ESG投資について学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、ESG投資の本を調べたら、書名に「ESG」がついた本が山ほど出てきて、どれから読めばいいのか分からなくなってしまいました。入門と実践が同じ棚に並んでいて……。
佐藤メバル
いい質問だね。ESGは「投資」「経営」「情報開示」が同じ言葉で呼ばれているから、棚が混ざるんだよ。だから最初に決めるのは分厚さでも刊行の新しさでもなく、自分がどの立場で読みたいか。投資家として読むのか、自社に実装する側として読むのかで、選ぶ本はほとんど変わってしまう。
橘ナナミ
立場でそんなに変わるんですね。私は投資も経営も当事者じゃなくて、まず全体像を知りたいだけなんですけど。
佐藤メバル
それなら入口ははっきりしている。『図解でわかるESG いちばん最初に読む本』か『60分でわかる!ESG 超入門』だね。前者は図解で用語の関係を押さえるタイプ、後者は業種別のマテリアリティマップが付いていて「自分の会社ならどこが論点か」まで見える。この2冊で土台を作ってから次の層に進むのが、いちばん失敗が少ない順番だよ。
橘ナナミ
なるほど、いきなり分厚い専門書に行かなくていいんですね。
佐藤メバル
うん。書店員時代、ESGコーナーでよく見た失敗が「いきなり洋書の実証研究を買って3章で止まる」だった。逆に、入門だけで満足してしまうのももったいない。今日はこの25冊を入門→実装→批判的検証の3層に並べながら、選び方の軸を整理していこう。
ESG投資について学べる本の選び方
目的別:全体像/自社への実装/投資判断/批判的検証
橘ナナミ
目的別だと、どう分ければいいですか?
佐藤メバル
4つある。全体像なら『ESG入門 新版』——E・S・Gそれぞれの意味から経営への実装、投資での効果検証まで一冊でつながる。自社に実装するなら『図解でわかる ESGと経営戦略のすべて』か『ESGマネジメント』、投資判断なら『実践! ESG投資』、批判的検証なら『ESG投資とパフォーマンス』や『サステナブル投資のパズル』だね。
レベル別:完全初心者/ビジネスパーソン/専門家
橘ナナミ
レベルで選ぶなら、線の引き方は?
佐藤メバル
完全初心者は『60分でわかる!ESG 超入門』や『図解でわかるESG いちばん最初に読む本』。ビジネスパーソンなら『ESG思考』で、日本の遅れを資本主義の歴史から説き起こす新書だから通勤時間で読める。専門家なら『ESGカオスを超えて』『ESG経営の展開』『サステナブル投資』。目安は「知らない単語が1ページに3つ以上出たら、ひとつ前の層に戻る」でいい。
著者の立場別:運用会社/学者/コンサル/実務家
橘ナナミ
立場で主張が変わる、というのがまだピンとこないんですけど。
佐藤メバル
ここが一番おもしろい。運用会社の本は実務の視点から「ESGは長期運用に適している」と説く。学者は「本当に効くのか」を疑う。『ESG投資の成り立ち、実践と未来』はコロンビア大学の講義を書籍化した一冊で、世界の主要投資家への独自インタビューと経済学の眼の両方から「ESG投資は同床異夢なのか」に踏み込む。コンサルの『ESG格差』は日本企業への警鐘だ。立場が違えば結論は真逆になるから、一冊を信じ切らないでほしい。
形式別:図解/新書/ハンドブック/専門書
橘ナナミ
形式でも選べるんですか?
佐藤メバル
選べるよ。通読が苦手なら図解の『図解でわかるESG いちばん最初に読む本』、手元に置いて引くなら『ESG情報の外部保証ガイドブック』のような実務ハンドブック。「読む本」か「引く本」かを先に決めると、無駄な一冊を減らせる。索引や用語集の有無も、専門書では見ておきたいところだね。
出版年別:最新動向を反映しているか
橘ナナミ
刊行が古い本は避けたほうがいいですか?
佐藤メバル
そうとは限らない。開示ルールの話は新しい本ほど現在に近いけれど、ESGという考え方の成り立ちを説明する本は、古くても価値が落ちない。『バックキャスト思考とSDGs/ESG投資』が扱う「未来から逆算して開示と対話を設計する」視点は、制度が変わっても使える。逆に、市場規模の数字を前提にした記述は「その時点の到達点」として読む。新版や改訂版が出ているものは、そちらを選ぼう。
実践接続別:開示資料/社内勉強会/投資家対話/ファンド選び
橘ナナミ
読んだ後につなげたい先で選ぶなら?
佐藤メバル
開示資料づくりなら『ESGマネジメント』——SDGsのゴールを事業に紐づけ、非上場企業の開示手順まで扱う。社内勉強会なら産業別の課題から入れる『図解でわかる ESGと経営戦略のすべて』。投資家対話なら『企業と投資家を結ぶESG・SDGs』や『スチュワードシップとコーポレートガバナンス』。個人としてファンド選びにつなげるなら『ESG投資 持続可能な将来設計』や『SDGs投資』が、少額から関わる視点を与えてくれるよ。
ESG投資について学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
ESG投資について学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
ESG投資 持続可能な将来設計
富国生命投資顧問 著|ダイヤモンド社
¥1,650(税込)
「公的年金だけでは賄えない老後資金」というシビアな現実から出発し、ESGとは何か、なぜ注目されるのかを押さえたうえで、指標の見方やポートフォリオ構成まで踏み込む実践型の入門書。第1章でお金を取り巻く現実、第2章でアセットクラスと分散投資、第3章でESGの基本、第4章で個別企業の評価と銘柄分析という順番なので、投資の予備知識がなくても迷わない。GPIFがESG投資を始めた話題にも触れ、老後の資産管理という身近な目的から読めるのが理論書との違い。
こんな人におすすめ
老後資金の不安をきっかけに、はじめてESGという言葉を調べている人。公的年金への依存を見直し、勤め先の確定拠出年金や積立投資とESGをどう結びつけるか考えたい人。投資の前に、まず基本の言葉と全体像を押さえたい人。
良い点
- 老後の不安から自然にESGへ入れる
- アセットクラスと分散投資の基本も解説
- 個別企業の評価と銘柄分析まで踏み込む
気になる点
- 理論や実証の深掘りは控えめ
- 運用会社の実務者目線の内容
- 一次情報の議論は薄め
出版社
ダイヤモンド社
発売日
2022年12月01日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ESG投資って、環境や社会のためにお金を使うイメージでした。でもこの本は年金の話から始まるんですね。そこが意外でした。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。この本は「もはや公的年金だけでは賄えない老後資金」という、かなり現実的なところから始まる。
まず自分の家計の話を置いて、そのうえでESGという新しい企業価値の判断基準を説明する流れになっているんだ。
橘ナナミ
なるほど。じゃあ、いきなりESGを勉強しなきゃ、という構えじゃなくて読めるんですね。
佐藤メバル
そう。第2章でアセットクラスの特性と分散投資の基本を押さえてから、第4章で個別企業の評価やポートフォリオ構成に入る。
積立投資のコラムも挟まっているから、運用の実務の順番どおりに学べる。理論書を読む前に、自分のお金の延長で全体像をつかみたい人に向いているよ。
ESG投資の成り立ち、実践と未来
本田桂子 著|日経BP 日本経済新聞出版
¥2,750(税込)
コロンビア大学の人気講義を書籍化した一冊で、ESG投資を定義するところから、拡大した背景、対象、方法論、主要投資家、規制、ファイナンス理論、経済学アプローチまで13章で積み上げる。世界の主要投資家への独自インタビューを土台に、「リターンと社会貢献のどちらが優先するか」という問いを正面から扱うのが最大の読みどころ。第11章でリターンは向上するのかを検証し、第12章で経済学の眼から特徴・可能性・限界を捉える構成は入門書の一歩先。
こんな人におすすめ
ESG投資の入門書を数冊読んで、そろそろ理論と実証の土台がほしい人。大学院でサステナブルファイナンスを扱う学生。講義のように体系的に学びたい実務者。
良い点
- 定義から規制まで13章で体系化
- 主要投資家への独自インタビューが土台
- 理論と実証の両方を扱う
気になる点
- 入門者にはやや骨太な内容
- 講義録のため図表は多くない
- 価格帯は高めで手に取りにくい
出版社
日経BP 日本経済新聞出版
発売日
2023年05月19日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
コロンビア大学の人気講義を書籍化した本なんですね。大学の講義って、やっぱり入門書とは進み方が違うんでしょうか。
佐藤メバル
そこが面白いところだね。この本はまず「ESG投資を定義する」から始めて、なぜ拡大したのか、対象は何か、方法は何かと、一章ずつ論点を積み上げていく。
世界の主要投資家に独自インタビューをして、その実態を章に落としているのも講義ならではだよね。
橘ナナミ
リターンと社会貢献、どちらが優先なのか、という問いが挙がっていました。答えは書かれているんですか?
佐藤メバル
答えを一つに決めるというより、第7章で「ESG投資は同床異夢なのか」と問い、第11章でリターンは向上するのかを検証し、第12章で経済学の眼から可能性と限界を捉える。
複数の立場を並べたうえで考えさせる構成なんだ。関連用語一覧と用語索引も付いているから、辞書としても使えるよ。
実践! ESG投資
日本経済新聞出版 著|日経BP 日本経済新聞出版本部
¥1,760(税込)
ESGと不可分のSDGsを併せて、投資と経営の実践方法を豊富なケーススタディで解説する。米バイデン政権誕生やコロナ禍といった最近の動きを押さえたうえで、ESG・SDGsを踏まえた銘柄選択と企業経営、そして発行額が急増しているSDGs債まで踏み込むのが特徴。巻頭には蟹江憲史氏とトラウデン直美氏の対談があり、「SDGsが常識になる世界」を多様性の視点から語る。理論より事例と債券市場の動きを知りたい人に向く。
こんな人におすすめ
ESG債・SDGs債に関心のある個人投資家と、資金調達を考える事業会社の担当者。ニュースで見たSDGsを投資の言葉に翻訳したい人。事例から学ぶのが好きな読者。
良い点
- ESG債・SDGs債の動きを詳しく解説
- ケーススタディが豊富で具体的
- 巻頭対談でSDGsの世界観がつかめる
気になる点
- 理論面の掘り下げは少なめ
- ニュース性が高く情報は更新される
- 投資手法の細部は他書に譲る
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部
発売日
2021年06月11日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
巻頭に対談が入っているんですね。蟹江憲史さんとトラウデン直美さん。投資の本なのに、少し意外な組み合わせに感じました。
佐藤メバル
「SDGsが常識になる世界に多様性を力に変えるアイデアを」という対談だね。ESGとSDGsは不可分だから、投資の話だけを切り出さないのがこの本の姿勢なんだ。
パートはESG・SDGsの潮流、ESG投資、企業経営、そしてESG債・SDGs債の4つに分かれている。
橘ナナミ
SDGs債って、聞いたことはあります。発行はそんなに増えているんですか?
佐藤メバル
本書では最近3年で発行額が4倍以上と急増していると紹介されているよ。米バイデン政権誕生やコロナ禍といった動きも押さえたうえで、銘柄選択や企業経営の先進事例を数多く挙げている。
ニュースで見た言葉を、投資や経営の実践に翻訳したい人に向いているね。
ESG投資とパフォーマンス
湯山智教 著|一般社団法人金融財政事情研究会
¥2,640(税込)
ESG投資は本当に効くのか——その問いを実証分析で確かめる研究書。第1部で潮流、パフォーマンスの考え方、ESGスコアの課題、受託者責任の議論を論点として洗い出し、第2部で研究サーベイ、開示スコアとパフォーマンス、信用格付け、コロナショックとESG投資パフォーマンスまで分析する。スコアの作り方そのものを疑う第3章は、評価機関の数字を鵜呑みにしないための視点になる。数値と論点で語りたい人向け。
こんな人におすすめ
ESGスコアの中身を疑いながら投資判断をしたい運用担当者。データで裏を取らないと納得できない読者。受託者責任の議論を業務で扱う金融機関の人。
良い点
- スコアの課題まで踏み込む数少ない本
- 実証分析の手順が丁寧に示される
- 受託者責任の議論も整理
気になる点
- 学術的で通読には根気が要る
- 個人投資家向けの内容ではない
- 数値やデータの読解が必要
出版社
一般社団法人金融財政事情研究会
発売日
2020年10月01日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
パフォーマンスの本ということは、ESG投資って儲かるのか、というところを数字で確かめるんですね。
佐藤メバル
そう。第1部でまず論点と課題を洗い出す。ESG投資の潮流、パフォーマンスの考え方、ESGスコアに関する課題、受託者責任の議論。
ここでスコアそのものの作り方に疑問を投げているのが重要で、評価機関の数字を鵜呑みにしない視点が育つんだよ。
橘ナナミ
後半は実証分析なんですね。コロナショックの章があるのが、いま読むと気になります。
佐藤メバル
研究サーベイ、開示スコアとパフォーマンス、信用格付け、そしてコロナショックとESG投資パフォーマンス。
相場が大きく崩れた局面でESG銘柄がどう動いたかは、長期運用を考える人にとって見逃せない論点だよ。データで語りたい読者の一冊だね。
サステナブル投資のパズル
ルーカス・ポモルスキ 著|金融財政事情研究会
¥2,530(税込)
ESGはリターンを生むのか、それともリスクを招くのか。資産価格やバランスシートへの影響はどう測るのか。持続可能な投資にはプラス面・マイナス面だけでなく未知の側面がある——という前提に立ち、その仕組みを実証的かつデータに基づくアプローチで分解していく。伝統的投資戦略の先にある新時代のファイナンス論として読める一冊。同じ金融財政事情研究会から出る実務書とは違い、価格評価の謎に焦点を絞っている。
こんな人におすすめ
研究者や大学院生。資産価格への影響を測る手法を知りたいクオンツ寄りの実務家。「ESGは効くのか」を感情論で終わらせたくない人。
良い点
- 資産価格への影響を実証的に分解
- 新時代のファイナンス論として読める
- データに基づくアプローチが明確
気になる点
- 専門用語が多く前提知識が必要
- 事例よりも分析が中心
- 刊行が新しく情報が限られる
出版社
金融財政事情研究会
発売日
2026年04月01日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
タイトルに「パズル」と付いているのが気になります。ESGはリターンを生むのか、リスクを招くのか、まだ答えが出ていないということですか?
佐藤メバル
まさにそこなんだ。プラス面、マイナス面だけでなく、未知の側面が存在しているという前提から始まる。資産価格やバランスシートへの影響をどう測定するのか、という問いをデータで分解していく。
答えを急がず、仕組みを解き明かす姿勢の本だね。
橘ナナミ
同じ出版社から「サステナブル投資」という本も出ていますよね。何が違うんでしょう。
佐藤メバル
あちらはアセットクラスごとに実務の到達点を示す本。こちらは価格評価の謎に絞って、実証的かつデータに基づくアプローチで解き明かす。
伝統的な投資戦略の先にあるファイナンス論として読む本だから、研究者やクオンツ寄りの人に向くよ。
サステナブル投資
ジェームズ・パーセル 著|一般社団法人金融財政事情研究会
¥4,950(税込)
サステナブルな投資対象とは何か、実際に何が行われ、リターンに寄与するのか、本当に人類と地球にとって善なのか。アカデミックな先行研究を踏まえつつ、UBSやクインテットで富裕層向けにサステナブル投資を実践した経験から現在の到達点を示し、課題と解決策を提示する。上場株式、公社債、プライベート市場、テーマとSDGs、マルチアセットと市場ごとに章を分け、各章末に「潜在的な機会とそこにたどり着く方法」を置く構成が実務的。
こんな人におすすめ
富裕層向けの助言に関わる人。アセットクラス別に実務を知りたいファンドマネジャー。サステナブルデータやESG格付けの作られ方を知りたい人。
良い点
- アセットクラス別に実務を解説
- 著名人インタビューが各章に収録
- データとESG格付けの作られ方も扱う
気になる点
- 価格帯が高く専門性も高い
- 富裕層向け運用の文脈が中心
- 分量が多く読み切るのに時間がかかる
出版社
一般社団法人金融財政事情研究会
発売日
2024年05月16日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
UBSで富裕層向けにサステナブル投資を実践した人が書いているんですね。実務の現場の話が読めるんでしょうか。
佐藤メバル
そこが強みだね。アカデミックな先行研究を踏まえつつ、実際に何が行われているかを書いている。上場株式、公社債、プライベート市場、テーマとSDGs、マルチアセットと市場ごとに章が分かれ、各章の最後に「潜在的な機会とそこにたどり着く方法」が置かれている。
読み終えたら次に何をするかまで示してくれる構成なんだ。
橘ナナミ
ジリアン・テットさんへのインタビューも載っているそうですね。
佐藤メバル
そう、各章に著名人へのインタビューが入っている。サステナブルデータがどう生成・測定・開示され、ESG格付けがどう形成されるかの章もあって、数字の出どころを知りたい人にはありがたい。
投資リターンに寄与するのか、本当に人類と地球にとって善なのか、という問いから逃げていない本だよ。
SDGs投資
渋澤健 著|朝日新聞出版
¥891(税込)
投資は英語のインベスト、未来の可能性をベストにインすること——そこから始まる個人向けの一冊。渋沢栄一『論語と算盤』をヒントに、MeからWeへ、利益から価値の最大化へと話を進め、ESGは手段でSDGsは目的という関係を整理する。第4章ではコモンズ投信、毎月少額から始める長期投資、第5章ではインパクト投資やソーシャル・インパクト・ボンドまで触れる。数字の前に哲学から入りたい人の入口になる。
こんな人におすすめ
投資をはじめてみたいが、損得だけでは動けないと感じている人。少額から長期で続けることを考えている若い世代。SDGsやESGを理念から理解したい読者。
良い点
- 投資の基本からSDGsまで一冊で
- 理念と実践の橋渡しになる
- 少額から始める長期投資の話が具体的
気になる点
- 数字や分析は少なめ
- 著者の体験談の比重が大きい
- 体系的な理論書ではない
出版社
朝日新聞出版
発売日
2020年05月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
投資の基本からSDGsの動向まで全部わかるって書いてあります。そんなに詰め込めるものなんですか。
佐藤メバル
詰め込むというより、哲学から入る本なんだ。投資は英語でインベスト、未来の可能性をベストにインすること。
そこからMeからWeへ、利益から価値の最大化へと話を進める。渋沢栄一の『論語と算盤』をヒントに据えているのが特徴だね。
橘ナナミ
「ESGは手段でSDGsは目的」という章の見出しが、すごくしっくりきました。
佐藤メバル
そこは多くの人が混同するところだからね。第4章ではコモンズ投信の話、毎月少額から始める長期投資、第5章ではインパクト投資やソーシャル・インパクト・ボンドまで触れる。
損得の前に、なぜ投資するのかを考えたい人の入口になるよ。
サステナブルファイナンス最前線
水口剛 著|一般社団法人金融財政事情研究会
¥3,300(税込)
サステナブルファイナンスはもはやニッチではない——その理由を、金融庁サステナブルファイナンス有識者会議のメンバーを中心に各分野の議論をリードする執筆者が章ごとに解説する。国際社会の動向、日本政府の取組み、SDGsとインパクト、サステナビリティ情報の開示、ESG評価やデータ提供、エンゲージメント、ESG債とトランジション、地域金融機関のサステナビリティ、自然のためのファイナンス、人的資本と経済的不平等まで横断できる。
こんな人におすすめ
企業のサステナビリティ担当。地方銀行など地域金融機関の職員。政策と実務の接点を押さえたい人。
良い点
- 政策と実務の論点を一冊で横断
- 各分野の第一人者が分担執筆
- 地域金融の視点も収録
気になる点
- 章ごとに著者が変わり温度差がある
- 入門者には前提知識が必要
- 専門書のため価格は高め
出版社
一般社団法人金融財政事情研究会
発売日
2023年08月01日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
10人の専門家が各章を書いているんですね。金融庁の有識者会議のメンバーが中心というのは、けっこう重い本ですか?
佐藤メバル
重いけれど、読みにくくはないよ。国際社会の動向、日本政府の取組み、SDGsとインパクト、サステナビリティ情報の開示、ESG評価やデータ提供、エンゲージメント、ESG債とトランジション、地域金融機関のサステナビリティ、自然のためのファイナンス、人的資本と経済的不平等。論点を一冊で横断できる。
橘ナナミ
地域金融機関の章があるのが意外でした。地方銀行にも関係するんですね。
佐藤メバル
地方創生における地域金融機関のサステナビリティは、日本の実務では欠かせない論点なんだ。「もはやニッチではない」というのが本書の主張で、その理由を各分野の第一人者が担当している。
現在地を確認したい実務家にちょうどいい一冊だよ。
ESG入門 新版
アムンディ・ジャパン 著|日経BP 日本経済新聞出版本部
¥1,650(税込)
欧州No.1の資産運用会社が、ESG投資の豊富な蓄積に基づいて書いた入門書。「E」「S」「G」それぞれが何を指すのか、SRIからESG投資への歴史、日本のインベストメント・チェーンといった基本から、経営への実装、投資への実装まで深掘りする。ESG評価とリターンの関係を株式・社債それぞれのデータで検証する部分は、利益が出るのかという疑問に正面から答える。6つの資本や統合報告書、TCFD開示の説明も丁寧。
こんな人におすすめ
企業のIR・サステナビリティ担当。運用会社の視点でESG評価を知りたい個人投資家。CSVや統合報告書を学ぶ学生。
良い点
- 欧州大手のESG評価の考え方がわかる
- 株式・社債のデータで効果を検証
- 6つの資本や統合報告書も丁寧
気になる点
- 自社の手法の紹介が中心になる
- 経営と投資の両方を扱いやや広い
- 実践の細部は他書で補いたい
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部
発売日
2021年10月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
欧州No.1の資産運用会社が書いている入門書なんですね。入門と名乗りつつ、けっこう踏み込んでいそうです。
佐藤メバル
入門の看板どおり基本から始まるけれど、深さはある。SRIからESG投資への歴史、IIRCが定義する6つの資本、日本のインベストメント・チェーン、マテリアリティの考え方。
そして第4章ではESG評価とリターンの関係を株式と社債、それぞれのデータで分析しているんだ。
橘ナナミ
エンゲージメントの実践のコラムも気になります。実際に企業と対話するんですよね。
佐藤メバル
そう、運用会社が投資先と何を話すのかが具体的に書かれている。GSIAによる手法の整理やインパクト、GSS債券、持続可能性テーマ投資、インパクト・レポートまで触れていてね。
経営側と投資側の両方を俯瞰したい人にちょうどいい一冊だよ。
60分でわかる!ESG 超入門
バウンド/監修:夫馬賢治 著|技術評論社
¥1,210(税込)
見開きで1項目、全60項を追うだけでESGの全体像がつかめる超入門。ESGとは何かから、PRI、ESG投資の7つの手法、ダイベストメント、ESG経営の3つのメリット、GRI・SASB・TCFDの開示ルール、エシカル消費、中小企業のESG、そしてダイキン工業やユーグレナ、花王、オリンパス、ヒューリックなどの事例まで幅広い。巻頭にはSASBのマテリアリティマップが付き、自社や業界で何をすべきかの見取り図になる。
こんな人におすすめ
会議でESGという言葉が出て焦っているビジネスパーソン。業種別の重要課題をひと目で確認したい人。研修前の予習に使う担当者。
良い点
- 全60項で全体像を短時間で把握
- 業種別マテリアリティマップ付き
- 先進企業の事例を幅広く収録
気になる点
- 1項目が短く深掘りは少ない
- 情報がやや古くなりやすい
- 実務の手順までは踏み込まない
出版社
技術評論社
発売日
2021年07月19日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
全60項目、見開きで1項目ずつ。これは通勤中でも読めそうですね。
佐藤メバル
そういう使い方を想定した構成だね。ESGの4つのスタンス、7つの投資手法、ダイベストメント、ESG経営の3つのメリット、GRI・SASB・TCFDの開示ルール、エシカル消費、中小企業のESG。
論点が細かく分かれているから、知りたいところから拾えるんだ。
橘ナナミ
巻頭のマテリアリティマップって、何に使うものなんですか?
佐藤メバル
業種ごとに何が重要課題になるかを一目で見られる図だね。自社や業界で何をすべきかを考える出発点になる。
ダイキン工業、ユーグレナ、花王、オリンパス、ヒューリックなどの事例も載っている。会議で言葉が出て困っている人が、まず全体像をつかむのに向いているよ。
図解でわかるESG いちばん最初に読む本
野上眞一 著|アニモ出版
¥1,760(税込)
ESG経営、ESG会計、ESGファイナンス、ESG銘柄やESG投信——新聞で見かける言葉が、経営の話なのか金融の話なのか投資の話なのかを、図解でやさしく整理する入門書。とくに「SDGsは目標、ESGは目標に向かう道筋」という関係の説明が明快で、二つを混同している人が最初に読むのに向く。金融機関がESG情報をチェックして融資する流れまで触れるので、投資の本というより経営と金融の地図として使える。
こんな人におすすめ
「いまさら他人に聞くのは恥ずかしい」と感じている社会人。図や絵で全体像から入りたい読者。新入社員研修の事前課題を探している担当者。
良い点
- 図解中心で用語の整理に向く
- SDGsとESGの関係が明快
- 経営・金融・投資の地図になる
気になる点
- 内容は基礎レベルにとどまる
- 投資手法の解説は少なめ
- 実践の具体例は多くない
出版社
アニモ出版
発売日
2022年02月16日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「いまさら他人に聞くのも恥ずかしい」という一文に、ちょっと刺されました。まさに私のことです。
佐藤メバル
そこを救いにいく本だね。ESG経営、ESG会計、ESGファイナンス、ESG銘柄、ESG投信——新聞で見かける言葉が、経営の話なのか金融の話なのか投資の話なのかを図解で整理してくれる。全部を一気に理解しなくてもいいんだ。
橘ナナミ
「SDGsは目標、ESGは目標に向かう道筋」という説明が、いちばんしっくりきました。
佐藤メバル
その一行で混同がほどける人は多いよ。金融機関がESG情報をチェックして融資を実行する流れまで触れているから、投資の入門というより経営と金融の地図として使える。
専門用語でつまずいたときの辞書代わりにもなるね。
図解でわかる ESGと経営戦略のすべて
株式会社KPMGFAS 著|日本実業出版社
¥2,640(税込)
サステナビリティ課題を解決しながら継続的な企業価値向上を実現する——その発想で、基本知識から気候変動、産業別のESG課題、サステナビリティ情報開示までを経営・企業戦略の観点から整理する。コンサルティングファームの知見だけに、制度の説明で終わらず戦略の立て方に接続しているのが強み。言葉の地図をつくる入門書と違い、こちらは経営者の意思決定に寄っている。開示と産業別課題をまとめて押さえたい人に向く。
こんな人におすすめ
経営企画・サステナビリティ推進部門の担当者。産業別のESG課題を自社の戦略に落としたい人。取締役会資料を作る実務者。
良い点
- 経営戦略の観点で整理されている
- 産業別のESG課題が把握できる
- 情報開示まで一冊で押さえられる
気になる点
- コンサル資料に近く硬い印象
- 自社事例の具体性は薄め
- 入門書としてはやや高度
出版社
日本実業出版社
発売日
2023年12月08日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
KPMGのFASが書いているんですね。コンサルタントの本は、やっぱり戦略の話が多いんでしょうか。
佐藤メバル
その通りで、制度の説明で終わらないのが特徴だよ。サステナビリティ課題を解決しながら継続的な企業価値向上を実現する、という目的が最初に置かれている。
基本知識から気候変動、産業別のESG課題、サステナビリティ情報開示まで、経営の観点で整理されているんだ。
橘ナナミ
「図解でわかるESG」の本は他にもありますよね。どう使い分ければいいんでしょう。
佐藤メバル
言葉の意味をつかむなら用語の整理に強い入門書、自社の戦略に落とすならこちら、と考えると分かりやすい。
産業別の課題を経営会議の資料に結びつけたい人に向いているよ。
ESG経営の展開
佐久間信夫 著|同文舘出版
¥3,080(税込)
ESGを軸に企業の社会的責任や持続可能性を体系的に整理し、経営と社会性の統合を通した企業のあり方を考察する。第1部でCSRの理論とCSRからESGへの展開、第2部で日本・アメリカ・イギリスのコーポレート・ガバナンスとサステナビリティ・ガバナンス、第3部でESG投資の現状と課題、ダイバーシティ、国際ビジネスと人権、人的資本経営、第4部で環境規制と産業別の環境経営戦略を扱う。大学のテキストとして読む一冊。
こんな人におすすめ
大学・大学院でCSRやコーポレートガバナンスを学ぶ学生。系譜と理論から整理したい研究者。人権やダイバーシティを経営論として扱いたい人。
良い点
- CSRからESGへの系譜を体系的に学べる
- 日米英のガバナンスを比較できる
- 人権や人的資本まで範囲が広い
気になる点
- 大学テキストで通読は大変
- 実務のノウハウは載らない
- 刊行が新しく情報は限定的
出版社
同文舘出版
発売日
2025年08月27日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
第1部がCSRの理論から始まるんですね。ESGの本なのに、少し前の話から入るのが面白いです。
佐藤メバル
そこが本書の核だね。CSRからESGへという系譜を押さえないと、いまの議論がなぜこうなっているのかが見えない。
第2部では日本、アメリカ、イギリスのコーポレート・ガバナンスを並べ、サステナビリティ・ガバナンスの動向まで追う。
橘ナナミ
自動車産業やエネルギー産業の環境経営戦略、廃プラスチックの章もあるんですね。
佐藤メバル
そう、第4部は国際的な環境規制の展開から産業別の戦略まで踏み込む。第3部ではESG投資の現状と課題、企業におけるダイバーシティ、国際ビジネスと人権、人的資本経営を扱う。
大学のテキストとして腰を据えて読む本だよ。
ESGマネジメント
株式会社ワールド・ヒューマン・リソーシスESG経営研究会 著|産業能率大学出版部
¥3,300(税込)
目標が幅広くあいまいで、経営にどう取り込めばよいかわからない——その悩みに応える実践書。SDGsのゴールとターゲットを事業に紐付けながら、現状の把握、バックキャスティング思考による目標設定、ESGの視点による事業投資、知的財産を資本として認識する視点、事業計画との関係、KGIとKPIの設定まで順を追う。第3章では具体的な企業例を挙げ、上場・非上場それぞれの情報開示の手順まで整理する。
こんな人におすすめ
中小・中堅企業の経営者と管理部門。SDGsを目標管理に落とし込みたい推進担当者。KGI・KPI設計を任された人。
良い点
- SDGsを事業計画に紐付ける手順が具体
- KGIとKPIの設定まで踏み込む
- 非上場企業の開示手順も収録
気になる点
- 対象は企業の推進担当者に限られる
- 投資の視点はほとんど扱わない
- 事例は3社でやや少なめ
出版社
産業能率大学出版部
発売日
2023年10月30日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
バックキャスティング思考という言葉が出てきました。これってどういう考え方なんですか?
佐藤メバル
未来のあるべき姿を先に決めて、そこから逆算して今やることを考える進め方だね。この本はSDGsのゴールとターゲットを事業に紐付けるところから始めて、現状の把握、その逆算による目標設定、ESGの視点での事業投資、KGIとKPIの設定まで順に進む。
橘ナナミ
具体的な企業の例も載っているんですね。上場企業だけでなく中小企業の例なのがいいです。
佐藤メバル
株式会社佐藤製作所、有限会社原田左官工業所、日本理化学工業という具体例で、規模に関わらず取り組める形を示している。
最後は上場・非上場それぞれの情報開示の手順まで整理している。SDGsを目標管理に落とし込みたい人に向いているよ。
企業と投資家を結ぶESG・SDGs
浜田陽二 著|一般社団法人金融財政事情研究会
¥3,960(税込)
金融市場はESGやSDGsに取り組む企業をどう評価すべきか、企業と市場参加者の最善のコミュニケーションとは何か。現状を分析して問題点を洗い出し、SDGs時代にふさわしい次世代のスコアリング手法を提言する。第1部でESGスコアリングの現状と課題、ESGインデックス採用効果、日米欧のKPI状況を整理し、第2部で期待効果方式による開示評価、第3部で非財務リスク量の算出モデルを示す。
こんな人におすすめ
IR・開示担当者。ESG評価機関のスコアの作り方に関心がある人。非財務リスクを定量化したいアナリスト。
良い点
- ESGスコアの現状と課題がわかる
- 次世代のスコアリング手法を提言
- 非財務リスク量の算出モデルを提示
気になる点
- 専門的で前提知識が必要
- 提言が中心で実務事例は少ない
- 個人投資家には難易度が高い
出版社
一般社団法人金融財政事情研究会
発売日
2021年09月02日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
スコアリングの本ですか。ESG評価って、会社によって点数が違うと聞いたことがあって、ずっと不思議でした。
佐藤メバル
まさにその疑問に正面から答える本だね。第1部でESGスコアリングの現状と課題を洗い出し、パッシブ運用の影響やESGインデックスに採用されることの意味、日米欧の企業のKPIの状況を並べる。なぜ点数がばらつくのかが見えてくるよ。
橘ナナミ
後半は提言とモデルなんですね。巻末に評価シートが付いているのも実務的です。
佐藤メバル
第2部では期待効果を加味した開示評価という方式を提案し、第3部では非財務リスク量を簡易モデルで算出する。
企業と市場参加者のコミュニケーションをどう設計するか、という視点で書かれている。IR担当やアナリストの実務書として使える一冊だよ。
ESG思考 激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった
夫馬賢治 著|講談社
¥968(税込)
世界の投資総額の3割がESG、その額3000兆円——という衝撃から始まり、1990年から2020年までの資本主義の変化を軸に、経営者も投資家もここまで変わったと描く。利益が減るから反対するオールド資本主義、利益が増えるから賛成するニュー資本主義といった4つの立場の整理が明快で、ナイキ不買運動や国連グローバル・コンパクト、PRIの発足といった出来事を物語として追える。補遺ではコロナ禍とESG思考も扱う。
こんな人におすすめ
経済やビジネスの流れを物語として読みたい人。ESGが生まれた歴史的背景を知りたいビジネスパーソン。学生の入門書としても使える人。
良い点
- 資本主義の変化としてESGを語る
- 4つの立場の整理が明快
- 補遺でコロナ禍とESGも扱う
気になる点
- 刊行当時の情報で更新は必要
- 最新の数値は自分で補う必要
- 学術書ではなく読み物寄り
出版社
講談社
発売日
2020年04月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
世界の投資総額の3割がESGで3000兆円って、冒頭から驚きました。これはいつの話なんでしょう。
佐藤メバル
1990年から2020年までの資本主義の変化を追う本だから、その流れの到達点として出てくる数字だね。
第1章では、利益が減るから反対するオールド資本主義、利益が減っても賛成する脱資本主義、利益が増えるから賛成するニュー資本主義、利益が増えても反対する陰謀論、という4つの立場に整理している。
橘ナナミ
ナイキの不買運動やシアトル暴動の話も出てくるんですね。ESGの歴史が物語みたいに読めそうです。
佐藤メバル
そう、国連グローバル・コンパクトやPRIの発足、リーマン・ショックという分岐点、パリ協定とSDGs、GPIFのインデックス採用まで、出来事を順に追う。
補遺ではコロナ禍とESG思考も扱っている。歴史から入りたい人にいいよ。
ESG格差
松岡真宏 著|日経BP 日本経済新聞出版
¥1,980(税込)
お飾りのSDGsでは勝てない——混沌とする世界のサステナビリティ動向を俯瞰し、残念な日本企業の姿を描く。地球や社会によいモノ・コトを享受できる人・企業・国と、享受できない側の対立が激化する構図を、Eが国家間、Gが企業間、Sが個人間の分断を生むという形で整理するのが本書ならでは。第3章ではグローバル大企業を「21世紀の荘園」と呼び、沈む日本の大企業と対比。第5章で日本がESGを戦略的に活用できるかを問う。
こんな人におすすめ
日本企業の競争力に関心のある経営者・企画担当。SDGsの表面的な取組みに違和感がある人。ガバナンス改革を進める実務者。
良い点
- ESG格差という切り口が新しい
- 日本企業の課題が明確に描かれる
- 国家・企業・個人の三層で整理
気になる点
- 警鐘が中心で処方箋は限られる
- 論調がやや辛口に感じる人も
- データの更新は読者側で必要
出版社
日経BP 日本経済新聞出版
発売日
2023年01月27日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「お飾りのSDGsでは勝てない」という言葉が強いですね。日本企業の何が問題だと書かれているんでしょう。
佐藤メバル
Eが国家間、Gが企業間、Sが個人間の分断を生む、という整理が本書の核だね。脱炭素の追求がエネルギー危機で迷走し、焦点が日本企業の苦手なSとGに移っている。
地球や社会によいモノ・コトを享受できる側とできない側の対立が激化する構図を描いている。
橘ナナミ
「21世紀の荘園」という表現も気になります。グローバル大企業のことですか?
佐藤メバル
そう、台頭するグローバル大企業をそう呼び、自己成長機会を提供するスタートアップと、地盤沈下した日本の大企業を対比する。
最後は日本がESGを戦略的に活用できるか、プロトコルとしてのESGという論点で締める。警鐘を鳴らす本だけれど、読後は視界が広がるよ。
ESGカオスを超えて
北川哲雄 著|中央経済社
¥3,630(税込)
近年、企業は積極的なESG活動への参画を余儀なくされている。では企業の競争力獲得とESG活動の外部評価はどのような関係にあるのか、どのような基軸をもって進むべきか——その問いを正面から扱う。評価が乱立し混沌とした状態をどう整理するかに焦点を当て、経営がESGとどう向き合うかを考察する。同じ著者の『バックキャスト思考とSDGs/ESG投資』が開示と対話の設計を扱うのに対し、こちらは競争力と外部評価の関係に踏み込む。
こんな人におすすめ
経営企画・サステナビリティ責任者。ESG評価機関への対応に悩むIR担当。学術的な枠組みで整理したい読者。
良い点
- 経営とESG評価の関係を整理
- 競争力獲得の基軸を考えられる
- 混沌を秩序づける視点が得られる
気になる点
- 内容は抽象的で事例が少ない
- 入門書としては難易度が高い
- 実務手順は示されない
出版社
中央経済社
発売日
2022年05月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ESGカオス」って、ずいぶん思い切ったタイトルですね。何が混沌としているんでしょう。
佐藤メバル
企業が積極的なESG活動への参画を余儀なくされる一方で、その活動が外部からどう評価されるのかが見えにくい。
評価の枠組みが乱立して、経営の意思決定の軸が定まらない。その状態をカオスと呼んでいるんだね。
橘ナナミ
じゃあ、この本はその混沌を整理してくれる本なんですか?
佐藤メバル
企業の競争力獲得とESG活動の外部評価がどういう関係にあるのか、どのような基軸で進むべきかを問いとして立てている。
同じ著者の『バックキャスト思考とSDGs/ESG投資』が開示と対話の設計を扱うのに対して、こちらは競争力と外部評価の関係に踏み込む。ESG評価への対応に悩む人に向くよ。
企業不動産(CRE)戦略とESG投資
村木信爾 著|金融財政事情研究会
¥5,940(税込)
企業の事業継続を支える不動産。その潜在価値を引き出し、経営戦略のなかで最大化する施策としてCRE戦略が注目されている。本書はCRE戦略だけでなく、ESG投資の潮流が不動産価値と企業価値に与える影響を掘り下げ、ESG・SDGs対応の具体的なアプローチとCREのトレンドを事例で紹介する。環境性能や保有と賃借の判断がサステナビリティ評価と結びつくという視点は、他のESG本にはない切り口。
こんな人におすすめ
経営層と不動産部門の担当者。保有資産をESGの文脈で見直したい企業。不動産ファイナンスに関わる金融機関の人。
良い点
- 不動産からESGを捉える独自の視点
- CRE戦略の実務が具体的
- 事例を用いてトレンドを紹介
気になる点
- テーマが不動産部門に限られる
- 価格帯が高く専門書的
- 個人投資家には縁が薄い
出版社
金融財政事情研究会
発売日
2026年01月20日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
企業不動産、CRE戦略……。ESG投資の本なのに、不動産の話から入るのが意外でした。どうつながるんでしょう。
佐藤メバル
企業の事業継続を支える不動産には、まだ引き出されていない価値がある。それを経営戦略のなかで最大化するのがCRE戦略だね。
この本はそこに、ESG投資の潮流が不動産価値と企業価値に与える影響を重ねて掘り下げる。環境性能の高い建物を持つこと、資産をどう保有しどう使うかが、サステナビリティ評価に直結していく。
橘ナナミ
なるほど。他のESG本では見かけない切り口ですね。事例もあるんですか?
佐藤メバル
CREのトレンドを事例で紹介しているよ。設備投資と金融の両方を見ている人、あるいは不動産部門を持つ企業の経営層に刺さる内容だね。
経営層や不動産関係者に向けて書かれた一冊だよ。
プライベート・エクイティとESG
日本バイアウト研究所 著|きんざい
¥3,960(税込)
日本でESGに関する議論が進むなか、プライベート・エクイティ・ファンドの投資活動におけるESG要素の考慮を論じた本邦初の専門書。GPとLPの協働、海外の潮流、ゲートキーパーの視点、事業承継案件、ESGデューデリジェンスとサステナブル経営、法務と受託者責任までを実務家が分担して論じる。投資先企業での推進事例を収録し、非上場の中堅・中小企業にもESG対応が求められる流れを示す。
こんな人におすすめ
PEファンドの投資担当者。事業承継に関わる金融機関・コンサルタント。非上場企業のESG推進を任された経営者。
良い点
- PE領域のESGを論じた本邦初の専門書
- 投資先企業の推進事例が具体的
- 用語集と座談会まで収録
気になる点
- PE・非上場企業の関係者向けで対象は狭い
- 実務の詳細はファンド内の話に留まる
- 個人投資家には不要な一冊
出版社
きんざい
発売日
2021年12月23日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
プライベート・エクイティとESG。非上場の企業でもESGが求められるようになっているんですか?
佐藤メバル
そう、この本はそこを論じた本邦初の専門書なんだ。GPとLPの協働、海外の潮流、ゲートキーパーの視点、事業承継案件でのESG、そしてESGデューデリジェンスとサステナブル経営。
投資先をどう見て、どう育てるかという話として書かれている。
橘ナナミ
コスモライフやキューサイといった社名が挙がっていました。実際の事例として読めるんですね。
佐藤メバル
そう、バイアウト・ファンドの投資先企業における推進事例が並んでいる。受託者責任と法務の論点、インタビュー、座談会、巻末にはESG・PE用語集まで付いている。
ファンドの担当者だけでなく、事業承継に関わる人にも参考になるよ。
バックキャスト思考とSDGs/ESG投資
北川哲雄 著|同文舘出版
¥2,860(税込)
激変する環境下で、企業はステークホルダーとどうコミュニケーションを図るべきか。バックキャスト思考に基づいたイノベーションの予兆を感じさせる情報開示を多面的に検討する。SDGsを巡る潮流と株式投資の視点、SDGsとイノベーション、投資家と企業の動機、フリーランスという新しいステークホルダー、アセット・オーナーの役割、コーポレートガバナンス、リスクアペタイトと価値創造、統合報告書の成果と課題までを4編で構成する。
こんな人におすすめ
IR・開示・統合報告書の担当者。長期の企業価値向上を設計したい経営企画。企業と投資家の対話を研究する学生。
良い点
- バックキャスト思考の意味が腹落ちする
- 統合報告書の成果と課題まで扱う
- 開示と対話の設計に役立つ
気になる点
- 編ごとに論点が分かれる
- 学術寄りで読みやすさは低め
- 事例より論考が中心
出版社
同文舘出版
発売日
2019年03月01日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
フォーキャスティングとバックキャスティング、この二つを対比するところから始まるんですね。どう違うんでしょう。
佐藤メバル
フォーキャスティングは過去からの延長で未来を予測する考え方。バックキャスティングは、あるべき未来を先に置いて、そこから逆算して今を考える。
ESGやSDGsは後者でないと扱えないんだね。この本はその思考を軸に、情報開示と対話を検討する。
橘ナナミ
第4編がインベスターリレーションズになっていて、統合報告書の章があるのも気になります。
佐藤メバル
リスクアペタイトと価値創造、開示と対話を企業価値につなげるベストプラクティス、日本企業の統合報告書の成果と課題。
統合報告書を作っている人、読んでいる人には実感のある内容だよ。企業と投資家の高質な対話を設計したい人に向く。
金融機関のための気候変動リスク管理
藤井健司 著|中央経済社
¥4,180(税込)
国連、TCFD、EU、NGFSといった国際機関の動きを整理したうえで、リスク管理体制整備の考え方、シナリオ分析のアプローチ、貸出業など業態ごとの留意点を解説する。TCFD提言をどう実務に落とすかを軸に、金融機関が気候変動をどのように把握し管理するかを具体的に描く。ESGの全体像を扱う入門書とは違い、気候変動という論点に絞って管理態勢と分析手法に踏み込むため、リスク管理部門の実務書として使える。
こんな人におすすめ
銀行・保険・証券のリスク管理部門。TCFD対応を進めている担当者。シナリオ分析の手法を探している人。
良い点
- TCFD対応を実務に落とせる
- シナリオ分析の手法が具体的
- 業態ごとの留意点まで解説
気になる点
- 金融機関のリスク部門向けに特化
- 気候変動以外のESGは扱わない
- 専門用語が多く前提知識が必要
出版社
中央経済社
発売日
2020年10月20日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
TCFDという言葉は聞いたことがありますが、金融機関のための本なんですね。銀行のリスク管理と気候変動がどう結びつくのか、想像しづらいです。
佐藤メバル
そこをつなぐのがこの本だね。まず国連、TCFD、EU、NGFSといった国際機関の動きを整理する。そのうえでリスク管理体制整備の考え方、シナリオ分析のアプローチ、そして貸出業など業態ごとの留意点を解説していく。
橘ナナミ
ESGの全体像を扱う入門書とは、やはり性格が違うんですね。
佐藤メバル
気候変動という論点に絞って、管理態勢と分析手法に踏み込む実務書だからね。TCFD対応を進めているリスク管理部門が、何をどこから手をつけるかの順番を確認するのに向いているよ。
スチュワードシップとコーポレートガバナンス
北川哲雄 著|東洋経済新報社
¥3,520(税込)
日本版スチュワードシップ・コード、伊藤レポート、日本版コーポレートガバナンス・コード——資本市場の関係者に影響を与えた三つの動きを、インベストメント・チェーンと説明責任の環という視点から論じる。Comply or Explainという理念とソフトロー下の原則主義が、機関投資家と上場企業に何を迫るのかを整理。英国のコーポレートガバナンスやケイ報告書、ショート・ターミズムの克服、ESG投資とアセット・オーナーの存在まで扱う。
こんな人におすすめ
機関投資家のスチュワードシップ担当。企業と投資家の関係を制度から理解したいIR担当。コーポレートガバナンスを学ぶ学生・研究者。
良い点
- コード制定期の議論を記録として読める
- Comply or Explainの理念が理解できる
- ESG投資とアセット・オーナーも扱う
気になる点
- 刊行当時の内容で更新は自分で必要
- 制度の変化を自分で補う必要
- 実務書というより論考
出版社
東洋経済新報社
発売日
2015年01月30日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
少し前の本なんですね。日本版スチュワードシップ・コードが制定された時期と重なっていて、当時の議論が読めるのが面白そうです。
佐藤メバル
コードが作られていく過程そのものが、この本の背景にある。インベストメント・チェーンと説明責任の環という視点から、英国のコーポレートガバナンス、ケイ報告書、日本版スチュワードシップ・コードと伊藤レポート、そして制定が議論されていたコーポレートガバナンス・コードを扱うんだ。
橘ナナミ
「Comply or Explain」という言葉が出てきました。これが理念なんですね。
佐藤メバル
そう、遵守せよ、そうでなければ説明せよ、という考え方だね。ソフトローの下で原則主義と実質主義が採用されると、機関投資家と上場企業に何が求められるのか。
ESG投資とアセット・オーナーの存在、取締役会評価の時代まで論じる。制度から関係を理解したい人に向くよ。
ESG情報の外部保証ガイドブック〔第2版〕
一般社団法人サステナビリティ情報審査協会 著|税務経理協会
¥3,300(税込)
ESG情報の審査の概要と流れを、温室効果ガス排出量など各種の指標を具体的に取り上げながら解説する実務ガイドの改訂版。開示の動向と審査の動向、受審企業にとってのメリット、契約締結前手続から審査計画策定、審査業務手続の実施、結論の形成と表明までを順に追う。国際保証業務基準ISAEやISO14064シリーズ、国際サステナビリティ保証基準まで基準面も押さえる。
こんな人におすすめ
サステナビリティ報告の作成者。第三者保証の導入を検討している企業の担当者。監査・保証業務に関わる会計士。
良い点
- 審査の流れを指標ごとに具体的に解説
- 国際的な保証基準まで収録
- 第2版で最新情報を反映
気になる点
- 保証を受ける側にはやや専門的
- 開示の作り方は扱わない
- 通常のESG入門書の代わりにはならない
出版社
税務経理協会
発売日
2025年05月28日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ESG情報の「外部保証」という言葉をはじめて聞きました。開示した数字を、外の人が確かめるということですか?
佐藤メバル
そういうことだね。この本は審査の概要と流れを、温室効果ガス排出量など各種の指標を具体的に取り上げながら解説する。
開示の動向と審査の動向、受審企業にとってのメリット、契約締結前手続から審査計画の策定、審査業務手続の実施、結論の形成と表明まで順に追う。
橘ナナミ
基準の章もあるんですね。国際的なルールが決まってきているんでしょうか。
佐藤メバル
国際保証業務基準ISAE、ISO14064シリーズと認定制度、サステナビリティ保証の基準化の動き、そして国際サステナビリティ保証基準まで押さえる。
開示した情報をどう担保するかは、入門書がほとんど触れない領域だよ。報告書を作る側にも読む側にも意味がある。
CDP&EcoVadis対応 サステナビリティ評価の実務ガイド
新谷聡美 著|中央経済社
¥2,970(税込)
サステナビリティ評価として注目されるCDPとEcoVadisについて、制度の基礎から回答準備、社内体制づくり、書類の整備、スコアアップの実務ポイントまでを解説する。評価される側の実務に踏み込む点が特徴で、ESGスコアの作り方を論じる本や開示ルールの解説本とは役割が違う。取引先から回答を求められた担当者が、何を準備し、社内のどこを動かせばよいかを順に確認できる構成になっている。
こんな人におすすめ
調達・サステナビリティ部門で取引先からの評価依頼に対応する担当者。CDP回答を任された実務者。EcoVadisの評価を上げたい企業。
良い点
- 回答準備からスコアアップまで解説
- 社内体制づくりの実務がわかる
- 評価される側の視点に特化
気になる点
- CDPとEcoVadis以外は対象外
- 制度の背景説明は簡潔
- 刊行時期が新しく実績は未知数
出版社
中央経済社
発売日
2026年08月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
CDPもEcoVadisも、名前は聞いたことがあります。評価される側の準備を書いた本なんですね。
佐藤メバル
そこが実務書として珍しいところだね。制度の基礎から、回答準備、社内体制づくり、書類の整備、スコアアップの実務ポイントまでを解説する。
取引先から回答を求められたときに、何をそろえ、社内のどこを動かすかが順に確認できる。
橘ナナミ
スコアの作り方を論じる本や、開示ルールの解説本とは役割が違うんですね。
佐藤メバル
そう、評価する側の論理ではなく、受ける側の段取りに焦点を当てている。調達部門やサステナビリティ部門で、評価依頼への対応を任された人が、最初に開く一冊になるよ。
「ESG」と「SDGs」は何が違うのか、本で地図を作る
橘ナナミ
そもそもESGとSDGsって、どう違うんでしょう。同じものだと思っている人も多い気がします。
佐藤メバル
『図解でわかるESG いちばん最初に読む本』は「SDGsは目標、ESGは目標に向かう道筋」と整理している。『SDGs投資』には「ESGは手段でSDGsは目的」という章があり、企業と投資家の対話ツールという位置づけも説明される。だから「どちらが上か」という問いは噛み合わない。投資や経営の実務では、E・S・Gの3つに分けて評価するESGが使われる、と覚えておくといい。
橘ナナミ
開示の話になると、ISSBとかTNFDとか、また知らない言葉が出てきそうです。
佐藤メバル
乱立する非財務報告の統一基準づくりの動きは『60分でわかる!ESG 超入門』がPART4で扱っている。自然資本や生物多様性の文脈なら『サステナブルファイナンス最前線』の「自然のためのファイナンス」の章が入口になる。サプライチェーンを含む温室効果ガス排出量の算定と審査は『ESG情報の外部保証ガイドブック』が章立てで解説し、国際保証業務基準やISSA5000にも触れている。用語の地図は、この3冊でだいたい描けるよ。
一冊の結論を鵜呑みにしない——賛否を併読する読書プラン
橘ナナミ
さっき「立場が違えば結論は真逆」と聞いて、ちょっと不安になりました。
佐藤メバル
その不安は正しい。だから併読を勧めている。推進側の土台は『ESG入門 新版』——株式と債券、それぞれのデータに基づく効果の検証まで載っている。これと『ESG投資とパフォーマンス』を組にする。後者はESGスコアの課題を洗い出し、開示スコアとパフォーマンス、信用格付け、コロナショック時のパフォーマンスまで実証分析している。
橘ナナミ
もう一組ありますか?
佐藤メバル
『ESG思考』と『ESG格差』のペアだね。前者は世界の投資マネーの流れと日本企業の遅れを歴史から説く。後者は「お飾りのSDGsでは勝てない」として、Eが国家間、Gが企業間、Sが個人間の分断を生むと論じ、「禁酒法とESG」の章でESG推進を阻害するものを考える。ここに『サステナブル投資のパズル』——ESGはリターンを生むのか、リスクを招くのかをデータで分解する一冊——を足せば、賛否の物差しができる。
橘ナナミ
選書の失敗パターンも教えてほしいです。
佐藤メバル
典型的なのは3つ。入門書だけを何冊も読んで満足する、一冊の主張をそのまま社内資料に貼る、刊行が古い本の数字を現在の市場規模として使う。「読んでから何をするか」を先に決めるのが、いちばん効く対策だよ。
実務の工程から逆算して本を割り当てる
橘ナナミ
実務の人は、どう並べればいいんでしょう。
佐藤メバル
情報開示→排出量の算定と保証→評価機関対応→投資家対話、という流れで割り当てるといい。開示なら『図解でわかる ESGと経営戦略のすべて』——気候変動、産業別のESG課題、サステナビリティ情報開示までを経営戦略の観点から扱う。手順まで踏み込むなら『ESGマネジメント』だね。
橘ナナミ
算定と保証は、さっき出たガイドブックですか。
佐藤メバル
そう。評価機関対応なら『CDP&EcoVadis対応 サステナビリティ評価の実務ガイド』が、制度の基礎から回答準備、社内体制づくり、書類の整備、スコアアップの実務ポイントまでを扱っている。金融機関なら『金融機関のための気候変動リスク管理』——国連やTCFD、EU、NGFSといった動きを整理し、リスク管理体制の考え方、シナリオ分析のアプローチ、業態ごとの留意点を解説する。
橘ナナミ
投資家と対話する側は?
佐藤メバル
『企業と投資家を結ぶESG・SDGs』はESGスコアリングの現状と問題点を分析し、非財務リスク量の算出まで踏み込む。『スチュワードシップとコーポレートガバナンス』は、企業と投資家の「高質な対話」と適切な議決権行使をめぐる議論を扱う。日本・米国・英国のガバナンスの展開や人的資本経営、環境経営まで体系的に学びたいなら『ESG経営の展開』。プライベート・エクイティなら『プライベート・エクイティとESG』、不動産なら『企業不動産(CRE)戦略とESG投資』と、担当領域ごとに一冊持っておくと強いよ。
よくある質問
ESG投資の初心者が最初に読むべき本はどれですか?
橘ナナミ
ESG投資の初心者が最初に読むべき本はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
まず手に取るなら『図解でわかるESG いちばん最初に読む本』か『60分でわかる!ESG 超入門』です。前者は図解で用語と全体像を押さえるタイプ、後者は業種別のマテリアリティマップ付きで「自社ならどこが論点か」まで見えます。どちらも短時間で通読できるので、分厚い専門書の前にこの2冊で土台を作ると、次に読む本が選びやすくなります。
経営者・実務担当者におすすめのESG経営書はどれですか?
橘ナナミ
経営者・実務担当者におすすめのESG経営書はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
『図解でわかる ESGと経営戦略のすべて』は、気候変動や産業別のESG課題、サステナビリティ情報開示までを経営戦略の観点から扱います。手順まで踏み込みたいなら『ESGマネジメント』——SDGsのゴールを事業に紐づけ、バックキャスティングでの目標設定や非上場企業の開示手順まで解説します。金融が担当領域なら『金融機関のための気候変動リスク管理』、不動産なら『企業不動産(CRE)戦略とESG投資』が候補になります。
SDGsとESGの違いがわかる本はどれですか?
橘ナナミ
SDGsとESGの違いがわかる本はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
『図解でわかるESG いちばん最初に読む本』は「SDGsは目標、ESGは目標に向かう道筋」と整理しています。『SDGs投資』には「ESGは手段でSDGsは目的」という章があり、企業と投資家の対話ツールという位置づけも説明されます。『60分でわかる!ESG 超入門』も、両者の違いと関係性、CSRやCSVとの違いまで扱っています。
反ESG・批判的な視点を学べる本はありますか?
橘ナナミ
反ESG・批判的な視点を学べる本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
『ESG投資とパフォーマンス』はESGスコアの課題を洗い出し、実証分析を積み上げます。『サステナブル投資のパズル』は「ESGはリターンを生むのか、リスクを招くのか」をデータで分解する一冊。『サステナブル投資』は、サステナブル投資が本当に人類と地球にとって善になっているのかを問い、著名人へのインタビューも掲載しています。『ESG格差』は「お飾りのSDGsでは勝てない」と日本企業に警鐘を鳴らし、ESG推進を阻害するものまで論じます。
ESG投資とリターンの関係をデータで学べる本はどれですか?
橘ナナミ
ESG投資とリターンの関係をデータで学べる本はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
第一候補は『ESG投資とパフォーマンス』です。ESG開示スコアとパフォーマンス、信用格付け、コロナショック時のパフォーマンスまで実証分析しています。理論側からは『ESG投資の成り立ち、実践と未来』の「ESG投資でリターンは向上するのか」の章、データで分解する『サステナブル投資のパズル』も。『ESG入門 新版』も株式・債券それぞれのデータに基づく分析を載せています。
個人投資家がESGファンド選びに役立てられる本はどれですか?
橘ナナミ
個人投資家がESGファンド選びに役立てられる本はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
『ESG投資 持続可能な将来設計』は、老後資金という身近な問題から入り、ESGの観点で個別企業をどう評価し、どうポートフォリオを組むか、個人が単独で実践できるのかまで踏み込みます。『SDGs投資』は、個人が参加できるSDGs投資や長期投資の続け方を扱います。ただし特定のファンドを推奨する本ではないので、選ぶときの考え方を学ぶ用途で読むのがいいでしょう。
スコープ3やTNFDなど実務テーマを学べる本はどれですか?
橘ナナミ
スコープ3やTNFDなど実務テーマを学べる本はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
温室効果ガス排出量の算定・審査は『ESG情報の外部保証ガイドブック〔第2版〕』が章立てで解説し、国際保証業務基準やISSA5000にも触れています。自然資本や生物多様性の文脈は『サステナブルファイナンス最前線』の「自然のためのファイナンス」の章が入口です。開示の枠組みは『図解でわかる ESGと経営戦略のすべて』、評価機関への回答は『CDP&EcoVadis対応 サステナビリティ評価の実務ガイド』が担当します。
ESG本は何冊くらい読めば全体像を理解できますか?読む順番は?
橘ナナミ
ESG本は何冊くらい読めば全体像を理解できますか?読む順番はについて教えてください。
佐藤メバル
3冊から始めるのが現実的です。①入門(『図解でわかるESG いちばん最初に読む本』か『60分でわかる!ESG 超入門』)②全体像(『ESG入門 新版』)③批判的検証(『ESG投資とパフォーマンス』か『サステナブル投資のパズル』)。実務なら開示・保証の本を、投資家ならリターン論の本を足します。入門→全体像→批判の順が定着しやすい並びです。
まとめ
橘ナナミ
今日の話を聞いて、最初に読む本が決まりました。でも、候補が25冊もあると、全部読まないといけない気もしてきます……。
佐藤メバル
全部読む必要はないよ。むしろ、3層から1冊ずつ持っておくだけで、たいていの議論にはついていける。入門を1冊、実装を1冊、批判的検証を1冊。足りなくなったら、自分の担当工程に合わせて足していけばいい。
橘ナナミ
3冊かあ。なんだか、投資そのものみたいですね。
佐藤メバル
そう、そこなんだよ。読書も同じで、一冊に全額を賭けない。入門書で用語の土台を作り、実装書で現在地を確かめ、批判的な本で反証に耐えるかを試す。同じ方向を向いた本ばかり並べると、潮目が変わったときに何も言えなくなる。
橘ナナミ
じゃあ、毎月一冊ずつ、積み立てるみたいに読んでいけばいいんですか?
佐藤メバル
それでいい。ESGの議論は数年で制度も言葉も入れ替わる。でも、なぜその企業が長期に生き残るのかを問う視点は残る。本棚は、一度に買い揃えるものじゃなく、積立のように少しずつ育てていくものだよ。今日の一冊が、数年後のあなたの判断軸になる。

