民族音楽が学べる本のおすすめ人気ランキング20選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、今度「民族音楽」の本をまとめるんですよね。正直、何から手をつけていいのか……。遠い国の太鼓や笛のイメージで、自分ごとにならないんです。
佐藤メバル
いい質問だね。そこが最初のつまずきなんだ。『民族音楽学12の視点』の冒頭にも、「民族」とついてはいるけれど、この学問は遠い異国の音楽だけを扱うわけではない、と書かれている。あらゆる音楽が対象になる。毎日聴いている曲だって、視点を変えれば研究対象になるんだよ。
橘ナナミ
えっ、そうなんですか! じゃあ「民族音楽=よその国」という括り方自体、ちょっとずれてる?
佐藤メバル
そう。だから選ぶときも、「珍しい楽器を知りたい」のか「音楽を文化として考えたい」のかで、まったく違う棚になる。書店員だった頃、この二つをごっちゃにして棚を作って、ひどくわかりにくくなった失敗がある。
橘ナナミ
なるほど……! 選び方を、軸から整理してもらえますか。
民族音楽が学べる本の選び方
聴くためか、弾くためか、研究するためか
橘ナナミ
目的別と言われても、私なら「聴く」しかないんですけど。
佐藤メバル
それでいい。聴く入口なら『楽器の音色がすぐ聴ける 世界の民族楽器図鑑』。オールカラーの写真と、QRコードで聴ける音色が連動している。読むことと聴くことが同時に進む本は貴重だ。読み物として世界を眺めたいなら『はじめての世界音楽』。アジア中心の世界地図を西から東へ進む構成で、グローサリーと索引が充実しているから、小辞典としても使える。
橘ナナミ
弾きたい人は?
佐藤メバル
演奏家の立場で書かれた本は別の棚になる。『ガムラン入門』は、楽譜がなくても合奏できる、ドレミとは違う音律、ずれていることが普通、というジャワガムランの考え方を、写真と動画で解説していく。二胡なら『絶対!うまくなる 二胡 100のコツ』で、音程やヴィブラート、ポルタメントまで実践的に扱っている。研究するなら『民族音楽学12の視点』や『アフリカ音楽学の挑戦』で方法論から入る。
初学者・学部生・大学院とレベルで分ける
橘ナナミ
レベル分けの境目って、どこなんですか。
佐藤メバル
初学者には、まず一冊で全体の地図をくれる本。『民族音楽学12の視点』は、身体、舞踊、楽譜、言葉、伝承と政策、マイノリティ、越境、著作権と、地域別ではなく横断的な視点で並べている。専門的な音楽経験がなくても読めるように編まれた入門書だ。学部生なら『はじめての世界音楽』のような概説で地域の知識を足し、大学院・研究者なら音楽民族誌に進む。
橘ナナミ
『アフリカ音楽学の挑戦』は、ルヴァレとファンティという二つの社会を、構造分析と社会史という違う方法で扱っているんですよね。
佐藤メバル
よく読んでるね。同じ著者が二つのアプローチを使い分けているから、「方法論を選ぶ」という感覚がつかめる。入門書との差はそこにある。
概説・図鑑・辞典・フィールドワーク記
橘ナナミ
形式でも性格が変わるんですか。
佐藤メバル
大きく変わる。概説書は全体像、図鑑はモノから、辞典は調べるため、フィールドワーク記は体験から入る。『中東世界の音楽文化』は論文集だけれど、冒頭の基礎解説と最後の座談で全体がつかめるようになっていて、入門書としても使える。読み物なら水野信男さんの『音の大地を歩く』や『中東・北アフリカの音を聴く』がいい。前者は日本各地の伝統芸能から中東の音風景まで、後者はアザーンやコーラン朗唱、スーフィーの歌舞、東方教会の聖歌まで、音を文章でたどれる。
地域とジャンルから選ぶ
橘ナナミ
アフリカ、中東、インド、ガムラン……どこから入れば。
佐藤メバル
好きな音から入るのがいちばん。インドなら、声楽家で音楽学者のプラバー・アトレが語った『インド古典音楽入門』が、ラーグやタールの基礎から即興の組み立てまで説明してくれる。現代のシーンを広く眺めるなら『新しいインド音楽の世界』。ヨーロッパなら『バルトークの民俗音楽の世界』で、ハンガリー、ルーマニア、スロヴァキアの民謡がどう作品になったかを追える。スペインは『約束の地、アンダルシア』。日本の伝統音楽なら『合本日本伝統音楽の研究』や『なんてったって邦楽』がある。
橘ナナミ
日本のものも「民族音楽」なんですね。
佐藤メバル
そう。『音の歳時記』は、季節の音から邦楽の世界へ入っていく。身近なところに入口を作ってくれる本だ。
著者の立場と、手に入るかどうか
橘ナナミ
同じテーマでも、書いた人で読み味が違いますよね。
佐藤メバル
研究者の本は概念の整理と検証、演奏家の本は身体感覚、エッセイやルポは体験が中心になる。『音楽の窓』のように、西洋音楽の中の民族性という角度から書く本もある。『異なる時間の音楽』は即興と民族楽器をめぐる考察で、オンデマンドで出ている本だから店頭では出会いにくい。絶版や品切れの名著は、図書館や古書を当たるほうが早いこともある。
民族音楽が学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、20冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
民族音楽が学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
民族音楽学12の視点
徳丸吉彦 著|音楽之友社
¥2,750(税込)
「民族音楽学」と聞くと遠い国の音楽を扱う学問に見えるが、本書はあらゆる音楽を対象にする学問だと最初に宣言する。地域別・ジャンル別ではなく、響きと身体、伝承と政策、社会の中の音楽という三つの視点で横断する構成が特徴で、リズムや音組織、フィールドワークなど7つのコラムも読みごたえ十分。専門的な音楽経験がなくても読めるよう編まれた入門書で、類書より視点の整理が際立つ。
こんな人におすすめ
音楽に知的な好奇心はあるが専門教育は受けていない人、文化人類学や社会学から音楽を考えたい学生、無形文化遺産や著作権といった社会と音楽の接点に関心がある読者に。最初の一冊として通読し、関心のある章から読み返す使い方も向く。
良い点
- 横断的な視点で整理されている
- 7つのコラムが読みごたえ
- 専門知識がなくても読める
気になる点
- 全体像はやや難解
- 図版は多くない
- 索引頼みの読み方になる
出版社
音楽之友社
発売日
2016年03月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「民族音楽学」って名前だけ聞くと、遠い国の音楽を研究する学問という印象なんですが、佐藤さん、そもそも何を扱うんですか?
佐藤メバル
いい質問だね。そこが誤解されやすくて、この本は「民族音楽学は遠い異国の音楽だけを扱うものではない」と最初に釘を刺している。
あらゆる音楽を対象にする学問なんだ。しかも地域別・ジャンル別に並べないで、身体、伝承と政策、社会の中の音楽という三つの視点で横断していく。
12の論と7つのコラムで、入門書なのに視野が広い。
橘ナナミ
横断、つまり日本もインドも同じ土俵で考えましょう、ということですか?
佐藤メバル
そう。舞踊と音楽の関係、楽譜という書記性、ユネスコの無形文化遺産、マイノリティや著作権。民族音楽学が今どんな問いを抱えているかが立体的に見えてくる。
専門的な音楽経験がなくても読めるよう編まれているから、音楽に知的な好奇心がある人には最初の一冊として薦めたい。
はじめての世界音楽
柘植元一 著|音楽之友社
¥2,200(税込)
諸民俗の音楽文化の基礎知識を提供しつつ、その研究領域の最新の考え方や理解の枠組みを紹介する一冊。世界のポピュラー音楽も射程に入れ、音楽文化が変容する側面に目を向ける。地域の説明はアジアを中心にすえた世界地図の西から東へと進む構成で、詳細なグローサリーと索引を備えるため世界音楽の小辞典としても使える。基礎から枠組みまで一冊で押さえられる。
こんな人におすすめ
世界の音楽をまず地図と基礎知識から眺めたい人、授業や自主勉強の索引として手元に置きたい人、ポピュラー音楽を含めて世界の音を考えたい読者に。辞書的に引く使い方と通読の両方に向く。
良い点
- グローサリーと索引が充実
- 西から東への構成が明快
- ポピュラー音楽も扱う
気になる点
- 刊行から年数がたつ
- 図版は控えめ
- 地域ごとの深掘りは浅い
出版社
音楽之友社
発売日
1999年06月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「世界音楽」って言葉、学校の教科書でも見た気がするんですが、この本はけっこう前に出たんですよね。今読んでも大丈夫なんですか?
佐藤メバル
そこは正直に言っておくと、刊行から時間が経っているぶん、最新の動きは別の本で補う必要がある。ただ、この本の強みは基礎知識と理解の枠組みを丁寧に与えてくれるところで、しかも地域の説明をアジア中心の世界地図の西から東へ進める構成が明快なんだ。
詳細なグローサリーと索引があるから、世界音楽の小辞典として今でも手元に置いて使える。
橘ナナミ
小辞典として使う、というのは、最初から通して読まなくてもいいんですね。
佐藤メバル
そう。ポピュラー音楽も射程に入れて、音楽文化が変容していく側面に関心を払っているから、固まった知識というより動いている音楽の見取り図として読める。
前提の枠組みをここで作っておいて、新しい本で更新する。そういう土台の一冊だと思ってくれるといい。
楽器の音色がすぐ聴ける 世界の民族楽器図鑑
民音音楽博物館 著|河出書房新社
¥2,475(税込)
オールカラーの写真と、民族楽器の音色が聴けるQRコードが連動した図鑑。貴重な音源をスマートフォンなどで手軽に聴けるのが最大の持ち味で、各楽器の仕組みや弾き方、歴史まで平易に解説する。楽器の音色を実際に確かめながら、その楽器がたどってきた歴史に思いをはせられる構成は、文字だけの事典や音源だけのCDとは体験の質が違う。
こんな人におすすめ
民族楽器の音をまず耳で知りたい人、世界の楽器を眺めながら頁をめくる楽しみを求める人、子どもと一緒に音と写真を確かめたい家庭に。図鑑としても音源集としても使える。
良い点
- 音色をQRコードで再生
- オールカラーの写真が豊富
- 仕組みと歴史まで解説
気になる点
- 網羅性は限られる
- 通信環境が必要
- 演奏法の深掘りは浅い
出版社
河出書房新社
発売日
2018年07月26日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
QRコードで音が聴ける図鑑……これ、スマホを片手に読む感じですか?
佐藤メバル
まさにその読み方を想定した作りだね。オールカラーの写真と音源が連動していて、貴重な音源を手軽に聴ける。
楽器の仕組みや弾き方、歴史まで解説してくれるから、名前だけ知っていた楽器の音を初めて耳にしたときの驚きが大きい。
文字だけの事典だと想像で埋めてしまう部分を、この本は実際の音で埋めてくれる。
橘ナナミ
なるほど。写真を見て、音を聴いて、解説を読む、と。順番を自由に変えられそうですね。
佐藤メバル
そう。ただ、全部の楽器を網羅しているわけではないから、これで世界の民族楽器を制覇しようと思うより、入口として楽しむのがいい。
子どもと一緒に頁をめくりながら、ひとつずつ音を確かめていく使い方も楽しいと思うよ。
音の大地を歩く
水野信男 著|スタイルノート
¥2,200(税込)
アラブ音楽研究の第一人者によるエッセイ集で、日本各地の伝統芸能から中東の音風景、クラシック音楽の考察までを自在に綴る。沖縄・八重山、四天王寺の雅楽、黒川能、文楽、幸若舞といった足元の音から始まり、ユダヤ教の音楽やイスラームの宗教儀礼における声へと広がる。音とは何かを考えさせられる名文が並び、研究書というより読み物として楽しめる。
こんな人におすすめ
研究書の前にまず読み物として音の世界に触れたい人、国内の民俗芸能と海外の音を同じ視点で眺めたい人、エッセイで音楽の背景を味わいたい読者に。寝る前の一編に向く。
良い点
- 文章が読みやすく名文揃い
- 日本と海外を往復する構成
- 著者の体験が生きている
気になる点
- 体系的な教科書ではない
- 話題が広く散らかる
- 図版は多くない
出版社
スタイルノート
発売日
2012年09月19日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
沖縄、四天王寺、黒川能、文楽、幸若舞……日本各地の話から始まるんですね。中東の研究者の方が書いているのに、意外です。
佐藤メバル
そこがこの本の面白さでね。著者はアラブ音楽研究の第一人者だけれど、まず足もとの日本各地の音から書き起こす。
そのうえで中国、フランス、中東の音風景へと広がって、最後はクラシック音楽のソナタ形式まで考えが及ぶ。
研究書というよりエッセイ集で、音とは何か、音楽とは何かを歩きながら考えるような一冊なんだ。
橘ナナミ
旅の記録でもあるんですか?
佐藤メバル
そう、地球音楽出会い旅シリーズの一冊で、現地の見聞記が相当量を占めている。だから体系立てて学ぶ本ではないけれど、音に対する感受性を耕してくれる。寝る前に一編ずつ読むのが似合う本だよ。
インド古典音楽入門
プラバー・アトレ 著|スタイルノート
¥5,500(税込)
北インド古典音楽の第一人者である声楽家・音楽学者が、リスナーのためにその魅力と聴き方を語った一冊。ラーグやタールといった基礎概念から、バンディッシュ、アーラープ、ターン、サルガムまで、演奏を形づくる要素を専門用語に偏らず実践的に解説する。キヤール、トゥムリー、ガザル、映画音楽まで比較しながら、伝統と革新、教育や批評にも踏み込む聴き手のための入門。
こんな人におすすめ
インド古典音楽のコンサートに行く前に予習がしたい人、ラーグやタールの名前は聞いたことがある聴き手、即興がどう組み立てられるのかを知りたい演奏者に。聴く前の予習に。
良い点
- 演奏の組み立てが具体的
- ジャンル比較が豊富
- 訳者による表記の配慮
気になる点
- 分量が多く読み応え十分
- 専門用語はやはり多い
- 音源は付属しない
出版社
スタイルノート
発売日
2026年04月22日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ラーグとタールって名前は聞いたことがあるんですが、その先がさっぱりで……。この本は聴く側のための本なんですよね?
佐藤メバル
そう。北インド古典音楽の第一人者である声楽家で音楽学者の著者が、リスナーに向けて語った本なんだ。音楽家が舞台上でどう即興を組み立て、音に生命を吹き込むのかが具体的に見えてくる。
バンディッシュ、アーラープ、ターン、サルガムといった要素を、専門用語に偏りすぎず実践的に説明している。
橘ナナミ
即興って、自由に弾いているだけじゃないんですね。
佐藤メバル
そこが誤解で、決まった枠組みの中で組み立てていく技術なんだ。キヤール、トゥムリー、ガザル、映画音楽まで比較しながら、伝統と革新の関係、教育や批評のあり方まで踏み込む。
コンサートの前に読むと、聴こえ方が変わるタイプの入門書だよ。
ガムラン入門
東京音楽大学付属民族音楽研究所 著|スタイルノート
¥3,300(税込)
楽譜がなくても合奏できる、ドレミとは違う音律、ずれていることが普通。西洋音楽とは哲学から違うジャワガムランと舞踊の入門書。歴史から楽器と奏法、合奏の実践、踊りの基礎、用語集までを写真とQRコードの動画で丁寧に解説する。2021年にユネスコ無形文化遺産に登録されたガムランを、読み・見て・聴いて学べる本邦初の入門書。
こんな人におすすめ
ガムランを聴いたことはあるが仕組みを知らない人、音楽大学や社会人講座でガムランに触れる前に予習したい人、ジャワ舞踊に関心のある読者に。合奏の入門として。
良い点
- 動画と音で学べる
- 楽器の役割ごとに整理
- 用語集とディスコグラフィー
気になる点
- 実技なしでは限界がある
- 分量はやや多め
- 舞踊は概要中心
出版社
スタイルノート
発売日
2023年08月08日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ずれていることが普通」って、どういうことなんですか? 合奏なのにずれるんですか?
佐藤メバル
いい質問だね。西洋音楽なら合わせることが目標になるけれど、ジャワガムランではずれや伸び縮みがアレンジの妙として機能する。
この本はまずガムランとは何かから説き起こして、楽器を役割ごとに紹介し、実際に合奏の入門曲と初級曲を練習する章まで進む。
太鼓がテンポを指示し、歌が装飾する、という役割の分け方が見えてくると面白いよ。
橘ナナミ
読みながら練習もできるんですね。
佐藤メバル
そう。写真やQRコードの動画で確かめられるのが助かる。2021年にユネスコ無形文化遺産に登録されたこの音楽を、読んで、見て、聴いて学べる本は他になかなかない。
ジャワ舞踊の章と用語集まで付いてくるので、一冊で全体像がつかめる。
アフリカの音
沢田としき 著|講談社
¥1,870(税込)
かわいた風に乗って聞こえてくる太鼓の音から始まる絵本。太鼓とともに生きるアフリカの人たちの暮らしと、生命の連なりや大地の恵みへの感謝を、魅惑的なイラストで伝える。文字で説明する民族音楽の入門書ではなく、音の記憶を絵で体験させる一冊で、日本絵本賞や厚生省中央児童福祉審議会推薦文化財にも選ばれている。
こんな人におすすめ
子どもに音やリズムの世界を伝えたい人、絵本から音楽に親しみたい家庭、太鼓やアフリカの暮らしに関心のある読者に。読み聞かせの場に。
良い点
- イラストが魅力的
- 短く読みやすい
- 受賞歴のある一冊
気になる点
- 情報量は多くない
- 楽譜や解説はない
- 対象は子ども向け
出版社
講談社
発売日
1996年03月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これ、絵本なんですよね。音楽の本の紹介に絵本が入るの、ちょっと意外です。
佐藤メバル
そこはランキングというより、民族音楽に触れる入口として挙げたい一冊でね。かわいた風に乗って聞こえてくる太鼓の音から始まって、太鼓とともに生きるアフリカの人たちの、生命の連なりや大地の恵みへの感謝が、魅惑的なイラストで描かれる。日本絵本賞にも選ばれている。
橘ナナミ
字が少なくても、伝わるものがあるんですね。
佐藤メバル
文字の情報量でいえば多くない。でも、音の記憶を絵で体験させる力がある。子どもに読み聞かせながら、大人が音の原風景に出会い直すような本だと思う。
中東世界の音楽文化
西尾哲夫 著|スタイルノート
¥3,960(税込)
中東世界の音楽文化を、繋ぐ・継ぐ・紡ぐ・創るという四つの切り口で分析する論文集。ウンム・クルスームのレパートリー、イランのポピュラー音楽、ベリーダンス、サントゥール、チュニジアの伝統音楽研究所など、フィールド調査に基づく具体例が並ぶ。冒頭の基礎解説と最後の座談で全体像がつかめるので、入門書としても使える構成になっている。
こんな人におすすめ
中東の音楽を研究の視点から知りたい人、ベリーダンスやウンム・クルスームの背景を掘りたい読者、音楽と社会の関係を考えたい学生に。論文の入口として。
良い点
- 現地調査に基づく具体例
- 四つの切り口が明快
- 冒頭と座談で全体像
気になる点
- 論文集で硬め
- 図版は多くない
- 前提知識が要る箇所も
出版社
スタイルノート
発売日
2016年09月23日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
論文集なんですね。入門書としても使える、とあるのが気になります。
佐藤メバル
冒頭に基礎解説があって、最後に座談が置かれているから、専門の論文に入る前に全体像をつかめるようになっている。
本編は繋ぐ、継ぐ、紡ぐ、創るという四つの切り口で、ウンム・クルスームのレパートリーやイランのポピュラー音楽、ベリーダンス、サントゥール、チュニジアの伝統音楽研究所などが並ぶ。フィールド調査に基づく具体例が中心だ。
橘ナナミ
繋ぐ、継ぐ、紡ぐ、創る、で分けるの、面白いですね。
佐藤メバル
そう、伝統を固定したものとしてではなく、不断に生まれ変わるものとして扱っている。中東の音楽を、西洋との越境や行き来の中で見ていて、入門書にもなる論集という珍しい作りだよ。
中東・北アフリカの音を聴く
水野信男 著|スタイルノート
¥2,420(税込)
イランからセネガル、ポルトガルまで、中東と北アフリカを中心に長年フィールドワークを続けてきた民族音楽学者のエッセイ集。アザーンやコーラン朗唱、スーフィーの歌舞、東方教会の聖歌、ユダヤ音楽、アラブ古典音楽、アンダルス音楽までを音の視点から綴る。戦乱以前の各地の様子が記録されている点も貴重で、音の民族誌として読める。
こんな人におすすめ
中東の音楽を宗教や暮らしの音から知りたい人、アラビアンナイトの世界の背景に触れたい読者、地域研究と音楽を結びつけたい人に。旅先の予習にも。
良い点
- 広い地域を一冊で扱う
- 宗教儀礼の記述が詳しい
- 戦前の記録として貴重
気になる点
- 内容はやや専門的
- 図版は少なめ
- 分量が多め
出版社
スタイルノート
発売日
2008年05月09日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
アザーン、コーラン朗唱、スーフィーの旋舞、東方教会の聖歌……宗教の話が多いんですね。
佐藤メバル
そう、宗教儀礼における声や音を丁寧に扱っている。エジプトの沙漠の音風景から始まって、アザーン、ジクル、南シナイの聖カトリーナ修道院、コプト教会、ユダヤ音楽、そしてアラブの古典音楽とアンダルス音楽まで進む。
長年フィールドワークを続けてきた著者だからこそ書ける密度だね。
橘ナナミ
戦乱以前の各地の様子が書かれている、というのも気になります。
佐藤メバル
そこが記録として貴重なところでね。今では訪ねにくくなった場所の音が残っている。政治的に注目される地域を音の視点から描いたエッセイ集として、地域研究の本とは違う角度から読めるよ。
アフリカ音楽学の挑戦
塚田健一 著|世界思想社
¥6,380(税込)
南部アフリカのサバンナの民ルヴァレと、西アフリカの熱帯雨林の民ファンティ。著者は双方の社会で人びとと暮らしをともにし、構造分析的アプローチと社会史的アプローチというまったく異なる方法で音楽民族誌を提示する。太鼓音節とオノマトペ、文化政策の衝撃、伝統的著作権意識の変容など、方法論の刷新を促す一冊。
こんな人におすすめ
アフリカ音楽を本格的に研究したい人、民族誌の書き方に関心がある学生、音楽と政治権力の関係を考えたい読者に。研究の指針として。
良い点
- 二地域を比較できる
- 方法論が明確
- 総覧と索引が充実
気になる点
- 専門書で難度が高い
- 分量が多く重い
- 通読には根気が要る
出版社
世界思想社
発売日
2014年02月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ルヴァレとファンティ、二つの社会で暮らした上で、まったく違う方法を使い分けている……そこがこの本の核なんですか?
佐藤メバル
まさにそこが挑戦でね。南部アフリカのサバンナの民ルヴァレには構造分析的アプローチ、西アフリカの熱帯雨林の民ファンティには社会史的アプローチを適用する。
分類基準としてのリズム、和声的多様性の原理、太鼓音節とオノマトペ、そして軍楽や宮廷音楽、文化政策の衝撃まで扱う。
橘ナナミ
音楽の本なのに、著作権の話まで出てくるんですね。
佐藤メバル
伝統的著作権意識の変容を論じている。つまり音楽を音の構造だけでなく、社会と権力の中に置いて考える。民族音楽学の方法論を更新しようとする挑戦の書だから、入門書の次に読む一冊だね。
バルトークの民俗音楽の世界
アキコ・パップ 著|音楽之友社
¥2,035(税込)
バルトークが使用人の口ずさんだ素朴なメロディに衝撃を受け、ハンガリー、ルーマニア、スロヴァキアの民俗音楽を採集・分析して作曲技法を確立するまでの道筋をたどる。題材は《子供のために》や《ルーマニア民俗舞曲》など子どものためのピアノ作品で、旋律構造や音階、リズム、歌詞の意味を譜例とともに解説。レッスンと演奏に直結する。
こんな人におすすめ
バルトーク作品を弾くピアノ学習者と指導者、民俗音楽をレッスンに取り入れたい人、民謡と作曲の関係を知りたい読者に。譜面の背景を読むために。
良い点
- 譜例と歌詞訳が豊富
- 演奏アドバイスが満載
- 作品と民謡を結ぶ
気になる点
- ピアノ作品中心の内容
- 民俗音楽全般は扱わない
- 上級者向けの記述も
出版社
音楽之友社
発売日
2015年07月28日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ピアノを習っていた人には馴染みがありそうな《子供のために》が題材なんですね。
佐藤メバル
そう。1904年、使用人リディが口ずさんだ素朴なメロディを聞いたバルトークが、真のハンガリー精神は農村に伝承される民族音楽にあると確信し、ハンガリー、ルーマニア、スロヴァキアの旋律を採集・分析して、独自の作曲技法を確立していく過程をたどる。
旋律構造、音階、リズム、イントネーション、歌詞の意味まで解説する。
橘ナナミ
楽譜は読めなくても大丈夫ですか?
佐藤メバル
譜例は豊富だから、読めるほうが理解は早い。ただ、歌詞訳や演奏アドバイスも載っているから、演奏する人にはレッスンの相棒になる。
バルトーク作品を弾いている学習者と、教える立場の人に特に薦めたい。
新しいインド音楽の世界
軽刈田凡平 著|春秋社
¥2,640(税込)
インド映画の音楽、カレー屋で流れるBGM、ビートルズ、ゴアトランス、ロック、ヒップホップ、EDM、そして古典音楽。インド音楽ライターが、混沌のグルーヴを縦横に案内する。パンジャーブのラップやムンバイの路地裏のシーン、抵抗の音楽まで踏み込み、今のインド音楽の地図を描き出す。古典の入門書とはまるで別方向の一冊。
こんな人におすすめ
インドのポピュラー音楽を掘りたい人、ボリウッドやゴアトランスの背景を知りたい読者、音楽と社会運動の関係に関心がある人に。旅と音楽のガイドとして。
良い点
- 話題の幅が広い
- 現地の空気が伝わる
- 旅コラムが楽しい
気になる点
- 古典音楽の深掘りは少なめ
- 好みが分かれる内容
- 分量はやや多め
出版社
春秋社
発売日
2026年06月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
カレー屋で流れるBGM、ビートルズ、ゴアトランス、ヒップホップまで出てくるんですか。古典音楽の本とはだいぶ違いますね。
佐藤メバル
まるで別方向の一冊だね。インド音楽ライターが、映画音楽、インディペンデント、パンジャーブのラップ、ムンバイの路地裏のシーン、ゴアのダンスカルチャー、そして抵抗の音楽までを案内する。
インド人が英語で歌う曲を誰が聴くのか、みたいな問いも立てていく。
橘ナナミ
古典音楽の章もあるんですよね?
佐藤メバル
最終盤に「新しくなり続ける古典音楽」の章があって、iPadで奏でる古典音楽やヒップホップとの接続まで扱う。
混沌を混沌のまま見せてくれる本で、旅と音楽のガイドとして読むと面白いよ。
【POD】異なる時間の音楽:民族楽器からImprovisationのその先へ
末冨健夫 著|TPAF
¥2,339(税込)
「音楽でひとつになる」を疑うところから始まる一冊。相手を自分の音楽に取り込まず、自分も吸収されず、違ったまま同じ場に居続ける。その可能性を即興の実践で考える。大倉正之助の大鼓、照喜名仙子のガムラン、海童普賢の法竹、富松慎吾の大太鼓という換算できない四つの時間、韓国の打楽器奏者・金大煥の問いを軸に、合わせない音楽を論じる。
こんな人におすすめ
自由即興や現代音楽に関心がある人、民族楽器の時間感覚を考えたい演奏家、音楽で一体化することに違和感を持つ読者に。即興の思想書として。
良い点
- 即興論として刺激的
- 四人の演奏家の記述が具体的
- 問いの立て方が新しい
気になる点
- 難解な箇所がある
- 音源は別途必要
- 抽象度が高い
出版社
TPAF
発売日
2026年08月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「音楽でひとつになる」を疑う、という出だしが気になります。それって、なんだか寂しい話ですか?
佐藤メバル
否定の話じゃないんだ。一体感や調和が悪いわけではなく、それだけが共演の完成形なのか、と問うている。相手を聴きながら相手を自分の音楽に取り込まず、自分も吸収されず、違ったまま同じ場に居続ける。
その可能性を即興の実践で考える。大鼓、ガムラン、法竹、大太鼓という換算できない四つの時間が並ぶ。
橘ナナミ
韓国の打楽器奏者・金大煥という人の話も出てくるんですね。
佐藤メバル
彼の「ワン・ビート」と「これが自由なの」という言葉が、こちらの自由観を揺さぶり続ける。最終的な定義は置かれていないけれど、合わせない音楽の思想として貴重な一冊だと思う。
約束の地、アンダルシア
濱田滋郎 著|アルテスパブリッシング
¥3,080(税込)
日本を代表する音楽評論家でスペイン文化研究家の著者が、フラメンコがなぜアンダルシアにのみ生まれたのかを、地誌・歴史・民族から解き明かす。古代から現代までを追い、イスラム盛期の大音楽家、詩人の国、ユダヤ人やヒターノの存在を描き、写真も豊富。フラメンコの入門書ではなく、その手前の土壌を描く文化論。
こんな人におすすめ
フラメンコを聴く前に背景を知りたい人、スペイン史と音楽を結びつけたい読者、写真でアンダルシアを味わいたい人に。旅の供として。
良い点
- 写真が美しい
- 歴史の記述が厚い
- 巻末に年表と参考文献
気になる点
- フラメンコ専門書ではない
- 話が広く長い
- 予備知識があると楽しめる
出版社
アルテスパブリッシング
発売日
2020年04月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
フラメンコの本かと思ったら、古代から始まるスペイン文化論なんですね。
佐藤メバル
そう、フラメンコがなぜアンダルシアにのみ生まれたのかを、地誌と歴史から解き明かそうとする。西欧最古の文明、モーロ人がもたらした文化、詩人の国、ユダヤ人とのきずな、ヒターノの存在。
フラメンコ専門の月刊誌に連載された文章がもとになっていて、写真も豊富なんだ。
橘ナナミ
フラメンコの入門書ではない、ということですか?
佐藤メバル
フラメンコそのものより、その土壌になった土地を描いている。だから踊りや曲の解説を期待すると的外れになるけれど、なぜこの地でこの芸能が生まれたのかを知りたい人には、これ以上ない一冊だよ。
合本日本伝統音楽の研究
小泉文夫 著|音楽之友社
¥11,000(税込)
「体験としての音楽」という視点から、私たちの足もとの文化を見つめなおした画期的研究の復刊。民謡研究の方法と音階の基本構造を論じた第一巻と、リズムを論じた第二巻を合本し、解題を付している。日本の音階やリズムをどう捉えるかの土台になる一冊で、邦楽や民謡を考える際に立ち返るべき古典。
こんな人におすすめ
日本音楽の音階やリズムを理論から学びたい人、民謡研究の方法を知りたい学生、邦楽の背景を体系的に押さえたい読者に。座右の一冊として。
良い点
- 理論の基礎が詰まっている
- 二巻合本で通し読みできる
- 解題が付いている
気になる点
- 専門書で難解
- 合本で厚く重い
- 図版は多くない
出版社
音楽之友社
発売日
2009年05月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
小泉文夫さんの名前は聞いたことがあります。合本というのは、二冊が一冊になったということですか?
佐藤メバル
そう。『日本傳統音楽の研究(1)民謡研究の方法と音階の基本構造』と『日本伝統音楽の研究(2)リズム』を合本して、解題を付けた復刊なんだ。
日本の音階やリズムをどう捉えるか、その土台を作った研究でね。民謡の研究方法と音階の基本構造、そしてリズムという二本柱で迫る。
橘ナナミ
「体験としての音楽」という視点、というのが気になります。
佐藤メバル
分析の対象としてではなく、自分が体験する音楽として私たちの足もとの文化を見つめ直した。邦楽や民謡を考えるときに立ち返るべき古典で、理論の座右の書と呼べる一冊だよ。
〈裏〉日本音楽史
齋藤桂 著|春秋社(千代田区)
¥2,640(税込)
西洋化と日本らしさの確立に揺れた近代。その過程で神話や都市伝説、怪談を持ち出して大真面目に「日本音楽とは何か」を説く音楽家や学者が現れた。非合理なのに魅惑的な言説の数々を、伝統音楽、軍歌、唱歌、民謡を題材に読み解いていく。言説の裏側から近代を捉え直す、通常の日本音楽史とはひと味違う一冊。
こんな人におすすめ
日本音楽史を斜めから眺めたい人、近代とナショナリズムに関心がある読者、音楽をめぐる俗説の由来を知りたい人に。近代音楽史の裏口として。
良い点
- 切り口が独特
- 言説の分析が丁寧
- 題材が身近
気になる点
- 体系史ではない
- やや硬質な記述
- 図版は少なめ
出版社
春秋社(千代田区)
発売日
2015年04月24日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「裏」日本音楽史、というタイトルが気になります。普通の日本音楽史とは何が違うんですか?
佐藤メバル
西洋化と日本らしさの確立に揺れた近代が舞台だ。その過程で、神話や都市伝説、怪談を持ち出して大真面目に「日本音楽とは何か」を説く音楽家や学者が現れた。
非合理なのに魅惑的な言説の数々を、伝統音楽、軍歌、唱歌、民謡を題材に読み解いていく。
橘ナナミ
怪談が出てくる音楽史って、想像がつかないです……。
佐藤メバル
そこが面白いところでね。何かを根拠づけようとすると、非合理な物語が動員される。その力学を追うことで、近代日本の音楽観そのものが見えてくる。通常の通史とはひと味違う読み物だよ。
なんてったって邦楽 - おもしろ日本音楽
釣谷真弓 著|東京堂出版
¥3,080(税込)
箏、三味線、尺八を中心に、歴史から楽器の構造、奏法、学校教育の現場までを軽妙な語りで解説する邦楽ガイドブック。Q&Aを挟みながら、琴と箏はどうちがうのか、なぜ山田流はまっすぐ座るのかといった素朴な疑問に答えてくれる。現代邦楽が抱える問題にも触れ、入り口として最適な一冊。
こんな人におすすめ
邦楽を聴き始めたいが何から知ればいいかわからない人、箏や尺八を習い始めた学習者、学校で邦楽を扱う教員に。最初の案内役として。
良い点
- Q&Aで読みやすい
- 歴史と楽器の両方を扱う
- 軽妙な語り口
気になる点
- 対象は主に箏と三味線と尺八
- 図版は控えめ
- 深掘りは控えめ
出版社
東京堂出版
発売日
2019年06月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
Q&Aがいっぱい入っているんですね。「なぜ山田流はまっすぐに座るの?」、私も聞いてみたいです。
佐藤メバル
そういう素朴な疑問に答えてくれるのがこの本の持ち味でね。箏、三味線、尺八を中心に、歴史から楽器の構造、爪や弦の話、奏法まで、軽妙な語りで解説していく。
琴と箏はどうちがうのか、検校ってなんのことか、といった疑問がどんどん解けていく。
橘ナナミ
学校教育の現場の話も入っているんですか?
佐藤メバル
そう、なぜ邦楽が学校に取り入れられにくかったのか、自治体の学校公演や部活指導の変遷まで触れている。現代邦楽の抱える問題や、楽器の素材が危機的なことまで書かれていて、入門書以上の射程がある。
音の歳時記
釣谷真弓 著|東京堂出版
¥2,200(税込)
季節を追いながら、身近な生活の中の音の風景を入り口に、四季折々に出合った音から伝統芸能をはじめとした邦楽の世界へ誘う。初もうでの神楽、東大寺お水取り、田んぼの音楽、古代の楽器、報恩講の仏教儀式など、暮らしの音が邦楽への入口になっていく。知らず知らず日本音楽の豊かさに触れられる一冊。
こんな人におすすめ
季節の音から日本音楽に入りたい人、年中行事と音楽の関係を知りたい読者、短いエッセイを少しずつ読みたい人に。日々の一頁として。
良い点
- 四季の構成が心地よい
- 暮らしの音が題材
- 短編で読みやすい
気になる点
- 体系的な解説ではない
- 専門知識は浅め
- 図版は多くない
出版社
東京堂出版
発売日
2011年01月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
四季の音から入るんですね。新春、春、夏、秋、冬、と。
佐藤メバル
初もうでの神楽の音から始まって、東大寺お水取り、田んぼのカエルの合唱、古代の楽器、報恩講の仏教儀式まで、身近な音の風景が入り口になる。
そこから伝統芸能や邦楽の世界へ、知らず知らず入っていける構成なんだ。
橘ナナミ
音の風景、という言い方がいいですね。特別な音楽じゃなくて、日常の音から。
佐藤メバル
そう、そこが肝でね。特別な演奏会に行かなくても、暮らしの中に音の文化はある。短い文章が並んでいるから、日々の一頁として少しずつ読むのが向いているよ。
音楽の窓
中村孝義 著|カワイ出版
¥2,200(税込)
西洋音楽の中の民族性、音楽と詩、室内楽という三つの窓から音楽を眺める。スメタナ「わが祖国」、アメリカのドヴォルザーク、ファリャやヒメネス、フォーレ「月の光」など具体例が並び、音楽は世界の共通語か、音楽には訛りがあるのではないかといった問いを立てる。クラシックを民族の視点で読み直す一冊。
こんな人におすすめ
クラシック音楽を民族や言葉の視点から考えたい人、室内楽の背景を知りたい愛好家、音楽と言葉の関係に関心がある読者に。演奏会の予習にも。
良い点
- 具体例が豊富
- 章立てが明快
- 読みやすい語り口
気になる点
- 内容はやや断章的
- 図版は少ない
- 新規の研究ではない
出版社
カワイ出版
発売日
2012年09月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「音楽は世界の共通語か?」「音楽には訛りがある」……この一文だけで読みたくなります。
佐藤メバル
そこがこの本の入口でね。西洋音楽の中の民族性、音楽と詩、室内楽という三つの窓から音楽を眺める。スメタナの「わが祖国」、アメリカのドヴォルザーク、ファリャやヒメネス、フォーレの「月の光」なんかが具体例として出てくる。
グレゴリオ聖歌と言葉の抑揚の関係も面白い。
橘ナナミ
室内楽の章では、何を論じているんですか?
佐藤メバル
室内楽がなぜヨーロッパ的と言えるのか、多民族による異なる個性と調和という観点から考えている。演奏会の前に読むと、聴きどころが変わる。
クラシックを民族の視点で読み直す一冊だよ。
絶対!うまくなる 二胡 100のコツ
賈鵬芳 著|ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
¥2,200(税込)
指が動かない、音程が定まらない、表現力を上げたい、楽器の手入れは、といった二胡の悩みに100のポイントで応える実践書。チューニングや構え方の基本から、ヴィブラートの種類、ポルタメント、ハーモニクス、楽器の調整やメンテナンス、練習の悩みまで段階的に扱う。伸び悩みの正体が具体的に見えてくる。
こんな人におすすめ
二胡を始めたばかりの初心者、独学で伸び悩んでいる人、教室に通いながら疑問を整理したい学習者に。練習の手引きとして。
良い点
- 100項目で引ける
- 初心者の疑問に即答
- メンテナンスも扱う
気になる点
- 楽曲の解説は少ない
- 音源は別途必要
- 上級者には物足りない
出版社
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日
2024年07月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
100のコツ、というだけあって質問形式なんですね。「私って音痴なんでしょうか?」みたいな悩みまで載っていて親近感があります。
佐藤メバル
そこがいいところでね。チューニングや構え方の基本から、音程を良くするコツ、美しい響きの作り方、ヴィブラートの種類と使い分け、ポルタメントの運用、ハーモニクスやトレモロ、そして楽器の調整やメンテナンスまで、100項目で順に答えてくれる。
橘ナナミ
「最近上達した気がしません」という項目、刺さる人が多そう。
佐藤メバル
そういう練習の悩みまで扱っているのが親切だね。著者は中国中央民族楽団でソリストを務めた演奏家で、来日後も幅広く活躍してきた人。
伸び悩みの正体を言葉にしてくれる実践書だよ。
「民族音楽」と「ワールドミュージック」は何が違う?
橘ナナミ
そもそも「民族音楽」と「ワールドミュージック」って、同じものだと思ってました。
佐藤メバル
そこは最初に整理しておきたいね。民族音楽は、ある地域や集団の中で受け継がれてきた音楽そのものを指す。ワールドミュージックは、レコード店や配信の棚の名前として、そうした音楽が世界で流通するときの呼び方。売り場の都合で生まれた言葉なんだ。『新しいインド音楽の世界』を読むと、インドの音楽が映画音楽やヒップホップ、EDMと混ざりながら今も作り替えられていく様子が見える。あの混ざり合いは、まさにワールドミュージックという棚が生まれた理由でもある。
橘ナナミ
つまり、音楽そのものの分類と、市場の分類は別なんですね。
学史と参照ツール——辞典・事典・論文入門の使い分け
橘ナナミ
学問として追うときは、どんな順番になるんでしょう。
佐藤メバル
まず学史。『民族音楽学12の視点』の最終章は「民族音楽学への流れ」で、この学問がどこから来たのかを示してくれる。かつては比較音楽学と呼ばれていた時期があり、そこから変わってきた。日本の文脈では小泉文夫が大きい。『合本日本伝統音楽の研究』は、民謡研究の方法と音階の基本構造、それにリズムを扱った研究で、復刊にあたって解題が付いている。
橘ナナミ
辞典や事典は、読む本というより引く本ですよね。
佐藤メバル
そう、位置づけが違う。用語の確認は辞典、全体の見取り図は概説書、先行研究の確認は論文。『中東世界の音楽文化』には引用や索引が備わっているし、『民族音楽学12の視点』にも引用・参考文献と索引がある。索引があるかどうかは、参照ツールとして使えるかの分かれ目だと思っている。
橘ナナミ
なるほど、索引の有無で選ぶという目は持ってませんでした。
音源と本を往復する/手に入りにくい本をどうするか
橘ナナミ
音源と本は、どう組み合わせるのがいいんでしょう。
佐藤メバル
聴く・弾く・読む・調べる、の四つを往復する。聴くは配信やCD、弾くは教則本、読むは概説とエッセイ、調べるは辞典と論文。『楽器の音色がすぐ聴ける 世界の民族楽器図鑑』や『ガムラン入門』はQRコードで音や映像に飛べるから、往復が物理的に楽なんだ。『インド古典音楽入門』のように、ラーグとタール、アーラープ、ターン、サルガムといった用語を押さえてから聴くと、同じ音がまるで違って聴こえる。
橘ナナミ
逆に、本がないと聴けないんですね。
佐藤メバル
聴くだけでもいい。でも言葉があると解像度が上がる。あともう一つ、現実的な話をすると、『異なる時間の音楽』のようにオンデマンドで出ている本は棚に並びにくい。絶版になった本は古書か図書館。大学図書館なら学外者でも閲覧できる場合があるし、公共図書館の相互貸借という手もある。手に入らないから読まない、ではなく、入手経路を先に決めてから選ぶと迷わないよ。
橘ナナミ
それは助かります。『アフリカの音』のような絵本も、児童書の棚にあるから見落としそうです。
佐藤メバル
そうそう。沢田としきさんの『アフリカの音』は、太鼓とともに暮らす人たちの生命の物語を、画家がイラストで描いた絵本で、日本絵本賞や厚生省中央児童福祉審議会推薦文化財にもなっている。民族音楽の入口として、大人が読んでもいい本だよ。
橘ナナミ
日本人著者と翻訳書の違いも気になります。
佐藤メバル
翻訳書はその言語圏の議論の前提をそのまま持ち込む。『インド古典音楽入門』は原著者と訳者が協議して表記を決めていて、訳者まえがきとあとがきを読むと、翻訳の判断まで見える。日本の著者の本は、日本語の読者の前提に合わせて書かれているぶん入口はやさしい。両方読むと、議論の厚みの違いがわかるよ。
よくある質問
民族音楽の入門書でいちばんおすすめの本はどれ?
橘ナナミ
民族音楽の入門書でいちばんおすすめの本はどれについて教えてください。
佐藤メバル
目的で変わります。音楽経験がなくても読める入門書として薦めやすいのが『民族音楽学12の視点』で、地域別ではなく身体・舞踊・伝承・政策・越境といった横断的な視点で編まれています。「まず音を聴きたい」ならQRコード付きの『楽器の音色がすぐ聴ける 世界の民族楽器図鑑』から入るのが早いです。入口は一つではないので、自分の関心に近いほうを選んでください。
民族音楽学を学ぶにはまず何を読めばいい?
橘ナナミ
民族音楽学を学ぶにはまず何を読めばいいについて教えてください。
佐藤メバル
『民族音楽学12の視点』で全体像と学史をつかむのが最初の一歩です。最終章「民族音楽学への流れ」で、比較音楽学から民族音楽学へという流れが確認できます。並行して『はじめての世界音楽』で地域ごとの基礎知識を足し、興味のある地域の音楽民族誌へ進むと迷いません。
民族楽器の図鑑や音源付きの本にはどんなものがある?
橘ナナミ
民族楽器の図鑑や音源付きの本にはどんなものがあるについて教えてください。
佐藤メバル
『楽器の音色がすぐ聴ける 世界の民族楽器図鑑』は、オールカラーの写真とQRコードの音色が連動した図鑑で、仕組みや弾き方、歴史まで解説しています。『ガムラン入門』も豊富な写真とQRコードの動画で、楽器や奏法、舞踊まで見て聴いて学べる作りです。
民族音楽とワールドミュージックの違いは何?
橘ナナミ
民族音楽とワールドミュージックの違いは何について教えてください。
佐藤メバル
民族音楽は、ある地域や集団の中で受け継がれてきた音楽そのものを指します。ワールドミュージックは、そうした音楽が世界で流通するときの棚の名前として生まれた呼び方です。『新しいインド音楽の世界』を読むと、映画音楽やヒップホップ、EDMと混ざり合いながら音楽が作り替えられていく現場が見えて、両者の関係がつかみやすくなります。
ケルト音楽や北欧音楽を学べる本はある?
橘ナナミ
ケルト音楽や北欧音楽を学べる本はあるについて教えてください。
佐藤メバル
今回取り上げた選書には、ケルトや北欧を正面から扱う一冊は入っていません。代わりに、『はじめての世界音楽』でヨーロッパを含む世界の音楽文化の枠組みを押さえ、『バルトークの民俗音楽の世界』で東欧の民俗音楽がどう作品に結実するかを追うと、ヨーロッパの民俗音楽を読むための目が育ちます。音源を並行して聴くのが前提になります。
絶版になった民族音楽の本はどこで探せばいい?
橘ナナミ
絶版になった民族音楽の本はどこで探せばいいについて教えてください。
佐藤メバル
まず公共図書館と大学図書館です。相互貸借を使えば他所の蔵書を取り寄せられる場合があります。古書は、版元や書名で検索して状態を確認しながら探すのが基本。オンデマンドで入手できる本もあるので、『異なる時間の音楽』のようにPODで出ているものはその経路を先に確認しておくと安心です。
大学で民族音楽学を専攻したいが何を読むべき?
橘ナナミ
大学で民族音楽学を専攻したいが何を読むべきについて教えてください。
佐藤メバル
入門の『民族音楽学12の視点』で視点の引き出しを作り、『アフリカ音楽学の挑戦』のような音楽民族誌で方法論の違いに触れておくと、授業での議論についていきやすくなります。フィールドワークの実際は『中東世界の音楽文化』や水野信男さんのエッセイ集でイメージを掴んでおくといいでしょう。
研究者向けの専門書と入門書の違いは?
橘ナナミ
研究者向けの専門書と入門書の違いはについて教えてください。
佐藤メバル
入門書は全体の地図と用語の整理を優先し、専門書は方法論と検証、先行研究との対話を優先します。『アフリカ音楽学の挑戦』は二つの社会に構造分析的アプローチと社会史的アプローチを適用していて、その差がはっきり分かります。索引と引用・参考文献があるかが、参照ツールとして使えるかの目安になります。
まとめ
橘ナナミ
今日の話を聞いて、民族音楽って「遠い国の音楽」じゃなくて、「音楽を文化として見るためのレンズ」なんだなと思いました。
佐藤メバル
そう捉えてもらえると嬉しい。レンズは一つじゃない。身体から見る、歴史から見る、政策から見る、著作権から見る。『民族音楽学12の視点』が12の章を横断的に並べているのは、そのためだ。
橘ナナミ
最初の一冊は、やっぱり『民族音楽学12の視点』でいいんでしょうか。
佐藤メバル
音楽経験がなくても読めるように編まれた本だから、最初の一冊として薦めやすい。ただし、「まず音が聴きたい」なら図鑑から、「まず物語が読みたい」なら『音の大地を歩く』や『アフリカの音』から入っていい。順番より、自分がどの入口から入りたいかのほうが大事だ。
橘ナナミ
入口が複数あるほうが、迷っても戻ってこられますね。
佐藤メバル
そう。民族音楽の本は、地図に似ているんだ。一冊で全世界を見せてくれる地図はないけれど、複数の地図を重ねると、同じ土地の違う顔が見えてくる。そして最後は、どの地図から入っても、必ず耳に戻ってくる。
