ヴァンパイア小説を楽しめる本のおすすめ人気ランキング22選【2026年版】

監修

佐藤メバル

佐藤メバル

@shelfy_mebaru

編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ

橘ナナミ

@medias_nanami

編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。

最終更新: 2026年10月

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、今回のお題は「ヴァンパイア小説」ですよね。調べたら、古典ホラーも学園ラブも大人向けの濃いものも出てきて、同じ吸血鬼なのにまるで別ジャンルみたいで……どこから読めばいいのか分からなくなりました。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。吸血鬼小説は、「血を吸う」というたった一つの行為に、時代ごとに違う意味を込め直してきた歴史なんだ。怪物への恐怖、孤独の比喩、恋愛の隠喩、社会の不安。だから読む順番で印象がまるで変わる。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど! じゃあ、自分がどの系統の吸血鬼を好きなのかを知るのが先ですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。恐怖型・耽美型・ロマンス型・社会派/幻想型の四系統で地図を作っておくと迷わない。たとえばポプラ社から出ている三田村信行さんの再話『吸血鬼ドラキュラ』は、ブラム・ストーカーの原作を新しい文と絵で味わえる恐怖型の入り口。赤川次郎さんの『吸血鬼はお年ごろ』という、吸血鬼父娘が事件を解くユーモア・ミステリから入る道もある。

橘ナナミ

橘ナナミ

真逆ですね! 書店の棚では、どちらが動くんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

現場では「怖いのに読みやすい」ものが強い。分厚い古典は憧れでも最初の一冊には重いから、私は短編アンソロジーを薦めることが多かった。東京創元社の『吸血鬼ラスヴァン』や河出書房新社の『ドラキュラ ドラキュラ』なら一編ずつ区切りがついて、好みの系統を探せる。そのうえで長編へ、が失敗しない順番だよ。

ヴァンパイア小説を楽しめる本の選び方

読みたい感情で選ぶ(恐怖/切なさ/耽美/笑い/考察)

橘ナナミ

橘ナナミ

感情から逆引きするなら、どう分けますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

恐怖なら『戦前日本モダンホラー傑作選 バビロンの吸血鬼』。昭和初期の犯罪実話雑誌から少年誌まで、会津信吾さんが〈新青年〉以外から21編を選んでいるのが目利きらしいところだね。切なさなら平凡社の『雪女・吸血鬼短編小説集』の13編。耽美なら愁堂れな『嘆きのヴァンパイア』、笑いなら赤川次郎さんのシリーズ、考察なら種村季弘さんの『ドラキュラ ドラキュラ』の11篇だよ。

翻訳物か日本人作家かで選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

翻訳で読むのと、日本人作家が書いたものでは何が違いますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

翻訳は、モチーフがヨーロッパのゴシックから生まれたことを体で感じられる。『吸血鬼ラスヴァン』はバイロン、ポリドリの名作の新訳に加えて、全232章で知られる『吸血鬼ヴァーニー』の抄訳まで収録し、ドラキュラ以前の系譜をたどれる。日本人作家は吸血鬼を日常や青春に接続するのがうまい。西尾維新『傷物語』は阿良々木暦と吸血鬼キスショットの出逢いを描く『化物語』の前日譚、吉野匠『リバースヴァンパイア』は葬式の帰り道に襲撃現場へ飛び込む19歳から始まる。

ボリュームと読了時間で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

短編集はやっぱり入門向きですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

うん。『ドラキュラ ドラキュラ』11篇、『吸血鬼ラスヴァン』10篇、『雪女・吸血鬼短編小説集』13編、『バビロンの吸血鬼』21編。一編ずつ短いから隙間時間で読み切れて、好みを試す試金石にもなる。じっくり浸りたいならシリーズか、『傷物語』のような一冊で重いものを。まず短編で一本、次に長編、が賢い順番だよ。

一冊完結かシリーズかで選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

シリーズは途中からでも大丈夫ですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

第1巻からをすすめる。『吸血鬼はお年ごろ』は第1弾から『湖底から来た吸血鬼』が第10弾、『吸血鬼と切り裂きジャック』が第13作と続いていて、人間関係が積み上がっているからね。『ペンションライフ・ヴァンパイア』は2巻、『吸血鬼と薔薇少女』は6巻、『ブラッディ・ブライド』は1巻から。これから伸びていくところなら森乃なっぱ『霧島くんは普通じゃない 転校生はヴァンパイア!?』だね。

古典の教養か最新の話題作かで選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

古典から入るべきですか、新刊からですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

教養として押さえるならブラム・ストーカーと、その前史の『吸血鬼ラスヴァン』『ドラキュラ ドラキュラ』で幹を作るのが王道。でも新刊から入って元ネタへ遡る読み方も強い。行き来すればいい。古典は時代の空気をまとっているから、現代の作品と並べると、何が変わって何が残ったかが見えてくるよ。

媒体で選ぶ(紙・電子書籍)

橘ナナミ

橘ナナミ

紙と電子、どっちで読むのがいいんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

電子の配信状況や読み放題サービスの対象かどうかは作品ごと、時期ごとに変わるから断定は避けたい。買う前に各書店のページで確認するのが確実だよ。あえて言えば、アンソロジーは試し読みしやすく、解題や注釈を行き来するなら紙が快適という人も多い。価格も文庫サイズのものから大判のアンソロジーまで幅があるから、自分の読み方の癖で選ぶといい。

ヴァンパイア小説を楽しめる本をひと目で比較

橘ナナミ

橘ナナミ

えっ、22冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず

#画像名称おすすめ対象価格一言
1
吸血鬼ドラキュラ
吸血鬼ドラキュラホラー入門として最初の一冊を探している人、ドラキュラの名前は知っているが原作はまだ読んでいない人、子どもと怪奇ものの話をしたい大人、映画や舞台で姿を変えてきたドラキュラ像の元ネタを短時間で押さえたい人。¥1,540はじめてのドラキュラに最適
2
傷物語
傷物語『化物語』シリーズをこれから読み始める人、順番に迷って起点を探している人、西尾維新の会話劇と吸血鬼モチーフの組み合わせが気になる人、アニメから原作に入りたい人。¥1,430化物語の原点、第零話
3
吸血鬼ラスヴァン
吸血鬼ラスヴァンドラキュラを読了して次の一冊を探している人、吸血鬼小説の歴史や源流に関心がある人、アンソロジーで複数の作家を比べたい人、各編の解説・解題まで読み込みたい読書好き。¥3,300ドラキュラ以前の源流を辿る
4
ドラキュラ ドラキュラ
ドラキュラ ドラキュラ短編で吸血鬼のバリエーションを味わいたい人、種村季弘の選書眼に惹かれる人、コナン・ドイルやメリメの意外な一面を読みたい人、アンソロジーの編集そのものを楽しむ読者。¥968愛好家が選んだ決定版アンソロジー
5
吸血鬼はお年ごろ
吸血鬼はお年ごろ重すぎない吸血鬼ものを探している人、ミステリーとホラーの境目が好きな人、長く続くシリーズに入ってみたい人、赤川次郎を久しぶりに読み返したい人。¥770吸血鬼父娘の長寿シリーズ第1弾

ヴァンパイア小説を楽しめる本のおすすめ人気ランキング

橘ナナミ

橘ナナミ

一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!

佐藤メバル

佐藤メバル

よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

吸血鬼ドラキュラ
1

吸血鬼ドラキュラ

三田村信行 著|ポプラ社

¥1,540(税込)

4.8

19世紀末にブラム・ストーカーが書いた『吸血鬼ドラキュラ』を、児童文学作家・三田村信行の新しい文と鈴木し乃の絵で読み直した一冊。ポプラ社「ホラー・クリッパー」の1巻目で、ホラー名作を児童文学作家が再話するシリーズの出発点にあたる。100年以上読み継がれてきた物語を、怪奇読物・ミステリー・ファンタジー・ブラックユーモアと多彩な魅力の入口として味わえる。原作は翻訳も多く長いが、再話ならではの入りやすさが最大の違い。映画や演劇で姿を変えてきたドラキュラ像の原型に、肩肘張らず触れられる。

こんな人におすすめ

ホラー入門として最初の一冊を探している人、ドラキュラの名前は知っているが原作はまだ読んでいない人、子どもと怪奇ものの話をしたい大人、映画や舞台で姿を変えてきたドラキュラ像の元ネタを短時間で押さえたい人。

良い点

  • 再話で読みやすく入門に最適
  • 挿絵つきで情景が浮かぶ
  • シリーズ1巻目として導入になる

気になる点

  • 原作の細部は省略されている
  • 児童向けで描写はおだやか
  • 翻訳版の重厚さは味わえない

出版社

ポプラ社

発売日

2022年04月13日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ヴァンパイア小説の入口って、やっぱりドラキュラですよね。でも原作って難しそうで……。これ、気になります!

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。これはポプラ社の「ホラー・クリッパー」の1巻目で、ブラム・ストーカーの原作を児童文学作家の三田村信行が新しく再話したものなんだ。

19世紀末の原作は手紙や日記で語られる重厚な構成だけど、こちらは物語の骨格をたどりやすい形に整えられている。

鈴木し乃の絵も入って、映画や舞台で姿を変えてきたドラキュラの原型に気軽に触れられる入口だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど!じゃあ原作に挑む前にこれを読んでおくと、あとで「ここが違うんだ」って楽しめそうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうそう、そこがこの本の使いどころ。シリーズ全体が怪奇読物、ミステリー、ファンタジー、ブラックユーモアと幅広いから、自分の好みの方向を探るのにも向いている。

ただ、原作の長い手紙形式や細かな恐怖描写は削られているので、物足りなくなったら翻訳に戻ればいい。入口として割り切るのが上手な付き合い方だよ。

傷物語
2

傷物語

西尾維新 著|講談社

¥1,430(税込)

4.7

西尾維新『化物語』の前日譚にあたる「第零話 こよみヴァンプ」。終業式の夜、阿良々木暦が美しき吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハードアンダーブレードと出逢う——すべてはここから始まる。VOFANのイラストも含め、シリーズの起点を確かめられる一冊だ。吸血鬼を「かわいそうな怪物」としてではなく、名前と人格を持つ存在として描くのが最大の違い。キスショットとの出逢いの夜を軸に、暦がどう「普通でない」側へ踏み出すかが読みどころ。前日譚なので単独でも入れる。

こんな人におすすめ

『化物語』シリーズをこれから読み始める人、順番に迷って起点を探している人、西尾維新の会話劇と吸血鬼モチーフの組み合わせが気になる人、アニメから原作に入りたい人。

良い点

  • シリーズの起点として最適
  • 会話劇のテンポが心地よい
  • 吸血鬼像が独特で新鮮

気になる点

  • シリーズ前提の固有名詞が多い
  • 文章の癖に好みが分かれる
  • 単体では謎が残る

出版社

講談社

発売日

2008年05月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ヴァンパイアものって、西洋のゴシックか少女マンガか……と思ってたら、西尾維新さんもあるんですね。これはどこから読めばいいんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

迷ったらこれだね。『化物語』の前日譚で、位置づけとしては「第零話 こよみヴァンプ」。終業式の夜に、阿良々木暦が美しき吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハードアンダーブレードと出逢う——すべてはここから始まるという起点なんだ。

ただの怪物ではなく、名前と人格を持った存在として吸血鬼を描くのが、他のヴァンパイアものと大きく違うところだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

名前が長い!でも、そういうところが西尾維新さんらしいですね。会話がすごく多いイメージなんですけど、読みやすいですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

会話のテンポはこの人の真骨頂で、そこが好きになるかどうかの分かれ目かな。得意な人はどんどん引き込まれるし、苦手な人は少し癖を感じるかもしれない。

あと、シリーズの固有名詞が前提になっている部分もあるから、単体で読むと残る謎もある。でも逆に言えば、ここから読み進めれば伏線が回収されていく楽しみが最大になる。

順番に迷っているなら迷わずここから、と僕は薦めるよ。

吸血鬼ラスヴァン
3

吸血鬼ラスヴァン

G・G・バイロン 著|東京創元社

¥3,300(税込)

4.6

ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』より前に書かれた吸血鬼小説だけを集めた、東京創元社のアンソロジー。多彩な怪奇譚を手がける翻訳者・夏来健次が精選し、バイロン、ジョン・ポリドリの名作の新訳、全232章という長大さで知られる伝説のゴシック小説『吸血鬼ヴァーニー』の抄訳など、本邦初紹介の作品を中心に10篇を収録。詳細な各編解説・解題付き。ドラキュラの「前」を読むという切り口が独自で、吸血鬼像がどこから来たのかを辿れる。

こんな人におすすめ

ドラキュラを読了して次の一冊を探している人、吸血鬼小説の歴史や源流に関心がある人、アンソロジーで複数の作家を比べたい人、各編の解説・解題まで読み込みたい読書好き。

良い点

  • ドラキュラ以前に特化した希少な選書
  • 本邦初訳が中心で新鮮
  • 各編の解説が充実

気になる点

  • 古典的文体で読みごたえ重視
  • 文体の古さに慣れが要る
  • 長編ヴァーニーは抄訳

出版社

東京創元社

発売日

2022年05月31日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

これ、ドラキュラが表紙にいないのに吸血鬼って書いてあって……どういう本なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

よく気づいたね。これは『吸血鬼ドラキュラ』が発表される前に書かれた吸血鬼小説だけを集めたアンソロジーなんだ。

翻訳者の夏来健次が精選していて、バイロンやジョン・ポリドリの名作の新訳、全232章という長さで知られる『吸血鬼ヴァーニー』の抄訳など、本邦初紹介の作品が中心の10篇。

各編に詳しい解説と解題がついていて、吸血鬼というキャラクターがどこから来たのかを辿れる。

橘ナナミ

橘ナナミ

232章!?それは読めない……でも抄訳なら追えますね。えっと、吸血鬼ってドラキュラが最初じゃなかったんですね。知らなかったです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこが面白いところ。ドラキュラは突然生まれたんじゃなくて、それ以前の積み重ねの上に立っている。

この本を先に読むと、ドラキュラのどこが新しかったのかが逆に見えてくるんだ。ただ、古典的な文体なので、読みやすさ優先の人には少し骨が折れるかもしれない。

源流を辿る楽しみを味わいたい人向けの一冊だよ。

ドラキュラ ドラキュラ
4

ドラキュラ ドラキュラ

種村季弘 著|河出書房新社

¥968(税込)

4.4

稀代の吸血鬼愛好家・種村季弘が、王道から異色まで11篇を精選した伝説の傑作集の新装版。ジョン・ポリドリ「吸血鬼」、プロスペル・メリメ「グスラ(抄)」、コナン・ドイル「サセックスの吸血鬼」、マルセル・シュオッブ「吸血鳥」など、作家も時代も国籍もばらばら。吸血鬼小説のミニアチュールと評されるように、短編の切れ味で吸血鬼の多面性を見せる。ヴェルヌやシュオッブまで含む選球眼が、他のアンソロジーとの決定的な違いになっている。

こんな人におすすめ

短編で吸血鬼のバリエーションを味わいたい人、種村季弘の選書眼に惹かれる人、コナン・ドイルやメリメの意外な一面を読みたい人、アンソロジーの編集そのものを楽しむ読者。

良い点

  • 愛好家の選球眼が光る11篇
  • 王道から異色まで幅広い
  • 新装版で入手しやすい

気になる点

  • 抄訳・短編が中心
  • 解説の濃さに好みが分かれる
  • 血の描写は控えめな篇も

出版社

河出書房新社

発売日

2023年02月07日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

『ドラキュラ ドラキュラ』って同じ言葉が続くタイトル、すごく気になります。これもアンソロジーなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、短編集だね。編んだのは種村季弘で、吸血鬼の愛好家として知られた人。ポリドリ「吸血鬼」、メリメ「グスラ」の抄、コナン・ドイル「サセックスの吸血鬼」、シュオッブ「吸血鳥」……と、作家も時代も国籍もばらばらで11篇。

吸血鬼小説のミニアチュールという言い方をされるような、短編の切れ味で吸血鬼の多面性を見せてくれる。

橘ナナミ

橘ナナミ

コナン・ドイルが吸血鬼を書いてるの、意外です!ホームズ以外も読んでみたいな。ホームズものとの違いはあるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ドイルは怪奇ものをかなり書いていて、これはその中の一篇だよ。ホームズの合理主義とは逆に、説明しきれないものを残す筆致が味わえる。

さっきの『吸血鬼ラスヴァン』がドラキュラ以前の源流を辿る本だとすれば、こちらは集める側の審美眼を味わう本。

同じアンソロジーでも狙いがはっきり違うから、読み比べると面白いよ。

吸血鬼はお年ごろ
5

吸血鬼はお年ごろ

赤川次郎 著|集英社

¥770(税込)

4.3

「正統な」吸血鬼の父を持つ女子高生・神代エリカが、父クロロックと共に事件を解くシリーズの第1弾。同じ高校の生徒が吸血鬼に噛まれたような傷を残して惨殺される事件が起こり、二人は事件の解明に立ち上がる。ホラーではなく、ユーモアをまとった日常ミステリーとして進むのが最大の特徴で、血の匂いと高校生活が同居する独特の温度感がある。赤川次郎らしい軽快な読み味で、長いシリーズの入口としても最適。

こんな人におすすめ

重すぎない吸血鬼ものを探している人、ミステリーとホラーの境目が好きな人、長く続くシリーズに入ってみたい人、赤川次郎を久しぶりに読み返したい人。

良い点

  • 軽快で読みやすいシリーズ第1弾
  • 父娘の掛け合いが楽しい
  • ミステリーとしても成立

気になる点

  • 本格ホラーを求める人には軽い
  • 事件の解決はあっさりめ
  • シリーズ前提の人物が多い

出版社

集英社

発売日

2009年12月20日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

『吸血鬼はお年ごろ』……タイトルがもう可愛いんですけど、これホラーなんですか?コメディなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

どちらかと言えば、ホラーをまとった日常ミステリーかな。主人公は「正統な」吸血鬼の父を持つ女子高生・神代エリカで、父のクロロックと一緒に事件を追う。

第1弾では、同じ高校の生徒が吸血鬼に噛まれたような傷を残して殺される事件が起きて、二人が動き出すんだ。

血の匂いと高校生活が同居する、不思議な温度感がこのシリーズの持ち味だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

女子高生の日常と吸血鬼の事件……ギャップがすごい。これ、長く続いてるシリーズなんですよね。1巻から読まないとダメですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

この第1弾はエリカとクロロックの関係が決まる本だから、まずここから読むのが自然だね。読後感はわりと軽くて、怖さを求める人には物足りないかもしれない。

でも、凶器や動機の詰め方より、父娘の掛け合いと事件の妙を楽しむシリーズだと思えば長く付き合える。ホラーが苦手な人にも渡せる吸血鬼小説として、僕は棚で重宝しているよ。

霧島くんは普通じゃない 転校生はヴァンパイア!?
6

霧島くんは普通じゃない 転校生はヴァンパイア!?

森乃なっぱ 著|集英社

¥594(税込)

4.1

美羽の通う学園に転校してきた美形な三兄弟——女好きな長男・コウ、冷たい次男・レン、隣の席になったミステリアスな三男・セイ。実はそれぞれが特殊な力を持っているヴァンパイアだった、という新感覚のヴァンパイアラブストーリー。秘密を知っているのは私だけという構図が読みどころで、三兄弟それぞれの力と性格の差が物語を動かしていく。ジェットコースターのような毎日、と紹介される軽快さが、重い吸血鬼像と対極にある。

こんな人におすすめ

少女マンガやライトノベル寄りの吸血鬼ものを探している人、学園もので秘密の共有を楽しみたい人、シリーズの1冊目として軽く始めたい人、兄弟キャラの描き分けが好きな読者。

良い点

  • 三兄弟の描き分けが魅力
  • 学園もので入りやすい
  • 秘密の共有が物語の軸

気になる点

  • ホラー要素はほぼない
  • 恋愛の進展はゆっくり
  • 続刊前提の展開

出版社

集英社

発売日

2026年07月23日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ヴァンパイア三兄弟って、設定だけで強いですね。長男が女好きで、次男が冷たくて、三男がミステリアス……定番の配置なのが逆に安心します。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の狙いで、秘密を知っているのは私だけという構図が物語のエンジンになっている。美羽の隣の席に来たのは三男のセイで、三人それぞれが特殊な力を持っていると分かっていく。

事件を追うホラーではなく、転校生との距離が縮まっていく過程を楽しむタイプだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、さっきまでのドラキュラ系とは真逆の吸血鬼ですね。こういうのも入れると、読者の幅が広がりそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、同じヴァンパイアでも棚はまったく違う。古典の血筋を辿る本と、学園のドキドキを描く本は、隣に並べても手を伸ばす人が違うんだ。

これは主人公の視点で毎日が揺れる感じを楽しむ本だから、ホラーが苦手でも入れる。ただ、続きありきの作りなので、気に入ったら次の巻まで一緒にどうぞ、と薦めるようにしているよ。

ペンションライフ・ヴァンパイア 2
7

ペンションライフ・ヴァンパイア 2

田口囁一 著|集英社

¥715(税込)

4.1

湖のほとりのペンションで働くエリと、吸血鬼のニカ。イリエルのクチコミでカタラレのお客が増えて大盛況——という第2巻。住み込みで働く決心をしたエリを訪ねてきたのは、彼女の大ファンだという元改訂官候補生・凛美で、彼女がエリとニカの関係を誤解してしまう。人と吸血鬼の異文化コメディという位置づけが独特で、事件よりも価値観のずれと距離の縮まり方を丁寧に描く。ペンションという生活の場が舞台になるのも珍しい。

こんな人におすすめ

ホラーではなく空気感を楽しみたい人、異文化としての吸血鬼を読んでみたい人、ペンションという生活の場が舞台の日常系が好きな人、掛け合いの軽さを好む読者。

良い点

  • 生活感のある吸血鬼描写が新鮮
  • 誤解と和解のコメディが軽快
  • ペンションという舞台が独特

気になる点

  • 1巻未読だと人間関係が曖昧
  • 怖さはほぼ皆無
  • 事件性の薄さに好みが分かれる

出版社

集英社

発売日

2023年10月04日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ペンションで働く人と吸血鬼……って、生活感がありすぎませんか?吸血鬼って城とか墓地にいるイメージでした。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが新しいところ。舞台は湖のほとりのペンションで、エリは住み込みで働く決心をする。吸血鬼のニカとの暮らしに、イリエルのクチコミでお客が増えて大盛況……という第2巻なんだ。

訪ねてきた元改訂官候補生の凛美が、二人の関係を誤解してしまう。人と吸血鬼の異文化コメディとして、事件より価値観のずれを描くタイプだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。じゃあ吸血鬼の「怖さ」じゃなくて、「一緒に暮らすとどうなるか」を読む本なんですね。2巻からでも大丈夫ですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

人間関係が少し複雑なので、できれば1巻からがおすすめ。ただ、1巻で起きたことを知らなくても、この巻の誤解と和解は十分楽しい。

吸血鬼を怪物ではなく、習慣の違う隣人として描く本は案外少ない。生活の場に吸血鬼を置くという発想だけで、棚の中では異色の存在になるよ。

吸血鬼と薔薇少女 6
8

吸血鬼と薔薇少女 6

朝香のりこ 著|集英社

¥484(税込)

3.9

初めての彼氏は、吸血鬼——両想いの甘い日々が始まる、と紹介される少女マンガの第6巻。夏休みにみんなで海に行くことになり、一度フラれたけれどピンチに助けてくれた夜宮くんに、千結はもう少しだけ頑張ろうと決意してアタックする。だが距離を置きたいと言われてしまい……。念願の付き合いが始まった後の「カップルって何をすればいいの?」という戸惑いを軸にするのが、付き合う前で終わらない物語の面白さ。学校での波乱も加わる。

こんな人におすすめ

吸血鬼ものの恋愛をじっくり読みたい人、付き合った後の関係を描く話が好きな人、シリーズ途中からでも追いたい人、少女マンガの定番の甘さを求める読者。

良い点

  • 付き合った後を描くのが新鮮
  • 吸血鬼設定が恋の障害になる
  • 感情の機微が丁寧

気になる点

  • 6巻からだと人間関係が不明
  • 吸血鬼の怖さは薄い
  • 展開は少女マンガの王道

出版社

集英社

発売日

2021年01月25日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

吸血鬼と薔薇少女……タイトルがもう少女マンガですね。6巻ってことは、けっこう続いてるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、これはシリーズの途中。主人公の千結の初めての彼氏が吸血鬼の夜宮くんという設定で、この巻では念願の付き合いが始まった後の戸惑いが描かれる。

カップルって何をすればいいの?——付き合う前で終わらないのが、この作品の面白いところなんだ。

夏休みの海、距離を置きたいという言葉、学校での波乱と、丁寧に積み上げていく。

橘ナナミ

橘ナナミ

付き合った「後」を描くの、いいですね。ただ、6巻からだと過去の経緯が分からなくて置いていかれそうで……。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは正直に言っておくね、途中からだと人間関係の前提が掴みにくい。できれば前の巻から追うほうが、物語の重みが伝わる。

ヴァンパイアものとしては血の怖さより、好きな相手が「違う存在」であることを恋の障害として使っている。

そういう読み方をすると、吸血鬼設定がただの飾りじゃないと分かるよ。

雪女・吸血鬼短編小説集(995)
9

雪女・吸血鬼短編小説集(995)

ラフカディオ・ハーン、アーサー・コナン・ドイルほか 著|平凡社

¥2,090(税込)

3.9

雪の中から立ち現れ人を死へ誘う「雪女」を英語で紡いだ小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの怪奇譚を手がかりに、同時代の作家による雪妖・氷魔・吸血鬼の作品を1冊に編んだ13編。ギャスケル、ブラックウッド、ベンスン、コナン・ドイル、ゴーティエ「クラリモンド」(ハーン英訳)、ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」抄訳、カウルズ「カルデンシュタインの吸血鬼」まで収録。雪と血という二つのモチーフを並べる編集が唯一無二で、国と時代を超えて静かな恐怖が迫る。

こんな人におすすめ

怪奇文学のアンソロジーを読み比べたい人、小泉八雲(ハーン)の怪奇譚が好きな人、雪や冬をモチーフにした恐怖を味わいたい人、作品の背景まで解説で確かめたい読者。

良い点

  • 雪と吸血鬼を並べる編集が独自
  • ハーン関連の作品が充実
  • 目次と解説が丁寧

気になる点

  • 抄訳の篇がある
  • 古典的で静かな怖さ
  • 分量はやや厚め

出版社

平凡社

発売日

2025年08月07日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

雪女と吸血鬼が同じ本に入ってるの、不思議すぎませんか?どういう組み合わせなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが編者の腕の見せどころだね。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが英語で書いた「雪女」の怪奇譚を手がかりに、同時代の作家による雪妖や氷魔、吸血鬼の作品を一冊に編んでいる。

雪と血という二つのモチーフを並べることで、冷たさと渇きが重なってくる。ゴーティエ「クラリモンド」のハーン英訳、ストーカーのドラキュラ抄訳、カウルズの吸血鬼まで、13編だ。

橘ナナミ

橘ナナミ

知ってる名前が急に増えました。ドイルやブラックウッドまで……。これ、順番に読むものなんですか?それとも気になった篇から?

佐藤メバル

佐藤メバル

目次が「雪と氷と白魔」「血と夢と月光」の二部に分かれているから、まず気になるほうから入って、あとで行き来するのが楽しい。

ただ、ドラキュラやクラリモンドは抄訳なので、そこは前提として知っておいてほしい。静かな恐怖が好みなら、冬の夜に一篇ずつ、という読み方がいちばん似合うよ。

戦前日本モダンホラー傑作選 バビロンの吸血鬼
10

戦前日本モダンホラー傑作選 バビロンの吸血鬼

高垣眸他 著|東京創元社

¥1,430(税込)

3.9

大正末期から昭和十年代半ば、都市部を中心に「昭和モダン」と呼ばれる大衆文化が栄え、新奇な刺激が求められた時代。その時期に生まれた新しいスタイルの怪奇小説を「昭和モダンホラー」と名づけ、犯罪実話雑誌から少年誌まで、〈新青年〉誌以外から選びぬいた21編を収める。高垣眸「バビロンの吸血鬼」、角田喜久雄「肉」、横瀬夜雨「早すぎた埋葬」など、専門誌の外に埋もれた作品を掘り起こした選書が他に類を見ない。

こんな人におすすめ

昭和の怪奇小説をまとめて読みたい人、日本近代のホラー史に関心がある人、〈新青年〉中心のアンソロジーに飽きた人、各編の詳細な解説を読み込みたい読者。

良い点

  • 21編と収録数が多い
  • 全編に詳細な解説つき
  • 専門誌以外から選ぶ姿勢が独自

気になる点

  • 昭和の文体に慣れが必要
  • 怖さの質は現代と異なる
  • 短編中心で物足りない人も

出版社

東京創元社

発売日

2025年04月30日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

バビロンの吸血鬼……って、バビロンに吸血鬼がいるんですか?舞台が全然想像つかないんですけど。

佐藤メバル

佐藤メバル

タイトルだけだとそうなるよね。これは高垣眸という作家の一篇で、本全体は大正末期から昭和十年代の怪奇小説を集めたアンソロジーなんだ。

編者の会津信吾が、その時代の新しい怪奇小説を「昭和モダンホラー」と名づけて、犯罪実話雑誌や少年誌から21編を選んでいる。

専門誌とされる〈新青年〉以外から選ぶというのが、この本のいちばん尖ったところだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

あえて有名どころの雑誌を外すって、すごいこだわりですね。角田喜久雄さんの名前もあって、なんか得した気分です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが編者の腕で、埋もれていた作品を掘り起こす作業そのものが読みどころになっている。角田喜久雄「肉」、横瀬夜雨「早すぎた埋葬」、岩佐東一郎「死亡放送」など、題名だけでも引き込まれる。

ただ、昭和の文体なので読み慣れが要るし、怖さの質も現代とは違う。恐怖が娯楽だった時代の空気ごと味わう本だよ。

吸血鬼と切り裂きジャック
11

吸血鬼と切り裂きジャック

赤川次郎 著|集英社

¥506(税込)

3.7

濃霧の夜、女子高生がナイフで切り裂かれて殺された。あの“切り裂きジャック”の再来か——事件の背後に“血の匂い”を感じたクロロックとエリカが調査に乗り出す、シリーズ第13作。歴史上の連続殺人犯と吸血鬼を重ねる仕掛けが読みどころで、霧と血の匂いという古典的な記号を、軽快な父娘コンビの会話が支えている。事件の猟奇性と日常の落差が、シリーズの中でも際立つ一冊だ。

こんな人におすすめ

シリーズを追いかけている人、切り裂きジャックをモチーフにした物語が好きな人、短時間で読み切れるミステリーを探している人、霧のロンドン的な雰囲気を味わいたい読者。

良い点

  • 切り裂きジャックとの合わせ技が魅力
  • シリーズ13作で安定した読み味
  • 短く読み切れる

気になる点

  • シリーズ未読だと人間関係が不透明
  • 猟奇描写はおだやかめ
  • 解決はあっさりめ

出版社

集英社

発売日

2015年06月25日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

切り裂きジャックと吸血鬼、最強の組み合わせじゃないですか。しかもシリーズ13作目なんですね。1作目から読まないと没入できませんか?

佐藤メバル

佐藤メバル

シリーズの空気は1作目『吸血鬼はお年ごろ』から始まるけど、これは事件自体が独立しているから、ここから入っても十分楽しめる。

濃霧の夜に女子高生がナイフで切り裂かれて、あの“切り裂きジャック”の再来か、というところから始まる。

クロロックとエリカが事件の背後に血の匂いを感じて動き出すんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

血の匂い、ゾクッとしますね。でもエリカたちは吸血鬼側だから、犯人を追う側でもあり、同じ「血」の存在でもある。そこが面白そう。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそこ。人間の事件を追いながら、自分たちも血を必要とする存在だという立ち位置が、このシリーズの通底音になっている。

猟奇的な題材にしては描写はおだやかで、事件の解決も軽やかだよ。重い題材を軽い足どりで扱う赤川次郎の持ち味が、いちばん出ている巻かもしれないね。

湖底から来た吸血鬼
12

湖底から来た吸血鬼

赤川次郎 著|集英社

¥484(税込)

3.7

ダムができて湖に沈んだ村が、5年後の雨不足で再びその姿を現した。「それ」は墓の下からよみがえり、血を必要としていた——若い女が失血死し、事件に遭遇したエリカとクロロックは同じ吸血鬼一族の存在を感じ取っていく。常田加奈子という少女が現れ、やがて第二の殺人が起こる。沈んだ村が現れるという舞台設定そのものが象徴的で、シリーズ第10弾の中でも発想のスケールが大きい。

こんな人におすすめ

舞台設定の妙を味わいたい人、シリーズの中でも規模の大きい事件を読みたい人、湖や山村を舞台にした怪奇が好きな人、新装丁で揃えたい読者。

良い点

  • 沈んだ村という舞台が独創的
  • 一族の存在を感じる展開
  • シリーズ10作で安定感

気になる点

  • シリーズ知識があるとより楽しい
  • ホラー度は中程度
  • 人物の整理が必要

出版社

集英社

発売日

2014年02月20日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

湖底から来た吸血鬼……タイトルがもう映画的です。ダムに沈んだ村が現れるって、実際にありえる話なのが逆に怖いです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの巻の白眉だね。ダムができて湖に沈んだ村が、5年後の雨不足で再び姿を現す。すると「それ」が墓の下からよみがえって、血を必要とし始める——若い女が失血死するところから物語が動く。

エリカとクロロックは事件に遭遇し、同じ吸血鬼一族の存在を感じ取っていくんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

同じ一族って、味方なのか敵なのか、そのあたりが気になります。常田加奈子っていう少女も出てくるんですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこから第二の殺人へ進んでいく。沈んだ村が現れるという舞台装置が、過去と現在を重ねる仕掛けになっていて、シリーズの中でも発想のスケールが大きい巻だよ。

ただ、これまでの登場人物の関係を知っているほうが断然楽しいから、第1弾から読んできた人には特に効く。

水の底に眠っていたものというモチーフが、吸血鬼とよく合っているね。

吸血鬼は泉のごとく
13

吸血鬼は泉のごとく

赤川次郎 著|集英社

¥484(税込)

3.7

突然、町の中に泉ができ、男が引き込まれるように沈んだ。人々は“愛の泉”と称して新名所に浮かれるが、エリカはその泉に得体の知れぬ邪悪なものの気配を感じる。泉の周りで次々に起こる怪事件——エリカとクロロックの吸血鬼父娘コンビが、泉に潜む黒い闇を斬る。表題作に加え、古城の怪奇に迫る『ある吸血鬼の肖像』を収録。町の熱狂と、それを見抜くエリカの目の対比が読みどころになっている。

こんな人におすすめ

短編を2本まとめて味わいたい人、怪事件が連鎖する構成が好きな人、シリーズの中でも独立した話を探している人、都市伝説的な題材に関心がある読者。

良い点

  • 表題作と古城ものの2本立て
  • 怪事件の連鎖が心地よい
  • エリカの観察眼が光る

気になる点

  • 単体では背景が薄い
  • シリーズ常連向けの味付け
  • 真相はやや早めに見える

出版社

集英社

発売日

2013年01月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「愛の泉」って、なんか怪しいですよね。町のみんなが浮かれてるのに、エリカだけ気配を感じてる。そういう空気のズレ、好きです。

佐藤メバル

佐藤メバル

その違和感がこの話の肝だね。突然できた泉に男が引き込まれるように沈み、人々は新名所として浮かれる。でもエリカは、そこに得体の知れぬ邪悪なものを感じ取る。

町が熱狂するほど、エリカの目だけが冷えていく——そんな対比で読ませる表題作だよ。この巻には古城の怪奇に迫る『ある吸血鬼の肖像』も入っている。

橘ナナミ

橘ナナミ

2本立てなの、うれしいです。短い話なら寝る前に読めそう。ところで「泉」って、吸血鬼とどうつながるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは読んでのお楽しみだけど、水は昔から境目のモチーフで、このシリーズとも相性がいい。泉の周りで次々に怪事件が起きる構成は、短編を重ねるような読み味だね。

ただ、エリカとクロロックの関係を前提にした会話もあるので、シリーズを少し読んできた人ほど効く。

寝る前に一篇ずつ、という付き合い方がおすすめだよ。

吸血鬼に鐘は鳴る
14

吸血鬼に鐘は鳴る

赤川次郎 著|集英社

¥561(税込)

3.7

正当派吸血鬼の父・クロロックの海外出張に同行して、エリカはドイツにやってくる。年下の義母・涼子から、クロロックのお目付役を言い含められたのだ。二人は取引先の工房で、美しい日本人の修道女アンヌ・マリーと出逢う——日本語がほとんど通じないドイツの田舎町に、なぜ日本人の修道女が。しかも彼女は、数年前にある騒動を受けて姿を消した元有名女優で——。土地と人間の来歴が謎になる構成が際立つ。表題作に2編を収録。

こんな人におすすめ

海外を舞台にした吸血鬼ものを読みたい人、修道院や鐘楼の雰囲気が好きな人、3編まとめて味わいたい人、シリーズの後期を読み進めている読者。

良い点

  • ドイツという舞台が新鮮
  • 元女優の修道女という謎
  • 3編収録で満足度が高い

気になる点

  • 3編のうち1編に短さを感じる
  • シリーズ前提の人物関係
  • ホラーより謎解き寄り

出版社

集英社

発売日

2019年07月19日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

吸血鬼に鐘は鳴る……鐘って、教会ですか?なんか、吸血鬼が苦手そうなものがタイトルに入ってるのが不穏です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこを突いてくるのが上手いんだよね。エリカはクロロックの海外出張についてドイツへ行く。年下の義母・涼子に、クロロックのお目付役を頼まれてね。

二人は取引先の工房で、日本人の修道女アンヌ・マリーと出逢う。日本語がほとんど通じない田舎町になぜ修道女が——しかも彼女は、数年前の騒動で姿を消した元有名女優だというんだ。

土地と人間の来歴が、そっくり謎になっていく。

橘ナナミ

橘ナナミ

元有名女優が修道女!?そこだけで一本の映画になりそう。この巻って、他にも話が入ってるんですよね?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、表題作のほかに『吸血鬼とバラ色のドレス』『吸血鬼は鏡の中に』の2編が入っている。タイトルだけでも、ドレス、鏡……と吸血鬼の定番の道具立てが並んでいて楽しい。

ホラーというより謎解き寄りで、土地の空気や人の前歴を読み解く面白さが中心だよ。異国の鐘の音を想像しながら読むと、いっそう雰囲気が出るね。

吸血鬼と呪いの森
15

吸血鬼と呪いの森

赤川次郎 著|集英社

¥594(税込)

3.7

両親とともに森の中に建つ新居へ引っ越してきた中学生のめぐみ。喜びもつかの間、新居にある違和感を覚えるようになる。昔、家庭教師をしてくれていたエリカに、不安な心中を告白するめぐみ——「幸せ」の象徴だったはずの新居に隠された秘密とは。表題作ほか2篇を収録。家族の幸せの形そのものが怪しくなるところが読みどころで、血や怪物より、家と土地の記憶が怖さの源になっている。

こんな人におすすめ

家や土地にまつわる怪異が好きな人、子ども視点の恐怖を読みたい人、シリーズの中でも静かな怖さを求める人、短編を数篇まとめて味わいたい読者。

良い点

  • 家族と家にまつわる恐怖が軸
  • エリカが家庭教師役で関わる
  • 静かな怖さが心地よい

気になる点

  • 派手な展開は少なめ
  • シリーズ既読者向けの要素
  • 解決はややあっさり

出版社

集英社

発売日

2020年07月17日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

新居に違和感……って、すごく嫌な予感がします。私も引っ越したことありますけど、最初の数日でなんか変だなって思うこと、ありますもん。

佐藤メバル

佐藤メバル

その実感に近い話だよ。中学生のめぐみが両親と森の中の新居に引っ越してきて、喜びもつかの間、家に違和感を覚え始める。

昔、家庭教師をしてくれていたエリカに、不安な気持ちを告白するんだ。「幸せ」の象徴だったはずの新居に秘密がある——という立て方が、この作品のいちばん怖いところだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

幸せの象徴が反転するの、ぞわぞわします。エリカって家庭教師のバイトもしてるんですね、なんだか親近感がわきます。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、シリーズの中でもエリカが等身大の大人として関わる巻なんだ。血や怪物より、家と土地の記憶が怖さの源になっている。

表題作のほかに2篇が入っていて、静かな怖さが好みの人に向いているよ。派手な展開は少ないから、じわじわ来るタイプの怪異を楽しめるかどうかが分かれ目だね。

吸血鬼と猛獣使い
16

吸血鬼と猛獣使い

赤川次郎 著|集英社

¥649(税込)

3.5

ある朝、町から町を渡り歩くサーカス団からライオンが脱走した——騒ぎになれば大事なライオンが射殺されてしまうと、団員たちは秘密裏に捜索を始める。一方、ぐっすり眠っていたエリカを一本の電話が叩き起こす。相手は家庭教師のバイト先の父親で、「あんたのせいで娘が家出したから探せ」と怒鳴りつける。表題作に加え、温泉地で豪雨に見舞われる「吸血鬼に雨が降る」、マラソン選手アンナの異変を描く「不屈の吸血鬼」を収録。動物と身体の異変という切り口が多彩だ。

こんな人におすすめ

シリーズの新しい巻を追っている人、サーカスや動物を題材にした物語が好きな人、3編を一気に読みたい人、軽快な掛け合いを楽しみたい読者。

良い点

  • サーカスという舞台が楽しい
  • 3編それぞれ趣が違う
  • 父娘の掛け合いが軽快

気になる点

  • 3編とも短め
  • ホラー色は薄い
  • シリーズ前提の登場人物が多い

出版社

集英社

発売日

2022年07月20日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ライオンが脱走して、それで吸血鬼……?どうつながるのか全然見えないんですけど、そこが気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

つながりが見えないところから入るのが、このシリーズの常套手段だね。朝、町を渡り歩くサーカス団からライオンが脱走して、団員たちは大事なライオンが射殺されないように秘密裏に捜索する。

同じころ、眠っていたエリカは一本の電話で叩き起こされる。家庭教師先の父親から「あんたのせいで娘が家出したから探せ」と怒鳴られてね。

二つの騒動がどう重なるかが見どころだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

表題作のほかにも、温泉とマラソンの話が入ってるんですね。猛獣使いに雨、不屈……題名の並びがもう楽しいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、3編それぞれ趣が違う。温泉地で豪雨に見舞われる話、走るのが大嫌いというマラソン選手アンナの身体の異変にクロロックが気づく話——動物と身体の異変という切り口が並ぶのが面白いところ。

1編ずつは短いから、寝る前にひとつ、という読み方が合うね。軽快な会話が中心で、ホラー色は薄めだよ。

忘れじのK 半吸血鬼は闇を食む
17

忘れじのK 半吸血鬼は闇を食む

辻村七子 著|集英社

¥682(税込)

3.5

友人のパオロが倒れたと知らせを受け、ガブリエーレは故郷フィレンツェに戻る。幼い頃から正体不明の「黒いもや」が見えていたガブリエーレにとって、パオロは同じものが見える唯一の仲間だった。彼が倒れた原因には心当たりがある——パオロが秘密にしていた、ヴァンパイアやダンピールという闇の世界にかかわる仕事だ。フィレンツェに住む日本人が事情を知るらしい——。見える者同士の絆と、半吸血鬼という立ち位置が物語の軸になる。

こんな人におすすめ

海外都市を舞台にしたヴァンパイアものを探している人、主人公が完全な人間でない設定が好きな人、シリーズの続きを追いたい人、イタリアの街の空気を味わいたい読者。

良い点

  • フィレンツェという舞台が魅力的
  • ダンピール設定が新鮮
  • 友人関係が物語の核

気になる点

  • 続刊前提の作り
  • 固有名詞が多く整理が必要
  • 戦闘描写は控えめ

出版社

集英社

発売日

2020年12月18日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

半吸血鬼、ダンピール……聞き慣れない言葉が出てきました。ヴァンパイアと何が違うんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ダンピールは、吸血鬼と人間の間に生まれた存在を指す言葉だよ。この本の主人公ガブリエーレは、幼い頃から正体不明の「黒いもや」が見えていて、同じものを見える仲間がパオロだけだった。

そのパオロが倒れたと知らせを受けて、故郷のフィレンツェに戻るところから始まる。見える者同士の絆が、物語のいちばん強い動機になっているんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

黒いもやが見える、って設定がいいですね。ホラーというより、ちょっとミステリー寄りな雰囲気を感じます。

佐藤メバル

佐藤メバル

その通りで、パオロが倒れた原因は、彼が秘密にしていたヴァンパイアやダンピールにかかわる仕事にある。フィレンツェに住む日本人が事情を知っているらしい、という線が次の糸口になる。

舞台がはっきりしているぶん、街の空気ごと読むタイプの作品だね。ただ、続きを前提にした作りなので、一冊で完結する話が好みならそこは覚悟してほしい。

嘆きのヴァンパイア
18

嘆きのヴァンパイア

愁堂れな 著|白泉社

¥618(税込)

3.5

十年ぶりに塀の外へ戻ってきた水上亮治は、任侠道を重んじるヤクザ。死んだ弟の仇を討つため組長を襲撃するが、逆に撃たれてしまう。瀕死の亮治を救ったのは、リュシアンと名乗る金髪の青年だった。中世の貴族のような彼は吸血鬼だと語り、礼として亮治の体を要求する。抵抗する亮治だが、永遠の命を持つリュシアンの孤独に触れて考えが変わり——。任侠の世界と吸血鬼の孤独が重なる、異色の組み合わせが最大の特徴だ。

こんな人におすすめ

ヤクザ・任侠ものを読む人、吸血鬼を孤独な存在として描く話が好きな人、長い時を生きる者の恋愛を読みたい人、関係性重視の小説の読者。

良い点

  • ヤクザと吸血鬼の組み合わせが異色
  • 命の借りという動機が強い
  • 孤独を描く筆致が丁寧

気になる点

  • 題材の好みが分かれる
  • 任侠用語に不慣れだと難所も
  • 関係性重視で事件は従属的

出版社

白泉社

発売日

2009年09月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ヤクザと吸血鬼って、聞いたことない組み合わせです。しかも命を助けられた礼に体を要求するって……なかなか強引ですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの作品の出発点だね。主人公の水上亮治は、任侠道を重んじるヤクザで、十年ぶりに塀の外へ戻ってきた。

死んだ弟の仇を討つために組長を襲撃するけれど、逆に撃たれて瀕死になる。彼を救ったのがリュシアンという金髪の青年で、中世の貴族のような彼は自分は吸血鬼だと語り、礼として体を要求する。ここから関係が始まるんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

でも、抵抗してた亮治が考えを変えるんですよね。永遠の命を持つ側の孤独に触れて……という流れが気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこが読みどころ。怪物としてではなく、長く生きすぎた者の孤独としてリュシアンを描いている。さらに亮治は弟の死の真相を知ってしまい、物語は任侠の筋と吸血鬼の筋が重なっていく。

ヤクザの仁義と不老の孤独、どちらも「義理」や「恩」で動く世界だから、案外相性がいいんだよね。題材の好みははっきり分かれると思う。

ブラッディ・ブライド 1 -吸血鬼の婚活ー
19

ブラッディ・ブライド 1 -吸血鬼の婚活ー

池野恋 著|集英社

¥605(税込)

3.5

今野はづきはイケメン拒絶症のOL。メンクイなのに、美形を前にすると鼻血が出てしまう——という体質の持ち主。そんな彼女の隣に、老紳士と愛らしい少年が引っ越してくる。心躍るはづきだが、彼らの本当の姿は美しい吸血鬼だった。「吸血鬼の婚活」という副題の通り、恋の行方と笑いを軸に進む一冊。鼻血が出るほど美形に弱いのに、美形が怖いという矛盾が、吸血鬼設定と噛み合って軽妙に転がっていく。

こんな人におすすめ

吸血鬼もので笑いたい人、少女マンガの設定の妙を楽しみたい人、1巻から気軽に始めたい人、コメディ寄りの恋愛ものを探している読者。

良い点

  • 設定の矛盾が笑いを生む
  • 老紳士と少年という組み合わせ
  • 1巻から入りやすい

気になる点

  • 短編も収録で構成が混在
  • シリアスさは控えめ
  • 続刊ありきの終わり方

出版社

集英社

発売日

2022年03月25日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

イケメン拒絶症なのにメンクイって、つまり美形を見ると鼻血が出ちゃうってことですよね。その体質、ツラすぎませんか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの作品の可笑しさの源なんだ。今野はづきはそういう体質で、そこへ隣に老紳士と愛らしい少年が引っ越してくる。

心躍らせていると、実は二人の本当の姿は美しい吸血鬼だった——という始まり。「吸血鬼の婚活」という副題の通り、恋の行方を笑いで包んだ話だよ。

設定の矛盾が、吸血鬼という非日常とうまく噛み合っている。

橘ナナミ

橘ナナミ

老紳士と少年が吸血鬼……しかも婚活。え、誰と誰が結婚する話なんですか?そこが気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

それは読んで確かめてほしいところ。この巻には「うたたねのロゼ」という作品と、あとがきにかえて制作裏話も収録されていて、構成が少し混ざっている。

1巻から入れて、続きがある作りだよ。美形が怖いのに美形が好きという、人間の矛盾を突いてくる本は珍しいから、恋愛と笑いを両方欲しい人に渡しているね。

リバースヴァンパイア
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リバースヴァンパイア

吉野匠 著|幻冬舎

¥1,210(税込)

3.5

父親の葬式を終えて帰宅途中、いつもは通らない道をしんみり歩いていた真田淳也19歳は、寂れた神社の境内から微かな悲鳴を聞く。薄明かりの中で、大柄な男が三人、栗色の髪をした少女を囲んでいる——どう見ても襲撃中。淳也は無我夢中で向かっていく。だが、禁忌を破った代償は粛清だという。偶然の飛び込みが運命を変える、少年少女の物語で、吸血鬼側の掟と人間側の無鉄砲さがぶつかるのが読みどころ。

こんな人におすすめ

ライトノベル系の吸血鬼ものを探している人、少年少女の出会いから始まる物語が好きな人、シリーズの1冊目として読んでみたい人、非日常に踏み込む瞬間を味わいたい読者。

良い点

  • 神社の襲撃という導入が強い
  • 19歳の主人公に共感しやすい
  • 掟と粛清という緊張感

気になる点

  • 設定の説明が多め
  • シリーズ前提の引き
  • 恋愛要素の進展は遅め

出版社

幻冬舎

発売日

2012年07月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

父の葬式の帰り道に、神社で少女が襲われてる場面に出くわす……。冒頭から重いし、しかも19歳が無我夢中で飛び込むんですよね。私だったら足がすくみます。

佐藤メバル

佐藤メバル

その反応がこの小説の狙い通りだと思う。真田淳也は19歳で、いつもは通らない道をしんみり歩いていたところで、栗色の髪をした少女を囲む大柄な男三人を見てしまう。

無我夢中で向かっていった先に、吸血鬼の世界の掟が待っている。禁忌を破った代償は粛清だ、という一文が効いているよね。

橘ナナミ

橘ナナミ

「リバース」ってどういう意味なんでしょう。ヴァンパイアが逆になるってことですか?タイトルの意味が気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは読んでからのお楽しみにしておこう。導入の強さに対して、設定の説明はやや多めで、続きを前提にした引きもある。

ただ、偶然が運命を変える瞬間を描いた物語としては、とても真っ直ぐだよ。シリーズの入口として、まずこの一冊で空気を確かめてみるのがいいと思う。

ドSな官能小説家が絶倫ヴァンパイアだった件
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ドSな官能小説家が絶倫ヴァンパイアだった件

丸木文華 著|KADOKAWA

¥748(税込)

3.5

超ワガママな売れっ子小説家・朝丘太陽と、その担当編集者の私。いつもイジワルな要求ばかりの先生が「絶頂したあなたの血は甘露のようです」と言い出し、正体はヴァンパイアだった——という濃密なラブストーリー。仕事の関係だった二人が、血をめぐって別の関係に変わるのが読みどころで、作家と編集者という設定が、書く側と読む側の距離を巧みに使っている。体液を吸うという設定が物語の駆動源だ。

こんな人におすすめ

大人向けのヴァンパイア・ラブストーリーを読みたい人、作家と編集者という関係性が好きな人、濃厚な描写を楽しめる読者、一冊で読み切りたい人。

良い点

  • 作家と編集者という設定が効く
  • ヴァンパイア設定が物語を動かす
  • 一冊で読み切れる

気になる点

  • 描写はかなり濃厚
  • 嗜好がはっきり分かれる
  • 現実味は薄め

出版社

KADOKAWA

発売日

2022年12月28日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

えっと……これ、タイトルからしてかなり攻めてますね。官能小説家、しかも担当編集者の一人称で進むんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、語り手は担当編集者の「私」だね。相手は超ワガママな売れっ子小説家・朝丘太陽。いつもイジワルな要求ばかりの先生が、あるとき「絶頂したあなたの血は甘露のようです」と告げて、正体がヴァンパイアだと分かる。

仕事の関係だった二人が、血をめぐって別の関係に変わる——そこが物語のエンジンなんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。ヴァンパイア設定が、恋愛の障害というより関係を進める装置になってるんですね。これは読者層がはっきり分かれそう……。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそこは正直に言っておく。描写はかなり濃厚だし、好みがはっきり分かれる。ただ、作家と編集者という関係を使っているのが巧くて、書く側と読む側の距離がそのまま恋の距離になっている。

濃厚なラブを一冊で読み切りたい人には、これ以上ない選択だと思うよ。

極上ヴァンパイアは、彼女を溺愛して離さない【極上男子だらけの溺愛祭!】
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極上ヴァンパイアは、彼女を溺愛して離さない【極上男子だらけの溺愛祭!】

ゆいっと 著|スターツ出版

¥682(税込)

3.5

高2の愛菜はある時、学園で超女嫌いと有名な絶世のイケメン・理都がヴァンパイアであることを知ってしまう。しかも愛菜は、ヴァンパイアを引き付ける特別な血の持ち主だと判明する。まっすぐな愛菜に惹かれていた理都から、守ってもらう代わりにある「契約」を提案され——。たまにイジワルだけど優しく一途な相手にドキドキが止まらない。さらに他のヴァンパイアたちまで現れて愛菜の奪い合いが加速する。特別な血と契約という王道の仕掛けを、溺甘な関係描写で味わう一冊。

こんな人におすすめ

溺愛系のヴァンパイア・ラブが読みたい人、学園ものの甘い関係を楽しみたい人、一冊で読み切りたい人、スターツ出版の恋愛小説をよく読む読者。

良い点

  • 特別な血という王道設定
  • 契約から始まる関係が甘い
  • 奪い合いで展開が速い

気になる点

  • 溺愛描写が好みを選ぶ
  • 吸血鬼の怖さは皆無
  • 展開は王道の予定調和

出版社

スターツ出版

発売日

2023年05月23日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

超女嫌いのイケメンが、主人公にだけは甘い……っていう王道、やっぱり強いですね。しかも特別な血の持ち主って、もう二重に特別です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこを外さないのがこの本の強みだね。高2の愛菜が、学園で超女嫌いと有名な理都がヴァンパイアだと知ってしまう。

しかも彼女はヴァンパイアを引き付ける特別な血の持ち主だと判明して、守ってもらう代わりにある「契約」を提案される。

王道の仕掛けを、溺甘な関係描写で味わうタイプの一冊だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

契約から始まるの、いいですよね。しかも他のヴァンパイアまで現れて奪い合いになるって、途中から展開が速そう。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこから一気に加速する。ただ、ガチガチのホラーを期待すると物足りないし、展開も王道の予定調和だ。

溺愛される感覚そのものを楽しむ本だと思ってほしい。逆に言えば、そういう気分のときに外さない一冊。

スターツ出版の恋愛をよく読む人には、特に薦めやすいね。

恐怖型・耽美型・ロマンス型・社会派型——系譜を一本につなぐ

橘ナナミ

橘ナナミ

その四系統って、実際にどうつながっているんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

大づかみに言うと、まず18〜19世紀のヨーロッパで「血を吸う存在」が小説の主役になった。『吸血鬼ラスヴァン』が扱うバイロン、ポリドリ、そして『吸血鬼ヴァーニー』の抄訳は、その揺籃期だね。そこからブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』で恐怖の完成形が生まれ、コナン・ドイル「サセックスの吸血鬼」やゴーティエ「クラリモンド」のような変奏が広がっていく。『ドラキュラ ドラキュラ』や『雪女・吸血鬼短編小説集』を並べると、その散らばりがよく見える。

橘ナナミ

橘ナナミ

そもそも吸血鬼は、伝承ではどんな存在だったんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ここは断言を避けて言うと、伝承には地域差がとても大きい。小説はそれを、鏡に映らない、光を嫌う、棺や土と結びつく、といった造形に置き換えて定着させていった。『雪女・吸血鬼短編小説集』が雪女と吸血鬼を同じ一冊に並べているのは、どちらも「境界から来る美しい脅威」として語られてきたからだと思う。国は違っても、生と死の境目で人を誘うという構造が似ているんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。日本にも同じ形の物語があったんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。そして昭和に入ると、都市化とメディアの変化を背景にした新しい怪奇小説が生まれる。『戦前日本モダンホラー傑作選 バビロンの吸血鬼』は、犯罪実話雑誌から少年誌まで範囲を広げてその潮流を拾った一冊で、恐怖が娯楽として消費され始めた時代の空気がそのまま出ている。編者がこの時代の研究者として第一人者とされる人だから、選び方そのものが読みどころだよ。

アンソロジーと解説で「読む前の予習」をする

橘ナナミ

橘ナナミ

アンソロジーって、ふつうの短編集とは違うんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

編者の意図が見えるのがアンソロジーだね。『ドラキュラ ドラキュラ』は稀代の吸血鬼愛好家・種村季弘が11篇を精選したもので、ポリドリからメリメ、コナン・ドイル、シュオッブまで並ぶ。『吸血鬼ラスヴァン』は本邦初訳を中心に10篇、『雪女・吸血鬼短編小説集』は13篇、『バビロンの吸血鬼』は21編と、どれも「なぜこの並びなのか」を読み取るだけで評論になる。

橘ナナミ

橘ナナミ

解説や解題も、読み物として面白いんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。詳細な解説や解題が付いたアンソロジーは、作品集であると同時に吸血鬼小説のガイドブックでもある。だから初心者こそ、いきなり長編に飛びつかず、こうした一冊で「自分はこの系統が好き」という軸を掴むのが早い。読む前の予習に使うと、次の一冊の解像度がぐっと上がるよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

最近はweb発の作品も多いと聞きますが、この記事では扱っていないんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ここで紹介しているのは、きちんと商業出版された本だね。いまはwebで発表された作品が書籍化される流れも普通にあって、原稿と紙の橋渡しは吸血鬼ジャンルでも珍しくない。webで読んで気に入ったものが紙になる、逆に書籍から入って続きを追う、という行き来が起きている。続刊や完結状況は変動するから、気になったら出版社のページで確認するのが確実だよ。

読みやすさ・入手性・最初の一冊を整理する

橘ナナミ

橘ナナミ

最後に、読みやすさと入手性で整理してもらえますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

読みやすさでいえば、短編アンソロジーが最も入りやすい。慣れたら赤川次郎さんのシリーズ、さらに西尾維新『傷物語』のような濃密な長編へ、と段階を踏む。入手性は、文庫で探しやすいものと大判のアンソロジーで傾向が違うし、電子の配信状況は変わるから各ストアで確認してほしい。手元に置いて何度も開くなら紙、試し読みで系統を確かめるなら電子、という使い分けもいいね。

橘ナナミ

橘ナナミ

初心者が最初に読むなら、どの一冊ですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

恐怖の王道から入りたいなら、ポプラ社の三田村信行さんの再話『吸血鬼ドラキュラ』。原作の魅力を新しい文と絵で味わえるから、最初の一冊として負担が少ない。もう少し大人向けの濃さを試したいなら、アンソロジーを一冊。私はこの順番を薦めているよ。

よくある質問

ヴァンパイア小説の初心者におすすめの一冊は?

橘ナナミ

橘ナナミ

ヴァンパイア小説の初心者におすすめの一冊はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

恐怖の王道から入るなら、ポプラ社の三田村信行さんの再話『吸血鬼ドラキュラ』が第一候補です。ブラム・ストーカーの原作を新しい文と絵で味わえるので、分厚い古典の前に負担なく世界観へ入れます。短い作品から試したいなら『ドラキュラ ドラキュラ』のようなアンソロジーを一冊。

トワイライトが好きな人に向く吸血鬼小説は?

橘ナナミ

橘ナナミ

トワイライトが好きな人に向く吸血鬼小説はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

恋愛の距離感を楽しみたい人には、赤川次郎さんの『吸血鬼はお年ごろ』のように青春と事件が混ざるシリーズや、森乃なっぱ『霧島くんは普通じゃない 転校生はヴァンパイア!?』の学園にヴァンパイア三兄弟がやってくる設定が合います。耽美寄りなら愁堂れな『嘆きのヴァンパイア』。恋愛の温度感が近いかどうかで選ぶと失敗しません。

ホラーが苦手でも読める吸血鬼小説はある?

橘ナナミ

橘ナナミ

ホラーが苦手でも読める吸血鬼小説はあるについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

あります。赤川次郎さんの『吸血鬼はお年ごろ』は吸血鬼父娘が事件を解くユーモア・ミステリで、恐怖よりも会話劇の軽さが前に出ます。恋愛色の強い作品や、『雪女・吸血鬼短編小説集』のような哀切寄りの短編も、怖さより静けさが残るタイプです。

短時間で読める短編集・一冊完結ものは?

橘ナナミ

橘ナナミ

短時間で読める短編集・一冊完結ものはについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

短編集は『ドラキュラ ドラキュラ』11篇、『吸血鬼ラスヴァン』10篇、『雪女・吸血鬼短編小説集』13編、『戦前日本モダンホラー傑作選 バビロンの吸血鬼』21編。一冊完結なら西尾維新『傷物語』、吉野匠『リバースヴァンパイア』が挙げられます。

Kindle Unlimitedや電子書籍で読める作品は?

橘ナナミ

橘ナナミ

Kindle Unlimitedや電子書籍で読める作品はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

配信状況や読み放題の対象は作品ごと、時期ごとに変わるため、この記事から断定はしません。各電子書店のページで確認してください。短編アンソロジーは試し読みしやすいので、電子で系統を確かめてから紙で揃える読み方も便利です。

ドラキュラ以外の古典的な吸血鬼小説は?

橘ナナミ

橘ナナミ

ドラキュラ以外の古典的な吸血鬼小説はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『吸血鬼ラスヴァン』が最適です。バイロン、ポリドリの名作の新訳に加え、全232章で知られる伝説のゴシック小説『吸血鬼ヴァーニー』の抄訳も収録し、本邦初訳の作品を中心に10篇をまとめています。『雪女・吸血鬼短編小説集』ではゴーティエ「クラリモンド」やコナン・ドイルの作品も読めます。

日本人作家の吸血鬼小説で外せないものは?

橘ナナミ

橘ナナミ

日本人作家の吸血鬼小説で外せないものはについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

西尾維新『傷物語』は『化物語』の前日譚で、阿良々木暦と吸血鬼キスショットの出逢いを描いた外せない一本。事件とユーモアが続く赤川次郎さんのシリーズ、任侠と耽美が交差する愁堂れな『嘆きのヴァンパイア』、戦前の怪奇小説を集めた『バビロンの吸血鬼』も押さえたいところです。

完結済みで一気読みできるシリーズは?

橘ナナミ

橘ナナミ

完結済みで一気読みできるシリーズはについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

完結状況は変動するので、出版社のページで確認するのが確実です。赤川次郎さんの『吸血鬼はお年ごろ』シリーズは第1弾から長く続いていて、『湖底から来た吸血鬼』が第10弾、『吸血鬼と切り裂きジャック』が第13作。巻数が進んだシリーズは一気読みに向きます。

まとめ

橘ナナミ

橘ナナミ

今日の話でいちばん印象に残ったのは「系統で地図を作る」という考え方でした。吸血鬼って、怖いだけの存在じゃなくて、時代が映り込む鏡みたいなんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。同じ牙でも、向けられる先が違う。恐怖型は社会の不安へ、耽美型は孤独へ、ロマンス型は届かない思いへ。読者は、自分の中の何かをそっと噛まれているんだと思う。

橘ナナミ

橘ナナミ

噛まれる——だから読後感が残るんですね。私、最初は「どれが一番怖いか」で選ぼうとしていました。

佐藤メバル

佐藤メバル

それも楽しい選び方だけど、いまの橘さんには「どの感情を味わいたいか」で選んでほしい。短編集で系統を確かめて、刺さった一本を長編で深く読む。その繰り返しで、自分の好みの地図が育っていくよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

はい。まずはアンソロジーを一冊、鞄に入れてみます。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいね。吸血鬼小説は、血を吸う物語なのに、読むほど読者の側に血が巡るジャンルだ。最初の一冊は、あなたの好みという名の首筋にそっと牙を立てて、眠っていた感情を起こしてくれるはずだよ。

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Editorial Team

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