藤メバル
ざっくりで言えば、新書の『西洋音楽史』や『ものがたり西洋音楽史』は通勤・通学の合間に数日から一週間。『西洋音楽史大図鑑』は拾い読みで長く付き合うタイプ。教科書の『西洋音楽史〔新訂〕』『図表とともに学ぶ 西洋音楽史概説』は一学期ぶんの覚悟がいる。前提知識でいえば、楽譜が読めなくても読める本は多い。『楽譜でわかるクラシック音楽の歴史』だけは譜例が主役なので、譜面に抵抗がない人向けだ。
橘ナナミ
二次文献ばかり読むと、誰かの解釈をなぞっている気がしてきます。
佐藤メバル
そこに気づけたら次は一次資料だ。演奏家が自ら解釈の根拠を語るアーノンクールの『古楽とは何か』、戦後の現場に居合わせた著者が書く『至高の日本ジャズ全史』、愛聴盤から名曲の背景を綴る『西洋音楽史の原風景』。誰がどんな立場で書いたかを意識すると、同じ音楽史がぐっと立体的になる。音源と連動させるなら、CD付きの『大人の音楽史入門』、動画リンク付きの『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』、音源リスト付きの『至高の日本ジャズ全史』が導線として強い。
挫折しない読む順番 — 読書の階段
橘ナナミ
結局、どの順番で読めばいいんでしょう?
佐藤メバル
まず薄い通史を一冊。『ものがたり西洋音楽史』か『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』。次に骨格を作る『西洋音楽史』、そして『西洋音楽史講義』で「なぜ学ぶのか」を回収する。ここまでで西洋の軸ができる。そこから横に広げて『歴史を知ればもっと楽しい!西洋音楽の教科書』でポピュラーへ、『図解 日本音楽史』か『決定版 はじめての音楽史』で日本へ。最後に『西洋音楽史の原風景』や『バロックの光と闇』のような評論文を読むと、知識が「語れる言葉」に変わる。
橘ナナミ
一冊目で完璧を狙わないほうがいいんですね。
佐藤メバル
そう。最初の一冊で全部わかろうとすると必ず止まる。わからない作曲家の名前は飛ばして読むくらいの気持ちでいい。読み終えたときに「次はこの人の時代を読みたい」と思えたら、その本は成功なんだ。
よくある質問
音楽史の本は、楽譜が読めなくても理解できますか?
橘ナナミ
音楽史の本は、楽譜が読めなくても理解できますかについて教えてください。
佐藤メバル
読めます。『西洋音楽史』『ものがたり西洋音楽史』『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』などは譜面の知識を前提にしていません。例外は『楽譜でわかるクラシック音楽の歴史』で、こちらは譜例を読み解くことが目的の本なので、譜面に抵抗があるうちは後回しで構いません。
音楽史と音楽理論は、どちらを先に読むべきですか?
橘ナナミ
音楽史と音楽理論は、どちらを先に読むべきですかについて教えてください。
佐藤メバル
歴史から入るのがおすすめです。理論は様式の変化のなかで意味を持つので、流れを知らないまま用語だけ覚えると定着しにくい。『大人の音楽史入門』は著者が楽典関連の書籍を多く手がけていることもあり、歴史から理論への橋渡しに向いています。
クラシックが苦手でも楽しめる音楽史の入門書はありますか?
橘ナナミ
クラシックが苦手でも楽しめる音楽史の入門書はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
『歴史を知ればもっと楽しい!西洋音楽史の教科書』が向いています。前半でクラシックの時代を追い、後半は1800年以降のポピュラー音楽をブルース、ジャズ、ロックンロール、ヒップホップ、EDMまで扱う構成なので、好きなジャンルから入って歴史へ戻れます。
ポピュラー音楽(ロック・ヒップホップ・J-POP)の歴史を学べる本は?
橘ナナミ
ポピュラー音楽(ロック・ヒップホップ・J-POP)の歴史を学べる本はについて教えてください。
佐藤メバル
横断的なら『歴史を知ればもっと楽しい!西洋音楽史の教科書』、ロックに絞るなら『ロックの歴史』、ジャズなら『至高の日本ジャズ全史』です。日本ジャズについては、大正年間にすでに演奏者がいたところから戦後の現場までを追っており、参考音源リストも付いています。
音楽ビジネスや音楽業界で働きたい人向けの本は何がおすすめですか?
橘ナナミ
音楽ビジネスや音楽業界で働きたい人向けの本は何がおすすめですかについて教えてください。
佐藤メバル
このラインナップは歴史書が中心なので、実務書そのものは含まれていません。ただし『歴史を知ればもっと楽しい!西洋音楽史の教科書』は、1960年代に音楽がビッグ・ビジネス化した過程や、インターネット普及で変わる音楽の現在までを扱っており、業界の今が歴史の延長だと掴めます。
最初に読むべき一冊は、目的別にどう選べばいいですか?
橘ナナミ
最初に読むべき一冊は、目的別にどう選べばいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
全体像なら『西洋音楽史』、耳で確かめながらなら『人生が楽しくなる 西洋音楽史入門』、日本音楽なら『図解 日本音楽史』、続けやすさ重視なら『解きながら楽しむ 大人の西洋音楽史』。目的が違えば最適な一冊も変わると考えてください。
絶版・入手困難な音楽書はどうやって探せばいいですか?
橘ナナミ
絶版・入手困難な音楽書はどうやって探せばいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
『古楽とは何か』や『教会音楽史と賛美歌学』は刊行から年数が経っているため、図書館や古書店も選択肢に入れてください。一方で『大人の音楽史入門』のように改訂版が出ている本、『決定版 はじめての音楽史』のように版を重ねて内容が更新された本は、まず最新版を確認するのが確実です。
音楽について文章を書く力を伸ばせる本はありますか?
橘ナナミ
音楽について文章を書く力を伸ばせる本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
批評の言葉に触れるのが近道です。美術史家が音楽や演劇まで横断して論じる『バロックの光と闇』、名曲の背景を愛聴盤から綴る『西洋音楽史の原風景』は、書き手がどう視点を運び、どう根拠を示すかを盗み読みできます。
まとめ
橘ナナミ
今日の話を聞いて、音楽史の本って「正解を覚える本」じゃないんだなと思いました。
佐藤メバル
そうだね。年号や人名を暗記しても、音楽そのものは変わらない。でも「この曲が生まれたとき、世の中はこうだった」と知ると、同じ音が別のものに聴こえはじめる。『革命と戦争のクラシック音楽史』が示すように、音楽は歴史の史料にもなるんだ。
橘ナナミ
私、まず『ものがたり西洋音楽史』から始めてみます。それで、ロックのほうにも寄り道していいですか?
佐藤メバル
もちろん。寄り道こそが音楽史の醍醐味だよ。クラシックの通史を読んでから『ロックの歴史』を開くと、イギリスとアメリカが互いの音楽を誤読しながら進化させた過程が見えてくる。逆にロックから入って『西洋音楽史』に戻る読み方も、全然ありだ。
橘ナナミ
順番に縛られなくていいんですね。
佐藤メバル
音楽史の本は、レコードの溝をたどる針みたいなものだ。一本の溝を深く掘ってもいいし、針をそっと隣の溝へ移してもいい。移った瞬間に、クラシックとポピュラーと邦楽の境目が、切れ目ではなく音の続きとして聞こえてくる。その境目が消えたときが、このテーマの本当の面白さだよ。
