幕末の歴史小説の本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、幕末小説のランキング記事を作りたいんですけど、検索しても「坂本龍馬」「新選組」の名前ばかりで、どれを読めばいいのか逆にわからなくなってしまって……。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。幕末は登場人物が膨大で、しかも同じ事件を討幕側からも佐幕側からも書ける時代なんだ。だから「どれが上位か」より、どの立場から見たいかで選ぶと、外れがぐっと減る。
橘ナナミ
立場……! でも私、幕末の流れもまだおぼろげで、立場と言われても想像がつかなくて。
佐藤メバル
それでいいんだよ。たとえば『明日は維新だ』は、坂本龍馬や高杉晋作、近藤勇たちを連作短編で描く。一編が短いから、まず時代の空気と人名に慣れるのに向いている。一方『命もいらず名もいらず 上 幕末篇』は、幕府旗本に生まれた山岡鉄舟の生涯を追う。剣に学び、禅と書に打ち込んだ人が動乱をどう生きたか。同じ幕末が、まるで別の景色になる。
橘ナナミ
同じ時代なのに、見る場所で全然違うんですね。だったら先に選び方を整理してから、作品を見たほうがよさそうです。
佐藤メバル
そうしよう。書店員の頃、幕末コーナーで「どれが面白いですか」と聞かれて立場を確かめずに薦め、失敗したことがあってね。以来、まず「誰の側から読みたいか」を聞くようにしている。今日もその順番でいこう。
幕末の歴史小説の本の選び方
目的別に選ぶ
橘ナナミ
目的って、たとえばどんな分け方ですか?
佐藤メバル
爽快感なら討幕側の志士もの、知略なら外交や経済の話。歴史を丸ごと掴みたいなら『小説 幕末・明治維新』のように開国から西南戦争まで通す小説がいい。泣きたいなら、散っていく側を丁寧に描いた作品——『夢の燈影 新選組無名録』のような無名隊士の物語が効くよ。
主人公の立場で選ぶ
橘ナナミ
立場のバリエーションって、そんなに多いんですか?
佐藤メバル
討幕側、佐幕・幕臣側、朝廷・公家、庶民・女性、そして国際。この五つを押さえると全体が見える。幕臣側なら『小説 小栗上野介 日本の近代化を仕掛けた男 上』、公家側なら『正妻 慶喜と美賀子(上)』、庶民・女性なら『恋歌』、国際なら『ifの幕末』がそれぞれ入口になる。
読者レベル別に選ぶ
橘ナナミ
私みたいに幕末デビューの場合は?
佐藤メバル
まず連作短編の『明日は維新だ』や、複数の作家が一つの題材を書く『決戦!新選組』のようなアンソロジーから。読み慣れてきたら津本陽の『西郷隆盛』全4巻のような骨太な長編へ。史実も知りたくなったら、小説で人を掴んでから通史に移るのが定石だよ。
形式で選ぶ
橘ナナミ
巻数も選ぶ基準になりますよね。
佐藤メバル
なる。短編集は待ち時間でも読める。単巻なら『星火瞬く』のように一冊で決着する。中規模の長編、じっくり浸かる大長編と、三段階で考えてみるといい。通勤中に読むのか、休日に籠もるのかで選ぶと失敗しない。
舞台・地域で選ぶ
橘ナナミ
京都のイメージが強いんですけど、他の土地も出てくるんですか?
佐藤メバル
むしろそこが面白い。会津なら『青葉のごとく(会津純真篇)』、水戸の天狗党なら『恋歌』、江戸の下町なら『市松師匠幕末ろまん 黒髪』、薩摩なら『新装版 白い航跡(上)』。同じ幕末でも、藩の事情がまったく違う。
入手性で選ぶ
橘ナナミ
古い本だと、書店に無いこともありますよね。
佐藤メバル
うん。だから記事では、文庫で買えるか、電子書籍があるか、図書館頼みになるかを添えておこう。読みたいと思った本が手に入らないのが、いちばん残念だからね。
幕末の歴史小説の本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
幕末の歴史小説の本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
竜馬がくる
春日みかげ 著|集英社
¥748(税込)
幕末の英雄・坂本竜馬が暗殺されたはずの瞬間から、革命中の18世紀フランスへ転生する。だが頼りない見た目の若者は、実は恋愛小説家志望で革命に興味のないナポレオン。革命が成立しなければ世界史も日本史も変わる——そこで竜馬が打つ一手が、囚われの王女マリー・アントワネットの救出計画だ。史実の人物を大胆に組み替える着想と、英雄を奮い立たせる竜馬の交渉術が読みどころ。ifものの自由さと幕末の人物像が同居し、堅い歴史小説の合間に挟みたくなる一冊。
こんな人におすすめ
史実どおりの幕末を一度離れて、遊び心のある歴史改変を楽しみたい人。坂本竜馬やナポレオンという有名な名前は知っているけれど、小説としての意外な組み合わせを味わいたい読者。移動中や寝る前の息抜き読書に。
良い点
- 竜馬とナポレオンの掛け合いが楽しい
- 史実を知るほど転生設定が効く
- 王女救出で物語が動き出す
気になる点
- 史実に忠実な作品ではない
- ライトノベル寄りの語り口
- 幕末そのものの描写は少なめ
出版社
集英社
発売日
2020年06月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
えっ、坂本竜馬がナポレオンと出会うんですか? 時代も国も違いすぎるのに、どうやって物語が成り立つのか気になります!
佐藤メバル
いい質問だね。竜馬は暗殺されたところで目を覚ますと、革命中のフランスにいた。目の前の若者は髪がボサボサで頼りない——でも若き日のナポレオンなんだ。
ところが肝心のナポレオンは恋愛小説家志望で、革命に興味がない。革命が成立しないと世界史が変わり、もちろん日本も変わる。
だから竜馬は王女の救出計画を立て、英雄の心に火をつけようとする。歴史の歯車を外から押し戻す発想が面白いところだよ。
橘ナナミ
なるほど! 竜馬が歴史上の大事件を手配する側になるんですね。堅い幕末小説の合間に読むのにちょうどよさそうです。
佐藤メバル
そうそう。史実をなぞるのではなく、有名な名前を組み替えて遊ぶ話だから、幕末に詳しい人ほど逆に新鮮に感じると思う。
ただ、史実そのものを学ぶ本ではないので、そこは期待値を分けて読むといい。集英社から出ているこの軽やかさは、箸休めの一冊として棚に置きたいタイプだね。
小説 吉田松陰 全一冊
童門冬二 著|集英社
¥1,320(税込)
松下村塾から高杉晋作、山県有朋、伊藤博文といった幕末維新の英傑が巣立っていく。その塾主・吉田松陰を童門冬二が一冊に描ききった。特徴は、松陰が「学ぶことにおいては師も弟子も対等で、共に育つ」という思想を貫いた点にある。上から教えるのではなく、同じ目線で熱を分け合う。教育者の生涯に焦点を当てた作品で、志士たちの活躍を追う小説とは視点がまったく違う。英傑たちの源流をここで確認できる。
こんな人におすすめ
先生や教育に関わる人、部下や後輩を育てる立場の人。維新の英傑を生んだ現場が知りたくて、指導や対話のヒントを探している読者。人物伝から幕末に入りたい人に。
良い点
- 松陰の人柄が丁寧に描かれる
- 松下村塾の空気が伝わる
- 一冊で生涯を追える
気になる点
- 戦闘や事件の描写は控えめ
- 門下生の活躍は薄め
- 文体はやや硬め
出版社
集英社
発売日
2008年12月21日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
松下村塾って名前は聞いたことがあります。高杉晋作や伊藤博文を育てたんですよね? その塾主の話なんですね。
佐藤メバル
その通り。この本は松陰の生涯を一冊で追うものだ。面白いのは、松陰が「学ぶことにおいては師も弟子も対等で、共に育つ」という考えを貫いたことだね。
教える側が上に立つのではなく、一緒に育っていく。だからこそ塾からあれだけの人が出たとも言える。人を育てるとはどういうことかを、静かに考えさせられる一冊だよ。
橘ナナミ
じゃあ、歴史というより、教育の話として読めるんですね。志士の活躍を描く小説とはだいぶ違う気がします。
佐藤メバル
まったく違う。戦いや暗殺の場面を期待すると物足りないかもしれない。でも、維新の原動力がどこで生まれたのかを知りたい人には、ここから入るのが一番の近道だと思う。
童門冬二は人物の内面を丁寧に書く人だから、松陰の人間像がまっすぐ残るよ。
津本陽 西郷隆盛 全4巻セット
集英社
¥3,311(税込)
西郷隆盛を主人公に、津本陽が全4巻で描いた長編のセット。タイトルは「巨眼の男 西郷隆盛」。幕末から維新へと向かう激動を、一人の人物の生涯に沿って追うスケールが持ち味だ。全4巻という分量そのものが、西郷という人物を短くまとめずに描こうとした作者の構えを示している。一冊で概要をつかむ本ではなく、腰を据えて流れごと味わいたい人向けのセット。巻ごとに買い足す手間がないのも利点だ。
こんな人におすすめ
西郷隆盛にじっくり向き合いたい人。大河ドラマや教科書で名前だけ知り、生涯をまとめて追いたい読者。まとまった読書時間を確保できる、長期の読書計画を立てている人に。手元に置いて少しずつ読み進めるスタイルが合う。
良い点
- 全4巻でじっくり読める
- セットで揃う手間がない
- 長編ならではの厚みがある
気になる点
- 内容紹介が少なく予習しづらい
- 持ち運びに向かない
- 短期で読み切るのは大変
出版社
集英社
発売日
2012年01月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
全4巻セット……すごいボリュームですね。西郷隆盛って、そんなに長く書ける人なんですか?
佐藤メバル
西郷は幕末から維新、そして西南戦争まで、時代の中心に立ち続けた人だからね。一冊にまとめようとすると、どうしても出来事の列挙になりやすい。
それを全4巻かけて追うのがこのセットだ。タイトルは「巨眼の男 西郷隆盛」。津本陽の筆で、生涯を流れごと味わう作りになっている。
橘ナナミ
なるほど。じゃあ、まず入門書を一冊読んでから挑戦するほうがいいんでしょうか。
佐藤メバル
そうだね、予備知識ゼロでいきなり挑むと少し重いかもしれない。西郷の名前と大まかな流れを知ったうえで、たっぷり浸かりたい人が選ぶセットだと思う。
逆に、長い時間をかけて一人の人物を追いたい人には、これ以上ない環境だよ。
命もいらず名もいらず 上 幕末篇
山本兼一 著|集英社
¥1,210(税込)
幕府旗本の家に生まれた山岡鉄舟が、千葉周作に剣を学び、禅と書の修行に励みながら、動乱の世を無私の心で駆け抜けていく。「日本をこれからどうするか。変えていくのは自分だ」——幕末の只中で、功名を求める志士たちとは対極の生き方を選んだ「最後のサムライ」の生涯を描く上巻の幕末篇。無私という言葉が全編の軸になっていて、強いのに前に出ない人物像がじわじわ効いてくる。下巻へ続く構えだ。
こんな人におすすめ
西郷や龍馬など主役級ばかり読んできた人が、脇から時代を動かした人物を知りたいとき。剣・禅・書といった修養に惹かれる人。静かな人物像をじっくり味わいたい読者に。
良い点
- 山岡鉄舟の生涯を追える
- 剣と禅と書が同時に描かれる
- 幕臣側の視点が得られる
気になる点
- 上下巻のうち上のみ
- 派手な合戦描写は少ない
- 下巻への期待が残る
出版社
集英社
発売日
2013年05月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
山岡鉄舟……名前は聞いたことがありますが、何をした人かは正直よく知りません。
佐藤メバル
幕府の旗本に生まれて、千葉周作に剣を学び、禅や書も修めた人だ。この上巻は幕末篇で、動乱の世を無私の心で駆け抜ける姿が描かれる。
「変えていくのは自分だ」という感覚で動いていた人物でね。西郷や龍馬のような主役とは違う、幕臣側の立ち位置から時代を見られるのが面白いところだよ。
橘ナナミ
剣だけじゃなく禅や書も、というのが意外です。強い人というより、静かな人なんですね。
佐藤メバル
そこが魅力だね。功名を求めて前に出る人ではないのに、いざという場面では動く。その落差が読んでいて心地いい。
派手な合戦を期待すると物足りないけれど、修養という言葉が気になる人には刺さる一冊だと思う。
正妻 慶喜と美賀子(上)
林真理子 著|講談社
¥748(税込)
十二代家慶の治世、幕府と朝廷の関係にも動乱の機運が高まるなか、一条家の美しい姫・美賀子が、英邁の噂轟く一橋慶喜に嫁ぐ。ところが夫は「わしはどんなことがあっても将軍になどならぬ」と信念を曲げず、奇矯な振る舞いを続ける。翻弄される美賀子は、ある哀しい決意を抱く——。最後の将軍の妻という視点から幕末の別の面を描ききる大河小説の文庫版だ。表舞台の政治史とはまるで違う緊張感がある。
こんな人におすすめ
幕末を男性中心の政治史ではなく、結婚や家族の物語として読みたい人。林真理子の人物描写が好きな読者。大河ドラマ的な長編に浸りたいときに。
良い点
- 妻の視点で幕末を見られる
- 慶喜の人物像が立体的になる
- 大河小説の読みごたえがある
気になる点
- 上巻のみで続きが必要
- 政治の細部は薄め
- 合戦は描かれない
出版社
講談社
発売日
2017年10月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
幕末の小説って志士の話が多い印象なんですが、これは将軍になる人の“妻”の話なんですね。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の新しさだ。美賀子は一条家の姫で、英邁の噂の高い一橋慶喜に嫁ぐ。でも慶喜は「将軍にはならぬ」と言い張って、奇矯な振る舞いをやめない。
翻弄される妻がある決意をするまでが上巻で描かれる。妻だけが知り得た真実という角度で、幕末の別の面が見えてくるんだ。
橘ナナミ
なるほど。政治の表舞台より、家の中の緊張のほうが気になります。ドラマみたいに読めそうですね。
佐藤メバル
まさに大河小説の読み味だね。合戦や暗殺は出てこないから、そういうのを求める人には向かない。でも、結婚や家族の視点で幕末を読むと、これまでと全然違う景色になる。
林真理子の筆で人物の感情を追いたい人に勧めたい。
新装版 天璋院篤姫(下)
宮尾登美子 著|講談社
¥759(税込)
将軍家定の急死、継嗣をめぐる幕府内の対立、養父斉彬の死。篤姫は、家定との結婚が斉彬の遠大な野望であったことを知り慄然とする。天璋院となったのちも総帥として大奥を統べ、皇妹和宮の降嫁、大政奉還といった激動の幕末を、徳川家の人間として生き抜いた。大奥三千人を率いた女性の生涯を描く歴史長編の下巻。2008年の大河ドラマの原作にあたる作品だ。
こんな人におすすめ
大河ドラマ「篤姫」で関心を持った人。大奥や女性の立場から幕末を見たい読者。歴史長編を上下で読み通す時間がある人に。
良い点
- 大奥の内側が描かれる
- 篤姫の晩年まで追える
- 宮尾登美子の筆が確か
気になる点
- 下巻から読むと流れが掴みにくい
- 上巻が別途必要
- 戦の場面は少ない
出版社
講談社
発売日
2007年03月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
天璋院篤姫って、大河ドラマにもなりましたよね。この下巻だけ読んでも大丈夫ですか?
佐藤メバル
できれば上巻から読んでほしいけれど、下巻は家定の急死から始まって、継嗣をめぐる対立、養父・斉彬の死が続く。
篤姫は、自分の結婚が斉彬の遠大な野望だったと知って慄然とする。そのうえで天璋院として大奥三千人を統べ、和宮の降嫁や大政奉還をくぐり抜けていくんだ。
橘ナナミ
結婚が望みだったのか、政略だったのか——そこが揺れるんですね。大奥の中の話はやっぱり惹かれます。
佐藤メバル
そういう女性の視点が宮尾登美子の真骨頂だね。合戦は出てこないけど、徳川家のために生き抜くという覚悟がじわじわ来る。
ドラマで興味を持った人が、原作で人物の内側まで入っていくのにも向いているよ。
新選組 幕末の青嵐
木内昇 著|集英社
¥1,265(税込)
幕末、佐幕派の最強剣客集団として名を馳せた新選組。その結成から鳥羽伏見の戦いまでを、土方歳三、佐藤彦五郎、沖田総司ら複数の視点から描く青春群像小説。複数の視点で語られるため、一つの事件が誰の目から見るかで違って見えるのが面白い。英雄譚でも隊士の挽歌でもなく、若者たちが組を立ち上げていく過程に光が当たる。(解説は松田哲夫)
こんな人におすすめ
新選組の結成から解散までを正面から追いたい人。土方や沖田の名前は知っていて、青春群像としての新選組を読みたい読者。時代小説の新しい書き手を試したいときに。
良い点
- 複数視点で多面的に描く
- 結成から鳥羽伏見まで追える
- 青春小説として読める
気になる点
- 英雄賛歌ではない
- 視点が多く最初は戸惑う
- 幕末全体は描かれない
出版社
集英社
発売日
2009年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
新選組の小説ってたくさんありますよね。この本は何が違うんですか?
佐藤メバル
これは隊の結成から鳥羽伏見の戦いまでを、複数の人物の視点で描いている。土方歳三、佐藤彦五郎、沖田総司といった面々の目を通すから、同じ出来事がひとつではない顔を見せる。
英雄を祭り上げる話でも、悲劇として落とす話でもない、青春群像として書かれているのが持ち味だね。
橘ナナミ
じゃあ、新選組を組織として見る感じですか。誰の視点が中心なんですか?
佐藤メバル
一人に固定されない、というのが答えになるかな。だから最初は少し戸惑うかもしれない。でも読み進めると、若い集団が勢いで立ち上がり、時代に追い越されていく過程が見えてくる。
木内昇の描き分けを味わってほしい一冊だよ。
地虫鳴く 新選組裏表録
木内昇 著|集英社
¥1,045(税込)
幕末最強の武装集団・新選組の内側を、尾形俊太郎、阿部十郎、篠原泰之進ら、ほぼ無名の隊士たちに焦点を当てて描く長編。彼らにとって新選組とは何だったのか——時代の過渡期に懸命に悩み、生きた男たちの生き様が浮かび上がる。無名の隊士を主役に据えることで、名を残した幹部たちの物語とはまったく違う景色が開ける。(解説は橋本紀子)
こんな人におすすめ
幹部の活躍を描いた新選組本をすでに読んで、その外側を知りたい人。組織の中で埋もれた立場に共感しやすい読者。群像の内側をじっくり見たいときに。
良い点
- 無名隊士が主役になる
- 裏側からの視点が得られる
- 著者の新選組二作目として楽しめる
気になる点
- 華やかな事件は少ない
- 人名が多く混乱しやすい
- 地味な印象は否めない
出版社
集英社
発売日
2010年02月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
同じ木内昇さんの新選組本がもう一冊。こちらは無名の隊士たちの話なんですね。
佐藤メバル
そう。尾形俊太郎、阿部十郎、篠原泰之進といった、名前を聞いてすぐ顔が浮かぶ人は少ない隊士たちに焦点を当てている。
彼らにとって新選組とは何だったのか、という問いが本全体を貫いている。歴史に残らない側から見ると、同じ隊がまったく違って見えるんだよ。
橘ナナミ
じゃあ、前の『幕末の青嵐』と合わせて読むと立体的になりそうですね。
佐藤メバル
その読み方が一番いいと思う。表から見た青春群像と、裏から見た内実。二冊並べると新選組という組織の厚みが見えてくる。
ただ、事件の派手さはないので、静かな視点を楽しめる人向けだね。
夢の燈影 新選組無名録
小松エメル 著|講談社
¥726(税込)
新選組の幹部の華々しい活躍の陰で、語られることのなかった無名隊士たちの人生を描く連作。井上源三郎、蟻通勘吾、近藤周平、酒井兵庫、山崎丞、中島登——それぞれが違う立場で、夢、希望、そして家族と生活を抱えている。人斬りに志はあったのかという問いを軸に、歴史小説界の新星の筆で描く。(縄田一男氏が「『新選組血風録』以来の収穫」と評した)
こんな人におすすめ
新選組の「その日その人」を短編で味わいたい人。幕末を事件ではなく生活の目線で見たい読者。連作短編を少しずつ読み進めたいときに。
良い点
- 六編の連作で読みやすい
- 隊士ごとに立場が違う
- 女性作家の視点が新鮮
気になる点
- 通読より拾い読み向き
- 幹部の活躍は描かれない
- 短編のため余韻は短め
出版社
講談社
発売日
2016年09月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
また新選組で、今度は無名録……。でも『新選組血風録』以来の収穫と言われているのは気になります。
佐藤メバル
そこは注目していいところだね。井上源三郎、蟻通勘吾、近藤周平、酒井兵庫、山崎丞、中島登と、立場も年齢もばらばらの隊士が六編で描かれる。
「人斬りに、志はあったのか」という問いが、全編の底に流れている。夢や家族まで含めて書かれているのが新しいところだよ。
橘ナナミ
隊士それぞれの生活まで描かれるんですね。短編だから、通勤中に少しずつでも読めそうです。
佐藤メバル
そういう読み方に向いている。全部をつなげて読むより、一人ずつ会っていく感覚だね。前の『地虫鳴く』と重なる部分もあるけれど、こちらはより個人の人生に寄っている。読み比べるのも面白いと思うよ。
決戦!新選組
葉室麟 著|講談社
¥792(税込)
戦国の著名な戦場を舞台にしてきた「決戦!」シリーズが、初めて幕末に挑んだ一冊。葉室麟、門井慶喜、土橋章宏、小松エメル、天野純希、木下昌輝という当代の人気作家たちが、新選組の活躍と悲哀をそれぞれの筆で描き出す。アンソロジーなので複数の作家の新選組像を一度に味わえるのが贅沢なところ。一冊で好みの書き手を見つけられる入口にもなる。累計28万部を超えるシリーズだ。
こんな人におすすめ
新選組を一人の作家でなく、いろいろな書き方で読んでみたい人。作家選びの入口を探している読者。短編アンソロジーで気軽に読み始めたいときに。
良い点
- 人気作家の競演が楽しめる
- 短編なので読みやすい
- 好みの作家を探せる
気になる点
- 作風が編ごとに変わる
- 統一感は薄い
- 一編ずつの長さは短め
出版社
講談社
発売日
2020年05月15日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは複数の作家さんが新選組を書いたアンソロジーなんですね。作家によって新選組って全然違うんでしょうか?
佐藤メバル
それが一番の見どころだね。葉室麟、門井慶喜、土橋章宏など、書き手が違えば同じ隊の見え方も違う。活躍と悲哀、どちらに重心を置くかも人によって変わってくる。
競演を一冊で味わえるのは、シリーズとしても贅沢だよ。戦国を舞台にしてきた「決戦!」シリーズの初の幕末編でもある。
橘ナナミ
じゃあ、自分に合う作家を探すのにもちょうどよさそう。新選組を読む順番としては、最初でもいいですか?
佐藤メバル
むしろ入口にいいと思う。短編だから負担が少ないし、好みの書き手がわかればそこから長編に進めばいい。ただ、統一された一つの物語を期待すると物足りないので、短編の寄せ集めとして楽しむのが正解だね。
至誠の残滓
矢野隆 著|集英社
¥1,925(税込)
上野戦争で散ったはずの元新選組十番組組長・原田左之助が生きていた——明治十一年、東京の片隅の古物屋「詮偽堂」の主人・松山勝こそがその人。集まるのは新聞錦絵の記者・高波梓こと山崎烝、そして警官・藤田五郎こと斎藤一。三人は人買いを生業にする元長州藩士や窃盗団と対峙し、やがて新政府を操る人物に行きつく。明治の世にひそむ残党を描く時代小説だ。
こんな人におすすめ
「新選組のその後」を明治まで追いたい人。戊辰戦争で終わらない新選組像に関心がある読者。残党ものの緊張感を味わいたいときに。
良い点
- 生き延びた設定が刺さる
- 斎藤一や山崎烝も登場する
- 明治を舞台にした続きが読める
気になる点
- 史実のままの物語ではない
- 幕末の描写は回想中心
- 前提知識があった方が入りやすい
出版社
集英社
発売日
2019年08月26日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
原田左之助が生きていた、という設定から始まるんですか。しかも斎藤一も出てくるんですね。
佐藤メバル
そう。舞台は明治十一年で、古物屋を営む松山勝が実は原田左之助。そこに山崎烝や、警官になった藤田五郎——つまり斎藤一が寄ってくる。
人買いや窃盗団と対峙していくうち、新政府を操るある人物にたどり着く。維新のあとの新選組を描く小説は多くないから、そこが貴重だね。
橘ナナミ
なるほど。戊辰で終わらない物語なんですね。新選組が好きな人ほど、気になりそうです。
佐藤メバル
うん、隊の物語をひととおり読んだ人にこそ響くと思う。ただ、史実どおりの続きではないので、そこは混ぜないでほしい。
ifの緊張感として楽しむ作品だよ。
明日は維新だ
童門冬二 著|集英社
¥586(税込)
嘉永六年、ペリー来航。安政七年、桜田門外の変。慶応三年、大政奉還——激動の幕末、時代と闘い、あるいは時代に寄り添いながら、あくまでもおのが道を貫いた男たちを描く連作短編十編。坂本龍馬、高杉晋作、西郷吉之助など、維新回天に命を賭けた志士の群像が鮮やかに立ち上がる。短編連作で一人ずつ会っていけるのが気楽でいい。(解説は関口苑生)
こんな人におすすめ
幕末の人物をひとりずつ、短い単位で味わいたい人。通読の前に気になる名前を拾い読みしたい読者。幕末全体の空気をまずつかみたいときに。
良い点
- 十編の連作で読みやすい
- 複数の志士を一冊で追える
- 童門冬二の人物描写が光る
気になる点
- 一編ずつの深掘りは控えめ
- 歴史の流れは自分で補う必要
- 文体はやや古風
出版社
集英社
発売日
1992年12月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
童門冬二さん、さっきの吉田松陰と同じ方ですね。こちらは短編の連作なんですか?
佐藤メバル
そう、十編の連作だ。龍馬、高杉晋作、西郷吉之助など、維新に命を賭けた男たちが一人ずつ出てくる。ペリー来航から大政奉還までの流れを、人物の側から追っていく作りだね。
志士の群像を、長編ではなく短編で見渡せるのが気楽でいい。
橘ナナミ
じゃあ、気になる名前のところから読んでも大丈夫ですか? 幕末は名前が多くて、いつも途中で分からなくなるので。
佐藤メバル
それでいいと思う。むしろそう読む前提の本だね。ただ、一編ずつの深掘りは長編に譲るので、年表や入門書を横に置くと理解が早い。
松陰の本と並べると、教えを受けた側の物語として読めるのも面白いよ。
野辺に朽ちぬとも
細谷正充 著|集英社
¥726(税込)
長州萩城下に生まれ、九歳で藩校明倫館の教授となり、のちに松下村塾で維新運動の原動力となる多くの志士を育んだ吉田松陰。その松陰と、村塾に学び二十代の若さで散った吉田稔麿、高杉晋作、意志を継いだ桂小五郎、伊藤博文——変革の時代を力強く生きた男たちを描く傑作五編を集めたアンソロジー。巻末には編者による書き下ろし松陰伝「松風の道」を収録。池波正太郎、海音寺潮五郎、南條範夫ほか名手の筆が並ぶ。
こんな人におすすめ
松陰とその門下を、複数の作家の筆で読み比べたい人。長州側の視点から幕末に入りたい読者。巻末の評伝も含めて味わいたいときに。
良い点
- 名手の短編をまとめて読める
- 松陰と門下生を一冊で追える
- 巻末の書き下ろし評伝が付く
気になる点
- 作品ごとに視点が変わる
- 通しの物語ではない
- 短編のため物足りなさも
出版社
集英社
発売日
2015年01月20日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
吉田松陰と、その門下の人たちをまとめた短編集なんですね。巻末に松陰伝が付いているのも気になります。
佐藤メバル
そこがいいところでね。五編の短編に加えて、編者の細谷正充による書き下ろしの松陰伝「松風の道」が巻末に入っている。
小説で人物に触れてから、最後に評伝で足元を固められる構成だ。長州の系譜が一冊で見渡せるのが強みだよ。
橘ナナミ
なるほど。さっきの『小説 吉田松陰』と合わせて読むと、理解が深まりそうですね。
佐藤メバル
いい組み合わせだと思う。あちらは松陰一人に寄り添う一冊、こちらは松陰と門下を多面的に描く一冊だ。ただ、短編集なので一編ずつの厚みには限りがある。
それでも名手の筆を比べて読める喜びは大きいよ。
青葉のごとく(会津純真篇)
池永陽 著|集英社
¥660(税込)
動乱の予兆をはらむ幕末の会津藩。下級武士の家に生まれた伊庭俊輔は、頭はいいが大人しい一平、何事にも中庸を得た新次郎ら幼馴染と日々を過ごしていたが、上士の子弟に因縁を吹っかけられ袋叩きに遭う。さらに、将来を誓い合った隣家の娘・梨津に縁談話が持ち上がり、平穏な暮らしが一変する。下級武士の少年たちの恋と青春を、時代の激浪のなかに描く新基軸の青春時代小説だ。
こんな人におすすめ
会津藩の立場から幕末を見たい人。身分差や理不尽に心を動かされる読者。少年の成長と恋を軸にした幕末小説を探しているときに。
良い点
- 青春小説として読みやすい
- 会津の下級武士の視点が新しい
- 恋と成長の物語が軸にある
気になる点
- シリーズの一作目にあたる
- 政治的な事件は少なめ
- 幕末の全体像は描かれない
出版社
集英社
発売日
2013年11月20日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
会津藩の下級武士の少年が主人公なんですね。新選組や長州とはまた違う場所からの話という感じがします。
佐藤メバル
そう、そこが面白い。伊庭俊輔は幼馴染と穏やかに暮らしていたけれど、上士の子弟に袋叩きにされ、さらに将来を誓った梨津に縁談話が持ち上がって、暮らしが一変する。
身分の壁と時代の激浪が、少年の日常にそのまま押し寄せてくるんだ。
橘ナナミ
なるほど。恋と青春の話として幕末に入れるのは、私みたいな読者には入りやすそうです。
佐藤メバル
その入口としてちょうどいいと思う。ただ、政治の動きや戦の描写は中心ではないので、そちらを期待すると物足りない。
会津という土地と、そこに生きる若い感情を味わう本だね。
幕末遊撃隊
池波正太郎 著|集英社
¥869(税込)
伊庭八郎は心形刀流・伊庭道場の後継。幕府の崩壊を目の当たりにした八郎は、同志を募って遊撃隊を組織し、怒濤の進撃を続ける官軍に挑んでいく。短く壮烈に生きた美剣士の青春物語として、池波正太郎がその生涯を描く。(解説は佐藤隆介)剣に生きる者が時代にどう向き合ったかが軸で、新選組ものとも会津ものとも違う、幕臣側の遊撃隊という切り口が持ち味だ。
こんな人におすすめ
池波正太郎の時代小説が好きな人。剣士の生涯を追う物語を読みたい読者。幕府側の最前線を描いた作品を探しているときに。
良い点
- 池波正太郎の筆で読める
- 遊撃隊という珍しい題材
- 剣士の青春が濃い
気になる点
- 短めで物足りなく感じることも
- 幕末全体は描かれない
- 壮烈な結末を含む
出版社
集英社
発売日
2009年06月26日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
伊庭八郎さん……さっきの会津の『青葉のごとく』にも伊庭という名前が出てきましたが、同じ人ですか?
佐藤メバル
名字が同じでも別の人物だね。こちらは心形刀流・伊庭道場の後継である伊庭八郎。幕府の崩壊を見て、同志を募って遊撃隊を組織し、進撃を続ける官軍に挑んだ人だ。
池波正太郎が、短く壮烈に生きた美剣士として描いている。新選組でも会津でもない、幕臣側の遊撃隊という切り口が珍しいんだよ。
橘ナナミ
剣士の物語として読めるんですね。ページ数はそんなに多くないんでしょうか?
佐藤メバル
そこは短めに感じるかもしれない。でも、濃密さで補って余りある。池波正太郎の剣戟と人物の書き方はやっぱり確かでね。
幕末を剣に生きた人の目から見たいときに向いている一冊だよ。
ifの幕末
清水義範 著|集英社
¥770(税込)
十九世紀半ば、ゴールド・ラッシュに沸くアメリカで、周囲から浮いた優雅な身なりの青年・シオン。金鉱を見物に来たフランス人の彼は、帰国する船賃を稼ぐジョン万次郎と出会い、日本への興味を深める。数年後、オランダ人と偽って開国目前の長崎へ入り、勝海舟・坂本龍馬・西郷隆盛らと交流して幕府の知恵袋となり、ついに——。歴史の隙間に「もしも」をちりばめた傑作長編だ。(解説は金原瑞人)
こんな人におすすめ
幕末史をひととおり知っていて、そこに遊びを加えて楽しみたい人。ifものの痛快さを味わいたい読者。史実と虚構の境目を確かめながら読むのが好きなときに。
良い点
- 史実の人物が次々登場する
- 架空の外国人視点が新鮮
- ifの快感が味わえる
気になる点
- 史実に忠実な作品ではない
- 予備知識があるとより楽しい
- 荒唐無稽に感じる人もいる
出版社
集英社
発売日
2013年09月20日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
フランス人が幕末の日本に来て、勝海舟や龍馬と交流する……しかもオランダ人と偽って、という設定がすごいですね。
佐藤メバル
清水義範らしい発想だね。シオンはゴールド・ラッシュのアメリカでジョン万次郎と出会い、日本に興味を持って長崎へ入る。
美しい顔立ちと行動力を武器に幕府の大物たちへ近づいていく。歴史の隙間に「もしも」をちりばめていく構成で、史実を知っている人ほど笑えるんだ。
橘ナナミ
なるほど。じゃあ、幕末の流れを覚えてから読んだほうが面白いんでしょうか。
佐藤メバル
覚えているほど楽しい、というのは間違いないね。逆に、これから幕末を学びたい人が最初に読むと、どこまでが史実か分からなくなるので注意がいる。
遊びとして読める余裕のある読者に勧めたい作品だよ。
星火瞬く
葉室麟 著|講談社
¥814(税込)
異人斬りが横行する幕末、全世界を相手にしたロシアの大革命家バクーニンが横浜に降り立つ。妖しい光を放つその男に、清河八郎、小栗忠順、勝海舟、高杉晋作といった日本の若き革命家たちは吸い寄せられていく。同時期、30年ぶりの来日を果たしたシーボルトと息子アレクサンダーも危険な革命家と出遭い、父から託された一挺のピストルを手に対決を決意する。幕末を世界史として描く青春小説だ。
こんな人におすすめ
幕末を鎖国の中の物語ではなく、世界史の一部として読みたい人。革命家同士の衝突に惹かれる読者。葉室麟の正統派の筆を味わいたいときに。
良い点
- 外国の革命家が物語を動かす
- 若き志士たちの熱が描かれる
- スケールが大きい
気になる点
- 人物関係が込み入っている
- 予備知識があると入りやすい
- 史実そのままではない
出版社
講談社
発売日
2014年08月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
バクーニンって、ロシアの革命家ですよね。それが横浜に来て、日本の志士たちと関わるなんて想像できません。
佐藤メバル
そこがこの本の肝だね。異人斬りが横行する幕末に、全世界を相手にした革命家が横浜へ降りてくる。妖しい光を放つその男に、清河八郎や勝海舟、高杉晋作といった面々が吸い寄せられていく。
同時期に来日したシーボルトの息子アレクサンダーは、父から託されたピストルを手に対決を決意する。
橘ナナミ
日本の中の話じゃなくて、世界の革命とつながっているんですね。人物が多くて難しくはないですか?
佐藤メバル
そこは正直、少し込み入っている。年表を横に置くか、幕末の主要人物を少し知ってから読むと入りやすい。でも、幕末を世界史として見るという発想は、他の新選組ものや志士ものにはない新鮮さだよ。
市松師匠幕末ろまん 黒髪
坂井希久子 著|幻冬舎
¥803(税込)
駕籠屋「瓢屋」の三女・おりんには、三味線で身を立てるという密かな夢があった。師事する市松師匠は腕前はもちろん、その名の通り人形のように白く整った顔をした絶世の美女で、おりんの憧れの的。だが、ある日の稽古帰り、忘れ物を取りに稽古場へ戻ったおりんは、想像だにしない事態を目にする——。謎が謎を呼ぶシリーズ第一弾で、幕末の町の暮らしと芸事の空気が同時に匂い立つ。
こんな人におすすめ
幕末を政治ではなく、町人の暮らしと謎解きで味わいたい人。芸事や女性同士の関係に関心がある読者。シリーズの一作目として気軽に始めたいときに。
良い点
- 町人女性の視点が新鮮
- 謎解きとしても楽しめる
- シリーズ一作目で入りやすい
気になる点
- 政治や戦の話は出てこない
- 歴史の流れは学びにくい
- 続巻が前提の作り
出版社
幻冬舎
発売日
2023年01月13日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
駕籠屋の三女で、三味線で身を立てたいという夢を持つ少女の話なんですね。幕末なのに、ずいぶん日常的で親しみやすいです。
佐藤メバル
駕籠屋の三女が三味線の稽古に通う、というだけでちょっと珍しいよね。おりんが師事する市松師匠は、人形のように白く整った顔の絶世の美女で、憧れの存在なんだ。
ところがある日の稽古帰り、忘れ物を取りに戻ったおりんが、想像だにしない事態を目にする。町の暮らしと謎が同時に始まるシリーズの第一弾だよ。
橘ナナミ
なるほど。幕末の政治はひと休みして、暮らしと謎のほうを読みたいときにちょうどよさそうですね。
佐藤メバル
そういう選び方でいいと思う。歴史の流れを学ぶ本ではないけれど、駕籠屋や三味線といった暮らしの手触りはとても丁寧だ。
芸事の空気が好きな人なら、すっと入っていけるだろうね。
小説 小栗上野介 日本の近代化を仕掛けた男 上
童門冬二 著|集英社
¥968(税込)
「いまの徳川幕府の体制では、絶対にこの国難を切り抜けることはできない」——ペリー来航で揺らぐ幕末、徳川武士の小栗上野介は近代化こそが日本の生きる道と信じ、遣米使節団の一員として渡航する。目的は不平等条約の是正と西洋文明の学習。だが待ち受けていたのは——。幕府に仕えた異才を通して幕末史の裏側に迫る長編で、木内昇による鑑賞、榎本秋による年譜も収録されている。
こんな人におすすめ
幕府側から近代化を考えた人物を知りたい人。組織を変える側の苦労に関心がある読者。大河ドラマの予習として先に読んでおきたいときに。
良い点
- 小栗上野介を正面から描く
- 年譜と鑑賞が付いている
- 幕府側の近代化がわかる
気になる点
- 上巻のみで続きが必要
- 政治の話が中心になる
- 幕末の戦いは少なめ
出版社
集英社
発売日
2025年08月21日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
小栗上野介って、名前は聞きますが何をした人かは曖昧です。幕府側で近代化を進めた人なんですよね?
佐藤メバル
そう。ペリー来航で揺れる幕末に、この体制では国難を切り抜けられないと考え、近代化こそが日本の生きる道と信じて遣米使節団の一員として海を渡る。
条約の是正と西洋文明の学習が目的だった。幕府の内側から国を立て直そうとした人物を、童門冬二が正面から描いている。
橘ナナミ
幕末というと倒幕側が主役になりがちなので、逆側から見るのが新鮮です。年譜が付いているのも助かります。
佐藤メバル
そこは大きいね。巻末の年譜と鑑賞があるから、時代の位置を確認しながら読める。上巻だけなので続きは必要だけど、近代化を仕掛けた男という視点は、新選組ものとも西郷ものとも違う角度だよ。
幕末明治サバイバル! 小説・渋沢栄一
加納新太 著|KADOKAWA
¥792(税込)
「おれ、渋沢栄一。農家のむすことして、父ちゃんの商売を手伝いながら暮らしてる」——ある日、悪い代官に稼いだ金を奪われ、生まれた家でエラさが決まるのはおかしいと立ち上がる。気づけば敵のトップである将軍の家来になり、才能を見込まれて大出世。混乱の世を頭脳ひとつで突き進む。一人称で語られる渋沢栄一の少年期が、とにかく読みやすい。幕末と明治の流れも自然に追える。
こんな人におすすめ
渋沢栄一の名前は知っているけれど、伝記は重そうだと感じる人。少年が立ち上がる話として幕末に入りたい読者。家族と話題を共有したいときに。
良い点
- 一人称でぐいぐい読める
- 少年期から始まるので入りやすい
- 幕末と明治の流れが追える
気になる点
- 大人向けの評伝ではない
- 史実の細部は簡略化される
- シリアスさは控えめ
出版社
KADOKAWA
発売日
2020年12月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
渋沢栄一が一人称で語るんですね。「おれ」って、ずいぶん親しみやすい。これは子ども向けなんでしょうか?
佐藤メバル
読みやすさを優先した作りでね、農家のむすこが悪い代官に稼いだ金を奪われ、生まれた家でエラさが決まるのはおかしいと立ち上がるところから始まる。
気づけば将軍の家来になり、才能を見込まれて出世していく。頭脳ひとつで進む痛快さが軸だ。
橘ナナミ
なるほど。幕末の空気はわかるけど、評伝として読むと物足りない、という感じですか?
佐藤メバル
そう、そこは分けて考えたい。固い伝記ではなく、混乱の世を少年の目で突き進む物語として楽しむ本だね。渋沢栄一に初めて触れる人や、家族で話題にしたい人にはちょうどいい入口になるよ。
開成をつくった男、佐野鼎
柳原三佳 著|講談社
¥1,980(税込)
東京大学合格者数日本一の開成学園、その前身が共立学校。幕末、使節団の随員としてアメリカとヨーロッパの土を踏み、文化や教育を子細に見聞した佐野鼎は、「人の仕立て方」こそが国を創ると予見し、官位を捨てて私財と己を教育に投じた。教育こそ国を創るという信念のもと、正則英語を本格的に学べる学校を立ち上げるまでの大河小説だ。開成学園理事長も推薦している。
こんな人におすすめ
教育や学校の成り立ちに関心がある人。人を育てる仕事に就いている、あるいは目指している読者。幕末から明治への転換を、教育の側から追いたいときに。
良い点
- 開成学園の前身がわかる
- 教育という視点が新鮮
- 幕末と明治をまたぐ大河
気になる点
- 政治劇は中心ではない
- 戦いの描写はない
- 教育史の予備知識があるとよい
出版社
講談社
発売日
2018年12月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
開成学園をつくった人、というタイトルに驚きました。幕末の話なんですね。
佐藤メバル
そう。開成の前身は共立学校で、その創設に関わったのが佐野鼎だ。使節団の随員としてアメリカとヨーロッパへ行き、文化や教育の現状を見聞して、「人の仕立て方」こそが国を創ると予見する。
そこから官位を捨て、私財と自分を教育に投じた。教育にかける情熱を描いた大河小説だよ。
橘ナナミ
なるほど。幕末の志士とは違う種類の「国を変える人」ですね。教育に関わっている人に読んでほしい感じがします。
佐藤メバル
そうだね、学校の先生や、人を育てる立場の人には刺さると思う。ただ、戦いや政治劇が中心ではないので、そちらを期待すると方向が違う。
幕末と明治をつなぐ視点として、棚に並べておきたい一冊だよ。
小説 幕末・明治維新
石塚康彦 著|リフレ出版/東京図書出版
¥1,540(税込)
ペリー来航以来、せめぎ合う薩長などの有力諸藩と幕府。その背後で日本へ食指を動かす西欧列強。黒船来航から幕府の統治が揺らぎ、攘夷か開国か、薩長か幕府か——何が勝敗を決したのかを描く長編。開国・倒幕・維新の三章で、吉田松陰の密航、高杉晋作、会津藩と新選組、パークス来日、江戸無血開城、箱館戦争、西南戦争までを一冊で見渡せる構成だ。
こんな人におすすめ
幕末から維新までを一冊で通して押さえたい人。流れの全体像を小説でつかみたい読者。用語や人名を整理しながら読み進めたいときに。
良い点
- 開国から維新まで一冊で追える
- 章立てが整理されている
- 外国の動きも描かれる
気になる点
- 人物一人の深掘りは薄い
- 登場人物が多い
- 小説としての余韻は少なめ
出版社
リフレ出版/東京図書出版
発売日
2026年08月04日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
開国・倒幕・維新の三章で、ペリー来航から西南戦争まで入っているんですね。これは幕末の全体をつかむのに良さそう。
佐藤メバル
そういう使い方に向いている。薩長と幕府のせめぎ合いだけでなく、背後で日本に食指を動かす西欧列強の動きも描かれる。
長州の攘夷実行、対馬を襲うロシア、パークス来日、江戸無血開城、箱館戦争、そして西南戦争まで、流れが一本につながるんだ。
橘ナナミ
なるほど。一人の人物を深く、ではなく、時代の動きを追う本なんですね。
佐藤メバル
その通り。だから西郷や土方の内面をじっくり味わいたい人には、別の本のほうが合う。逆に、まず全体の地図が欲しい人には頼りになる一冊だよ。
新装版 白い航跡(上)
吉村昭 著|講談社
¥836(税込)
薩摩藩の軍医として戊辰戦役に従軍した高木兼寛は、西洋医術を学んだ医師たちが傷病兵の肉を切り開き弾丸を取り出す姿を見聞し、自らの無力さを痛感すると同時に、まばゆい別世界にあこがれる。やがて海軍に入り、海外留学生としてイギリスへ派遣され、抜群の成績で最新の医学を修めて帰国する。西洋医術にあこがれた薩摩の若者が、のちに海軍を救うまでの物語だ。
こんな人におすすめ
幕末を剣や政治ではなく、医学や学問の側から見たい人。学び直しや留学に関心がある読者。吉村昭の緻密な筆をじっくり味わいたいときに。
良い点
- 医学という珍しい切り口
- 吉村昭の筆が確か
- 戊辰戦役の軍医の視点が得られる
気になる点
- 上巻のみで続きが必要
- 戦記としての読み味ではない
- 専門的な記述が続く場面も
出版社
講談社
発売日
2009年12月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
薩摩藩の軍医が主人公……幕末の小説で医学の話というのは、あまり聞いたことがありません。
佐藤メバル
そこが貴重なところだね。高木兼寛は戊辰戦役に軍医として従軍して、西洋医術を学んだ医師が傷病兵の肉を切り開いて弾丸を取る姿を見る。
自分の無力さを痛感すると同時に、まばゆい別世界にあこがれる。やがて海軍に入り、イギリスへ留学して最新の医学を修めて帰るんだ。学問が国を動かす話だよ。
橘ナナミ
なるほど。剣や政治ではなく、医学から幕末を見るんですね。吉村昭さんの緻密さも気になります。
佐藤メバル
吉村昭は資料を積み上げて書く人だから、当時の医療の手触りがとても生々しい。上巻だけなので続きは必要だけど、別の入口から幕末に入りたい人には強く勧めたい一冊だ。
火影に咲く
木内昇 著|集英社
¥704(税込)
沖田総司、高杉晋作、坂本龍馬、中村半次郎——幕末の京を駆けた志士と、想いを交わした女たちを描く短編集。梁川星巌と妻・張紅蘭、吉田稔麿と小川亭の若女将・てい、沖田総司と労咳を患う老女・布来、高杉晋作と祇園の芸子・君尾、坂本龍馬と亀田屋の娘・タカ、中村半次郎と村田煙管店の娘・さと。全六編それぞれの距離の取り方が、静かで鮮やかだ。
こんな人におすすめ
志士の戦う姿ではなく、人と人との時間を読みたい人。短編で余韻を味わいたい読者。寝る前に一篇ずつ読み進めたいときに。
良い点
- 六編の短編集で読みやすい
- 女性側の視点が生きている
- 志士の別の顔が見える
気になる点
- 戦の描写は少ない
- 史実の流れは追いにくい
- 一篇ずつの長さは短め
出版社
集英社
発売日
2021年08月20日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
沖田総司や高杉晋作、坂本龍馬が出てくるけど、志士と“女たち”の話なんですね。戦う話ではないんですか?
佐藤メバル
そう、そこがこの短編集の核だね。梁川星巌と妻の張紅蘭、沖田総司と労咳を患う老女・布来、高杉晋作と祇園の芸子・君尾、龍馬と亀田屋の娘・タカなど、全六編でそれぞれ違う距離の二人が描かれる。
戦も事件も背景にあるだけで、表には出てこない。
橘ナナミ
なるほど。幕末の人物を、人として見る感じですね。一篇ずつ読めるのがうれしいです。
佐藤メバル
そこがいいところでね、寝る前に一篇、という読み方に向いている。木内昇は新選組ものも書いている人だけど、こちらはしみる方向に振り切っている。志士の横顔を眺めたい人に勧めたい。
恋歌
朝井まかて 著|講談社
¥836(税込)
樋口一葉の師・中島歌子は、知られざる過去を抱えていた。幕末の江戸で商家の娘として育った歌子は、一途な恋を成就させて水戸の藩士に嫁ぐ。だが夫は尊王攘夷の急先鋒・天狗党の志士。やがて内乱が勃発すると、歌子ら妻子も逆賊として投獄される——。幕末から明治へと駆け抜けた歌人の生涯を描く、直木賞受賞作だ。和歌や文学に親しんだ人ほど後半が深く響く。
こんな人におすすめ
幕末を女性の一生として追いたい人。歌や言葉に惹かれる読者。明治の文学につながる流れに関心があるときに。
良い点
- 直木賞受賞作の実力
- 歌人の生涯が丁寧に描かれる
- 幕末から明治まで追える
気になる点
- 戦の場面はない
- 政治の解説は少ない
- 和歌の素養があるとより楽しい
出版社
講談社
発売日
2015年10月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
樋口一葉の師匠の中島歌子さんが主人公なんですね。水戸の天狗党に嫁いで、妻も投獄されるというのが衝撃です。
佐藤メバル
そこがこの小説の重さだね。江戸の商家の娘として育った歌子が、一途な恋を成就させて水戸の藩士に嫁ぐ。でも夫は天狗党の志士で、内乱が起きると妻子まで逆賊として投獄されてしまう。
幕末から明治までを、歌人として生きた一人の女性の視点で追う直木賞受賞作だよ。
橘ナナミ
なるほど。志士の妻の人生を、そのまま見せられる感じですね。和歌の知識がなくても読めますか?
佐藤メバル
読み進められると思う。ただ、和歌や文学の流れを知っていると、後半の樋口一葉につながる部分がより深く響く。
女性の一生を軸に幕末を読みたい人に、静かに勧めたい一冊だよ。
幕末小説の文学史的系譜と作品の変遷
橘ナナミ
幕末小説にも、流行りの移り変わりってあるんですか?
佐藤メバル
あるよ。大きな流れとしては、司馬遼太郎が龍馬や志士を「近代を作った人」として描いて広く読まれるようになり、その後は新選組のように敗れた側へ光が当たった。さらに近年は、女性や無名の人物、外国人の視点へと広がっている。『夢の燈影 新選組無名録』は幹部ではなく無名隊士を、『地虫鳴く 新選組裏表録』もほぼ無名の隊士に焦点を当てる。『至誠の残滓』は上野戦争で散ったはずの原田左之助が生きていた、という設定から明治の世を描く。
橘ナナミ
主人公の「中心」が、だんだん外側へ動いてきたんですね。
佐藤メバル
そう。それと女性作家の進出も大きい。小松エメル、木内昇、朝井まかて。『火影に咲く』は沖田総司や高杉晋作、坂本龍馬と想いを交わした女たちを六編の短編で描く。男たちの物語の影にいた人の声が、いま表に出てきているんだ。
大河ドラマと原作、そして史実への橋渡し
橘ナナミ
ドラマから入る人も多いと思うんですけど。
佐藤メバル
そこは対応を明記したいね。『新装版 天璋院篤姫(下)』は大河ドラマ「篤姫」の原作にあたる作品で、大奥を統べた篤姫の生涯を描く。『正妻 慶喜と美賀子』は大河ドラマ『西郷どん!』の原作者が、将軍にならぬと言い張る慶喜と、その妻美賀子を描いたもの。『小説 小栗上野介』は2027年の大河ドラマで主人公になる人物を扱っている。映像で名前を知った人が原作で深く知る。いい導線だよ。
橘ナナミ
逆に、史実をちゃんと知りたくなったらどうすれば?
佐藤メバル
小説で人物を好きになってから、通史や新書に移ると頭に入る。『小説 幕末・明治維新』はペリー来航から西南戦争まで章立てで追えるので、小説と史実の橋になる。あとは教育や近代化の視点——『開成をつくった男、佐野鼎』や『幕末明治サバイバル! 小説・渋沢栄一』——を読むと、維新が「終わり」ではなく「始まり」だと見えてくる。
藩・地域、そして鎖国側・外国人の視点
橘ナナミ
さっき地域の話が出ましたが、もっと突っ込むと?
佐藤メバル
会津は『青葉のごとく(会津純真篇)』で、下級武士の少年の恋と青春から入れる。水戸は『恋歌』、天狗党の志士に嫁いだ中島歌子の生涯を描いて直木賞を受賞している作品だ。薩摩の軍医・高木兼寛を追う『新装版 白い航跡(上)』は、戊辰戦役への従軍からイギリス留学までを描く。同じ「維新」でも、土地ごとに温度が違う。
橘ナナミ
外国人の視点の作品もあるんですよね?
佐藤メバル
『ifの幕末』は、日本びいきのフランス人シオンが長崎に入り、勝海舟や坂本龍馬、西郷隆盛と交流して幕末史を変えてしまう。『星火瞬く』は、横浜に降り立ったロシアの革命家バクーニンと、シーボルト親子を軸に、清河八郎、小栗忠順、勝海舟、高杉晋作が交わる。鎖国の外から見ると、日本の動乱が世界史の中に置き直されるんだ。
橘ナナミ
なるほど……! 幕末って国内だけの話だと思い込んでいました。
よくある質問
幕末小説の初心者・入門におすすめの1冊は?
橘ナナミ
幕末小説の初心者・入門におすすめの1冊はについて教えてください。
佐藤メバル
まずは『明日は維新だ』のような連作短編を。坂本龍馬、高杉晋作、近藤勇らを一編ずつ描くので、人名と時代の空気に無理なく慣れます。複数の作家が競作した『決戦!新選組』も、好みの書き手を見つける入口になります。一冊目は「読み切れる厚さ」で選ぶのが正解です。
幕末小説と歴史小説の違いは何?
橘ナナミ
幕末小説と歴史小説の違いは何について教えてください。
佐藤メバル
幕末小説は歴史小説の一部で、ペリー来航の前後から明治維新までを舞台にしたものを指すことが多いです。同じ歴史小説でも戦国や江戸前期とは時代が違い、討幕か佐幕か、攘夷か開国かという対立が物語の軸になります。史実に沿った作品から、転生を扱う『竜馬がくる』のようなエンタメまで幅広いのも特徴です。
『竜馬がゆく』は全何巻で、読み切れる?
橘ナナミ
『竜馬がゆく』は全何巻で、読み切れるについて教えてください。
佐藤メバル
司馬遼太郎の『竜馬がゆく』は幕末小説の起点として長く読まれてきた長編で、文庫では複数の巻に分かれています。巻数や分冊は版によって異なるので、手に取る版で確認してください。一気に読むより、龍馬の年齢や事件ごとに区切って読むと挫折しにくいです。まず短編集で時代に慣れてから挑むのも手です。
新選組がテーマのおすすめ幕末小説は?
橘ナナミ
新選組がテーマのおすすめ幕末小説はについて教えてください。
佐藤メバル
結成から鳥羽伏見までを複数の視点で描く『新選組 幕末の青嵐』、無名隊士に焦点を当てる『地虫鳴く 新選組裏表録』『夢の燈影 新選組無名録』、人気作家が競作した『決戦!新選組』。上野戦争の後を描く『至誠の残滓』まで並べると、同じ新選組がまったく違う顔で見えてきます。
幕末小説はどの順番で読めばいい?
橘ナナミ
幕末小説はどの順番で読めばいいについて教えてください。
佐藤メバル
短編集で人名と空気に慣れる→気になった人物の単巻や中規模の長編→通史で背景を補う、の三段階がおすすめです。『小説 吉田松陰 全一冊』から『野辺に朽ちぬとも』へ進み、高杉晋作や桂小五郎、伊藤博文へ向かう松下村塾の流れを追うと、人のつながりで読めるので迷いません。
文庫とKindleどちらがおすすめ?絶版本はどうする?
橘ナナミ
文庫とKindleどちらがおすすめ?絶版本はどうするについて教えてください。
佐藤メバル
持ち歩いて読むなら文庫、人物名を検索しながら読みたいなら電子書籍が便利です。文庫は在庫が薄い時期もあるので、書店で取り寄せを頼む、図書館を使う、電子版の有無を確認するの三つを並行して。読みたい本が絶版なら、図書館と電子版の確認をセットで行うのが確実です。
女性が主人公の幕末小説のおすすめは?
橘ナナミ
女性が主人公の幕末小説のおすすめはについて教えてください。
佐藤メバル
大奥を統べた篤姫の生涯を描く『新装版 天璋院篤姫』、将軍になるのを拒む慶喜とその妻美賀子の日々を描く『正妻 慶喜と美賀子』、歌人・中島歌子を追う『恋歌』。駕籠屋の三女が三味線で身を立てようとする『市松師匠幕末ろまん 黒髪』、志士の傍らにいた女たちの『火影に咲く』も外せません。
1冊で完結する読みやすい幕末小説は?
橘ナナミ
1冊で完結する読みやすい幕末小説はについて教えてください。
佐藤メバル
『星火瞬く』は、清河八郎、小栗忠順、勝海舟、高杉晋作が交わる物語が一冊で完結します。『ifの幕末』や『幕末遊撃隊』も単巻で楽しめる一冊。『小説 吉田松陰 全一冊』はその名のとおり一冊で松陰の生涯を追えるので、最初の一冊にも向いています。
まとめ
橘ナナミ
最初は「坂本龍馬か新選組か」くらいの気持ちだったんですが、視点の数がぜんぜん違いました。
佐藤メバル
そうだろう。討幕側、佐幕側、公家、庶民と女性、そして外国。五つの窓から同じ夜明けを見ている。だから一冊読んで「これが幕末だ」と決めなくていい。
橘ナナミ
むしろ、いくつか読んだほうが像が結ぶんですね。
佐藤メバル
うん。まず短編集で人名に慣れて、好きな人物を見つけたらその人の長編へ。途中で史実が気になったら通史に寄る。この順番なら、一冊を途中で置いても次につながる。
橘ナナミ
置いてもいいんですか。なんだか救われます。
佐藤メバル
いいんだよ。読者は港に立って、たくさんの船が同時に錨を上げる瞬間を見ている。どの船に乗るかは自由で、あとから別の船に乗り換えたって、見上げる夜明けは同じなんだから。
