怖い話の漫画本のおすすめ人気ランキング24選【2026年版】

監修

佐藤メバル

佐藤メバル

@shelfy_mebaru

編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ

橘ナナミ

@medias_nanami

編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。

最終更新: 2026年10月

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、今日のテーマは「怖い話の漫画」ですよね。正直に言うと……私、心霊系がちょっと苦手なんです。でも調べていたら、名作古典から最新の話題作まで、思ったより幅が広くて。「怖い」ってひとくくりにできないなと思いました。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいところに気づいたね。ホラー漫画は「怖さの種類」がまるで違うんだ。たとえば『寄生獣』は、突如飛来した寄生生物が人間の身体に侵入して脳を乗っ取り、他の人間を食い殺し始める。高校生・泉新一の身体にも侵入するけれど脳の乗っ取りには失敗して、彼の右手に宿ってしまう。自ら「ミギー」と名乗った寄生生物と新一の奇妙な共存が軸で、怖さの中心は体の中に別の意思がいるという生理的な気持ち悪さと、人間とは何かという問いなんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど……! じゃあ『岸辺露伴は動かない』は? 杜王町に住む漫画家・岸辺露伴が、取材先で体験した恐怖のエピソードを集めた作品ですよね。『懺悔室』『六壁坂』『富豪村』みたいに一話ずつ完結しているから、私でも入りやすそうでした。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうそう。あれは怪異に遭遇するタイプの恐怖で、血みどろの描写よりも、じわじわと理不尽なルールに飲み込まれていく感覚が主役だ。逆に『ダンダダン』は、幽霊肯定派の女子校生・綾瀬桃と、怪奇現象オタクのオカルト君が、互いに否定するUFOと怪異を信じさせるために廃墟やトンネルへ向かうところから始まるオカルティック怪奇バトル。恐怖と笑いと恋がごちゃ混ぜになっている。同じ「怖い」でも、こうも違うんだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、いきなり猟奇的なほうへ行ってしまう前に、自分に合う入口を見つけたいです。何から考えればいいんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

まずは「自分がどの怖さなら耐えられるか」だね。そこから選び方を整理していこう。

怖い話の漫画本の選び方

求める恐怖のタイプ(心理/怪異/グロ/サスペンス)

橘ナナミ

橘ナナミ

タイプって、具体的にどう分けるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

大きく四つだと思う。心理なら『奇子』——地方の豪農での権力争いに巻き込まれ、4歳で土蔵に幽閉された少女が、大人の女に成長したときに周囲の歯車が狂いだす、陰を描く裏・手塚漫画の決定版だね。怪異なら『妖怪ハンター 稗田の生徒たち』のように、村に伝わる風習や現世と幽世を繋ぐ坂に足を踏み入れる作品。都市伝説なら『DOOOOM-ドゥームー』のように、見ると死ぬという呪いの動画やソーシャルな噂を軸にしたもの。因習村なら『屍鬼』のように、村ぐるみで人が減っていくタイプ。グロが苦手なら『こわいやさん』のように、恐怖そのものを様式化して見せる作品もあるよ。

読める巻数・規模(1話完結〜長期連載)

橘ナナミ

橘ナナミ

途中で挫折しないかも心配です。

佐藤メバル

佐藤メバル

短く区切れるものなら『岸辺露伴は動かない』が5編収録の読み切り型。『マンガで読む学校であった怖い話絶望教室』は、恐怖マンガと小説を21話収録していて、1話ずつ区切りがつく。反対に長く世界を追いたいなら『アンテン様の腹の中』のように連載で謎が紐解かれていく作品を選ぶといい。「寝る前に1話だけ」という読み方をするなら、短編型が絶対に向いている。

グロ・猟奇表現への耐性レベル

橘ナナミ

橘ナナミ

私はここが一番の不安です……。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。耐性が低いうちは、血や内臓の描写より「気配」で怖がらせる作品から入るのが定石。『ハイこちら解奇部です』は人間の仕業とは思えない凄惨な現場を扱いつつ、軸は怪奇を「除霊」ではなく「解説」していく知的作業で、恐怖の質が読解寄りになる。『まんがで読む小泉八雲「怪談」』の「のっぺら坊」「雪女」も、恐ろしさは情緒のほうにある。逆に『テラフォーマーズLOST MISSION』はホラー作家とのコラボで、かなり直球の作品だと覚悟して開いたほうがいい。

ホラー初心者か上級者か

橘ナナミ

橘ナナミ

初心者向けの入口ってあります?

佐藤メバル

佐藤メバル

『まんがで読む四谷怪談・雨月物語』は、四代目鶴屋南北の『東海道四谷怪談』をまんが化し、お岩さんと伊右衛門の物語を追える。同時に上田秋成の『雨月物語』から3編を収録していて、日本の怖い話の原型を一冊で押さえられる。『ゾゾゾ変』のように実際の心霊スポット調査を漫画化したものは、フィクションと実話の境界の怖さがあって、上級者ほど効いてくる。学習まんがで古典に慣れてから、実話系や因習系へ進む順番が組みやすいよ。

電子書籍で読めるか・入手難易度

橘ナナミ

橘ナナミ

紙で探すと見つからない作品もありそうで。

佐藤メバル

佐藤メバル

名作ほど復刊や電子化の状況が動くから、書店で見つからなくても電子で読めることが多い。装丁や紙の手触りを楽しむなら紙、シリーズを一気読みするなら電子、という使い分けが現実的だ。『奇子』や『東海道四谷怪談』のように学び直し需要で再注目される作品は、そのときどきで入手経路が変わる。「買えないから読めない」で諦めないでほしい。

原作既読かメディアミックス未見か

橘ナナミ

橘ナナミ

映像や配信から入った人は、どう選べばいいんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

原作がある作品なら、映像で省略された心理描写が漫画側に残っていることが多い。『屍鬼』は小野不由美の原作を藤崎竜が描いているし、『ゾゾゾ変』は元の番組を見てから読むと、スタッフと落合さんが踏み込んでしまった空気がより濃く感じられる。逆に『口が裂けても君には』は、メリーさん誕生の秘話に辿り着く怪異ラブコメで、都市伝説の知識があるほどニヤリとできる。触れた順番が違っても、漫画は別の角度から刺さるものだよ。

怖い話の漫画本をひと目で比較

橘ナナミ

橘ナナミ

えっ、24冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず

#画像名称おすすめ対象価格一言
1
寄生獣(1)新装版
寄生獣(1)新装版猟奇的な見た目だけでなく、人間の定義を考えさせられる物語を読みたい人。SFとホラーの橋渡しを求める読者、少年漫画の名作を今から読む人。1巻で世界観のルールが提示されるため、まずは1巻だけ試したい入門者にも向きます。¥825右手の相棒と戦うSFホラー
2
岸辺露伴は動かない
岸辺露伴は動かないホラーだが長編に疲れる人、1話完結で読みたい人。漫画家や創作を志す人が「取材」という行為の危うさに惹かれる。原作シリーズのファンが外伝として読むにも最適で、5編それぞれの怪異の質が違うため、好みの一篇を見つける楽しみもあります。¥506漫画家の取材が恐怖に転ぶ
3
ダンダダン 1
ダンダダン 1ホラーは苦手だがオカルトの空気は好き、という人。青春ものと怪異ものを同時に味わいたい読者。1巻でテンポと空気が決まるので、試し読みから入りたい人にも向きます。恋愛描写が苦にならない人なら、続巻まで一気に進めます。¥528恋と怪異が同時に走り出す
4
屍鬼 4
屍鬼 4原作小説を読んで、漫画版も追いたい人。閉鎖的な村がじわじわ侵食される構造的な恐怖が好きな読者。第4巻では人間側の対立軸が大きく動くため、既刊を読了した人が展開の転換を味わうのに最適です。怪異より共同体の鈍さが怖い、という人にも。¥858村を蝕む屍鬼、対決の第4巻
5
絶叫学級 禁断の遊び編
絶叫学級 禁断の遊び編漫画版の『絶叫学級』が好きで、文字でも味わいたい人。子どもが読みやすい怪談を探している家庭。案内人・黄泉の語り口が好きな読者に向きます。「禁断の遊び」というテーマなので、夏休みの夜に少しずつ読むのも合います。¥770案内人・黄泉が誘う怪談

怖い話の漫画本のおすすめ人気ランキング

橘ナナミ

橘ナナミ

一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!

佐藤メバル

佐藤メバル

よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

寄生獣(1)新装版
1

寄生獣(1)新装版

岩明均 著|講談社

¥825(税込)

4.8

突如飛来した寄生生物が人間の脳を乗っ取り、他の人間を食い殺し始める——という導入からして容赦がありません。ただし本作の核は、高校生・泉新一の右手に宿ったミギーとの奇妙な共存関係にあります。脳の乗っ取りに失敗したミギーは新一と会話し、時に笑いを取る相棒になる。そのうえで二人は寄生生物たちとの壮絶な戦いに身を投じていく。グロ描写の強さで語られがちですが、実際は「人間とは何か」を問う倫理的な物語で、単なるスプラッタとは一線を画します。

こんな人におすすめ

猟奇的な見た目だけでなく、人間の定義を考えさせられる物語を読みたい人。SFとホラーの橋渡しを求める読者、少年漫画の名作を今から読む人。1巻で世界観のルールが提示されるため、まずは1巻だけ試したい入門者にも向きます。

良い点

  • 右手の相棒という設定が独創的
  • グロだけで終わらない倫理的な問い
  • 戦いと考察のバランスが良い

気になる点

  • 流血・人体描写がかなり生々しい
  • 連載当時の画風に人を選ぶ
  • 全巻読むと相当な分量になる

出版社

講談社

発売日

2014年08月08日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「右手に寄生生物が宿る」って聞くと、正直ギャグみたいな設定にも思えるんですが、読み始めると普通に怖いんですよね? そこが気になっています。

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、そこが面白いところで。ミギーは新一の中で唯一の理解者であり、頼れる相棒でもある。でもミギーは人間ではありません。

他の寄生生物と同じく、人間を捕食対象として見る存在でもある。この親しみと恐ろしさの同居が、この作品をただのグロ漫画にしなかった核心なんです。

右手という「自分だけど自分じゃない」場所に置いたのが本当に巧い。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、相棒なのに人間を食べる側でもある。その二面性が、ただのグロ描写で終わらない理由なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。新一は戦いの中で、人間らしさと残酷さを同時に抱えていく。ホラーとしても読み応えがありますし、成長譚としても読める。

怖い話が苦手な人にも一度は勧めたくなる、守備範囲の広い作品です。

岸辺露伴は動かない
2

岸辺露伴は動かない

荒木飛呂彦 著|集英社

¥506(税込)

4.7

杜王町在住の人気漫画家・岸辺露伴。好奇心に溢れ、リアリティを追求する彼が、さまざまな取材先で体験した恐怖のエピソードを描く短編集です。収録は『懺悔室』『六壁坂』『富豪村』『密漁海岸』『岸辺露伴 グッチへ行く』の5編。怪異に立ち向かうのではなく、露伴自身の好奇心が事態を悪化させるのが特徴で、知りたいという欲求そのものが恐怖の入口になります。読み切り形式なので1話ずつ味わえるのも利点です。

こんな人におすすめ

ホラーだが長編に疲れる人、1話完結で読みたい人。漫画家や創作を志す人が「取材」という行為の危うさに惹かれる。原作シリーズのファンが外伝として読むにも最適で、5編それぞれの怪異の質が違うため、好みの一篇を見つける楽しみもあります。

良い点

  • 1話完結でテンポよく読める
  • 主人公が自ら危険に踏み込む構成
  • 取材という設定が新鮮

気になる点

  • 短編ゆえに怖さは控えめな回もある
  • シリーズ未読だと人物関係が唐突
  • 露伴の性格が強烈で好き嫌い分かれる

出版社

集英社

発売日

2013年11月19日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

岸辺露伴って、あの長寿シリーズの人ですよね? 予備知識なしでも読めますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

はい、読み切り集なので1話から楽しめます。彼は杜王町に住む漫画家で、ネタのために危険な場所へも平気で足を運ぶ。

その好奇心そのものが恐怖の入り口になる。『懺悔室』『六壁坂』『富豪村』『密漁海岸』など、5編どれも「調べるほど追い詰められる」話なんです。

橘ナナミ

橘ナナミ

調べるほど、というのは、つまり自分から首を突っ込んでいくタイプなんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、普通のホラーなら逃げるところを、露伴は「知りたい」で前に進む。だから読者は彼の判断にハラハラする。

短編なので、寝る前に1話だけ、という読み方もできますよ。

ダンダダン 1
3

ダンダダン 1

龍幸伸 著|集英社

¥528(税込)

4.6

幽霊肯定派の女子校生・綾瀬桃と、同級生の怪奇現象オタク。互いに否定するUFOと怪異を信じさせるため、桃はUFOスポットの病院廃墟へ、オカルト君は心霊スポットのトンネルへ向かう。ここから運命の恋とオカルティック怪奇バトルが始まります。特徴は恐怖と笑いと恋の同時進行。純粋なホラーではないので、怖い話が苦手な人にも入口になり、怪異の造形の迫力と掛け合いの軽さの落差が魅力です。

こんな人におすすめ

ホラーは苦手だがオカルトの空気は好き、という人。青春ものと怪異ものを同時に味わいたい読者。1巻でテンポと空気が決まるので、試し読みから入りたい人にも向きます。恋愛描写が苦にならない人なら、続巻まで一気に進めます。

良い点

  • 怖さと笑いのバランスが絶妙
  • 主人公二人の掛け合いが軽快
  • 怪異のデザインが強い

気になる点

  • ホラー単体を求める人には物足りない
  • 恋愛要素が苦手だと合わない
  • バトル寄りで静かな怖さは少ない

出版社

集英社

発売日

2021年08月04日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

この作品、タイトルからするとホラーなんですよね? でも表紙はすごくポップで、そこが不思議で。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが勘所で、幽霊を信じる桃と、UFOを信じるオカルト君が、互いに証明しようとして心霊スポットとUFOスポットへ出向く。

その結果どちらも本物に出くわすわけです。怖さはしっかりあるのに、二人の掛け合いが軽いので一気に読める。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、怖い話が苦手な人でも、入り口として試せますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

できますね。ホラーを「笑いに包んで出す」のが上手いんですよ。ただし怪異の造形は容赦ないので、そこは覚悟して。

恋の行方も同時に追えるので、ジャンルを混ぜたい人にはうってつけです。

屍鬼 4
4

屍鬼 4

藤崎竜 著|集英社

¥858(税込)

4.4

原作は小野不由美、漫画化が藤崎竜。己の手も心も血に染め、屍鬼を殺す術を手にした尾崎敏夫。その惨状から尾崎の覚悟を悟った室井静信は、別の道を歩むことを決意します。外場村では住人の不審死が止まらず、村は屍鬼に制圧されようとしていた。村の危機に目を背け続ける住人から孤立する尾崎だが、仲間となる者を屍鬼の中に見出していく。特製リバーシブルカバーという造本も嬉しい一冊です。

こんな人におすすめ

原作小説を読んで、漫画版も追いたい人。閉鎖的な村がじわじわ侵食される構造的な恐怖が好きな読者。第4巻では人間側の対立軸が大きく動くため、既刊を読了した人が展開の転換を味わうのに最適です。怪異より共同体の鈍さが怖い、という人にも。

良い点

  • 村という閉鎖空間の恐怖が濃密
  • 人間側の覚悟と狂気の描写
  • リバーシブルカバーの造本が嬉しい

気になる点

  • 未読だと人間関係が把握しにくい
  • グロ描写はかなり強い
  • 静かな進行で好みが分かれる

出版社

集英社

発売日

2016年08月18日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

第4巻から紹介するのは、さすがに途中からでは厳しいでしょうか?

佐藤メバル

佐藤メバル

正直、1巻から読むのが前提の作品です。ただ第4巻は大きな転換点で、尾崎敏夫が屍鬼を殺す術を手にする。

ここで村の空気が決定的に変わります。外場村に不審死が止まらず、住民は目を背け続ける。その村全体の鈍さが、実はいちばん怖いんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

怪物より、見て見ぬふりをする人たちのほうが怖い、ということですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこなんですよ。小野不由美の原作が持つ「閉じた共同体」の怖さを、藤崎竜が絵で丁寧にすくい上げている。

室井静信が別の道を選ぶのも含めて、対立の軸が動く巻です。リバーシブルカバーの造本も含めて、手元に置きたくなる第4巻です。

絶叫学級 禁断の遊び編
5

絶叫学級 禁断の遊び編

桑野和明 著|集英社

¥770(税込)

4.3

『りぼん』の大人気マンガ、初のノベライズ。案内人・黄泉が「日常の中で、ぽっかりと大きく口を開けて待っている、もう一つの世界」へ読者を招く構成です。恐怖の世界の案内人という語り手を立てることで、短編集でありながら一冊を通した没入感が生まれています。漫画版と違い文字で読むので想像の余地が広く、より自分の内側に恐怖が染みてくる。読みやすい長さも魅力です。

こんな人におすすめ

漫画版の『絶叫学級』が好きで、文字でも味わいたい人。子どもが読みやすい怪談を探している家庭。案内人・黄泉の語り口が好きな読者に向きます。「禁断の遊び」というテーマなので、夏休みの夜に少しずつ読むのも合います。

良い点

  • 案内人という語り口が効果的
  • 文字なので想像が膨らむ
  • 読みやすい長さで入門向き

気になる点

  • 漫画版ほどの迫力は出にくい
  • 児童向けの語彙で物足りない人も
  • 短編ゆえに深掘りは少なめ

出版社

集英社

発売日

2011年06月03日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

これは漫画じゃなくて小説なんですね。人気マンガのノベライズだと聞いて驚きました。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、初のノベライズなんです。「私の名前は黄泉。恐怖の世界の案内人」——この語り手が全体を導く。案内人に連れられて別世界をのぞくという構造なので、短編集なのに一冊としての流れがある。

絵がないぶん、想像で補う怖さがあります。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、自分で想像するから、より自分の部屋の暗がりが怖くなりそうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそれ。漫画の恐怖は誰かの絵ですが、小説は自分の記憶の風景に置き換わる。子どもが読むなら、案内人の口上を音読すると雰囲気が出ますよ。

絶望鬼ごっこ ひとりぼっちの地獄遊園地
6

絶望鬼ごっこ ひとりぼっちの地獄遊園地

針とら 著|集英社

¥682(税込)

4.1

校外学習で遊園地に来た子供たち。ケイドロ(助け鬼)が始まり、ひとり捕まった悠をタイムリミットまでに助けようと、大翔と章吾たちが園内を駆け回ります。しかし冷酷な鬼・杉下先生とピエロたちが立ちはだかる。閉ざされた遊園地という舞台設定が効いていて、遊具のひとつひとつが障害物に変わる。鬼ごっこという誰もが知る遊びを恐怖のルールに組み替えた、児童向けホラーの王道です。

こんな人におすすめ

小学生の子どもに読ませたい人、あるいは児童書からホラーに入った世代。馴染みのある遊びが恐怖に変わる構成が好きな読者に向きます。テンポ重視で、まとまった時間が取れないときにも読み切りやすい一冊です。

良い点

  • 鬼ごっこという題材が身近ですぐ入れる
  • 仲間を助ける目的があり感情移入しやすい
  • 遊園地の舞台が映像的に浮かぶ

気になる点

  • 児童向けで怖さの解像度は優しめ
  • シリーズ途中なので前巻が気になるかも
  • 短時間で読み終わってしまう

出版社

集英社

発売日

2016年03月24日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

絶望鬼ごっこ、シリーズなんですね。遊園地でケイドロって、子どもには刺さりそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

刺さりますよ。遊園地の施設が、全部逃げ場のないコースに変わる。ルールが明快だからこそ恐怖が機能するんです。

仲間を助けるという目的があるので、応援しながら読めるのが良いところ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、ただ怖がらせるだけじゃなくて、助けるという動機があるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこが大事で。冷酷な鬼・杉下先生とピエロたちが追ってくる。タイムリミットまでに助けられるのか、という焦りが恐怖を支えます。

ホラー入門の一冊としても使いやすいですよ。

マンガで読む 本当に怖い話MAX
7

マンガで読む 本当に怖い話MAX

室秋沙耶美 著|新星出版社

¥1,320(税込)

4.1

家で、学校で、街で、海や山で——身近に起こる恐怖現象をマンガで再現した一冊。かつてこの世を絶望の渦に巻き込んだ「本当に怖い話MAX」全14冊のシリーズから、厳選した伝説級の漫画だけをどっさり収録しています。ダイジェストではなく「最恐の再編集」という性格がはっきりしていて、初めての人はここから、旧シリーズを知る人は比較しながら読める。本文総ルビなので読みやすさも担保されています。

こんな人におすすめ

シリーズ未読で、まず一冊で全体像をつかみたい人。総ルビで読みやすいため、子どもから大人まで幅広く使えます。家族で「どこが怖いか」を言い合う夏の夜の読み物としても、一人でじっくり浸るのにも向きます。

良い点

  • 14冊から厳選という贅沢な構成
  • 総ルビで読みやすい
  • 身近な場所が舞台で没入しやすい

気になる点

  • 既刊を全部持つ人には重複が多い
  • 再編集ゆえに一本の長い物語ではない
  • ホラー耐性がないと連続はつらい

出版社

新星出版社

発売日

2026年11月27日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

全14冊から厳選って、つまりベスト盤のようなものですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう考えるとわかりやすいですね。最恐の回を集めた再編集版です。家、学校、街、海や山——舞台が身近なのがこのシリーズの強みで、ページをめくるたびに自分の日常に恐怖の穴が開いていく感覚があります。

橘ナナミ

橘ナナミ

総ルビというのも、子どもに渡しやすいポイントですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、読みやすさはちゃんと確保されている。初めての人はここで全体の味を知って、気に入った話の元の巻へ戻る、という行き来ができます。厳選という言葉に偽りがない構成です。

マンガで読む学校であった怖い話絶望教室
8

マンガで読む学校であった怖い話絶望教室

西島ユタカ 著|池田書店

¥990(税込)

3.9

授業の一環で「心霊現象」についてグループ発表することになった生徒たちの周りで、不思議な出来事が起こり始める——という枠の物語から入ります。収録は学校で起こった恐怖マンガ&小説を21話。「さみしい卒業式」「おそろいのミサンガ」「教室でみる予知夢」「だれもいない保健室」など、学校という空間の死角を丁寧に拾う構成。恐怖コラムとして令和版・日本三大怪談や世界の幽霊屋敷ツアー、おなやみ別セルフお祓い方法まで付きます。

こんな人におすすめ

学校の怪談が好きな小中学生。コラムで背景知識も欲しい読者に向きます。ちょっと感動する物語も混ざるので、純粋な恐怖だけでは物足りない人にも合います。教室や保健室など、自分の通う場所と重ねて読みたい人にも。

良い点

  • 21話とボリュームがある
  • コラムで知識も増える
  • 怖いだけではない話も収録

気になる点

  • 枠の物語と短編の温度差がある
  • マンガと小説が混在し好みが分かれる
  • お祓い方法は読み物としての位置づけ

出版社

池田書店

発売日

2022年06月13日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「絶望教室」ってタイトルは強烈ですけど、感動する話も入っているんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこがこの本の面白さで。恐怖マンガと小説が21話、それにコラムが付く。学校というのは、教室・保健室・廊下・卒業式と、区切られた空間が多いでしょう。

だから怖い話の舞台としてこれほど使い勝手のいい場所はないんです。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。令和版・日本三大怪談みたいなコラムもあるなら、読み物としても楽しめそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、おなやみ別セルフお祓い方法なんて項目もあって、遊び心が効いている。世界の幽霊屋敷ツアーまで入るので、怪談を一冊でまとめて味わいたい人に向きます。

マンガで読む心霊体験本当にあった怖い話(闇夜の百物語)
9

マンガで読む心霊体験本当にあった怖い話(闇夜の百物語)

雅るな 著|池田書店

¥913(税込)

3.9

スマホから聞こえる声、鏡の中の人、心霊バス、呪いの連鎖ゲーム、モデルの亡霊、乗っ取られた体、人間玉ころがし、恐怖の吊り橋、教室の幽霊、会いに来た親友、指輪の呪い、交換日記、探し回る犬、エクトプラズム——と題材の引き出しがとにかく多い。「読み始めたら止まらない」と謳われる短編集で、一話ずつ区切って楽しめるのが強み。通読より拾い読みに向く構成です。

こんな人におすすめ

すきま時間に一話ずつ読みたい人。ホラー初心者で短編から入りたい読者に向きます。友達と怖い話を交換する感覚で楽しみたい人、逆に一人で静かにゾクゾクしたい人にも合います。

良い点

  • 題材のバリエーションが豊富
  • 一話が短く拾い読みに向く
  • 実話系の生々しさがある

気になる点

  • 長編の濃密さはない
  • 話の当たり外れは出やすい
  • 夜に連続で読むと寝られない

出版社

池田書店

発売日

2016年05月24日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「闇夜の百物語」って、実際に百話も入っているんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

数はともかく、形式としては語り物の寄せ集めですね。スマホから聞こえる声、鏡の中の人、心霊バス、呪いの連鎖ゲーム——題材の引き出しがとにかく多いので飽きずに拾い読みできます。一話が短いから、電車の中でも読める。

橘ナナミ

橘ナナミ

通しで読むより、気になった話をつまむ感じがよさそうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。実話ベースの話をマンガで再現する形式は、想像で補う余地が減るぶん生々しい。逆に、怖すぎて眠れなくなるので読む時間帯は選んだほうがいいですよ。

マンガ 下ヨシ子の 実録 ほんとにあった心霊体験
10

マンガ 下ヨシ子の 実録 ほんとにあった心霊体験

下ヨシ子 著|徳間書店

¥1,870(税込)

3.9

人気霊能力者・下ヨシ子のもとに実際に寄せられた心霊相談を漫画化し、体験談として収録した一冊。生霊や死者からのメッセージ、ポルターガイスト、座敷童子、ペットの死後の世界まで、章ごとにテーマが整理されています。単なる怖い話ではなく、神仏や霊に対する知識と考え方を伝えるのが目的で、巻末には「未成仏霊」「水子」「生霊」「邪気」「動物霊」「霊障」などの用語辞典付き。怖がらせて終わらせない構成が独特です。

こんな人におすすめ

恐怖だけでなく「どう向き合うか」まで知りたい人。霊的な話を知識として整理したい読者に向きます。怖い話のあとに不安が残るのが苦手な人にも、対応の視点があるぶん安心して読めます。

良い点

  • 用語辞典付きで知識も整理できる
  • 実際の相談という形式に厚みがある
  • 怖がらせるだけで終わらない構成

気になる点

  • 信じる信じないで評価が分かれる
  • マンガと解説の比率は好み次第
  • 読み物として重めで一気には進まない

出版社

徳間書店

発売日

2024年07月01日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

霊能力者の方が書いている本って、怖い話というより、相談の記録なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、そこが他と違うところで。実際に寄せられた相談をマンガ化している。これは肝心なのですが、目的が「怖がらせる」ことだけではないんです。

目に見えないものを迷信と切り捨てる風潮に対して、正しい知識と対応を伝えたい、という姿勢が全体を貫いている。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。巻末に用語辞典が付くのも、その姿勢の表れなんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、未成仏霊、水子、生霊、邪気、動物霊、霊障——言葉の意味を押さえてから読むと、怖さの質が変わります。

ホラーというより、怪異の入門書に近い一冊です。

オカルトジャーニー【閲覧注意】 3
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オカルトジャーニー【閲覧注意】 3

駒魔子 著|集英社

¥792(税込)

3.7

今日もふたりは憑いて憑かれてバズらせて——という空気のまま、いつもと違う浅井の様子を訝しむノリコ。きっかけは、とある心霊スポットに足を運んだことでした。心霊街ブラに出向いたり、怪異と恋に落ちかけたりと、方向性がどんどん自由になっていく。ゆるさと本物の怖さを同時に走らせる作風が持ち味で、最終巻として登場人物の関係に決着がつくのが読みどころです。

こんな人におすすめ

ホラーとコメディの境目が好きな人。一緒に心霊スポットへ出かける二人の空気が好きな読者に向きます。最終巻なので、既刊を追ってきた人が締めくくりを味わうのに最適。軽いノリでホラーに入門したい人にも。

良い点

  • ゆるい掛け合いと怖さが両立
  • 心霊スポット巡りという題材が楽しい
  • 最終巻で関係に決着がつく

気になる点

  • 3巻からでは人間関係が追いにくい
  • 本格的な恐怖を求める人には軽い
  • ギャグのノリに好みが分かれる

出版社

集英社

発売日

2024年11月19日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「ゆる怖」って、結局どっちなんだろうと思っていたんですけど。

佐藤メバル

佐藤メバル

どっちも、としか言えないんですが、それが正解なんですよ。日常の軽いノリで心霊スポットへ行く。

でも浅井の様子がどこかおかしい、という違和感が物語を引っ張る。ゆるさが油断を生んで、そこに本物が入ってくる。この落差が気持ちいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、だから最終巻で浅井の異変が軸になるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、きっかけはとある心霊スポット。怪異と恋に落ちかけるような自由さもあって、最後まで振れ幅が大きい。

1巻から続けて読むと、この落差がよく効きますよ。

ゾゾゾ変 (4)
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ゾゾゾ変 (4)

ゾゾゾ 著|幻冬舎コミックス

¥814(税込)

3.7

日本全国の心霊スポットを調査してホラーポータルサイトを作る、という目標を掲げたホラーエンターテインメント番組『ゾゾゾ』の漫画化、その完結巻。『お札の家』『取り残された廃屋』、そして最恐巨大心霊スポット『R村』で、取返しのつかない領域まで踏み込んだスタッフと落合さんを怪異が襲います。「取材に行く」という構造そのものが恐怖で、番組を知らなくても入れる。描き下ろしのオリジナル番外編も収録されています。

こんな人におすすめ

「行ってはいけない場所へ行く」という構造の恐怖が好きな人。動画発のホラーが気になる読者に向きます。完結巻なので、シリーズを追ってきた人の締めくくりに最適。ホラー番組の空気を紙で味わいたい人にも。

良い点

  • 取材型ホラーの緊張感が強い
  • 完結巻で区切りがつく
  • 描き下ろしの番外編が付く

気になる点

  • 4巻から入ると前提がわからない
  • 過激な演出が苦手な人には不向き
  • 番組未見だと人物の立ち位置が掴みにくい

出版社

幻冬舎コミックス

発売日

2026年06月24日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

動画の番組の漫画化なんですね。番組を見ていなくても大丈夫でしょうか?

佐藤メバル

佐藤メバル

大丈夫です。むしろ「取材に行く」という構造そのものが恐怖の源なので、誰でも入れます。お札の家、取り残された廃屋、そしてR村——踏み込むほど、こちらが踏み込まれた場所になっていく。その距離感がこの作品の怖さです。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、取返しがつかなくなっていく過程が主役なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。完結巻なので、集めてきた人が最後まで見届ける形になります。描き下ろしのオリジナル番外編もあって、番組ファンにも漫画から入った人にも嬉しい作りです。

DOOOOM-ドゥームー 1
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DOOOOM-ドゥームー 1

一宮幽 著|集英社

¥660(税込)

3.7

「オカルト女」と呼ばれる女子高生・坂本里依紗は、ある日いじめっ子グループから、見ると死ぬという「呪いの動画」を見せられます。同じ頃、雑誌記者の海崎ヒロトは、婚約者の不自然な死の真相を追ってある都市伝説にたどり着く。そしてすべての背後にある「DOOOOM」とは何か。複数の視点が同じ怪異に収束していく構成の、現代ソーシャルホラー第1巻です。

こんな人におすすめ

都市伝説やネット発の怖さを題材にした作品を探している人。複数視点で謎が組み上がる構成が好きな読者に向きます。第1巻なので、ここから追いかけたい人に。サスペンス寄りのホラーを読みたい人にも合います。

良い点

  • 複数視点が収束する構成が巧い
  • 呪いの動画という題材が現代的
  • 第1巻で謎の輪郭が掴める

気になる点

  • 伏線が多く1巻では答えが出ない
  • ホラーとサスペンスの混ざりは好み次第
  • 登場人物が多く把握に集中が要る

出版社

集英社

発売日

2022年06月17日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「見ると死ぬ呪いの動画」って、いかにも今っぽい題材ですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこがこの作品の志で。女子高生の視点と雑誌記者の視点、まったく接点のない二人が、それぞれ違う入口から同じ何かにたどり着いていく。

都市伝説を追う記者と、校内でいじめの対象になった少女。その二つが交わるところに「DOOOOM」がある。

橘ナナミ

橘ナナミ

1巻だと、まだ核心までは見えない感じですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、輪郭が見え始めるところで終わります。だから「これはどんな怪異なのか」を推理しながら読むのが楽しい。

すべての背後にあるものは何か、という引きで次巻へつながります。

アンテン様の腹の中 5
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アンテン様の腹の中 5

夜諏河樹 著|集英社

¥748(税込)

3.7

穢れを避け外界と隔てられた「少女」と、願いを叶え信仰を糧に生きる「沼の妖」。不思議な巡りあわせから縁を結び、彼らは親交を深めていくが、少女の父親が急な病に倒れます。そこから紐解かれていくアンテン様の過去、その始まりの願いとは——。恐怖というより畏れに重心を置いた怪異譚で、祟りではなく信仰の側から描いているのが独自。過去がじわじわ明かされる構成が持ち味です。

こんな人におすすめ

静かに積み上がる恐怖や、土地の信仰をめぐる物語が好きな人。怪異の由来から読むタイプの作品を求める読者に向きます。第5巻で過去が開示されるため、既刊を読んできた人の続きとして最適です。

良い点

  • 信仰と怪異を結びつけた設定が独創的
  • キャラクターの関係が丁寧に描かれる
  • 過去が明かされる巻として読み応え

気になる点

  • 5巻からでは設定の把握が難しい
  • 派手なホラーを求める人には静かすぎる
  • 世界観の用語に慣れが必要

出版社

集英社

発売日

2023年04月04日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「アンテン様」って、妖怪というより、信仰されている神様に近いものでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの作品の立ち位置で。願いを叶え信仰を糧に生きる沼の妖と、穢れを避けて外界から隔てられた少女、という組み合わせなんです。

怖がらせるというより、畏れのほうに重心がある。第5巻では少女の父親が病に倒れることをきっかけに、アンテン様の過去が明かされていきます。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、ホラーというよりは、由来をめぐる物語なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、ですから派手な絶叫を求める人より、静かにじわじわ来るタイプの怪異が好きな人に向きます。1巻から読んでいると、この巻の開示がよく効きますよ。

まんがで読む四谷怪談・雨月物語
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まんがで読む四谷怪談・雨月物語

板坂則子 著|Gakken

¥1,320(税込)

3.7

江戸時代後期の狂言作者・四代目鶴屋南北による『東海道四谷怪談』をまんが化し、当時の人々を魅了した歌舞伎の演目を忠実に再現しています。上田秋成『雨月物語』からは「菊花の約束」「夢応の鯉魚」「蛇性の淫」の3編を収録。学習まんがシリーズだけに、場面ごとの補足説明と時代背景の解説が付き、物語を追いながら江戸の常識まで身につく。怖さと教養が同時に手に入る構成です。

こんな人におすすめ

古文に入る前の小中学生。古典に苦手意識があるけれど怪談なら読めそう、という人に向きます。大人の学び直しとして江戸の教養を押さえたい読者、お岩さんの物語を筋として知りたい人にも。

良い点

  • 古典をまんがで先取りできる
  • 時代背景の解説が充実
  • カラーページで雰囲気が掴める

気になる点

  • 原文そのものではない
  • 児童向けの設計で大人には物足りない面も
  • 収録作は抜粋される

出版社

Gakken

発売日

2025年07月28日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

四谷怪談のお岩さんって、名前だけは知っているんですけど、話はよく知らなくて。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこを埋めるのがこの本です。歌舞伎の演目を忠実にまんが化しているので、お岩さんと伊右衛門、周りの人々の話が筋として追える。

しかも場面ごとに補足説明が入るから、当時の常識も一緒にわかる。雨月物語からは菊花の約束、夢応の鯉魚、蛇性の淫の3編が収録されています。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、怪談として怖がりながら、古典の予習にもなるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そういう欲張りな作りです。古文が始まる前の子にも、昔話の背景を知りたい大人にも使える。怖い話の入口としても、教養の入口としても優秀な一冊です。

まんがで読む小泉八雲「怪談」
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まんがで読む小泉八雲「怪談」

池田雅之 著|Gakken

¥1,320(税込)

3.5

ギリシャ生まれで明治の日本を生きた作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。世界各国を転々とした彼が、日本の文化と伝承に魅せられて執筆した代表作『怪談』をまんが化した一冊です。「のっぺら坊」「雪女」など、今に伝わる日本の怪談の原点を描き、作品成立に欠かせなかった妻セツとのやり取りや、八雲の生い立ちにも触れます。八雲研究の第一人者が監修し、まんがと連動した解説が付きます。

こんな人におすすめ

「雪女」「のっぺら坊」の元ネタを知りたい人。作家の人物像から怪談に入りたい読者に向きます。小中学生の文学入門としても、大人が明治の教養を読み直すのにも合います。教科書で名前を見た作品を、物語として味わいたい人に。

良い点

  • 怪談の原点をまんがで追える
  • 作者の生い立ちとセツの存在に触れる
  • 監修の解説が厚い

気になる点

  • 原作の全文を読む本ではない
  • 学習まんがの形式が合わない人も
  • 収録される話は抜粋

出版社

Gakken

発売日

2025年09月18日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

小泉八雲って、日本に帰化した外国人ですよね。その人が怪談を書いたのが不思議です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の面白さで。八雲は世界各国を巡った末に日本の伝承に魅せられた人なんです。だから彼の怪談には、外から見た日本の不思議さが混ざっている。

この本は「のっぺら坊」「雪女」といった話だけでなく、作品を作るうえで欠かせなかった妻セツとのやり取りや、八雲の生い立ちまで描きます。

橘ナナミ

橘ナナミ

怪談の本なのに、作者の物語も同時に読めるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、それが八雲研究の第一人者による監修の厚みです。怪談の原点を知りたい人にも、明治の文学に触れたい人にも向きますよ。

東海道四谷怪談
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東海道四谷怪談

上杉可南子 著|くもん出版

¥880(税込)

3.5

日本の古典文学『東海道四谷怪談』を、原文や現代語訳で読む前にまんがで内容をつかむための一冊。表紙のキャラクターと一緒に読み進める構成なので、古典に苦手意識がある人でも最後までたどり着けます。付録の「さきどりガイド」には作品の説明、あらすじ、登場人物紹介がまとまり、これ一冊で古典の全体像がつかめるように設計されています。おとなの学び直しも想定した作りです。

こんな人におすすめ

まず筋をつかんでから原文に挑みたい人。古典は苦手だが四谷怪談は読んでみたい読者に向きます。あらすじと人物関係を手早く整理したい人、舞台や映像作品の前提を知りたい人にも。

良い点

  • さきどりガイドで筋が整理できる
  • キャラクターと一緒に読み進む構成
  • 原文に挑む前の下地になる

気になる点

  • 原文そのものを読みたい人には回り道
  • まんが部分はあっさりめ
  • 一冊で完結するので物足りない人も

出版社

くもん出版

発売日

2021年11月29日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

四谷怪談の本が2冊あるんですね。こちらは出版社もシリーズも違うと。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、目的が少し違います。こちらは「原文や現代語訳で読む前に」という位置づけがはっきりしていて、まんがで流れをつかみ、付録のさきどりガイドで作品の説明・あらすじ・登場人物紹介を押さえる。

表紙のキャラクターと一緒に進む構成もあって、最後まで離脱しにくい。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、原文に挑む前の助走路のような本なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさに。おとなの学び直しにもぴったりで、まず人物関係を頭に入れてから読むと、原文の面白さが倍増します。

怪談としても、古典の入口としても使える一冊です。

妖怪ハンター 稗田の生徒たち 美加と境界の神 / 夢見村にて / 悪魚の海
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妖怪ハンター 稗田の生徒たち 美加と境界の神 / 夢見村にて / 悪魚の海

諸星大二郎 著|集英社

¥946(税込)

3.5

異端の考古学者・稗田礼二郎の教え子たちが、人智を超えた常世の世界を垣間見る。大きな藁の人形の謎に誘われて四方口村を訪れた美加は、村に伝わる不思議な風習に触れ、現世と幽世を繋ぐ坂へ足を踏み入れてしまいます。収録はコミックス未収録の「美加と境界の神」、そして「夢見村にて」「悪魚の海」の全三編。民俗学の知と怪異が地続きになる、諸星大二郎ならではの味わいです。

こんな人におすすめ

民俗学や伝承のにおいがする怪異譚が好きな人。村の風習が恐怖の源になるタイプの話を求める読者に向きます。短編三編なので、まとまった時間が取れない人にも読みやすく、既存ファンには未収録作が嬉しい一冊です。

良い点

  • 民俗学的な背景が濃い
  • 三編収録で読み切りやすい
  • 未収録作が読める貴重さ

気になる点

  • 派手なホラー演出はない
  • 既存ファン向けの文脈がある
  • じわじわ型で好みが分かれる

出版社

集英社

発売日

2021年07月16日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「妖怪ハンター」って聞くと、妖怪を退治して回る話かと思ったんですが。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが少し違っていて。主役は稗田礼二郎の教え子たちで、彼らが村の風習に触れて、現世と幽世を繋ぐ坂へ足を踏み入れてしまう。

退治する側というより、覗いてしまう側なんです。三編とも、土地の伝承が恐怖の入口になっています。

橘ナナミ

橘ナナミ

大きな藁の人形とか、村に伝わる風習が鍵になるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、諸星大二郎は民俗学の知識を下地に置くから、怪異に「土地の由来」がある。だから読後、自分の地元の風習がふと気になり始める。

それくらい生活と地続きな怖さなんですよ。

こわいやさん 3
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こわいやさん 3

カメントツ 著|集英社

¥792(税込)

3.5

いつものように『こわい箱』を開けるうさぎさんたち。しかしうさぎさんはどこか浮かない様子。そんなある日、かえるくんの家に、以前出会った女の子・チェシャ猫さんが突然現れます。いろんな恐怖の物語を心ゆくまで——という構成で、可愛らしいキャラクター造形と底知れない不穏さの落差が持ち味。第3巻では、うさぎさんの翳りとチェシャ猫さんの再登場が物語の軸になり、単発の怖い話が関係性の物語へ育っていきます。

こんな人におすすめ

可愛い絵のギャップで来る恐怖が好きな人。短い物語を少しずつ読みたい読者に向きます。ホラーの定番に少し飽きた人、静かな不穏さを味わいたい人にも合います。

良い点

  • 可愛い絵と不穏さの落差が独特
  • 短編形式で読みやすい
  • キャラクターの関係が動く

気になる点

  • 恐怖の質が独特で好みが分かれる
  • 3巻からだと人物の馴染みが薄い
  • グロを求める人には合わない

出版社

集英社

発売日

2026年03月04日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

うさぎさん、かえるくん、チェシャ猫さん……絵だけ見ると、完全に絵本ですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう見えます。だから油断する。『こわい箱』を開けるという行為が毎回の入り口で、短い物語が並んでいく。

可愛いキャラクターが淡々と怖いことを受け止めるので、嫌な汗が出るような、静かな怖さなんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

第3巻ではうさぎさんが浮かない様子で、チェシャ猫さんが現れる。関係性が動くんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、そこが読みどころ。単発の怖い話かと思っていると、キャラクターのほうに影が差してくる。ホラーに慣れた人ほど、この落差にやられます。

ハイこちら解奇部です 1
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ハイこちら解奇部です 1

シマ・シンヤ 著|集英社

¥792(税込)

3.5

とある地域で、不可解な“呪い”が発見されます。人間の仕業とは思えない凄惨な現場に呼ばれたのは『解奇部』の二人組。彼らは「除霊」ではなく「怪奇の解説」を行う。呪いを一つ一つ解きほぐす中で見えてくるのは、忘れ去られたその地の過去や人間の本質でした。怪異を推理で解いていく新解釈ライトホラーで、年齢不詳の凸凹バディによる掛け合いが全体の軸になっています。

こんな人におすすめ

霊を退治する話より、怪異の理由を解き明かす話が好きな人。推理ものとホラーの交点を求める読者に向きます。バディものの会話を楽しみたい人、土地の過去と人情が絡む話が好きな人にも。

良い点

  • 怪異を推理で解く設定が新しい
  • バディの掛け合いが軸になる
  • 土地の過去と人情が絡む

気になる点

  • 1巻で登場人物の全体像は見えにくい
  • 絶叫系の恐怖は少ない
  • ライトめの作風で好みが分かれる

出版社

集英社

発売日

2026年05月19日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「除霊ではなく解説」って、ホラーなのに霊を祓わないんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこが新しいところで。呪いを一つ一つ解きほぐしていく。現場は凄惨なのに、やることは調査と説明なんです。

その過程で見えてくるのが、忘れ去られた土地の過去や人間の本質。怖さより、なぞ解きの面白さが前に出ています。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、怪異を「事件」として扱う感じですね。年齢不詳の二人組というのも気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

その凸凹バディの会話が読みどころです。シビアなときと人情に寄るときの振れ幅があって、ライトホラーと銘打たれる理由がわかります。

時にシビアに、時に人情ありきで呪いを解いていく。この二人が各所の呪いを解く理由も、追いかけたいところです。

テラフォーマーズLOST MISSION(2)
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テラフォーマーズLOST MISSION(2)

貴家悠 著|集英社

¥836(税込)

3.5

人気連載『テラフォーマーズ』の外伝として、鬼才ホラー作家・平山夢明とのコラボレーションで描かれた作品です。母を求めさまよう9歳の少女ギィの激しき道程が軸になります。本編のスケールとは別に、少女の視点に絞った濃密さが持ち味で、ホラー作家が入ることで生存と狂気の距離がぐっと縮まる。第2巻ではギィの旅がさらに進み、過酷さが増していきます。

こんな人におすすめ

本編『テラフォーマーズ』を読んでいて、外伝も追いたい人。ホラー作家の介入した作風を味わいたい読者に向きます。少女を主人公にした過酷な物語が好きな人にも。ただし第2巻なので、1巻からの通読が前提です。

良い点

  • ホラー作家とのコラボが効いている
  • 少女の視点で濃密に描かれる
  • 本編とは違う角度で楽しめる

気になる点

  • 本編未読だと背景が掴みにくい
  • 過酷な描写がかなり強い
  • 2巻から入るのは難しい

出版社

集英社

発売日

2016年04月19日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

これは本編の外伝なんですよね。9歳の少女が主人公というのが気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、母を求めさまよう少女ギィの道程が軸です。しかもホラー作家の平山夢明が入っているので、生存と狂気の距離が本編よりずっと近い。

派手さより、じっとりした怖さが前に出るんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、スケールの大きい本編に対して、こちらは一人の少女に絞った濃さなんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そういうことです。ですから1巻から続けて読むのが前提。本編のファンが「もう一つの角度」を味わうための外伝であり、同時にホラーとしてもしっかり成立しています。

奇子(1)
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奇子(1)

手塚治虫 著|講談社コミッククリエイト

¥1,023(税込)

3.5

呪われた出生を背負う少女を描いた問題作。地方の豪農での権力争いに巻き込まれ、4歳で土蔵に幽閉された奇子。彼女が大人の女に成長したとき、周辺の歯車が狂いだします。手塚治虫の「裏」と呼ばれる作品で、怪異を出すのではなく、家と血のしがらみそのものが恐怖の源になる。陰を描く裏・手塚漫画の決定版とされ、戦後の家族の闇を真正面から見つめた一冊です。

こんな人におすすめ

お化けではなく、人間の業のほうが怖いと感じる人。手塚治虫の知られざる側を読みたい読者に向きます。家族や家の闇を扱った物語が好きな人、人間ドラマとしての濃さを求める人にも。

良い点

  • 手塚治虫の裏作品として貴重
  • 家と血の闇を正面から描く
  • 人間ドラマとして密度が高い

気になる点

  • 怪異ホラーを期待すると方向が違う
  • 陰鬱な展開が続き重い
  • 1巻では全体の序盤にとどまる

出版社

講談社コミッククリエイト

発売日

2010年11月12日頃

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

これ、ホラーの棚に置くんですか? お化けは出なさそうですけど。

佐藤メバル

佐藤メバル

出ません。でも、これほど怖い話も少ない。4歳で土蔵に幽閉された奇子が、大人の女に成長したとき、周りの歯車が狂い出す。

地方の豪農の権力争いに巻き込まれて、というのがそもそもの入口です。幽霊より、家と血のほうがよほど恐ろしい、という作品なんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。手塚治虫の「裏」と呼ばれる作品というのも、納得です。

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、陰を描く裏・手塚漫画の決定版とされる一冊です。怪異を求めて読むと肩透かしですが、人間の業の怖さを求めるなら、これ以上のものはなかなかありません。

ブヨトピア 1
23

ブヨトピア 1

雲母坂盾 著|集英社

¥770(税込)

3.5

かつて世界を救うべく、魔王に闘いを挑んだ勇者ビヨンド。しかしある理由でトドメを刺すことに失敗し、魔王は最期に解呪不可能な不滅の呪い“ブヨブヨ”を全生命体にかけてしまいます。人々の不満はすべて勇者に向かい、そのストレスからビヨンドは引きこもりに。生活費が尽き、身分を隠して再び外へ——。呪いの後始末という誰もやらない主題を、社会生活コメディとして描く第1巻です。

こんな人におすすめ

ホラーと聞いて身構える前に、変な方向へ行く作品が好きな人。世界を救った後の話という発想に惹かれる読者に向きます。魔王討伐後の後日譚ものが好きな人、肩の力を抜いて読める一冊を探している人にも。

良い点

  • 呪いの後始末という発想が独創的
  • 勇者の引きこもり設定が可笑しい
  • コメディとして軽快に読める

気になる点

  • ホラー色はほとんどない
  • ギャグのノリに好みが分かれる
  • 1巻では世界観の提示が中心

出版社

集英社

発売日

2026年07月03日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

これは……ホラーの一覧に入っていますけど、魔王を倒した後の話なんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、しかも倒しきれなかった。解呪不可能な呪い“ブヨブヨ”を全生命体にかけられてしまう。世界を救うはずが、全員をブヨブヨにした張本人になる。

人々の不満は勇者へ集中して、彼は引きこもり、生活費が尽きて身分を隠して働きに出る。発想がとにかく変なんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

怖い話というより、勇者の再就職の話になってきました。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこなんです。ホラーという枠に置くなら、呪いが日常生活を侵食するという一点。極限の勇者VS社会生活コメディ、と紹介されている通りの、肩の力を抜いて読める第1巻です。

口が裂けても君には 5
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口が裂けても君には 5

梶本あかり 著|集英社

¥660(税込)

3.5

紅一の両親に会い、順調かに見えた二人の関係。しかし紅一は酔ったみろくに迫られ、普段と違う様子に振り回されます。そして、失われゆく逸話モノの命——。メリーが捜し続ける少女・エミリーとは何者なのか、ついに「メリーさん」誕生の秘話に辿り着きます。恐怖に落としたい口裂け女と、恋に落ちたい男子高校生の掛け合いが軸の怪異ラブコメ第5巻です。

こんな人におすすめ

怪談を題材にした恋愛ものを読みたい人。「メリーさん」の由来が気になる読者に向きます。第5巻で核心に触れるので、追ってきた人の続きとして最適。怪異の出典を大事にする作風が好きな人にも。

良い点

  • 怪異と恋愛の掛け合いが楽しい
  • メリーさんの由来に踏み込む
  • キャラクターの関係が動く

気になる点

  • 5巻からでは関係の前提が掴みにくい
  • 本格ホラーを求める人には不向き
  • ラブコメのノリに好みが分かれる

出版社

集英社

発売日

2022年04月04日

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

口裂け女とメリーさんが同時に出てくるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、しかも掛け合いの方向が逆なんです。恐怖に落としたい口裂け女と、恋に落ちたい男子高校生。

その温度差がそのまま笑いになる。第5巻では紅一がみろくに迫られて振り回され、さらにメリーが捜し続ける少女エミリーの話、つまり「メリーさん」誕生の秘話に辿り着きます。

橘ナナミ

橘ナナミ

怪談の由来を掘る回でもあるんですね。ラブコメとしても気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

ええ、怪異の出典を大事にしているところが、この作品の誠実さです。怖い話の知識がある人ほど、名前が出た瞬間にニヤッとする。

そこが他の怪異ラブコメと違うところですね。

怖さの強度を測る「怖さの処方箋」と耐性別ロードマップ

橘ナナミ

橘ナナミ

選び方の軸は分かったんですが、自分の耐性がどのくらいか、客観的に知る方法ってありますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

書店員時代に勝手に「怖さの処方箋」と呼んでいた見方があってね。ひとつは「見えない気配」に弱いか「見えてしまうもの」に弱いか。次に、理不尽なルールで追い詰められるのが苦手か、体の変化や血が苦手か。三つめが、日常の延長に怖さがあるか、異世界へ飛ばされるほうが楽か。最後が、怖さが後を引くタイプか、読み終われば消えるタイプか。この4問で、たいてい入り口が決まる。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど! 私は「気配」と「日常の延長」に弱いので、教室や保健室が舞台の学校の怪談ものが一番効きそうです。逆に『ブヨトピア』みたいに世界全体にかかった呪いの話は、規模が大きすぎて娯楽として読めそう。

佐藤メバル

佐藤メバル

その感覚は正しいよ。魔王にトドメを刺し損ねた勇者ビヨンドが、全生命体にかけられた不滅の呪いの責任を浴びて引きこもる——『ブヨトピア』はそんな不条理コメディでもある。怖さの総量が同じでも、笑いに逃げられる設計があるかどうかで体感はずいぶん変わる。だから耐性別ロードマップは、入門=読み切り短編、中級=連載で人間関係が壊れていく話、上級=実話系や因習村のように「現実にありそう」な構成、という順番が組みやすい。

橘ナナミ

橘ナナミ

上級って具体的には?

佐藤メバル

佐藤メバル

『屍鬼』の外場村みたいに、住人の不審死が止まらないのに村が危機から目を背け続ける構造は、幽霊より人間のほうが怖いと感じさせる。『オカルトジャーニー【閲覧注意】』も、心霊スポット巡りを軽いノリで続けるうちに、相方の様子がいつもと違っていく——ゆるさが後から効いてくるタイプだね。

系譜で読む——怪談から都市伝説、そして因習とサイコへ

橘ナナミ

橘ナナミ

作品同士のつながりが見えると、もっと面白そうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

ざっくり三つの流れがある。第一が古典・怪談の系譜で、『東海道四谷怪談』や『まんがで読む四谷怪談・雨月物語』、『まんがで読む小泉八雲「怪談」』——お岩さん、雪女、のっぺら坊といった原型がここにある。第二が民俗・怪異の系譜で、『妖怪ハンター 稗田の生徒たち』のように異端の考古学者・稗田礼二郎の教え子たちが常世の世界を垣間見る作品。第三が現代の都市伝説・ネット系で、『DOOOOM-ドゥームー』の呪いの動画、『口が裂けても君には』のメリーさん、『ゾゾゾ変』の心霊スポット調査がここに連なる。因習村とサイコは、この民俗と現代の交差点に生まれるんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

古典→民俗→都市伝説って、呪いが村から街へ出てきた流れみたいですね……!

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそれ。『マンガで読む本当に怖い話MAX』のように、家で、学校で、街で、海や山で起きる身近な恐怖を集めた一冊は、「どこにでもある」ことが前提になっている。逆に『下ヨシ子の実録 ほんとにあった心霊体験』は、相談に来た人たちの怪奇現象をマンガ化し、神仏や霊への向き合い方まで書いている。恐怖を知識で手なずけたい人に向く本で、霊に関する用語辞典が付いているのもそのためだね。『ハイこちら解奇部です』が呪いを「解説」する話なのも、同じ欲求の表れだろう。

入手性のリアルと、読んだあとのケア

橘ナナミ

橘ナナミ

書店員さん目線で、探すときのコツはありますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

復刊や電子化は時期で動くから、いま見つからない作品が後に読めるようになることも、逆もある。だから「これは紙で持っておきたい」と思ったら、見つけたときに確保する。手塚治虫作品や古典ものは学び直し需要で再び並ぶことが多く、新しいホラーは紙と電子がほぼ同時に出る。僕の失敗談で言えば、話題になってから慌てて探して初版の装丁を逃した作品がいくつもある(笑)。

橘ナナミ

橘ナナミ

あと、怖いのが苦手な人向けの設計も知りたいです。読み終わって眠れなくなったら困るので……。

佐藤メバル

佐藤メバル

それこそ一番大事な話だね。昼に読む、一話で区切る、怖かったら誰かに話す——言語化すると恐怖はかなり薄まる。夜に読むなら『こわいやさん』のように、恐怖をギャグとして消費できる作品を選ぶ。『マンガで読む心霊体験本当にあった怖い話(闇夜の百物語)』のような短編集は、スマホから聞こえる声、鏡の中の人、心霊バス、呪いの連鎖ゲームなど短い話が並ぶので、読む本数を自分で決められる。紙は残りページの圧を感じる人には電子、世界に入り込みたい人には紙、と媒体で恐怖の量を調整するのも手だよ。『絶望鬼ごっこ』のように遊園地で鬼ごっこが始まる児童向けの作品は、怖さの質がゲーム的で、苦手な人の肩慣らしにも向いている。

よくある質問

怖い話の漫画で初心者におすすめは?

橘ナナミ

橘ナナミ

怖い話の漫画で初心者におすすめはについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

短編で区切りがつく作品から始めるのが安心です。『岸辺露伴は動かない』は怪異に遭遇する恐怖を5編の読み切りで味わえます。日本の怪談の原型を知りたいなら『まんがで読む小泉八雲「怪談」』や『まんがで読む四谷怪談・雨月物語』が入りやすく、怖さの種類を確かめながら自分に合う方向を探せます。

短編で一気に読める怖い漫画はどれ?

橘ナナミ

橘ナナミ

短編で一気に読める怖い漫画はどれについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『マンガで読む心霊体験本当にあった怖い話(闇夜の百物語)』は短い話が多数収録され、1話ずつ区切って読めます。『マンガで読む学校であった怖い話絶望教室』は恐怖マンガと小説を21話収録。読む話数を自分で決められるので、夜に読みすぎて眠れなくなるのを防ぎやすいです。

グロが苦手でも読めるホラー漫画はある?

橘ナナミ

橘ナナミ

グロが苦手でも読めるホラー漫画はあるについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

血や内臓より「気配」や「理不尽なルール」で怖がらせる作品が向いています。『妖怪ハンター 稗田の生徒たち』は村の風習や常世の世界をめぐる民俗的な怖さ、『こわいやさん』は恐怖を様式化して見せる作品です。猟奇的な表現が苦手なら、表紙と試し読みで描写の濃さを先に確認しましょう。

一話完結で読みやすいホラー漫画のおすすめは?

橘ナナミ

橘ナナミ

一話完結で読みやすいホラー漫画のおすすめはについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『岸辺露伴は動かない』が代表格で、取材先で起きる恐怖が1話ごとに完結します。『マンガで読む本当に怖い話MAX』のように、家・学校・街・海や山といった身近な場所の恐怖を短編で再現した作品も、どこから読んでも入りやすい構成です。寝る前の1話に向くのはこのタイプです。

怖すぎない・ライトなホラー漫画は?

橘ナナミ

橘ナナミ

怖すぎない・ライトなホラー漫画はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『ブヨトピア』は世界にかけられた呪いを扱いながら、勇者の引きこもり生活という不条理コメディとして読めます。『こわいやさん』や『ハイこちら解奇部です』も、恐怖を笑いや解説に変換する設計。『ダンダダン』のようにバトルや恋が混ざる作品なら、怖さが続かず息継ぎできます。

無料・試し読みで読めるホラー漫画は?

橘ナナミ

橘ナナミ

無料・試し読みで読めるホラー漫画はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

配信状況は書店や電子書店ごとに変わりますが、多くの作品で試し読みが用意されています。まずは各社の試し読みで絵柄と描写の濃さを確かめ、合いそうなら続きを購入する流れが安全です。図書館や電子の読み放題サービスに対応している場合もあるので、複数の入手経路を当たってみてください。

完結済みで1巻から読めるホラー漫画は?

橘ナナミ

橘ナナミ

完結済みで1巻から読めるホラー漫画はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『ゾゾゾ変』は完結巻まで刊行されており、心霊スポット調査の顛末まで追えます。『オカルトジャーニー【閲覧注意】』も最終巻まで出ています。1巻から始められる作品は『寄生獣』『ダンダダン』『奇子』『DOOOOM-ドゥームー』『妖怪ハンター 稗田の生徒たち』など多数あり、途中巻から入る必要はありません。

名作ホラー漫画の復刊・電子化状況は?

橘ナナミ

橘ナナミ

名作ホラー漫画の復刊・電子化状況はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

復刊や電子化の状況は時期によって動くため、書店で見つからなくても電子で読めることがあります。『奇子』『東海道四谷怪談』のように学び直し需要で再注目される作品は、並び方が変わりやすい。紙で持ちたい一冊は見つけたときに確保し、まとめ読みしたい作品は電子、と使い分けるのが現実的です。

まとめ

橘ナナミ

橘ナナミ

今日の話、ぜんぶ「自分はどれなら耐えられるか」に戻ってくるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。怖い話の漫画は、怖がらせる技術の見本市みたいなものだから、順位より相性なんだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

私はまず『岸辺露伴は動かない』のような一話完結から入って、『まんがで読む小泉八雲「怪談」』で原型を押さえて、いつか『屍鬼』に挑戦してみたいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい順番だね。読んでいる途中で「これは合わない」と感じたら、閉じていい。ホラーは我慢比べじゃないからね。

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、最後にひとつだけ。怖い話って、どうして何度も読みたくなるんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

たぶん、安全な場所から覗く窓だからだと思う。開ければ冷たい風が入ってくるけれど、閉めれば自分の部屋に戻れる。どの窓を、いつ、どのくらい開けるか——その取っ手は、いつも読者の側にあるんだよ。

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Editorial Team

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