面識経済本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、検索していて「面識経済」っていう言葉を見つけたんですけど、正直まだピンと来ていなくて。顔見知りの経済……みたいな意味なんでしょうか?
佐藤メバル
いい質問だね。『面識経済』は山崎亮さんが光文社から出した本で、副題に「資本主義社会で人生を愉しむためのコミュニティ論」とある。面識というのは顔の見える関係のこと。コミュニティデザインの現場で積み重ねてきた経験を起点に、数々の経済思想書を紐解きながら、地域経済の可能性に迫っていく、424ページの骨太な一冊なんだ。
橘ナナミ
424ページ! しかも経済思想書を「紐解く」って、いきなり読むにはちょっと重そうですね……。
佐藤メバル
そこが今日のポイントだね。これは経済学の教科書じゃない。著者は「生きていくには、より多くのお金を稼ぐために、仕事の質を問わず、たくさん働かなければならない」という現代社会の「常識」はどこから来たのか、と問いを立てる。そして消費的な人生ではなく、愉しさを追求する活動的な人生は歩めないのか、と考えていく。だから読む側も、自分の関心の入口を決めてから手に取ると、ぐっと読みやすくなる。
橘ナナミ
入口を決める、か。たとえばどんな入口があるんですか?
佐藤メバル
大きく三つ。経済思想史として読みたい人、地域づくりに活かしたい人、そして「面識経済」という概念そのものを知りたい人。今日はこの三つを軸に、選び方と、併せて読むと理解が深まる本を見ていこう。
面識経済本の選び方
目的別:思想史か、実践か、概念か
橘ナナミ
経済思想史として読みたい場合、まず何を手に取ればいいんでしょう?
佐藤メバル
流れを一本の線でつかみたいなら、『社会経済思想の進化とコミュニティ』のような思想史の本を並行して開くといい。『面識経済』は著者が経済思想書をたどりながら「なぜ今の経済観が生まれたのか」を掘っていく構成だから、思想の流れを別に押さえておくと迷子になりにくい。
橘ナナミ
地域づくりに活かしたい人は?
佐藤メバル
そちらは実践の本を先に。『コミュニティ経済と地域通貨』は、地域通貨を導入すると人の意識や行動が変わるのかを心理・教育・産業の側面から検証した研究で、生協総研賞の研究賞も受けている。『日本のシビックエコノミー』は国内20の事例を「他地域でも応用できるポイント」つきで整理した入門書だ。現場の解像度が上がってから『面識経済』に戻ると、理論がすっと入る。
レベル別:入門・中級・原典
橘ナナミ
いきなり424ページは勇気がいるので、軽い入口も知りたいです。
佐藤メバル
入門なら新書か薄めの単行本から。『地元経済を創りなおす』は岩波新書で、地元経済の悪循環を可視化し、レジリエンスを考える。『コミュニティマネジメント』は192ページで、地域のコミュニティシステムの作り方を扱う。中級で事例を厚く読むなら『持続可能な地域のつくり方』や『ソーシャルデザイン実践ガイド』。原典級の重さがあるのは『面識経済』や『ボランタリー経済の誕生』で、これは時間を確保して読む本だね。
形式別と、読み切れるか
橘ナナミ
電子と紙、どっちがいいんでしょう?
佐藤メバル
『面識経済』は光文社の単行本として刊行されている。参照しながら読み進めるタイプの本だから、書き込みや付箋が使える紙が向く人も多い。電子版の有無や価格は版によって変わるから、買う前に書店や出版社の公式情報で確認するのが確実だよ。図書館で借りてから手元に置く、という選び方もこの手の本にはよく合う。
面識経済本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
面識経済本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

面識経済 資本主義社会で人生を愉しむためのコミュニティ論
山崎亮 著|光文社
¥3,465(税込)
山崎亮がコミュニティデザインの現場経験を起点に、数々の経済思想書を紐解きながら「面識=顔の見える関係」が息づく地域経済の可能性に迫る424ページの大著。「より多く稼ぐために働く」という現代の経済観がどこから来たのかを問い直し、消費的な人生ではなく「愉しさ」を追求する活動的な人生を構想する。地域通貨の研究書やシビックエコノミーの事例集が現場の記録だとすれば、こちらは思想の系譜をたどる入口になる一冊。安田洋祐氏、山口周氏の推薦も付く。
こんな人におすすめ
経済思想の古典に触れながら、自分の暮らすまちの関係性を捉え直したい人。書店員や地域おこしの企画職、まちづくりに関わるNPO職員、社会学や経済学を学ぶ学生にも。働き方や暮らし方に違和感を覚え始めた読者が、年単位で読み込むのにも向く。読書会の課題本としても議論が広がる。
良い点
- 経済思想の系譜を一冊でたどれる
- コミュニティデザインの実践と理論がつながる
- 読後に働き方を見直す視点が残る
気になる点
- 424ページで通読には覚悟が要る
- 理論パートが多く初学者には難所も
- 価格帯が高めで気軽には手が出ない
出版社
光文社
発売日
2025年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、「面識経済」ってタイトルからして難しいんですけど……。普通の経済と何が違うんですか?
佐藤メバル
いい質問だね。鍵は「面識」、つまり顔の見える関係。山崎さんはコミュニティデザインの現場から、より多くのお金を稼ぐために働くという前提そのものを問い直す。
経済思想の系譜をたどりながら、消費的な人生ではなく愉しさを軸にした活動的な暮らしと、その土台になる地域経済を構想していくんだ。
安田洋祐さん、山口周さんの推薦がついているのも、思想と実践の橋渡しになっているからだと思うよ。
橘ナナミ
424ページって、正直読み切れる気がしなくて……。こういう大きな本は、どうやって手をつければいいんでしょうか。
佐藤メバル
そこは正直に言うと、通読前提の本だね。でも書店員時代、こういう本は「一気に読む」より、気になった思想家の章から拾い読みするお客さんが多かった。
第一章の問いだけでも、自分の消費的な毎日をちょっと疑ってみるきっかけにはなる。読書会で一章ずつ持ち寄るのも向いているよ。

コミュニティ経済と地域通貨
栗田健一 著|専修大学出版局
¥2,930(税込)
地域通貨を導入すると、人の意識や行動は本当に変わるのか。心理・教育・産業といった複数の角度からアプローチし、研究者自身がコミュニティ・ドックという手法で現場に入って確かめた実践報告まで収めた一冊。生協総研賞の研究賞を受賞した堅実な学術書で、「通貨を配れば地域が元気になる」という単純な期待を、データと検証で丁寧に問い直している。入門書や事例集を読んだあとに、根拠を知りたくなったらここへ戻る。
こんな人におすすめ
地域通貨やコミュニティの効果を、体験談ではなく検証データで確かめたい人。大学院で地域経済やソーシャルビジネスを研究する学生、自治体の政策担当、NPOの事業設計に関わる実務家に。合意形成や制度設計を考える際の土台になる。
良い点
- 心理学・教育学・産業論を横断する検証
- 研究者自身のコミュニティ・ドック実践を収録
- 受賞歴が示す研究の確かさ
気になる点
- 学術書のため文体は硬め
- 事例の背景知識がないと重い
- 価格は専門書の水準
出版社
専修大学出版局
発売日
2020年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
地域通貨って、実際に街で使われているのを見たことがなくて。本当に機能するものなんですか?
佐藤メバル
そこを正面から検証したのがこの本なんだ。地域通貨を導入すると意識や行動が変わるのかを、心理・教育・産業といった複数の角度から確かめている。
しかも著者自身がコミュニティ・ドックという手法で現場に入っている。「配れば元気になる」という単純な話ではないところが、いちばん信頼できる点だね。
橘ナナミ
「コミュニティ・ドック」って、健康診断みたいなものですか? 地域を診る、という発想が想像できなくて。
佐藤メバル
うん、地域を診断するという発想だね。どこにお金が流れ、どこで止まっているかを見ていく。書店員の頃、商店街のイベントに通っていたけど、賑わいの裏でお金が外に抜けていく構造はなかなか見えない。
こういう研究は、その見えない部分を可視化してくれる。生協総研賞を受賞しているのも納得の堅さだよ。

日本のシビックエコノミー―私たちが小さな経済を生み出す方法
江口晋太朗 著|フィルムアート社
¥3,090(税込)
2014年刊の翻訳書『シビックエコノミー』を受けて作られた、日本における初めての入門書。市場経済と重なりながら少し違う、市民主体の新しいエコノミーを、国内20の事例で整理する。孤食を避ける場づくり、空き家のリノベーション、市民出資のエネルギー事業、地域の人と素材にこだわるものづくり——各事例は変遷・応用ポイント・ソーシャルインパクト・類似事例の形でコンパクトにまとまり、イラストも添えられている。理論書の前の、地図帳のような一冊。
こんな人におすすめ
自分のまちで小さく事業を始めたい人、地域おこしやNPOの企画に関わる実務家に。翻訳の理論書は重いと感じた読者の最初の一冊としても。事例が同じ形式で並ぶので、企画書を書く前の横並び比較にも向く。
良い点
- 国内20事例を同じ形式で比較できる
- 応用ポイントが3つに絞られている
- イラスト付きで読み進めやすい
気になる点
- 各事例の記述はやや簡潔
- 理論の掘り下げは別書が必要
- 掲載事例はやや都市部に偏る
出版社
フィルムアート社
発売日
2016年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
シビックエコノミーって、聞いたことはあるようで、説明しろと言われると困るんです。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。市場経済と重なるけれど、ちょっと違う。民間・行政・第三セクターの枠を越えて、市民が主体になって新しい循環をつくる動きのことだよ。
この本は、その日本版の入門書として、国内20の事例を同じ形式で並べている。孤食を避ける場づくり、空き家のリノベーション、市民出資のエネルギー事業なんかが、応用ポイントとセットで整理されている。
橘ナナミ
20事例も並んでいると、自分のまちに置き換えて考えられそうですね。どのへんから読むのがいいんでしょう。
佐藤メバル
そこが狙いなんだと思う。書店員時代、地域の人が「うちでもできそう」と持ち帰れる本が意外と少なかった。
これは変遷とソーシャルインパクトまで書いてあるから、企画の下書きに使いやすい。まずは人口規模や課題が近い事例から拾って、応用ポイントの3つを自分の地域の言葉に置き換えてみるといいよ。

ボランタリー経済の誕生: 自発する経済とコミュニティ
金子郁容 著|実業之日本社
¥4,699(税込)
金子郁容による、「自発する経済」とコミュニティをテーマにした407ページの論考。市場でも計画でもない、人が自ら動くことで成り立つ経済の姿を、ボランタリーという切り口から描こうとしている。タイトルが示す通り、経済を制度や数値ではなく、人の自発性と関係性の側から捉え直す視点が核になる。地域通貨やシビックエコノミー、協同組合をめぐる議論を支える思想的な土台として読める一冊。
こんな人におすすめ
経済を人の自発性から考えたい読者。市民活動やNPOに関わり、善意や自発性がどう経済とつながるのかを考えたい人。地域通貨や協同組合の思想的な背景を押さえたい大学院生、自治体職員にも向く。
良い点
- 自発性という切り口が独自
- ボランタリー経済の思想を一冊で
- 407ページの読み応え
気になる点
- 抽象度が高く具体例は少なめか
- 価格が高く気軽に試しにくい
- 予備知識なしでは取っつきにくい
出版社
実業之日本社
発売日
1998年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ボランタリー経済の誕生」……自発する経済、ってどういう意味でしょう。ボランティアと経済が結びつかないんですけど。
佐藤メバル
そこがこの本の面白さだね。市場でも計画でもない、人が自ら動くことで成り立つ経済を、ボランタリーという切り口から描こうとしている。
善意や自発性を、経済の外側の美談としてではなく、経済そのものの一部として捉え直す視点なんだ。地域通貨や市民活動の議論を支える、思想的な土台として読めるよ。
橘ナナミ
なるほど……でも407ページですよね。予備知識なしでも大丈夫でしょうか。
佐藤メバル
正直、軽い本ではないよ。ただ、こういう思想書は書店でも続けて読む人がいるタイプで、一章ずつノートを取りながら読むと骨になる。
具体例がどの程度出てくるかは読んでみないとだけど、自発性という切り口を持っておくと、他の地域経済の本がぐっと立体的に見えるようになるんだ。焦らず、長く付き合うつもりでどうぞ。

WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ (NewsPicks Book)
佐渡島庸平 著|幻冬舎
『君たちはどう生きるか』『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を仕掛けた編集者・佐渡島庸平が、インターネット時代のヒットの法則としてコミュニティを論じる一冊。スマホで大衆が分断され、SNSでつながっていても居場所を探している——その中で、Apple、シャオミー、楽天、ほぼ日のように使われ続ける企業にはコミュニティがあると指摘する。モノの売り方も根本から変わり、ビジネスの成否をコミュニティの有無が分けるという視点は、地域経済を「関係の経済」として見る入口にもなる。
こんな人におすすめ
マーケティングやブランドづくりに携わる人、オンラインサロンやファンコミュニティの運営者。著者の編集者としての仕事に興味がある読書家にも。孤独とつながりというテーマに関心がある人は、ビジネス書の枠を越えて読める。
良い点
- 実業家としての実践が背景にある
- 具体企業を例にした分析が明快
- 孤独という切り口が現代的
気になる点
- 地域経済の実践手法は扱わない
- 著者本人の体験に比重が偏る
- 事例が企業寄りで地域事例は薄い
出版社
幻冬舎
発売日
2018年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
NewsPicksの本なんですね。コミュニティ論というと、やっぱりビジネスの話なんでしょうか。
佐藤メバル
そう、どちらかと言えばビジネス側から書かれたコミュニティ論だね。著者の佐渡島さんは『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』を仕掛けた編集者で、使われ続ける企業にはコミュニティがあるという視点で、Apple、シャオミー、楽天、ほぼ日を例に挙げていく。
モノの売り方が変わったという話は、地域の商いにもそのまま響くよ。
橘ナナミ
「We are lonely, but not alone」って、『宇宙兄弟』のセリフなんですよね。そこから始まるのが意外でした。
佐藤メバル
よく知ってるね。宇宙で一人漂う飛行士の言葉だけど、たくさんの人に囲まれていてもlonelyにはなる。
どうすればnot aloneになれるのか。ここがこの本のいちばん柔らかい部分で、地域のつながりを考えるときの合言葉みたいに読める。
実務書というより、問いを持ち帰る本だね。

コミュニティ・オーガナイジング――ほしい未来をみんなで創る5つのステップ
鎌田華乃子 著|英治出版
¥2,420(税込)
ハーバード大学のガンツ博士が理論化し、オバマの大統領選キャンペーンでも活用された「コミュニティ・オーガナイジング」を、ストーリーで解説する実践ガイド。前半は昼休みをなくそうとする教頭に立ち向かう小学生カナメたちの物語を通して、パブリックナラティブ、関係構築、チーム構築、戦略作り、アクションという5つのステップを学ぶ。後半は「おやじの会」、産後ケア施設、成人式の運営改革、刑法改正キャンペーン、難民支援の読書キャンペーンなどが並ぶ。「仕方がない」を「仕方がある」に変える教科書。
こんな人におすすめ
地域の課題に手を上げたいが、何から始めればいいかわからない人。PTAや自治会、NPOで動いている人、組織改革を任された中間管理職にも。政策提言や法改正まで視野に入れたい学生の実践入門としても読みやすい。
良い点
- 5つのステップが物語で腹に落ちる
- 幅広い実践事例が後半に並ぶ
- 理論と実践の往復がしやすい
気になる点
- 日本の事例は限られる
- ストーリー部分はやや平易
- 実践には相応の時間が必要
出版社
英治出版
発売日
2020年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ハーバード発って聞くと、ちょっと身構えてしまいます。普通の人が読めるんでしょうか。
佐藤メバル
そこがうまい作りでね。前半は小学生のカナメたちが昼休みを取り戻す物語になっていて、そのストーリーを追うだけで5つのステップが頭に入る。
後半で「おやじの会」や産後ケア施設、成人式の改革、刑法改正キャンペーンといった実例が並ぶ。ハーバードの理論が、身近なところから始まる形で書かれているんだ。
橘ナナミ
法改正まで、普通の人たちで動かせるものなんですか? そこまで行くと自分には遠い話に感じます。
佐藤メバル
この本の主張はそうだね。なんとなくデモや署名をするのとは違い、変化につながるポイントを見つけて戦略的に動く。
人のつながりを雪の結晶のように広げていく。書店員時代、児童書の棚づくりを仲間に手伝ってもらった経験があるけど、一人でやると折れることも、輪になると続く。
そういう実感のある人ほど刺さると思うよ。

21世紀の経済システム: 市民資本主義
ガク 著
ピケティ『21世紀の資本』が示した資本収益率r>経済成長率gという格差拡大のメカニズムに、ひとつの解決策を提示しようとする論考。成熟した資本主義国では実体経済に寄与しないrを限りなくゼロに近づけ、gの中に取り込む仕組みを構想する。ユーロ圏で独自通貨Nマネーを使う案、ギリシャ危機でのドラクマ復活、米国の「99%」側の対抗手段、日本では異次元緩和後の処方箋として語られる。制度設計の空想と批判の両方を楽しめる。
こんな人におすすめ
ピケティを読んだけれど、では代替案は何かと気になっていた人。経済政策や金融制度に関心のある学生・社会人、地域通貨や補完通貨の可能性を考えたい実務家にも。アベノミクス後の議論を整理したい読者にも論点を提供する。
良い点
- ピケティへの具体的な応答になる
- 通貨制度の代替案が具体的
- 論点が明快で議論しやすい
気になる点
- 著者や出版社の情報が少ない
- 実現可能性には賛否が分かれる
- 専門用語がやや多い
出版社
詳細情報なし
発売日
2015年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ピケティの名前が出てくるんですね。『21世紀の資本』は読んでいないんですけど、ついていけますか?
佐藤メバル
核になるのは一つだけだから大丈夫。資本収益率rが経済成長率gを上回り続けると格差が広がる、というピケティの指摘に対して、rを限りなくゼロに近づけてgに取り込むという仕組みを提案している。そこさえ押さえれば読み進められるよ。
橘ナナミ
Nマネーとかドラクマとか、聞き慣れない言葉も出てきますね。通貨の話は苦手意識があるんです。
佐藤メバル
そこが面白いところでね。ユーロを使いながら各国が独自通貨を持つ、ギリシャ危機でドラクマを復活させる、といった構想が並ぶ。
日本では異次元緩和の後始末という文脈で語られる。実現するかどうかは別として、通貨を制度として疑ってみる視点は、地域通貨を考えるときの遠い背景になる。賛否を考えながら読む本だね。

持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン
筧裕介 著|英治出版
¥2,640(税込)
ソーシャルデザインの第一人者・筧裕介が、土(コミュニティ)・陽(ビジョン)・風(チャレンジ)・水(教育)という4つの豊かな生態環境を手がかりに、長期的で住民主体の地域づくりを解説する決定版ハンドブック。一過性のイベントやハコモノ頼みの施策ではなく、SDGsの考え方をベースに行政・企業・住民が一体で地域を変える方法を示す。同じ著者の『ソーシャルデザイン実践ガイド』が具体手法の手引きなら、こちらは地域全体の設計図にあたる。
こんな人におすすめ
自治体職員、地域おこし協力隊、地域づくりに関わるNPOや企業の担当者。まちづくりを長期で考えたい経営者や、SDGsを地域に落とし込みたい人にも。研修テキストとしても使いやすい構成になっている。
良い点
- 4つの要素で整理され見通しがよい
- SDGsと地域づくりを接続
- 行政・企業・住民の三者視点
気になる点
- 抽象度が高く具体策は薄め
- 事例の詳細はガイド本に譲る
- 424ページで通読は骨が折れる
出版社
英治出版
発売日
2019年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
土・陽・風・水って、なんだか詩的ですね。地域づくりとどう結びつくんでしょう。
佐藤メバル
そこがこの本の覚えやすさでね。土はつながり協働するコミュニティ、陽は道を照らす未来ビジョン、風は一人ひとりの生きがいを創るチャレンジ、水は次世代の教育。
この4つが揃った生態系として地域を見ると、イベントやハコモノ頼みの施策では続かない理由が見えてくるんだ。
橘ナナミ
同じ筧さんの本で、実践ガイドもありますよね。どう使い分ければいいんでしょうか。
佐藤メバル
いい質問だね。実践ガイドは7つのステップと6つの事例で手法を追う本。こちらは地域全体の設計図で、土・陽・風・水をどう用意するかを考える。
書店員時代、研修で使う自治体の職員さんは、この二冊をセットで持ち帰ることが多かった。まず地図、次に道具、という順番だね。

コミュニティマネジメント
坂倉杏介 著|中央経済社
¥3,699(税込)
地域のコミュニティシステムをいかに作るかを研究した一冊で、まず「マネジメント」という言葉の意味を問い直すところから始まる。著者は、マネジメントを管理や運営ではなく、助言し新たな状況を作るための手助けだと捉える。192ページと短いながら、地域に関わる人が身構えてしまう「管理」の語をほどき、支える側の姿勢を考えさせる。固いタイトルからは想像しにくい、姿勢の本である。
こんな人におすすめ
自治会や町内会、コミュニティ施設の運営に携わる人。「管理する側」と「住む側」のあいだで悩んでいる自治体職員や、地域拠点のスタッフにも。コミュニティに関わる学生が、関わり方の基本姿勢を考える入門にもなる。
良い点
- 短く読み切れる分量
- マネジメントの語を丁寧に再定義
- 実務の姿勢を問い直せる
気になる点
- 事例や具体策は多くない
- 学術書のため文体は硬め
- 192ページでも価格は高め
出版社
中央経済社
発売日
2020年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
コミュニティマネジメントって、コミュニティを管理するってことですか? なんだか上から目線に聞こえてしまうんですが。
佐藤メバル
まさにその違和感から始まる本だよ。著者はマネジメントを管理や運営ではなく、助言し新たな状況を作る手助けだと捉え直している。
地域のコミュニティシステムをどう作るかを、上からではなく横から支える視点で研究した一冊なんだ。
橘ナナミ
192ページと短めですけど、読み応えはありますか?
佐藤メバル
分量は少ないけど、姿勢を問い直される本だね。書店員時代、自治会の役員さんが「自分たちは管理しているつもりはない」とよく話していた。
その感覚に、理論の言葉を与えてくれる。価格は専門書の水準だから、図書館で手に取ってから考えるのもいいと思うよ。

ソーシャルデザイン実践ガイド――地域の課題を解決する7つのステップ
筧裕介 著|英治出版
¥2,640(税込)
育児、地域産業、高齢化、コミュニティ、災害——社会の課題を市民の創造力で解く手法を、7つのステップと6つの事例で解説する実践ガイド。著者はソーシャルデザインを「森の中に、道をつくる」活動だと表現する。出口の見えない鬱蒼とした森のような課題に、歩いて声を聞き、仲間をつくり、地図を描き、いちばん必要な場所に道や橋や小屋をみんなでつくる。同じ著者の『持続可能な地域のつくり方』が全体設計図なら、こちらは手を動かすための道具箱にあたる。
こんな人におすすめ
地域の課題を感じているが、どこから手をつけるか迷っている人。NPOや自治体のプロジェクト担当者、社会課題に取り組む学生やエンジニアにも。ワークショップの進行役が、進め方の型を借りるのにも向く。
良い点
- 7ステップが手順として明確
- 6つの事例で応用を確認できる
- 道具として繰り返し使える
気になる点
- 事例の地域は限られる
- 巻末のワーク量は多め
- 全体設計は別書が前提
出版社
英治出版
発売日
2013年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ソーシャルデザインって、デザインの本ですか? 色や形の話かと思っていたんですけど。
佐藤メバル
いい引っかかりだね。著者はソーシャルデザインを「森の中に、道をつくる」活動だと表現している。
高齢化や育児、災害といった課題は、足を踏み入れると出口が見えない森のようなもの。そこを歩いて声を聞き、仲間をつくり、地図を描いて、必要な場所に道を引く。
7つのステップと6つの事例で、その手順を示しているんだ。
橘ナナミ
筧さんの本をもう一冊持っているのは、そういう役割分担なんですね。
佐藤メバル
そう。『持続可能な地域のつくり方』が土・陽・風・水という全体の設計図なら、こちらは手を動かす道具箱。
書店員時代、まちづくりを始めたばかりの人が「まずこれ」と手に取るのは、たいていこの実践ガイドの方だった。
ワークショップの進行に困ったら、ステップに戻ればいい。そういう頼り方のできる本だよ。

地域協働のマネジメント
佐々木利廣 著|中央経済社
¥2,970(税込)
企業、NPO、行政がそれぞれの個性を守りながら、しなやかに連携し協働することで地域に新しい風を吹かせる——その協働マネジメントの勘どころを明らかにする一冊。同じ中央経済社から出ている『コミュニティマネジメント』が地域システムの作り方を扱うのに対し、こちらは複数の主体がどう組むかに焦点を当てる。236ページで、組織の境界をまたぐ実務の要所を押さえる。
こんな人におすすめ
企業の地域貢献やCSR、自治体との協働事業を担当する人。NPOと行政、企業のあいだで調整する立場の人に。協働プロジェクトを立ち上げる前に、つまずきの型を知っておきたい実務家にも向く。
良い点
- 三者連携の勘どころが整理される
- 実務家に使いやすい分量
- 組織の個性を保つ視点が明確
気になる点
- 事例の情報は限られる
- 学術的な文体で硬め
- 価格は専門書の水準
出版社
中央経済社
発売日
2018年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
企業とNPOと行政が一緒に、って、なかなかうまくいかなさそうですよね。何が難しいんでしょう。
佐藤メバル
そこを扱った本だね。企業、NPO、行政が自分たちの個性を守りながら、しなやかに連携する。無理に同じ方向を向かせるのではなく、違いを保ったまま協働する。
その勘どころを明らかにしている。同じ出版社の『コミュニティマネジメント』が地域システムの作り方なら、こちらは主体の組み方に焦点があるんだ。
橘ナナミ
実際に協働がうまくいかない場面って、どこでつまずくんでしょう。
佐藤メバル
書店員時代、商店街のイベントに企業の協賛、行政の補助、NPOの運営が重なって、目的がずれていく場面を何度か見たよ。
この本を先に読んでいれば、そういう型として予習できたかもしれない。全員が同じ熱量にならないことを前提に設計するのが、勘どころなんだろうね。

地域共創のすすめ: 人がまなぶ、人がつながる、地域がつながる
武田真理子 著|北樹出版
¥2,420(税込)
山形県庄内地域で2016年に開講され、8年間で20代〜70代の修了生188名を輩出した「地域共創コーディネーター養成プログラム」を軸に、学び・出会い・対話からどう協働が生まれるかを描く。第1章でプログラムの成り立ちと4つの特徴を示し、第2章で社会的背景と共創の意味を考察、第3章でファシリテーションとコーディネーションの理論と価値を事例とともに解説する。第4章の対談と11のコラムが、参加者の変化を生々しく伝える。
こんな人におすすめ
人材育成や研修プログラムを設計する自治体・企業の担当者。地域で学びの場を立ち上げたい人、コーディネーター役を担う実務家に。参加者の生の声を読みたい読者には、11本のコラムと庄内エリアマップが助けになる。
良い点
- 8年間の蓄積が具体的に語られる
- 修了生のコラムが11本収録
- ファシリテーションの理論も押さえる
気になる点
- 一事例の掘り下げに集中
- 地域外への応用は読者の解釈次第
- 184ページでも価格は専門書並み
出版社
北樹出版
発売日
2025年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
山形県の庄内地域……実際に人が育つ場の話なんですね。8年間って、続いているのがすごいです。
佐藤メバル
そう、2016年に開講して、20代から70代までの修了生が188名。学び、出会い、対話する循環がどう協働を生むのかを、プログラムの実践から描いている。
ファシリテーションとコーディネーションの理論も、事例とセットで解説されているよ。
橘ナナミ
修了生のコラムが11本も入っているんですか。そこが読みどころになりそうですね。
佐藤メバル
いいところに目をつけたね。書店員時代、研修本は「作った側の言葉」ばかりで、参加した人の本音が読めないことが多かった。
ここは動機や変化、地域の変化を本人の視点で語っている。藻谷浩介さんと徳田太郎さんの推薦もついている。
養成講座を企画する人は、このコラム部分から設計のヒントを持ち帰れると思うよ。

新しい経済のつくり方: 「人間中心」の日本型資本主義へ
D・ヒュー・ウィッタカー 著|東洋経済新報社
¥3,740(税込)
英オックスフォード大教授で世界的な日本研究者である著者が、「人間中心」の日本型資本主義という新経済モデルを唱える460ページの論考。「日本経済は必ず再興できる」という立場から、既存の経済学の枠に収まらない日本的な強みをどう活かすかを論じる。地域経済を「小さな経済」として捉える本書群の中では、国全体の経済モデルを扱う大きな視点の一冊。現場の実践と国家戦略のあいだを行き来したいときに読む。
こんな人におすすめ
日本経済の針路に関心がある経営者・政策担当者。経済学や経営学を学ぶ学生、海外から日本を見る視点に触れたい読者にも。地域経済の議論を国全体の枠組みに接続したい人に向く。
良い点
- 日本研究者の外部視点が得られる
- 国全体のモデルを提示する
- 実務と政策をつなぐ視野
気になる点
- 460ページで分量が多い
- 具体策より論考が中心
- 価格は専門書の水準
出版社
東洋経済新報社
発売日
2025年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
オックスフォードの教授が書いた日本経済論なんですね。海外の人から見た日本、というのが気になります。
佐藤メバル
そこがこの本の立ち位置だね。世界的な日本研究者が、「人間中心」の日本型資本主義という新経済モデルを唱えている。
日本経済は再興できるという立場で、既存の経済学の枠に収まらない日本的な強みをどう活かすかを論じているんだ。
橘ナナミ
地域経済の本を並べて読んでいると、急に視点が大きくなる感じがします。
佐藤メバル
そう、まさに国全体のモデルを扱う本だからね。書店員時代、地域の実践をしているお客さんが「国の方針が変わらないと」とため息をつく場面をよく見た。
逆に、国家戦略を語る人が現場を知らずに空回りする場面も。この本はその橋を渡す位置にある。460ページは覚悟がいるけど、行き来する価値はあると思うよ。

資本主義を超える経済体制と文明―改革から変革へ―
津田直則 著|晃洋書房
¥3,850(税込)
格差が広がり個人主義や利己主義が強まる競争社会に対して、「株式会社改革論」と「協同組合連帯システム」を軸に、経済体制と文明の改革と変革を提示する論考。第I部で改革から変革への構想を描き、モンドラゴン協同組合、イタリアの協同組合、オーストラリア・マレーニの協同組合コミュニティや地域通貨を検証。第II部では協同組合と文明の精神を論じ、座談会も収める。実例の蓄積が厚く、思想と制度の両方を追える。
こんな人におすすめ
協同組合や労働者協同組合に関心のある実務家・研究者。地域通貨や社会的連帯経済を学ぶ大学院生、企業の所有と統治に関心のある経営者にも。モンドラゴンの事例を日本語で深く知りたい読者に向く。
良い点
- モンドラゴンなど具体例が厚い
- 制度と文明の両面を扱う
- 各国比較の視点がある
気になる点
- 硬い学術書で読了に時間がかかる
- 価格は専門書でも高め
- 予備知識なしでは難所が多い
出版社
晃洋書房
発売日
2022年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
モンドラゴンって、聞いたことはあるんですが、協同組合のまちなんですよね。この本はそこから資本主義を超える話まで行くんですか。
佐藤メバル
そう、スケールが大きい本だね。株式会社改革論と協同組合連帯システムを軸に、体制と文明そのものを問う。
モンドラゴンだけでなく、イタリアの協同組合、オーストラリアのマレーニという協同組合コミュニティや地域通貨まで、実例を積み上げていく。座談会も収録されているよ。
橘ナナミ
イタリアやオーストラリアの事例まで入っていると、世界地図を眺める感じですね。
佐藤メバル
そこが面白いところでね。成功例を並べるだけでなく、連帯システムがどう機能しているかを制度の言葉で説明してくれる。
書店員時代、協同組合関係の本は売れ筋ではないけれど、必要としている人が確実にいて、棚に一本あると安心される。そういう骨太な一冊だよ。

地域コミュニティ開発 参加型開発・コミュニティの社会経済 国際協力の教科書
野田直人 著
発展途上国における地域コミュニティの特徴から説き起こし、「機会均等」の重要性や従来のコミュニティ開発の注意点を豊富な事例で解説する。社会経済的・心理学的な観点から住民の行動をひもとき、援助の効果を高めるヒントを示す。国際協力の関係者が陥りがちな「良い計画症候群」に警鐘を鳴らし、多様で変化し続ける現実にどう対処するかを説く。著者自身の30年以上の実践と失敗談が土台にある。もとはセネガルで青年海外協力隊員やJICA専門家向けに開いていた講座から生まれた。
こんな人におすすめ
国際協力やNGO、地域開発の現場を目指す人。JICAや青年海外協力隊の候補者・関係者、開発援助を学ぶ学生にも。地域おこしに携わる国内の実務家も、「良い計画症候群」の話を自らの現場に置き換えて読める。
良い点
- 失敗談を含む実践の厚み
- 学術的になりすぎない読みやすさ
- 「良い計画症候群」の警告が鋭い
気になる点
- 国内事例は扱われない
- 途上国前提の文脈がある
- 心理学用語はやや多め
出版社
詳細情報なし
発売日
2017年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
青年海外協力隊の講座から生まれた本なんですか。現場の人が読むように書かれているんですね。
佐藤メバル
そうなんだ。著者は30年以上コミュニティ開発の現場にいて、自分の失敗も含めて書いている。発展途上国の住民の行動を社会経済や心理の側面から説き起こし、援助の効果を高めるヒントを示す。
国際協力の人が陥りがちな「良い計画症候群」への警鐘も、この本の柱だね。
橘ナナミ
「良い計画症候群」って、計画を立てすぎてしまうことですか? 名前からして少し皮肉に聞こえます。
佐藤メバル
近いね。計画では直接コントロールできない現実をどう捉え、どう工夫していくか。そこを考えずに立派な計画だけができる状態を指している。
国内のまちづくりにも同じ罠があるから、地域おこしの人が読んでも刺さる。書店員時代、海外協力の棚と地域づくりの棚は離れていたけど、本当は地続きなんだよね。

地域福祉実践としての経済活動―コミュニティワークの新たなアプローチ
柴田学 著|関西学院大学出版会
¥3,960(税込)
地域福祉と地域創生が抱える課題を関連した複合的な事象として捉え、社会経済型地域福祉と自治体ガバナンス型地域福祉を両輪に据えて、地域福祉による新しい価値の創造を試みる研究書。沖縄の共同売店による地域づくり、協同組合をベースにした「やなマルシェ・やなまるっ人」、島根県益田市真砂地区の協働など事例研究を収め、コミュニティ・オーガナイジングやアセットベースド・コミュニティ・ディベロップメントの理論も検討する。
こんな人におすすめ
地域福祉と地域経済の接点を研究・実務で扱う人。社会福祉協議会や自治体の福祉部門の担当者、コミュニティワークに携わる専門職に。社会的連帯経済や社会的企業に関心のある大学院生にも向く。
良い点
- 福祉側から経済を捉える視点
- 沖縄や島根の具体事例が入る
- 理論と実践の両方を押さえる
気になる点
- 学術書で文体は硬い
- 価格はやや高め
- 福祉の予備知識があると読みやすい
出版社
関西学院大学出版会
発売日
2024年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
地域福祉と経済活動……この組み合わせが意外でした。福祉って、お金を稼ぐ話とは逆方向のような気がしていたので。
佐藤メバル
そこを結び直す本だね。地域福祉が抱える課題と地域創生の課題は、実は複合的に関連している。社会経済型地域福祉と自治体ガバナンス型地域福祉を両輪として捉えることで、福祉の現場から新しい価値の創造を試みている。
沖縄の共同売店、やなマルシェ、島根の益田市の事例なんかが入っているよ。
橘ナナミ
共同売店って、離島の小さなお店ですよね。それが地域福祉の事例として出てくるんですか。
佐藤メバル
そう、売店でありながら、見守りや交流の拠点にもなっている。書店員時代、離島の書店が郵便局と兼ねているような例を見て、機能が重なる場所の強さを感じたよ。
この本は、そういう重なりを理論の言葉で説明してくれる。社会福祉協議会の人が読むと、仕事の輪郭が少し変わるかもしれないね。

地域コミュニティの環境経済学: 開発途上国の草の根民活論と持続可能な開発
鳥飼行博 著|多賀出版
¥6,820(税込)
先進国と開発途上国がともに直面する持続可能な開発、共生社会、資源循環型社会をめぐり、草の根民活に注目して「地域コミュニティの環境経済学」を創設しようとする最先端の研究成果。ボールディングの宇宙船地球号、社会的責任論、アジア通貨危機後に注目されたソーシャル・セイフティーネット、少子高齢化、ジェンダーとリプロダクティブヘルス、再生可能エネルギーと京都メカニズム、熱帯林とローカルコモンズ、リサイクルやゴミ輸出を含む汎アジア循環型社会まで論じる。図表200個以上、写真30枚以上を収めた大著。
こんな人におすすめ
環境経済学や開発経済学を学ぶ学生・研究者。開発援助や環境政策に関わる実務家、NGO・NPOで草の根援助に関わる人に。データに基づく厳密な議論を求める読者に向く。
良い点
- 図表200個以上で根拠が厚い
- ジェンダーからリサイクルまで網羅
- アジア全体を視野に入れる
気になる点
- 405ページの大著で読了に根気が要る
- 価格は高め
- 専門用語が多く前提知識が必要
出版社
多賀出版
発売日
2007年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
図表200個以上、写真30枚以上って、すごい量ですね。これはもう事典みたいなものですか?
佐藤メバル
近い使い方かもしれないね。ボールディングの宇宙船地球号から、ソーシャル・セイフティーネット、ジェンダー、再生可能エネルギーと京都メカニズム、熱帯林とローカルコモンズまで。
草の根民活を軸に環境経済学を組み立てようとする大著で、データがとにかく緻密なんだ。
橘ナナミ
リサイクルやゴミ輸出まで入っているんですね。汎アジアの循環という視点が面白そうです。
佐藤メバル
そこが現代的だよね。書店員時代、環境の本は「心構え」の本と「データ」の本に分かれていた。これは完全に後者で、数字で議論する。
地域のNGOの人が根拠を持って話すための武器になる。ただ価格も分量も覚悟がいるから、まずは関心のある章からつまんでみるといいよ。

社会経済思想の進化とコミュニティ (MINERVA現代経済学叢書 58)
岡村東洋光 著|ミネルヴァ書房
¥3,850(税込)
「MINERVA現代経済学叢書」の一冊として、社会経済思想がどう進化し、その中でコミュニティがどう位置づけられてきたかをたどる244ページの学術書。市場か計画かという二項対立ではなく、社会と経済の関係を思想史の流れの中で捉え直す視点を提供する。地域通貨、協同組合、社会的連帯経済といった具体的な議論の背後にある理論の系譜を押さえたいときに、戻ってくる場所になる一冊。
こんな人におすすめ
経済思想史を学ぶ学生・研究者。社会的連帯経済やコミュニティ論の理論的背景を確かめたい大学院生、地域経済の政策を思想から組み立てたい実務家にも。叢書で揃えている読者にも向く。
良い点
- 思想史の流れを一冊で追える
- 叢書としての理論的な厚み
- コミュニティを経済思想に位置づける
気になる点
- 内容紹介が少なく概要が掴みにくい
- 学術書で文体は硬め
- 価格は専門書の水準
出版社
ミネルヴァ書房
発売日
2003年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「社会経済思想の進化とコミュニティ」って、タイトルが硬いです。開くまでに勇気がいります。
佐藤メバル
気持ちはわかるよ。でも、こういう本は地域経済の議論の背骨になるんだ。社会経済思想がどう進化して、その中でコミュニティがどう位置づけられてきたかを、思想史の流れとしてたどる。
市場か計画か、という二項対立の外側を考えるための土台だね。
橘ナナミ
地域通貨や協同組合の本を読んでいると、思想の話にときどき戻りたくなるんです。
佐藤メバル
それはいい読み方だね。現場の事例は面白いけれど、なぜそれが大事なのかの理由は思想史の側にある。書店員時代、こうした叢書は売れないけれど、必要な人が必ず棚を探しに来た。
価格も張るから、図書館で確認してから手元に置くかを決めるのが現実的だよ。

アジア地域コミュニティ経済学: フィリピンの棚田とローカルコモンズ
鳥飼行博 著|東海大学
アジア開発途上国における草の根民活を軸に地域コミュニティ経済学の構築を試みる一冊。上下水道・灌漑・エネルギー・運輸といったインフラが整わない貧困地域の住民が、水・森林・沿岸資源といった共有自然資源を古くから利用して生計を維持してきた点に着目する。フィリピンの棚田をはじめ、農家や漁業世帯などの個人経営体を社会的弱者としてではなく草の根民活として捉え、それが主体となる持続可能な開発の可能性を説く。
こんな人におすすめ
アジアの開発とローカルコモンズを研究する学生・研究者。国際協力や環境分野の実務家、途上国の農村を扱うNGO関係者に。フィリピンの棚田を事例に学びたい読者にも具体的な一冊。
良い点
- 棚田とコモンズという具体的な題材
- 弱者ではなく主体として捉える視点
- 共有資源の持続的利用を説く
気になる点
- 同じ著者の前著と重なる部分がある
- 学術書で予備知識が必要
- 価格は専門書の水準
出版社
東海大学
発売日
2015年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
フィリピンの棚田が出てくるんですね。観光写真で見たことはありますけど、経済学の本で扱われるとは思いませんでした。
佐藤メバル
そう、ここが面白いところだね。インフラが整っていない地域の住民が、水や森林、沿岸資源といった共有の自然資源を使って生計を維持してきた。
著者はその農家や漁業世帯を社会的弱者ではなく草の根民活として捉え直す。棚田は、そうした共同の知恵が積み上がった場所なんだ。
橘ナナミ
前作の環境経済学とは、どう役割が分かれるんでしょう。
佐藤メバル
環境経済学のほうが世界を網羅する大きな地図なら、こちらはアジアに絞って、地域コミュニティ経済学として組み立て直す。
同じ著者だから視点はつながっているけど、こちらのほうが地域の顔が見えやすい。書店員時代、開発の本をお探しの方に「まず地域から」と勧めたくなる一冊だったよ。

21世紀の地域コミュニティを考える: 学際的アプロ-チ (神戸国際大学経済文化研究所叢書 11)
三好和代 著|ミネルヴァ書房
¥4,142(税込)
「神戸国際大学経済文化研究所叢書」の一冊として、21世紀の地域コミュニティを学際的に考える260ページの論集。経済学の枠に収まらず、文化や社会の側から地域コミュニティを照らし出そうとする立場が核になる。単独の理論書ではなく、複数の視点を重ねて地域像を描く構成で、地域コミュニティを一つの学問領域として捉えたいときに手に取る一冊。
こんな人におすすめ
地域コミュニティを学際的に学びたい大学生・大学院生。地域研究や経済文化に関心のある研究者、自治体で総合計画を扱う担当者にも。複数の論考を横断して読みたい読者に向く。
良い点
- 学際的な視点の重ね合わせ
- 論集として複数の論点に触れられる
- 叢書の一冊として文脈が明確
気になる点
- 内容紹介が少なく全体像が掴みにくい
- 単独では主張が分散しやすい
- 価格はやや高め
出版社
ミネルヴァ書房
発売日
2008年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「21世紀の地域コミュニティを考える」って、タイトルが漠然としすぎていて、何が書いてあるのか想像できないんです。
佐藤メバル
そこは正直に言うと、書名だけでは掴みにくい本だね。ただ、副題に「学際的アプローチ」とあるように、経済学だけでなく文化や社会の側から地域コミュニティを照らそうとする論集なんだ。
神戸国際大学の研究所叢書の一冊で、複数の視点を重ねて地域像を描く構成になっている。
橘ナナミ
論集って、通して読むものなんでしょうか。
佐藤メバル
通読より、関心のある章から入る読み方が合うと思う。書店員時代、論集は「必要な章だけ買う」という人も多かった。
地域コミュニティを一つの学問領域として見渡したいとき、地図のように使える本だよ。価格は張るから、目次を確認してから決めるのがいい。

日本型産業集積の未来像: 城下町型からオープン・コミュニティー型へ
清成忠男 著|日本経済新聞出版
「城下町型」から「オープン・コミュニティー型」へ——日本の産業集積がどう変わるべきかを論じる一冊。同じ土地に企業が集まり、系列や取引で閉じた関係を築いてきた従来の姿に対し、地域の外にも開かれた関係をどう築くかという方向を示す。地域経済を「関係の経済」として捉える本書群の中でも、産業と雇用の側からアプローチする点が特徴的。269ページで、企業城下町のこれからを考える材料になる。
こんな人におすすめ
製造業の集積地で経営や支援に関わる人。商工団体や自治体の産業振興担当者、地域企業の経営者・後継者に。産業構造の転換を学ぶ学生や研究者にも視点を提供する。
良い点
- 産業集積という切り口が独自
- 閉じた関係から開く方向を示す
- 地域雇用の未来を考える材料
気になる点
- 内容紹介が少なく概要は掴みにくい
- 学術寄りで文体は硬め
- 事例の詳細は限られる
出版社
日本経済新聞出版
発売日
1997年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
産業集積……城下町型からオープン・コミュニティー型へ、というところが気になります。城下町って、お殿様と町民の関係みたいなものでしょうか。
佐藤メバル
いい喩えだね。一つの大きな企業を中心に、系列や取引で閉じた関係が積み上がった姿を「城下町型」と呼んでいる。
それに対して、地域の外にも開かれた関係を築いていくのがオープン・コミュニティー型。雇用と産業の側から、これからの地域を考える本なんだ。
橘ナナミ
地域経済の本というと、商店街や農業の話が多いので、産業集積の話は新鮮です。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の持ち味だね。書店員時代、企業城下町の町で「うちのまちは一社で持っている」と話すお客さんがいて、その脆さと強さの両方を感じたよ。
閉じた関係が強みだった時代から、開いた関係が必要な時代へ。その転換を考えるための一冊だよ。

発展する地域 衰退する地域: 地域が自立するための経済学 (ちくま学芸文庫)
ジェインジェイコブズ 著|筑摩書房
¥1,760(税込)
日本をはじめ世界各地の地方都市を実例に、地方はなぜ衰退するのか、真に有効な再生法は何かを説く地域経済論の先駆的名著。ちくま学芸文庫として413ページで読める。地域経済を「関係の経済」や「小さな循環」として見る本書群の議論は、多かれ少なかれこの一冊の上に成り立っている。地域通貨やシビックエコノミーの実践を読んだあとに戻ると、議論の源流が見えてくる。
こんな人におすすめ
地域経済論の古典を押さえたい読者。まちづくりや都市計画に関わる実務家、経済や都市史を学ぶ学生にも。実践書を何冊か読んで、理論の源流に戻りたくなったときの一冊としても頼りになる。
良い点
- 地域経済論の古典として信頼できる
- 世界各地の地方都市の実例が豊富
- 文庫で手に取りやすい価格
気になる点
- 執筆から時間が経った記述もある
- 日本の現在の制度とは前提が異なる
- 文体はやや骨太
出版社
筑摩書房
発売日
2012年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ジェイン・ジェイコブズって、都市の研究者ですよね。この本が地域経済論の先駆的名著だって聞くと、ちょっと意外です。
佐藤メバル
そう、まちづくりの人たちが何十年も読み継いできた本だね。日本をはじめ世界各地の地方都市を実例に、地方はなぜ衰退するのか、何が本当に有効なのかを説いている。
今読んでいる地域経済の本は、多かれ少なかれこの人の議論の上に成り立っているんだ。
橘ナナミ
ちくま学芸文庫なら、文庫棚で見たことがあるかもしれません。
佐藤メバル
手に取りやすいのがいいよね。書店員時代、この本は都市計画や建築を学ぶ学生さんが必ず通る一冊だった。執筆から時間は経っているから、今の制度にそのまま当てはめるわけにはいかない。
でも源流を知っていると、新しい実践書のどこが新しいのかが見えるようになるよ。

地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論 (現代自治選書)
岡田知弘 著|自治体研究社
¥2,970(税込)
コロナショックが病床や保健所の削減、東京一極集中の危険性をはっきり示したとし、地域住民の自治による「地域内再投資力」=地域内で繰り返し再投資する力を説く。戦後の地域開発政策、企業誘致、プロジェクト型開発がなぜ地域を豊かにしなかったのかを検証し、大分県「一村一品」から大山町の「一村多品」、由布院のまちづくりへと、地域内経済循環の実践をたどる。平成の大合併や小規模自治体の輝きにも触れる増補改訂版。
こんな人におすすめ
地域開発政策の失敗を検証したい自治体職員・研究者。商店街や地域産業の再生に関わる実務家、地方自治を学ぶ学生に。企業誘致や合併の是非を考えたい読者にも論点を提供する。
良い点
- 政策の失敗を具体的に検証する
- 一村一品から由布院まで事例が豊富
- 自治と経済を結びつける視点
気になる点
- 404ページで分量が多い
- 著者の立場が明確で論争的
- 地域によっては全体像が古くなる
出版社
自治体研究社
発売日
2020年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「地域内再投資力」という言葉がまっすぐ入ってきました。お金を地域の中で何度も回す、というイメージで合っていますか。
佐藤メバル
その通り。地域内で繰り返し再投資する力のことだね。この本は、病床や保健所の削減、東京一極集中というコロナショックの教訓から始まって、企業誘致やプロジェクト型開発がなぜ地域を豊かにしなかったのかを検証していく。
大分県の一村一品から大山町の一村多品、由布院のまちづくりまで、事例も具体的だよ。
橘ナナミ
一村一品って聞いたことがあります。そこに限界がある、という指摘なんですね。
佐藤メバル
そう、そこから地域内産業連関をどう組むかへ進む。書店員時代、地元の特産品を売るだけで終わってしまう町と、加工や販売まで地域に残している町の差を見てきた。
この本はその差を経済の言葉で説明してくれる。平成の大合併や小規模自治体の話まで入るから、読みどころは多いよ。

地元経済を創りなおす――分析・診断・対策 (岩波新書)
枝廣淳子 著|岩波書店
¥1,012(税込)
人口減少、駅前のシャッター通り、あきらめ——地元経済の悪循環を断ち切る方策を、現状の可視化から考える一冊。お金や雇用を外部に依存する割合を減らすための考え方やツールを示し、好循環に転換した事例を紹介する。次なる金融危機やエネルギー危機、気候変動危機に対して、しなやかに立ち直る力(レジリエンス)をいま地元から培うという視点が貫かれている。岩波新書で240ページ、価格も手頃で、実践の入口として頼りになる。
こんな人におすすめ
自分のまちの数字を一度見てみたい自治体職員や市民。商店街や地域経済に関わる実務家、レジリエンスや気候変動に関心のある読者にも。地域経済を学び始める学生の最初の一冊としても読みやすい。
良い点
- 分析・診断・対策の順で整理される
- 岩波新書で手頃に読める
- レジリエンスという現代的な視点
気になる点
- 事例の深掘りは限られる
- ツールの詳細は他書が必要
- 議論の射程はやや広め
出版社
岩波書店
発売日
2018年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
岩波新書でこのテーマ、というのがいいですね。専門書だと手が出にくいので助かります。
佐藤メバル
そこは大きいよね。分析・診断・対策という順で、地元経済の悪循環をどう断ち切るかを考える。お金や雇用を外部に依存する割合を減らすための考え方とツール、好循環に転換した事例が並ぶ。
価格も手頃で、最初の一冊にちょうどいい。
橘ナナミ
「レジリエンス」って、しなやかに立ち直る力のことですよね。地域経済とどう関係するんでしょう。
佐藤メバル
次なる金融危機やエネルギー危機、気候変動危機に対して、外に頼りすぎていると立ち直れない。だから地元から力を蓄えよう、という文脈だね。
書店員時代、シャッター通りを歩きながら「ここで何が買えるか」を数えたことがある。まず数字を見る、その第一歩をこの本が手伝ってくれるよ。

地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門
木下斉 著|ダイヤモンド社
¥1,590(税込)
「補助金が地方のガンなんや」——地方衰退の構造とビジネスでの変革手法をストーリーで読ませる地域再生入門。東京から新幹線と在来線で通う人口5万人ほどの地方都市を舞台に、実家の片付けで帰郷した瀬戸淳が、飲食店を営む同級生に誘われ、シャッター街の再生から地域全体の再生へと進んでいく。全国で400名が実践したノウハウを122のキーワード解説として収録。地銀と信金の使い分け、小型店が大型店に勝つ方法、イベント地獄、住民の嫉妬、地域おこし協力隊のジレンマまで踏み込む。
こんな人におすすめ
地元に戻るか迷っている人、地方で商売を始めたい人、地域おこし協力隊や自治体の若手職員に。フィクションとしても読みやすく、地域ビジネスの実務書としても使える。失敗や批判との向き合い方を先に知っておきたい人にも。
良い点
- ストーリーで一気に読める
- 122のキーワードで辞書的に使える
- 資金調達から人間関係まで具体的
気になる点
- 著者の主張がはっきり強め
- ノウハウの前提は著者実践に偏る
- ストーリー部分は好みが分かれる
出版社
ダイヤモンド社
発売日
2018年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「地元がヤバい本」って、SNSで見たことあります! 補助金がガン、という言葉が強烈で……。
佐藤メバル
そう、木下さんの言葉はまっすぐだよね。地方衰退の構造と、ビジネスでの変革手法をストーリーで読ませる。
実家の片付けで帰郷した主人公が、同級生に誘われてシャッター街の再生から地域全体の再生へ進んでいく。全国で400名が実践したノウハウが122のキーワードで整理されている。
橘ナナミ
122個って、読み切れるか心配です。物語と解説、どっちから読めばいいんでしょう。
佐藤メバル
物語が軸で、コラムが横に並ぶ作りだから、まず物語を追って、気になったキーワードだけ拾えばいい。地銀と信金の使い分け、小型店が大型店に勝つ方法、住民の嫉妬、地域おこし協力隊のジレンマまで書いてある。
書店員時代、地方で店を始めたい人が最初にぶつかるのは資金より人間関係だった。そこに触れているのが、この本の正直さだね。
面識経済と近接する概念を、本で横断する
橘ナナミ
「面識経済」と似た考え方の本って、ほかにどんなものがあるんですか?
佐藤メバル
近い概念をクラスタで押さえると整理しやすい。まず「贈与・自発性」の系譜では金子郁容さんの『ボランタリー経済の誕生』。自発する経済とコミュニティを正面から扱っている。次に「コモンズ」なら鳥飼行博さんの『アジア地域コミュニティ経済学』で、フィリピンの棚田とローカルコモンズが題材になる。
橘ナナミ
なるほど。ケアや福祉のほうは?
佐藤メバル
『地域福祉実践としての経済活動』が近い。沖縄の共同売店による地域づくりの実践などが事例として出てくる。お金を稼ぐためだけではない経済を、福祉の側から見ている本だ。あと「関係人口」的な視点なら『地域共創のすすめ』で、山形県庄内地域の「地域共創コーディネーター養成プログラム」が紹介されている。人が学び、つながることで地域が変わっていく過程が追える。
橘ナナミ
面識経済の「顔の見える関係」と、通底している感じがします。
佐藤メバル
そう。お金や制度の話に見えて、根っこはいつも「誰と、どうつながるか」なんだよね。
スミスからシューマッハーへ、思想史の読書マップ
佐藤メバル
もう一つ、あまり踏み込まれない角度を出しておこう。『面識経済』は経済思想史をたどる本だから、アダム・スミス、マルクス、ケインズ、ラスキン、イリイチ、シューマッハーといった名前が、思考の道しるべとして並ぶ。全員を原典で追う必要はない。「この人は何を問題にしたのか」を一行で言えるようにするだけで、本書の議論が立体的になる。
橘ナナミ
原典はハードルが高いですもんね。
佐藤メバル
だからおすすめは、実践書と古典をペアで読むこと。成長の限界を問いたいなら、現代の実践書で問題意識をつかんでから『発展する地域 衰退する地域』へ進む。ジェイン・ジェイコブズのこの本は、地方はなぜ衰退するのかを世界各地の都市を例に論じた地域経済論の先駆的名著で、文庫で手に入る。協同組合の実例を深掘りしたいなら『資本主義を超える経済体制と文明』で、モンドラゴン協同組合やイタリアの協同組合が詳しく扱われている。
誰に向くか、読んだあとに何ができるか
橘ナナミ
逆に、向かない人もいますか?
佐藤メバル
正直に言うと、学術的な厳密さを最優先する人には物足りないかもしれない。著者は研究者ではなく実践家で、本書も論文ではなくコミュニティ論として書かれている。引用や検証を求めるなら、同じテーマを扱う専門書を併読したほうがいい。
橘ナナミ
読んだあと、何か行動に移すとしたら?
佐藤メバル
地域通貨、共同売店、地域内再投資、そして仲間を集めて社会を変える『コミュニティ・オーガナイジング』の5つのステップ。学びの出口はたくさんあるよ。あるいは、自分が住む町で『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』を開いてみる。補助金に頼らず自分たちで稼ぐ、という厳しいけれど具体的な話がストーリー形式で読める。読んで終わりにしないための本が、この並びには揃っているんだ。
よくある質問
面識経済とは簡単にいうと何?
橘ナナミ
面識経済とは簡単にいうと何について教えてください。
佐藤メバル
山崎亮さんが光文社から出した『面識経済 資本主義社会で人生を愉しむためのコミュニティ論』が起点になる考え方です。面識=顔の見える関係を軸に、消費的ではなく愉しさを追求する活動的な人生をどう歩むかを、経済思想書をたどりながら地域経済の可能性として論じています。
面識経済はどこで買える?電子書籍版はある?
橘ナナミ
面識経済はどこで買える?電子書籍版はあるについて教えてください。
佐藤メバル
光文社の単行本として刊行されています。一般書店やオンライン書店で扱われます。電子版の有無や価格は版によって変わるため、出版社や書店の公式情報で確認するのが確実です。図書館で借りてから購入を決めるのもよい選び方です。
面識経済は難しい?ページ数や読みやすさは?
橘ナナミ
面識経済は難しい?ページ数や読みやすさはについて教えてください。
佐藤メバル
424ページ、価格は3465円。経済思想書をたどる箇所は読みごたえがあり、全体を一気に通読しようとすると疲れます。著者は研究者ではなく実践家なので、関心のあるテーマから入って、行きつ戻りつ読むほうが向いています。
面識経済の前に読むべき本はある?
橘ナナミ
面識経済の前に読むべき本はあるについて教えてください。
佐藤メバル
入門として『地元経済を創りなおす』(岩波新書)や、192ページと短い『コミュニティマネジメント』が入りやすいです。事例から入るなら『日本のシビックエコノミー』で国内20の事例を眺めてから本編に進むと、理解の助走路になります。
面識経済と似た考え方の本を教えて
橘ナナミ
面識経済と似た考え方の本を教えてについて教えてください。
佐藤メバル
贈与や自発性なら『ボランタリー経済の誕生』、コモンズなら『アジア地域コミュニティ経済学』、ケアや福祉の側からなら『地域福祉実践としての経済活動』が近いです。いずれも「お金のためだけではない経済」を扱っています。
山崎亮の本はどの順番で読めばいい?
橘ナナミ
山崎亮の本はどの順番で読めばいいについて教えてください。
佐藤メバル
本記事で軸にしているのは『面識経済』です。まずこの一冊で著者の問題意識の全体像をつかみ、関心に応じて他の仕事を追いかける読み方がおすすめです。コミュニティデザインの現場感覚と理論がつながるので、最初の一冊として損はありません。
経済学を学び直すなら最初に読む本は?
橘ナナミ
経済学を学び直すなら最初に読む本はについて教えてください。
佐藤メバル
新書サイズの『地元経済を創りなおす』が入りやすいです。思想史から入るなら『社会経済思想の進化とコミュニティ』、成長や資本主義の限界を問うなら『資本主義を超える経済体制と文明』や『新しい経済のつくり方』へ進むと流れがつかめます。
まちづくりや地域経済に関心がある人におすすめの本は?
橘ナナミ
まちづくりや地域経済に関心がある人におすすめの本はについて教えてください。
佐藤メバル
実践なら『ソーシャルデザイン実践ガイド』『持続可能な地域のつくり方』、お金の流れを考えるなら『地域づくりの経済学入門』、当事者として動きたいなら『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』や『コミュニティ・オーガナイジング』が入口になります。
まとめ
橘ナナミ
今日のお話を聞いて、『面識経済』って「経済の本」というより「暮らしの本」なんだなと思いました。
佐藤メバル
うん、それでいいと思う。きっかけは何でもいいんだ。地域通貨に興味を持ったなら『コミュニティ経済と地域通貨』から、まちづくりなら『持続可能な地域のつくり方』から入って、最後に『面識経済』で「そもそも経済って何だったんだろう」と考えてみる。順番は人それぞれで構わない。
橘ナナミ
順番は人それぞれ、か。ちょっと安心しました。
佐藤メバル
ただ、一つだけ。この手の本は「読んで理解する」より「読んで、誰かに会いたくなる」本なんだ。ページを閉じたあとに、近所の店の人と話したくなる。それでいい。書店員だった頃、地域経済の本は地元の商店主さんがよく買っていったよ。「うちの町をなんとかしたい」って顔をしてね。
橘ナナミ
いい話です……。じゃあ私も、まず一冊、自分の町を思い浮かべながら選んでみます。
佐藤メバル
経済の数字は、遠くから眺めた街の灯りだ。どの窓に誰がいるかまでは教えてくれない。面識経済の本棚は、その灯りを一軒ずつ訪ねて、名前を覚えていくための地図なんだよ。
