日本音楽史を学べる本のおすすめ人気ランキング14選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、日本音楽史の本を調べているんですけど、思った以上に選択肢が多くて……。雅楽の本、歌謡曲の本、J-POPの本が同じ棚に並んでいて、どれから読めばいいのか分からなくなってしまいました。
佐藤メバル
いい質問だね。日本音楽史の本は「範囲」と「形式」で性格がはっきり分かれるんだ。たとえば『ものがたり日本音楽史』は、縄文の昔の素朴な鈴や石の笛に始まり、仏教音楽の伝来、雅楽・能楽・歌舞伎・文楽の誕生、文明開化による西洋音楽の導入、そして現代邦楽までを一冊でたどる。新書サイズでコンパクト、千円台で買えるから最初の一冊に向いている。
橘ナナミ
千円台で通史が読めるんですね! じゃあもうそれで十分な気もしますけど……。
佐藤メバル
そこが落とし穴でね。通史は「線」をつないでくれるけれど、細部は省かれる。近現代をもっと細かく知りたいなら、子どもの歌・軍歌・はやり唄・学生歌という四つのジャンルに分けて俯瞰する『図解 近現代日本音楽史』のような本が必要になる。まずは地図、次に各時代の拡大図、という順番だよ。
橘ナナミ
なるほど、地図と拡大図! その順番、覚えておきます。
日本音楽史を学べる本の選び方
目的別
橘ナナミ
純粋な趣味で読みたい人と、研究や授業で使う人だと、選び方も変わりますか?
佐藤メバル
変わるね。趣味の教養として読むなら、読み物として面白いものを。『にほんのうた』は縄文楽器から初音ミクまでを時代順に描いていく。一方、授業や研究で根拠が要るなら、古代から現代までを記述した通史や、見開き単位で引ける『図解 日本音楽史 増補改訂版』が強い。学校の先生なら、学習指導要領で必須とされる「我が国(郷土)の音楽」の指導に必要な基礎事項をまとめた『よくわかる日本音楽基礎講座』が手元にあると心強いよ。
レベル別
橘ナナミ
まったくの初心者が最初に手に取る一冊は、どれになりますか?
佐藤メバル
文章で流れをつかむなら『ものがたり日本音楽史』、人物から入るなら十四人の人物が案内役になる『人物でたどる おもしろ日本音楽史』が読みやすい。逆に、ある程度知っている人が次の段階に進むなら、日本音楽を「音楽に国境はないのか」という問いから捉え直し、種目・楽器・音階・記譜法まで体系的に整理した『日本音楽との出会い』がいい。
範囲別
橘ナナミ
古代から近世だけ、近現代だけ、という絞り方もできますか?
佐藤メバル
できる。伝統邦楽を中心に据えるなら、雅楽・声明・能楽・琵琶・尺八・箏・三味線・民謡・沖縄音楽までを図解した『図解 日本音楽史 増補改訂版』。近現代だけを濃く見るなら『図解 近現代日本音楽史』。逆に全部を一本の線で見たいなら通史を選ぶ。範囲を絞るほど、その時代の解像度は上がるんだ。
形式別
橘ナナミ
図解か、文章か、で迷ってしまいます。
佐藤メバル
見開き2頁に解説と図表を整理したタイプは、調べ物の道具として強い。文章の通史は、読み通すことで流れが体に入る。書店員時代、図鑑コーナーから邦楽にハマっていった常連さんを何人も見たよ。入口は何でもいい、続く形を選ぶのが正解だね。
入手性別
橘ナナミ
古い本は手に入りにくいものもありますよね。
佐藤メバル
そう。オンデマンドのPOD版は、大きいディスプレイを備えた端末で読むのに向いていると明記されている。1950年刊の音楽文庫のような古い本は図書館頼みになることもある。新刊で買えるか、中古か、電子かは、読む前のチェック項目だね。
音源別
橘ナナミ
音が聴ける本のほうが、やっぱりいいんですか?
佐藤メバル
理想は音と文字を往復することだね。ただ、文章だけで完結する本も多い。まず読んで、気になった曲を後から聴く順番でも遅くない。記譜法や音階の解説がある本を選ぶと、音との距離が縮まるよ。
日本音楽史を学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、14冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
日本音楽史を学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

ものがたり日本音楽史 (岩波ジュニア新書 909)
徳丸吉彦 著|岩波書店
¥1,034(税込)
縄文の鈴や石の笛から仏教音楽の伝来、雅楽・能楽・歌舞伎・文楽の誕生、文明開化による西洋音楽の導入、そして現代邦楽までを、コンパクトに一望できる通史です。政治や宗教と音楽がどう結びついてきたかを軸に描くので、音楽史をたどるだけで日本の歴史の流れも見えてきます。ジュニア新書ながら内容は濃厚で、最初の一冊に迷ったらこれと言える決定版。図解中心の入門書より、読み物として通しやすいのが持ち味です。
こんな人におすすめ
これから日本音楽史を学びたい高校生・大学生、年表ではなく物語として通史を一気に読みたい社会人、音楽史を授業で扱う前に全体の流れを仕込みたい教員。最初の一冊に迷っている人にぴったりで、短い時間で古代から現代までを見渡したい読者にも向きます。
良い点
- 242ページで全体像をつかめる
- 政治・宗教との関係まで描く
- ジュニア新書で入手しやすい
気になる点
- 図表は少なめで文字中心
- 専門用語の解説は最小限
- 各時代の細部は薄め
出版社
岩波書店
発売日
2019年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
日本音楽史の本って、いきなり分厚い専門書ばかりで……。まず最初に読むなら、どれがいいんでしょう?
佐藤メバル
いい質問だね。最初の一冊なら、この岩波ジュニア新書をおすすめしたい。縄文の鈴や石の笛から始まって、仏教音楽の伝来、雅楽・能楽・歌舞伎・文楽、文明開化の西洋音楽、現代邦楽までを一本の流れで描いている。
しかも政治や宗教と音楽の結びつきを軸にしているから、音楽史を読んでいるうちに日本の歴史そのものが見えてくる。
コンパクトなのに濃厚で、入門の決定版と言える一冊だよ。
橘ナナミ
ジュニア新書って聞くと、子ども向けで物足りないイメージがあったんですけど、大人が読んでも大丈夫なんですか?
佐藤メバル
そこが意外と大事なところでね。ジュニア新書は、専門家が若い読者に向けて書くぶん、用語をかみ砕いて筋道を通してくれる。
だからかえって大人の入門に向いているんだ。この本も242ページで、図表は少なめだけど、その分「なぜこの時代にこの音楽が生まれたのか」を物語として追える。
図解で目次を確認したい人は別の本がいいけれど、流れをつかむ最初の一冊としては、これ以上ないと思うよ。

図解 日本音楽史 増補改訂版
田中健次 著|東京堂出版
¥3,850(税込)
雅楽・声明、能楽、琵琶、尺八、箏、三味線、民謡、沖縄音楽、近代音楽まで、日本音楽の全貌を見開き2ページで解説と図表に整理したハンドブックです。ロングセラーを増補改訂し、沖縄音楽と近代音楽には新たに章が設けられました。392ページと分量はありますが、辞書的に引ける構成なので困ったときの座右の書になります。読み物として通すより、調べる・確認する用途に向く一冊です。
こんな人におすすめ
日本音楽を体系的に整理したい学生・研究者、授業や発表の下調べで種目や用語を確認したい人、沖縄音楽や近代音楽まで視野に入れて学びたい実践者。手元に置いて何度も開く辞書的な使い方をしたい読者に向きます。
良い点
- 見開き完結で引きやすい
- 沖縄・近代が新章で追加
- 図表が豊富で視覚的
気になる点
- 392ページで携帯は重い
- 通読にはやや不向き
- 価格はやや高め
出版社
東京堂出版
発売日
2018年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
さっきのは物語として読む本でしたよね。じゃあ、調べたいときにパッと引けるような本はあるんですか?
佐藤メバル
あるよ。この『図解 日本音楽史』は、雅楽から民謡、沖縄音楽、近代音楽までを見開き2ページで解説と図表に整理したハンドブックなんだ。
長く読み継がれてきた本を増補改訂して、沖縄音楽と近代音楽には新しい章が足された。辞書のように引けるのが強みでね。
通読する本というより、必要なところを開いて確認する相棒みたいな存在だよ。
橘ナナミ
見開き2ページで完結するって、逆に細かいところまでは書かれていないんじゃないですか? 物足りなくなりません?
佐藤メバル
いいところに気づいたね。たしかに一項目は見開きで完結するから、深掘りは他の本に譲る。でも392ページ分の項目が積み重なっているから、全体像はむしろこの一冊でしかつかめない。
書店員時代、邦楽の演目名を調べるお客さんに一番よく薦めていたのがこのタイプでね。沖縄音楽と近代音楽の章が増えた改訂版は、以前の版を持っている人にも意味がある更新だと思うよ。

ひと目でわかる日本音楽入門
田中健次 著|音楽之友社
¥3,600(税込)
巻頭写真には雅楽の管弦・舞楽、声明、平曲、能、文楽、義太夫節、歌舞伎、歌舞伎舞踊、現代邦楽が並びます。本文は「日本音楽とは何か」から時代区分・系統・分類・歌いものと語りもの・記譜法・流派と家元までを整理し、古代・中世・近世・近代と章を追って主要種目を紹介。175ページで目で見て全体をつかむ構成が特徴で、同じ著者の図解版より写真と概説に寄った入門です。
こんな人におすすめ
写真や図で直感的に理解したい初学者、音楽の授業や鑑賞の前に予習したい人、雅楽・能・文楽などの種目の違いを短時間で把握したい愛好家。音を聴く前に、全体の地図が欲しい人に向きます。
良い点
- 巻頭写真で種目がつかめる
- 分類・用語の整理が丁寧
- 175ページで負担が軽い
気になる点
- 図解版より情報量は少ない
- 価格はやや高め
- 近代以降は概要中心
出版社
音楽之友社
発売日
2003年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
同じ田中健次さんの本がもう一冊ありますよね。さっきの図解版とどう違うんですか?
佐藤メバル
よく気づいたね。こちらは写真と概説で全体をつかむ入門で、巻頭に雅楽の管弦や舞楽、声明、平曲、能、文楽、義太夫節、歌舞伎舞踊、現代邦楽の写真が並んでいる。
本文も「歌いものと語りもの」「劇場音楽と非劇場音楽」「うた・哥・唄・歌」の違いといった基本概念の整理から入って、古代・中世・近世・近代と主要種目を追っていく。
175ページで、目で見て掴むタイプの入門だよ。
橘ナナミ
写真があると、音を聴いたことがなくても想像しやすいですね。雅楽と能の違いも、これなら掴めそうな気がします。
佐藤メバル
そうそう、そこがこの本の狙いだと思う。たとえば「雅楽」「声明」「平曲」と名前だけ並べられても区別がつかないけれど、成立した時代と担い手、歌うのか語るのか、舞台に乗るのか、という軸で整理されると一気に見通しがよくなる。
深い事実調べは図解版に譲って、まず耳と目の入口を作る。この二冊を並べて使うのが、いちばん無駄がないと思うよ。

よくわかる日本音楽基礎講座~雅楽から民謡まで 増補・改訂版: 増補・改訂版 (音楽指導ブック)
福井昭史 著|音楽之友社
¥2,640(税込)
小・中学校の学習指導要領で必須とされる「我が国(郷土)の音楽」を教えるために知っておきたい基礎事項を網羅した音楽指導ブックです。「日本音楽とは何か」から雅楽・能楽・三味線音楽などを分類・整理し、用語や音階、楽器をいつでも振り返れる資料にもなります。増補改訂で新学習指導要領の項目やトピックが加わり、教える側の視点から書かれている点が他の通史と大きく違います。
こんな人におすすめ
小・中学校の音楽科教員、教員志望の学生、日本音楽を授業や部活で扱う人、大学の「日本音楽概論」のテキストを探している人。教える立場から基礎を整理したい読者と、用語をいつでも引き直したい人に向きます。
良い点
- 指導要領に対応した構成
- 用語・音階の資料として使える
- 増補改訂で記述が更新
気になる点
- 通史としての物語性は薄い
- 160ページで分量は限られる
- 一般の読み物としては硬め
出版社
音楽之友社
発売日
2020年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは通史というより、先生向けの本なんですか?
佐藤メバル
そう、そこがはっきり違うところ。小・中学校の学習指導要領で必須になった「我が国や郷土の音楽」を教えるために知っておくべきことをまとめた、音楽指導ブックなんだ。
「日本音楽とは何か」から入って、雅楽・能楽・三味線音楽などを分類・整理し、音階や楽器、用語をいつでも振り返れる資料にもなる。
増補改訂版では新しい学習指導要領の項目やトピックが足された。教える側の目線で書かれた一冊だよ。
橘ナナミ
私みたいに教える予定がない人間が読んでも、意味はあるんでしょうか? 正直、対象が違う気がします。
佐藤メバル
それもいい質問だね。教える側の視点というのは、実は学ぶ側にも効くんだ。たとえば「この音階はどこで使われるのか」「この楽器は何と呼ばれるのか」が、教える順番で並んでいる。
だから知識がバラバラにならず、頭の中に棚ができる。読書としては硬めだけど、音楽の授業が苦手だった人ほど、あとから効いてくる本だと思うよ。

日本音楽の歴史 POD版
吉川英史 著|創元社
古代から現代までの諸時代・諸種目を記述しながら、特に邦楽の源流となる複雑多彩な江戸時代の音楽に社会史的なメスを入れて詳説した、本格的な日本音楽通史です。オンデマンド版のため、大きいディスプレイの端末で読む形になり、文字の拡大や検索・引用には向かない点は前提になります。江戸の音楽を社会から読み解く視点は、通史のなかでも際立っています。
こんな人におすすめ
江戸時代の音楽と社会の関係を掘りたい人、邦楽史を本格的に学ぶ学生、入門書を読み終えて次の一歩を探している読者。タブレットなど大きい画面の端末があり、資料として腰を据えて読みたい人に向きます。
良い点
- 江戸期の記述が詳しい
- 社会史的な視点が独自
- 本格的な通史として読める
気になる点
- オンデマンド版で検索・引用不可
- 大きい画面の端末が必要
- 入門にはやや難しい
出版社
創元社
発売日
2004年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
POD版って書いてあるんですが、これってどういう意味ですか?
佐藤メバル
オンデマンド印刷のことで、注文を受けてから作る版なんだ。だから大きいディスプレイの端末で読む前提になっていて、文字の拡大や文字列のハイライト、検索、辞書参照、引用といった機能は使えない。
買う前にそこは知っておいたほうがいい。ただ中身はというと、古代から現代までの諸時代・諸種目を記述しながら、特に江戸時代の音楽に社会史のメスを入れて詳説した、本格的な通史なんだよ。
橘ナナミ
江戸時代の音楽に社会史のメス、という言い方がピンとこないんですが、普通の音楽史と何が違うんでしょう?
佐藤メバル
いい質問だね。音楽の歴史というと、誰がどんな曲を作ったかという作品の話になりがちだ。この本はそこに、その音楽がどんな身分の人に支えられ、どんな場で演奏され、お金がどう動いたか、という社会の側から光を当てる。
江戸の邦楽はとくに複雑多彩で、源流として大事なのに説明が難しい。そこを社会と結びつけて詳しく書いたのが、この本の持ち味だよ。

にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史
みの 著|KADOKAWA
YouTube「みのミュージック」で独自の音楽批評を発信してきた著者が、謡、雅楽、歌舞伎、唱歌、演歌、軍歌、歌謡、J-POP、アイドル、ゲーム、着メロ、ボーカロイドまで、日本で起こった音楽ジャンルの成り立ちを時代順に浮き彫りにします。縄文楽器から初音ミクまでを射程に入れた現代の耳で読む通史で、評論家の語り口だから読み物としてぐいぐい進みます。
こんな人におすすめ
J-POPやボカロから音楽史に入りたい人、評論として音楽史を楽しみたい読者、ジャンル同士のつながりを軽やかに知りたい人。年表を覚えるより、読み物として一気に通したい人に向きます。
良い点
- 縄文からボカロまで一望
- 評論として読み物性が高い
- ジャンル横断の視点が新鮮
気になる点
- 学術的な通史ではない
- 網羅性は辞典に劣る
- 語り口の好みが分かれる
出版社
KADOKAWA
発売日
2024年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは表紙からして、これまでの本と雰囲気が違いますよね。J-POPやボカロまで出てくるって本当ですか?
佐藤メバル
本当だよ。著者はYouTubeの「みのミュージック」で音楽批評を発信してきた人で、この本では謡、雅楽、歌舞伎、唱歌、演歌、軍歌、歌謡、J-POP、アイドル、ゲーム、着メロ、ボーカロイドまで、ジャンルの成り立ちを時代順にたどっていく。
縄文楽器から初音ミクまで、ドレミに翻弄された歴史を一気に描く。評論家の語り口だから、通史というより読み物として面白いんだ。
橘ナナミ
逆に、学術的な正確さみたいなところはどうなんですか? 通史として信頼していいのか、そこが気になります。
佐藤メバル
そこは役割が違うと思って読むのがいいね。厳密な年表や出典を積み上げる学術書ではなく、ジャンル同士がどうつながり、どう変わったかを批評の目で見せる本だ。
だから細部を調べるときは図解の事典を開き、大きな流れと面白さはこの本で掴む。書店員時代も、入口の本と事典を往復するお客さんがいちばん長く読書を続けていたよ。

日本音楽文化史
吉川英史 著|創元社
¥6,407(税込)
日本の伝統音楽の美学的研究で知られた吉川英史による文化史です。同じ著者の通史と並ぶ本格的な一冊で、『日本音楽の性格』『宮城道雄伝 この人なり』などの主著とともに、一般向けの啓蒙書も多く発表し、戦後の邦楽の隆盛に一役買った人物の視点が通底します。478ページと大ぶりで、音楽を文化として読み込む姿勢が際立つ、腰を据えて向き合う一冊です。
こんな人におすすめ
邦楽を美学や文化の側面から考えたい人、研究や論文の土台にしたい学生、吉川英史の仕事をまとめて読みたい読者。曲名や年号より、音楽が担ってきた精神や価値観に関心がある人に向きます。
良い点
- 478ページの厚みがある
- 美学からの視点が独自
- 著者の主著と響き合う
気になる点
- 価格帯は高め
- 入門には難解
- 通読には時間がかかる
出版社
創元社
発売日
1989年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
さっきも吉川英史さんの本が出てきましたよね。この人はどういう人なんですか?
佐藤メバル
日本の伝統音楽を美学の側面から研究した人でね。主著に『日本音楽の性格』『日本音楽の歴史』『宮城道雄伝 この人なり』などがあって、一般向けの啓蒙書も数多く書いている。
戦後の邦楽が盛り上がるのに一役買った人だと言われているよ。この『日本音楽文化史』は478ページと大ぶりで、音楽を文化として読み込む姿勢がはっきり出ている。
美学から入る音楽史だと思って読むといい。
橘ナナミ
美学から入るって、具体的にはどう読めばいいんでしょう? 難しそうで、正直ちょっと構えてしまいます。
佐藤メバル
構えなくていいよ。たとえば「この音は美しいと、誰がいつ決めたのか」と問いながら読むイメージだね。吉川は音そのものだけでなく、その音楽が担ってきた精神や価値観を掘る。
だから曲名や年号を覚える本とは読み味がまるで違う。同じ著者の通史を先に読んでから、こちらで深く沈む。そんな順番がおすすめだよ。

日本音楽との出会い -日本音楽の歴史と理論-
月渓恒子 著|東京堂出版
¥2,420(税込)
「日本音楽とは何か」から、種目と楽器、音階・リズム・楽式・記譜法といった理論を押さえたうえで、雅楽、声明、平家とその後の琵琶楽、能楽、地歌・筝曲・尺八楽、文楽と歌舞伎、近代・現代の音楽へと進む構成です。176ページに主要種目の歴史と現在が整理され、大学のテキストのように学べる一冊。理論から入るので独学の道筋が立てやすいのが持ち味です。
こんな人におすすめ
独学で日本音楽を体系的に学びたい人、音階や記譜法の基礎から知りたい人、大学の授業の副読本を探している学生。種目ごとの歴史と現在を、理論を足がかりに整理したい読者に向きます。
良い点
- 理論と歴史を両輪で学べる
- 種目ごとの章立てが明快
- 176ページで見通しがよい
気になる点
- 網羅性は図解版に劣る
- 写真・図版は多くない
- 踏み込みは概説レベル
出版社
東京堂出版
発売日
2010年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
音階とか記譜法とか、これまで出てきた本ではあまり触れられていなかった気がします。そこから入る本なんですね。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の個性だね。第1部で「日本音楽とは何か」に始まり、種目と楽器、音階、リズムと楽式、記譜法といった理論を押さえてから、第2部で雅楽、声明、平家とその後の琵琶楽、能楽、地歌・筝曲・尺八楽、文楽と歌舞伎、近代・現代へと進む。
理論から歴史へという順番だから、独学でも道筋が立てやすい。176ページで、大学のテキストのような使い方ができるよ。
橘ナナミ
音階って、学校で習うドレミとは全然違うものなんですか? そこがまず引っかかって先に進めません。
佐藤メバル
そこが日本音楽の面白いところでね。この本には音階の章がきちんと用意されていて、ドレミとは違う音の並び方の考え方を学べる。
すると、なぜ雅楽や箏曲があの響きになるのか、理屈の側から見えてくるんだ。音楽は感性だけのものと思われがちだけど、理論を知ると聴こえ方が変わる。そこを丁寧に手ほどきしてくれる本だよ。

図解 近現代日本音楽史
田中健次 著|東京堂出版
¥3,520(税込)
西洋音楽の影響で発展した日本の近代音楽を、子どもの歌、軍歌、はやり唄、学生歌の4ジャンルに分けて俯瞰する図解です。年表と概論を備え、教育音楽の礎となった音楽取調掛、国歌「君が代」の創造譚、検定唱歌集、鉄道唱歌の功罪、自由民権運動と壮士節、演歌屋、寮歌や応援歌までを扱います。近代だけを掘る切り口が独自で、通史では薄くなりがちな部分を厚く読めます。
こんな人におすすめ
明治以降の音楽を詳しく知りたい人、唱歌や軍歌の成り立ちに関心がある読者、近代音楽史を授業や研究で扱う人。通史では薄くなりがちな近現代だけを、図解で厚く押さえたい人に向きます。
良い点
- 近代に絞った図解構成
- 4ジャンルで整理される
- 年表と概論を備える
気になる点
- 古代・中世は扱わない
- 図解版シリーズの一冊
- 価格はやや高め
出版社
東京堂出版
発売日
2022年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『図解 日本音楽史』の著者さんですよね。今度は近現代だけなんですか?
佐藤メバル
そう、タイトルどおり近代以降にぐっと絞った一冊なんだ。西洋音楽の影響でどう発展したかを、子どもの歌、軍歌、はやり唄、学生歌という4ジャンルに分けて俯瞰する。
巻頭に年表、続いて概論があって、音楽取調掛、国歌「君が代」の創造譚、検定唱歌集、鉄道唱歌の功罪、自由民権運動と壮士節、演歌屋、寮歌や応援歌まで出てくる。
近代だけを厚く読むという切り口が面白いよ。
橘ナナミ
軍歌とかは、ちょっと読むのに身構えてしまうテーマです。そういう抵抗がある人にも薦められますか?
佐藤メバル
その気持ちは大事にしていいと思う。ただ、この本は軍歌を煽るためではなく、戦争がどんな歌を生み、どう熱狂を煽ったかを歴史として並べている。
「戦争が軍歌を作る」「戦争美談で熱狂を煽る」といった項目名からも、距離を置いた書き方だとわかるはずだ。
苦手なものこそ、成り立ちを知ると見え方が変わる。そういう読み方に向いた本だよ。

私の日本音楽史 NHKライブラリー 100 (NHKライブラリー 101)
團伊玖磨 著|NHK出版
¥1,170(税込)
「私の日本音楽史」という題が示すとおり、通史を客観的な年表としてではなく、書き手自身の視点から語る一冊です。NHKライブラリーのシリーズに収められ、374ページというまとまった分量で、価格も手に取りやすいのが魅力。著者の名前で選びたい読者に向く本で、事典的に引く図解本や、指導用の基礎講座とは読後感がはっきり違います。
こんな人におすすめ
通史を一人の語りとして読みたい人、著者の視点から日本音楽史に入りたい読者、NHKライブラリーで学び直したい人。事典的に引くのではなく、374ページを読み物として味わいたい人に向きます。
良い点
- 374ページの読み応え
- 価格が手頃
- 一人語りの通史として読める
気になる点
- 事典的に引けない
- 図表は期待できない
- 手に取るまで内容が掴みにくい
出版社
NHK出版
発売日
1999年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは内容紹介がほとんどなくて……。タイトルだけだと、どんな本なのか想像しにくいです。
佐藤メバル
そうだね、正直に言うと、僕もタイトルと著者から入る本だと思っている。「私の日本音楽史」という題のとおり、通史を年表としてではなく、書き手自身の視点で語る一冊だ。
NHKライブラリーに入っていて374ページ、価格も手頃だから、著者の語りで通史を味わうつもりで開くのがいい。
事典のように引く本ではないから、そこは期待値を分けて考えよう。
橘ナナミ
著者の名前を知っている人向け、ということでしょうか? 私はその名前を聞いたことがなくて、選ぶ基準に迷います。
佐藤メバル
それなら、まず名前を調べてから手に取るのがいいかもね。僕の役目は、確かなことだけを伝えることだから、この場で経歴を飾るのはやめておく。
ただ「私の」と冠した通史は珍しくて、客観的な概説に疲れたときに効く種類の本だ。図解で全体を押さえたあと、最後に語りで締める。
そんな順番で読むと、374ページも苦にならないと思うよ。

人物でたどる おもしろ日本音楽史
釣谷真弓 著|東京堂出版
¥1,500(税込)
「十四人の魅力的な人物がご案内致します」という紹介のとおり、日本音楽史を人物からたどる一冊です。年表や種目の解説を追うのではなく、誰が何をしたのかという人の物語として読めるので、名前と出来事が結びついて記憶に残ります。248ページで価格も手に取りやすく、人から歴史に入るという入口の作り方が、通史や図解本とはひと味違います。
こんな人におすすめ
歴史上の人物から音楽に入りたい人、名前を覚えるのが苦手な読者、通史や図解本で挫折した人の再入門として。人名を入口に、日本音楽史の流れをつかみ直したい人に向きます。
良い点
- 人物中心で記憶に残る
- 248ページで読みやすい
- 価格が手頃
気になる点
- 網羅的な通史ではない
- 図版は多くない
- 人物の選び方に好みが分かれる
出版社
東京堂出版
発売日
2013年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「十四人の魅力的な人物がご案内致します」って、なんだか小説みたいな紹介ですね。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の売りなんだ。日本音楽史を年表や種目ではなく、人物からたどる。誰が何をしたのかという物語として読めるから、名前と出来事が結びついて記憶に残りやすい。
248ページで価格も手に取りやすい。人から歴史に入るという入口の作り方が、通史や図解本とはひと味違うんだよ。
用語で挫折した人ほど、この順番が合うと思う。
橘ナナミ
14人って、多いのか少ないのか分かりません。どんな人が選ばれているかは、読んでのお楽しみですか?
佐藤メバル
そうだね、誰が選ばれているかは開いてのお楽しみ。ただ、人物からたどる本のいいところは、気になった一人をきっかけに年表を引きに行けることだ。
たとえばこの人が生きた時代には何があったのか、と別の本に手が伸びる。書店員時代、そうやって何冊も往復するお客さんが、いちばん詳しくなっていったよ。

歴史からでも楽しい! おもしろ日本音楽
釣谷真弓 著|東京堂出版
¥3,080(税込)
古代から近現代までを時代ごとに分け、その時代に歴史上で何が起きたのか、音楽の世界で何が起きたのかを並べて解説する一冊です。「はじめ人間」がクニを作った時代の楽器、奈良の都と芸能音楽の輸入、平安京のダークサイドと雅楽の完成、鎌倉の武家政権と中世芸能の誕生、戦国から天下統一とキリシタン音楽、江戸の三味線・箏曲・歌舞伎、文明開化の音まで、歴史の流れと音楽を重ねて読めます。
こんな人におすすめ
歴史は好きだが音楽史は苦手な人、日本史と音楽を一緒に学びたい高校生・社会人、時代の空気から音楽に入りたい読者。年号と作品を結びつけながら読み進めたい人に向きます。
良い点
- 日本史と音楽を同時に追える
- 章立てが時代順で明快
- つまずきにくい語り口
気になる点
- 専門的な踏み込みは控えめ
- 208ページで概要中心
- 価格はやや高め
出版社
東京堂出版
発売日
2021年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
同じ著者さんの本が続きますね。さっきは人物から、今度は歴史から、という違いなんですか?
佐藤メバル
そう、そこを分けて作っているのが面白いんだ。こちらは古代から近現代までを時代ごとに区切って、その時代に歴史上で何が起きたのか、音楽の世界で何が起きたのかを並べて見せていく。
「はじめ人間」がクニを作った時代の楽器から始まって、奈良の都、平安京のダークサイドと雅楽の完成、鎌倉の武家政権と中世芸能、戦国から天下統一とキリシタン音楽、江戸の三味線や歌舞伎、文明開化の音まで。
日本史と音楽を重ねて読めるんだ。
橘ナナミ
日本史は得意なんですけど、音楽になると急に自信がなくなるんですよね。用語も覚えられなくて。
佐藤メバル
その人にこそ向いている本だよ。歴史の側から入って、この時代にこんな音楽が生まれたのか、と結びつけていく。
用語を先に覚える必要がないから、苦手意識のある人でも入りやすい。同じ著者の『人物でたどる』と並べれば、人からと時代からの両方で網がかかる。
208ページだし、ひとつの章から気軽に読めるよ。

〈裏〉日本音楽史 異形の近代
齋藤桂 著|春秋社
¥2,640(税込)
日本音楽の正史からこぼれ落ちた、不合理や怪異に満ちた言説をたどる近代史です。伝統音楽から軍歌、唱歌、民謡、流行歌までを題材に、いわゆる「日本らしさ」が時代とともにどう変わっていったかを追います。明るい通史や入門書では触れられない裏側に光を当てるので、正史を読み終えた人ほど刺激が強い一冊。表の歴史と並べて読むと効果的です。
こんな人におすすめ
通史を一通り読んだうえで裏側の言説を知りたい人、近代の「日本らしさ」がどう作られたかに関心がある読者、音楽と国家の関係を考えたい人。入門を終えた次の一冊を探している人に向きます。
良い点
- 正史では扱わない題材
- 「日本らしさ」を問い直す
- 227ページで集中して読める
気になる点
- 入門書としては不向き
- 刺激の強い記述がある
- 前提知識があると効く
出版社
春秋社
発売日
2015年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『裏』ってついているのが気になります。表の日本音楽史がある、ということですか?
佐藤メバル
そのとおり。これは日本音楽の正史からこぼれ落ちた、不合理や怪異に満ちた言説をたどる近代史なんだ。伝統音楽から軍歌、唱歌、民謡、流行歌までを題材に、いわゆる「日本らしさ」というものが時代ごとにどう変わっていったかを追う。
正史の隅に落ちた話に光を当てる本だから、通史をひと通り読んだあとに置くと、いちばん刺激が強いと思うよ。
橘ナナミ
怪異って言われると、オカルトみたいな話が入っているんでしょうか? 正直、ちょっと身構えてしまいます。
佐藤メバル
身構えなくていい。ここでいう怪異は、当時の人が真面目に語っていたけれど、いま読み返すと不合理に見える言説のことだ。
音楽の正史はどうしても整った物語になる。でも実際には、都合の悪い話や奇妙な主張がたくさんあった。それを拾い集めると、近代日本の音楽がどう「日本らしく」作られていったかが見えてくる。
227ページで集中して読めるから、通史の次の一冊に向いているよ。

日本音楽史 (1950年) (音楽文庫〈第8〉)
1950年に刊行された「音楽文庫」の一冊で、222ページの日本音楽史です。現在の入門書や図解本のように目次や図版が整っているわけではなく、当時の出版のまま読む資料的な性格の本。だからこそ、戦後まもない時点で日本音楽史がどう語られていたかという視点で読むと面白く、同じテーマの現代の本と読み比べる題材になります。
こんな人におすすめ
古い音楽史がどう語られていたかを知りたい人、同時代資料として読み比べたい研究者や愛好家、戦後の出版に関心がある読書家。現代の入門書と並べて、その違いを味わいたい人に向きます。
良い点
- 当時の語りがそのまま読める
- 222ページで見通しがよい
- 現代の入門書と比較できる
気になる点
- 情報は当然古い
- 入手や状態に左右される
- 最初の一冊には不向き
出版社
詳細情報なし
発売日
詳細情報なし
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
1950年って書いてありますけど……これ、そんなに古い本が今も読めるんですか?
佐藤メバル
読める形で残っていること自体が貴重だね。1950年に出た「音楽文庫」の一冊で、222ページの日本音楽史だ。
いまの入門書のように図版や目次が整っているわけではなくて、当時の出版のまま読む資料的な性格が強い。だから内容を最新の知識として受け取るより、戦後まもない時点で日本音楽史がどう語られていたかを眺める読み方になる。
橘ナナミ
じゃあ、最初に読む一冊ではないですよね? いったい、どんなときに開けばいいのか想像がつきません。
佐藤メバル
そうだね、最初の一冊ではない。入門を一通り読んで、図解で事実を押さえて、それからこの本を開くと、同じ「日本音楽史」という題でも語り方や力点が違うことに気づく。
そこが読み比べの面白さだ。古い本は情報が古いぶん、逆に当時の常識がむき出しで残っている。書店員時代も、こういう古い資料を探しに来るお客さんが一定数いたよ。
日本音楽史の空白地帯を埋める本
橘ナナミ
近世から近代への移行って、どの本で補えますか?
佐藤メバル
『日本音楽の歴史』は、古代から現代までの諸時代・諸種目を記述し、とくに邦楽の源流をなす複雑多彩な江戸時代の音楽に社会史の視点から切り込んだ、本格的・標準的な通史とされている。江戸の町人文化と音楽がどう結びついたかを見たいならここだね。近代の入口は『〈裏〉日本音楽史 異形の近代』で、伝統音楽から軍歌・唱歌・民謡・流行歌までを題材に「日本らしさ」の変遷を追う。正史からこぼれ落ちた言説をたどる作りだから、通史を読んだ後の余白を埋めてくれる。
橘ナナミ
戦中・戦後はどうでしょうか。
佐藤メバル
『図解 近現代日本音楽史』は軍歌やはやり唄を正面から扱う。戦後から現代までの空気を書き手の視点で味わいたいなら、團伊玖磨の『私の日本音楽史』のような一冊を並べておくといい。作曲家が自分の目で見た音楽史だから、年表の行間が埋まるんだ。
橘ナナミ
なるほど……正史と、こぼれ落ちた話と、両方いるんですね。
佐藤メバル
そう。通史は骨格、回想や裏話は血。両方あると、日本音楽史が急に立体的になるよ。
日本史・文学史・地域音楽とつなげて読む
橘ナナミ
音楽だけ追っていると、背景の日本史が飛んでしまう気がします。
佐藤メバル
だから『歴史からでも楽しい! おもしろ日本音楽』が役に立つ。古代から近現代まで各時代に分けて、歴史上で何が起きたのか、音楽の世界では何が起きたのかを並べながら、音楽がどう形成され変遷してきたかを理解できる作りなんだ。『ものがたり日本音楽史』も、政治や宗教と深く結びついた音楽の歴史をたどれば日本の歴史の流れも見えてくる、という立て方をしている。日本史や文学史の本と並行して読むと、同じ時代の解像度がぐっと上がるよ。
橘ナナミ
沖縄や民謡、地域の音楽はどこで補えますか?
佐藤メバル
『図解 日本音楽史 増補改訂版』は増補改訂にあたって沖縄音楽と近代音楽に新たに章を設けている。民謡も含めて広く扱うから、地域音楽の入口としても使いやすい。アイヌ音楽や各地の民謡をさらに深く知りたいなら、地域別の資料や音源に進む道がある。まず全体の中に位置づけてから、一地域を掘るのが迷わない順番だね。
クラシックとポピュラーを一本につなぐ
橘ナナミ
雅楽とJ-POPって、同じ歴史の話として読めるんでしょうか。
佐藤メバル
読める。『にほんのうた』は謡・雅楽・歌舞伎から唱歌・演歌・軍歌・歌謡、そしてJ-POP・アイドル・ゲーム・着メロ・ボーカロイドまでを時代順に並べ、ドレミに翻弄された歴史として描いていく。雅楽・声明から近代の西洋音楽受容、新日本音楽・現代邦楽へと進む流れを扱う本と重ねて読むと、断絶に見えていたものが接続してくるよ。クラシックとポピュラーの橋は、じつは明治の唱歌あたりに架かっているんだ。
橘ナナミ
授業や執筆で使うなら、どれを手元に置くべきですか?
佐藤メバル
基礎事項をコンパクトに分類・整理した『よくわかる日本音楽基礎講座』は、用語や音階、楽器で迷ったときにいつでも振り返れる。長唄・能・歌舞伎などの種目を細かく追うなら『ひと目でわかる日本音楽入門』のような構成が細かい一冊が便利だよ。
よくある質問
日本音楽史をまったくの初心者が最初に読むべき1冊はどれですか?
橘ナナミ
日本音楽史をまったくの初心者が最初に読むべき1冊はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
新書サイズなら『ものがたり日本音楽史』が最初の一冊に向いています。素朴な鈴や石の笛から仏教音楽の伝来、雅楽・能楽・歌舞伎・文楽、文明開化による西洋音楽の導入、現代邦楽までをコンパクトに通してたどれる構成です。人物から入りたい人は『人物でたどる おもしろ日本音楽史』も読みやすい入口になります。
日本音楽史と西洋音楽史は、どちらから勉強すればいいですか?
橘ナナミ
日本音楽史と西洋音楽史は、どちらから勉強すればいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
日本音楽史から入るのをおすすめします。日本の近代は文明開化による西洋音楽の導入を抜きに語れず、日本の側の流れを知っていると、西洋の受容が「外来の音がどう入ってきたか」という物語として立体的に見えてきます。通史を一冊読んでから西洋音楽史に渡ると、行き来が楽になります。
雅楽や能など、伝統邦楽だけを学べる本はありますか?
橘ナナミ
雅楽や能など、伝統邦楽だけを学べる本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
雅楽・声明・能楽・琵琶・尺八・箏・三味線・民謡・沖縄音楽までを図解で整理した『図解 日本音楽史 増補改訂版』が網羅的です。種目ごとの音楽的特徴をもう少し細かく追いたいなら、雅楽・声明・平家・能・地歌筝曲・尺八楽・文楽・歌舞伎という並びで構成された『ひと目でわかる日本音楽入門』が使いやすいでしょう。
明治以降の近代・近現代の日本音楽史を扱った本は?
橘ナナミ
明治以降の近代・近現代の日本音楽史を扱った本はについて教えてください。
佐藤メバル
『図解 近現代日本音楽史』が、子どもの歌・軍歌・はやり唄・学生歌の4ジャンルに分けて近代音楽の歴史を俯瞰します。正史からこぼれた言説をたどる『〈裏〉日本音楽史 異形の近代』、作曲家の目で語る『私の日本音楽史』を並べると、近代の像が立体的になります。
J-POPや歌謡曲の歴史を学べる本のおすすめは?
橘ナナミ
J-POPや歌謡曲の歴史を学べる本のおすすめはについて教えてください。
佐藤メバル
『にほんのうた』が該当します。謡・雅楽・歌舞伎から唱歌・演歌・軍歌・歌謡、さらにJ-POP・アイドル・ゲーム・着メロ・ボーカロイドまでを時代順に浮き彫りにする構成で、縄文楽器から初音ミクまでを一本の線として追えます。
図解やマンガで日本音楽史をざっくり掴める本はありますか?
橘ナナミ
図解やマンガで日本音楽史をざっくり掴める本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
『図解 日本音楽史 増補改訂版』が代表的です。邦楽の理解に必要な事項を見開き2頁の解説と図表で整理しており、困ったときに引く資料としても使えます。まず視覚で全体を見てから、文章の通史で流れを補う読み方も効果的です。
絶版・品切れの本は図書館や中古で入手すべきですか?
橘ナナミ
絶版・品切れの本は図書館や中古で入手すべきですかについて教えてください。
佐藤メバル
本によります。オンデマンドのPOD版として入手できる通史もあり、その場合は大きいディスプレイを備えた端末で読むのに向いていると明記されています。1950年刊の音楽文庫のような古い資料は、図書館や古書店をあたる前提で探すとよいでしょう。
音楽史の本は電子書籍(Kindle)でも読める?
橘ナナミ
音楽史の本は電子書籍(Kindle)でも読めるについて教えてください。
佐藤メバル
電子化の対応は本ごとに異なるので、購入前に必ず確認してください。オンデマンド版のように端末閲覧を前提とした作りになっているもの、紙の新刊として流通しているもの、古書でしか出回っていないものがあります。紙・電子・図書館の三点を候補にしておくと、入手で詰まりません。
まとめ
橘ナナミ
たくさん聞いて、最初に読む一冊が決まりました。『ものがたり日本音楽史』から始めて、図解で肉付けする作戦です。
佐藤メバル
いい順番だね。読了後の次の一歩も忘れずに。気になった雅楽や長唄の曲を実際に聴く、年表を自分でノートに写す、気になった記述の一次資料を追う——この三つをやると、知識が自分の音楽史に変わっていく。
橘ナナミ
年表を写すの、地味ですけど効きそうですね。
佐藤メバル
書店員時代、音楽史の棚を作るのに年表を何度も書き写したよ。平安の雅楽、江戸の三味線、明治の唱歌、昭和の歌謡、平成のポップス。並べてみると、時代の境目にいつも新しい音が入ってきているのが見えてくるんだ。
橘ナナミ
なるほど……日本の音楽史って、川の流れみたいですね。上流に雅楽があって、途中で西洋という支流が合流して、下流でJ-POPになって海に出る。
佐藤メバル
いい喩えだ。だったら本は、その川を上る舟だよ。一冊で全流域は渡れないから、浅瀬を漕ぐ小舟と、沖に出るための頑丈な船を選び分ける。まずは軽い舟で、雅楽のあたりから漕ぎ出してごらん。
