民話を楽しめる本のおすすめ人気ランキング21選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、「民話 本 おすすめ」で調べたら、桃太郎やスーホの白い馬みたいな絵本から、遠野物語みたいな古典まで、ぜんぶ同じ「民話」という言葉で並んでいて……どこから見ればいいのか分からなくなっちゃいました。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。民話の本は、絵本と昔話集と研究書が同じラベルでくくられているから、いきなり全部を眺めると迷うんだ。書店員だったころも、この棚は毎日のように質問されたよ。まずは読み聞かせ用・自分で読む用・研究用の3つのレイヤーに分けて考えると、景色がすっと変わる。
橘ナナミ
3つ! たとえば読み聞かせなら「てぶくろ」、自分で読むなら「龍の子太郎」、研究なら「遠野物語」という感じですか?
佐藤メバル
その分け方でいい。ただ、同じ一冊が年齢でレイヤーを変えることもある。「スーホの白い馬」は小さな子に読んであげる絵本だけれど、大人が読み返すと、王さまに取り上げられた白馬がスーホのもとへ帰ろうとする場面の重さがまったく違って見える。だから今日は、選ぶときの軸を一つずつ並べていこう。
民話を楽しめる本の選び方
目的別:読み聞かせ/自分で読む/研究・学び直し
橘ナナミ
目的別だと、具体的にどう選び分けるんですか?
佐藤メバル
読み聞かせなら、声に出したときの気持ちよさが最優先。「きんたろう」は本文が「むかしーあしがらやまに」で始まる語りの口調のままで、読み手が自然に節をつけられる。「よみきかせ日本昔話 ももたろう」は読み聞かせに特化したシリーズで、巻末には短編「とりのみじいさん」と、民話研究に携わっていた石崎洋司さんによる解説が付いている。自分で読む用なら「こども世界の民話(上)」のように小学校低学年向きと示された昔話集、研究や学び直しなら「民話の世界」や「ペローの昔話集」だね。
年齢・発達段階別:幼児・小学生・中高生・大人
橘ナナミ
年齢で分けると、境目はどこですか?
佐藤メバル
幼児から低学年は、筋より音と絵で持っていく段階。「てぶくろ」は雪の上の手袋にネズミが住みこみ、カエルやウサギやキツネが次々やってきて、とうとうはじけそうになる。この繰り返しと動物たちの表情だけで十分ひきつけられる。中学年あたりから世界が広がって、国名つきの話が面白くなる。中高生から大人は「遠野物語」や「アイヌ民話集」のように、話そのものよりなぜこの話が残ったのかを考えながら読める時期だ。
形式別:絵本・昔話集・短編集・研究書
橘ナナミ
絵本と、何編も入った昔話集は、やっぱり別ものですか?
佐藤メバル
別の道具だと考えたほうがいい。絵本は一話をじっくり、昔話集はたくさん味見する。「わらしべ長者」と題された一冊は、表題作だけでなく「かにむかし」から「天人女房」まで二十余編を収めた短編集で、一話ずつが短い。逆に「スーホの白い馬」は、モンゴルに伝わる馬頭琴の由来を横長大判の画面いっぱいに描いた絵本で、これはもう、絵本という形式でしか成立しない。
範囲別:日本の民話/世界の民話/地域限定/テーマ特化
橘ナナミ
日本の話と世界の話、どちらから入るべきでしょうか。
佐藤メバル
好みでいいけれど、比較したいなら世界の民話集が効く。「中国民話集」には「さるかに合戦」「絵姿女房」のように日本の民話と重なる話が入っていて、かつて柳田国男が中国を「驚くほど豊富な昔話の貯蔵地」と呼んだことにも触れられている。「ラテンアメリカ民話集」は動物譚・本格民話・笑話・形式譚という分類で並び、同じ話型が世界でどう変奏されるかまで追える。地域を絞るなら「アイヌ民話集」「韓国の民話伝説」「カリブ海アンティル諸島の民話と伝説」、テーマ特化なら「世界の犬の民話」「日本の仏教民話集」という選び方もあるよ。
評価軸別:語りのリズム・訳の質・挿絵・情報量
橘ナナミ
同じ話なのに本によって印象が違うのは、何が違うからでしょう?
佐藤メバル
語り・訳・絵・注の量、この4つだね。「命の水 チェコの民話集」は、テンペラ画を描いた画家がブラティスラヴァ世界絵本原画展でグランプリを受賞している人で、絵の力で物語の温度が変わる。「カリブ海アンティル諸島の民話と伝説」は挿絵が62点入っていて、しかも「民話は夜のもの。昼間に語ってはいけない」という土地の語りの作法から始まる。文章と注を読み比べたいなら、解説の厚い「ペローの昔話集」のような研究書が向いている。
入手性別:定番ロングセラー・現行版・受注生産・復刊
橘ナナミ
昔の本だと、書店に置いていないこともありますよね。
佐藤メバル
そこは大事なところ。まず定番のロングセラーから当たる。「スーホの白い馬」や「てぶくろ」のように読み継がれてきた絵本は今も手に入りやすいし、「龍の子太郎」のように新装版として出ている本も安心だね。一方、発売から年数が経った民話集は在庫が薄いことがある。そんなときは、注文を受けてから刷るPOD版の「フランス妖精民話集」や「浦島太郎は世界各地にいた!?」のように、いま残っている形を探す、図書館で読む、という手もある。「絶版かどうか」より「今どの形で手に入るか」で見ていくといい。
民話を楽しめる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、21冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
民話を楽しめる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
こども世界の民話(上)
内田莉莎子 著|実業之日本社
¥2,029(税込)
世界の民話をこれから読む小学校低学年にちょうどいい入口です。トリニダード・トバゴの「やぎとライオン」、タイの「さるのきも」、エストニアの「とまらないくしゃみ」など、国名でくくらず一話ずつ独立した短い話が並び、読み聞かせでも一人読みでも進めやすい。同じ内田莉莎子の仕事でも、低学年が最後まで飽きずに聞ける長さに整えられているのが核で、「ねこが、ごはんのあとで顔をあらうわけ」のような“なぜ”の話が動物への興味を引き出します。各国を概説する民話ガイドとは違い、まず物語そのものを味わわせる設計です。
こんな人におすすめ
読み聞かせを始めたい保護者、小学校低学年の子に世界の話を渡したい人、短い一話で寝る前の時間を区切りたい家庭、外国の文化に物語から触れたい子。一話が短いので集中が続きにくい子でも最後まで聞きやすく、音読の練習台にも向きます。
良い点
- 一話が短く読み聞かせしやすい
- 外国の文化に物語から触れられる
- 動物の『なぜ』話が豊富
気になる点
- 低学年向けで大人にはやさしすぎる
- 上巻のみで世界全体は網羅しない
- 深い解説や出典は期待しない方がよい
出版社
実業之日本社
発売日
1995年12月06日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
民話の入門って、まず何から読めばいいんでしょう? いきなり外国の分厚い民話集はハードルが高くて、うちの親戚の子に渡すのも迷ってしまいます。
佐藤メバル
いい質問だね。まず低学年の子に渡すならこれ。トリニダード・トバゴの『やぎとライオン』、タイの『さるのきも』、エストニアの『とまらないくしゃみ』……国も話の種類もばらばらで、一話ずつが短い。
だから寝る前の一話に向くんだ。日本の昔話に慣れた子が『外国にもこんな話があるんだ』と気づく入口になるよ。
橘ナナミ
『ねこが、ごはんのあとで顔をあらうわけ』って、理由を説明する話なんですね。そういう“なぜ”の話が入っているのが面白いです。
佐藤メバル
そう、そこが民話の醍醐味。世界中どこでも、動物の習性に物語で理由をつけたがる。リトアニアの猫の話と日本の言い伝えを見比べると、文化の違いがはっきり見えるよ。
内田莉莎子の再話は声に出して気持ちいいから、まずは読み聞かせで試してみて。
遠野物語
柳田国男 著|集英社
¥572(税込)
岩手・遠野に伝わる伝説や昔話を、柳田国男が簡潔な文体で綴った日本民俗学の出発点です。雪女、ザシキワラシ、山男、空飛ぶ天狗、川にひそむ川童——恐ろしいが、時には人に利益をもたらす神々の話が淡々と並びます。この版は『遠野物語』だけでなく『雪国の春』『清光館哀史』『木綿以前の事』『酒の飲みようの変遷』などを収録し、暮らしの記録としても読める構成。解説と鑑賞が付くので、注釈なしで読み進めたい人にも手に取りやすい一冊です。
こんな人におすすめ
日本の怪異や伝承に関心がある人、民俗学の入口を押さえたい学生、短い断章を少しずつ読みたい読者、柳田の文章そのものを味わいたい人。解説と鑑賞があると助かる初学者にも向きます。
良い点
- 簡潔な文体で読み進めやすい
- 遠野物語以外の随筆も収録
- 解説と鑑賞で背景が掴める
気になる点
- 断章形式で物語の起伏は少ない
- 古い語彙に慣れが必要
- 怪異の解釈は読者に委ねられる
出版社
集英社
発売日
1991年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『遠野物語』って名前は聞いたことがあるんですけど、小説みたいな物語なんですか? それとも資料集なんでしょうか。
佐藤メバル
小説じゃなくて、聞き書きの断章の集まりだよ。遠野という土地に伝わる伝説や昔話を、柳田国男が簡潔な文章で書き留めていった。
雪女、ザシキワラシ、山男、空飛ぶ天狗、川にひそむ川童——恐ろしいのに、時には人に福をもたらす神々の話が淡々と続く。
書店員時代、これを読んで実際に遠野まで行ったお客さんがいたなあ。
橘ナナミ
そんなに引き込まれるんですか。この版だと『遠野物語』以外の文章も入っているんですね。
佐藤メバル
そう、『雪国の春』『清光館哀史』『木綿以前の事』なんかも一緒に入っている。暮らしの記録として読むと、怪異譚の裏側にある当時の生活が見えてくるよ。
解説と鑑賞も付いているから、初めての人でも置いていかれにくい。
スーホの白い馬
大塚勇三 著|株式会社 福音館書店
¥1,650(税込)
モンゴルの草原で少年スーホが拾った白い馬を育て、競馬の大会で優勝するものの王さまに取り上げられ、馬はスーホのもとへ逃げ帰ろうとする——そこで生まれたのが楽器・馬頭琴という由来の物語です。赤羽末吉の横長大判の画面が、草原の広がりと馬の疾走をそのまま見せてくれます。昔話絵本は再話が引き締まっているものが多いけれど、本作は悲しみと誇りがまっすぐ残る点でひときわ。読み聞かせで言葉に詰まる大人が後を絶ちません。
こんな人におすすめ
幼稚園から小学校低学年の読み聞かせ、楽器や馬が好きな子、モンゴルという土地に物語から触れたい家族、別れや旅立ちの場面で一冊を選びたい人。感想を言い合いたくなる絵本として、親子の対話にも向きます。
良い点
- 大判の画面で草原を体感できる
- 馬頭琴の由来が物語で分かる
- 読み聞かせで反応が返ってくる
気になる点
- 結末は悲しく小さい子には重い
- 文章量が多く読むのに時間がかかる
- 国や時代の注釈は最小限
出版社
株式会社 福音館書店
発売日
1967年10月03日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『スーホの白い馬』って、小学校の教科書で読んだ記憶がうっすら……。あれって馬頭琴の話だったんですね。
佐藤メバル
そう、モンゴルに伝わる楽器・馬頭琴の由来になった物語だよ。少年スーホが拾って育てた白い馬が、王さまの競馬で優勝する。
でも王さまに取り上げられて、馬はスーホのもとへ帰ろうとする——赤羽末吉の横長の大判画面が、その走りを本当に気持ちよく見せてくれるんだ。
橘ナナミ
横長って、そんなに効くものなんですか? 普通の絵本と何が違うんでしょう。
佐藤メバル
草原は横に広いからね。見開きいっぱいに地平線が伸びると、子どもは自然に目で馬を追いかける。書店員時代、読み聞かせの最後に黙ってしまう子が何人もいたのを覚えているよ。
悲しいけれど、残るのは悲しみだけじゃない。馬頭琴という音に物語が残るんだ。
てぶくろ
エウゲーニー・M・ラチョフ 著|株式会社 福音館書店
¥1,210(税込)
雪の上に落ちていた手袋にネズミが住みこみ、そこへカエル、ウサギ、キツネが次々やってきて、とうとうはじけそうになる——積み上がり型の民話絵本です。話の型は単純ですが、ラチョフが描く動物たちの表情がひとつとして同じでなく、入るたびに画面の圧が増していく。繰り返しとクライマックスの気持ちよさでは、低年齢向け民話絵本の代表格。うちだりさこの訳文も耳に残るリズムで、暗記して一緒に声を出す子も少なくありません。
こんな人におすすめ
二歳から四歳ごろの読み聞かせ、繰り返しを喜ぶ子、冬の季節の一冊を探している家庭、幼稚園や保育園での集団読み聞かせ。「まだ入るの?」と笑いながら聞けるので、本が苦手な子の最初の一冊にも向きます。
良い点
- 繰り返しの構造で小さい子が夢中に
- 動物の表情が細かく描き込まれている
- 冬や雪の導入として使いやすい
気になる点
- 物語の展開はシンプル
- 大きい子には短すぎる
- はじける結末に驚く子もいる
出版社
株式会社 福音館書店
発売日
2008年04月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『てぶくろ』って、手袋に動物が入っていくだけの話ですよね。なぜそんなに長く読まれているんですか?
佐藤メバル
そこなんだよね。ネズミが住みこみ、カエル、ウサギ、キツネと次々やってきて、とうとうはじけそうになる。
型は単純だけど、ラチョフの描く動物の表情が一匹ごとに違う。入るたびに画面がぎゅうぎゅうになっていく圧が、子の笑いを引き出すんだ。
橘ナナミ
あ、絵そのものが面白さなんだ。それなら小さい子でも十分楽しめますね。
佐藤メバル
そう。暗記して一緒に言っちゃう子もいる。うちだりさこの訳も耳に残るからね。書店の読み聞かせで、これだけは毎回必ず笑い声が起きた。
冬の定番として、ぜひ一度手に取ってみて。
きんたろう
さねとうあきら 著|教育画劇
¥1,320(税込)
「むかし——あしがらやまに きんたろうという おとこのこが おった。おとうは てんのかみなりで おっかあは やまんばだった」——この出だしの強さがすべてです。さねとうあきらの語り口は標準語に整えず、声に出したときの勢いを優先している。そこへ田島征三の絵が重なり、雷の子と山姥の子という血筋の荒々しさが正面から描かれます。優しい昔話絵本が多いなかで、荒さを残した一冊として際立つ。読み聞かせると声が自然に大きくなるタイプです。
こんな人におすすめ
昔話をなめらかにしすぎない形で読ませたい人、体を動かすのが好きな子、力強い絵に惹かれる子、そして声を張って読みたい大人。保育や低学年の読み聞かせで、場の空気を変えたいときにも向きます。
良い点
- 出だしの語りが強烈に耳に残る
- 田島征三の絵に力がある
- 荒々しさを残した珍しい昔話絵本
気になる点
- やわらかい絵本を好む子には迫力が強い
- 標準語に整った文章ではない
- 短くあっさり終わる
出版社
教育画劇
発売日
1996年08月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『きんたろう』って、雷と山姥の子なんですよね。この絵本、出だしの言葉がすごくぶっきらぼうで驚きました。
佐藤メバル
そこがこの本の値打ちでね。標準語に整えず、語りの勢いをそのまま残している。さねとうあきらの言葉と田島征三の絵が同じ方向を向いているから、読み手の声まで大きくなる。
書店の読み聞かせで、これ一冊で場の空気が変わったのを覚えているよ。
橘ナナミ
優しい昔話絵本とは、ずいぶん別ものですね。荒さが魅力なんだ。
佐藤メバル
そう。民話はもともと、きれいに整った物語じゃなかった。その荒さを消さずに子どもに渡す絵本は貴重なんだよ。
読み聞かせの声質まで変わるから、ぜひ一度試してみて。
わらしべ長者
木下順二 著|岩波書店
¥946(税込)
『かにむかし』『こぶとり』『三年寝太郎』『天人女房』——日本の昔話を、木下順二の再話と赤羽末吉の絵でまとめた一冊です。表題の『わらしべ長者』も、拾った藁から始まる運の転がり方がくっきり描かれます。戯曲を書いてきた木下順二の文章は方言の匂いを残したまま声に出して心地よく、赤羽の絵は余白の取り方が巧み。一話ずつ短く紹介する入門書と違い、この一冊で昔話の語りそのものを味わえます。
こんな人におすすめ
昔話をまとめて手元に置きたい家庭、読み聞かせの引き出しを増やしたい人、他の再話と読み比べたい読者。声に出して読む練習台としても、短い話が並ぶので使いやすいです。
良い点
- 一冊で多数の昔話を味わえる
- 語りとして読んで心地よい文章
- 赤羽末吉の絵が話に寄り添う
気になる点
- 一度に読むには話数が多い
- 知らない話も混ざる
- 解説は控えめで物語中心
出版社
岩波書店
発売日
2000年08月18日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
タイトルは『わらしべ長者』なのに、目次を見ると『かにむかし』も『三年寝太郎』も入ってる。これは短編集なんですか?
佐藤メバル
そう、木下順二の再話と赤羽末吉の絵で作られた昔話集なんだ。藁一本から始まる『わらしべ長者』の運の転がり方も、声に出して読むと気持ちいい言葉で書かれている。
戯曲を書いてきた人の文章だから、語りの間がいいんだよ。
橘ナナミ
読み聞かせ向きの本を探している人に勧めやすいですね。でも話数が多いと、どこから読むか迷いそうです。
佐藤メバル
迷ったら短い『こぶとり』から。書店の児童書コーナーでも、最初に読んだ話をきっかけに全部読む子が多かった。
一話ずつ独立しているから、毎晩一話ずつでもいいし、声を出す練習にも向くよ。
龍の子太郎(新装版)
松谷みよ子 著|講談社
¥1,540(税込)
龍になった母をたずねて、龍の子太郎が山をこえ谷をこえて旅に出る——松谷みよ子が日本の民話を再創造した代表作の新装版です。絵本の昔話と違い、長編として読み応えがあり、太郎の力持ちなところ、母の姿、旅の途中で出会う人びとが丁寧に積み上げられます。旅の途中で太郎が自分の弱さと向き合う場面があり、ただの冒険譚では終わらない。国際アンデルセン賞優良賞に触れる記述がある、評価の定まった一冊です。
こんな人におすすめ
小学校中学年から高学年で長い物語に挑戦したい子、読み聞かせから一人読みに移る時期の読者、松谷みよ子の民話再話を続けて読みたい人。母と子の物語として、大人が読み返しても刺さります。
良い点
- 長編として読みごたえがある
- 日本の民話を再創造した名作
- 母を思う物語が軸になっている
気になる点
- 低学年には分量が多い
- 挿絵中心の絵本ではない
- 民話の原作そのままではない
出版社
講談社
発売日
2006年07月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『龍の子太郎』って絵本かと思っていたら、けっこう長い物語なんですね。松谷みよ子さんが民話をもとに書いたんですよね?
佐藤メバル
そう、日本の民話を再創造した長編だよ。龍になった母をたずねて、太郎が山をこえ谷をこえて旅をする。旅の途中の出会いと、力持ちの太郎の不器用さが丁寧に描かれていて、読み終わると景色が残るんだ。
国際アンデルセン賞優良賞にも触れられている。
橘ナナミ
民話をそのまま採録したのではなくて、作り直しているところがポイントなんですね。『民話の世界』と並べて読むと面白そう。
佐藤メバル
そこに気づいたら、もう一歩深い読者だよ。松谷みよ子自身が採録と再話の過程を書いているからね。まずは物語としてぐいぐい読んで、あとから背景を知ると二度おいしい。
よみきかせ日本昔話 ももたろう
石崎洋司 著|講談社
¥1,430(税込)
桃から生まれた桃太郎が、きびだんごを手にイヌ・キジ・サルと鬼ヶ島へ——おなじみの筋を、読み聞かせに特化して作り直した一冊です。テキストは『黒魔女さんがとおる!!』シリーズの石崎洋司、絵は武田美穂。聞き手が飽きない長さとテンポを優先した作りで、桃やきびだんごの色、憎めない鬼たちの表情まで絵に工夫があります。巻末には短編『とりのみじいさん』と、民話研究に携わっていた石崎洋司自身の解説付きです。
こんな人におすすめ
初めての読み聞かせに何を選ぶか迷っている人、保育や幼稚園で昔話を扱いたい先生、ももたろうを一度は我が子に読んであげたい保護者。読み手が疲れにくい文章なので、寝る前の習慣にも組み込みやすいです。
良い点
- 読み聞かせ前提のテンポで作られている
- 武田美穂の絵が明るく親しみやすい
- 短編と解説が巻末に付いている
気になる点
- ももたろうの筋自体は知られている
- 物語の意外性は少ない
- シリーズの他巻と揃えたくなる
出版社
講談社
発売日
2012年02月24日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ももたろうって、もう誰でも知っている話ですよね。あえて一冊選ぶ意味ってあるんですか?
佐藤メバル
あるんだよ。この本は読み聞かせに特化して作られていて、聞き手が飽きないテンポを最優先している。
テキストは石崎洋司、絵は武田美穂。桃の色やきびだんごの描き方、憎めない鬼の表情まで、聞き手が目で楽しめるように工夫されている。
橘ナナミ
へえ、同じ話でも作り方で変わるんですね。巻末に短編と解説が付いているのも嬉しいです。
佐藤メバル
しかも石崎洋司は民話研究に携わっていた人でね。最後に自分の言葉で解説を書いている。読み手が背景を知ってから読むと、昔話の見え方が変わるよ。
アイヌ民話集
更科源蔵 著|青土社
¥2,420(税込)
人間、獣、鳥、魚の話から星や月、おばけの話まで——更科源蔵が数十年にわたってコタンを訪ね、長老たちから聞き取った民話の集大成です。『人間の創造』『死の国の話』『うっかりもののカワウソ』『シシャモ物語』『丸木舟の争い』など、動物も神も同じ世界に生きている感覚が全篇を貫いています。日本の昔話に慣れた目には、生き物との距離の取り方がまったく違って映るはず。中川裕による解説付きで、背景から入れるのも助かります。
こんな人におすすめ
民話をもっと深く読んでみたい人、アイヌ文化に物語から触れたい読者、動物と人の関係を考えたい人、語りの記録として読みたい人に向きます。
良い点
- 長年の聞き取りによる厚みがある
- 動物や自然の話が豊富
- 専門家の解説が付く
気になる点
- 語りの生々しさに読み慣れが要る
- 話の背景を自分で補う必要がある
- 絵本のような親しみやすさはない
出版社
青土社
発売日
2021年09月25日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
アイヌの民話って、名前は聞きますけど実際に読んだことがなくて。どんな話が入っているんですか?
佐藤メバル
『人間の創造』『死の国の話』『うっかりもののカワウソ』『シシャモ物語』……とにかく幅が広い。更科源蔵が数十年かけてコタンを訪ね、長老たちから聞き取った集大成なんだ。
動物も神も同じ世界に生きているという感覚が全篇にある。
橘ナナミ
日本の昔話とは、生き物との距離が違うんでしょうね。読むときに気をつけることはありますか?
佐藤メバル
物語として素直に読んでいい。ただ、人間が主役でない話も多いから、『誰の視点で語られているか』を意識すると発見があるよ。
中川裕さんの解説も付いているから、背景から入ってもいい。
中国民話集
飯倉照平 著|岩波書店
¥1,221(税込)
柳田国男が『驚くほど豊富な昔話の貯蔵地』と呼んだ中国の民話から、代表的な話と日本・朝鮮との比較研究上重要な44篇を選んだ一冊です。『さるかに合戦』『絵姿女房』『古屋の漏り』——日本の昔話として親しんできた筋が、海を渡る前の姿で現れます。同じ話がどこでどう変わるかを追えるのが最大の読みどころで、珍しい話を並べただけの民話集とは性格が違う。文庫で手に取りやすいのもありがたいところです。
こんな人におすすめ
日本の昔話のルーツを知りたい人、民話の伝播や比較に関心がある学生、読み聞かせの引き出しを増やしたい人、柳田国男の仕事から入った読者に。
良い点
- 日本民話との比較ができる構成
- 代表的な話が44篇と充実
- 文庫サイズで手に取りやすい
気になる点
- 比較の前提知識があるとより楽しい
- 語りのバリエーションは多くない
- 注や解説を読む手間がかかる
出版社
岩波書店
発売日
1993年09月16日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
中国に民話があるのは分かりますけど、日本の昔話とそんなに似ているものなんですか?
佐藤メバル
『さるかに合戦』『絵姿女房』『古屋の漏り』——名前を見ただけで、あれっと思うでしょう。柳田国男が中国を『驚くほど豊富な昔話の貯蔵地』と呼んだのが分かる。
同じ話が海を渡る途中でどう変わるかを追えるのが、この本の一番おいしいところだよ。
橘ナナミ
なるほど、民話を読むというより、話の旅をたどる感じですね。44篇も入っているなら読み応えがありそうです。
佐藤メバル
日本と朝鮮の民話との比較研究上注目すべき話が選ばれているから、読み比べの入口になる。まずは知っている話から入って、似ているところと違うところを数えるだけでも楽しいよ。
ラテンアメリカ民話集
三原幸久 著|岩波書店
¥1,012(税込)
ラテンアメリカに広く分布する民話から、日本の昔話と関係がありそうなものを中心に37話を精選し、動物譚・本格民話・笑話・形式譚の四つに分類した一冊です。収録話には国名と採取地が添えられ、『ネコの夫婦』『ウサギとトラ』『死神の名付け親』『果てなし話』など、同じモチーフが世界のどこでどう変奏されるかを解説で確かめられます。読み物としても、民話研究の見取り図としても使える構成です。
こんな人におすすめ
世界の民話を横断して読みたい読者、笑話やとんち話が好きな人、民話の比較に関心のある学生、短い話を少しずつ読みたい人に向きます。
良い点
- 四分類で見通しよく読める
- 採取地と解説が添えられている
- 笑話や形式譚まで幅広い
気になる点
- 地域ごとの厚みには差がある
- 学術的な凡例から始まる
- 読み通すには根気が要る
出版社
岩波書店
発売日
2019年12月15日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ラテンアメリカの民話って、あまり想像がつかないんですけど……。日本やヨーロッパの昔話と似た話、あるんですか?
佐藤メバル
あるんだよ。しかもこの本は、日本の昔話と関係がありそうなものを中心に選んでいる。動物譚・本格民話・笑話・形式譚の四つに分類されていて、『果てなし話』なんて、きりがない話の作りまで入っている。
同じモチーフが別の土地でどう変奏されるかが、解説で確かめられるんだ。
橘ナナミ
分類されていると、読み比べがしやすいですね。採取地が書いてあるのも助かります。
佐藤メバル
そう、どの国の話かが分かるから、地図を片手に読むと楽しい。まず『ウサギとトラ』あたりから開いてみて。とんち話が好きな人にはたまらないよ。
命の水 チェコの民話集
カレル・ヤロミール・エルベン 著|西村書店
¥2,530(税込)
“チェコのグリム”と呼ばれるエルベンが集めた昔話から20編を、出久根育のオールカラーで読む贅沢なアンソロジーです。動物の言葉が分かるようになり困難に巻き込まれる『金色の髪のお姫さま』、父王のために命の水を探す『命の水』、墓地へ誘われる『婚礼衣装』、死神を出しぬく『この世に死神がいてよかった』——美しさと不気味さが同居するのがチェコ民話の持ち味。テンペラ画の挿絵と、日本語版のための描き下ろしも見どころです。
こんな人におすすめ
絵本としても民話集としても楽しみたい人、少し怖い話を味わいたい小学校高学年以上、美術的な絵本を集めている人、チェコやスラブの文化に惹かれる読者に。
良い点
- オールカラーの絵が本編と一体化
- 20編と内容の幅が広い
- 読みやすい訳で届く
気になる点
- 価格はやや高め
- 怖い話が苦手な子には不向き
- 一気に読むと重さが残る
出版社
西村書店
発売日
2017年10月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
チェコの民話集、しかもオールカラーの絵本仕立て。『命の水』ってタイトルの童話は聞いたことがあります。
佐藤メバル
グリム童話にも同名の話があるけど、こちらはエルベンが集めたチェコの昔話だよ。『金色の髪のお姫さま』『婚礼衣装』『この世に死神がいてよかった』……美しい話とぞっとする話が同じ本に並ぶのが面白いところ。
出久根育さんのテンペラ画が効いていて、日本語版には描き下ろしも入っている。
橘ナナミ
絵目当てで買ってもよさそうですね。でも『婚礼衣装』とか、子どもには怖すぎませんか?
佐藤メバル
小学校高学年くらいからがちょうどいい。怖さも含めて民話だからね。読み聞かせで一話ずつ、明るい時間に読むのをおすすめするよ。
【POD】フランス妖精民話集
植田祐次 著|インタープレイ
¥2,420(税込)
フランス民話というとペローの童話が思い浮かびますが、この本が拾うのは炉辺で語られた民衆の話です。『変身譚』『愛』『嫉妬』『試練』『不思議な動物』『妖精』『プシュケ神話』の七章立てで、民衆のしたたかな想像力の裾野の広さを見せてくれます。注文を受けてから作る印刷方式のため書店の店頭では出会いにくいですが、妖精譚や怪奇譚を体系的に読みたい人には貴重。ペローの洗練とは別の、語りの荒さが魅力です。
こんな人におすすめ
妖精譚や変身譚が好きな読者、フランスの口承文学に関心がある人、ペローの昔話集を読んだ後の次の一冊を探している人、テーマ別に民話を読み比べたい人に。
良い点
- テーマ別の章立てで読みやすい
- ペローの童話とは違う層に触れられる
- 妖精譚をまとめて読める
気になる点
- 店頭に並びにくい印刷方式
- 価格はやや高め
- 学術的な語り口の部分がある
出版社
インタープレイ
発売日
2015年12月17日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
フランスの民話というと『赤ずきん』や『長靴を履いた猫』のペローですよね。それとこの本は何が違うんですか?
佐藤メバル
ペローの童話はサロンで洗練された文学だけど、この本が集めているのは炉辺で語られた民話なんだ。『変身譚』『妖精』『嫉妬』など七章に分かれていて、民衆の想像力の裾野の広さがそのまま出ている。荒さが魅力なんだよ。
橘ナナミ
なるほど、同じフランスでも別の層なんですね。ところで、この本はどうして書店で見かけないんでしょう?
佐藤メバル
注文を受けてから作る印刷方式で、書店の棚に並びにくいんだ。だから見つけたときは少し得した気分になるよ。
妖精譚が好きなら、ペローの次に読む一冊として勧めている。
民話の森叢書8 ペローの昔話集 -知識人の教養と民衆の伝承ー(上)
マルク・ソリアノ 著|民話の森
¥2,420(税込)
『赤ずきんちゃん』『眠れる森の美女』『長靴を履いた猫』を収めたペローの昔話集は、世界で最も広く知られたフランス語のテキストでありながら、成立事情には多くの謎が残ってきました。作者はペロー本人か、息子ダルマンクールか。サント=ブーヴ賞を受賞した文学研究者ソリアノが、文献学・民俗学・社会学・精神分析を総動員してこの謎に挑みます。赤い頭巾やガラスの靴が読者の心をつかむための技巧だったと明かす分析は刺激的。上巻にはペロー自身の『回想録』と略年譜も収録されています。
こんな人におすすめ
昔話の成り立ちを知りたい読者、フランス文学や民話研究を学ぶ学生、子どもに昔話を読む前に背景を押さえたい人、書物としての昔話集に関心がある人に。
良い点
- ペロー研究の大著を全訳
- 十一の話を一篇ずつ分析
- 回想録と年譜の資料付き
気になる点
- 学術書で読み通すには体力が要る
- 上巻のみで下巻を待つ必要がある
- 専門用語が多く前提知識が要る
出版社
民話の森
発売日
2026年02月13日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ペローの昔話集についての研究書……? 民話を読むというより、研究書なんですね。誰向けなんでしょう。
佐藤メバル
これは読み物としても面白いんだよ。ペローの昔話集は世界で最も知られたフランス語のテキストなのに、作者がペローなのか息子ダルマンクールなのか、長く論争になってきた。
ソリアノは赤い頭巾やガラスの靴が読者をつかむための技巧だと分析していく。サント=ブーヴ賞を受賞した本の全訳なんだ。
橘ナナミ
へえ、昔話の読み方が変わりそうですね。上巻には何が入っているんですか?
佐藤メバル
第一部が妖精物語の生まれた場の話、第二部が十一の話の個別分析。巻末にはペローの『回想録』と年譜も付いているから、作品と人物を往復できる。
読み聞かせの前に読むと、同じ話がまったく違って見えるよ。
韓国の民話伝説
崔常植 著|大阪東方出版
¥3,080(税込)
韓国で長く放映されたドラマ『伝説の故郷』の原作にあたる民話集です。変身譚・孝行貞女譚・霊魂譚・転生譚の四部で34話を収録。『蛇の新郎』『九尾狐の愛』『コリョジャン(高麗葬)』『死んでも烈女』『犬に生まれ変わった母』——恋・夢・情・怨・恨・義という言葉が並ぶ世界で、儒教的な秩序と、そこからあふれる感情がぶつかり合います。村の長老から採録した話と古書の渉猟を重ねた厚みがあり、日本の昔話とは違う息苦しさと美しさがあります。
こんな人におすすめ
韓国文化に物語から触れたい人、変身譚や霊魂譚が好きな読者、ドラマや映画の原作をたどりたい人、隣国の民話を本格的に読みたい人に。
良い点
- 四部34話と収録数が多い
- ドラマの原作としても楽しめる
- 怨や恨の感情が濃く描かれる
気になる点
- 残酷な場面がいくつかある
- 価格はやや高め
- 背景の理解があるとより楽しい
出版社
大阪東方出版
発売日
2008年09月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
韓国の民話集ですか。『九尾狐の愛』とか『蛇の新郎』って、ちょっと物々しいタイトルですね。
佐藤メバル
そこが韓国民話の持ち味なんだよ。変身譚・孝行貞女譚・霊魂譚・転生譚の四部構成で34話。恋・夢・情・怨・恨・義という感情の言葉が並ぶ世界で、『コリョジャン(高麗葬)』のような重い題材も正面から扱う。
韓国で長く放映されたドラマの原作にもなっている。
橘ナナミ
日本の昔話より、ずっと息苦しさがありそうですね。子どもに読ませるには早いですか?
佐藤メバル
小学校高学年から大人まで、かな。残酷な場面もあるから、読み聞かせより一人読み向きだと思う。村の長老から採録した話と古書を重ねた厚みがあるから、隣の国の民話を本気で読むなら外せない一冊だよ。
カリブ海アンティル諸島の民話と伝説
テレーズ・ジョルジェル 著|作品社
¥2,860(税込)
ヨーロッパから来た入植者、アフリカから来た奴隷、そしてカリブ族——三つの語りが混ざりあって生まれたアンティル諸島の民話と伝説、全34話。1957年の刊行以来、フランス語圏で読み継がれてきた一冊です。民話は夜に、クレオール語で語るものという決まりがあり、昼間に語れば竹のかごに変えられてしまうという前口上からして魅力的。『ウサギどんのいたずら』のような動物譚から『青ひげ』の変奏、恋の物語まで、挿絵62点とともに収録されています。
こんな人におすすめ
カリブ海の文化や歴史に触れたい読者、クレオール語圏の語りに関心がある人、世界の民話を地域ごとに揃えたい人、動物譚から入りたい読者に。
良い点
- 挿絵62点で視覚的にも楽しめる
- 複数文化の混交が感じられる
- 動物譚から恋の話まで幅広い
気になる点
- 価格はやや高め
- 耳慣れない名前が多い
- 歴史背景を自分で補う必要がある
出版社
作品社
発売日
2021年11月30日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
カリブ海の民話って、想像がつきません。まえがきに『昼間に民話を語ると竹のかごに変えられる』って書いてあるのが面白いですね。
佐藤メバル
そこがいいでしょう。民話は夜のもの、クレオール語で語るものという決まりがあって、夜になってから『ボンボヌフォワ!』と始める。
ヨーロッパの入植者、アフリカから来た奴隷、カリブ族、三つの語りが混ざって生まれた物語なんだ。
橘ナナミ
混ざっている、というのがキーワードなんですね。『ウサギどんのいたずら』なんて、どこかで聞いたような気もします。
佐藤メバル
そう、アフリカ由来のとんち話がカリブの風土で姿を変えている。挿絵も62点入っていて、眺めているだけでも楽しい。
世界の民話を集めている人には、ぜひ足してほしい一冊だよ。
満洲の民話と伝説
包聯群 著|三元社
¥8,250(税込)
これは民話を“読む”本であると同時に、語りの記録そのものです。満洲語話者の語りを国際音声字母と満洲文字で示し、単語ごとに品詞や接辞の文法範疇、日本語と中国語の対訳を併記する。『満洲人はなぜ犬のお肉を食べないのか』『私たち祖先の由来(三仙女)』『ヌルハチハン王』といった物語に加え、自伝や歌謡、満洲語の特徴まで収めた画期的な構成です。
こんな人におすすめ
言語学や満洲語に関心がある人、少数民族の口承文化を研究したい学生、語りと文法の両方を確かめたい読者、フィールドワークの記録を読みたい人に。
良い点
- 原文・発音・対訳が並ぶ貴重な構成
- 物語以外に自伝や歌謡も収録
- 話者の語りをそのまま伝える
気になる点
- 価格が高く専門書の性格が強い
- 文法記号に慣れるまで時間がかかる
- 気軽な読み物としては重い
出版社
三元社
発売日
2023年03月13日
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
満洲の民話集……しかもかなり高価。これ、普通の民話集とは違うんですか?
佐藤メバル
全然違う。語りをそのまま記録した研究書なんだ。満洲語の音を国際音声字母と満洲文字で示して、単語ごとに文法の説明と日本語・中国語の対訳を付ける。
『満洲人はなぜ犬のお肉を食べないのか』なんて話も収録されているよ。
橘ナナミ
物語としても読めるけど、言語の資料でもあるんですね。自伝や歌謡まで入っているのが意外です。
佐藤メバル
そこが厚みでね。『私の父はシャーマン』といった語りや、揺りかごの歌まで入っている。研究の入口としてはかなり本格的なので、まず図書館で手に取ってみるのもいいよ。
日本の仏教民話集
前田久子 著|東方出版(大阪)
¥5,500(税込)
青森から沖縄まで、各地に伝わる仏・菩薩・如来・高僧に関する民話を122話集めた大冊です。菩薩編には『宝ふくべ』『歩き地蔵さま』『身代わりの清水観音』、如来編には『お不動さまと幸太』『桃太郎と鬼子母神』『だんぶり長者』——信仰の話が、その土地の暮らしの物語として語られているのが面白さ。原典一覧・登場者解題・索引が付き、子どもから大人まで読めるように整えられています。
こんな人におすすめ
寺院や地域の語りに興味がある人、宗教と民話の関係を調べたい研究者、民話をテーマ別に読んでみたい読者、読み聞かせの引き出しを増やしたい人に。
良い点
- 全国の話を122話と網羅的
- テーマ別の構成で探しやすい
- 原典一覧や索引が充実
気になる点
- 価格が高く大冊
- 宗教用語に慣れが必要
- 通読より辞書的に使う本
出版社
東方出版(大阪)
発売日
1997年05月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
仏教民話って、あまり聞いたことがないです。お地蔵さまや観音さまの話、ということですか?
佐藤メバル
そう。青森から沖縄まで、各地の仏や菩薩、如来、高僧にまつわる話を122話集めた大冊なんだ。菩薩編の『身代わりの清水観音』、如来編の『桃太郎と鬼子母神』——信仰の話が、その土地の暮らしの物語として語られているのが面白いんだよ。
橘ナナミ
122話はすごい数ですね。読み通すというより、必要なときに引く使い方ですか?
佐藤メバル
索引も登場者解題も付いているから、調べるのにも向く。ただ、読み物として拾い読みしても楽しいよ。地域の寺や言い伝えに興味がある人には、これ以上ない一冊だと思う。
世界の犬の民話
日本民話の会 著|筑摩書房
¥1,078(税込)
犬を始祖とする伝説、冥界とのつながり、人間への忠義、狼との関係——世界各国の神話・伝説・昔話から民間伝承までを集め、テーマごとに分類した一冊です。犬は最も長く人間の身近にいた動物でありながら、どこか底知れない。忠義の話と、異界への案内役という怖い話が同じ本に並ぶところに、人と犬の関係の厚みが出ています。狼やコヨーテなど犬の仲間の話も収録されているのがうれしいところです。
こんな人におすすめ
犬を飼っている人、動物と人間の関係を考えたい読者、犬にまつわる伝承を探している人、テーマ別に世界の民話を読みたい人に。
良い点
- テーマ別の分類で読みやすい
- 狼やコヨーテの話も収録
- 文庫で手に取りやすい価格帯
気になる点
- 犬に興味がないと入口が狭い
- 各地の話は短め
- 学術的な注は控えめ
出版社
筑摩書房
発売日
2017年01月10日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
犬の民話だけを集めた本があるんですね。忠犬の話ばかりなんでしょうか?
佐藤メバル
いや、そこが面白い。犬を始祖とする伝説、冥界とのつながり、人間への忠義、狼との関係——テーマごとに世界の話を並べている。
忠義の話と、あの世へ連れて行く怖い話が同じ本に並ぶんだよ。うちの書店でも、犬を飼っているお客さんが何冊も買っていったなあ。
橘ナナミ
同じ犬でも、文化によって役割が全然違うんですね。狼やコヨーテの話も入っているのが気になります。
佐藤メバル
犬の仲間まで範囲を広げているのが、この本のいいところ。神話から民間伝承まで集めているから、犬という動物を人間がどう見てきたか、まるごと見えてくるよ。文庫なので手に取りやすいしね。
民話の世界
松谷みよ子 著|講談社
¥1,210(税込)
『龍の子太郎』の著者・松谷みよ子が、民話とどう出会い、どう採録し、どう再話してきたかを語った一冊です。第一部では山を越えて聞き集めた経験、第二部では貧乏神や赤神と黒神、爺と婆の夫婦愛など、民話が象徴で語ることの魅力、第三部では読み手だった私たちが語り手になっていく過程が論じられます。民話は過去の遺物ではなく、今も語り直されるものだという視点が全篇を貫いています。
こんな人におすすめ
『龍の子太郎』を読んだ後に背景を知りたい人、民話の採録や再話に関心がある学生、読み聞かせを続けている人、語り手という立場を考えたい読者に。
良い点
- 作家自身の体験に基づく語り
- 再話の過程が具体的に分かる
- 文庫で読みやすく手頃
気になる点
- 物語そのものは収録されていない
- 民話に関心がないと入りにくい
- 評論的な章では集中が必要
出版社
講談社
発売日
2014年08月12日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは民話集ではなくて、松谷みよ子さんが民話について書いた本なんですね。『龍の子太郎』の作者ですよね?
佐藤メバル
そう。どうやって民話に出会い、山を越えて聞き集め、再話してきたかが綴られている。貧乏神の話、赤神と黒神、爺と婆の夫婦愛——民話は過去の遺物ではなく、今も語り直されるものだという視点が貫いているんだ。
橘ナナミ
読み手だった自分が語り手になっていく、という第三部の流れが気になります。読み聞かせをしている人に効きそうですね。
佐藤メバル
まさにそこ。書店でも、読み聞かせのボランティアをしている人がこれを読んで、選書の軸が変わったと言っていたよ。
『龍の子太郎』と往復して読むと、作品の見え方がぐっと深くなる。
【POD】「浦島太郎」は世界各地にいた!? ──中国や東欧の民話に見る物語のモティーフ
長田ふみと 著|22世紀アート
¥2,585(税込)
亀を助けたのに、なぜ浦島太郎は一瞬で何百歳もの時を経てしまったのか。竜宮城にはなぜ魚しかいないのか。この本は、世界各地に残る『浦島太郎』とよく似た民話をたどりながら、その謎に迫ります。中国大陸、南の島々、東欧、北欧、ギリシア、メソポタミア——時間の流れない世界というモチーフが世界に散らばっていることが見えてきます。第二部には丹後の国風土記逸文や万葉集、ケルトの民話など資料も収録されています。
こんな人におすすめ
昔話のルーツに興味がある読者、比較民話を学びたい学生、読み聞かせの背景を深めたい人、浦島太郎の結末に幼い頃から引っかかっていた人に。
良い点
- 謎解きとして読み進められる
- 世界の類話をまとめて確認できる
- 一次資料が第二部に収録
気になる点
- 店頭に並びにくい印刷方式
- 厳密な学術書を求める人には物足りない
- 図版は多くない
出版社
22世紀アート
発売日
2024年08月21日頃
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
浦島太郎が世界各地にいた、って……同じ話が外国にもあるんですか? それとも、話の部品が似ているという意味ですか?
佐藤メバル
部品が似ているという言い方が近いかな。時間が止まった世界に行って戻ってくると、こちらでは何百年も経っていた——というモチーフが、中国や東欧や北欧にもあるんだ。
『なぜ浦島太郎は老人になったのか』という元の本を改訂したもので、丹後の国風土記や万葉集の資料まで第二部に収めている。
橘ナナミ
子供の頃、あの結末に納得できなかった記憶があります。その引っかかりが本になるなんて、ちょっと嬉しいです。
佐藤メバル
そういうモヤモヤが学問の入口だよね。竜宮城に魚しかいない理由まで考えていく。『シンデレラ』と『浦の嶼子』を並べる章もあるから、昔話の比較に興味がある人はぜひ。
地域×テーマ×語り——民話集の棚を自分で設計する
橘ナナミ
さっき、同じ話型が世界で変奏されると聞いて、ちょっと鳥肌が立ちました。でも種類が多すぎて、自分の中で整理できません。
佐藤メバル
分類の軸を3つ持っておくといい。地域(日本のどこか、世界のどこか)、テーマ(動物譚、変身譚、霊魂、笑話)、語り(誰がどの言語で語った記録か)の3つだ。たとえば「韓国の民話伝説」は変身譚・孝行と貞女の話・霊魂譚・転生譚というテーマで章が分かれ、蛇の新郎や九尾狐が出てくる。鬼や妖怪、神隠しから入りたいなら「遠野物語」で雪女やザシキワラシ、山男、天狗、川童に会ってから、テーマ別の民話集に広げるのが迷わない道だよ。
橘ナナミ
「語り」という軸が面白いです。それって、内容より文体のことですか?
佐藤メバル
語りのリズムと、記録のしかたのことだね。「満洲の民話と伝説」は、話者の語りを国際音声字母と満洲文字で示し、単語ごとに文法範疇と日本語対訳を並べている。これは読むというより、語りそのものを保存した本だ。ここまで来ると研究の領域で、「民話の世界」で採録と再話の考え方に触れ、「ペローの昔話集」で口承の物語が文学作品へ変わっていく過程を追う、という順番が学びやすい。
橘ナナミ
教訓を学ぶための本だと思っていたら、残り方や語り方まで読むものなんですね。
佐藤メバル
そこが民話の面白さでね。だから昔話を「教訓の押しつけ」として読むと、かえって遠ざかる。「なぜこの話が、この土地で、長く語られてきたのか」を考えながら読むと、同じ桃太郎でも、石崎洋司さんと武田美穂さんの「ももたろう」に出てくる、ちょっと憎めない鬼たちの表情ひとつが意味を持ってくるんだ。
同じ話を読み比べる——再話者・画家・訳者でここまで変わる
橘ナナミ
読み比べって、具体的にはどうやるんですか?
佐藤メバル
題名で検索して2冊並べるだけでいい。「ももたろう」なら読み聞かせ用の再話と、松谷みよ子さんが「民話の世界」で「桃太郎と金太郎と」と題して論じている章を並べると、物語と解釈が一度に見える。絵なら「スーホの白い馬」の赤羽末吉さんの横長の画面、「命の水」の出久根育さんのテンペラ画、「てぶくろ」の動物の表情——同じモンゴルやチェコの話でも、画家が変われば世界の匂いが変わる。
橘ナナミ
挿絵って、雰囲気づくりくらいだと思っていました。
佐藤メバル
いや、挿絵は情報だよ。どの場面を大きく描いたか、誰の顔を描かなかったか。その取捨が、その本の読み方を決めてしまう。図書館や書店で、同じ話の絵本を2冊並べて開いてみるだけでも、ずいぶん見え方が変わるはずだ。
紙・電子・音声、そして「いつ読むか」
橘ナナミ
電子書籍や音声でも民話は読めますよね。使い分けはありますか?
佐藤メバル
あるよ。読み聞かせは紙が基本。横長大判の絵本や、ページをめくる間そのものが話の一部になっている本は、紙でこそ生きる。逆に、調べものに使う研究書は検索できる電子のほうが便利だし、古い本が電子で読めることもある。音声は、語りのリズムを体に入れたいときに強い。暗誦や語りを自分でやってみたい人は、耳から入るといい。
橘ナナミ
読む時間帯も関係ありますか?
佐藤メバル
「カリブ海アンティル諸島の民話と伝説」には、民話は夜のもので、昼に語ってはいけないと書かれている。これは迷信として笑うより、語りの時間が物語の一部だという証拠だね。平日の寝る前は一話ずつ区切れる短編集、休日の昼間は解説や図鑑をゆっくり、という使い分けが現実的だ。「龍の子太郎」は龍になった母をたずねる長い旅の話だから、続きを楽しみにしながら何日かに分けて読むのが向いている。寝る前の十分で読み切れない長さの本を選ばないことも、読み聞かせでは大切な判断だよ。
よくある質問
民話の本は子ども用と大人用で何が違う?
橘ナナミ
民話の本は子ども用と大人用で何が違うについて教えてください。
佐藤メバル
違いは文字量と、注・解説の厚みです。子ども向けの絵本は一話を絵と音で伝え、大人向けの昔話集や研究書は、その話がどこで誰から採録されたか、どう変わってきたかまで書き添えます。たとえば「満洲の民話と伝説」は語りを国際音声字母と満洲文字で示して対訳を並べる研究書で、これは大人が読む形です。同じ「ももたろう」でも、読む目的によって選ぶ版が変わると考えておくといいでしょう。
読み聞かせに向く民話の本はどれ?
橘ナナミ
読み聞かせに向く民話の本はどれについて教えてください。
佐藤メバル
声に出したときの気持ちよさで選びます。「きんたろう」は本文が「むかしーあしがらやまに」という語りの口調のままなので、節をつけやすい。「よみきかせ日本昔話 ももたろう」は読み聞かせに特化したシリーズとして作られ、巻末に短編と解説が付いています。短くリズムよく終わらせたい日は「てぶくろ」、じっくり座って聞ける日は「スーホの白い馬」というように、時間で使い分けると失敗が減ります。
同じ桃太郎でも本によって何が違う?
橘ナナミ
同じ桃太郎でも本によって何が違うについて教えてください。
佐藤メバル
再話者と画家が違えば、力点が変わります。「よみきかせ日本昔話 ももたろう」は石崎洋司さんの再話と武田美穂さんの絵で、桃やきびだんごの鮮やかな色づかい、憎めない鬼たちの表情が印象的です。一方、松谷みよ子さんは「民話の世界」で「桃太郎と金太郎と」と題して昔話そのものを論じています。物語として読むか、話の成り立ちから読むかで、手に取る一冊は自然に変わります。
民話と昔話・伝説・神話の違いは?
橘ナナミ
民話と昔話・伝説・神話の違いはについて教えてください。
佐藤メバル
厳密に線を引くより、編者がどう呼んでいるかを見るほうが実用的です。「遠野物語」は民間伝承として伝説や昔話を集めたもの、「韓国の民話伝説」は神話伝説として伝わる話を34話にまとめたもの、「カリブ海アンティル諸島の民話と伝説」は民話と伝説をひとつにしたタイトルです。ラベルは編者によって揺れるので、中身の語りと出典を見て判断するのが確かです。
初めて民話研究を学ぶならどの本から?
橘ナナミ
初めて民話研究を学ぶならどの本からについて教えてください。
佐藤メバル
まず「民話の世界」で、採録と再話の考え方に触れるのが入口になります。松谷みよ子さんが民話との出会いから「小泉小太郎」が「龍の子太郎」になるまでの過程を語っているので、研究と創作の境目が見えてきます。次に「ペローの昔話集」で、口承の話が文学作品へ変わっていく過程を追い、さらに「満洲の民話と伝説」のような語りの記録に進むと、段階を踏んで深められます。
絶版の民話集はどうやって手に入れる?
橘ナナミ
絶版の民話集はどうやって手に入れるについて教えてください。
佐藤メバル
まず「いまどの形で出ているか」を確認します。注文を受けてから作るPOD版として残っている本もあり、「フランス妖精民話集」や「浦島太郎は世界各地にいた!?」がその例です。加えて、図書館で読む、古書を探すという手もあります。書店の在庫がなくても諦めず、発行の形を変えて生き残っている本を探すのがコツです。
絵本と昔話集、どちらを選べばいい?
橘ナナミ
絵本と昔話集、どちらを選べばいいについて教えてください。
佐藤メバル
一話を深く味わうなら絵本、たくさんの話に触れるなら昔話集です。「わらしべ長者」と題された一冊のように二十余編を収めた短編集は、寝る前に一話ずつ読むのに向いています。反対に「スーホの白い馬」は、馬頭琴の由来を大判の画面で描いた一話完結の絵本で、これはまとめて味わうもの。同じ民話でも、器が違えば体験が違うと考えると選びやすくなります。
民話の本は何歳から読める?
橘ナナミ
民話の本は何歳から読めるについて教えてください。
佐藤メバル
「こども世界の民話(上)」は小学校低学年向きとされています。それより小さい子には、文字を追わせるより読み聞かせから入るのが現実的で、「てぶくろ」や「きんたろう」のように音と絵で成立する絵本が向いています。年齢の線引きより、その子が最後まで聞いていられる長さかどうかで選ぶほうが、実際にはうまくいきます。
まとめ
橘ナナミ
今日のお話を聞いて、棚の見え方が変わりました。絵本と研究書が同じ「民話」に入っているのが、むしろ贅沢だったんですね。
佐藤メバル
そう。入口は違っても、たどり着く先は同じ民話の森だ。「てぶくろ」から入った人が「遠野物語」まで歩いていくこともあるし、その逆もある。
橘ナナミ
私、まず「てぶくろ」を読み返して、それから「こども世界の民話(上)」の国名つきの話を追ってみます。あ、「世界の犬の民話」も気になります……!
佐藤メバル
いい選び方だね。テーマから入るのは、いちばん飽きない道だよ。
橘ナナミ
最後に、一つだけ。民話って、結局なんなんでしょう?
佐藤メバル
雪の上に落ちていた手袋に、ネズミが住みこみ、カエルが来て、キツネが来て、とうとうはじけそうになる——あの手袋と一緒だと思うんだ。誰かが語り、誰かが聞き、また誰かが住みこんで、形を変えながら今も膨らみ続けている。あなたが一冊を読み終えたとき、その手袋には次の誰かが入ってくる余地が残っている。だから焦らず、自分に合った一冊を選べばいい。
