西洋経済史を学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】

監修

佐藤メバル

佐藤メバル

@shelfy_mebaru

編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ

橘ナナミ

@medias_nanami

編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。

最終更新: 2026年10月

橘ナナミ

橘ナナミ

西洋経済史の本を調べていて気づいたんですけど、「入門」と名乗る本が何冊もあって、どれが本当の入口なのか分からなくなってしまいました。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいところに気づいたね。西洋経済史は、大学の講義で使われる教科書と、社会人向けの教養書が同じ棚に並ぶ分野で、役割がまったく違うんだ。書店員だった頃も、この棚は「どれか一冊」を勧めるのが一番難しい棚だったよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、まず何を基準に選べばいいんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

大きく分けると、通史を通読するのか、テーマを深掘りするのか、そしてどのレベルから始めるのか。この2つを決めるだけで、選ぶべき本はかなり絞られるよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど……じゃあ、その軸ごとに教えてください!

西洋経済史を学べる本の選び方

目的別:通史を通読したいか、テーマを深掘りしたいか

佐藤メバル

佐藤メバル

中世から現代まで一本の線で追いたいなら、『西洋経済史〔新版〕』(有斐閣アルマ)が第一候補。産業革命だけでなく市場経済化の流れも視野に入れ、中世以来のヨーロッパ経済の成長を追う構成で、EUの研究動向も取り入れられているよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

逆に、産業革命や金融だけを深く知りたいときはどうすればいいですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

通史を一冊読んでからのほうが入りやすい。国ごとの動きを押さえたいなら『西洋経済史のツボ』が向いている。イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダなど西洋諸国の経済事象を歴史学的に解説していて、学生にも一般にも開かれた一冊だよ。

レベル別:初学者・中級者・研究者志望

佐藤メバル

佐藤メバル

高校世界史の知識しかない人は、まず語り口のやわらかい一冊から。『やりなおす経済史』は封建制からアベノミクスまでを講義調のストーリーで追う。同じ著者による文庫版『マンガみたいにすらすら読める経済史入門』には、2014年以降の経済状況を扱う章が加わっているよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

経済学の基礎がある人は、どのあたりから入るのがいいですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

『経済史 -- いまを知り,未来を生きるために』は、分業や市場、貨幣に加えて権力や文化、共同体といった概念も使って経済の歴史を俯瞰する。厚い本なので、じっくり読む二冊目に向いているね。

学派・方法論から選ぶ

佐藤メバル

佐藤メバル

マルクス経済学の枠組みから入りたいなら『新西洋経済史講義』。弁証法や価値形態論から説き起こし、産業革命、金融資本の成立、イギリスの覇権、ドイツ再統一とEUまで積み上げていく。

橘ナナミ

橘ナナミ

世界システム論や社会史の側から読める本はありますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

『資本主義の起源と「西洋の勃興」』は中世の中国、インド、北アフリカを比較の視野に入れ、ヨーロッパ中心主義を退けつつ資本主義の発生条件に迫る。ピレンヌの『中世都市』は、イスラーム勢力の地中海進出で停滞するなかから商人階層と都市が生まれる過程を描いた古典だよ。

形式と入手性で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

新書や文庫で気軽に読めるものはありますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

ちくま新書の『ヨーロッパ覇権史』は、オランダ、ポルトガル、イギリスを軸に近代ヨーロッパの台頭を追う。講談社学術文庫の『近代欧州経済史入門』は、大塚久雄が商業革命から初期資本主義の完成までを論じた一冊。文庫や学術文庫は手に取りやすく、通勤の読書にも向くよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

大学の教科書は値が張る印象もあります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは図書館との併用が現実的。まず借りて相性を確かめ、手元に置きたくなったら買う。放送大学教材の『欧米経済史』のように、放送授業とセットで使われるテキストもある。年表や統計を引きながら読む本は、手元に一冊あると心強いね。

西洋経済史を学べる本をひと目で比較

橘ナナミ

橘ナナミ

えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず

#画像名称おすすめ対象価格一言
1
西洋経済史〔新版〕 (有斐閣アルマ)
西洋経済史〔新版〕 (有斐閣アルマ)大学の経済史の講義についていきたい学生、EUやグローバリゼーションの背景を中世まで遡って押さえたい人、レポートや卒論の前に通史の骨格を作りたい人に。辞書的に手元に置く使い方も。¥2,640中世からEUまで通す定番
2
西洋経済史入門
西洋経済史入門経済史の講義が始まる前に全体像をつかんでおきたい学生、厚いテキストで挫折した経験がある人、短い単位で通史の入口だけを確かめたい社会人に。移動中の読書にも向きます。¥28,400薄さで攻める入門の一冊
3
西洋経済史のツボ
西洋経済史のツボ通史は読んだけれど国ごとの違いが混ざってしまう人、ヨーロッパ各国の経済的な歩みを横並びで比べたい人、一般向けの読み物として経済史に触れたい人に。¥2,750国別で押さえる経済史の要点
4
西洋経済史 (有斐閣Sシリーズ 28)
西洋経済史 (有斐閣Sシリーズ 28)講義でSシリーズが指定されている学生、出版社を揃えて通史を読み比べたい人、コンパクトな通史を一冊決めたい人に。書店で冒頭だけ確かめてから選ぶのもおすすめです。-有斐閣Sシリーズの通史
5
西洋経済史 新版 有斐閣双書 入門・基礎知識編
西洋経済史 新版 有斐閣双書 入門・基礎知識編経済史の定番がどう書かれてきたかを知りたい人、書店や図書館で古い入門書を手に取るのが好きな人、研究動向の変化を自分の目で確かめたい読者に。¥1,980古さも情報になる入門

西洋経済史を学べる本のおすすめ人気ランキング

橘ナナミ

橘ナナミ

一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!

佐藤メバル

佐藤メバル

よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

西洋経済史〔新版〕 (有斐閣アルマ)
1

西洋経済史〔新版〕 (有斐閣アルマ)

奥西孝至 著|有斐閣

¥2,640(税込)

4.8

中世以来のヨーロッパ経済の成長と発展を、産業革命だけでなく市場経済化のプロセスも視野に入れて追う有斐閣アルマのテキスト。経済のグローバリゼーションとEU拡大という現在の関心から出発し、EUの研究動向も取り込んだ改訂版です。396ページの厚さはありますが、通史を一本の線でつかめる構成なので、講義の副読本にも独学の土台にも向きます。

こんな人におすすめ

大学の経済史の講義についていきたい学生、EUやグローバリゼーションの背景を中世まで遡って押さえたい人、レポートや卒論の前に通史の骨格を作りたい人に。辞書的に手元に置く使い方も。

良い点

  • 中世から現代まで一冊で通せる
  • 改訂でEU研究の動向を反映
  • 産業革命以外の軸も学べる

気になる点

  • 396ページで通読は骨が折れる
  • 図版中心の軽さはない
  • 予備知識ゼロだと重い

出版社

有斐閣

発売日

2025年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

有斐閣アルマって、大学の教科書コーナーで見た気がします。396ページって、けっこうな厚みですよね……読み切れるんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、これは講義で指定されるタイプの通史テキストです。中世から始めて、産業革命を軸にしながら、近年重視される市場経済化の流れも追い、EU拡大やグローバリゼーションまで視野に入れる。

だから昔の話で終わらないんです。一回で通読しようとせず、章ごとに区切って読むのが現実的ですね。

橘ナナミ

橘ナナミ

章ごと、か。じゃあ全部覚えようとしなくていいなら気が楽です。辞書みたいに手元に置いて、気になった章から開く使い方でもいいですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい使い方です。改訂版なので、EUの研究動向がアップデートされているのも心強い。ただ、最初の一冊として選ぶなら、通史の流れをつかむために前半から順に読むのがおすすめです。

分からない用語が出てきたら戻って確認する。土台を作るつもりで付き合うと、後がぐっと楽になりますよ。

西洋経済史入門
2

西洋経済史入門

林達 著|学文社

¥28,400(税込)

4.7

タイトルどおりの入門書で、194ページというコンパクトさが最大の持ち味。分厚い通史テキストの前段として、西洋経済史という学問が何を扱うのかを先に把握したいときに効きます。同じ著者・同じ出版社によるテキストが別に用意されているので、入門から要説へと段階を踏んで進む読み方も取りやすい構成です。

こんな人におすすめ

経済史の講義が始まる前に全体像をつかんでおきたい学生、厚いテキストで挫折した経験がある人、短い単位で通史の入口だけを確かめたい社会人に。移動中の読書にも向きます。

良い点

  • 194ページで負担が軽い
  • 全体像の把握に集中できる
  • 同じ著者の続編に進みやすい

気になる点

  • 詳しい年表や図版は期待薄
  • これ一冊での深掘りは難しい
  • 扱う範囲は広く浅くなる

出版社

学文社

発売日

1996年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

194ページって、経済史の本にしては薄いですよね。逆に、薄すぎて物足りなくなったりしないんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは目的次第です。これは深く掘る本ではなく、西洋経済史とは何を問う学問なのかを先に体に入れる本。分厚い通史に挑む前に、地図だけ先に手に入れておくイメージですね。

同じ著者・同じ出版社のテキストが別にあるので、そこから先へ進む道も見えやすいんです。

橘ナナミ

橘ナナミ

地図を先に、か。私、いきなり分厚い本を買って三日で閉じた経験があるので、その順番はありがたいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

その失敗、よく聞きますよ。書店員時代も、最初の一冊に一番厚いのを選んでしまうお客さんが多かった。まず薄い一冊で全体の骨格をつかんでから、必要な部分を厚い本で埋めていく。

この順番のほうが、結果的に遠回りになりません。

西洋経済史のツボ
3

西洋経済史のツボ

児島秀樹 著|学文社

¥2,750(税込)

4.6

イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダといった国ごとの経済事象を、歴史学の視点から整理したテキスト。通史を時代順に追う本が多いなか、国別の視点で並べているのが違いです。学生向けに加えて一般読者も想定したわかりやすい記述で、ニュースで見かける国名の背景を掴むのにも向きます。

こんな人におすすめ

通史は読んだけれど国ごとの違いが混ざってしまう人、ヨーロッパ各国の経済的な歩みを横並びで比べたい人、一般向けの読み物として経済史に触れたい人に。

良い点

  • 国別に整理され混同しにくい
  • 一般読者も想定した記述
  • 7カ国を横に並べて比べられる

気になる点

  • 時代を通した流れは追いにくい
  • 入門だと国名だけで混乱も
  • 深い理論には踏み込まない

出版社

学文社

発売日

2010年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

タイトルの“ツボ”って、試験に出るところという意味ですか? それとも、押さえるべき要点のことでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

後者ですね。この本はイギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダと、国ごとに経済事象を歴史学的に解説しています。

通史は時代順に進むので、どうしても国が混ざる。それを国別に整理し直せるのがこの一冊の役割です。

橘ナナミ

橘ナナミ

あ、それは助かるかも。スペインとポルトガルがごっちゃになるんですよ、私。大航海時代の話、いつも混ざってしまって。

佐藤メバル

佐藤メバル

よくあります。大航海時代の主役はどっちだったか、みたいなところですね。ただ国別なので、時代の大きな流れは別の通史で補うほうがいい。

これは地図の国名を確認する索引に近い使い方が向いています。

西洋経済史 (有斐閣Sシリーズ 28)
4

西洋経済史 (有斐閣Sシリーズ 28)

神武庸四郎 著|有斐閣

4.4

有斐閣Sシリーズに収められた西洋経済史。332ページというサイズで、学部の講義に合わせて通史をたどれる構成です。同じ出版社からアルマの通史も出ているので、講義の指定がどちらかで選ぶ、あるいは二冊の記述を読み比べてみるという使い方もできます。

こんな人におすすめ

講義でSシリーズが指定されている学生、出版社を揃えて通史を読み比べたい人、コンパクトな通史を一冊決めたい人に。書店で冒頭だけ確かめてから選ぶのもおすすめです。

良い点

  • 332ページで通史を一冊
  • 講義指定と相性がいい
  • 同社の通史と読み比べられる

気になる点

  • 詳細な図版や資料は限られる
  • 独学だと流れが掴みにくいことも
  • 入門者には前提知識が要る

出版社

有斐閣

発売日

1989年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

有斐閣Sシリーズって、何か特徴があるんですか? 本屋で名前だけ見ても、他のシリーズと区別がつかなくて。

佐藤メバル

佐藤メバル

有斐閣が長く出している講義用のテキストシリーズですね。この巻は神武庸四郎さんによる西洋経済史で、332ページ。

同じ有斐閣からアルマの通史も出ているので、講義の指定に合わせて選ぶ、あるいは読み比べるという手があります。

橘ナナミ

橘ナナミ

同じ出版社で二冊あると、逆にどっちを選べばいいか迷ってしまいませんか? 私なら絶対立ち止まります。

佐藤メバル

佐藤メバル

迷いますよね。それなら、まず指定のあるほうを軸に。指定がなければ、冒頭を読んで読み心地が合うほうを選べばいい。

相性は中身より読み心地で決まることも多いので、書店で少し立ち読みするのが結局は近道ですよ。

西洋経済史 新版 有斐閣双書 入門・基礎知識編
5

西洋経済史 新版 有斐閣双書 入門・基礎知識編

石坂昭雄 著|有斐閣

¥1,980(税込)

4.3

有斐閣双書の「入門・基礎知識編」として刊行された一冊。今から見れば古いテキストですが、基礎知識を順序立てて並べる編集の丁寧さは参考になります。あえて古い入門を読むことで、その後の経済史研究が何を変えてきたのかを自分で確かめられる。古さも情報として使える本です。

こんな人におすすめ

経済史の定番がどう書かれてきたかを知りたい人、書店や図書館で古い入門書を手に取るのが好きな人、研究動向の変化を自分の目で確かめたい読者に。

良い点

  • 基礎知識が整理されている
  • 入門編として構成が明快
  • 古い定番を確認できる

気になる点

  • 刊行から年数が経っている
  • 最近の研究は別途必要
  • 図表の更新は望めない

出版社

有斐閣

発売日

1985年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ずいぶん前に出た本ですよね。こういう古い本を、今のおすすめランキングに堂々と入れていいんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

入れていいと思います。理由は二つあって、ひとつは基礎知識の並べ方が丁寧で、今読んでも入門の役に立つこと。

もうひとつは、当時のテキストを読むと、その後の研究が何を変えたのかが見えることです。古さも情報なんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

古さも情報……なるほど。でも、最新の研究を知りたい人には向きませんよね? そこははっきり知りたいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこは正直に。刊行から時間が経っているので、その後の研究成果は別の本で補ってください。ただ、入門の骨格を作る部分は案外色あせません。

書店員時代、古い定番を手に取るお客さんに「これは土台の本です」と説明していたのを思い出します。

概説西洋経済史 (有斐閣選書 381)
6

概説西洋経済史 (有斐閣選書 381)

荒井政治 著|有斐閣

¥3,344(税込)

4.1

有斐閣選書の一冊として、西洋経済史を通史として概説する357ページ。講義用テキストより読み物寄りの選書サイズで、時代の流れを文章で追うタイプです。用語の定義を暗記するより、なぜ産業革命がイギリスで起きたのか、といった問いの立て方に触れたいときに向きます。

こんな人におすすめ

教科書より読み物として経済史を味わいたい人、通史の骨格を文章でつかみたい人、講義の副読本として概説を一冊持ちたい学生に。寝る前の少しずつの読書にも。

良い点

  • 選書サイズで読み物として進む
  • 通史の骨格を文章で掴める
  • 講義の副読本にもなる

気になる点

  • 概説ゆえ詳細は限られる
  • 図表の量は多くない
  • 時代ごとの濃淡がある

出版社

有斐閣

発売日

1980年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

“概説”と“入門”って、何が違うんでしょう。正直、棚に並んでいると同じものに見えてしまって、いつも選べません。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問ですね。入門がこれから学ぶ人に道をつける本だとすれば、概説は全体を一通り説明しきる本です。これは有斐閣選書の一冊で、357ページかけて西洋経済史を通しで説明する。

流れを文章で追うぶん、読み物として面白いんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。じゃあ、いきなり細かい年表を覚えるより、こっちで流れを先に掴んでおくほうがいいかもしれないですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

その順番はおすすめです。骨格があれば、あとで細部を足すときに迷いませんから。ただ概説なので、特定のテーマを深く知りたいときは専門書に譲る。

まず全体、次に部分。この往復が経済史では特に効きます。

エレメンタル 西洋経済史
7

エレメンタル 西洋経済史

楠井敏朗・馬場哲・諸田實・山本通 著|英創社

¥2,640(税込)

4.1

四人の著者による、序章から第20章まで章立てが細かく整理された通史。中世後期、大航海時代、プロト工業化、重商主義、イギリスと大陸の産業革命、パックス・ブリタニカ、両大戦間期、福祉国家、ナチズム、ニュー・ディール、そしてパックス・アメリカーナまで、一本の目次で見渡せます。今どこを読んでいるか見失いにくいのが強みです。

こんな人におすすめ

通史で迷子になりがちな人、産業革命から両大戦間期までを講義の順番で押さえたい学生、福祉国家やナチズムの経済的位置づけまで視野に入れたい読者に。

良い点

  • 序章から20章まで細かい章立て
  • 近世から現代まで一冊で通す
  • 英米と大陸の産業革命を比べられる

気になる点

  • 章が多く通読には計画が必要
  • 共著ゆえ語り口に差がある
  • 図表の量は章によって違う

出版社

英創社

発売日

1995年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

“エレメンタル”って、初級とか基礎って意味ですよね。目次が20章まであるのに、それで基礎なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが面白いところで、扱う範囲は広いんです。プロト工業化、重商主義、イギリスと大陸の産業革命、両大戦間期、福祉国家、ナチズムの歴史的位置、ニュー・ディール、パックス・アメリカーナまで。

細かい章立てで、今どこを読んでいるかを見失いにくい設計なんですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

章が多いと不安になるタイプなんですが、逆に助かることもあるんですね。道しるべが多い、か。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、章が細かいのは道しるべが多いということ。四人の共著なので語り口は少し変わりますが、そのぶん各章の専門性は安定しています。

通読するなら、産業革命の前後で一度区切ると頭が整理されますよ。

西洋経済史:大国の興隆と衰退の物語
8

西洋経済史:大国の興隆と衰退の物語

大和正典 著|文眞堂

3.9

タイトルが示すとおり「大国の興隆と衰退」を軸に西洋経済史を語る205ページ。通史を年表で覚えるのが苦手な人でも、国の浮き沈みという物語の筋があれば頭に入りやすい。分厚い教科書の前に、まず物語として通史に触れておきたいときに向く一冊です。

こんな人におすすめ

経済史を物語として読みたい人、通史の流れを筋で覚えたい人、分厚い教科書の前段として軽めの一冊を探している人に。読書が久しぶりの人にも。

良い点

  • 物語の筋で通史に入れる
  • 205ページで負担が軽い
  • 大国の盛衰という軸が明快

気になる点

  • 詳細な統計は期待しにくい
  • 全体像は他書で補いたい
  • 著者一人の視点に絞られる

出版社

文眞堂

発売日

2005年7月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

大国の興隆と衰退って、タイトルからして壮大すぎませんか。205ページで本当に収まるのか、正直不安です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが狙いでしょうね。全部を均等に説明するのではなく、大国が入れ替わっていく筋に絞る。だから205ページで通せるんです。

筋があると記憶に残るんですよ。年表を丸暗記するより、ずっと身につきます。

橘ナナミ

橘ナナミ

確かに、物語のほうが覚えられますね。私、歴史の年号はいつも頭から抜けていくので、筋があるのは助かります。

佐藤メバル

佐藤メバル

同じです、僕も書店員時代に年表とにらめっこしては忘れていました。この本はそういう人の入口になります。

ただ、統計や細部は別の本で補う前提で。まず流れ、次に数字。順番を間違えなければ経済史は面白くなります。

西洋経済史概論 新版
9

西洋経済史概論 新版

増田四郎 著|春秋社

3.9

春秋社から出ている西洋経済史の概論で、新版が用意されている一冊。236ページと、通史の概論としては手に取りやすい分量です。版を重ねていること自体が、長く読まれてきたことの表れでもあります。定番の概論を短めに一冊持っておきたいときの候補になります。

こんな人におすすめ

概論をコンパクトに一冊持ちたい人、通史の枠組みを短時間で確認したい人、講義ノートの整理に手元の概論がほしい学生に。復習の相棒としても。

良い点

  • 236ページで概論をカバー
  • 新版が用意された定番
  • 手元に置きやすい分量

気になる点

  • 細部は他書で補う必要
  • 読み物としての派手さはない
  • 図版の多さは期待薄

出版社

春秋社

発売日

1971年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

さっき『概説西洋経済史』があって、こっちは『概論』。この二つ、名前が違うだけでどう違うんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

名前の違いに厳密な決まりはないんです。ただ、これは春秋社から出ている増田四郎さんの概論で、236ページ。

新版が出ているということは、長く読まれてきたということでもあります。短めの概論を一冊手元に置きたい人に向きます。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。じゃあ“とりあえず一冊”を選ぶときの基準は、ページ数と読み心地の相性だと思っていいですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

それでいいと思います。ただ、概論はどうしても細部を削ぎます。気になった時代は専門書に進む前提で読むと、この一冊が無駄になりませんよ。

書店員時代、概論を買ったお客さんが半年後に専門書を買いに戻ってくる。あの流れが理想なんです。

西洋経済史要説
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西洋経済史要説

林達 著|学文社

3.9

林達さんの『西洋経済史入門』と同じ学文社から出ている要説で、執筆には古川堅治さんほか複数名が加わっています。182ページと短く、要点に絞ることを優先した構成。入門で全体像をつかんだあと、知識を整理し直す二冊目として置いておくと機能します。

こんな人におすすめ

入門書の次に何を読むか迷っている人、要点だけを短く確認したい人、複数の執筆者による偏りの少ない記述を読みたい人に。試験前の総復習にも。

良い点

  • 182ページで要点に集中
  • 入門の次の一冊になる
  • 複数執筆で視点が偏りにくい

気になる点

  • 深い議論は載らない
  • 単独では流れが掴みにくい
  • 図表や演習は期待薄

出版社

学文社

発売日

1990年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

また林達さん! 同じ著者が、同じ出版社から何冊も出しているんですね。どう使い分けるんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうですね、入門と要説と、学びの段階に合わせて出しているんでしょう。これは182ページで、執筆に古川堅治さんほかが加わっている。

“要説”というだけあって、要点に絞ることを優先した構成です。同じ著者・同じ出版社で段階を分けているのは親切ですよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

あっ、じゃあ最初からこの一冊だけでいい、ということにはならないんですか? 短いし楽そうなのに。

佐藤メバル

佐藤メバル

ならないんですよ、そこが厄介で。要説は短いぶん、前提となる流れが分かっている人ほど効きます。だから入門で一度流れを作ってから。

順番を守ると、同じページ数でも吸収量が変わります。

西洋経済史 (岩波全書)
11

西洋経済史 (岩波全書)

河野健二 著|岩波書店

¥2,985(税込)

3.7

「中東の山野から始まって、地中海から西ヨーロッパ全域へ、さらにアメリカ大陸に渡り、東ヨーロッパの社会主義圏にいたる」——これが本書の筋書きです。地理の広がりをそのまま追う構成で、西洋の内側だけを見る通史とは視野が違います。岩波全書の350ページ、経済史の古典に触れておきたい人に向く一冊です。

こんな人におすすめ

西洋の外側との関係まで視野に入れたい人、ユーラシア規模の広がりで経済史を眺めたい人、岩波全書の定番を手元に置きたい読者に。地図を横に置いて読むのも楽しい。

良い点

  • 中東からアメリカまで視野が広い
  • 筋が明快で追いやすい
  • 岩波全書の一冊として手元に置ける

気になる点

  • 刊行後の研究は別途必要
  • 地域ごとに記述の濃淡がある
  • 図版中心の読み方には不向き

出版社

岩波書店

発売日

1980年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

中東の山野から始まる経済史って、聞いたことがないです。普通はヨーロッパから始まると思うんですが、違うんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の面白さです。中東の山野から地中海、西ヨーロッパ全域、そしてアメリカ大陸へ渡り、最後は東ヨーロッパの社会主義圏にいたる。

地理の広がりをそのまま筋にしているんですよ。西洋の内側だけを見ない視点が手に入ります。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど、地図が動いていくような感じですね。350ページなら、その旅にならついていけそうな気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、旅の本として読めますよ。ただ岩波全書ですから、文章は落ち着いています。勢いで読むより、一章ずつ地図を確認しながら。

書店員時代、地図を横に置いて読むお客さんがいて、真似したら本当に頭に入りました。

西洋経済史 新版 (図説経済学体系 8)
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西洋経済史 新版 (図説経済学体系 8)

角山榮 著|学文社

¥2,456(税込)

3.7

「図説経済学体系」というシリーズの一巻として出た、図版を織り込んだ西洋経済史の新版。191ページと短く、視覚から入ることを重視したつくりです。文章だけの通史で流れが頭に残らなかった人が、もう一度土台を作り直すのに向いています。

こんな人におすすめ

文章の通史で挫折した人、図や表から経済の動きを掴みたい人、講義の予習復習を短時間で回したい学生に。手元に置いて何度もめくる使い方も。

良い点

  • 図説シリーズで視覚的に学べる
  • 191ページで短く回せる
  • 予習復習に向く分量

気になる点

  • 図の説明は本文頼みになる
  • 細かい議論は省かれる
  • 新版でも古い図版は残る

出版社

学文社

発売日

1980年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

“図説”って、図が多いという意味ですよね。経済史の本の図って、具体的に何が載っているんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

貿易量や産業構造の変化をグラフや図で見せる、というのがこのシリーズの売りですね。角山榮さんの西洋経済史で、191ページ。

数字の動きを目で追うと、文章で読むより時代の転換点が見えやすくなります。

橘ナナミ

橘ナナミ

へえ。私、文章だけだと年号がただ流れていくだけなんですよ。図があると、ちょっと助かるかもしれません。

佐藤メバル

佐藤メバル

それは大きいと思います。ただ図は本文の補助なので、説明を読まずに図だけ眺めても片手落ちになります。図で当たりをつけて、本文で確認する。

この順番だと、191ページでも密度が出ますよ。

新西洋経済史講義-第2版:史的唯物論入門
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新西洋経済史講義-第2版:史的唯物論入門

柴田英樹 著|学文社

¥3,300(税込)

3.7

史的唯物論を軸に据えた講義形式の一冊。前半はヘーゲルとマルクスの弁証法の違い、価値形態論、階級論といった理論の入口、後半はローマ帝国からEU、アメリカの覇権までの経済史を扱います。理論と歴史を往復する構成は他書に少なく、社会民主党史やドイツ再統一まで射程に入るのが特徴です。

こんな人におすすめ

マルクスの理論から経済史に入りたい人、ドイツ史を軸に産業革命以降を追いたい人、理論編と歴史編を一冊で往復したい読者に。冷戦の終結まで視野に入れたい人にも。

良い点

  • 理論編と歴史編の両方を収録
  • ドイツ史の章が厚い
  • 冷戦の発生から終結まで射程に入る

気になる点

  • 史的唯物論の立場が前提になる
  • 他書と比べて難度は高め
  • 通史としては偏りがある

出版社

学文社

発売日

2020年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

“史的唯物論入門”って……正直、身構えました。経済史の本なのに、どうして哲学から始まるんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、第1章から第3章までは弁証法を学ぶための西洋哲学史。第4章でヘーゲルとマルクスの弁証法の違いを価値形態論を例に説明して、第5章で階級論を貨幣論と絡めて論じる。

理論から入るのがこの本の個性です。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、いきなり経済史の通史を読むより、こっちのほうが骨太で本格的ということですか? 覚悟が要りますね。

佐藤メバル

佐藤メバル

骨太ですが、立場もはっきりしています。史的唯物論を土台にしているので、同じ事実でも見え方が違う。だから普通の通史と並行して読むと、視点の差がよく分かって面白いですよ。

西洋経済史の論争と成果
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西洋経済史の論争と成果

小林良彰 著|三一書房

3.7

「論争と成果」というタイトルが示すとおり、西洋経済史のなかで交わされてきた議論と、そこから何が確定してきたかを扱う330ページ。個別の出来事を覚える本ではなく、学説が動く現場を見る本です。通史を一通り読んだあとに、なぜ研究者の見解が分かれるのかを知りたいときに向きます。

こんな人におすすめ

通史の次に一歩踏み込みたい人、研究の論点を押さえてレポートを書きたい学生、経済史の議論の流れそのものを追いたい読者に。

良い点

  • 論争という切り口が珍しい
  • 研究の現在地が見える
  • レポートの視点づくりに強い

気になる点

  • 通史の知識が前提になる
  • 出来事の説明は薄めになる
  • 読み物としての軽さはない

出版社

三一書房

発売日

1988年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

論争と成果って、要するに学者さんのケンカの記録ですよね? そんな本を読んで、面白いんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

近いですね。でも殴り合いではなく、どこで見解が割れて、何が確定したのかを整理する本です。たとえば産業革命の評価ひとつとっても、研究者の立場で見え方が変わる。

それを330ページかけて追う。通史を読んだあとに効いてきますよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

うわ、それは知りたいです。でも、通史を読んでいない状態だと、やっぱり置いていかれますよね?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは素直に、土台があったほうが楽です。まず通史で事件の並びを知って、それからこの本でなぜ論争になるのかを読む。

順番を守れば、経済史が急に立体的になります。逆に言えば、この本が面白く読めたら、自分はかなり育った証拠ですよ。

西洋経済史の視角
15

西洋経済史の視角

北村次一 著|法律文化社

3.7

151ページという短さで、西洋経済史を「どの視角から見るか」という問いに寄せた一冊。事実の詰め込みではなく、見方の複数性に触れられる構成です。通史を読んだあとで、自分の関心はどこにあるのかを確かめたいとき、負担の軽い道しるべになります。

こんな人におすすめ

卒論やレポートのテーマを探している学生、切り口から経済史に入りたい人、短い一冊で視点を増やしたい読者に。通史とセットで読むのがおすすめ。

良い点

  • 151ページで短く読める
  • 視角という切り口が新鮮
  • テーマ探しの入口になる

気になる点

  • 通史の代わりにはならない
  • 各論の深さは限られる
  • 具体例の量は期待しすぎない

出版社

法律文化社

発売日

1986年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

“視角”って、切り口ってことですよね。151ページで経済史の切り口だけを扱うって、逆に贅沢な気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうなんです。これは通史ではなく、どこから見るかを並べた本。同じ産業革命でも、労働から見るか、金融から見るかで話が変わります。

テーマを探している人には、この短さがむしろ助けになりますよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、レポートのテーマが決まらないときに、とりあえず読むという感じですか? そういう使い方で合っていますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ぴったりです。ただし通史の代わりにはなりません。事件の並びを知らないまま切り口だけもらっても、使いどころが分からないので。

通史とセットで、片方だけ短く済ませる。それがこの本の正しい使い方です。

マンガみたいにすらすら読める経済史入門 (だいわ文庫)
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マンガみたいにすらすら読める経済史入門 (だいわ文庫)

蔭山克秀 著|大和書房

¥946(税込)

3.5

蔭山克秀さんの『やりなおす経済史』の文庫版で、文庫化にあたって2014年以降の経済状況が一章分追加され、イラストと図版も入っています。抗争劇になぞらえる語り口で、資本主義の誕生からアベノミクス、反グローバリズムの波までを一気に追える。元の本を持っている人にも文庫版の意味がある作りです。

こんな人におすすめ

経済ニュースの背景をまとめて押さえたい人、歴史の流れを物語で覚えたい社会人、通勤や移動のすきま時間で読み進めたい人に。入門の第一冊目としても。

良い点

  • 2014年以降を1章追加
  • イラストと図版で読みやすい
  • 文庫サイズで持ち歩ける

気になる点

  • 細かい数字や学説は省略される
  • 比喩の好みが分かれる
  • 学術的な厳密さは優先外

出版社

大和書房

発売日

2018年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

“マンガみたいにすらすら読める経済史入門”って、中身は本当にマンガなんですか? タイトルが気になってしょうがなくて。

佐藤メバル

佐藤メバル

マンガそのものではなく、マンガを読むようにすらすら進む、という意味ですね。もとは『やりなおす経済史』という本で、これが文庫版になったときに2014年以降の経済状況が一章分追加されて、イラストと図版も入りました。

橘ナナミ

橘ナナミ

あ、じゃあ元の本を持っている人にも意味があるんですね。そこはけっこう大事なところですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうなんですよ。しかも語り口が独特で、経済の動きを抗争劇になぞらえて説明する。資本主義の誕生からアベノミクス、反グローバリズムの波まで、物語として一気に読めます。

細かい数字は省かれますが、流れをつかむには十分です。

経済史 -- いまを知り,未来を生きるために
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経済史 -- いまを知り,未来を生きるために

小野塚知二 著|有斐閣

¥4,400(税込)

3.5

「経済はなぜ成長するのか」「人類はいかに生存してきたのか」という問いから始まる598ページ。分業・市場・貨幣といった経済学の言葉に加えて、権力・文化・共同体といった人文科学の概念も使いながら、近代前から現在までを俯瞰します。問いから入る構成なので、暗記ではなく考えるための通史として読めます。

こんな人におすすめ

経済を考えるための土台がほしい人、問いを立てて読み進めたい学生、経済学と歴史の橋を渡りたい社会人に。時間をかけて付き合いたい一冊。

良い点

  • 問いを入口にした構成
  • 経済学と人文科学の概念を併用
  • 近代前から現代まで俯瞰する

気になる点

  • 598ページで覚悟が要る
  • 答えより考え方が中心
  • 入門者には負荷が高い

出版社

有斐閣

発売日

2018年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

598ページ!? もう辞書ですよね。小野塚知二さんの本だそうですが、通読できる気がまったくしません。

佐藤メバル

佐藤メバル

辞書ではなく、問いの本です。「経済はなぜ成長するのか」「人類はいかに生存してきたのか」。この問いを入口に、分業や市場や貨幣だけでなく、権力・文化・共同体といった概念も使って近代前から俯瞰する。

読んで考えるタイプの598ページです。

橘ナナミ

橘ナナミ

答えが書いてあるわけじゃないんですね。それって、レポートを書くときには逆に使いにくかったりしますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

使いにくいどころか、問いの立て方を学ぶには最適ですよ。答えを写すのではなく、自分で問いを立てられるようになる。

時間はかかりますが、そのぶん長く効く一冊です。書店員時代、こういう本を買っていく学生さんは、だいたい後で伸びました。

やりなおす経済史---本当はよくわかっていない人の2時間で読む教養入門
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やりなおす経済史---本当はよくわかっていない人の2時間で読む教養入門

蔭山克秀 著|ダイヤモンド社

¥593(税込)

3.5

封建制からアベノミクスまでを2時間で追うことを狙った、社会人向けの学び直し入門。人気講師が講義調で語り、重商主義から古典派経済学、マクロ・ミクロ、サプライサイド、マネタリズムまで、教養として押さえたいポイントを網羅しています。同じ著者の文庫版が派生していることからも、読者に支持された一冊だと分かります。

こんな人におすすめ

経済の知識ゼロから教養をやり直したい社会人、2時間で全体像をつかみたい人、用語を聞きかじったレベルから抜けたい人に。学生の息抜きにも。

良い点

  • 講義調でテンポよく読める
  • 経済学の主要な立場も押さえる
  • 封建制からアベノミクスまで

気になる点

  • 細かい史実は省略される
  • たとえ話の好みが分かれる
  • 学術書としての厳密さは薄い

出版社

ダイヤモンド社

発売日

2014年10月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

さっきの文庫版と、この『やりなおす経済史』は同じ著者ですね。どっちから読めばいいんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

中身の骨格は同じで、文庫版には2014年以降の一章が足されています。だから今の状況まで追いたいなら文庫版、元の講義をじっくり読みたいならこちら。

両方買う必要はありませんよ。この本は封建制からアベノミクスまでを2時間で追う設計で、重商主義から古典派、マクロ、ミクロ、サプライサイド、マネタリズムまで押さえます。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、まずは手に取りやすいほうからでいいんですね。どっちも買わなくていいと聞いて安心しました。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうしてください。この本の強みは、難しい理論を知らなくても社会人として必要な教養がざっくり身につくところ。

ただ史実の細部は削られているので、詳しく知りたくなったら通史に戻る。入口として使うのが一番うまい付き合い方です。

近代欧州経済史入門 (講談社学術文庫 1226)
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近代欧州経済史入門 (講談社学術文庫 1226)

大塚久雄 著|講談社

3.5

15世紀末の地理上の発見が触発した商業革命から、17世紀の初期資本主義の完成までを論じた古典。東邦貿易を握っていたヴェニスが新航路の開拓でポルトガル、スペインに座を奪われ、さらにオランダ、イギリスが毛織物の生産地として台頭する。大国の興亡と資本主義の成立を重ねて読める学術文庫の名著です。

こんな人におすすめ

資本主義の成り立ちを原点から知りたい人、商業革命と毛織物という具体物から経済史に入りたい人、古典を文庫で手元に置きたい読者に。

良い点

  • 資本主義成立の過程を追える
  • ヴェニスからイギリスまで国が動く
  • 学術文庫で入手しやすい

気になる点

  • 扱う時代が近世に限られる
  • 現代の研究とは前提が違う
  • 文章はやや硬め

出版社

講談社

発売日

1996年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

大塚久雄さん、名前だけは聞いたことがあります。この本は、近代のどのあたりの話を扱っているんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

15世紀末の地理上の発見が触発した商業革命から、17世紀の初期資本主義の完成までです。東邦貿易を支配していたヴェニスが、東インド新航路の開拓でポルトガル、スペインにその座を奪われる。

さらにオランダ、イギリスが毛織物の生産地として台頭する。

橘ナナミ

橘ナナミ

毛織物というモノから見るのが、なんだか具体的でとっつきやすいですね。地図を横に置いて読みたくなります。

佐藤メバル

佐藤メバル

その読み方が正解です。転換期の大国の興亡と資本主義の成立を同時に追う本なので、地図があると一気に立体になります。

扱う時代は近世に限られますが、その分だけ密度が濃い。名著と呼ばれる理由が分かりますよ。

ヨーロッパ覇権史 (ちくま新書 1147)
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ヨーロッパ覇権史 (ちくま新書 1147)

玉木俊明 著|筑摩書房

¥858(税込)

3.5

オランダ、ポルトガル、イギリスを軸に、近代ヨーロッパの台頭を扱うちくま新書の一冊。軍事革命、大西洋貿易、アジア進出といった論点を、224ページの新書サイズで整理します。論点を絞るからこそ通せる分量で、通史の前後に挟むのにちょうどいい。世界を一変させた台頭を軽やかに追えます。

こんな人におすすめ

通勤や移動中にヨーロッパの覇権の流れを押さえたい人、軍事と貿易をセットで考えたい人、新書で経済史の入口を作りたい読者に。

良い点

  • 新書サイズで読み切りやすい
  • 軍事・貿易・アジア進出を扱う
  • 覇権国の交代がテーマ

気になる点

  • 224ページで詳細は限られる
  • 通史の代わりにはならない
  • 扱う時代は近代に寄る

出版社

筑摩書房

発売日

2015年10月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ちくま新書で224ページって、ちょうど読み切れそうで嬉しいです。この長さで覇権が語れるんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

語れるから新書なんですよ。オランダ、ポルトガル、イギリスを軸に、軍事革命、大西洋貿易、アジア進出といった論点を整理していく。

論点を絞るからこそ224ページで通せる。通史の前後に挟むのに向いています。

橘ナナミ

橘ナナミ

軍事と貿易がセットで出てくるのが気になります。経済だけの話ではないんですね。そこが面白そうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが大事なところで、覇権は商売だけでは取れません。船を守る力、港を握る力、それがあって初めて貿易が回る。

新書でその絡みが見えるのは強いですよ。読んだあと、世界地図を見る目が変わります。

ヨーロッパ経済 改訂版: 過去からの照射
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ヨーロッパ経済 改訂版: 過去からの照射

朝倉弘教 著|勁草書房

¥3,300(税込)

3.5

「過去からの照射」という副題どおり、現在のヨーロッパ経済を歴史の光で照らし直す一冊。294ページで、改訂版が用意されています。現在と過去を往復する構成なので、ニュースで見た経済の話を、歴史の側から確かめ直したいときに向きます。

こんな人におすすめ

現在のヨーロッパ経済を歴史の側から理解したい人、改訂版で読み直したい再読者、講義のテキストとして手元に置きたい学生に。通史のあとの一冊としても。

良い点

  • 過去から現在を照らす構成
  • 改訂版で内容が更新されている
  • 294ページで見通しがいい

気になる点

  • 近現代中心で通史ではない
  • 前提知識があると有利
  • 図版の多さは期待薄

出版社

勁草書房

発売日

2003年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

“過去からの照射”って、タイトルが詩みたいですよね。どういう意味なのか、読む前から気になってしまいます。

佐藤メバル

佐藤メバル

現在のヨーロッパ経済を、過去の光で照らし直すという意味でしょうね。朝倉弘教さんの本で、294ページ、改訂版も出ています。

現在と過去を往復する構成なので、ニュースで見た話の背景を歴史から確かめたい人に向きます。

橘ナナミ

橘ナナミ

順番としては、やっぱり通史を読んでからのほうがいいんでしょうか? いきなりでも大丈夫ですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

どちらでも入れますが、僕は通史のあとをおすすめします。現在の話から入ると、どうしても分かる部分だけ拾って終わってしまうので。

歴史の流れを持った状態で読むと、照射という言葉の意味が実感できますよ。

欧米経済史 3訂版: 近代化と現代 (放送大学教材 5405)
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欧米経済史 3訂版: 近代化と現代 (放送大学教材 5405)

関口尚志 著|放送大学教育振興会

3.5

放送大学の教材として作られた、欧米経済史の三訂版。近代化と現代という副題が示すとおり、講義の進度に沿って学べるように構成されています。264ページで、独学でも道筋を見失いにくい。放送大学の教材は書店にも並ぶので、通信課程でなくても手に取れます。

こんな人におすすめ

独学で計画的に経済史を学びたい人、教材として整った一冊がほしい人、近代化と現代をつなげて考えたい読者に。ノート作りと相性がいい。

良い点

  • 教材として構成が整っている
  • 三訂版で手入れされている
  • 独学でも進度を管理しやすい

気になる点

  • 演習は放送授業が前提になる
  • 受験対策向けの内容ではない
  • 専門書ほどの深さはない

出版社

放送大学教育振興会

発売日

1995年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

放送大学の教材って、大学の授業そのものですよね。通信の学生でもない私が買っても、大丈夫なんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

大丈夫ですよ。放送大学の教材は書店にも並びますし、構成が親切なんです。これは関口尚志さんの欧米経済史で、三訂版。

近代化と現代という副題どおり、講義の進度に沿って学べる形になっています。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。通信の学生じゃなくても、ふつうのテキストとして使えるんですね。それは知りませんでした。

佐藤メバル

佐藤メバル

そういう使い方をしている人は多いです。ただ、放送授業とセットで設計された本なので、演習部分は自分で工夫が要ります。

264ページを通読して、章ごとにノートを作る。そのひと手間が効きますよ。

近代ヨーロッパ経済のあけぼの: 中世の秋から近代の春へ
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近代ヨーロッパ経済のあけぼの: 中世の秋から近代の春へ

フィリップヴォルフ 著|晃洋書房

¥5,503(税込)

3.5

「中世の秋から近代の春へ」という副題で、近代ヨーロッパ経済の夜明けを扱う416ページ。フィリップ・ヴォルフによるまとまった一冊で、中世と近代の境目に焦点を当てています。産業革命以後を扱う本が多いなか、その手前の移行期を厚く読めるのが違いです。

こんな人におすすめ

産業革命より前の移行期を知りたい人、中世と近代のつなぎ目をじっくり読みたい人、厚めの専門書に挑戦したい読者に。通史の次に進む一冊として。

良い点

  • 中世から近代の移行期に集中
  • 416ページで密度が高い
  • 産業革命以前を厚く扱う

気になる点

  • ページも価格も重め
  • 入門には難度が高い
  • 近現代の流れは別途必要

出版社

晃洋書房

発売日

1993年7月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

タイトルも著者も、私にはまったく未知です。中世と近代の境目って、そんなに大事なところなんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

ここは著者名を手がかりに、中世から近代への移行期を本格的に扱った一冊として見てください。副題が「中世の秋から近代の春へ」。

産業革命以後を扱う本は多いですが、その手前を416ページかけて読めるのは貴重です。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。でも、経済史に慣れていない私がいきなりこれから入るのは、さすがに重そうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

重いです。まず通史で全体を押さえて、物足りなくなった人が手を伸ばす位置づけ。中世と近代の境目は、実は一番議論が割れるところなので、ここを厚く読むと経済史の解像度が一段上がりますよ。

資本主義の起源と「西洋の勃興」
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資本主義の起源と「西洋の勃興」

エリックミラン 著|藤原書店

¥6,810(税込)

3.5

「なぜヨーロッパに資本主義が誕生したのか」を正面から問う一冊。中世の中国、インド、北アフリカを比較の視野に収め、ヨーロッパ中心主義を周到に退けながら資本主義発生の条件に迫ります。ウォーラーステインやフランクを批判的に乗り越えようとする野心作で、世界史の見方が揺さぶられます。

こんな人におすすめ

「なぜ西洋だったのか」という問いに正面から向き合いたい人、世界史と経済史を比較で考えたい人、通史の先の議論に進みたい読者に。

良い点

  • 比較の視野が広い
  • ヨーロッパ中心主義を退ける
  • 世界史の見方が更新される

気になる点

  • 議論が濃く難度は高い
  • 前提となる通史知識が要る
  • 価格にも覚悟がいる一冊

出版社

藤原書店

発売日

2011年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ウォーラーステインを批判的に乗り越える、ってすごい物言いですよね。そんなに大胆なことを書いている本なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

大胆ですよ。中世の中国、インド、北アフリカまで比較の視野に入れて、なぜヨーロッパだったのかを問い直す。

ヨーロッパ中心主義を周到に退けながら資本主義の発生条件に迫る、まさに野心作です。

橘ナナミ

橘ナナミ

それは読んでみたいですけど、私なんかに太刀打ちできる気がしません……。正直、難しそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

まず通史で世界の流れを作ってからですね。そのうえでこれを読むと、自分が無意識に持っていた前提が崩れます。

書店員時代、こういう本を棚のいちばん目立つ場所に置くか迷ったのを覚えています。それくらい主張が強い本です。

中世都市 社会経済史的試論 (講談社学術文庫 2526)
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中世都市 社会経済史的試論 (講談社学術文庫 2526)

アンリ・ピレンヌ 著|講談社

¥1,408(税込)

3.5

イスラーム勢力の地中海進出によって古代ローマ的な枠組みが衰えていく。その停滞の中世のなかから、いつ商人階層が現れ、どのように都市と都市民が生まれたのかを描く中世都市成立史。遺された細かな史料にいたるまで渉猟し、一貫した問題意識から書かれた、二十世紀を代表する中世史家ピレンヌの名著です。

こんな人におすすめ

都市というテーマから経済史に入りたい人、中世ヨーロッパの成り立ちを知りたい人、学術文庫で名著を手元に置きたい読者に。商業の起源に関心がある人にも。

良い点

  • 中世都市成立史の名著
  • イスラーム進出から描く視点
  • 学術文庫で入手しやすい

気になる点

  • 中世以前の前提知識が要る
  • 議論の前提は古くなりうる
  • 通史の代わりにはならない

出版社

講談社

発売日

2018年10月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

アンリ・ピレンヌって、人名ですよね。聞いたことがなくて、いったい何をした人なのか気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

二十世紀を代表する、ベルギー生まれの中世史家です。この本では、イスラーム勢力の地中海進出で古代ローマ的な枠組みが衰えていくところから始めて、商人階層がいつ現れたか、都市と都市民がどう生まれたかを描きます。

橘ナナミ

橘ナナミ

都市の誕生を経済史として読むんですね。お城や壁があれば都市、という単純な話ではないんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが面白いところです。都市は壁ではなく、商業と人の集まりから立ち上がる。だから商人階層の登場が鍵になる。

細かな史料まで渉猟した一冊で、読み応えはありますよ。中世の手前の知識があると、ぐっと入りやすくなります。

古典と論争から、西洋経済史の地図をつかむ

橘ナナミ

橘ナナミ

アダム・スミスやマルクス、ウェーバー、ポランニー、ブローデル……名前は聞くのですが、いきなり原典に挑むのは無謀ですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

順番がある。古典は答えではなく「問いの立て方」を学ぶ場所なんだ。先に概説で論点を知ってから読むと、格段に読みやすくなる。『新西洋経済史講義』は価値形態論や階級論を丁寧に扱うので、マルクスの考え方に触れる足がかりになる。大塚久雄の『近代欧州経済史入門』も、商業革命から初期資本主義の完成までを論じた古典的な一冊だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

大分岐や産業革命をめぐる論争は、どの本で追えばいいんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

『西洋経済史の論争と成果』は、そうした論争の整理を意識した一冊。産業革命をめぐる見方の違いを知っておくと、他の通史を読むときの解像度が上がる。グローバルな視野に広げたいなら、ウォーラーステインやフランクを批判的に乗り越えようとする『資本主義の起源と「西洋の勃興」』が刺激的だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

日本や中国の経済史とつなげて考えることもできますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

できるし、むしろそのほうが面白い。西洋の通史を読んだあとに日本経済史や中国経済史を並べると、同じ時期に違う結果が出た理由が見えてくる。比較の視点は『資本主義の起源と「西洋の勃興」』がまさにそうだね。

テーマ史・年表・統計、そして入手のしかた

橘ナナミ

橘ナナミ

金融史や商業史のように、テーマを絞った読み方も知りたいです。

佐藤メバル

佐藤メバル

通史で骨格を作ってからテーマ史へ移るのがおすすめ。『西洋経済史の視角』のように視角を絞った本は、通史では見えにくい論点を照らしてくれる。国ごとの違いは『西洋経済史のツボ』、図版や概説の形で整理したいなら『西洋経済史 新版(図説経済学体系)』や『概説西洋経済史』が使いやすい。

橘ナナミ

橘ナナミ

年表や統計資料は必要ですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

年表があると、出来事と経済の動きを結びつけやすくなる。辞典や統計は、読んでいて分からない言葉や数字に出会ったときに引く辞書として手元に置くもの。まず図書館で借り、よく使うと分かってから買うとコスパがいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

古い本が多いのも気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

古典や概説は今読んでも価値がある。ただ入手性は本ごとに違うから、紙・電子・古書・図書館を組み合わせて。翻訳書は訳者解説から読むと前提がつかみやすいよ。

独学の順番――入門から中級、そして上へ

橘ナナミ

橘ナナミ

最後に、独学の順番を決めてもらえますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

1冊目は語り口のやわらかい通史。『やりなおす経済史』や『マンガみたいにすらすら読める経済史入門』で流れをつかむ。2冊目は教科書系の通史で骨格を固める。『西洋経済史〔新版〕』や『エレメンタル 西洋経済史』は章立てが明確で、独学の地図になる。

橘ナナミ

橘ナナミ

3冊目はどうしましょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

関心のある論点に絞って、論争本や古典、テーマ史へ進む。『経済史 -- いまを知り,未来を生きるために』のように問いから入る本を挟むと、自分の関心がどこにあるか見えてくるよ。

よくある質問

西洋経済史の入門書はどれが一番わかりやすいですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

西洋経済史の入門書はどれが一番わかりやすいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

語り口のやわらかさで選ぶなら、代ゼミ講師として知られる著者が封建制からアベノミクスまでを講義調で語る『やりなおす経済史』と、その文庫版『マンガみたいにすらすら読める経済史入門』が入口になります。一方、授業の予習・復習や通史の骨格づくりを優先するなら、中世以来のヨーロッパ経済の成長を追う『西洋経済史〔新版〕』(有斐閣アルマ)が標準的な一冊です。まずは自分が「物語から入りたいか、体系から入りたいか」で選ぶと失敗しにくくなります。

経済史を独学するとき、どの順番で本を読めばいいですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

経済史を独学するとき、どの順番で本を読めばいいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

1冊目に語り口のやわらかい通史を読み切って流れをつかみ、2冊目で章立ての明確な教科書系の通史に進んで骨格を固める、という順番がおすすめです。3冊目は関心のある論点に絞り、論争を整理した本や古典、テーマ史へ広げます。1冊を短期間で詰め込むより、数週間かけて読み切るほうが定着します。

大学の教科書(有斐閣アルマなど)と新書はどちらから読むべき?

橘ナナミ

橘ナナミ

大学の教科書(有斐閣アルマなど)と新書はどちらから読むべきについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

用途が違うので、どちらか一方ではなく組み合わせるのが現実的です。新書や文庫は通勤・通学の時間に流れをつかむのに向き、教科書は年表や図版、章末の整理を使いながら体系を固めるのに向きます。新書で全体像をつかんでから教科書に入ると、用語の壁で止まりにくくなります。

マルクス経済学系と近代経済学系でおすすめは変わりますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

マルクス経済学系と近代経済学系でおすすめは変わりますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

変わります。マルクス経済学の枠組みから入るなら、弁証法や価値形態論から説き起こし、産業革命から金融資本の成立、イギリスの覇権、ドイツ再統一とEUまで積み上げる『新西洋経済史講義』が向いています。近代経済学や比較史の視点を重視するなら、中国やインド、北アフリカを比較の視野に収めて資本主義の発生条件に迫る『資本主義の起源と「西洋の勃興」』のような本が刺激的です。

西洋経済史と世界経済史・グローバル経済史は何が違いますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

西洋経済史と世界経済史・グローバル経済史は何が違いますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

西洋経済史はヨーロッパ諸国とその周辺、そしてアメリカ大陸を含めた経済の展開を軸に組み立てられます。世界経済史やグローバル経済史は、アジアやアフリカなども含めた相互連関を前面に出すのが特徴です。西洋経済史の通史で骨格を作ったうえで、比較や交易のネットワークを扱う本に進むと、両者の違いがはっきり見えてきます。

スミスやマルクスなど古典は原書と翻訳どちらを選ぶべき?

橘ナナミ

橘ナナミ

スミスやマルクスなど古典は原書と翻訳どちらを選ぶべきについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

慣れないうちは翻訳から入るのが現実的です。翻訳書は訳者解説が前提や時代背景を補ってくれるので、本文の前に解説を読むと理解が進みます。古典は答えを暗記するための本ではなく問いの立て方を学ぶ場所なので、先に概説で論点を知ってから挑むと格段に読みやすくなります。

文庫・新書で読める西洋経済史の本はありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

文庫・新書で読める西洋経済史の本はありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

あります。ちくま新書の『ヨーロッパ覇権史』はオランダ、ポルトガル、イギリスを軸に近代ヨーロッパの台頭を追い、講談社学術文庫の『近代欧州経済史入門』は大塚久雄が商業革命から初期資本主義の完成までを論じた一冊です。同じく講談社学術文庫のピレンヌ『中世都市』は、商人階層と都市の成立を描いた古典として読めます。

経済史の勉強に年表や統計資料は必要ですか?どこで入手できますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

経済史の勉強に年表や統計資料は必要ですか?どこで入手できますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

必須とまでは言えませんが、年表があると出来事と経済の動きを結びつけやすくなります。辞典や統計は、読んでいて分からない言葉や数字に出会ったときに引く辞書として手元に置く使い方が便利です。まずは図書館で借りて相性を確かめ、よく参照すると分かってから購入するとコストを抑えられます。

まとめ

橘ナナミ

橘ナナミ

今日の話を聞いて、西洋経済史って「どの本が正解か」を探す分野じゃないんだなと思いました。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう。地図を一枚だけ選ぶんじゃなく、縮尺の違う地図を何枚か重ねる感覚に近い。入門書は広域の道路地図、教科書は地形図、古典は測量の原理を教えてくれる本だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど……最初から細かい地形図を見ても、自分がどこにいるか分からなくなりますもんね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そうなんだ。書店員時代、分厚い専門書から入って挫折したお客さんを何人も見てきた。逆に、やさしい入門書を一冊読み切った人は、しばらくして同じ棚に戻ってきて、今度は教科書を手に取っていく。あの光景は今でも覚えているよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

私もまず一冊、通史を読み切るところから始めます。それから、気になった論点の本を足していきます。

佐藤メバル

佐藤メバル

それがいい。西洋経済史は、中世の都市に商人が現れた瞬間から、誰が何を交換し、誰が儲けたのかを追いかけ続ける物語だ。上流から下流まで一気に眺めようとせず、大きな川をゆっくり舟で下るつもりで読んでみよう。

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