養老孟司の子育てに関する本のおすすめ人気ランキング24選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
「養老孟司 子育て 本」で調べたら、同じ先生の本がたくさん出てきて……どれから読めばいいのか分からなくなってしまいました。
佐藤メバル
いい質問だね。養老さんの子育て本は、思想の単著・対談集・新書の入門・絵本で、性格がまるで違う。書店員時代、この本を「子育て」の棚に置くか「養老孟司」の棚に置くか、毎年迷ったのを覚えているよ。
橘ナナミ
そんなに違うんですか。『子どもが心配』も『絵になる子育てなんかない』も、同じ子育ての話に見えます。
佐藤メバル
『子どもが心配』は、医療少年院や小児科、脳研究の現場にいる四人と語り合う新書だ。宮口幸治さん、高橋孝雄さん、小泉英明さん、高橋和也さんが、それぞれの現場から「人として大事な三つの力」をめぐって話す。一方『絵になる子育てなんかない』は、二児のワーキングマザーが養老さんに直接尋ねたやりとりから生まれた本で、「子どもは自然。親の思いどおりにならなくて当たり前」が軸にある。社会と教育の議論か、親の心の持ちようか。まったく別の一冊だよ。
橘ナナミ
なるほど……! 同じ「子育て」でも、立っている場所が違うんですね。
佐藤メバル
そう。だから今日は「どれが一番」ではなく、悩みと読む段階に合う一冊を選べるように整理しよう。
養老孟司の子育てに関する本の選び方
悩み別で選ぶ
橘ナナミ
たとえば「習い事をさせすぎているかも」と悩んだら、どの本ですか。
佐藤メバル
『虫捕る子だけが生き残る〜「脳化社会」の子どもたちに未来はあるのか〜』だね。養老さん、池田清彦さん、奥本大三郎さんという元祖・昆虫少年の三人が、都市化が極まった「脳化社会」で子どもをどう育てるかを真剣に議論している。理屈より体験を重んじる立場がはっきり出る一冊で、スマホやゲームの時間が気になる人にも刺さる。
橘ナナミ
じゃあ「勉強についていけるか不安」という悩みは。
佐藤メバル
『子どもが心配』がいい。ここでは、共感する力=温かい心を育むことが教育の最終目標だという話が出てくる。点数ではないところに視点が移るのが養老本の特徴だね。思春期やきょうだい関係に迷っているなら『子どもの頃、本当はこんなことを考えていた: 親が子を理解するために』。養老さんを含む六名が自分の子ども時代を振り返るエッセイで、「子どもは言葉にできないだけで、みんなわかっている」という見方がもらえる。
形式別で選ぶ
橘ナナミ
単著と対談本は、読みやすさが違いますか。
佐藤メバル
大きく違う。思想をじっくり追うなら単著で、『唯脳論』や『「わかる」ことは「かわる」こと』、そして新潮文庫の『養老孟司特別講義 手入れという思想』。この一冊には子育て、都市化、死の意味についての講演がまとめて収録されていて、「お化粧も子育ても同じで毎日毎日手入れをする」という言葉が本文にある。これが養老流の子育て論の芯だよ。
橘ナナミ
対談本は会話だから入りやすいんですね。
佐藤メバル
そう。『こどもを野に放て! AI時代に活きる知性の育て方』は、登山アプリ「YAMAP」を創業した春山慶彦さんが養老さん、中村桂子さん、池澤夏樹さんと語り合う対談集。自然体験を通して知性を育む話が中心になる。新書なら『子どもが心配』や『AIの壁 人間の知性を問いなおす』が千円前後で入門に向く。絵本は子どもと一緒に開く前提の形式で、これは別枠の楽しみ方だね。
読者レベル別で選ぶ
橘ナナミ
はじめて養老本を読む人と、『バカの壁』を読んだ人では選び方が変わりますか。
佐藤メバル
変わる。はじめてなら新書か対談集。すでに『バカの壁』を読んでいる人は、そこから『唯脳論』『AIの壁』へ進むと、脳化社会という考え方と子育て論がつながって見えてくる。思想を深めたい人には、布施英利さんの『養老孟司入門 ――脳・からだ・ヒトを解剖する』が全体の案内板になる。
子どもの年齢別で選ぶ
橘ナナミ
乳幼児の親と、思春期の親では響く本が違いますよね。
佐藤メバル
乳幼児の親には『絵になる子育てなんかない』。手をかけすぎず、思いどおりにならなくて当たり前という構えが楽になる。小学生なら『虫捕る子だけが生き残る』や『こどもを野に放て!』で外遊びの意味を確かめるのがいい。思春期なら『子どもの頃、本当はこんなことを考えていた』や『自分を知りたい君たちへ』——後者は「若いうちに自分が何者か、わかるわけがない」と語りかける読書ガイドで、親が読んでも肩の力が抜ける。
入手形式別で選ぶ
橘ナナミ
電子書籍やオーディオブックで聴けるものもありますか。
佐藤メバル
新書や文庫は電子版が用意されているものが多い。オーディオブックは対応状況が本ごとに違うから、各書店で確認するのが確実だ。紙で手元に置く価値が高いのは、読み返して索引のように使う『手入れという思想』と、捕虫網の振り方から展翅法まで解説する実践的な『ぼくらの昆虫採集』。この二冊は紙でないと使いにくい。
予算・ボリューム別で選ぶ
橘ナナミ
価格帯もけっこう幅がありますね。
佐藤メバル
新書や文庫は千円前後で短時間で読める。単行本は二千円前後でページ数も多く読み応えがある。まず新書で一冊、響いたら単著へ——この段階を踏むと失敗が少ない。最初から分厚い単著に挑んで「難しい」で終わるのが、いちばんもったいないんだよ。
養老孟司の子育てに関する本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、24冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
養老孟司の子育てに関する本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

こどもを野に放て! AI時代に活きる知性の育て方
養老孟司 著|集英社
¥1,760(税込)
登山アプリ「YAMAP」創業者の春山慶彦さんが、養老孟司・中村桂子・池澤夏樹の三人と語り合う対談集です。テーマは、都市化でリアルな自然経験が減った子どもたちに、どうやって身体性に裏打ちされた知性を育てるか。養老さんは「現代社会は、感覚から入るものを軽視しがち」と指摘し、中村さんは「矛盾を組み込んで『何でもあり』でやってきたから生きものは続いてきた」と語ります。単独の育児書ではなく、生きものや自然をめぐる三人の視点が交差する構成が、他の養老本との大きな違いです。
こんな人におすすめ
自然体験の大切さは感じているけれど、何から始めればいいかわからない人。子どもに外で遊ばせる理由を言葉にしたい親。AI時代の教育に関心があるビジネスパーソンや、効率重視の毎日に疲れた大人にも。
良い点
- 三人の異なる立場の対話
- AI時代という切り口
- 身体性の重要性が伝わる
気になる点
- 体系的な育児法はない
- ハウツーを求める人に不向き
- 対談ゆえ重複も感じる
出版社
集英社
発売日
2024年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
春山慶彦さんって、山のアプリを作った人ですよね。その人が養老先生と自然の話をするのが、子育てとどうつながるのか、いまいち想像できなくて。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。この本の芯は、自然体験を通して知性が育つという話なんだ。養老さんは「現代社会は、感覚から入るものを軽視しがちで、勉強すれば何でも頭に入ると思っています。でも実は、それ以前に自然の中で感覚を磨くことが非常に重要なのです」と言っている。
中村桂子さんは「へんてこ」「無駄」「弱さ」があるから生きていけると語り、池澤夏樹さんは、うまくいったのは運なのだから感謝しなければ、と。
立場の違う三人の言葉が重なるので、自然の捉え方が立体的に見えてくるよ。
橘ナナミ
なるほど。じゃあ虫捕りとか、山を歩くとか、そういう具体的な行動の話が出てくるんですね。
佐藤メバル
目次を見ると、第一章が養老さんとの「自然の中で身体を動かすだけで無意識に学んでいる」、第二章が中村さんとの「『へんてこ』『無駄』『弱さ』があるから生きていける」、第三章が池澤さんとの「自然に学ぶ『インチキせずに生きる力』」。
きれいに整った育児マニュアルではなく、考えるための材料が詰まっている。効率や正解を追いかけて疲れたときに、立ち返る場所になる一冊だと思うよ。

子どもが心配 人として大事な三つの力 (PHP新書)
養老孟司 著|PHP研究所
¥1,100(税込)
遊び場が消え、外で体を動かす子を見なくなった時代に、解剖学者・養老孟司さんが四人の識者と向き合った対談集です。医療少年院で非行少年と関わってきた宮口幸治さん、慶應義塾大学病院の小児科医・高橋孝雄さん、国産初の超電導MRIを開発した小泉英明さん、自由学園の高橋和也さん。認知、育児法、脳、学校教育と、論点が一人ひとりまったく違うのが読みどころで、自然体験を軸にした対談本とは切り口が重なりません。
こんな人におすすめ
「正しい育児法」をネットで検索して不安になる親。教育や発達に関わる仕事をしている人。子どもの自己肯定感や非行、脳の育ちに関心があり、複数の専門家の見方を比べたい読者。
良い点
- 四人の専門家の知見
- 具体的な発言が豊富
- 子ども観が広がる
気になる点
- 結論を一つに絞らない
- 実践手順は書かれない
- 対談形式が合わない人も
出版社
PHP研究所
発売日
2022年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
四人も専門家が出てくると、言っていることがバラバラになりませんか? 読んでいて混乱しないかなって。
佐藤メバル
そこが面白いんだよ。たとえば宮口幸治さんは、子どもの話を否定すると「大人が思っている以上に傷つきます」と警告する。
高橋孝雄さんは「親は自分の願望を子に託すな」と訴える。小泉英明さんは、幸せのポイントは共感能力、いわゆる「温かい心」を育むことだと語る。
高橋和也さんは、自分の利益になることだけを求める発想を戒めて、自分を超える価値に触れることの大切さを説く。
バラバラというより、それぞれの現場から出てきた言葉が並んでいる感じだね。
橘ナナミ
じゃあ、共通しているところはあるんですか?
佐藤メバル
養老さんの締めの言葉が象徴的だよ。「何もかも手に入るわけではないけれども、生きているだけで満足できる。そんな状況を、生まれてくる子どもたちに対してつくってあげないといけない」と。
そして、親が子どもに対して「あなたたちが元気に飛び跳ねていてくれればいい」とさえ願えばよい、と結ぶ。
難しいテクニックより、大人の構えの問題なんだと伝わってくる。

絵になる子育てなんかない
養老孟司 著|幻冬舎
「子どもは自然。親の思いどおりにならなくて当たり前」——この一言に尽きる本です。二児のワーキングマザーが養老孟司さんに、子育てで大切なことを尋ねた問答をまとめた一冊。理想の親像や、SNSで見かけるようなきれいに整った子育てに息苦しさを感じている人に、肩の力を抜かせてくれます。識者との対談本とは違い、現場で毎日育児をしている人の素朴な問いが出発点になっているのが、この本ならではの読み味です。
こんな人におすすめ
ワーキングマザー・ワーキングファザーで、理想と現実の差に疲れている人。育児書を読んでも「うちはうまくいかない」と感じる人。短い時間で気持ちを切り替えられる読み物がほしい人。
良い点
- メッセージが明快
- 共感しやすい問答形式
- 短時間で読みやすい
気になる点
- 具体策は示されない
- 分量が物足りない人も
- 突き放しに感じる面も
出版社
幻冬舎
発売日
2011年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「絵になる子育てなんかない」ってタイトル、SNSで見るきれいな写真の投稿を思い出しました。ああいうのに疲れてる人、多いですよね。
佐藤メバル
そう、その感覚がこの本の入口だね。養老さんは「子どもは自然。親の思いどおりにならなくて当たり前」と言い切る。
二児のワーキングマザーの方が実際に尋ねた、子育てで大切なことへの答えをまとめた本なんだ。理想の親像を掲げるのではなく、親と子のあたらしい幸せを提案する、という姿勢が一貫しているよ。
橘ナナミ
でも、そう言い切られちゃうと、じゃあどうすればいいの? って思っちゃいそうです。
佐藤メバル
そこは、答えをもらう本というより、力を抜くための本だと思って読むといい。具体的な手順を求めるなら、他の本のほうが向いている。
だけど、育児書を何冊読んでも苦しさが消えない、という人にはちょうどいい。養老さんの言い方がぶっきらぼうに見えても、根っこは親を責めないほうに向いている。そういう本だよ。

虫捕る子だけが生き残る~「脳化社会」の子どもたちに未来はあるのか~ (小学館101新書 14)
養老孟司 著|小学館
¥770(税込)
養老孟司・池田清彦・奥本大三郎という、いわば元祖・昆虫少年の三人が、都市化が極まった「脳化社会」の中で子どもをどう育てるかを本気で議論した一冊です。タイトルは過激ですが、中身は井戸端の子育て論議。三人それぞれの日本教育改造論にもなっていて、教育をめぐる話が縦横に広がります。小学館101新書の新書判なので手に取りやすく、肩肘を張らずに読めるのも特徴です。
こんな人におすすめ
虫好きの子どもを持つ親、あるいは自分が昆虫少年・少女だった大人。教育や都市化に疑問を持っている人。三人の掛け合いを気軽に楽しみたい読者。
良い点
- 掛け合いが軽快
- 新書で読みやすい
- 教育論として濃い
気になる点
- 結論は分散気味
- 学術的な整理はない
- 虫の話が苦手だと辛い
出版社
小学館
発売日
2008年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「虫捕る子だけが生き残る」って、ちょっと怖いタイトルですよね。虫が苦手な子はもうダメ、みたいに読めてしまって。
佐藤メバル
そこは誤解されやすいところだね。これは昆虫少年だった三人による、子育てをめぐる井戸端会議なんだ。表題の「脳化社会」というのは、体を使わず頭の中だけで物事が進む社会のこと。
そういう社会で子どもをどう育てるか、養老さん、池田清彦さん、奥本大三郎さんが真剣に議論している。虫が捕れるかどうかより、体を通して世界と関わってきたか、という問いなんだよ。
橘ナナミ
なるほど、排除する話じゃなくて、体を使う経験の話なんですね。三人とも昆虫少年だったっていうのが、説得力あります。
佐藤メバル
そうだね。専門も立場も違うし、虫の趣味は共通している。だから話が噛み合うんだろうね。教育論として読むと案外ハードなんだけど、語り口は軽い。
新書判でページ数も多くないから、養老さんの対談ものを一冊試してみたい人には入りやすいと思う。三人の掛け合いを読むだけでも、都市化した社会の見え方が変わってくるよ。

養老孟司&茂木健一郎の「天才脳」の育て方
養老孟司 著|アスコム
養老孟司さんと茂木健一郎さんという、脳をめぐる語り方がまったく違う二人の名前が並ぶ企画です。本文は31ページとごく短く、DVD-VIDEOが一枚付属する構成になっています。紙の文章と映像を組み合わせて頭の働きに迫る、というのが他の養老本にはない作り。中身の細部は手元の情報では確認できないため、ここでは構成の情報にとどめますが、読み物というより映像込みのパッケージとして受け取る一冊です。
こんな人におすすめ
活字を読む時間が取れず、まずは映像で入りたい人。茂木健一郎さんと養老孟司さん、語りのスタイルが違う二人の掛け合いに関心がある読者。脳の育て方というテーマを、短い分量でつまみ食いしたい人。
良い点
- 映像で見られる
- 短時間で完結
- 二人の対話が楽しめる
気になる点
- 本文が31ページと短い
- 文章量を求める人に不向き
- DVDを再生する環境が必要
出版社
アスコム
発売日
2006年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
31ページでDVD付きって、ちょっと珍しい形ですね。普通の子育て本とは全然違う。
佐藤メバル
そう、そこが正直に言うとこの本の特徴なんだ。本文はごく短くて、付属のDVDが本体の一部になっている。
だから読書というより、映像込みのパッケージとして受け取る本だね。養老さんと茂木健一郎さんという、脳の話をめぐるアプローチがまったく違う二人が並んでいるのも面白いところだよ。
橘ナナミ
じゃあ、詳しい内容は読んでみないとわからない感じですか?
佐藤メバル
そうだね。手元の情報では中身の細部までは確認できていないから、ここで断定的なことは言わない。ただ構成としては、文章と映像の両方で「天才脳」というテーマに迫る作りになっている。
活字が苦手でも入りやすいし、逆にじっくり読みたい人には物足りないかもしれない。そういう見極めは、実際に手に取ってからでいいと思うよ。

子どもの頃、本当はこんなことを考えていた: 親が子を理解するために
養老孟司 著|PHP研究所
養老孟司さんをはじめ、絵本作家の黒井健さん、霊長類学者の山極寿一さん、俳優の原田龍二さん、画家のクリスティーヌ・プレさん、小児科の馬場一雄さんという六人が、それぞれ自分の子ども時代を振り返る教育エッセイです。「自分の頭で考える」「直感を大切に」「誰もやっていないことをやってみよう」と、ばらばらの角度から語られます。「大人はみんな、子どもは大体のことをわかっているということに気づいていない」という養老さんの指摘が、全編を貫く灯りになっています。
こんな人におすすめ
子どもが何を考えているのか分からず戸惑っている親。自分の子ども時代を思い出して、大人の記憶を更新したい人。異なる分野で活躍する六人がどう育ったかを読むのが好きな読者にも。
良い点
- 六人分の視点がある
- エッセイで読みやすい
- 子ども観が更新される
気になる点
- 統一的な理論はない
- 内容にばらつきがある
- 実践法は書かれない
出版社
PHP研究所
発売日
2001年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
養老先生だけじゃなくて、絵本作家さん、霊長類学者さん、俳優さんまで出てくるんですね。なんか意外な顔ぶれです。
佐藤メバル
そうなんだよ。黒井健さんは「直感を大切にしよう」、山極寿一さんは「誰もやっていないことをやってみよう」、原田龍二さんは「心の底から感謝しよう!」、クリスティーヌ・プレさんは「新しいことに挑戦しよう!」、馬場一雄さんは「青春の夢に忠実であれ」。
それぞれの専門も世代も違うから、子ども時代の振り返り方もまったく違う。
橘ナナミ
養老先生ご自身は何を書いているんですか?
佐藤メバル
「自分の頭で考えるということ」だね。そして序盤で、大人はみんな、子どもは大体のことをわかっているということに気づいていない、というより忘れてしまっている、と指摘する。
子どもは言葉でうまく感情を表現できないだけで、状況や相手のことをみんなわかっているのだ、と。これが六人分のエッセイ全体の前提になっている。
読み終わると、わが子の沈黙の意味が少し違って見えるはずだよ。

バカなおとなにならない脳 (よりみちパン!セ 11)
養老孟司 著|理論社
¥1,787(税込)
理論社から出たシリーズの11番目にあたる一冊で、タイトルがそのまま問いになっています。『バカの壁』で「わかっているつもり」の問題を書いてきた養老孟司さんが、大人になるとはどういうことかを正面から置き直した本です。ページ数は213ページ。手元の資料では中身の細部までは確認できていないので、ここでは構成の情報にとどめますが、養老さんの入門としても入口になりやすい一冊です。
こんな人におすすめ
「大人になりたくない」「このままでいいのか」と感じている10代後半から20代の読者。子どもに大人の世界をどう伝えるか考えている親。養老さんの本を最初の一冊として試したい人。
良い点
- タイトルが問いになる
- 養老入門に向く
- 適度な分量
気になる点
- 詳細情報が少ない
- 実用書ではない
- 好みが分かれる
出版社
理論社
発売日
2005年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「バカなおとなにならない脳」ってタイトル、けっこう刺さります。私、大人になるの怖いなって思うことがあって。
佐藤メバル
いい反応だね。この本は理論社のシリーズの11番目で、タイトルがそのままテーマになっている。養老さんが『バカの壁』で書いてきた「わかっているつもり」という問題を、大人になるという局面に引き寄せた本だと考えていい。
ただ、正直に言うと手元の資料では中身の細部まで追えていないから、そこは実際に開いて確かめてほしい。
橘ナナミ
じゃあ、『バカの壁』を読む前に、こっちから入るのはありですか?
佐藤メバル
ありだと思うよ。213ページという分量で、まずこちらから大人になるというテーマに触れて、物足りなくなったら『バカの壁』へ進む、という読み方もできる。
順番に決まりはないけれど、養老さんの語り口が自分に合うかどうかを確かめるには、ちょうどいい長さだと感じているよ。

養老孟司特別講義 手入れという思想 (新潮文庫)
養老孟司 著|新潮社
¥737(税込)
新潮文庫で、もとは『手入れ文化と日本』というタイトルだった講演集を改題した一冊です。八つの講演が収録され、子育て、都市化、死の意味まで扱います。養老孟司さんは「お化粧も子育ても同じで毎日毎日手入れをする。どういうつもりでどこにもっていくのかはわからなくても、そうやってきたのが私たち日本人の生き方の特徴だ」と語る。毎日の手入れという視点で子育てを捉え直す、養老流日本人論の核心がここにあります。
こんな人におすすめ
子育てを「成果」で測ってしまう自分に疲れた人。手入れや庭仕事など、毎日の暮らしの手触りを大事にしたい読者。日本文化や死生観に関心があり、講演録の語り口で養老さんの考えを追いたい人。
良い点
- 八本の講演を収録
- 子育てと文化がつながる
- 文庫で入手しやすい
気になる点
- 講演録ゆえ重複もある
- 体系立ててはいない
- 話が広く散らばる
出版社
新潮社
発売日
2013年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「手入れ」って、庭とか道具のイメージでした。それが子育てとどうつながるんですか?
佐藤メバル
そこが養老さんの面白いところでね。「お化粧も子育ても同じで毎日毎日手入れをする。どういうつもりでどこにもっていくのかはわからなくても、そうやってきたのが私たち日本人の生き方の特徴だ」と語っている。
完成形を決めてから作るのではなく、毎日少しずつ手を入れて育てていく。その発想で子育てを見直すと、ずいぶん気が楽になるんだよ。
橘ナナミ
なるほど。ほかにはどんな話が入っているんですか?
佐藤メバル
八つの講演が収められていて、目次を見ると「子どもと現代社会」「子育ての自転車操業」「心とからだ」「現代の学生を解剖する」など、子育てと教育の話が半分近くを占める。
テレビを一日平均五時間半見ているという統計に驚いた話や、西行の『山家集』から「心」と「からだ」の言葉を拾い出した話も出てくる。
都市化や死の意味まで広がるけれど、軸は一貫して手入れだよ。

自分を知りたい君たちへ【毎日文庫】 (毎日文庫 よ 1-2)
養老孟司 著|毎日新聞出版
¥990(税込)
毎日文庫で、養老孟司さんが読書の極意を語る一冊です。「若いうちに『自分』が何者か、わかるわけがない。私は四十歳過ぎで本を書き出して二十年あまり、六十五歳ではじめて本が売れた」という本人の言葉が印象的。ファーブル昆虫記から『天地明察』、中村哲さんの本まで、多彩な本が登場し、自然・科学・社会・人間の四章で世界の読み解き方を示します。各章に文章を増補した決定版です。
こんな人におすすめ
「本当の自分」が見つからないと焦っている10代・20代の読者。研究や進路のテーマに悩み、次に読む本を探している人。読書を通して世界の見方を変えたい人。
良い点
- 読書ガイドとして使える
- 章立てが明快
- 自伝的な面もある
気になる点
- 紹介される本が多い
- 全部読むのは大変
- 抽象的な記述もある
出版社
毎日新聞出版
発売日
2026年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これ、私みたいな大学院生に刺さりそうです。「自分が何者か、わかるわけがない」って、ちょっと救われます。
佐藤メバル
そうだろうね。養老さん自身が「私は四十歳過ぎで本を書き出して二十年あまり、六十五歳ではじめて本が売れた」と書いている。
若いうちに自分が何者か分かるはずがない、という前提から始まる本なんだ。章立ても「見る目が変われば世界が変わる〈自然〉」「知れば知るほど自由になる〈科学〉」「希望は自分のなかにある〈社会〉」「人生は一つの作品である〈人間〉」と、段階を踏んでいく。
橘ナナミ
登場する本も気になります。ファーブル昆虫記とか、名前は聞いたことあるんですけど。
佐藤メバル
幅が広いよ。ファーブル昆虫記、日高敏隆さんの『チョウはなぜ飛ぶか』、中村哲さんの『医者、用水路を拓く』、冲方丁さんの『天地明察』、隈研吾さんの『場所原論』まで。
小説もノンフィクションも混ざっている。読書案内としても使えるけれど、本そのものより「どう読むか」を伝えている本だね。
全部読まなくても、気になった一冊から入ればいい。

別冊NHK100分de名著 読書の学校 養老孟司 特別授業『坊っちゃん』 (教養・文化シリーズ)
養老孟司 著|NHK出版
¥880(税込)
NHK出版の「読書の学校」シリーズで、養老孟司さんが『坊っちゃん』を教材に特別授業をした記録です。「本は読まなくてもいい」「効率は求めない」——生徒との対話は、世間の常識を覆すところから始まります。人間が成熟するとはどういうことか、他人の評価を気にせず道を切り開く術は何か。漱石と坊っちゃんの姿を自身に重ねながら、養老流の人生の極意が伝授される、ページ数も手頃な一冊です。
こんな人におすすめ
『坊っちゃん』を読んだことはあるが、そこから何を学ぶかは考えたことがない人。評価や効率に縛られて生きづらさを感じる社会人。講義形式の読み物で養老さんの思考に触れてみたい読者。
良い点
- 講義形式で読みやすい
- 作品の見方が変わる
- ページ数が手頃
気になる点
- 原作未読だと辛い面も
- 人生論としては薄め
- 対話の記録ゆえ粗い
出版社
NHK出版
発売日
2018年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『坊っちゃん』って高校の教科書で読んだ記憶があるんですけど、養老先生がそれを授業するんですか。何を教えるんだろう。
佐藤メバル
「本は読まなくてもいい」「効率は求めない」——冒頭からして常識をひっくり返すでしょ。そこから、人間が成熟するとはどういうことか、他人の評価を気にせず道を切り開く術は何か、という話に入っていく。
漱石と坊っちゃんの姿を養老さん自身に重ねながら語っているのが、この本の体温なんだよね。
橘ナナミ
評価を気にせず、っていうのは私にも刺さります。研究でも常に評価されるので。
佐藤メバル
その感覚ならよく響くと思うよ。講義の記録だから、きれいにまとまった人生論ではないけれど、生徒との掛け合いがあるぶん、頭ごなしの説教にはならない。
136ページと短めで価格も手頃だから、夏目漱石を読み返したくなったタイミングで開くのもいい。『坊っちゃん』の印象が変わる一冊だよ。

ぼくらの昆虫採集
養老孟司;奥本大三郎;池田清彦 著|デコ
¥3,080(税込)
養老孟司・奥本大三郎・池田清彦という、キャリアの長い現役の昆虫採集家三人が、採集と標本作りの実際を惜しみなく公開した実用の一冊です。実践編、基本編、道具編という構成で、捕虫網の振り方からチョウの展翅法、甲虫の展足法、虫のスキャンニング撮影の仕方まで五十項目にわたって解説。採集道具の選び方と、約八十点の商品カタログも掲載されています。子育て論ではなく、手を動かすための本というのが他の養老本との大きな違いです。
こんな人におすすめ
子どもと一緒に虫を捕まえたいけれどやり方が分からない親。標本作りを独学で始めたい人。夏休みの自由研究に本気で取り組みたい小中学生と、それを支える家族。
良い点
- 採集と標本作りの実用書
- 道具選びまで網羅
- 写真や図版が豊富
気になる点
- 価格帯は高め
- 虫が苦手だと厳しい
- 子育て論は含まれない
出版社
デコ
発売日
2011年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
虫はちょっと苦手なんですけど……でも、捕虫網の振り方から展翅法まで載ってるって、すごく実用的ですね。
佐藤メバル
そう、これは読み物というより手を動かすための本だね。三人とも現役で昆虫採集を続けているから、余すところなくコツを公開している。
捕虫網、毒ビン、昆虫針といった道具の選び方まで書かれていて、商品カタログも約八十点掲載されている。
橘ナナミ
子どもに「虫捕りに行こう」って言われたとき、親がこれを読んでおくと心強いかも。
佐藤メバル
まさにそういう使い方ができる本だよ。養老さんの子育て論の本を読んで「自然体験が大事」と思っても、具体的に何をすればいいか分からない人は多い。
この本はそこを埋めてくれる。展翅法や展足法といった標本作りの技術は、一度覚えると長く使える。道具編から眺めても楽しいから、苦手な人はそこから開いてみるといいよ。

「わかる」ことは「かわる」こと
養老孟司 著|河出書房新社
河出書房新社から出た205ページの一冊で、タイトルがそのまま養老孟司さんの中心的な考え方を示しています。「わかる」ことは知識が増えることではなく、自分自身が変わることだ、という捉え方です。養老さんは別の講演でも「知るということは、自分が変わることです。それ以前の自分が部分的にせよ死んで生まれ変わる」と語っています。知ることと自分の関係を、子育てや教育の場面に引き寄せて考えるための一冊です。
こんな人におすすめ
「勉強しても身につかない」と感じている学生。教える側に立つ教師や親で、子どもが変わるとはどういうことかを考えたい人。養老さんの認識論を、短めの分量で一冊試してみたい読者。
良い点
- テーマが明快
- 分量が手頃
- 教育を考え直せる
気になる点
- 詳細情報は少ない
- 実践的ではない
- 抽象度が高い
出版社
河出書房新社
発売日
2004年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「わかる」ことは「かわる」こと、かあ。勉強して分かるようになるのとは、ちょっと違う話ですよね?
佐藤メバル
そこに引っかかったのは鋭いね。養老さんの考えでは、知るというのは情報が増えることじゃなくて、それ以前の自分が部分的に死んで生まれ変わることなんだ。
別の講演でも「知るということは、自分が変わることです」とはっきり言っている。だから同じ本を読んでも、読む前と後では読んでいる自分が違う、という話になる。
橘ナナミ
じゃあ、子どもに何かを教えるときも、知識を渡すだけじゃ足りないってことですか?
佐藤メバル
そういうふうに子育てや教育に引き寄せて読める本だよ。手元の資料では中身の細部までは確認できていないけれど、205ページという分量でこのテーマを一冊にしている。
体験を通してしか自分は変わらない、という養老さんの一貫した立場が底にある。教えることに疲れたとき、立ち止まるきっかけになると思う。

嫌いなことから、人は学ぶ (養老孟司の大言論 2)
養老孟司 著|新潮社
¥2,113(税込)
新潮社から出た「養老孟司の大言論」というシリーズの2番目にあたる255ページの一冊です。タイトルどおり、人は好きなことより嫌いなことから学ぶという逆転の発想を掲げています。好きなことだけを追いかけていると視野が狭くなる、という指摘は、習い事や進路選びに悩む家庭にも響くところ。シリーズものなので、一冊目と合わせて読むと養老さんの論点の広がりが見えてきます。
こんな人におすすめ
苦手科目や嫌いな作業から逃げてばかりで、成長実感がないと悩む10代・20代。子どもの習い事や進路をどう考えるか迷っている親。養老さんの論考をシリーズで読み進めたい読者。
良い点
- 逆転の発想が刺激的
- シリーズで論点が広い
- タイトルが刺さる
気になる点
- 単体では物足りない
- 具体策は少なめ
- ページ数は多め
出版社
新潮社
発売日
2011年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これ、私の話です。英語がとにかく嫌いで、ずっと逃げてきたんですけど……逆にそこから学べって言われると、痛いなあ。
佐藤メバル
その痛さがこの本の狙いだね。好きなことを追いかけるのは気持ちがいいけれど、嫌いなことから目を逸らし続けると、世界の半分に触れないままになる。
養老さんはそこを突いてくる。「大言論」というシリーズの2冊目で、255ページと読みごたえもある。
橘ナナミ
でも、嫌いなものを無理に好きになれって話ではないですよね?
佐藤メバル
そこは誤解しないでほしい。好きになれという話ではないんだ。嫌いだという感覚そのものが、実は自分を知る手がかりになる。
なぜ嫌なのか、どこでつまずいたのかを考え始めると、学びが動き出す。この本はそういう一冊だよ。一冊目から読むと論点のつながりがもっと見えるから、気に入ったらシリーズで追ってみるといい。

バカの壁
養老孟司 著|新潮社
¥946(税込)
養老孟司さんの名前を広く知らせた代表作です。目次を追うと「『話せばわかる』は大嘘」「知識と常識は違う」「『個性を伸ばせ』という欺瞞」など、読む者の前提を次々に揺さぶる章が並びます。イタズラ小僧と父親、若者と老人、イスラム原理主義者と米国——互いに話が通じないのは、そこに「バカの壁」が立ちはだかっているからだ、という視点が全編を貫きます。子育ての本として読むと、子どもとの対話がうまくいかない理由が見えてきます。
こんな人におすすめ
子どもや家族と言い争いになり、話が通じないもどかしさを抱えている人。養老孟司さんの思考の出発点を押さえておきたい読者。職場や家庭の世代間ギャップに悩む人。
良い点
- 論点が明快
- 普遍的に読める
- 代表作として外せない
気になる点
- 結論は与えない
- やや抽象的
- 時代を感じる記述もある
出版社
新潮社
発売日
2003年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『バカの壁』ってタイトルは知ってるんですけど、読んだことはなくて。難しそうなイメージがあるんですが、実際どうなんですか?
佐藤メバル
読んでみると意外に平易だよ。「話せばわかる」なんて大ウソ、と冒頭から言い切ってしまう。イタズラ小僧と父親、イスラム原理主義者と米国、若者と老人——互いに話が通じないのは、そこに「バカの壁」が立ちはだかっているからだ、という話なんだ。
橘ナナミ
子育てにも関係あるんですか?
佐藤メバル
大いにあるね。目次には「知識と常識は違う」「『個性を伸ばせ』という欺瞞」「育てにくい子供」なんて章が並ぶ。
親が良かれと思って話していることが、なぜ子どもに届かないのか、その構造を考えさせられる。養老さんの本はどれも根が同じだけど、まず全体像をつかむならこれを一冊読んでおくと、他の本の位置づけがよく見えるようになるよ。

AIの壁 人間の知性を問いなおす (PHP新書)
養老孟司 著|PHP研究所
¥968(税込)
人工知能が持ちえない「真の知性」とは何かを問う対話集です。相手は羽生善治さん、新井紀子さん、井上智洋さん、岡本裕一朗さん。将棋、教育と読解、経済、哲学と、入口がそれぞれ違う四人と話すことで、AIという言葉が指すものの幅が見えてきます。子育ての文脈では、AIに代替されない力をどう育てるかという問いにつながる一冊。単独の論考ではなく対話で構成されている点が、同じ著者の別のAI論との違いです。
こんな人におすすめ
AI時代に子どもに何を学ばせるべきか悩む親。研究や仕事でAIと向き合い、人間の知性の輪郭を確かめたい人。養老さんの対談本のなかでも、テーマを絞って読みたい読者。
良い点
- 論客が多彩
- AI論の幅が広がる
- 新書で読みやすい
気になる点
- 技術の説明は少ない
- 結論は一つでない
- 専門外には難所も
出版社
PHP研究所
発売日
2020年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
大学院だと、AIで何ができるかって話ばかり聞くんですけど、「AIにできないこと」って切り口はあまり考えたことがなかったです。
佐藤メバル
そこがこの本の中心だね。相手が羽生善治さん、新井紀子さん、井上智洋さん、岡本裕一朗さんと、将棋、教育と読解、経済、哲学と分野がばらばら。
だから「AI」という一言でくくられているものの輪郭が、話すたびに違って見えてくる。人工知能が持ちえない「真の知性」とは何か、を正面から考えている本だよ。
橘ナナミ
子育ての本として読むと、どういうところが効きますか?
佐藤メバル
AIに代替されない力をどう育てるか、という問いに直結する。暗記や計算の速さではなく、身体を通した経験や、人と共感する力のほうが土台になる、という養老さんの立場が背景にあるからね。
224ページと手頃な分量だから、AI関連の仕事をしている人が、自分の前提を疑うためにも読める一冊だと思う。

AI支配でヒトは死ぬ。 ―システムから外れ、自分の身体で考える―
養老孟司 著|ビジネス社
¥1,540(税込)
仮想現実やグローバリズム、同一化の圧力を論じる一冊です。「システム化の進んだ現代社会では、『脳』ばかりを肥大化させようとしてきました。するとヒトとしての調子が狂ってくる」というのが養老孟司さんの問題意識。第一章「肥大化するシステムと、崩れ行く世間」から、第五章「『自足』することと、『自立』すること」まで、流行に背を向けて地に足をつけて生きるための「自足のススメ」が語られます。
こんな人におすすめ
効率や成長を求める空気に息苦しさを感じている人。AIやテクノロジーの進展に漠然とした不安がある読者。『バカの壁』以降の養老さんの社会批評を、まとめて読みたい人。
良い点
- 問題提起が強い
- 章立てが明快
- 現代社会を考える材料
気になる点
- タイトルが強烈
- 解決策は抽象的
- 好みが分かれる
出版社
ビジネス社
発売日
2021年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「AI支配でヒトは死ぬ。」って、タイトルがかなり強いですね。ちょっと身構えてしまいました。
佐藤メバル
強いよね。でも中身は煽りではなくて、システム化が進んだ社会で脳ばかり肥大化させてきた結果、ヒトとしての調子が狂ってくる、という指摘なんだ。
第一章は「肥大化するシステムと、崩れ行く世間」、第五章は「『自足』することと、『自立』すること」。システムから外れて、自分の身体で考えることを勧めている。
橘ナナミ
同じAIを扱った本でも、さっきの『AIの壁』とは雰囲気が違いますね。
佐藤メバル
そこは上手に使い分けるといい。『AIの壁』は四人の論客との対話で知性を問い直す本、こちらは著者自身の批評として、仮想現実やグローバリズム、同一化の圧力を論じる本。
番外編ではグローバリズムやコロナ禍も扱っている。対話形式のほうが読みやすければそちらから、社会批評をじっくり読みたければこちらから、と選べばいいよ。

唯脳論 (ちくま学芸文庫 ヨ 5-1)
養老孟司 著|筑摩書房
¥1,100(税込)
ちくま学芸文庫に収められた278ページの一冊で、養老孟司さんの著作のなかでも、後に続く議論の土台になったものとして名前が挙がる本です。手元の資料では中身の細部までは確認できていないため、ここでは書誌の情報にとどめますが、『バカの壁』の著者プロフィールにも著書として挙げられているように、養老さんの出発点を知るうえで外せない位置にあります。文庫なので比較的手に取りやすく、じっくり読むのに向いた造本です。
こんな人におすすめ
養老孟司さんの考え方を、最初の思索から辿ってみたい読者。文庫で腰を据えて読む時間を確保できる人。『バカの壁』を読んで、その背景にある議論を知りたくなった人。
良い点
- 文庫で入手しやすい
- 養老思想の土台
- じっくり読める
気になる点
- 抽象度が高い
- 実用書ではない
- 好みが分かれる
出版社
筑摩書房
発売日
1998年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『唯脳論』って、タイトルからして難しそうです。私、読めるかな……
佐藤メバル
身構える気持ちはわかるよ。でも、養老さんを読み進めるなら、ここが水源みたいな場所なんだ。『バカの壁』の著者プロフィールにも、著書の一つとして『唯脳論』の名が挙がっている。
あのベストセラーが突然出てきたわけではなく、ここで積み上げた考えがある、という順番が見えてくる。
橘ナナミ
じゃあ、いきなりここから入るより、何冊か読んでから戻ってくるほうがいいですか?
佐藤メバル
それも一つの順番だね。手元の資料では中身の細部までは確認できていないから、断定はしないけれど、ちくま学芸文庫で278ページという造本は、じっくり読む前提で作られている。
『自分を知りたい君たちへ』や『読むこと考えること』で養老さんの語り口に慣れてから、こちらに戻ってくる読み方が無理がないと思うよ。

ヤマケイ文庫 「身体」を忘れた日本人 JAPANESE,AND THE LOSS OF PHYSICAL SENSES
養老孟司 著|山と渓谷社
¥990(税込)
山と渓谷社のヤマケイ文庫から出た対談集で、解剖学者の養老孟司さんと、作家・冒険家のC・W ニコルさんが、都市生活で衰えた日本人の身体をテーマに語り合います。アレルギーになる子ども、災害時に火をおこせない大人——便利になりすぎた暮らしで、嗅覚や免疫といった身体機能まで衰えていないか、という問題意識から話が広がります。全七章に加えて、甲野善紀さんによる解説が文庫版に追加されているのもポイントです。
こんな人におすすめ
子どもを自然の中で育てたいけれど、都市生活から離れられない人。災害への備えや体力の衰えに不安を感じている読者。ニコルさんの森づくりの活動に関心がある人。
良い点
- 対談の掛け合いが良い
- 章立てが読みやすい
- 文庫で入手しやすい
気になる点
- 時代を感じる記述もある
- 具体策は限られる
- 対談ゆえ整理されない
出版社
山と渓谷社
発売日
2023年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
アレルギーになる子ども、災害で火をおこせない大人、ってところが引っかかりました。便利になるほど、身体の機能が落ちるってことですか?
佐藤メバル
この本はまさにそこを突いている。養老さんとC・W ニコルさんが、都市生活で衰えた日本人の身体をテーマに語り合う対談集なんだ。
「森と川と海のこと」「食べること、住まうこと」「子どもたちと教育のこと」と七章あって、第三章では「ほったらかし」が一番、といった話も出てくる。
橘ナナミ
ニコルさんって、確か森を再生する活動をしていた方ですよね。
佐藤メバル
そう。荒れ果てた里山を購入して「アファンの森」と名づけて再生活動を始めた人だよ。だから自然を語る言葉に現場の重みがある。
文庫版には、お二人と交流のある甲野善紀さんの解説も追加されている。身体感覚というテーマは、養老さんの本のなかでも特に具体的に語られているから、外遊びの大切さを裏づけたいときに心強い一冊になるよ。

養老孟司入門 ――脳・からだ・ヒトを解剖する (ちくま新書)
布施英利 著|筑摩書房
著者は養老孟司さん本人ではなく、東大医学部解剖学教室での愛弟子にあたる布施英利さんです。「脳より大切なものがある」「塀の上を歩け」「『あたりまえ』の本質」といった至言を手がかりに、養老さんの代表的な著作を読みなおし、その思想の世界を一望します。各著作が書かれた当時のエピソードも交えた評伝風の語りが特徴で、本人の著書とは役割がはっきり違う、ちくま新書の一冊です。
こんな人におすすめ
養老孟司さんを読み始めたばかりで、どの本から読めばいいか迷っている人。著作同士のつながりを地図のように把握したい読者。評伝や入門書で全体像をつかむのが好きな人。
良い点
- 全体像がつかめる
- 愛弟子視点の逸話
- 読む順番の参考になる
気になる点
- 本人の著書ではない
- 二次的な解説になる
- 原文の魅力は薄まる
出版社
筑摩書房
発売日
2021年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
あれ、この本の著者、養老先生じゃないんですね。布施英利さんって書いてあります。
佐藤メバル
よく気づいたね。布施英利さんは東大医学部解剖学教室での養老さんの愛弟子にあたる人で、この本は本人ではなく弟子の視点から書かれた入門書なんだ。
「脳より大切なものがある」「塀の上を歩け」「『あたりまえ』の本質」といった言葉を手がかりに、代表的な著作を読みなおしていく。
各著作が書かれた当時のエピソードも交えた評伝風の語りになっているよ。
橘ナナミ
じゃあ、養老先生の本を読む前に、これを読んでおくと道しるべになる感じですか?
佐藤メバル
そういう使い方がいちばん合っていると思う。一冊で養老孟司の全体像が見えるように作られているから、次にどれを読むかの見取り図になる。
逆に、原文の手触りを味わいたい人には物足りないかもしれない。入門書と本人の著書、両方を行き来しながら読むと、理解が立体的になるよ。

考えるヒト (ちくま文庫 よ 6-8)
養老孟司 著|筑摩書房
¥770(税込)
ちくま文庫に収められた224ページの一冊で、「意識の本質とは何か」「私たちはそれを知ることができるのか」という問いから始まります。脳と心の関係を探り、無意識に目を向けながら、自分の頭で考えるための入口を示す構成です。文庫で手頃な分量なので、養老孟司さんの思索に初めて触れる読者にも取りかかりやすい。対談や講演録の多い他の本と違い、考察そのものを読む一冊です。
こんな人におすすめ
意識や無意識という言葉に漠然とした興味がある人。脳科学の入門書に進む前に、考え方の枠組みを知っておきたい読者。文庫で手頃な分量の思索本を探している人。
良い点
- 文庫で読みやすい
- テーマがはっきりしている
- 思索の入口になる
気になる点
- 専門書ではない
- 答えは与えられない
- 抽象度は高め
出版社
筑摩書房
発売日
2015年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
意識の本質って、私たちは知ることができるのか、っていう問いが書いてあります。大学の講義で「意識とは何か」みたいな議論を聞いたことがあるんですが、いつもモヤッと終わるんですよね。
佐藤メバル
そのモヤッと感が、この本の出発点だね。養老さんは脳と心の関係を探りながら、無意識のほうに目を向けていく。
意識は自分でコントロールできるものではない、という感覚が土台にある人だから、議論が堂々巡りしないんだよ。
ちくま文庫で224ページと手頃だから、まず一冊試すのに向いている。
橘ナナミ
なるほど。難しすぎて投げ出しちゃうかな、という不安はあります。
佐藤メバル
それは大丈夫だと思う。専門書ではなく、考えるための入口として書かれた本だからね。分からないところは飛ばして読み進めても戻ってこられる。
むしろ、分からないまま置いておくこと自体が、養老さんの言い方でいえば自分の頭で考えることにつながる。
読了を急がない読み方が合っている一冊だよ。

読むこと考えること (双葉文庫)
養老孟司 著|双葉社
¥858(税込)
もとは「小説推理」に長期連載された読書エッセイ「ミステリー中毒」から、104本のなかから27篇を選び、「考える」「社会」「脳」「人生」「身体」「自然」「ミステリー・ファンタジー」「国際」「日本語・文化」の九つのテーマに分けて収録した一冊です。解剖学者のユーモアと明晰な論理が、物語のむこうにある社会を切り開いていきます。養老さんの思想を、小説を入口に味わえるのが何よりの違いです。
こんな人におすすめ
養老孟司さんの本は硬そうで手が出ない、という小説好きの読者。ミステリーを楽しみながら社会や人間について考えたい人。通勤や就寝前など、一話ずつ区切って読み進めたい人。
良い点
- 読書エッセイとして楽しい
- テーマ別に整理されている
- 小説の紹介にもなる
気になる点
- 連載の寄せ集め感はある
- 論考の深さは控えめ
- 全篇読まなくても成立
出版社
双葉社
発売日
2026年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
え、養老先生ってミステリーを読むんですか? なんだか意外です。
佐藤メバル
これが意外に似合うんだよ。「小説推理」に長く連載された「ミステリー中毒」という読書エッセイから、104本のなかから27篇を選んでいる。
テーマは「考える」「社会」「脳」「人生」「身体」「自然」など九つに分けられていて、物語のむこうにある社会を解剖学者の目で切り開いていく。ユーモアもたっぷりだよ。
橘ナナミ
子育てで忙しい人が読むとしたら、どこから入るのがいいんでしょう?
佐藤メバル
「人生」や「身体」の章から拾うといいと思う。一篇が短いから、寝る前に少しずつ読める。小説の紹介としても使えるから、子どもが大きくなって本を渡すときの参考にもなる。
養老さんの考えに触れてみたいけれど、がっつりした論考は重い、という人にはいちばん入りやすい一冊だね。

読まない力 (PHP新書)
養老孟司 著|PHP研究所
月刊誌『Voice』に長く連載された「解剖学者の眼」を完全収録した時評集です。石油問題、自衛隊のイラク派兵、靖国参拝、振り込め詐欺、オリンピックなど、その時々の話題を養老孟司さんが解剖していきます。「言葉は意識の産物である。現代は意識優先、つまり脳化社会で、だから情報化社会になる」という指摘が全編の背景。言葉を読み過ぎず、先を読まずに世の中を見つめる姿勢が学べます。
こんな人におすすめ
ニュースやSNSの情報に疲れ、距離の取り方を考えたい人。言葉や情報の扱い方に関心がある読者。養老さんの社会時評を、一冊にまとめて読んでおきたい人。
良い点
- 時評として読み応えがある
- 視点が一貫している
- 情報との距離を学べる
気になる点
- 話題がやや古い
- 時事色が強い
- 結論は出さない
出版社
PHP研究所
発売日
2009年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「読まない力」って、読書を勧める本の逆を行ってますよね。どういう意味なんでしょう?
佐藤メバル
養老さんはあまり言葉を信用していない人なんだ。「言葉は意識の産物である。現代は意識優先、つまり脳化社会で、だから情報化社会になる。人生は『意識のみ』になってしまった」と言っている。
だから言葉を読み過ぎず、先を読みすぎず、解剖学者の眼で世の中を見つめよう、というのがこのタイトルの意味だね。
橘ナナミ
なるほど。情報を鵜呑みにしない、という話ですか。
佐藤メバル
それに近いけれど、もう少し踏み込んでいる。たとえば「秩序は同量の無秩序と引き換えでないと手に入らない」という指摘がある。
文明が秩序を築く過程で、同じだけの無秩序を生んでいる。だから代替エネルギーもどうせ同じことで、どこかに負荷が増えてしまう、と。
石油問題やオリンピックまで扱う時評集だけれど、根にある視座は普遍的だよ。

こう考えると、うまくいく。~脳化社会の歩き方~ (扶桑社文庫)
養老孟司 著|扶桑社
¥935(税込)
九つの講演を収録した講演録です。「意識は、なぜあるのか?」「人間は死んだら『モノ』なのか、『ヒト』なのか?」「人間は『人工身体』と『自然身体』の二つのからだを持っている」など、テーマが次々に提示されます。なかでも「子どもを育てるとは『手入れ』をすること」という一節は、子育てを考えている読者に強く響くところ。人工と自然の釣り合いをどう取るか、という全体の軸が明快です。
こんな人におすすめ
意識や身体についての講演を、肩の力を抜いて読みたい人。子育てと手入れの関係を、別の角度から考えてみたい読者。養老さんの語り口そのものを楽しみたい人。
良い点
- 九講演を収録
- テーマの幅が広い
- 文庫で読みやすい
気になる点
- 講演録ゆえ重複もある
- 体系性は薄い
- 時事の話題もある
出版社
扶桑社
発売日
2023年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これ、20年以上前の講演をまとめた本なんですよね。今読んでも古くならないんでしょうか?
佐藤メバル
そこがこの本の売りなんだよ。「『脳の世紀』といわれる21世紀社会の正しい生き方とは?」という切り口で語られた講演が、結果的に現代を予見していた内容になっている。
「意識は、なぜあるのか?」「人間は死んだら『モノ』なのか、『ヒト』なのか?」といった問いは、時間が経っても古びない。
橘ナナミ
「子どもを育てるとは『手入れ』をすること」という言葉が気になりました。
佐藤メバル
そこは養老さんの中心テーマの一つだね。『手入れという思想』と響き合う考え方で、完成形を決めてから作るのではなく、毎日少しずつ手を入れて育てていく。
この本では「人間は『人工身体』と『自然身体』の二つのからだを持っている」という捉え方から、人工と自然の釣り合いをどう取るか、という話に広がっていく。
文庫で読みやすく、入門にも向いているよ。

養老先生のさかさま人間学 (ZouSan Books)
養老孟司 著|ミチコーポレーション(ぞうさん出版)
¥1,385(税込)
「考えないと楽だけど、楽をするとあとで損しますよ」——『バカの壁』の著者が、自分の頭で考えるための85の視点を伝える一冊です。身の回りの風景、社会のあり方、心の持ち方を「さかさま」に見てみよう、というのが基本の構え。2ページ見開きで完結するエピソードが85編、各章の導入にはフルカラーのマンガが添えられ、巻末には写真も多数収録されています。子どもから大人まで楽しめる、いちばん取っつきやすい一冊です。
こんな人におすすめ
養老孟司さんの本を子どもと一緒に読みたい親。活字が苦手で、短い単位で読み進めたい人。毎日ひとつずつ、ものの見方を変えていきたい読者。
良い点
- マンガとイラスト入り
- 短い単位で読める
- 幅広い年齢に対応
気になる点
- 深掘りは限られる
- エッセイ集ゆえ散らばる
- 体系的な入門ではない
出版社
ミチコーポレーション(ぞうさん出版)
発売日
2021年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
マンガが入ってるんですね、養老先生の本で。しかも85編も。
佐藤メバル
そう、各章の導入にフルカラーのマンガが付いていて、2ページ見開きで完結するエピソードが85編。イラストも入っているから、活字が苦手な人でもすいすい読める。
7章には被災地での特別講演「変化するとき」が完全収録されていて、巻末には写真もたくさん載っているよ。
橘ナナミ
「さかさま」に見るっていうのは、どういうことなんですか?
佐藤メバル
「考えないと楽だけど、楽をするとあとで損しますよ」という養老さんの言葉がこの本の入口にある。身の回りの風景や社会のあり方、心の持ち方を、あえて逆から見てみよう、という提案なんだ。
2ページで一話完結だから、子育てに忙しい人が寝る前に一つ読む、という使い方ができる。子どもと一緒に読むにも無理がない、いちばん取っつきやすい一冊だよ。
養老孟司の子育て論は「何をしないか」の思想
橘ナナミ
養老さんの子育て論って、結局「こうしなさい」がないですよね。ハウツー本と真逆というか。
佐藤メバル
そこが核心だ。出発点は『唯脳論』で、「脳だけが人間だ」と考える社会を疑うところにある。現代は意識優先の脳化社会だけれど、人間は身体と自然の一部でもある。だから子育ては「加える」より「放っておく」「手入れをする」になる。
橘ナナミ
「無思想」という言葉も聞いたことがあります。
佐藤メバル
一つの思想で全部を説明しようとしない、という立場だね。布施英利さんの『養老孟司入門』は「無思想という思想」という項目を立てて、『バカの壁』や『考えるヒト』まで含めて全体を整理してくれる。子育て本だけ読むと、なぜ養老さんが「手をかけるな」と言うのか分からない。幹を通してから読むと、枝が繋がって見えるよ。
橘ナナミ
『バカの壁』も子育てと関係あるんですか。
佐藤メバル
ある。教育の章で「インチキ自然教育」という話が出てくるし、身体を動かせという主張も出てくる。子育ての悩みの多くは「話せばわかる」という前提から生まれる。でも養老さんは、そこに壁があると言う。親子の会話にも効く考え方なんだ。AI時代の知性については『AIの壁 人間の知性を問いなおす』が対話形式で追いかけてくれる。
他の子育て本と比べた位置づけと、合う人・合わない人
橘ナナミ
「こうすればこうなる」という本と比べると、正反対に見えます。
佐藤メバル
正反対だね。ハウツー本は目標を決めてそこへ向かう方法を示す。養老本は、目標を決めること自体を疑う。だから「早く結果を出したい」「正解がほしい」人には響きにくい。逆に「もう疲れた」「教科書どおりにできない」人には救いになる。答えではなく前提を外してくれるからだ。
橘ナナミ
読むタイミングもありそうですね。
佐藤メバル
そう。注意点もあって、具体的な行動を変えたい段階では、別の実用書のほうが役に立つ。養老本は考え方を変える本であって、やり方を教える本ではないからね。
橘ナナミ
対談相手によって読み味が違うという話も、もう少し聞きたいです。
佐藤メバル
『こどもを野に放て!』では中村桂子さんが「矛盾を組み込んで『何でもあり』でやってきたからこそ、生きものは続いてきた」と語り、池澤夏樹さんは「うまくいったとき、それはある意味運であって、感謝しなきゃいけない」と続ける。C・W ニコルさんとの『「身体」を忘れた日本人』は「ほったらかしが一番」「母親の世界から飛び出せ」と、より実践的だ。『子どもが心配』は四人の専門家の現場の言葉が並ぶ。同じ養老さんの言葉でも、隣に誰が座っているかで刺さる場所が変わるんだよ。
刺さる言葉で選ぶ — 疲れた親が「読むと楽になる順」
橘ナナミ
疲れているときに読むなら、どの順番がいいですか。
佐藤メバル
まず『絵になる子育てなんかない』。短くて、親の心の持ちように寄り添ってくれる。次に『子どもが心配』——「親が子どもに対して『あなたたちが元気に飛び跳ねていてくれればいい』とさえ、願えばよいのです」という養老さんの言葉が終盤に出てくる。これが効く。
橘ナナミ
その先は。
佐藤メバル
『子どもの頃、本当はこんなことを考えていた』で、子どもの内側を思い出す。そして『手入れという思想』で、手をかけすぎない構えを思想として腹に落とす。逆に「言い負かす」ための言葉を探している人には向かない。養老本の言葉は、勝つためではなく、力を抜くために置かれているからね。
よくある質問
養老孟司の子育て本でおすすめはどれ?
橘ナナミ
養老孟司の子育て本でおすすめはどれについて教えてください。
佐藤メバル
まず読むなら、現場の識者と語り合う新書『子どもが心配』、悩みに寄り添う『絵になる子育てなんかない』、屋外体験を重んじる『虫捕る子だけが生き残る』の三冊が軸になります。教育熱やスマホが気になるなら前者、自分の抱え込みがつらいなら中者、外遊びの意味を確かめたいなら後者、というように悩みから選ぶと外れが少ないです。
養老孟司の本をはじめて読むなら何から読むべき?
橘ナナミ
養老孟司の本をはじめて読むなら何から読むべきについて教えてください。
佐藤メバル
はじめてなら新書か対談集が入りやすいです。『子どもが心配』や『こどもを野に放て! AI時代に活きる知性の育て方』は会話と現場の話が中心で、肩肘を張らずに読めます。思想の全体像を先に眺めたい人は、布施英利さんの『養老孟司入門』を案内板にしてから単著へ進むと迷いません。
『絵になる子育てなんかない』はどんな内容の本?
橘ナナミ
『絵になる子育てなんかない』はどんな内容の本について教えてください。
佐藤メバル
二児のワーキングマザーが養老さんに子育てで大切なことを尋ねたやりとりから生まれた本です。「子どもは自然。親の思いどおりにならなくて当たり前」という考え方を軸に、親と子のあたらしい幸せを提案しています。短く読みやすく、疲れているときの一冊目に向きます。
養老孟司の子育て論は厳しい?合わない人もいる?
橘ナナミ
養老孟司の子育て論は厳しい?合わない人もいるについて教えてください。
佐藤メバル
厳しいというより、目標を決めて管理する子育てを手放す方向の話です。だから「早く結果を出したい」「正解がほしい」人には響きにくく、具体的な行動を変えたい段階では他の実用書のほうが役立ちます。養老本はやり方を教える本ではなく、考え方の前提を外してくれる本だと考えると、ミスマッチを防げます。
養老孟司の子育て本は電子書籍やAudibleで聴ける?
橘ナナミ
養老孟司の子育て本は電子書籍やAudibleで聴けるについて教えてください。
佐藤メバル
新書や文庫は電子版が用意されているものが多く、オーディオブックは本ごとに対応状況が異なるため各書店で確認するのが確実です。一方、読み返して使う『養老孟司特別講義 手入れという思想』や、図版の多い『ぼくらの昆虫採集』は紙が向いています。持ち歩くなら電子、手元に置くなら紙、と使い分けるといいですよ。
子育てに疲れた時に読むと楽になる養老本は?
橘ナナミ
子育てに疲れた時に読むと楽になる養老本はについて教えてください。
佐藤メバル
読んで楽になる順なら、まず『絵になる子育てなんかない』、次に『子どもが心配』です。後者には「親が子どもに対して『あなたたちが元気に飛び跳ねていてくれればいい』とさえ、願えばよいのです」という言葉があります。そのうえで『手入れという思想』に進むと、手をかけすぎない構えが腹に落ちます。
絵本『「じぶん」のはなし』は子どもに読み聞かせるべき?
橘ナナミ
絵本『「じぶん」のはなし』は子どもに読み聞かせるべきについて教えてください。
佐藤メバル
「べき」で考える必要はありません。絵本は子どもと一緒に開く前提の形式なので、まず親自身が先に開いて、養老さんの言葉に触れてから、子どもと並んで読むのが自然です。読み聞かせが負担になっているなら、無理に毎日続けるより、子どもが自分でめくりたがったタイミングを待つほうが長続きします。
養老孟司の子育て以外の代表的な本にはどんなものがある?
橘ナナミ
養老孟司の子育て以外の代表的な本にはどんなものがあるについて教えてください。
佐藤メバル
『バカの壁』『唯脳論』『考えるヒト』『読むこと考えること』『読まない力』など、脳と身体、社会を見つめ直す本が多数あります。AI時代の知性をめぐる『AIの壁』、システム化した社会を問う『AI支配でヒトは死ぬ。』、読書案内としての『自分を知りたい君たちへ』も、子育て論の背景を知る入口になります。
まとめ
橘ナナミ
今日は「どれが一番」ではなく、選び方の地図をもらった気分です。
佐藤メバル
それでいいんだ。養老さんの本は、読む順番で見える景色が変わる。新書で入って、対談で笑って、単著で考えて、絵本で子どもと並ぶ。同じ「子育て」という言葉が、少しずつ違う重さで響いてくるよ。
橘ナナミ
でも、まだ迷ったらどうすればいいですか。
佐藤メバル
迷ったら「今いちばん腹が立っていること」を一文字にして、その感情に近い本を選ぶといい。習い事なら『虫捕る子だけが生き残る』、学校なら『子どもが心配』、自分の抱え込みなら『絵になる子育てなんかない』。感情から入ると、外れが少ない。
橘ナナミ
感情から選ぶ、ですか。
佐藤メバル
書店員時代、子育て中の方が相談に来られる時、たいてい手に力が入っていた。私はいつも棚を指して「正解を買いに来たんじゃなくて、網を買いに来たと思ってください」と話していた。養老さんは虫捕りの人だからね。
橘ナナミ
網……?
佐藤メバル
そう。養老さんの本は、答えを虫かごに閉じ込めて渡してくれるものではない。網を貸してくれて、「外に出て、自分の目で見ておいで」と言ってくれる本なんだ。捕まえたものは、眺めたら逃がしていい。また明日、違うものが見えるから。子育ても、たぶん同じだよ。
