少女漫画ラブコメ本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、今回のお題は「少女漫画のラブコメ」ですよね。書店の棚を見てきたんですけど、甘々なものから、がっつり笑わせにくるものまで混ざっていて、どれから手をつけていいのか分からなくなっちゃいました。
佐藤メバル
いい質問だね。少女漫画のラブコメって、実はひとつのジャンルじゃなくて、笑いの質も、恋の進み方も、まったく別物なくらい幅があるんだ。書店員だったころも「ラブコメください」と言われたら、まず「笑いたいのか、キュンとしたいのか、泣きたいのか」を聞き返していたよ。それだけで、棚の前に立つ場所が変わるからね。
橘ナナミ
同じ「ラブコメ」なのに、そこまで変わるんですか?
佐藤メバル
変わるよ。たとえば『ときめきトゥナイト』は、吸血鬼と狼女の両親を持つ江藤蘭世が、かみついた相手に変身してしまうという設定そのものが面白さの入口になっている。ファンタジーの勢いで転がっていくタイプだね。一方で『アオハライド』は、中学時代に傷ついた双葉が自分を偽って高校生活を送るところから始まる。笑いで引っ張るというより、すれ違いの痛みを丁寧に描く作品で、読後感はかなり違う。
橘ナナミ
なるほど……! 「ラブコメ」という一言だけで選ぶと、思っていたのと違う本に当たっちゃいそうですね。
佐藤メバル
そう。だからこの記事では、先に自分がどの軸で選びたいのかを決めてから、作品を見ていく順番にしよう。
少女漫画ラブコメ本の選び方
目的別(笑いたい/キュンとしたい/泣きたい/癒されたい)
橘ナナミ
まずは一番分かりやすい「何のために読みたいか」からお願いします。
佐藤メバル
笑いたいなら『はいからさんが通る』が分かりやすい。大正を舞台に、恋も結婚も自分で選びたいと願う花村紅緒が、許嫁の陸軍少尉・伊集院忍とぶつかり合う話で、自分のじゃじゃ馬ぶりを面白がる相手に紅緒が反発するところから始まる。テンポのいい掛け合いが気持ちいいんだ。キュンとしたいなら『うるわしの宵の月』。容姿端麗で「王子」と呼ばれる女子・滝口宵が、同じく「王子」と呼ばれる市村先輩とお試しの付き合いを始め、夏祭りでようやく気持ちを打ち明け合う流れが丁寧に描かれる。泣きたいなら『こどものおもちゃ』、癒されたいなら『太陽よりも眩しい星』のように、幼なじみとの関係の変化を穏やかに追う作品が向いているね。
橘ナナミ
「笑いたい」と「癒されたい」で、まったく別の本棚になるんですね。
佐藤メバル
そう。逆に言えば、目的を決めずに表紙だけで選ぶと、いちばん当たり外れが出やすいジャンルでもあるんだ。
巻数・完結状況別(短編完結で一気読み/長期連載でじっくり)
橘ナナミ
巻数って、やっぱり気にしたほうがいいんでしょうか。長いのは途中で置いていかれそうで少し怖いです。
佐藤メバル
一気読みしたいなら、まずどのくらいで一区切りつくかを見るといい。『天使なんかじゃない』の新装再編版は、学年や学期を区切りに再編集されているから、まとめて読んでも疲れにくい。逆に『イタズラなKiss』のような長期連載は、直樹のいとこ・理加が同居してきて「直樹をちょーだい」と迫る、といった出来事を積み重ねながら関係が深まっていくので、じっくり長く付き合う読み方に向いている。
橘ナナミ
短期で一気に読むか、長期でじっくりか。途中で間が空いても戻りやすいのはどっちですか?
佐藤メバル
長期連載のほうが戻りやすいね。逆に短い作品は、勢いで読み切ったほうが体験としては濃い。
テンション別(甘々溺愛/すれ違いじれったい/ギャグ全開/勘違い)
橘ナナミ
テンションで選ぶ、というのも聞いてみたいです。SNSで「溺愛」って言葉をよく見かけるんですけど、ひとくくりでいいんでしょうか。
佐藤メバル
質はいろいろあるよ。『花野井くんと恋の病』は、恋がわからない女子と、愛が重すぎる男子の組み合わせで、重さそのものが物語の主題になっている。すれ違いでじれったいのが好きなら『君がトクベツ』のように、芸能界を舞台に両片想いが噛み合わない作品がいい。勘違いから始まるタイプなら『氷の城壁』で、ある人物の気持ちを周囲が取り違えていくところが物語の推進力になっている。
橘ナナミ
勘違いが笑いになるか、じれったさになるかで、読み心地が変わりますね。
佐藤メバル
その通り。テンションが合うかどうかは相性の問題なんだ。苦手なテンションは無理に読まなくていい。
舞台・設定別(学園/大人・オフィス/異世界・令嬢)
橘ナナミ
舞台で選ぶなら、どう見分ければいいですか。
佐藤メバル
学園ものは圧倒的に数が多いから、逆に「学園以外」を条件にすると絞れる。大人の恋なら『モエカレはオレンジ色』で、消防士というオトナ男子との距離感が軸になる。恋人気分を味わえたり、別の消防士と買い物デートをすることになったりして、ドキドキの種類が学園ものとは違うんだ。時代ものなら『はいからさんが通る』の大正、魔法が絡むなら『ときめきトゥナイト』や『姫ちゃんのリボン』——姫ちゃんのほうは、魔法の国の王女からもらった、他人に変身できるリボンが物語を動かしていく。
橘ナナミ
「異世界」ではなくて、魔法が日常に混ざるくらいの距離感なんですね。
佐藤メバル
そう、そこが少女漫画らしいところで、ファンタジーでも恋の悩みは現実サイズのままなんだ。
入手形式別(紙/電子/読み放題/試し読み)
橘ナナミ
紙で買うか、電子で買うか、読み放題にするか……ここはどう考えればいいでしょう。
佐藤メバル
まず試し読みで絵柄とテンポを確かめる。少女漫画は絵の癖が好みに直結するから、ここを飛ばすと後悔しやすい。じっくり手元に置きたいなら紙で、たとえば『天使なんかじゃない』の新装再編版はカバーが描き下ろしなので、紙で揃える価値がある。逆に巻数が多い作品を「まず読んでみたい」なら、読み放題や電子で第1巻だけ試すのが現実的だね。
橘ナナミ
全部電子にしよう、と決める必要はないんですね。
佐藤メバル
うん。好きな作品だけ紙、探すときは電子、が無理のない付き合い方だと思う。
読者層別(10代/30〜40代の大人/男性読者にも刺さるか)
橘ナナミ
最後に、誰が読むかで選び方が変わるかも教えてください。私は大学生なので、10代の頃とは感じ方も違いそうです。
佐藤メバル
高校生の話なら『アオハライド』や『ストロボ・エッジ』のように、その時期の痛みを正面から描いた作品が刺さる。大人になってから読むと、『ご近所物語』でデザイナーを目指す実果子が、幼なじみのツトムに置いていかれる淋しさを隠せない場面なんかが、まったく違う重さで届くんだよね。男性読者なら、恋の駆け引きより関係性の変化を追うタイプ——『誰か夢だと言ってくれ』のように、低身長が悩みの星川小夜が勝負を挑んでは惨敗する関係から始まる作品——のほうが入りやすいかもしれない。
橘ナナミ
同じ本でも、読む年齢で別の物語になるんですね。それはすごく面白いです。
少女漫画ラブコメ本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
少女漫画ラブコメ本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
ときめきトゥナイト 1
池野恋 著|集英社
¥803(税込)
人間との恋を禁じられた吸血鬼と狼女の娘・江藤蘭世が、同級生の真壁俊くんに夢中になる。そんなある日、かみついた相手に変身してしまう超能力が芽ばえ、恋も日常も大慌てになる——という不思議どきどきのラブコメディ。中2の女の子の視点で、片想いのそわそわと変身のハプニングが同時に進むのが読みどころ。今の学園ラブコメより、家族や種族のルールに振り回される可笑しさと切なさの比率が高く、そこが唯一無二の味になっている。
こんな人におすすめ
少し昔の少女漫画に触れてみたい人、ファンタジー要素つきの初恋を読みたい人、長く続くシリーズにじっくり浸りたい人に向く。変身ものの原点を押さえておきたい読者や、家のルールと恋の板挟みという設定に惹かれる人にも。
良い点
- 変身と初恋が同時に進む
- 家族設定が独自で魅力的
- 短いページでテンポよく読める
気になる点
- 設定が今風ではない
- 連載が長く入口は第1巻
- 超能力の説明はあっさり
出版社
集英社
発売日
1998年10月16日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
吸血鬼と狼女を両親って、それだけで気になります! しかも人間との恋は禁止って、蘭世ちゃん、いきなり難易度が高すぎますよね。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。蘭世は中2で、同級生の真壁俊くんに夢中。でも家のルールでは人間との恋は禁止。
さらに、かみついた相手に変身してしまう超能力まで芽ばえて、恋の空回りと変身のハプニングが同時に起きるんだ。
恋の障害が外側にあるのがこの作品の面白さで、今の学園ラブコメとは悩みの種類が少し違うんだよね。
橘ナナミ
外側の障害かあ。今だと、すれ違いとか自分の気持ちの整理が問題になることが多い気がします。
佐藤メバル
そう、そこが読み比べの醍醐味。蘭世の場合は、正体を隠す、家族の決まりを守るという、自分では変えられない条件の中でどう好きを通すかが主題になる。
設定の荒唐無稽さを笑いながら読めて、しかも恋の切なさはちゃんと残る。古さを味として楽しめる一冊だよ。
はいからさんが通る 新装版(1)
大和和紀 著|講談社
¥605(税込)
時は大正。花村紅緒17歳、明るく元気いっぱいのハイカラ娘が、恋も結婚も自分で選びたいと夢見ていたところに、許嫁の陸軍少尉・伊集院忍が現れる。自分のじゃじゃ馬ぶりを面白がる笑い上戸の彼が気に入らず、破談にしようと動き出す——というすれ違いから始まる攻防が軸。ブームを巻き起こした名作の新装版で、大正の街の空気と紅緒の痛快な行動力が同時に味わえるのが強み。
こんな人におすすめ
時代ものをまだ読んだことがない人、気の強いヒロインの啖呵を読みたい人、古典的名作を新装版で手に取りたい人に向く。恋の始まりが喧嘩越しのほうが好きな読者や、大正という時代の空気をまとめて味わいたい人にも。
良い点
- 紅緒の行動力が痛快
- 大正の空気感が濃い
- 新装版で手に取りやすい
気になる点
- 時代背景の説明は少なめ
- 古典なので絵柄に好み
- 相手役の出方が落ち着く
出版社
講談社
発売日
2016年12月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
大正時代でハイカラ娘って、イメージが湧くようで湧かなくて。紅緒さんは、何がそんなにすごいんですか?
佐藤メバル
紅緒は17歳で、恋も結婚も自分で選びたいと願っている。ところが許嫁の伊集院忍が現れて、しかも彼は紅緒のじゃじゃ馬ぶりをいつも面白がる笑い上戸ときた。
だから紅緒は余計にムッとして、破談にしようと動き出す。相手の余裕を跳ね返そうとするところから物語が転がるんだ。
啖呵を切る紅緒の痛快さと、大正の街の描写を一緒に楽しんでほしい。
橘ナナミ
笑い上戸の許嫁、ちょっと憎めないですね。破談にしようとするのに、たぶんうまくいかないんでしょうね。
佐藤メバル
そういう読み方でいいと思う。恋の始まりが「好き」ではなく「気に入らない」から始まるのが、この作品の面白さ。
少女たちの間で空前のブームを巻き起こしたラブコメの名作が、装いも新たに登場した。時代ものの入口としても、喧嘩から始まる関係が好きな人にも、たぶん刺さるよ。
イタズラなKiss 11
多田かおる 著|集英社
¥968(税込)
直樹のイトコ・理加が1か月間同居することになり、アメリカ帰りで才色兼備、何事にも積極的な理加から「直樹をちょーだい」と迫られて琴子はタジタジ。さらに直樹のファーストキスの相手が理加だったと分かって——という、揺さぶりが連続する巻。当事者である琴子より、周囲が勝手に状況を動かしていく可笑しさが際立ち、才色兼備の侵入者という道具立てがこの作品の持ち味を濃く出している。
こんな人におすすめ
片想いが実ってからの“その後”を読みたい人、恋敵が同居してくるような騒がしいラブコメが好きな人、実質的な夫婦ものも味わいたい読者に向く。第1巻からじっくり追いかけたい人にもおすすめ。
良い点
- 理加が強烈な攪乱役
- 琴子の反応が可笑しい
- 既婚の日常が背景にある
気になる点
- 途中巻なので前提が必要
- 騒動中心の巻で静かでない
- 理加の造形は好みが分かれる
出版社
集英社
発売日
2004年11月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
イトコが1か月同居して「直樹をちょーだい」って言ってくるの、攻めが強すぎませんか!
佐藤メバル
そこがこの巻の見どころ。しかも理加はアメリカ帰りで才色兼備、何事にも積極的。琴子より先に動けてしまう存在なんだ。
加えて、直樹のファーストキスの相手が理加だったと分かる。過去の一手が今を揺らす構造になっていて、琴子はタジタジになりながらも関係を見つめ直すことになる。
騒がしいけど、芯は夫婦の物語として読めるんだ。
橘ナナミ
ファーストキスの相手が出てくるの、いま読むとかなりしんどい展開ですよね……でも読みたい。
佐藤メバル
でしょう。琴子がどんな表情でこれを受け止めるかも含めて、この巻は見どころが多い。周囲の人が勝手に状況を持ってくるのがこの作品の面白さで、主人公が受け身になっても話が転がっていく。
騒動の中心にいるのに振り回されるヒロインの姿を、途中からでも楽しんでほしいな。
グッドモーニング・コール 1
高須賀由枝 著|集英社
¥704(税込)
両親の都合で卒業までの半年間、マンションで一人暮らしをすることになった中三の菜緒。ところが引っ越しの日に、同じ中学の上原くんが同じ部屋に引っ越してきて、結局同居することになってしまう——という出だしから想定外が重なるラブコメ。顔見知りだから隠しきれない距離感で物語が進み、思春期の気まずさと近づいていく過程がていねいに描かれる。巻末のエッセイ漫画も軽やか。
こんな人におすすめ
ひとり暮らしや同級生との距離感に関心がある人、生活圏が重なる相手との恋を読みたい人、長いシリーズを最初から追いたい人に向く。中学生の日常を懐かしみながら読みたい読者や、半年という期限つきの展開を味わいたい人にも。
良い点
- 同居の設定がリアル
- 学年の空気感が生々しい
- 巻末エッセイ漫画つき
気になる点
- 冒頭は設定説明が多い
- すれ違いが長めに続く
- 山場は途中巻に集中
出版社
集英社
発売日
2008年01月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
引っ越しの日に、同じ中学の男子が同じ部屋に引っ越してくるって、偶然が強すぎませんか?
佐藤メバル
偶然を置いておいて、その後の描き方がうまいんだよ。菜緒は両親の都合で、卒業までの半年間だけマンションで一人暮らしのはずだった。
そこに上原くんが入ってきて、結局同居になる。生活の時間割が重なる相手だから、学校での顔と家での顔の差がそのまま物語の燃料になる。
思春期の気まずさが恋に変わっていく温度がていねいなんだ。
橘ナナミ
なるほど。同じ学校だから隠しごとも限界があるし、ドキドキの量が多そうですね。
佐藤メバル
そこがこの巻の読みどころ。隠したいのに隠せない距離感が、恋の進み方を自然に加速させる。学校、家、そして卒業という期限——中学生の生活感がきちんと描かれているから、設定の荒唐無稽さが気にならない。
半年という期限があるのも、物語を引っ張る力になっているよ。
ママレード・ボーイ 2
吉住渉 著|集英社
¥748(税込)
高1の光希と同居することになった松浦遊は、学校での超人気者。そんな遊に自分勝手に敵対するライバルが現れたり、周囲がなぜか落ち着かない状況が続く。さらに光希の中学時代からの友人・銀太の様子もおかしくなっていく——という、関係が増えることで揺れる第2巻。同居という二人だけの設定に学校の人間関係が入り込み、人気者の隣にいる居心地の悪さが丁寧に描かれる。
こんな人におすすめ
人気者と同居する側の気持ちを読みたい人、恋の周辺にいる友人の変化を追いたい人、シリーズの転換点を確認したい読者に向く。第1巻を読んで続きが気になった人や、学校の人間関係が濃い物語を探している人にも。
良い点
- 銀太の変化が気になる
- 学校の人間関係が濃い
- 遊の二面性が見える
気になる点
- 第1巻の前提が要る
- 序盤は状況整理が多い
- 敵役の動機が単純
出版社
集英社
発売日
2008年05月16日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
遊くんが学校で超人気者って、同居してる側からすると嬉しいような、しんどいような……。
佐藤メバル
まさにその居心地の悪さがこの巻の軸。光希は家では遊と暮らしているのに、学校では彼が人気者として囲まれている。
そこに、自分勝手に敵対するライバルまで現れて、周囲が落ち着かなくなる。家と学校で立場が違うから、光希の気持ちが揺れるんだ。
さらに中学時代からの友人・銀太の様子もおかしくなり始める。恋の周辺が動くのが読みどころだよ。
橘ナナミ
銀太くん、幼なじみポジションですよね。そういう人の変化は切ないです。
佐藤メバル
そう、そしてその変化がこの先の物語を動かしていく。第2巻は、二人の関係に外の人が入ってくることで、光希が自分たちをどう見ているかに気づいていく巻なんだ。
人気者の隣に立つという設定を、こっけいにも切なくも描いている。続きを読むほど味が出るタイプだよ。
ご近所物語 1
矢沢あい 著|集英社
¥770(税込)
デザイナーを目指して矢澤芸術学院、通称ヤザガクに通う実果子。お隣さんで生まれてからずっと一緒の幼なじみ・ツトムが、同じ学校に入ってひとりで新しい世界を広げていくのを見て、実果子は淋しさを隠せなくなる——という同じ場所にいるのに離れていく感覚が主題。デザインという目標と、服や街の空気が重なり、明るさと切なさのバランスがいい。巻末の企画も楽しい。
こんな人におすすめ
幼なじみとの距離が変わる瞬間を味わいたい人、何かを目指し始めた友人を見ている側の気持ちを知りたい人、ファッションや街の描写を楽しみたい読者に向く。進路で悩んだ経験のある人ほど沁みるはず。
良い点
- 幼なじみの距離感が巧い
- 服や街の描写が楽しい
- 目標を持つ話として読める
気になる点
- 大きな事件は少なめ
- 感情の機微中心で好みが分かれる
- 途中巻で関係が複雑化
出版社
集英社
発売日
2011年05月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
幼なじみが同じ学校に入ったのに、ひとりで世界を広げていくのを見て淋しくなるって、ちょっと複雑です。
佐藤メバル
いいところを掴んだね。実果子はデザイナーを目指してヤザガクに通っている。ツトムはお隣さんで、生まれてからずっと一緒の幼なじみ。
同じ学校に入ったのに、ツトムがひとりで新しい世界を広げていくから、実果子は淋しさを隠せなくなる。同じ場所にいるのに距離が開く、その感覚がこの作品の核なんだ。
橘ナナミ
同じ場所にいるのに離れるって、いちばん切ないパターンかもしれません。
佐藤メバル
そう。だからこの巻は、恋というより「一緒にいた時間が変質していく」話として読める。服や街の描写も丁寧で、巻末にはご近所ファッションハンドブックもついている。
夢を追う人と見送る人、双方の気持ちが描かれているから、進路で悩んだ経験のある人ほど刺さると思うよ。
こどものおもちゃ 6
小花美穂 著|集英社
¥924(税込)
遭難事件がかたづき、ようやく想いが通じ合った紗南と羽山。長い片想いが実った紗南は、その反動で一気に色ボケ全開になり、ラブラブのイブを過ごす。ところが羽山の父のロサンゼルス転勤が決まって——という、幸せの絶頂に影が差す巻。浮かれ方が大きいほど、差し込む現実の重さが効く。同時収録の番外編や巻末特集も含め、作品の空気をまるごと味わえる。
こんな人におすすめ
恋が実った“その後”を読んでみたい人、浮かれた時間と転機を同時に味わいたい人、長期シリーズの転換点を押さえたい読者に向く。テンポのいい会話と笑いのある巻を探している人や、番外編も読みたい人にも。
良い点
- 成就後の浮かれ方が可愛い
- 転勤という現実が効く
- 同時収録と巻末特集つき
気になる点
- 途中巻で経緯が必要
- 落差が大きく好み分かれる
- ラブラブ描写が長め
出版社
集英社
発売日
2007年05月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
片想いが実った直後に、相手の父親の転勤が決まるの、タイミングが残酷すぎます。
佐藤メバル
そう、この巻はそれが主題なんだ。遭難事件がかたづいて、ようやく想いが通じ合った紗南と羽山。紗南は長い片想いが実った反動で、一気に色ボケ全開になって、ラブラブのイブを過ごす。
そこへ羽山の父のロサンゼルス転勤が決まる。幸せの時間が長いほど転機が重い構造になっていて、読者の心も一緒に揺れるんだ。
橘ナナミ
浮かれてる姿を先に見せるから、余計に効くんですね。構成がずるいです。
佐藤メバル
そこが巧いところ。しかもこの巻は恋の話だけで終わらない。同時収録に「おポンチモンキーズ」、巻末には特集「こどものおもちゃ箱」もついている。
幸福と現実を同じ巻に並べるバランス感覚は小花美穂の持ち味だと思う。明るい場面が多いぶん、後半の重さが効くよ。
姫ちゃんのリボン 1
水沢めぐみ 著|集英社
¥946(税込)
おてんば中学生の野々原姫子のもとに、魔法の国の王女エリカが現れ、1年間観察するかわりに他人に変身できるリボンをもらう。さっそく愛子お姉ちゃんに変身して外に飛び出すと、そこへ憧れの支倉先輩が現れて——という変身と初恋が同時に始まる第1巻。借り物の姿で近づくから、素の自分では言えない言葉が出てしまう。魔法の道具立てを少女の背伸びの比喩として読める。
こんな人におすすめ
変身ものを最初から読みたい人、なりたい自分と素の自分の差をテーマに感じたい人、短めの巻で気軽に始めたい読者に向く。魔法要素つきの学園ものが好きな人や、行動力のある主人公を応援したい人にも。
良い点
- 変身の使い方が巧い
- 第1巻で世界観が掴める
- 先輩との距離が丁寧
気になる点
- 魔法の説明は簡潔
- 変身の条件が単純
- 連載初期は絵柄が素朴
出版社
集英社
発売日
2003年01月17日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
変身できるリボンをもらって、いきなりお姉ちゃんに変身して外に飛び出す姫ちゃん、行動力がありすぎます。
佐藤メバル
その勢いがこの子の持ち味。姫子はおてんば中学生で、魔法の国の王女エリカから、1年間観察するかわりに他人に変身できるリボンをもらう。
変身した先で憧れの支倉先輩に出会ってしまう。借り物の姿だから踏み出せるという構造が、この作品のいちばんおいしいところなんだ。
橘ナナミ
素の自分じゃ言えないことを、変身した姿なら言えちゃう。それって背伸びですよね。
佐藤メバル
そう、まさに背伸びの物語として読める。第1巻でルールと登場人物が一通り出そろうから、ここから読み始めるのがいい。
変身という仕掛けが恋の速度を変えるのが面白くて、同じ時期の変身ヒロインものと読み比べても、姫子の場合は日常の延長線上にあるのが特徴だよ。
天使なんかじゃない 新装再編版 1
矢沢あい 著|集英社
¥748(税込)
郊外の新設高校を舞台に、生徒会役員に選出された冴島翠たちの恋と友情を描いた作品。少女漫画の金字塔として語り継がれてきた名作を、単行本から学年・学期の区切りで再編集した新装再編版の第1巻で、カバーは作者の描き下ろしイラスト。名場面や名台詞が生まれる前段階の、まだ何も知らない空気を味わえるのがこの入口の良さ。
こんな人におすすめ
名前だけ聞いたことがある古典を今から読む人、青春群像の出発点を押さえたい人、新装版の描き下ろしイラストも見たい読者に向く。矢沢あい作品を順番に読んでみたい人や、生徒会ものを読んだことのない人にも。
良い点
- 新装版で入りやすい
- 描き下ろしカバーが魅力
- 群像劇の出発点が読める
気になる点
- 原作既読には再編集
- 序盤は人物紹介が多い
- 当時の空気が前提になる
出版社
集英社
発売日
2019年06月25日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『天使なんかじゃない』って名前は知ってるんですけど、実は読んだことがなくて。新装版から今入っても大丈夫ですか?
佐藤メバル
入れるよ。舞台は郊外の新設高校で、生徒会役員に選ばれた冴島翠たちの恋と友情が描かれる。今回は単行本を学年・学期で区切って再編集した新装再編版で、カバーは作者の描き下ろし。
名場面の前段階、まだ何も起きていない空気から読めるのが、この入口の良さなんだ。
橘ナナミ
なるほど。名作の“前”から入れるのは贅沢ですね。描き下ろしイラストも気になります。
佐藤メバル
そこも嬉しいところ。長く語り継がれてきた作品だけど、区切りがはっきりしているから青春群像のリズムで読み進めやすい。
今読むと古びて見えないところがこの作品の強さで、当時を知らない読者にも素直に届くと思うよ。
アオハライド 1
咲坂伊緒 著|集英社
¥572(税込)
高1の双葉には、中学時代から忘れられない初恋の人「田中くん」がいる。中学のとき女子にはぶられた経験から、自分を偽って日々を過ごしている。そんな彼女の前に「田中くん」を思わせる男子が現れて——という、忘れられない過去が現在に侵入してくる第1巻。自分の殻をかぶったまま誰かと向き合う難しさと、制服の空気の瑞々しさが同居している。番外編も収録。
こんな人におすすめ
自分を偽って過ごした経験のある人、初恋を引きずる感覚を読みたい人、高校生活を丁寧に描いた作品を探している読者に向く。咲坂伊緒の作品を初めて手に取る人や、シリーズの入口を確認したい人にも。
良い点
- 主人公の葛藤が生々しい
- 再会の描き方が丁寧
- 番外編も収録
気になる点
- 序盤は内面描写が重い
- 誤解やすれ違いが続く
- 途中巻で関係が複雑化
出版社
集英社
発売日
2011年04月13日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
中学のときにはぶられた経験から自分を偽って過ごすって、双葉ちゃんの防衛、すごく分かります。
佐藤メバル
その感覚を持っている人ほど刺さる巻だよ。双葉は高1で、中学時代から忘れられない初恋の人「田中くん」がいる。
でも自分を偽る癖が抜けなくて、そのまま高校生活をやり過ごしている。そこへ「田中くん」を思わせる男子が現れる。
過去と現在が同じ場所に並ぶ瞬間が、この第1巻の核なんだ。
橘ナナミ
思い出の人と似た人に会うの、嬉しいような、都合がよすぎるような。複雑な気持ちになります。
佐藤メバル
その複雑さを咲坂伊緒は丁寧に描く。熱く青く、一生懸命にぶつかりあう高校生活のグラフィティとして、感情の湿度が高いのが特徴だね。
巻末には番外編も収録されている。自分の殻をどこで脱ぐかというテーマが、この先ずっと続いていくんだよ。
ストロボ・エッジ 8
咲坂伊緒 著|集英社
¥572(税込)
蓮が自分と変わらなく接してくれるのは、恋愛対象外の「友達」だから——そう気づいた仁菜子は、誰かと恋する蓮を見ているくらいなら「カノジョ」になれるようがんばると決意する。ところがその矢先に、安堂の中学時代の元カノ・真央が入学してくる。真央はかつて蓮と安堂の仲を離れさせた原因を作った相手で——決意と過去が同時に押し寄せる第8巻。
こんな人におすすめ
告白する前の揺れを長く味わいたい人、周囲の過去に振り回される恋を読みたい人、中盤で一気に感情が動く回を探している読者に向く。登場人物の心情の整理をていねいに追いたい人にもおすすめ。
良い点
- 仁菜子の決意が明確
- 真央という攪乱役が効く
- 関係の整理が丁寧
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 決断が後ろにずれる
- 三角関係の描き方が濃い
出版社
集英社
発売日
2010年03月12日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「友達だから優しい」って気づいてしまうの、いちばん堪えるやつです。そこから頑張ろうとする仁菜子ちゃん、強い。
佐藤メバル
その強さがこの巻の軸だね。誰かと恋する蓮を見ているくらいなら「カノジョ」になれるようがんばる、と決意した矢先に、安堂の中学時代の元カノ・真央が入学してくる。
しかも真央は中学時代、蓮と安堂の仲を離れさせた原因を作った相手。決意と過去が同時に来るから、仁菜子の気持ちが置き場所を失うんだ。
橘ナナミ
自分が頑張ろうとした瞬間に、相手の過去が入ってくるの、タイミングが悪すぎます……。
佐藤メバル
その悪さが物語の推進力になっている。真央の言葉を聞いた仁菜子がどの道を選ぶか、そこが第8巻の読みどころ。
他人の過去を材料にしないと決められるかどうか、というのがこのシリーズの誠実さで、そこを評価する読者も多いよ。
思い、思われ、ふり、ふられ 2
咲坂伊緒 著|集英社
¥484(税込)
由奈は、絵本の王子様以外で初めて男子を好きになる。相手は理央。けれど理央が告白できなかった相手は朱里だった。大事な秘密を教えてくれた理央に対して、自分の気持ちを隠すことはできないと考えた由奈は——という、思いの向き先が食い違う第2巻。恋を自覚した側と、影響を受けて動き出す側、両方の変化が並行して描かれる群像劇。
こんな人におすすめ
複数の視点で恋を読むのが好きな人、片想いの矢印が交差する物語を探している人、登場人物の変化を追いたい読者に向く。恋愛群像劇の入口に迷っている人や、すれ違いの量を楽しみたい人にも。
良い点
- 四つの視点が立体的
- 由奈の変化が丁寧
- 朱里の行動が話を動かす
気になる点
- 関係整理に集中する巻
- 途中巻で前提が必要
- すれ違いの量が多い
出版社
集英社
発売日
2016年02月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
好きになった相手が、別の人に告白できなかった人で、しかもその秘密を教えてくれた……自分の気持ちを隠せないって、確かにそうなります。
佐藤メバル
その素直さが由奈の良さなんだ。絵本の王子様以外で初めて男子を好きになった相手が理央。でも理央が告白できなかった相手は朱里。
大事な秘密を教えてもらったからこそ、隠すわけにいかないと考える。正直さが関係を動かすのがこの巻の面白さだよね。
橘ナナミ
そして由奈が変わっていく姿に、朱里も影響を受けて動き出すのがいいですね。
佐藤メバル
そこが群像として巧いところ。一人の変化が別の人を動かす連鎖が描かれていて、四つの思いが交差する構造になっている。
矢印の向きが揃わないまま進むからこそ、誰に感情移入するかで読み味が変わる。咲坂伊緒の作品を並べて読むと、この構成の巧さがよく分かるよ。
モエカレはオレンジ色(7)
玉島ノン 著|講談社
¥594(税込)
消防士の風間に想いを寄せる親友・紗弓のために、萌衣はWデートをセッティングする。蛯原と恋人気分を味わえて喜んでいたところ、彼からある「想い」を伝えられて——さらに消防王子・姫野ともお買い物デートをすることになる。親友の恋の手伝いが自分の恋を動かす構図が巧く、職業ものの空気と恋の浮き足立ちが同時に味わえる第7巻。
こんな人におすすめ
年上の相手に惹かれる感覚を読みたい人、親友の恋と自分の恋が絡む話が好きな人、消防士という設定に惹かれる読者に向く。連載中盤の恋の転換点を確認したい人や、デート場面の多い巻を探している人にも。
良い点
- Wデートの設定が楽しい
- 年上男性の描き方が丁寧
- 親友との関係も描かれる
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 恋の相手が複数で混乱
- 展開が急な箇所がある
出版社
講談社
発売日
2019年02月13日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
親友の恋を応援するためにWデートを組んだのに、自分の恋が動き出すの、ちょっとお得な展開すぎませんか?
佐藤メバル
でも実際そういう流れになるから、恋は面白いんだよね。萌衣は消防士の風間に想いを寄せる親友・紗弓のためにWデートをセッティングする。
蛯原と恋人気分を味わえて喜んでいたら、彼からある「想い」を伝えられる。応援のつもりが当事者になる、この切り替わりが第7巻の読みどころだよ。
橘ナナミ
しかも消防王子・姫野ともお買い物デートって、登場人物の圧がすごいです。
佐藤メバル
そう、オトナ男子とのドキドキが盛りだくさんの巻なんだ。消防士という職業の緊張感があるから、日常のデートの場面がより際立つ。
仕事と恋の温度差を楽しめるのがこの作品の持ち味で、年上の相手に振り回される感覚が読みたい人に向いているよ。
うるわしの宵の月(11)
やまもり三香 著|講談社
¥594(税込)
滝口宵は容姿端麗でスマートなふるまいから「王子」と呼ばれる女子。同じく「王子」と呼ばれる市村先輩とひょんなことからお試しの交際を始め、夏祭りで互いの気持ちを素直に打ち明けて正式に付き合う。クリスマスから年末まで幸せに過ごした二人だが、新学期に先輩が学校に来なくなり、家の事情で留学すると告げられ別れることに——幸福からの急降下が第11巻の核。
こんな人におすすめ
対等な関係の恋を読みたい人、遠距離や別離の局面を味わいたい人、二人が「王子」と呼ばれる設定の妙を楽しみたい読者に向く。連載の山場を押さえたい人や、静かな心情描写を好む人にもおすすめ。
良い点
- 対等な関係が気持ちいい
- 別離の描き方が丁寧
- 夏祭りの場面が印象的
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 重い展開が続く
- 再会まで時間がかかる
出版社
講談社
発売日
2026年09月11日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
女子も男子も「王子」と呼ばれてるって、なかなか見ない設定ですよね。対等な感じがしていいなあ。
佐藤メバル
そこがこの作品の一番おいしいところ。宵は容姿端麗でスマートなふるまいから「王子」と呼ばれていて、市村先輩も同じく「王子」と呼ばれている。
お試しの交際から始まって、夏祭りでお互い素直に気持ちを打ち明け、正式に付き合うところまで進む。対等だからこその不器用さが描かれているんだ。
橘ナナミ
そのあと、新学期に先輩が学校に来なくなって、留学で別れることになるんですね……落差がすごい。
佐藤メバル
そう、クリスマスから年末までの幸せをたっぷり見せてから、家の事情で学校をやめて留学するという知らせが来る。
第11巻は、幸せの蓄積が重さに変わる構成になっている。二人の絆が戻るのかどうか、そこが読みどころ。
やまもり三香の描く静かな心情の動きが、この巻でもしっかり効いているよ。
太陽よりも眩しい星 15
河原和音 著|集英社
¥572(税込)
平均より頑丈な女子・岩田朔英は、幼なじみの神城光輝とお付き合い中。いよいよ高校3年生に進級し、受験を意識し始めたところで、なんとクラスが離れてしまう。さらには転校生・阿波山という台風の目まで現れて——という、進路と恋が同時に動く第15巻。幼なじみだからこそ積み重ねてきた時間の意味が問い直される。
こんな人におすすめ
幼なじみとの恋が長く続く話を読みたい人、受験期の恋人関係をテーマにしたい人、クラス替えや転校生で揺れる時期を懐かしみたい読者に向く。等身大の高校生の空気を味わいたい人にもおすすめ。
良い点
- 受験という現実が効く
- 朔英の性格が魅力的
- 転校生が物語を動かす
気になる点
- 長期連載の途中巻
- 進路の話題が重め
- 三角関係の気配が出る
出版社
集英社
発売日
2026年09月25日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
幼なじみと付き合いながら高校3年生でクラスが離れるの、地味にきついですよね。しかも転校生まで来る。
佐藤メバル
その地味なきつさを丁寧に描いているのがこの巻。朔英は平均より頑丈な女子で、幼なじみの神城光輝とお付き合い中。
高校3年生に進級して受験を意識し始めたところでクラスが離れてしまう。さらに転校生・阿波山という台風の目が現れる。
環境の変化が二人の距離を測り直させるんだ。
橘ナナミ
なるほど。受験って自分たちだけの問題じゃないから、恋にも波及しますもんね。
佐藤メバル
そう。幼なじみだから積み重ねた時間は長いのに、進路という締め切りが来ると、その時間の意味を考えざるを得なくなる。
河原和音の作品は、等身大の高校生の空気を丁寧に描くのが持ち味。地に足のついた恋を読みたい人に向いているよ。
氷の城壁 5
阿賀沢紅茶 著|集英社
¥990(税込)
小雪はヨータのことが好きだと勘違いしているミナトが、二人を見ているうちに妙に自分の気持ちを自覚してしまう。一方、ミナトの気持ちにまったく気づいていない小雪は、中学時代の因縁の相手・五十嵐と遭遇して——という、思いの所在が本人たちより先に読者に分かる第5巻。勘違いと因縁が同時に動き、四人の距離が一気に縮まっていく。
こんな人におすすめ
複数人の思いが絡む青春ものを読みたい人、空回りする勘違いを面白がれる人、短めの巻で関係の変化を追いたい読者に向く。会話劇のテンポが好きな人や、感情の混線を楽しみたい人にもおすすめ。
良い点
- 勘違いの設計が巧い
- 四人の会話が弾む
- 因縁の相手が話を動かす
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 感情の整理が複雑
- 展開のテンポが速い
出版社
集英社
発売日
2023年10月04日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
自分の気持ちに気づくきっかけが“二人を見ていて”って、ずるいです。見せつけられて自覚するパターン、現実でもあります。
佐藤メバル
そういう瞬間ってあるよね。この巻では、小雪がヨータのことが好きだと勘違いしているミナトが、二人を見ているうちに自分の気持ちを自覚してしまう。
しかも小雪はそのミナトの気持ちにまったく気づいていない。読者だけが先に知る構図になっているのが巧いところなんだ。
橘ナナミ
そして小雪は中学時代の因縁の相手と遭遇するんですね。過去が急に入ってくる感じがします。
佐藤メバル
そこが第5巻の山。因縁の相手・五十嵐が入ることで、四人の距離が一気に縮まっていく。勘違いと因縁が同時に動くから、誤解が積み上がったまま関係だけが進む。
青春の混線をテンポのいい会話で読ませる、阿賀沢紅茶らしい巻だよ。
お姉ちゃんの翠くん 11
目黒あむ 著|集英社
¥572(税込)
翠くんと菖、どちらのことも選ばないと決めたスイ。そんな態度を、菖は「どちらにも本気で向き合っていない」と責めて、無理やりキスをしてくる。混乱するスイを、桃が突然旅行に誘って——という、決めないという選択が問われる第11巻。揺れるのではなく、揺れないと決めたのに揺さぶられる構図が独特で、責める側にも一理あるのがきつい。
こんな人におすすめ
三角関係の描き方に新しい形を求める人、選ばないと決めた主人公を追いたい人、目黒あむの感情描写を味わいたい読者に向く。中盤の転換点を押さえたい人や、正解のない人間関係を読みたい人にも。
良い点
- 揺れない選択の難しさ
- 対立の構図が生々しい
- 桃の介入が効果的
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 強い場面が含まれる
- 登場人物の好みが分かれる
出版社
集英社
発売日
2026年04月23日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
どちらも選ばないと決めたのに責められるの、理不尽なのに一理あるのがつらいですね。「どちらにも本気で向き合っていない」って言い切られると……。
佐藤メバル
そこがこの巻の核心。スイは翠くんと菖、どちらのことも選ばないと決めている。でも菖はその態度を「どちらにも本気で向き合っていない」と責めて、無理やりキスをしてくる。
決めないことは逃げなのかという問いが、そのまま物語の圧力になるんだ。
橘ナナミ
そこで桃が旅行に誘うのが、また空気を変えますね。逃げ場なのか、新しい展開なのか。
佐藤メバル
そう、混乱しているスイを連れ出す形になる。目黒あむは、登場人物の感情をきれいに整えないで描く人だから、読んでいてざわつく場面も多い。
誰も正しくない状態をそのまま見せる第11巻は、このシリーズの中でも輪郭がはっきりした巻だと思うよ。
ふたりで恋をする理由 7
ひろちひろ 著|集英社
¥484(税込)
純に突然抱きしめられ、動揺するうらら。そのことで頭がいっぱいのうちにクリスマス会が終わり、帰り際に他校の男子・オビから「本当のデートしてくれませんか」と誘われる。戸惑いながらも、きちんとオビ自身と向き合おうと考えてデートに臨む——という、一瞬で関係が変わる第7巻。相手を軽く扱わない誠実さが光る。番外編も収録。
こんな人におすすめ
告白の手前で気持ちが動く瞬間を読みたい人、誰かを雑に扱わない主人公を応援したい人、他校の相手との距離感を楽しみたい読者に向く。短めの巻で気持ちの切り替わりを味わいたい人にもおすすめ。
良い点
- うららの誠実さが魅力
- 揺れる描写が丁寧
- 番外編も収録
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 展開が急に動く
- 相手の心情は少なめ
出版社
集英社
発売日
2021年05月25日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
抱きしめられた動揺を引きずったまま、別の相手からの誘いにきちんと向き合おうとするの、地味にすごいことですよね。
佐藤メバル
そう、そこがうららの誠実さなんだ。純に突然抱きしめられて動揺している。そのことで頭がいっぱいのうちにクリスマス会が終わって、帰り際に他校の男子・オビから「本当のデートしてくれませんか」と誘われる。
自分の揺れを理由に相手を雑にしないと決めて、デートに臨むんだ。
橘ナナミ
「一瞬で、一言で気持ちが変わる」っていう惹句も刺さります。恋って本当にそういうものですもんね。
佐藤メバル
まさにその一瞬を描く巻。関係が変わる瞬間と、それに向き合う姿勢の両方が書かれていて、読み終わりに少し背筋が伸びる感じがある。
巻末には番外編も収録されている。迷っている自分を隠さない主人公の物語として読めるよ。
君がトクベツ 7
幸田もも子 著|集英社
¥484(税込)
新たなアイドル・来栖晴が、えみかと叶翔の恋に参戦してくる。えみかに気がある様子の晴を見て焦る叶翔は、本気モードでえみかを振り向かせようとするけれど、見事にすれ違ってしまう——という、第三者が入ることで縮まる距離と広がる誤解を描く第7巻。芸能界という設定があるから、恋の障害が仕事の都合と重なるのが面白い。
こんな人におすすめ
両片想いのじれったさが好きな人、芸能界を舞台にした恋を読みたい人、新しい恋敵が入る展開を楽しみたい読者に向く。明るいテンポのラブコメを探している人や、掛け合いの軽さを味わいたい人にも。
良い点
- 両片想いの温度が高い
- 芸能界設定が効く
- 晴という攪乱役が新鮮
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- すれ違いが長引く
- アイドル事情の説明は少なめ
出版社
集英社
発売日
2021年07月21日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ぜってー譲んねーけどな」って台詞、もう宣戦布告じゃないですか。芸能界ものだと恋敵も堂々としてますね。
佐藤メバル
そこがこの巻の勢い。新たなアイドル・来栖晴が、えみかと叶翔の恋に参戦してくる。えみかに気がある様子の晴を見て、叶翔は焦って本気モードになる。
ところが、振り向かせようとすればするほど見事にすれ違う。素直じゃないほど空回りする、両片想いの定番の切なさが詰まっているんだ。
橘ナナミ
なるほど。芸能界だから、仕事の都合も恋に絡んでくるんですね。
佐藤メバル
そう。アイドル同士だから、周囲の目や仕事の予定が恋の速度を変えてしまう。明るいテンポのラブコメだけど、障害が外側から来るところがこの作品の持ち味。
幸田もも子の描く可愛らしい掛け合いを楽しみながら読める巻だよ。
花野井くんと恋の病(6)
森野萌 著|講談社
¥550(税込)
ついに初めてのキスをしたほたると花野井くん。その帰り道、花野井くんは小学校の頃の「友達」に思いを馳せる。一方ほたるは、キスに戸惑いながらも花野井くんをもっと幸せにしたいと願うようになり、いい彼氏彼女になろうと新たに誓い合う。二人の周りには少しずつ人が増えていく——恋がわからない女子と愛が重すぎる男子の変化を見せる第6巻。
こんな人におすすめ
恋の自覚が遅い側の気持ちを読みたい人、重い愛情をどう扱うかを考えたい人、関係が進んだ後の二人を追いたい読者に向く。周囲の人が増える展開が好きな人や、あたたかく見守る読み味を求める人にも。
良い点
- キス後の心情が丁寧
- 二人の誓いが具体的
- 周囲の人物が増える
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 花野井の重さは好みが分かれる
- 進展はゆっくり
出版社
講談社
発売日
2020年06月11日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「恋がわからない女子×愛が重すぎる男子」って、組み合わせだけで読んでみたくなります。重すぎるってどれくらいなんですか?
佐藤メバル
そこは読んで確かめてほしいところだけど、第6巻ではその重さが少しずつ形を変えていく。ついに初めてのキスをした二人だけど、帰り道で花野井くんは小学校の頃の「友達」に思いを馳せている。
一方ほたるは、キスに戸惑いながらも、彼をもっと幸せにしたいと願うようになる。進んだ分だけ新しい問いが出る巻だね。
橘ナナミ
いい彼氏彼女になろう、って誓い合うのが、前向きだけどちょっと不器用で可愛いです。
佐藤メバル
そういう不器用さがこの作品の魅力なんだ。二人の周りには少しずつ人が増えていって、関係が閉じた世界ではなくなっていく。
恋を学んでいる途中の二人を、あたたかく見守るような読み味。森野萌の描く距離感が好きな人にはたまらない巻だよ。
今、恋をしています。 4
八田鮎子 著|集英社
¥484(税込)
冬、恋人たちの季節。柳生くんとさとみの交際は絶好調だが、バイト先の辰川先輩がさとみに興味津々で、柳生くんと勝負することになる。さらにお泊まりのクリスマスデートが迫り、いろんな意味で初めての夜が来る——という、恋の温度と緊張が同時に上がる第4巻。年上の先輩が入ることで、柳生くんの余裕のなさが露出する。
こんな人におすすめ
交際が始まった後の二人を読みたい人、デートの緊張感を味わいたい人、年上のライバルが出る展開が好きな読者に向く。静かな恋の積み重ねを好む人や、季節感のある恋の場面を探している人にもおすすめ。
良い点
- 初めての夜までの緊張
- 年上ライバルが効く
- さとみの視点が丁寧
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 展開はゆっくり
- 相手役の内面は少なめ
出版社
集英社
発売日
2021年05月25日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
お泊まりのクリスマスデートが迫って「いろんなイミで初めての夜」って、こちらまで緊張してきました。
佐藤メバル
そこがこの巻の読みどころ。冬で、柳生くんとさとみの交際は絶好調。でもバイト先の辰川先輩がさとみに興味津々で、柳生くんと勝負することになる。
先輩という余裕のある存在が入ることで、柳生くんの不器用さがよく見えるようになるんだ。恋の温度と緊張が同時に上がっていく。
橘ナナミ
なるほど。ライバルが出ると、相手の本気度が見えるってことですね。
佐藤メバル
そういうこと。八田鮎子は派手な事件で引っ張るより、二人の間の空気の変化を丁寧に描くタイプ。だからこそ、初めての夜に至るまでの緊張がじわじわ効いてくる。
積み重ねてきた時間が物語の強度になっている巻だよ。
テリトリーMの住人 8
南塔子 著|集英社
¥484(税込)
怜久の本気の告白に動揺して転びそうになった瑛茉を、とっさに守った怜久がケガをしてしまう。責任を感じた瑛茉は身の回りの世話を始めるが、それを見た宏紀は二人の関係が気になって仕方がない——という、偶然の出来事が関係を動かす第8巻。恋の明るい面と苦しい面を同時に置いてくるのが南塔子らしい。
こんな人におすすめ
三角関係の展開を丁寧に追いたい人、偶然の出来事で距離が縮まる展開が好きな人、苦さのある恋を読みたい読者に向く。連載中盤の転換点を押さえたい人や、じれったさを楽しめる人にも。
良い点
- 告白と事故が同時に起きる
- 宏紀の焦りが生々しい
- 導入の言葉が刺さる
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 三角関係の重さがある
- 展開がじれったい
出版社
集英社
発売日
2019年08月23日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
告白されて動揺して転びそうになるって、ドラマみたいですけど、そこで相手がケガするのは……責任、感じますよね。
佐藤メバル
そう、瑛茉も責任を感じて、怜久の身の回りの世話を始める。その様子を見た宏紀は、二人の関係が気になってしょうがない。
助けた側が弱くなるという流れが、三角関係を一気に動かすんだ。偶然の事故が、気持ちの順番を変えてしまう。
橘ナナミ
冒頭の「好きな人がいる。楽しい時もある。苦しい時もある。」って言葉も、シンプルなのに重いです。
佐藤メバル
そこが南塔子の巧さで、恋の両面を最初に置いてから物語に入る。第8巻は、怜久と宏紀の間で瑛茉のポジションがはっきり変わっていく巻。
誰かを世話することが好意に見える危うさも描かれていて、読みごたえがあるよ。
ハツコイと太陽 4
木下ほのか 著|集英社
¥506(税込)
好きな人の彼女になる、ぜったいにあきらめない——そう決めて、一条との距離が縮まることに心を躍らせた小春子は、勇気を出して再告白する。ところが返事はまさかの結果に。落ちこむ気持ちを秋葉に励まされながら、「あきらめないのが私」だと自分を見つけ、恋の舞台は小学生最後の運動会へ——小学生の恋の全力さが真っ直ぐ届く第4巻。
こんな人におすすめ
小学生の頃の全力の恋を懐かしみたい人、何度でも立ち上がる主人公を応援したい人、短く読み切れる作品も欲しい読者に向く。子どもに勧める本を探している人や、王道の展開を素直に楽しみたい人にも。
良い点
- 主人公の前向きさが気持ちいい
- 運動会の場面が印象的
- 読みきり短編も収録
気になる点
- 途中巻で前提が必要
- 展開は王道で予想しやすい
- 小学生の恋に好みが分かれる
出版社
集英社
発売日
2020年01月24日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
再告白して、返事がまさかの結果って……そっちか、ってなります。でもそこから運動会に行くのが前向きすぎる。
佐藤メバル
そこが小春子の良さなんだ。一条との距離が縮まることに心が躍って、勇気を出して再告白する。でも返事は思っていた形と違う。
落ちこむ気持ちを秋葉に励まされながら、「あきらめないのが私」だと自分を見つけ直して、小学生最後の運動会へ向かう。
何度転んでも走り出す、その繰り返しが物語の芯なんだ。
橘ナナミ
「あきらめないのが私」って、自分の型を自分で見つけるのがすごくいいですね。
佐藤メバル
そう。恋のキュンが詰まった巻だけど、根っこにあるのは自己肯定の話なんだよ。巻末には読みきりの「きみに愛を花束を」も収録されていて、短くても満足感がある。
まっすぐさが武器になると教えてくれる作品だよ。
誰か夢だと言ってくれ 1
みっしぇる 著|集英社
¥693(税込)
低身長が悩みの高校生・星川小夜は、片想いしていた女子が高身長イケメン・真柴にフラれる現場を目撃してしまう。勝負を挑むもののことごとく惨敗し、真柴に「可愛い」と言われて余計にムカつく。そんな中、誰かに抱きしめられる不思議な夢を見るようになって——負け続けの主人公が夢から再起動する第1巻。
こんな人におすすめ
背の高さなどコンプレックスを抱えた経験のある人、負けても食い下がる主人公を応援したい人、第1巻から新しいシリーズに入りたい読者に向く。不思議な夢の使い方が気になる人や、落差の大きい展開を楽しみたい人にも。
良い点
- 主人公の負けっぷりが可笑しい
- 夢の使い方が斬新
- 番外編も収録
気になる点
- 設定の飲み込みが必要
- 第1巻で関係は未整理
- 落差の大きい展開
出版社
集英社
発売日
2022年03月25日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
片想いの相手が別の人にフラれる現場を見てしまうの、スタート地点がもう切ないです。しかも高身長イケメンって。
佐藤メバル
しかもそこで終わらないんだよね。小夜は低身長が悩みで、真柴に勝負を挑むけどことごとく惨敗。「可愛い」と言われて余計ムカつく。
そんな彼女が、誰かに抱きしめられる不思議な夢を見るようになる。現実では負け続けなのに、夢だけが近いというねじれが、この第1巻の面白さなんだ。
橘ナナミ
夢の中の出来事が恋に絡むって、どう進むんだろう。想像がつかないです。
佐藤メバル
そこがみっしぇるの狙いだろうね。現実の勝ち負けと夢の手触りが並行して描かれるから、読者はどちらが本音なのかを考えながら読むことになる。
コンプレックスが物語の入口になっていて、背の高さや低さを気にした経験のある人ほど、小夜の気持ちが近いと思うよ。
愛しのキテレツ 3
優月うめ 著|集英社
¥594(税込)
幼なじみの恋磨は、少女まんが誌「まりん」で活躍する人気まんが家。「恋したことあるの?」と萌子が恋磨の恋心に踏み込んだところから、奇天烈な幼なじみとの恋がついに動き出す。そして演劇祭で大事件が勃発して——という、少女まんがを描く人と、その隣にいる人の物語が着地する最終巻。入れ子の構造が効いている。
こんな人におすすめ
幼なじみものの完結まで読みたい人、漫画家を主人公の側から見る話が好きな人、短めのシリーズを一気に読む読者に向く。演劇祭という舞台が好きな人や、少女まんがらしい青春を味わいたい人にもおすすめ。
良い点
- 幼なじみの関係が着地
- 漫画家という設定が効く
- 最終巻できれいにまとまる
気になる点
- 途中巻の前提が必要
- 完結巻なので新規は入りにくい
- 演劇祭の展開は好みが分かれる
出版社
集英社
発売日
2026年02月25日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
幼なじみが少女まんが誌で活躍する人気まんが家って、設定がすごい。恋する側も照れるでしょうね。
佐藤メバル
そこがこの作品の面白さ。恋磨は少女まんが誌「まりん」で活躍する人気まんが家で、萌子が「恋したことあるの?」と彼の恋心に踏み込むところから物語が動き出す。
まんがを描いている人が恋をするとどうなるか、という入れ子の仕掛けが効いているんだ。描く側と描かれる側が重なる感じが楽しいよ。
橘ナナミ
そして演劇祭で大事件が起きて、最終巻になるんですね。締めくくりにふさわしい舞台です。
佐藤メバル
そう、奇天烈な幼なじみとの恋がついに動き出して、演劇祭で大きく転がる。少女まんがな青春ラブコメとして、感動を残して終わる巻だよ。
積み重ねた奇天烈さが最後に効いてくるから、最初から順に追ってきた人ほど余韻が深いと思う。
「ラブコメ」と「恋愛漫画」の線引き、そして笑いの質という分類軸
橘ナナミ
そもそもなんですけど、「ラブコメ」と「恋愛漫画」って何が違うんですか? 調べても、はっきりした定義が出てこなくて。
佐藤メバル
業界でも統一された定義はないんだ。ただ、編集の現場で使うときは、笑いが物語を前に進める装置になっているかどうかを目安にしている。恋の障害が笑いで転がっていくのがラブコメ、障害そのものをじっくり描くのが恋愛漫画、という分け方だね。たとえば『ママレード・ボーイ』は、親の都合で同居することになった光希と遊の関係を軸に、遊に敵対するライバルが現れたり、友人・銀太の様子がおかしくなったりと、周囲が落ち着かない状況が次々起こる。笑いとドラマの配合が絶妙で、両方の顔を持っている。
橘ナナミ
なるほど。じゃあ「笑いの質」で分類すると、いくつくらいに分けられますか?
佐藤メバル
大きく四つかな。ギャグ全開——『愛しのキテレツ』のように、少女まんが誌で活躍する幼なじみの奇天烈さが原動力になるタイプ。勘違い——『氷の城壁』のように、誤解が関係を動かすタイプ。すれ違い・じれったい——『思い、思われ、ふり、ふられ』のように、四人の想いが交差するタイプ。そして溺愛・ギャップ——『花野井くんと恋の病』のように、愛情の重さそのものが魅力になるタイプだ。
橘ナナミ
「重い愛」がトレンドになる背景って、何かあるんでしょうか。
佐藤メバル
読者が「安心して重さを受け取れる」ようになったんだと思う。現実だと重い愛情は負担になりうるけれど、漫画の中ならこちらが傷つかずに、重さを重さのまま眺めていられる。だから『花野井くんと恋の病』のように、重さを欠点にせず関係を築いていく話が支持されるんだろうね。
少女誌ラブコメの系譜と、少年誌ラブコメとの棲み分け
橘ナナミ
少女漫画のラブコメって、昔と今で何か変わってきたんですか?
佐藤メバル
大きく変わってきたよ。初期は『はいからさんが通る』のように、恋も結婚も自分で選びたいという意思決定そのものがテーマだった。そこから『ときめきトゥナイト』『姫ちゃんのリボン』のように、魔法やファンタジーの仕掛けを借りて恋を動かす時代が来る。そして『天使なんかじゃない』『ご近所物語』のように、恋愛を友情や進路、自己形成とセットで描く流れが定着した。今は『うるわしの宵の月』や『お姉ちゃんの翠くん』のように、関係の手触りそのものを丁寧に描く作品が増えている。恋の障害が「家柄」から「自分の気持ち」へ移ってきたということだね。
橘ナナミ
少年誌のラブコメとは、そこが違うんでしょうか。
佐藤メバル
少年誌のラブコメは、読者が「どうなるか」を追う構造になりやすい。少女誌は、ヒロインがどう変わるかが主眼になる。だから少女漫画のラブコメは、相手を選ぶ話であると同時に、自分を選び直す話でもあるんだ。『ハツコイと太陽』で、小春子が勇気を出して再告白し、思いがけない返事を受け、それでも「あきらめないのが私」だと自分を見つけ直す流れは、まさにその典型だね。
橘ナナミ
告白して終わりじゃなくて、告白のあとに自分がどうなるかの話なんですね。
佐藤メバル
そう。だから完結した作品を読み返すと、当時と違う感想が出てくる。『こどものおもちゃ』で想いが通じ合ったあとの紗南が、その反動で一気に浮かれてしまう場面なんかも、10代で読むのと大人になって読むのでは受け取り方が変わると思うよ。
ラブコメが苦手な人、大人になって読み返す人のための入口
橘ナナミ
実は私、ベタベタした恋愛が延々と続く話は少し苦手で……そういう人でも入れる作品はありますか?
佐藤メバル
あるよ。恋愛が主軸じゃない作品から入るのがおすすめだ。『テリトリーMの住人』は、好きな人がいることの楽しい部分と苦しい部分を並べて描いていて、怜久と宏紀をめぐる三角関係の動きそのものが読みどころになる。『グッドモーニング・コール』も、ひとり暮らしのはずが同じ中学の上原くんと同居することになる、という状況の可笑しさが先に立つ。恋の甘さより「どうなっちゃうの」という興味で引っ張られるタイプだね。
橘ナナミ
同居、多いですね……! 漫画ならではの設定というか。
佐藤メバル
はは、そう。日常の延長にある非日常を用意するのが、少女漫画の古典的な仕掛けなんだ。
橘ナナミ
あと、大人が読むなら何を気をつければいいですか。昔読んだ作品を読み返すのもありですか?
佐藤メバル
全然あり。むしろ『天使なんかじゃない』や『アオハライド』のような作品は、当時は気づかなかった脇の人物の感情が見えてくる。ただしネタバレを避けたいなら、あらすじの後半や最終巻の感想は読まずに、第1巻の試し読みから入るのが安全だよ。連載中の作品は完結を待たずに読める反面、途中で止まる可能性もある。完結済みを優先したいなら、全巻そろっている作品から選ぶといい。口コミは支持が二分されることも多いから、賛否の理由まで読んでから判断するといいね。
橘ナナミ
予算の目安はどう考えればいいでしょう。全巻買うとそれなりの額になりますよね。
佐藤メバル
掲載している作品は1冊あたり数百円台のものが中心だから、巻数×1冊の価格でざっくり計算して、まず第1巻だけ買う、次に読み放題で続きを試す、という段階を踏むのがおすすめだ。一気買いの前に、試し読みで絵と会話のテンポを確かめておくと無駄が減るよ。
よくある質問
少女漫画のラブコメと恋愛漫画は何が違うの?
橘ナナミ
少女漫画のラブコメと恋愛漫画は何が違うのについて教えてください。
佐藤メバル
明確な定義はありませんが、恋の障害が笑いで転がっていくのがラブコメ、障害そのものをじっくり描くのが恋愛漫画、と編集の現場では使い分けています。『ママレード・ボーイ』のように笑いとドラマの両方を持つ作品も多く、境界はグラデーションです。どちらに分類されるかより、自分が今どちらを読みたいかで選ぶのが実用的です。
ラブコメが苦手でも読みやすい少女漫画はある?
橘ナナミ
ラブコメが苦手でも読みやすい少女漫画はあるについて教えてください。
佐藤メバル
恋愛以外の読みどころがある作品から入るのがおすすめです。『グッドモーニング・コール』は同居という状況の可笑しさ、『テリトリーMの住人』は三角関係の動きそのものが推進力になります。甘さより「どうなるの」で引っ張られるタイプを選ぶと、恋愛描写が前面に出ていなくても読み進められます。
完結済みで一気読みできるおすすめラブコメは?
橘ナナミ
完結済みで一気読みできるおすすめラブコメはについて教えてください。
佐藤メバル
完結状況は版や配信状況によっても変わるので、購入前に最新の刊行状況を確認してください。一気読みしやすいのは、『天使なんかじゃない』新装再編版のように学年や学期で区切って再編集された構成のものです。全巻そろっているかを最初に確かめるのが、途中で止まらないためのコツです。
大人(30代・40代)が読んでも楽しめる少女漫画ラブコメは?
橘ナナミ
大人(30代・40代)が読んでも楽しめる少女漫画ラブコメはについて教えてください。
佐藤メバル
『ご近所物語』で実果子が幼なじみのツトムに置いていかれる淋しさを隠せない場面や、『こどものおもちゃ』で想いが通じたあとに浮かれてしまう紗南の描写は、大人になってからのほうが刺さります。10代のときとは違う人物に感情移入するのが、大人読みのいちばんの面白さです。
電子書籍・紙・読み放題サービスはどれがお得?
橘ナナミ
電子書籍・紙・読み放題サービスはどれがお得について教えてください。
佐藤メバル
まず試し読みで絵柄とテンポを確認するのが前提です。描き下ろしカバーの新装版などは紙で手元に置く価値があり、巻数が多い作品を試すなら電子や読み放題が現実的です。好きな作品だけ紙、探すときは電子という併用が、いちばん無理のない形です。
全巻一気買いの予算の目安はどれくらい?
橘ナナミ
全巻一気買いの予算の目安はどれくらいについて教えてください。
佐藤メバル
掲載している作品は1冊あたり数百円台のものが中心なので、巻数×1冊の価格でおおまかに計算できます。いきなり全巻ではなく、第1巻から始めて続きを読み放題で試す順番にすると、合わなかったときの出費を抑えられます。
実写化・アニメ化されたラブコメで原作も面白い作品は?
橘ナナミ
実写化・アニメ化されたラブコメで原作も面白い作品はについて教えてください。
佐藤メバル
『はいからさんが通る』は新装版の刊行に合わせて劇場版の新作アニメ化が告知され、あわせて話題になりました。映像化されると見せ場の置き方が変わることが多いので、原作では心情がどう描かれているかを確かめながら読むと、二度楽しめます。
男性でも楽しめる少女漫画ラブコメはある?
橘ナナミ
男性でも楽しめる少女漫画ラブコメはあるについて教えてください。
佐藤メバル
恋の駆け引きより関係性の変化を追う作品が入りやすいです。『誰か夢だと言ってくれ』は低身長に悩む星川小夜が真柴に勝負を挑んで惨敗する関係から始まり、『氷の城壁』は勘違いが四人の距離を縮めていきます。主人公の悩みが恋以外にもある作品なら、性別を問わず読みやすいはずです。
まとめ
橘ナナミ
今日のお話、けっこう目から鱗でした。ラブコメって「甘い話」の総称だと思っていたんですけど、笑いの質も、巻数の設計も、ヒロインが能動的かどうかも、ぜんぶ選ぶ材料になるんですね。
佐藤メバル
そう。だから「おすすめを教えてください」と聞かれたら、まず相手の今の気分を聞くようにしている。同じ人でも、疲れているときに読みたい本と、元気なときに読みたい本は違うからね。
橘ナナミ
私だったら……今は論文で疲れているので、まずは『太陽よりも眩しい星』みたいに穏やかなものから入ってみたいです。
佐藤メバル
いい選択だと思う。幼なじみと付き合っている二人が、進級してクラスが離れたり、転校生が現れたりする——大きな事件ではなく、日常の変化を追っていく話だから、疲れているときほど沁みるよ。
橘ナナミ
逆に、元気なときに読むなら?
佐藤メバル
『はいからさんが通る』みたいに、紅緒が声を張って突き進む作品がいいね。読んでいるこちらまで背筋が伸びる。
橘ナナミ
なんか、ラブコメの棚って、自分の気持ちの温度に合わせて選べる道具箱みたいですね。
佐藤メバル
近いかもしれない。少女漫画のラブコメは、恋の答えを教えてくれる本ではなくて、心が動いた瞬間をはさんでおくための栞なんだ。今日は「キュンとした」という栞をはさむ。数年後に同じ頁を開いたとき、その日の自分の気持ちまで一緒に戻ってくる。だからどの一冊も無駄にならないし、何度でも読み返せるんだよ。
