実験音楽の本のおすすめ人気ランキング16選【2026年版】

監修

佐藤メバル

佐藤メバル

@shelfy_mebaru

編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ

橘ナナミ

@medias_nanami

編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。

最終更新: 2026年10月

橘ナナミ

橘ナナミ

「実験音楽 本」で検索していて気づいたんですけど、出てくる本がぜんぜん毛色が違うんです。ディスクガイド、432頁の大著、電子音楽の研究書…。何から読めばいいのか、正直わからなくなりました。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。実験音楽の本は、入門書が一冊あって順番に読むタイプのジャンルじゃないんだ。理由ははっきりしている。実験音楽という言葉が、ジャンル名というより「姿勢」を指しているから。ジェニ・ゴチョークの『実験音楽 1970年から現代まで』でも、特定の響きや様式では定義できない——探究すること、不確実性を引き受けることだと書かれている。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、「実験音楽って何?」を知りたい人と、「何を聴けばいい?」を知りたい人では、最初の一冊が違うんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。書店員だった頃、現代音楽の棚は「難しそう」と敬遠されて、お客さんが隣のロック棚に流れていくのを何度も見た。でも入口さえ間違えなければ、この分野は驚くほど入りやすい。今日は軸ごとに整理しよう。

実験音楽の本の選び方

目的別

橘ナナミ

橘ナナミ

目的で分けるとどうなりますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

大きく四つ。通史を通したいならマイケル・ナイマン『実験音楽──ケージとその後』と、その現在地を描いたゴチョーク。特定の人物を深く知りたいなら小野光子『日本の音楽家を知るシリーズ 武満徹』が写真資料中心で読みやすい。聴くための地図が欲しいならChee Shimizu『OBSCURE SOUND REVISED EDITION』やフィリップ・ロベール『エクスペリメンタル・ミュージック』。作曲や演奏のヒントならアンドラーシュ・シフ『静寂から音楽が生まれる』のように演奏家の言葉の本が効く。

レベル別

橘ナナミ

橘ナナミ

難易度も気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

初めてなら武満徹の入門書かディスクガイド、そして河合孝治『ダンスと音楽』のような横のつながりから入るのも手だね。ナイマンを読んだ中級者はゴチョークへ。研究者なら川崎弘二『NHKの電子音楽』のような一次資料を積んだ大著へ、というのが自然な階段になる。

形式別

橘ナナミ

橘ナナミ

形式は?

佐藤メバル

佐藤メバル

通史・概論、インタビュー集、評論、ディスクガイドの四つ。ハンス・ウルリッヒ・オブリスト『ミュージック』はシュトックハウゼンやブーレーズ、ヨーコ・オノら17名の証言で構成されたインタビュー集で、これは「読む歴史」だね。

価格・ボリューム別

橘ナナミ

橘ナナミ

値段や厚さの差も大きいですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

手頃なのはスージー鈴木『日本の新しい音楽 1975』や『OBSCURE SOUND』の2,000〜2,500円台。3,000円台のシフ、5,000円台のゴチョークは読み応えも鈍器級。川崎弘二『NHKの電子音楽』は一万円を超える研究書だから、図書館で確かめてから決めるのも現実的だよ。

著者の立場別

橘ナナミ

橘ナナミ

書き手が作曲家か研究者かでも違いますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

全然違う。ナイマンは作曲家としての切迫感から書いた。柿沼敏江『アメリカ実験音楽は民族音楽だった』は研究者の視点。スージー鈴木はジャーナリスト、松武秀樹『電子音楽名人』は現場の演奏家・エンジニア側の語り。同じ史実でも焦点が変わるから、2冊並べると立体的に見える。

入手性別

橘ナナミ

橘ナナミ

古い本は手に入りにくいですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

刊行から年数が経った本は、店頭に常時あるとは限らない。だから書店で取り寄せ可否を確認する、図書館を使う、電子版の有無を見る——この三つを最初にチェックする癖をつけるといい。入手できるうちに買うのも、この分野では一つの判断だよ。

実験音楽の本をひと目で比較

橘ナナミ

橘ナナミ

えっ、16冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず

#画像名称おすすめ対象価格一言
1
実験音楽: ケージとその後
実験音楽: ケージとその後実験音楽に興味を持ったが何から読めばいいか迷っている人、ケージ以降の前衛を思想から理解したい人、ディスクガイドで音源を集めた後に背景の議論を知りたい人。読み物としても資料としても使えるので、最初の一冊にも辞書にもなります。-実験音楽論の原点
2
実験音楽 1970年から現代まで
実験音楽 1970年から現代まで1970年以降の実験音楽を体系的に追いたい人、美術やテクノロジーとの横断に関心がある人、ディスクガイドで個別の音源を知った後に全体像をつかみたい人。辞書的に長く使えるので、手元に置いて損のない一冊です。¥5,280半世紀を主題で切る大作
3
エクスペリメンタル・ミュージック―実験音楽ディスクガイド
エクスペリメンタル・ミュージック―実験音楽ディスクガイド実験音楽の音源をこれから集めたい人、ジャンル名は聞いたことがあっても実際に聴いたことがない人、名盤ガイドを一冊だけ手元に置きたい人。最初の100枚を決めるための道しるべとして使えます。-名盤100枚の道しるべ
4
アメリカ実験音楽は民族音楽だった: 9人の魂の冒険者たち
アメリカ実験音楽は民族音楽だった: 9人の魂の冒険者たちアメリカの実験音楽を社会や文化の側から考えてみたい人、ケージ周辺の人物を個別に知りたい人、音源ガイドより評論を好む読者。切り口の独自さを味わいたいときに手に取ってほしい一冊です。-民族音楽として読む
5
OBSCURE SOUND REVISED EDITION【オブスキュア・サウンド リヴァイズド・エディション】クラブ・ミュージックを通過した耳で聴く、アンビエント、ニューエイジ、現代音楽、実験音楽、あるいは異形のジャズとロック
OBSCURE SOUND REVISED EDITION【オブスキュア・サウンド リヴァイズド・エディション】クラブ・ミュージックを通過した耳で聴く、アンビエント、ニューエイジ、現代音楽、実験音楽、あるいは異形のジャズとロック中古レコード店で掘るのが好きな人、アンビエントやニューエイジの再評価を追いたい人、既存のディスクガイドに飽きてきた人。棚を作る側の視点で選曲を眺められ、買い物の予習にもなります。¥2,530秘境レコード約800枚

実験音楽の本のおすすめ人気ランキング

橘ナナミ

橘ナナミ

一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!

佐藤メバル

佐藤メバル

よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

実験音楽: ケージとその後
1

実験音楽: ケージとその後

マイケルナイマン 著|水声社

4.8

実験音楽という言葉がどう使われてきたのかを、いち早く体系的に論じた名著です。ジョン・ケージを出発点に置き、その後に何が起きたのかまでを見通す構成で、水声社から出た326ページの評論。単なる人名辞典ではなく「何をもって実験とするか」という問いそのものを組み立てていく点が読みどころです。後の世代がこの本を前提に語るため、議論の土台を確かめる一冊として長く機能します。

こんな人におすすめ

実験音楽に興味を持ったが何から読めばいいか迷っている人、ケージ以降の前衛を思想から理解したい人、ディスクガイドで音源を集めた後に背景の議論を知りたい人。読み物としても資料としても使えるので、最初の一冊にも辞書にもなります。

良い点

  • 実験音楽論の古典として参照される
  • ケージ以降を見通す視座が得られる
  • 議論の土台を確認できる

気になる点

  • 音源ガイドとしての情報は薄め
  • 前提知識なしだと難所がある
  • 図版やビジュアルは少なめ

出版社

水声社

発売日

1992年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「実験音楽 ケージとその後」って、タイトルからして教科書みたいですけど、いきなり読んで大丈夫なんでしょうか。

音源を知る前に読むべき本なのか、気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。これは実験音楽という言葉がどう使われてきたのかを、最初にきちんと論じた名著です。ジョン・ケージを出発点に置いて、その後に何が起きたのかまで見通す。

水声社から出た326ページの評論で、読み物として骨があるぶん、軽い入門書ではありません。でも「なぜこれを実験と呼ぶのか」を自分で考えられるようになるので、先に触れておくと他の本の解像度がぐっと上がります。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、地図みたいな本なんですね。じゃあディスクガイドから入った人は、後から読むほうがいいんでしょうか。それとも先に読んだほうがいいですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

どちらでも大丈夫ですが、効き方が変わります。先に読むと「これは何の変奏なのか」と聴き方が変わる。後から読むと、集めた音源が一本の線でつながる。

註や引用も多い本なので、行き来しながら読むタイプだと思ってください。通読を急がず、気になった章から拾い読みしても十分に効きますよ。

実験音楽 1970年から現代まで
2

実験音楽 1970年から現代まで

ジェニ・ゴチョーク 著|フィルムアート社

¥5,280(税込)

4.7

総作品数700超、500名を超える作家と作品から、1970年以降の実験音楽を見通す大作です。時系列や技法別ではなく「共鳴」「和声」「オブジェ」「かたち」「知覚」「言語」「相互作用」「場所」「歴史」という主題で切っていく構成が特徴。ケージから大友良英、クリスチャン・マークレー、マンフレッド・ヴェルダー、ヴァンデルヴァイザー以降まで射程に入ります。科学や哲学、視覚芸術、環境保護活動まで侵食する音楽の全貌を、ナイマンの名著の「続編のようなもの」として描きました。

こんな人におすすめ

1970年以降の実験音楽を体系的に追いたい人、美術やテクノロジーとの横断に関心がある人、ディスクガイドで個別の音源を知った後に全体像をつかみたい人。辞書的に長く使えるので、手元に置いて損のない一冊です。

良い点

  • 主題別の構成で関心から入れる
  • 500名超の作家を横断的に押さえる
  • 索引と原註が充実している

気になる点

  • 価格もページ数も大きい
  • 通読には相当な時間がかかる
  • 図版中心の入門書ではない

出版社

フィルムアート社

発売日

2026年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

同じ「実験音楽」でも、こちらは1970年から現代まで。500名を超える作家って聞くと、正直ちょっと圧倒されます。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこがこの本の凄みです。時系列や技法別ではなく「共鳴」「和声」「オブジェ」「かたち」「知覚」「言語」「相互作用」「場所」「歴史」という主題で切っていく。

科学、数学、哲学、視覚芸術、テクノロジーまで侵食していく様子が、500名を超える作家と作品から見えてきます。

ナイマンの名著の「続編のようなもの」として書かれた本なので、前の一冊と並べると立体的になります。

橘ナナミ

橘ナナミ

主題ごとっていうのは、逆に読みにくくないですか。通史として頭から読むべきか、迷ってしまいます。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは好みが分かれるところ。通読より、関心のある主題から入る読み方が向いています。たとえば「場所」から入ればサイト・スペシフィックな作品へ、「知覚」から入れば聴き手の位置や時間の話へ進める。

索引と原註が充実しているので、辞書的に長く使える一冊です。価格は張りますが、その分だけ参照する回数も多くなりますよ。

エクスペリメンタル・ミュージック―実験音楽ディスクガイド
3

エクスペリメンタル・ミュージック―実験音楽ディスクガイド

フィリップ・ロベール 著|NTT出版

4.6

未来派、ダダ、アール・ブリュット、電子音楽、ミュージック・コンクレート、ケージ、フリー・ジャズ、ミニマル、ニュー・ウェイヴ、インダストリアル、ノイズ、実験的テクノまで、20世紀初頭から現在にいたる実験的な名盤約100枚を紹介するディスクガイドです。序文はフランスの実験的ギタリスト、ノエル・アクショテ。批評家・佐々木敦氏が最良の歴史教科書と評したように、選曲そのものが歴史の説明になっています。

こんな人におすすめ

実験音楽の音源をこれから集めたい人、ジャンル名は聞いたことがあっても実際に聴いたことがない人、名盤ガイドを一冊だけ手元に置きたい人。最初の100枚を決めるための道しるべとして使えます。

良い点

  • 幅広いジャンルを100枚で俯瞰
  • 選曲自体が歴史の説明になる
  • 序文と推薦の言葉が豪華

気になる点

  • 100枚では物足りない人もいる
  • 音源の入手難易度は高め
  • 図版は多くない

出版社

NTT出版

発売日

2009年10月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

これはディスクガイドなんですね。未来派、ダダ、電子音楽、フリー・ジャズ、ノイズまで約100枚って、幅がすごいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、20世紀初頭から現在までを約100枚でたどる構成です。アール・ブリュットやミュージック・コンクレート、ミニマル、ニュー・ウェイヴ、インダストリアル、実験的テクノまで一冊でつながる。

批評家・佐々木敦氏が最良の歴史教科書と評しているように、ただの名盤列挙で終わらないところが強みです。

序文はフランスの実験的ギタリスト、ノエル・アクショテが寄せています。

橘ナナミ

橘ナナミ

100枚って、多いのか少ないのか。全部聴くのはさすがに無理そうですが、どう使えばいいんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

全部聴く前提じゃなくていいんです。気になった一枚から入って、その前後に何があったのかを本文で確認する。

選曲の幅そのものが歴史の説明になっているので、拾い読みでも十分に学べます。音源を集める前の道しるべとして使うのが、いちばん失敗が少ない使い方ですよ。

アメリカ実験音楽は民族音楽だった: 9人の魂の冒険者たち
4

アメリカ実験音楽は民族音楽だった: 9人の魂の冒険者たち

柿沼敏江 著|フィルムアート社

4.4

タイトルがそのまま主張です。アメリカの実験音楽を、芸術音楽の系譜としてだけでなく民族音楽として捉え直し、9人の音楽家を「魂の冒険者たち」として追います。フィルムアート社から出た269ページの評論で、人名や作品を並べるタイプではありません。なぜその音楽が生まれたのかを文化の側から考えさせる構成で、ディスクガイドを何冊か読んだ後に置くと視点が一段深くなります。

こんな人におすすめ

アメリカの実験音楽を社会や文化の側から考えてみたい人、ケージ周辺の人物を個別に知りたい人、音源ガイドより評論を好む読者。切り口の独自さを味わいたいときに手に取ってほしい一冊です。

良い点

  • 切り口が独特で評論として面白い
  • 9人に絞ったことで筋が通る
  • 269ページで集中して読める

気になる点

  • ディスクガイドではない
  • 扱う範囲はアメリカ中心
  • 専門的な記述は多め

出版社

フィルムアート社

発売日

2005年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「アメリカ実験音楽は民族音楽だった」って、タイトルがもう言い切っていますね。これ、どういう意味なんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

タイトルがそのまま主張です。アメリカの実験音楽を、芸術音楽の系譜としてだけでなく民族音楽として捉え直す。

9人の音楽家を「魂の冒険者たち」として追う構成で、フィルムアート社から出た269ページの評論です。

人名や作品を並べるタイプではなく、なぜその音楽が生まれたのかを文化の側から考えさせる。ディスクガイドを何冊か読んだ後に置くと、視点が一段深くなります。

橘ナナミ

橘ナナミ

9人って絞られているぶん、逆に読む側の好みが出そうですね。誰が出てくるのかも気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは実際に手に取って確かめてほしいところです。ただ、9人に絞ったことで一冊を通して筋が通るのは確かで、人名事典としてではなく読み物として成立しています。

音源を聴きながら片手に置くというより、聴いた後に考えるための本。じっくり向き合いたい人におすすめです。

OBSCURE SOUND REVISED EDITION【オブスキュア・サウンド リヴァイズド・エディション】クラブ・ミュージックを通過した耳で聴く、アンビエント、ニューエイジ、現代音楽、実験音楽、あるいは異形のジャズとロック
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OBSCURE SOUND REVISED EDITION【オブスキュア・サウンド リヴァイズド・エディション】クラブ・ミュージックを通過した耳で聴く、アンビエント、ニューエイジ、現代音楽、実験音楽、あるいは異形のジャズとロック

CheeShimizu 著|リットーミュージック

¥2,530(税込)

4.3

DJでバイヤーのChee Shimizu氏が約800枚をセレクトしたディスクガイドです。2013年の『桃源郷的音盤640選』の大増補改訂版で、前作とのダブりはわずか200枚強。アンビエント、ニューエイジ、現代音楽、実験音楽、異形のジャズとロックまで、クラブ・ミュージックを通過した耳で選ぶという視点が効いています。中古市場でプレミア価格になっていた一冊が、改訂で再び手に取りやすくなりました。

こんな人におすすめ

中古レコード店で掘るのが好きな人、アンビエントやニューエイジの再評価を追いたい人、既存のディスクガイドに飽きてきた人。棚を作る側の視点で選曲を眺められ、買い物の予習にもなります。

良い点

  • 約800枚という圧倒的な量
  • 前作との重複が少ない
  • 価格が比較的手頃

気になる点

  • 入手できない盤も多い
  • 解説は短文が中心
  • 索引的な使い方はしにくい

出版社

リットーミュージック

発売日

2020年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

タイトルが長いですね。アンビエント、ニューエイジ、現代音楽、実験音楽、異形のジャズとロック……。これ、レコードガイドなんですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、DJでバイヤーのChee Shimizu氏が約800枚をセレクトしたディスクガイドです。2013年の『桃源郷的音盤640選』の大増補改訂版で、前作とのダブりはわずか200枚強。

クラブ・ミュージックを通過した耳で選ぶという視点が効いていて、既存のガイドとは並ぶ棚が違います。

中古市場でプレミア価格になっていた本が、改訂でまた手に入るようになったのも大きいです。

橘ナナミ

橘ナナミ

800枚は多すぎませんか。どこから手をつければいいのか、正直分からなくなりそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

全部追わなくて大丈夫。この手の本は開いたページの一枚を聴くところから始めるのが正解です。写真と短文でテンポよく進むので、中古レコード店に行く前の予習にも向いています。

掘るのが好きな人ほど、長く使い続ける一冊になりますよ。

ダンスと音楽: ポストモダン、コンテンポラリー、舞踏と実験音楽の共鳴
6

ダンスと音楽: ポストモダン、コンテンポラリー、舞踏と実験音楽の共鳴

河合孝治 著

4.1

ダンスと音楽の関係を、バレエと古典・ロマン派からモダンダンス、ポストモダンダンス、舞踏、クラブ文化、コンテンポラリーまで通して描く一冊です。ジャドソン教会の実験、ピナ・バウシュ、フォーサイス、メレディス・モンク、ローリー・アンダーソン、ルシンダ・チャイルズらの仕事を追いながら、ダンスと音楽が「伴奏」から「並列・独立」へ変わる過程が見えてきます。メルロ=ポンティやドゥルーズ、仏教哲学まで参照する横断性も持ち味です。

こんな人におすすめ

ダンスと音楽の関係を歴史から学びたい人、舞踏と前衛音楽の接点を知りたい人、身体論や現代思想とアートの接続に関心がある人。184ページの見取り図として、横断的な視点を得たいときに。

良い点

  • ダンス史と音楽史を同時に追える
  • 舞踏と前衛音楽の章が貴重
  • 哲学の視点まで踏み込む

気になる点

  • 一章あたりの分量は限られる
  • 写真や図版は少なめ
  • 音楽中心の読者には遠回り

出版社

詳細情報なし

発売日

2025年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ダンスと音楽、しかも舞踏やポストモダンダンスまで。184ページでこれは、かなり詰め込まれていそうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

密度は濃いです。バレエと古典・ロマン派から始まって、モダンダンス、ジャドソン教会のポストモダンダンス、ピナ・バウシュ、フォーサイス、ジャズダンス、ストリート、クラブとテクノ、そして舞踏と前衛音楽。

ダンスと音楽が「伴奏」から「並列・独立」へ変わっていく流れが一本の軸になっています。メレディス・モンクやローリー・アンダーソン、ルシンダ・チャイルズの名前も出てきますよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

途中でメルロ=ポンティやドゥルーズ、仏教哲学まで出てくるのが意外でした。音楽の本なのに、思想の話も入るんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の面白さです。身体と時間という共通点から、現象学やリゾーム的思考、舞踏と仏教哲学へと広がっていく。

ジャンルを横断する地図として読むと、実験音楽の位置も見え方が変わります。コンテンポラリーダンスとサウンドアートの現在まで触れているので、入門から現在地までを一冊で押さえられます。

日本の音楽家を知るシリーズ 武満徹
7

日本の音楽家を知るシリーズ 武満徹

小野光子 著|ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス

4.1

世界に橋をかけた音楽家・武満徹を、写真や図版とともに紹介するシリーズの第一弾です。生い立ちから恩師の清瀬保二・早坂文雄、瀧口修造と実験工房、《死んだ男の残したものは》、映画音楽の仕事、そして「水」「樹」「風」「鳥」「星」「庭」「夢」といった自然の項目まで、テーマごとに作品と人生を並べていく構成。レコード&CDジャケット集や海外出版の紹介も収めた112ページです。

こんな人におすすめ

武満徹の名前は知っているが作品をまだ聴いていない人、写真や資料を眺めながら概要をつかみたい人、実験工房や映画音楽の周辺に関心がある人。最初の一冊として手に取りやすい作りです。

良い点

  • ビジュアルが豊富で読みやすい
  • 実験工房など周辺情報も厚い
  • 112ページで概要がつかめる

気になる点

  • 作品の深い分析は少ない
  • 専門的な研究書ではない
  • 図版目当てだと物足りない

出版社

ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス

発売日

2017年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

112ページで武満徹。写真や図版が多いシリーズなんですね。これなら入りやすそうだし、まず概要をつかめそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、日本が誇る音楽家をビジュアルとともに紹介するシリーズの第一弾です。これまで知られていなかった素顔や創作の裏側、作品の聴きどころを、テーマごとに追っていきます。

レコード&CDジャケット集や「プロデューサー」としての姿まで載っていて、資料としても楽しい。

瀧口修造と実験工房の話、《死んだ男の残したものは》、映画音楽の仕事など、実験音楽の読者にも刺さる内容が多いですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

自然の章で「水」「樹」「風」「鳥」「星」「庭」「夢」を扱うって、ずいぶん変わった切り口ですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが武満徹という人の面白さなんです。作品を項目ごとに整理してくれるので、聴いた曲の背景を後から確認しやすい。

112ページと薄いので、まず概要をつかむ最初の一冊に向いています。海外での活動や阪神タイガースの話まで載っているあたり、肩の力が抜けていて読みやすいですよ。

静寂から音楽が生まれる
8

静寂から音楽が生まれる

アンドラーシュ・シフ 著|春秋社

¥3,300(税込)

3.9

ピアニスト、アンドラーシュ・シフのインタビューとエッセイをまとめた一冊です。第1部はマーティン・マイアーとの対話で、演奏解釈やレパートリー、楽器の秘密、室内楽、レッスン、コンクールや批評との関わり、人生行路までを語ります。第2部はバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、バルトーク、クルターグらをめぐるエッセイ。音楽は一回性の出来事であり、前後に静寂があるからこそ驚けるという視点が全体を貫きます。

こんな人におすすめ

クラシックの演奏解釈に関心がある人、演奏家がどう作品と向き合うかを知りたい人、実験音楽を聴く前に耳を耕しておきたい人。聴き方の土台を作りたいときにちょうどよい一冊です。

良い点

  • 対話篇とエッセイ篇の二本立て
  • 自筆譜や楽器の話が具体的
  • 新聞書評でも取り上げられた

気になる点

  • 424ページと厚い
  • クラシック前提の話題が多い
  • 実験音楽の直接の解説はない

出版社

春秋社

発売日

2019年9月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ピアニストのインタビュー&エッセイ集が、なぜこの記事に並ぶんでしょう。実験音楽とは少し違う気もするんですが。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいところに気づきました。この本のタイトルは『静寂から音楽が生まれる』。音楽は一回性の出来事で、前後に静寂があるからこそ奇跡に驚ける——その感覚は、ケージが沈黙を作品にした問題意識と地続きなんです。

第1部はマーティン・マイアーとの対話で演奏解釈や人生行路、第2部はバッハからクルターグまでのエッセイ。

音をどう聴くかを耕す一冊として、実験音楽を聴く耳の下地になります。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、聴く準備の本なんですね。424ページと厚いですが、通読するものでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

通読でも拾い読みでも、どちらも成立します。対話の部分は読み物としてぐいぐい進み、エッセイは一曲ずつ独立しているので気になる作曲家から開けばいい。

自筆譜やファクシミリに触れる章もあり、演奏家の視点から作品に入っていけます。クラシックに馴染みがなくても、聴き方のヒントとして読めると思いますよ。

ミュージック 「現代音楽」をつくった作曲家たち
9

ミュージック 「現代音楽」をつくった作曲家たち

ハンス・ウルリッヒ・オブリスト 著|フィルムアート社

3.9

キュレーター、ハンス・ウルリッヒ・オブリストによるインタビュー集で、1950年代以来の音楽と、視覚芸術・文学・建築・映画の前衛が取り結んだ関係を扱います。前衛音楽、電子音響音楽の誕生、ミニマリズム&フルクサス、現代の巨匠という4章に、シュトックハウゼンからクラフトワークまで17名の証言が並びます。本人の言葉で語られる「歴史」なので、資料というよりオーラルヒストリーとして読めるのが持ち味です。

こんな人におすすめ

インタビュー形式で現代音楽史を追いたい人、美術や建築と音楽の横断に関心がある人、創作の過程や他分野との協働を知りたい人。つくる側の思考に触れたいときに向いています。

良い点

  • 本人の言葉で歴史が語られる
  • 美術や建築との接続が豊か
  • 一編ずつ区切って読める

気になる点

  • 評論というより証言の集積
  • レコード紹介は中心でない
  • 人名の予備知識があると有利

出版社

フィルムアート社

発売日

2015年10月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

オブリストって、美術のキュレーターの方ですよね。現代音楽の作曲家にインタビューしているのが意外です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の面白さです。『キュレーション』に続く第二弾として、1950年代以来の音楽と、視覚芸術・文学・建築・映画の前衛との関係を扱っています。

シュトックハウゼン、ブーレーズ、クセナキス、オリヴェロス、ライヒ、オノ・ヨーコ、そしてクラフトワークまで、総勢17名の証言が並ぶ。

本人の言葉で語られる歴史なので、資料というよりオーラルヒストリーとして読めます。

橘ナナミ

橘ナナミ

ビョークが推薦の言葉を寄せているのも気になります。あ、電子音響とミニマリズムで章が分かれているんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、4章立てで時代と領分が整理されています。美術や建築をやっている人が音楽の作り方を知りたいときにも効く本です。

創作の過程や他分野との協働の話が中心なので、演奏や作品紹介より「つくる側の思考」を知りたい人に向いています。

415ページですが、インタビュー単位で区切って読めますよ。

日本の新しい音楽 1975
10

日本の新しい音楽 1975

スージー鈴木 著|日刊現代

¥1,870(税込)

3.9

1975年、荒井由実、中島みゆき、山下達郎、矢沢永吉。のちにニューミュージックと呼ばれる音楽が輪郭を持ちはじめた年を、ジャンル論ではなく音楽の感覚と時代の変化として描きます。歌謡曲の制作システムの内側からズレていく過程、楽曲の響き、言葉の選び方、録音技術、テレビやレコード会社との関係までを総合的に見渡し、吉田拓郎や職業作曲家たちも「古い側」として切り捨てない。J-POPの基層をたどる一冊です。

こんな人におすすめ

日本のポピュラー音楽史に関心がある人、J-POPの源流を知りたい人、1970年代の音楽とメディアの関係を考えたい人。一年を切り取る読み方が好きな人にもよく合います。

良い点

  • 1975年に絞った構成が明快
  • 制作システムの内側から描く
  • 録音技術やメディアにも触れる

気になる点

  • 実験音楽そのものの本ではない
  • 人名や曲の予備知識が要る場面も
  • 図版や譜例は少なめ

出版社

日刊現代

発売日

2026年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

1975年、ユーミン、中島みゆき、山下達郎、矢沢永吉。これはニューミュージックの話ですよね。実験音楽とはだいぶ離れている気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

距離はありますが、この記事に置く意味はあります。この本が描くのは「ある日突然ジャンルが生まれた」という話ではなく、歌謡曲の制作システムの内側からズレていくという変化のプロセスです。

フォークやロック、洋楽の影響を受けながら、それぞれが違うやり方で「自分の音楽」を模索した。その試行錯誤がJ-POPの基層になった——という見取り図は、実験音楽が制度からはみ出していく話と重なります。

橘ナナミ

橘ナナミ

吉田拓郎や職業作曲家を「古い側」として切り捨てないところが、地味に誠実ですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の信頼できるところです。楽曲の響き、言葉の選び方、録音技術、テレビやレコード会社との関係まで見渡して、ジャンル論ではなく音楽の感覚と時代の変化として描いている。

1975年という一年を切り取る構成なので、日本のポピュラー音楽史の入り口としても読みやすいですよ。

電子音楽in Japan
11

電子音楽in Japan

田中雄二 著|アスペクト

3.7

田中雄二氏による、日本の電子音楽を扱った587ページの大著です。付属のCD1枚が付いており、読むだけでなく聴きながら確かめられる構成になっているのが大きな強み。通読には覚悟が要りますが、気になる作曲家や作品から開いていく使い方もできます。同じテーマを扱う本と並べて、どこに力点を置いているかを比べてみるのも面白い読み方です。

こんな人におすすめ

日本の電子音楽を音源と一緒に学びたい人、CD付きの資料を手元に置きたい人、厚い一冊を腰を据えて読みたい人。音から入りたい読者にいちばん向く一冊で、気になる章から開いても構いません。

良い点

  • CD付きで音を確認できる
  • 587ページの情報量
  • 作品単位で拾い読みできる

気になる点

  • 通読には時間がかかる
  • 索引頼みの使い方になりがち
  • 図版は多くない

出版社

アスペクト

発売日

2001年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

田中雄二氏の『電子音楽in Japan』、587ページでCD付きなんですね。CDが付いているのは大きいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、音源が手元にあるのは資料として強いです。日本の電子音楽を扱った厚い一冊で、読むだけでなく聴きながら確かめられる構成になっています。

587ページあるので通読は覚悟が要りますが、気になる作曲家や作品から開いていく使い方ができます。同じテーマの本を並べて読むと、どこに力点があるのかの違いも見えてきますよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

川崎弘二氏の本とどう使い分ければいいんでしょう。似たテーマの本がいくつかあって迷います。

佐藤メバル

佐藤メバル

これは好みで選んでいいと思います。ただ、CDが付いているぶん最初に音で入りたい人にはこちらが向く。

逆に年表や資料を細かく突き合わせたい人は、別の通史から入るといいでしょう。何冊か並べて、同じ作品の扱いを比べてみるのも面白い読み方ですよ。

日本の電子音楽
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日本の電子音楽

川崎弘二 著|愛育社

3.7

川崎弘二氏による、日本の電子音楽の通史です。愛育社から出た1115ページという規模で、資料として長く参照されることを前提にした作りになっています。索引から気になる作曲家を引く、年表を追う、巻末の資料を突き合わせるといった使い方が中心。日本の電子音楽を調べるうえでの基準になる一冊で、手前の入門書で見取り図を作ってから開くと、必要な箇所だけを拾い読みできます。

こんな人におすすめ

日本の電子音楽史を長期にわたって調べたい人、川崎弘二氏の仕事をまとめて参照したい人、資料を手元に置いておきたい人。辞書的に使う前提の人に向く、覚悟のいる一冊です。

良い点

  • 1115ページの圧倒的な情報量
  • 索引から引ける資料性
  • 日本の電子音楽の基準になる

気になる点

  • 通読はほぼ現実的でない
  • 価格と置き場所を選ぶ
  • 入門書としては不向き

出版社

愛育社

発売日

2009年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

1115ページ! これはもう辞書ですね。さすがに読み通すのは難しそうですが、どんな本なんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

川崎弘二氏による日本の電子音楽の通史で、愛育社から出た1115ページの大著です。辞書として使うつもりで買うのが現実的で、索引から気になる作曲家を引く、年表を追う、といった読み方が向いています。

巻末の資料まで含めて、日本の電子音楽を調べる際の基準になる一冊です。

橘ナナミ

橘ナナミ

そこまで大きいと、逆にどこから手をつければいいのか分からなくなってしまいそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

だからこそ、手前の入門書で見取り図を作ってから開くのがおすすめです。流れが頭に入っていれば、必要な箇所だけ拾い読みできます。

逆に、これを最初に開いて面白いと思える人は、かなりこの分野に向いていると思いますよ。

NHKの電子音楽
13

NHKの電子音楽

川崎弘二 著|フィルムアート社

¥19,800(税込)

3.7

1925年の東京放送局開局から、1954年の電子音楽スタジオ仮設、1956年の黛敏郎・諸井誠「七のヴァリエーション」、1966年のシュトックハウゼン「テレムジーク」、1967年の湯浅譲二「ホワイト・ノイズによるイコン」、東京オリンピックや大阪万博を経て2000年代まで。ラジオというメディアと電子テクノロジーの交錯を、書籍・新聞記事・放送台本・自筆譜・内部資料・インタビューで埋めていく1432ページです。

こんな人におすすめ

メディア史と音楽史を横断して読みたい人、戦後の日本の音響技術史に関心がある人、人名索引や主要作品リストを使いながら長期で参照したい人。調べるための一冊として図書館で確認するのも手です。

良い点

  • 一次資料に基づく記述が厚い
  • 技術者やプロデューサーにも光を当てる
  • 人名索引と作品リスト付き

気になる点

  • 価格が非常に高い
  • 1432ページで扱いにくい
  • ラジオ史の記述も多く専門的

出版社

フィルムアート社

発売日

2025年7月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

1432ページ、19800円。これはもう、覚悟がいる本ですね。NHKの電子音楽だけで一冊になるものなんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

それだけの歴史があるんです。1925年の東京放送局開局から始まって、1954年に電子音楽のためのスタジオが仮設され、1956年の黛敏郎・諸井誠「七のヴァリエーション」、1966年のシュトックハウゼン「テレムジーク」、1967年の湯浅譲二「ホワイト・ノイズによるイコン」が生まれ、東京オリンピックや大阪万博を経て2000年代まで。

ラジオと音響技術の交差点を、資料と証言で埋めていく本です。

橘ナナミ

橘ナナミ

作曲家だけじゃなく、プロデューサーやエンジニアの証言も入っているんですね。人名索引と主要作品リストまである。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが決定的で、集団創作としての電子音楽が見えてきます。録音再生技術の発展史としても読めるし、オンド・マルトノやテルミンといった初期電子楽器の受容史としても読める。

効果音やラジオドラマ、映画との関係まで射程に入っています。価格は張りますが、図書館で確認してから手元に置くかを決める、という選び方もできますよ。

篠原眞の電子音楽
14

篠原眞の電子音楽

川崎弘二 著|engine books

¥2,200(税込)

3.7

2012年に京都芸術センターで開かれた「篠原眞の電子音楽上演会」の来場者向け配布物をもとにした120ページです。第一部に篠原眞自身の論文やエッセイ、第二部に四人の執筆者による論文やレポート、第三部に作品リストという三部構成。手元に置いて音源と照合するタイプの本で、単独の評伝というより上演の記録と資料をまとめた性格が強い。作家一人に絞ったときの密度が分かります。

こんな人におすすめ

篠原眞の電子音楽を聴いていて作品リストが欲しい人、上演会の記録として読んでみたい人、薄い冊子を資料として手元に置きたい人。参照しながら聴く使い方に向いています。

良い点

  • 本人の論文やエッセイを収録
  • 作品リストが実用的
  • 120ページで手に取りやすい

気になる点

  • 一般向けの入門書ではない
  • 上演会の記録という性格が強い
  • 図版は限られる

出版社

engine books

発売日

2012年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

120ページで2200円。コンサートの来場者に配られた冊子が、そのまま本になったんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、2012年に京都芸術センターで開かれた「篠原眞の電子音楽上演会」の配布物がもとになっています。

三部構成で、篠原眞自身の論文やエッセイ、四人の執筆者による論文やレポート、そして作品リスト。

単独の評伝というより、上演の記録と資料をまとめた一冊です。他の電子音楽本と並べると、作家一人に絞ったときの密度がよく分かりますよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

作品リストが付いているのは、実際に聴くときに助かりそうですね。小さい本だけど、資料としての性格が強いんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそこが使いどころです。手元に置いて音源と照合するタイプの本で、通読するというより参照する。

コンサートの成果をもとにしているので、上演のためにどこまで調べたのかという臨場感もあります。電子音楽の作品を追いかけている人ほど、この薄さがかえってありがたく感じられると思いますよ。

黛敏郎の電子音楽
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黛敏郎の電子音楽

川崎弘二 著|engine books

3.7

2011年に京都芸術センターで開かれた「黛敏郎の電子音楽 全曲上演会」の来場者向けに発行された120ページです。第一部には黛敏郎自身の論文とインタビューを収録し、日本における最初の電子音楽をめぐる理論が当時の言葉で読めます。「七のヴァリエーション」の作品紹介や1980年代後半の回顧インタビューも収録。第二部では6人の執筆者の論考に加え、エンジニアの市川文武氏・武藤和雄氏へのインタビューが置かれています。

こんな人におすすめ

黛敏郎の電子音楽を聴いた後に背景を知りたい人、日本の電子音楽の出発点を押さえたい人、上演会の記録として資料を手元に置きたい人。作品を聴きながら照合するのに向いています。

良い点

  • 本人の論文とインタビューを収録
  • エンジニアへの取材が貴重
  • 作品リスト付きで実用的

気になる点

  • 上演会の配布物がもとになっている
  • 120ページで概説は限られる
  • 専門用語が多め

出版社

engine books

発売日

2011年8月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

今度は黛敏郎。同じシリーズで120ページですね。上演会の配布物という成り立ちも同じなんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

同じ作りです。2011年に京都芸術センターで開かれた「黛敏郎の電子音楽 全曲上演会」の来場者向けに発行されたもの。

第1部には黛敏郎自身の論文やインタビューが入っていて、日本で最初の電子音楽の作品をめぐる理論が当時の言葉で読めます。

「七のヴァリエーション」の作品紹介や、1980年代後半の回顧インタビューも収録されています。

橘ナナミ

橘ナナミ

エンジニアの方へのインタビューが入っているのが渋いですね。そこ、普通の音楽書だと抜けがちなところです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこなんですよ。機材と人の手の話が残っているのは大きい。6人の執筆者による論文に加えて、黛敏郎の仕事を長く支えた市川文武氏、武藤和雄氏へのインタビュー、そして第3部に作品リスト。

上演された曲を家で聴きながら照合すると、いちばん楽しい読み方になりますよ。

電子音楽名人
16

電子音楽名人

松武秀樹 著|日経BP

3.5

松武秀樹氏による186ページの一冊で、CD-ROMが1枚付いています。理論書やディスクガイドとは違い、電子音楽の現場の側から見た話として読めるのが持ち味。コンパクトなつくりなので、資料本を何冊か読んだ後に肩の力を抜いて読むのに向いています。付属のCD-ROMと一緒に確かめながら進めれば、機材や制作の話も具体的にイメージできます。

こんな人におすすめ

電子音楽の制作や機材の話が好きな人、年表や資料を読んだ後の息抜きがほしい人、付属のCD-ROMとあわせて手元で確かめたい人。現場の実感に触れたいときに向いています。

良い点

  • CD-ROM付きで体験できる
  • 186ページで読みやすい
  • 現場寄りの視点が珍しい

気になる点

  • 網羅的な歴史書ではない
  • 用語の説明は多くない
  • 資料性を求める人には物足りない

出版社

日経BP

発売日

1998年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

松武秀樹氏の『電子音楽名人』、186ページでCD-ROM付き。電子音楽の「名人」って、誰のことなんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは実際に読んで確かめてほしいところですが、現場の側から電子音楽を見た一冊であることは間違いありません。

186ページとコンパクトで、CD-ROMという付属物があるのもこの本ならでは。理論書やディスクガイドとは違う角度から、電子音楽の世界に入れます。

橘ナナミ

橘ナナミ

川崎弘二氏の資料本が続いた後だと、こういう現場寄りの本は息抜きにもなりそうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいバランスだと思います。歴史や資料を積み上げた後に、作り手の実感が伴う話を読むと、頭の中でつながるんですよ。

電子音楽に限らず、機材や制作の話が好きな人なら、肩の力を抜いて読めます。まずは手に取って、付属のCD-ROMと一緒に確かめてみてください。

実験音楽・前衛音楽・現代音楽・即興はどう違うのか

橘ナナミ

橘ナナミ

「実験音楽」と「前衛音楽」「現代音楽」「即興」って、記事によって使い方が違って、正直こんがらがります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは最初にほどいておこう。現代音楽は20世紀以降のクラシックの流れを指す広い呼び方。前衛音楽はその中でも1950年代にシュトックハウゼンやブーレーズらが推し進めた先鋭な動き。実験音楽はケージ以降、結果のわからない過程そのものを作品にする姿勢を指す。即興は演奏の方法、サウンドアートは音を空間や造形として扱う領域だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

重なる部分があるから、余計に混乱するんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。オブリスト『ミュージック』は「前衛音楽」「電子音響音楽の誕生」「ミニマリズム&フルクサス」「現代の巨匠たち」の4章で17名に語ってもらう構成で、用語の重なりを人の声で確かめられる。定義を暗記するより、実例の束で掴んだほうが早い。

ナイマンからゴチョークへ、そして日本の実験音楽

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さんが「一本の線」と言っていたの、もう少し詳しく知りたいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

ナイマン『実験音楽──ケージとその後』がケージ、ウォルフ、ルシエらの世代を描いた。ゴチョーク『実験音楽 1970年から現代まで』は、それを「続編のようなもの」として引き受け、総作品数700超・500名を超える作家と作品から半世紀を見通す。構成が時系列や技法別ではなく「共鳴」「和声」「オブジェ」「かたち」「知覚」「言語」「相互作用」「場所」「歴史」という主題ごとに組まれているのが読みどころだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

巻末の人名を見ると、大友良英さん、小杉武久さん、刀根康尚さん、杉本拓さん、Sachiko Mさん、中村としまるさん…日本の名前も多い。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の強みだね。日本の文脈を補うなら川崎弘二の研究が効く。『日本の電子音楽』『NHKの電子音楽』は放送台本や自筆譜、関係者インタビューまで積み上げた一次資料寄りの大著で、NHK電子音楽スタジオを軸に黛敏郎、諸井誠、湯浅譲二、一柳慧、小杉武久らが並ぶ。同じ著者の『篠原眞の電子音楽』『黛敏郎の電子音楽』は各120頁の小冊子だから、こちらから試すのもいい。田中雄二『電子音楽in Japan』も外せない。

橘ナナミ

橘ナナミ

電子音楽と実験音楽って、やっぱり地続きなんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

地続き。だから歴史の本とディスクガイドを交互に読むと理解が速い。柿沼敏江『アメリカ実験音楽は民族音楽だった』は9人の冒険者を追う視点が独特で、シフ『静寂から音楽が生まれる』のような演奏家の言葉を挟むと、抽象論が急に体温を持ちはじめるよ。

聴きながら読む——音源ガイドと読む順番

橘ナナミ

橘ナナミ

本を読みながら聴くなら、何から聴けばいいですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

日本の電子音楽を読むなら、黛敏郎「七のヴァリエーション」、シュトックハウゼン「テレムジーク」、湯浅譲二「ホワイト・ノイズによるイコン」あたりは本文に登場するので必聴。1964年東京オリンピックの黛「カンパノロジー・オリンピカ」、1970年大阪万博の各館の電子音楽まで押さえると、『NHKの電子音楽』の記述が立体的になる。

橘ナナミ

橘ナナミ

読む順番も決めておきたいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

入口は武満徹の入門書かディスクガイド、次にナイマン、そしてゴチョーク、余力があればオブリスト『ミュージック』で当事者の声、最後に川崎弘二の研究書で一次資料へ——この階段なら挫折しにくい。寄り道として河合孝治『ダンスと音楽』、松武秀樹『電子音楽名人』、スージー鈴木『日本の新しい音楽 1975』を挟むと、音をめぐる時代の空気がつながってくる。

よくある質問

実験音楽の本は何から読めばいいですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

実験音楽の本は何から読めばいいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

「何を知りたいか」で入口が変わります。歴史を通したいならマイケル・ナイマン『実験音楽──ケージとその後』、聴く対象を知りたいならChee Shimizu『OBSCURE SOUND REVISED EDITION』やフィリップ・ロベール『エクスペリメンタル・ミュージック』、人物から入るなら小野光子『日本の音楽家を知るシリーズ 武満徹』が読みやすい入口です。最初の一冊は難易度より目的で選ぶのが失敗しないコツです。

ナイマン『実験音楽──ケージとその後』は今でも読む価値がありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

ナイマン『実験音楽──ケージとその後』は今でも読む価値がありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

あります。ケージ、クリスチャン・ウォルフ、アルヴィン・ルシエらを軸に、実験音楽という考え方を論じた古典で、後の世代の議論はここを起点にしています。ゴチョーク『実験音楽 1970年から現代まで』も、この本の「続編のようなもの」として書かれています。現在地を知る本と往復して読むと効果的です。

『実験音楽 1970年から現代まで』は初心者にも読めますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

『実験音楽 1970年から現代まで』は初心者にも読めますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

読めますが、432頁の大著なので覚悟は必要です。時系列や技法別ではなく「共鳴」「知覚」「言語」「場所」といった主題ごとに章が分かれているので、関心のある章から拾い読みしても成立します。まず第一章「実験音楽を定義する」を読み、気になった主題へ進むのが挫折しない読み方です。

実験音楽と現代音楽・前衛音楽の違いは何ですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

実験音楽と現代音楽・前衛音楽の違いは何ですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

現代音楽は20世紀以降のクラシックの流れを指す広い呼び方、前衛音楽はその中でもシュトックハウゼンやブーレーズら1950年代の先鋭な動きを指します。実験音楽はケージ以降、結果のわからない過程そのものを作品として引き受ける姿勢を指す言葉です。オブリスト『ミュージック』はこうした重なりを当事者の証言から確かめられる一冊です。

実験音楽の入門書で安価なもの・文庫のものはありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

実験音楽の入門書で安価なもの・文庫のものはありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

価格帯で選ぶなら、スージー鈴木『日本の新しい音楽 1975』や『OBSCURE SOUND REVISED EDITION』が2,000〜2,500円台で手に取りやすい部類です。同じ著者による篠原眞・黛敏郎の電子音楽の小冊子も比較的求めやすい価格です。文庫化の有無は版元の状況で変わるため、書店で在庫と併せて確認するのが確実です。

『実験音楽 1970年から現代まで』に電子書籍版はありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

『実験音楽 1970年から現代まで』に電子書籍版はありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

電子版の配信状況は時期によって変わるため、出版社の公式サイトや各電子書店で最新の対応状況を確認してください。紙で読む場合も、主題別の構成なので索引と目次を味方につけると扱いやすくなります。

大友良英や日本の実験音楽について読める本はありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

大友良英や日本の実験音楽について読める本はありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

ゴチョーク『実験音楽 1970年から現代まで』には大友良英、小杉武久、刀根康尚、杉本拓、Sachiko M、中村としまる、宇波拓、角田俊也、鈴木昭男、池田亮司ら日本の名前が多数登場し、世界史の中に位置づけられます。国内の文脈を厚く知るなら、川崎弘二『日本の電子音楽』『NHKの電子音楽』や田中雄二『電子音楽in Japan』が軸になります。

実験音楽の本を聴きながら読むのにおすすめの音源は?

橘ナナミ

橘ナナミ

実験音楽の本を聴きながら読むのにおすすめの音源はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

日本の電子音楽を読むなら、黛敏郎「七のヴァリエーション」、シュトックハウゼン「テレムジーク」、湯浅譲二「ホワイト・ノイズによるイコン」が本文に登場する代表例です。加えて黛敏郎「カンパノロジー・オリンピカ」や1970年大阪万博の各館の電子音楽まで聴くと、記述の解像度が一段上がります。

まとめ

橘ナナミ

橘ナナミ

今日の話でいちばん驚いたのは、「実験音楽はジャンルじゃなくて姿勢」というところでした。本の選び方まで変わってくるんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。だから「どの本が正解」ではなく「今の自分にどの入口が合うか」で選んでほしい。通史が欲しい日にディスクガイドを開いても、たぶん弾まない。

橘ナナミ

橘ナナミ

逆に、聴く気満々の日に432頁の理論書を開いたら、そっと閉じちゃいそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

それでいいんだよ。閉じて、一枚かける。それも立派な実験音楽の勉強だ。読了できなくても、耳が育ったら戻ってくればいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

本が「宿題」じゃなくて「チューニング」になる感じですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

うん。ナイマンもゴチョークも、読み終えたあとに静けさが残る本だ。ケージの《4分33秒》と同じで、本を閉じたあとの無音のほうが本編かもしれない。実験音楽の本棚は、埋めるものじゃなくて、鳴らすものなんだ。

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Editorial Team

編集に関わる専門家