経済学の歴史がわかる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、今回のテーマは「経済学の歴史」の本なんですけど……正直、タイトルからしてもう難しそうで、書店でどこから手を伸ばせばいいのか分からないです。
佐藤メバル
いい質問だね。まずそこを整理しよう。よく混ざるのが「経済史」と「経済学史」なんだ。経済史は、実際に世の中で何が起きたかを扱う。恐慌がなぜ起きたか、米価がどう動いたか、という出来事の側だね。経済学史は、人はそれをどう考えたか。スミス、マルクス、ケインズたちがどんな理論を積み上げてきたかを追いかける学問なんだ。
橘ナナミ
なるほど! 出来事そのものと、その出来事をめぐる思考の歴史、ということですか。
佐藤メバル
そう。書店員だった頃、お客さんに「経済史の本はどこですか」と聞かれて経済学史の棚に案内してしまい、あとで照らし合わせて気まずくなったことがあってね。それくらい混ざりやすい。今日扱う本は、思想と理論の流れをたどる本が中心になるよ。
橘ナナミ
思想の流れ、ですね。でも「入門」と名乗る本がたくさんあって、どれを選べばいいのか……。
佐藤メバル
そこは選び方を決めれば一気に絞れる。目的、前提知識、形式、時代、地域、読み方——この6つの軸で見ていこう。
経済学の歴史がわかる本の選び方
目的別に選ぶ
橘ナナミ
目的って、たとえばどんなものでしょうか。
佐藤メバル
教養として流れをつかみたいなら、ハイルブローナー『入門経済思想史 世俗の思想家たち』がいい。スミスからマルクス、ケインズ、シュンペーターまでを「ヴィジョン」という言葉で描く通史で、読み物として面白い。試験やレポートで理論を整理したいなら、中村達也『経済学の歴史』(有斐閣アルマ)のように、市場経済をどうとらえるかという課題に沿って経済思想を再解釈するテキストが向いている。
橘ナナミ
実務や、いわゆる資産防衛だと?
佐藤メバル
実務で「政府の役割」を軸に考えたいなら、西孝『いまを考えるための経済学史』が分かりやすい。経済学史は直接お金を増やしてはくれないけれど、根井雅弘『物語 現代経済学』のように経済学の一元化に警鐘を鳴らす本を読んでおくと、ニュースの政策論を鵜呑みにしにくくなる。それは結局いちばん強い守りだよ。
前提知識(レベル)で選ぶ
橘ナナミ
数式が出てきたら、たぶん私は止まります。
佐藤メバル
それなら中矢俊博『やさしい経済学史』から。スミス、マルクス、ケインズを中心に、古代ギリシア・中世ヨーロッパから重商主義、古典派、新古典派までを一気に眺められる。分量もかなり小さい。
橘ナナミ
ページ数でいうと、どのくらいなんですか。
佐藤メバル
60ページ台だね。まず地形を掴んでから、同じ著者の『天才経済学者たちの闘いの歴史』で人物のドラマに入る二段構えがいい。ナイアル・キシテイニー『若い読者のための経済学史』は「若い読者」と銘打っているけれど、古代ギリシャの哲学者からピケティまで射程が広い。タイトルで損をしている本の代表だよ。大学の講義レベルなら、井上義朗『コア・テキスト経済学史』や、古典派・主流派・異端派の3つの角度からほぼ全範囲を扱う木村雄一『学ぶほどおもしろい 経済学史』。骨太な通史はハンス・ブレムス『経済学の歴史 1630-1980』だ。
形式で選ぶ
橘ナナミ
新書、文庫、学術書……手に取りやすさで選んでもいいですか。
佐藤メバル
それでいい。通勤や寝る前なら、根井雅弘『入門 経済学の歴史』(ちくま新書)、同じ著者の『経済学者はこう考えてきた』(平凡社新書)、松原隆一郎『経済思想入門』(ちくま学芸文庫)あたりが軽い。図版があると助かるなら、蔭山克秀『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』や、T・バトラー=ボードン『世界の経済学 50の名著』が、読む前の予習として優秀だね。
時代軸で選ぶ
橘ナナミ
時代で分けると、どうなります?
佐藤メバル
前現代から始めたいなら『やさしい経済学史』が古代・中世まで面倒を見てくれる。近現代をがっちりなら本郷亮『近現代経済学史入門』で、スミスからマーケットデザインまで。1630年から1980年という区切りで追いたいならブレムス。現代だけをノーベル経済学賞の流れで見たいなら依田高典『ノーベル賞で語る 現代経済学』だね。
地域軸で選ぶ
橘ナナミ
日本と西洋で、違う本を選ぶ必要はありますか。
佐藤メバル
あるよ。『近現代経済学史入門』はイギリス、ドイツ語圏、アメリカと地域ごとに章を分け、近代日本の経済思想やフェミニズムの経済思想にも触れている。小沼宗一『経済思想史入門』はスミス、リカードゥ、ミル、マーシャル、ケインズ、シュンペーターと西洋の主脈を一直線にたどる。日本の経済思想は西洋の受容の仕方が面白いので、往復しながら読むと理解が深まる。
読み方で選ぶ
橘ナナミ
通読か、つまみ読みか、で選ぶのもありですか。
佐藤メバル
大ありだね。日本経済新聞社編『経済学41の巨人』は人物ごとに1話完結で、通読すれば巨人たちの系譜がつながるし、必要な人だけ拾うのも簡単。柳沢哲哉『経済学史への招待』は原典からの引用を多く載せていて、経済学者の声そのものに触れられる。辞書代わりに手元へ置くなら山崎好裕『おもしろ経済学史』や小室直樹『経済学をめぐる巨匠たち』もいい。
経済学の歴史がわかる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
経済学の歴史がわかる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

入門 経済学の歴史 (ちくま新書 837)
根井雅弘 著|筑摩書房
¥880(税込)
経済学史の入門書は分厚いものが多く、最初の一冊で挫折しがちです。この本は筑摩書房のちくま新書として約250ページにまとまり、880円という価格もあって、通勤・通学の鞄に入れやすい。著者の根井雅弘は、のちに紹介する講談社学術文庫の大著や中公新書も書いている人で、軽い入口から重い本へと順番に登っていけます。難解な理論より、経済学がどんな問いから始まったのかを知りたい人に向く一冊です。
こんな人におすすめ
経済学史に興味はあるけれど、厚い専門書の前で止まっている人。通勤・通学の電車の中で少しずつ読み進めたい人。まず全体の見取り図がほしい人。書店で背表紙を前に迷っている初学者。値段を抑えて試したい人にも向きます。
良い点
- 新書で持ち歩きやすい
- 約250ページで挫折しにくい
- 880円で試しやすい
気になる点
- 理論の細部までは踏み込まない
- 人物の評伝としては短め
- 次に読む本は自分で選ぶ必要がある
出版社
筑摩書房
発売日
2010年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、経済学史の本っていきなり厚いのを買うと心が折れそうで……。最初の一冊って、どう選べばいいんでしょう?
佐藤メバル
いい質問だね。そこでまず手に取ってほしいのが、根井雅弘さんのちくま新書です。約250ページ、880円。
通勤鞄に入るサイズで、経済学がどんな問いから始まったのかを追える。入口は軽いほうがいい。読む順番を設計するのが、書店員時代に身についたコツでした。
橘ナナミ
なるほど! じゃあ、いきなり400ページの文庫に行かなくてもいいんですね。安心しました。
佐藤メバル
そう。同じ著者が軽い新書と重い文庫を書いているのは、読者にとっては僥倖でね。まず新書で流れをつかんで、面白くなったら文庫へ進む。
挫折した本は本棚で埃をかぶるだけだから、順番が大事なんですよ。

はじめての経済思想史 アダム・スミスから現代まで (講談社現代新書)
中村隆之 著|講談社
この本の核は、経済学を『よいお金儲けを促進し、悪いお金儲けを抑制する』ための知恵としてとらえ直す視点です。アダム・スミス、マルクス、ケインズら経済思想家が、現実といかに格闘したのかを追い、一冊で経済学の歴史がわかる決定版入門書とされています。講談社現代新書なので手に取りやすく、理論の暗記ではなく思想家の葛藤から入れるのが年表型の概説書との違いです。
こんな人におすすめ
経済学の名前は知っていても、思想の中身は知らない人。お金儲けと倫理の関係に引っかかりを感じている人。新書で通読できる入門を探している人。人物から経済学に入りたい読者に向きます。
良い点
- 現代新書で手に取りやすい
- 人物の格闘から入れる
- 一冊で流れをつかめる
気になる点
- 数式や図解は多くない
- 原著の細部は別途必要
- 入門ゆえ分量は限られる
出版社
講談社
発売日
2018年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『よいお金儲けを促進し、悪いお金儲けを抑制する』……この一文、ちょっと刺さりました。お金儲けって、経済学では悪者じゃないんですか?
佐藤メバル
そこがこの本の核だね。著者は経済学の本質をそこに置いている。スミスもマルクスもケインズも、目の前の現実と格闘した人たちだったと描いていく。
講談社現代新書一冊で経済学の歴史がわかる決定版入門書とされる所以だよ。倫理とお金の関係から入れるのが、年表型の概説と違うところなんだ。
橘ナナミ
格闘、という言い方がいいですね。経済学者って、答えを最初から持っていた人たちじゃないんですね。
佐藤メバル
まさにそこなんだ。彼らは時代の現実に投げ込まれて、考え続けた人たちなんだよ。だから思想史として読むと、人名と理論がただの暗記にならない。
まずこの一冊で、経済学が何と戦ってきた学問なのかをつかんでみてください。

経済学の歴史 (有斐閣アルマ)
中村達也 著|有斐閣
¥2,640(税込)
大学のテキストとして作られた一冊で、市場経済をいかにとらえるかという現代的課題に沿って、経済思想を再解釈し位置づけ直しています。網羅的概説書の先を行く新しい経済学史のテキストとされ、各経済学者とその時代の課題との格闘を見つめながら、市場経済へ向けられるべき視座を養う構成です。用語の定義から丁寧に積み上げるので独学でも道筋を見失いにくく、348ページ、2640円は講義の副読本としても納得の範囲だと思います。
こんな人におすすめ
大学の講義で経済学史を履修する学生。独学でテキストから始めたい社会人。用語を一つずつ定義から確認したい人。レポートや論文の下地を作りたい大学院生にも向きます。
良い点
- 定義から丁寧に積み上げる
- 市場経済を軸に再解釈する
- 講義の副読本として使いやすい
気になる点
- 2640円と価格は高め
- 348ページで気軽ではない
- 独学には忍耐が要る
出版社
有斐閣
発売日
2001年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
有斐閣アルマって、大学の教科書ですよね。独学でも読めますか? 途中で分からなくなって放り出しそうで不安です。
佐藤メバル
読みやすいとは言い切れないけれど、独学でも道筋は見失いにくい。この本は『市場経済をいかにとらえるか』という現代的課題に沿って、経済思想を再解釈し位置づけ直している。
各経済学者とその時代の課題との格闘を見つめながら、市場経済へ向けるべき視座を養う構成なんだ。腰を据えて学ぶならこれだと思う。
橘ナナミ
なるほど。じゃあ新書で流れをつかんでから、この教科書に戻ってくる、という順番でもいいんですね。
佐藤メバル
その順番がいい。新書で人物の顔が見えてから読むと、同じ記述の重みが変わるからね。348ページ、2640円。
書き込みながら使う前提の本だから、図書館で試し読みしてから手元に置くかを決めても遅くないよ。

経済学の歴史 (講談社学術文庫 1700)
根井雅弘 著|講談社
¥1,870(税込)
ケネーはルイ15世の寵妃の侍医、スミスは道徳哲学の教授。そんな意外な横顔から始まり、リカード、ミル、マルクス、ワルラスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスまでの12人を、評伝と理論の両面から描きます。著者は経済学史の効用は現代理論を盲信する危険を防ぐことにあると述べ、自由放任主義の元祖として利用されたスミス像を丁寧に剥がしていく。400ページの読みごたえは十分です。
こんな人におすすめ
経済学者の人物像から入りたい人。スミス像が一人歩きしているのが気になっている人。文庫で読みごたえのある評伝を探している人。引用を手がかりに原著へ進みたい読者に向きます。
良い点
- 12人の評伝と理論を両立
- 意外な人物像から入れる
- プロローグの主張が明快
気になる点
- 400ページで荷物になる
- 文庫ゆえ文字が細かい
- 扱うのは12人に限られる
出版社
講談社
発売日
2005年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ケネーがルイ15世の寵妃の侍医だったって、本当ですか? 経済学者のイメージと全然ちがいます。
佐藤メバル
本当なんだよ。スミスも道徳哲学の教授だった。この文庫は、そういう横顔から入って、12人の経済学者を評伝と理論の両面で描く。
著者はプロローグで、経済学史の効用は現代理論を盲信する危険を防ぐことにあると書いている。スミスは極端な自由放任主義者ではなかったのに、自由至上主義者たちに利用されていった、とね。
橘ナナミ
えっ、そうだったんですか。教科書で習ったスミスと、ちょっと印象が変わります……。
佐藤メバル
そう思えるのが経済学史の面白さなんだ。そもそもスミスが何を考えていたのかを正確に知らないと、その誤解は解けない。
人物の生涯と時代をたどる作りなので、用語集としてではなく読み物として、最初の一章から順に味わってみてください。

若い読者のための経済学史 【イェール大学出版局 リトル・ヒストリー】
ナイアル・キシテイニー 著|すばる舎
いま建てるべきは病院か駅か、最新のiPadと時計のどちらを買うべきか。身近な問いから始めて、古代ギリシャの哲学者からスミス、マーシャル、ケインズ、そしてクルーグマン、セン、ピケティまで、多様な経済思想家を案内してくれる一冊です。ノーベル経済学賞を受賞したロバート・J・シラーが『読者に力強く訴えかけて、ワクワクさせる本』と推薦しているのも納得。日常生活から世界の本質まで視野が広がります。
こんな人におすすめ
経済学の予備知識がまったくない人。高校生・大学生。身近な買い物の話から経済学に入ってみたい人。小説のように読める入門を探している社会人に向きます。
良い点
- 日常の問いから始まる
- 古代から現代まで案内する
- 推薦文の信頼感が高い
気になる点
- 年表形式を期待すると物足りない
- 学術書としての厳密さは控えめ
- 人名の整理には別書が必要
出版社
すばる舎
発売日
2018年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『いま建てるべきは病院? それとも駅?』って、いきなり身近な話から始まるんですね。経済学史って、もっと年表のイメージでした。
佐藤メバル
そこがこの本のうまさだね。古代ギリシャの哲学者からスミス、マーシャル、ケインズ、そしてクルーグマン、セン、ピケティまで、多様な経済思想家を案内してくれる。
シラーが『ワクワクさせる本』と推薦しているのも、日常の選択と世界の本質が地続きだと感じさせるからだよ。
橘ナナミ
買い物の話と世界の話がつながるの、ちょっと不思議で面白いです。専門用語が苦手でも大丈夫そうですか?
佐藤メバル
そこを心配する必要はあまりないと思う。読み進めるうちに、経済学が現実を考えるヒントの集まりだと分かってくる。
ただ、網羅的な人名事典ではないから、年表や系図が欲しくなったら別の通史を足す、という使い方が現実的だよ。

学ぶほどおもしろい 経済学史
木村雄一 著|晃洋書房
¥3,080(税込)
古典派・主流派・異端派という三つの角度から、重商主義・重農主義からスミス、リカードウとマルサス、J.S.ミル、限界革命のメンガー、ジェヴォンズ、ワルラス、マーシャル、ケインズ、厚生経済学、フリードマンやハイエク、そしてポスト・ケインズ派のカレツキ、ミンスキー、制度と進化の経済学、行動経済学までをほぼ網羅。主流派の外側まで一冊で見渡せるのが強みで、経済理論が難しいなら経済学史を入り口にしよう、という著者の狙いどおりです。
こんな人におすすめ
経済理論の前に歴史から入りたい学生。異端派や制度派まで視野に入れたい人。ゼミのテキストを探している人。主流派以外も知りたい読者に向きます。
良い点
- 異端派まで網羅している
- 三つの角度で整理される
- 目次が詳細で参照しやすい
気になる点
- 3080円と学生には高い
- 282ページに情報が密集
- 通読には根気が要る
出版社
晃洋書房
発売日
2022年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
異端派経済学……って、聞き慣れない言葉です。そんな分野まであるんですか?
佐藤メバル
あるんですよ。この本は三つの角度から、重商主義からスミス、リカードウとマルサス、J.S.ミル、限界革命、マーシャル、ケインズ、厚生経済学、フリードマンやハイエク、そしてポスト・ケインズ派のカレツキ、ミンスキー、制度と進化の経済学までをほぼ網羅する。
主流派の外側まで一冊で見渡せるのが強みです。
橘ナナミ
マルクスやシュンペーターの章もあるんですね。主流派と異端派が一冊に同居しているのが不思議な感じです。
佐藤メバル
そこが面白いところでね。経済学は一つではない、という前提で全体を眺められる。3080円は安くはないけれど、手元に置いて何度も引き直す使い方をするなら、これだけの射程はなかなか代えがたいですよ。

おもしろ経済学史: 歴史を通した現代経済学入門
山崎好裕 著|ナカニシヤ出版
¥2,420(税込)
歴史を通して現代経済学に入る、というタイトルどおりのコンセプトがはっきりした一冊です。173ページと薄く、2420円。分厚い経済学史の前に、まず全体像を軽くつかみたいときに向きます。同じ「おもしろ」を掲げる本でも、網羅性で選ぶなら木村雄一のテキスト、軽さで選ぶならこちら、と使い分けられる。導入の一冊としての軽さが最大の武器で、通学の合間や寝る前の15分でも進めやすい。
こんな人におすすめ
経済学史の全体像を短時間でつかみたい人。分厚い本の前にウォームアップしたい人。時間が限られた社会人や、講義の前に予習をしておきたい学生に向きます。
良い点
- 173ページと薄く軽い
- 導入として使いやすい
- タイトルどおり読みやすい
気になる点
- 網羅性は高くない
- 薄さの割に2420円と高い
- 深掘りには別書が必要
出版社
ナカニシヤ出版
発売日
2004年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
173ページ! これなら私でも読み切れそうです。でも薄いと、逆に内容が薄いんじゃないかって不安もあって。
佐藤メバル
その不安はもっともだね。だから使い方を決めてかかるといい。これは歴史を通して現代経済学に入る、というコンセプトがはっきりした導入の一冊なんだ。
網羅性で選ぶなら木村雄一さんのテキスト、軽さで選ぶならこちら。分厚い本の前の肩慣らしとして、骨格をつかむのに向いているよ。
橘ナナミ
なるほど! いきなり本命に行かず、まず短い距離を走ってみる感じですね。
佐藤メバル
そうそう、その感覚でいい。読書は体力配分が大事だからね。薄い本で一周しておくと、次に厚い本を開いたときに知っている地名が増えている。
それだけで読み進む速度が変わるものです。

経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる (角川ソフィア文庫)
蔭山克秀 著|KADOKAWA
¥1,100(税込)
アダム・スミス『国富論』、マルクス『資本論』など、経済学の名著50冊の要点を一冊にまとめた本です。著者は長年受験指導をしてきたカリスマ予備校講師で、わかりやすい表現を突き詰めた視点で整理されている。図版をまじえながら、名著を著した人物の人となりや、その著作が誕生した時代背景にも触れ、名著の入口だけを高速で回る構成。文庫で352ページ、1100円という手頃さも魅力です。
こんな人におすすめ
名著そのものを読む前に全体像を知りたい人。受験や教養科目で経済学の背景が欲しい人。積読になっている名著の手前を確認したい読者。短期間で教養を足したい社会人にも向きます。
良い点
- 50冊の要点を一冊で
- 図版つきで理解しやすい
- 文庫で1100円と手頃
気になる点
- 原著の深みは味わえない
- 一冊あたりの分量は短い
- 内容は要約に留まる
出版社
KADOKAWA
発売日
2022年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
名著50冊の要点が一冊で読めるって、ずるい気もしますけど……でも正直、ありがたいです。
佐藤メバル
はは、ずるいと言いたくなる気持ちもわかる。でもこれは、スミス『国富論』、マルクス『資本論』などの要点を、長年受験指導をしてきた著者がわかりやすい表現で整理したものなんだ。
図版もまじえて、人物の人となりや著作が生まれた時代背景にも触れている。名著の入口だけを高速で回る一冊だよ。
橘ナナミ
予備校講師の方が書いているなら、置いていかれる感じはなさそうですね。私、そういう説明のうまさに甘えたいタイプです。
佐藤メバル
それでいいんだよ。要約で地図を作ってから原著に戻れば、分厚い本も道に迷わない。積読になっている一冊の前に、まずこれを置いてみてください。
読み終わる頃には、次に開く本が決まっているはずだよ。

世界の経済学 50の名著 (5分でわかる50の名著シリーズ) (ディスカヴァーリベラルアーツカレッジ)
T・バトラー=ボードン 著|ディスカヴァー・トゥエンティワン
¥2,970(税込)
マルクス『資本論』などの古典から、ピケティ『21世紀の資本』などの近年の話題書まで、50冊の要点を5分でつかむコンセプトの本です。資本主義に希望はあるのか、格差拡大に処方箋はあるのか、経済成長は不可欠か、なぜ人はカネに翻弄されるのか、経済学は現実世界に太刀打ちできるのか、という章立てで名著を並べている。ロドリックやガルブレイスらの推薦文も、入門書としての信頼の目安になります。
こんな人におすすめ
ビジネス教養として経済学の名著を押さえたい人。ニュースで出てくるタイトルを整理したい人。話題書から古典へ遡りたい読者。読書会の題材を探している人にも向きます。
良い点
- 古典から最新書まで50冊
- 章立てが問いで整理されている
- 推薦文が豊富で安心できる
気になる点
- 755ページで重い
- 5分では要点中心になる
- 原著の精読には向かない
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日
2018年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
5分でわかる、って書いてあるんですが、本当に5分で名著がわかるんですか? ちょっと疑ってしまいます。
佐藤メバル
5分で全体像、という意味だね。755ページの本で、マルクス『資本論』からピケティ『21世紀の資本』まで50冊を扱っている。
章立てが面白くて、資本主義に希望はあるのか、格差拡大に処方箋はあるのか、といった問いから名著を並べている。
ハーバードのロドリックやガルブレイスが推薦文を寄せているのも信頼の目安だよ。
橘ナナミ
問いから並べるの、いいですね。タイトルだけ覚えても、どこで使う知識なのか分からないですもんね。
佐藤メバル
まさにそこなんだ。名著は問題とセットで覚えると忘れない。ヴェブレンの有閑階級の理論も、ウェーバーも、ポラニーの大転換も、それぞれの問いの棚に並んでくる。
辞書的に拾い読みしても、通読しても使える一冊です。

経済学をめぐる巨匠たち (Kei BOOKS)
小室直樹 著|ダイヤモンド社
¥2,331(税込)
小室直樹による経済思想史で、小室節を楽しみながら経済学の学説がすっと頭に入ってくると評される一冊です。316ページ。同じ思想家の遍歴を扱う本でも、評伝の厚みで選ぶなら根井雅弘の学術文庫、語りの勢いで読ませるならこちら、という選び方ができます。読み物としての推進力が強く、淡々とした教科書で眠くなった経験がある人ほど、この語りは効きます。
こんな人におすすめ
硬い概説書で眠くなった経験がある人。文章の勢いで読ませてほしい人。著者の語り口が好きな読者。経済学の学説に苦手意識がある社会人にも向きます。
良い点
- 語りの勢いで読み進められる
- 学説が頭に入りやすい
- 316ページで読み切れる
気になる点
- 網羅的な通史ではない
- 著者の主張が強く出る
- 理論の詳細は別書が必要
出版社
ダイヤモンド社
発売日
2003年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
小室直樹さんの『小室節』って、よく聞くんですが、実際どんな感じなんですか?
佐藤メバル
語りの勢いがすごい人でね。これは小室直樹の経済思想史で、小室節を楽しみながら学説がすっと頭に入ってくると評されている。
316ページ。同じ思想家の遍歴を扱っても、評伝の厚みで選ぶなら根井さんの学術文庫、とにかく読み物として引っ張ってほしいならこちらだね。
橘ナナミ
なるほど。教科書で挫折した人が読むと、同じ内容でも別物になりそうですね。
佐藤メバル
そう思うよ。経済学の学説に苦手意識がある人の入口になり得る。ただ、主張の強い文章だから、合わないと感じたら無理をせず、大人しい通史に戻ればいい。相性の問題だからね。

ノーベル賞で語る-現代経済学-巨人たちの生涯と学説 (中公新書)
依田高典 著|中央公論新社
¥1,375(税込)
1968年に創設されたノーベル経済学賞を軸に、現代経済学の潮流を一望する一冊です。当初は計量経済学や一般均衡理論の構築など、手法確立への基礎理論への貢献に授与されることが多く、70年代には新自由主義を標榜するシカゴ学派が席巻。その後はゲーム理論や行動経済学、貧困問題や気候変動といった実証分野へ広がった流れを、サミュエルソンからフリードマン、ナッシュ、スティグリッツ、アセモグルまで44人を通して追います。受賞史をたどるだけで現代経済学の地図が描ける構成です。
こんな人におすすめ
ニュースで見る経済学者の名前を整理したい人。現代経済学の潮流を一気に把握したい人。中公新書サイズで通史を読み通したい読者。経済学部に進みたい高校生にも向きます。
良い点
- 受賞史で現代史を俯瞰できる
- 44人を一冊で追える
- 中公新書で手に取りやすい
気になる点
- 受賞者中心で網羅的ではない
- 数式の説明は少なめ
- 理論の詳細は別書が必要
出版社
中央公論新社
発売日
2026年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ノーベル経済学賞って、毎年誰が取るかでニュースになりますよね。でも、あれを軸に経済学史が読めるんですか?
佐藤メバル
読めるんだよ。1968年に創設されて、当初は計量経済学や一般均衡理論の構築など手法確立への貢献に贈られることが多かった。
70年代は新自由主義を掲げるシカゴ学派が席巻し、その後はゲーム理論や行動経済学、貧困問題や気候変動へ広がっていく。
サミュエルソンからフリードマン、ナッシュ、スティグリッツ、アセモグルまで44人。受賞史が現代経済学の地図になるんだ。
橘ナナミ
賞の歴史がそのまま学問の変化になるの、面白いですね。人名ニュースの解像度が上がりそうです。
佐藤メバル
そうだね。毎年の発表が、そのとき経済学が何を大事にしていたかの記録にもなっている。384ページ、1375円。
中公新書の通史として、本棚に一冊あると便利なタイプだよ。

近現代経済学史入門: アダム・スミスからマーケットデザインまで
本郷亮 著|ナカニシヤ出版
¥2,970(税込)
モダン・エコノミクスと経済学史を架橋することを狙った新しい入門です。古典派、限界革命、マーシャル、ピグー、ケインズ、マルクスとマルクス経済学、ドイツ経済思想と歴史学派、シュンペーター、制度学派、計量経済学、シカゴ学派、正義の経済学、マーケットデザイン、さらには近代日本の経済思想やフェミニズムの経済思想まで収録。経済学史を現代の課題解決に使う視点が通底し、各章にコラムも添えられています。
こんな人におすすめ
経済学史を現代の課題とつなげて考えたい人。フェミニズムや正義論など新しい論点まで知りたい人。共著の教科書で幅広く学びたい学生。章末のコラムまで含めて読みたい読者に向きます。
良い点
- 異端や新潮流まで扱う
- コラムで論点を補える
- 執筆陣が多く多角的
気になる点
- 2970円とやや高い
- 共著ゆえ語りに差がある
- 272ページは詰め込み気味
出版社
ナカニシヤ出版
発売日
2026年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
フェミニズムの経済思想……!? 経済学史の本に、そんな章があるんですね。ちょっと驚きました。
佐藤メバル
そう、そこがこの入門の新しさなんだ。古典派、限界革命、マーシャル、ピグー、ケインズ、マルクス、ドイツ歴史学派、シュンペーター、制度学派、計量経済学、シカゴ学派、正義の経済学、マーケットデザイン、近代日本の経済思想、そしてフェミニズムの経済思想まで。
経済学史を現代の課題解決に使う視点が通底しているよ。
橘ナナミ
マーケットデザインまで入っているんですね。昔の話だけじゃなくて、いま使われている理論までつながるのがいいです。
佐藤メバル
そこがこの本の狙いでね。執筆者は大学の研究者が中心で、章ごとにコラムも添えられている。272ページ、2970円。
共著だから語りの温度差はあるけれど、多角的に見たい人にはむしろそれが強みになるよ。

経済学の歴史: 1630-1980 人物・理論・時代背景
ハンスブレムス 著|多賀出版
副題に人物・理論・時代背景とあるように、1630年から1980年までを射程に置いた通史です。462ページと大部で、人物・理論・時代背景を三層で重ねてたどる構成。同じ通史でも、講談社学術文庫の根井版が12人の評伝に絞るのに対し、こちらは時代の幅を広く覆う点が持ち味です。多賀出版の翻訳書で、特定の人物だけでなく、時代の幅ごと押さえたい人に向いています。
こんな人におすすめ
通史を辞書的に手元に置きたい人。人物と時代背景を重ねて理解したい人。19世紀から20世紀の流れを追いたい読者。卒論やレポートの参照元を探している学生にも向きます。
良い点
- 1630年からの長い射程
- 人物と時代を重ねて追える
- 辞書的に引きやすい
気になる点
- 462ページで重い
- 通読には時間がかかる
- 全体像を急ぐ人には不向き
出版社
多賀出版
発売日
1996年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
1630年から1980年って、ずいぶん長いスパンですね。462ページというのも、なかなかの迫力です。
佐藤メバル
人物・理論・時代背景という副題のとおり、三層を重ねてたどる通史なんだ。講談社学術文庫の根井版が12人の評伝に絞っているのに対して、こちらは時代の幅を広く覆うのが持ち味。
特定の人物だけを追うのではなく、時代ごと押さえたい人に向いているよ。
橘ナナミ
読み切るのは大変そうですが、辞書みたいに使ってもいいんですか?
佐藤メバル
いい使い方だと思う。気になる人物の章から開いて、前後の時代を確認する。通読するにしても、一度に全部を抱え込まず、時代を区切って進めるのが現実的だね。
翻訳書なので、落ち着いた記述を味わいながら読む本です。

経済学の歴史: いま時代と思想を見直す
ジョン・ケネスガルブレイス 著|ダイヤモンド社
ガルブレイスが経済学史を語る一冊で、副題どおり『いま時代と思想を見直す』視点が軸です。451ページ。経済学者自身が書いた思想史なので、理論の並列ではなく、同時代の経済をどう見ていたかという批評の色が濃い。同じく経済学者が綴った小室直樹の巨匠論と並べると、同時代を生きた書き手の視線の違いがよく見えてきます。年表を追うより、視点の違いを味わいたい人に向く一冊です。
こんな人におすすめ
経済学史を批評として読みたい人。同時代の経済をどう見ていたかに関心がある人。学者の視線の違いを味わいたい読者。読み物としての思想史を探している社会人にも向きます。
良い点
- 学者自身の批評が読める
- 同時代の視点が濃い
- 読み物として進む
気になる点
- 451ページで長い
- 網羅的な教科書ではない
- 著者の主張が前に出る
出版社
ダイヤモンド社
発売日
1988年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ガルブレイスって、経済学者が書いた経済学史なんですよね。学者が書くと、やっぱり批評が強くなりますか?
佐藤メバル
そこが読みどころだね。副題に『いま時代と思想を見直す』とあるとおり、理論を並べるのではなく、同時代の経済をどう見ていたかという視線が濃い。
451ページだよ。同じく経済学者が綴った小室直樹の巨匠論と並べると、同時代を生きた書き手の目の違いがよく見えてくる。
橘ナナミ
なるほど。同じ歴史上の人物でも、誰が書くかで像が変わるんですね。読み比べたら面白そうです。
佐藤メバル
そう、そこが経済学史の醍醐味なんだよ。正解を一つ覚えるより、複数の目で見た像を重ねたほうが、後で自分の頭で考えられるようになる。
まずはどちらか一冊を読み通してから、もう一方を手に取るといい。

天才経済学者たちの闘いの歴史 -経済学史入門-
中矢俊博 著|同文館出版
¥1,980(税込)
スミス、マルクス、ケインズら天才経済学者が、当時の経済や政治など様々な環境の下で既存の概念を否定し、新しい理論を作り上げていく過程を追った入門書です。142ページと薄く、経済学の古典は面白いという著者の言葉どおり、闘いのドラマとして読ませる。人物の衝突から理論の誕生を眺める構成なので、年表や系図から入るより記憶に残りやすい。同文館出版、1980円です。
こんな人におすすめ
経済学史を物語として読みたい人。人物のエピソードから入りたい人。短時間で古典の面白さに触れたい読者。講義の導入に使いたい学生にも向きます。
良い点
- 142ページと短い
- 闘いの物語として読める
- 人名が記憶に残る
気になる点
- 扱う範囲は限られる
- 1980円と薄さの割に高い
- 理論の詳解はない
出版社
同文館出版
発売日
2014年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
142ページで天才経済学者たちの闘い……って、そんなに短くて足りるんでしょうか。
佐藤メバル
足りるというより、絞っているんだね。スミス、マルクス、ケインズらが、当時の環境のなかで既存概念を否定し、新しい理論を作り上げていく過程を追う。
人物の衝突から理論の誕生を眺める構成だから、年表や系図から入るより記憶に残りやすい。『経済学の古典は面白い』という著者の言葉が、そのまま本の性格を表しているよ。
橘ナナミ
理論の説明より、人の物語として読む感じなんですね。それなら私でも入っていけそうです。
佐藤メバル
そう。まず人物に会ってから理論を学ぶと、数式の背景にある問題意識が見えてくる。142ページなら一気に読めるから、分厚い通史の前の導入として使うのもいい選択だよ。

コア・テキスト経済学史 (ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端 8)
井上義朗 著|新世社
¥2,915(税込)
ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端というシリーズに属する、講義で使うことを想定した一冊です。339ページ、2915円。網羅的な概説と違い、基礎から積み上げる教科書の設計になっているのが持ち味で、独学なら一章ずつ確認しながら進められます。同じテキスト型なら有斐閣アルマの中村達也版と読み比べて、市場経済をとらえるときにどこへ軸を置くかで選ぶとよいでしょう。
こんな人におすすめ
大学の講義に沿って独学したい人。章ごとに確認しながら基礎を固めたい人。教科書型の設計を好む読者。テキスト選びで迷っている学生に向きます。
良い点
- 教科書として設計されている
- 章ごとに確認できる
- 独学でも進めやすい
気になる点
- 2915円と価格は高め
- 339ページで速読には不向き
- 概説書ほどの話題の広さはない
出版社
新世社
発売日
2004年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
コア・テキストって、シリーズ名なんですね。講義で使う前提の本を独学で読むのは、無理がありますか?
佐藤メバル
一章ずつ確認しながら進めれば、独学でも十分使えるよ。これはライブラリ経済学コア・テキスト&最先端というシリーズに属していて、基礎から積み上げる教科書の設計になっている。
339ページ、2915円。有斐閣アルマの中村達也版と読み比べて、どこに軸を置くかで選ぶといい。
橘ナナミ
なるほど。講義の予習復習に使うなら、こちらが向いていそうですね。
佐藤メバル
その使い方が一番合っていると思う。答えを読む本ではなく、手を動かして積み上げる本だからね。まず図書館で一章だけ読んで、自分の歩幅に合うかどうかを確かめてから決めるのがおすすめだよ。

経済思想入門 (ちくま学芸文庫 マ 38-1)
松原隆一郎 著|筑摩書房
¥1,430(税込)
スミス、マルクス、ケインズら経済学の巨人たちが、どのような問題に対峙し思想を形成したのかを、その今日的意義までを視野に入れて説く一冊です。文庫で400ページ、1430円。人物の思想をたどる本でありながら、現在の私たちの問題として読み直すところまで連れていってくれる。同じちくま学芸文庫のハイルブローナーと並べると、こちらは思想の内側に寄り添う語りが特徴です。
こんな人におすすめ
巨人たちの思想を現在の問題として考えたい人。文庫でしっかり読む思想史を探している人。今日的意義まで視野に入れたい読者。授業の副読本が欲しい学生にも向きます。
良い点
- 巨人の思想を丁寧に説く
- 今日的意義まで視野に入れる
- 文庫で1430円と手頃
気になる点
- 400ページで持ち歩きにくい
- 文庫は文字が小さめ
- 入門には骨太すぎる面も
出版社
筑摩書房
発売日
2016年2月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ちくま学芸文庫で400ページ。文庫でこの厚さは、持ち歩くにはちょっと重いですね……。
佐藤メバル
重いよね、正直。でもそれだけの中身がある。スミス、マルクス、ケインズら巨人たちが、どのような問題に対峙し思想を形成したのかを、今日的意義まで視野に入れて説いている。
過去の思想を現在の問題として読み直すところまで連れていってくれるんだ。
橘ナナミ
ただの人物紹介で終わらないんですね。今の自分の問題として読めるなら、厚さも我慢できそうです。
佐藤メバル
そこがこの本の値打ちだね。同じ文庫のハイルブローナーと並べると、こちらは思想の内側に寄り添う語りが強い。
机に置いて、一章ずつゆっくり進めるのが合っている一冊ですよ。

入門経済思想史 世俗の思想家たち (ちくま学芸文庫)
ロバート・L.ハイルブローナー 著|筑摩書房
¥1,760(税込)
1953年の初版以来たびたび版を重ね、二十数カ国語に翻訳されてきた名著の最新第7版です。スミス、マルサス、リカード、ユートピア社会主義者たち、マルクス、ヴェブレン、ケインズ、シュンペーターまで、彼らを分析技術の発明者ではなく現実と切り結んだ世俗の思想家として描く。544ページ、1760円。経済の行方が見えないときに見通しの指針をくれる、息の長い入門書です。
こんな人におすすめ
古典を読み物として味わいたい人。思想の背景にある時代の空気を知りたい人。長く手元に置く入門を探している読者。翻訳書に抵抗がない人に向きます。
良い点
- 初版から読み継がれた名著
- 世俗の思想家として描く
- 544ページの読みごたえ
気になる点
- 544ページで重い
- 通読には時間がかかる
- 入門にはやや長い
出版社
筑摩書房
発売日
2001年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
1953年の初版が、いまも版を重ねているんですか。そんなに長く読まれる理由って何なんでしょう。
佐藤メバル
描き方だろうね。スミス、マルサス、リカード、マルクス、ヴェブレン、ケインズ、シュンペーターを、分析技術の発明者ではなく現実と切り結んだ世俗の思想家として描いている。
二十数カ国語に翻訳されて、544ページ。経済の先行きが見えないときの見通しの指針になる、息の長い入門書だよ。
橘ナナミ
『世俗の思想家』という呼び方、いいですね。経済学者を偉人として祭り上げない感じがします。
佐藤メバル
まさにそこなんだ。彼らも時代の空気のなかで考えた人たちだという前提で読むと、理論がぐっと身近になる。
1760円で、何度も戻ってこられる一冊だから、焦らずゆっくり付き合ってみてください。

経済思想史入門―スミスからシュンペーターまで―
小沼宗一 著|創成社
¥2,287(税込)
アダム・スミス、リカードゥ、J.S.ミル、マーシャル、ケインズ、シュンペーターという6人を章立てで順に追う構成です。240ページ、2287円とコンパクトで、人物を一人ずつ確実に押さえる進め方ができる。網羅性より軸になる6人に絞っているぶん、ゼミや講義の副読本として、あるいは初めて人名に慣れるための一冊として使いやすい。同じ入門でも、広く薄く扱う本とは対照的な潔さが持ち味です。
こんな人におすすめ
6人の巨人を確実に押さえたい人。ゼミや講義の副読本を探している学生。人名に慣れるための一冊がほしい初学者。短い章で区切って読み進めたい社会人にも向きます。
良い点
- 6人に絞って確実に押さえる
- 240ページで読み切れる
- 章ごとに区切られている
気になる点
- 扱う人物は6人だけ
- 現代経済学は範囲外
- 2287円はやや高め
出版社
創成社
発売日
2022年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
スミス、リカードゥ、ミル、マーシャル、ケインズ、シュンペーター。6人に絞ってあると、逆に覚えやすそうですね。
佐藤メバル
そう、そこが狙い目だね。240ページで、人物を一人ずつ章で区切って確実に押さえられる。網羅性より軸になる6人に絞っているぶん、ゼミや講義の副読本として、あるいは初めて人名に慣れるための一冊として使いやすい。
広く浅くより、狭く確実に進めたい人に向いているよ。
橘ナナミ
なるほど! まず主要な6人を友達にしてから、他の人たちに会いに行く感じですね。
佐藤メバル
その例え、いいね。経済学史は登場人物が多いから、最初に顔見知りを6人作っておくと、あとがぐっと楽になる。
2287円は安くはないけれど、この6人は何度も戻ってくる名前だから、損にはならないよ。

物語現代経済学: 多様な経済思想の世界へ (中公新書 1853)
根井雅弘 著|中央公論新社
¥1,000(税込)
アメリカ型の経済学教育の導入で経済学の一元化が進み、自由な思考にとって最も貴重な多様性が失われている。この本はその問題意識から、主流派が真剣に読まなくなったマーシャル、ケインズ、サムエルソン、ガルブレイスらの経済学を再検討します。異端派を排除してきたノーベル経済学賞の問題点にも触れ、相対化を忘却した現代経済学に警鐘を鳴らす。入門書でありながら批評の書でもある、中公新書の205ページです。
こんな人におすすめ
経済学の多様性が失われることを危ぶんでいる人。ケインズやガルブレイスをもう一度読み直したい人。入門と批評の両方を求める読者。新書で思考の刺激がほしい人に向きます。
良い点
- 入門と批評を兼ねている
- 205ページで読みやすい
- 多様性の大切さを説く
気になる点
- 用語の予備知識が要る
- 通史としての網羅性は低い
- 著者の主張が強め
出版社
中央公論新社
発売日
2006年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
経済学が一元化して、多様性が失われている……そんな問題提起から始まるんですか。
佐藤メバル
そうなんだ。アメリカ型の経済学教育が導入されて、自由な思考にとって最も貴重な多様性が失われている、というのが著者の問題意識。
主流派が真剣に読まなくなったマーシャル、ケインズ、サムエルソン、ガルブレイスらを再検討し、異端派を排除してきたノーベル経済学賞の問題点にも触れる。
入門書でありながら批評の書なんだよ。
橘ナナミ
経済学史の本なのに、いまの経済学への警鐘にもなっているんですね。205ページでそこまで行くのがすごいです。
佐藤メバル
同じ著者の学術文庫版が評伝に絞っているのに対して、こちらは問いを立てて考える方向へ引っ張る。中公新書で1000円だから、入門のあとにもう一度戻ってくる本として手元に置いておくといいよ。

経済学41の巨人: 古典から現代まで
日本経済新聞社 著|日本経済新聞出版
¥3,649(税込)
経済学を理解するうえで欠かせない41の巨人たちの考えを、現在に照らし合わせて解説する生きた経済学史です。伊藤元重、岩井克人、吉川洋、竹中平蔵など、日本経済の課題について積極的に発言してきた経済学者たちが人物ごとに1話完結で執筆している。故・宇沢弘文元東京大学名誉教授が執筆したヴェブレン論も収録され、複数の書き手の体温がそのまま残っている点が、一人で書かれた通史との大きな違いです。
こんな人におすすめ
著名な経済学者の文章を読み比べたい人。人物ごとに1話完結で拾い読みしたい社会人。研究者ごとの解釈の違いを楽しみたい読者。ヴェブレン論に関心がある人にも向きます。
良い点
- 41人を1話完結で読める
- 執筆陣が豪華
- 現代へのつながりが見える
気になる点
- 3649円と価格は高い
- 567ページで重い
- 書き手ごとに温度差がある
出版社
日本経済新聞出版
発売日
2014年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
41人の巨人を、別々の経済学者が書いているんですね。書き手が違うと、ばらつきませんか?
佐藤メバル
そこが逆に魅力なんだよ。伊藤元重、岩井克人、吉川洋、竹中平蔵さんたちが、それぞれの視点で人物ごとに1話完結で解説している。
故・宇沢弘文元東京大学名誉教授が執筆したヴェブレン論も収録されていてね。複数の書き手の体温がそのまま残るのがいい。
橘ナナミ
なるほど。一人の著者がまとめた通史とは、読後感が全然違いそうですね。
佐藤メバル
通読すると、巨人たちの理論がどう枝分かれして現代経済学につながるか、大きな流れが見えてくる。567ページ、3649円だから気軽ではないけれど、執筆者自身の考え方を知る材料にもなる、贅沢な一冊です。

経済学史への招待
柳沢哲哉 著|社会評論社
¥2,530(税込)
学説とその時代背景を学び、古典への関心を喚起することを狙った一冊です。高校で学ぶ世界史の知識を前提とすることなく、時代背景を理解できるように心がけたと著者は述べています。もう一つの特徴は原典からの引用の多さで、必ずしも分かりやすくない引用もあえて掲載し、経済学者の声に直接触れられるようにしている。223ページ、2530円です。
こんな人におすすめ
世界史に自信がなく、経済学史に踏み出せない人。原典の言葉に直接触れてみたい人。引用を手がかりに古典へ進みたい読者。大学の講義の予習をしたい学生にも向きます。
良い点
- 世界史の知識が不要
- 原典の引用が豊富
- 時代背景から理解できる
気になる点
- 引用が難解な箇所もある
- 223ページはやや駆け足
- 2530円と手頃とは言えない
出版社
社会評論社
発売日
2018年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
世界史の知識がなくても読める、というのは、私みたいな人間にはありがたいです。年号を見るだけで身構えてしまうので。
佐藤メバル
そこを大事にした本でね。学説とその時代背景を学び、古典への関心を喚起することを狙っている。もう一つの特徴は原典からの引用の多さで、必ずしも分かりやすくない引用もあえて載せている。
経済学者の声そのものに触れてほしいからだそうだ。223ページだよ。
橘ナナミ
分かりにくい引用もあえて残す、というのは勇気のある編集ですね。読み手を信じてくれている感じがします。
佐藤メバル
そうだね。『経済学はそれぞれの時代の経済や社会の問題に答えることで発展してきた』というプロローグの一文が、この本の姿勢をそのまま表している。
引用が難しいと感じたら、そこは飛ばして先へ進んでいい。後で戻ってくると、意味が変わって見えるから。

いまを考えるための経済学史
西孝 著|日本実業出版社
¥2,200(税込)
経済学の最重要テーマを政府の役割と定め、その軸で経済学者・哲学者の思想と処方箋を解説する経済学史です。経済学は自然科学ではなく、人文知に近い人間科学であり、貧困と格差の解消をめぐる人間の戦いでもあるというとらえ方に貫かれています。マクロ経済学の教科書で高い評価を得てきた著者が、経済学を始める一冊として書き、政治経済学へ読者を招き入れます。
こんな人におすすめ
政府の役割や格差問題を考えたい人。経済学を政治経済学として学びたい人。教科書を書いてきた著者の入門を読みたい読者。時事問題の背景を知りたい社会人にも向きます。
良い点
- 政府の役割を軸に整理
- 政治経済学へ誘ってくれる
- 教科書を書いた著者の一冊
気になる点
- 人物の列伝は期待しにくい
- 256ページで幅は広くない
- 主張に賛否が分かれる
出版社
日本実業出版社
発売日
2023年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『政府の役割』を軸にする、というのが面白いです。経済学史って、人物の列伝だと思っていました。
佐藤メバル
その軸で通すと、思想と処方箋が一本につながるんだ。経済学は自然科学ではなく、人文知に近い人間科学であり、貧困と格差の解消をめぐる人間の戦いでもある、というとらえ方に貫かれている。
マクロ経済学の教科書で高い評価を得てきた著者が、経済学を始める一冊として書いた、政治経済学への招待状だよ。
橘ナナミ
なるほど! 主義や思想の違いが、政策の違いとして見えてくるんですね。ニュースの読み方まで変わりそうです。
佐藤メバル
そこにつながるのがこの本の狙いでね。256ページ、2200円。資本主義と近代国家の誕生から経済学が始まったという前提で書かれているから、教科書で断片だけ覚えた人ほど、線がつながる感覚を得られると思うよ。

やさしい経済学史 (21世紀南山の経済学 3)
中矢俊博 著|日本経済評論社
¥770(税込)
スミス、マルクス、ケインズを中心に、古代ギリシア・中世ヨーロッパから重商主義、古典派、新古典派までの経済学の道のりと、それを築いた経済学者たちの功績を概観する一冊です。63ページ、770円という小ささが最大の特徴で、講義一回分ほどの分量で全体の骨格だけをつかめます。分厚い通史に入る前の肩慣らしや、要点確認の手引きとして使いやすい。
こんな人におすすめ
まず骨格だけ知りたい人。分厚い本に入る前に不安を減らしたい人。講義一回分の分量で全体を見たい学生。短い単位で読書習慣をつけたい社会人にも向きます。
良い点
- 63ページで読み切れる
- 770円で試しやすい
- 骨格の把握に最適
気になる点
- 情報量は最小限
- 人名の深掘りはできない
- 現代の議論は扱わない
出版社
日本経済評論社
発売日
2012年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
63ページ、770円! これは……短すぎませんか? さすがに物足りない気がします。
佐藤メバル
短いよ。でもそこが役割なんだ。スミス、マルクス、ケインズを中心に、古代ギリシア・中世ヨーロッパから重商主義、古典派、新古典派までの道のりを概観する。
講義一回分ほどの分量で骨格だけをつかめるから、分厚い通史に入る前の肩慣らしにちょうどいい。
橘ナナミ
なるほど。地図だけ先にもらっておく感じですね。読書が続かない私には逆にありがたいです。
佐藤メバル
そういう使い方が一番向いているよ。770円なら試しやすいし、要点確認の手引きとして何度も開ける。読書習慣づくりの一冊目としても、悪くない選択だと思います。

経済学者はこう考えてきた: 古典からのアプローチ (893) (平凡社新書 893)
根井雅弘 著|平凡社
¥1,012(税込)
資本主義とは何か、学問としての経済学がどう変わってきたか、偉大な経済学者たちの思想や学説の違いはどこにあるのか。経済思想史家の立場から経済学の初歩を説く一冊です。277ページ、1012円の新書判。同じ著者の学術文庫版が12人の評伝に絞るのに対し、こちらは問いを立てて答える形で進むため、考え方の筋道から経済学史に入りたい人に向きます。
こんな人におすすめ
暗記ではなく考え方の筋道を知りたい人。新書で気軽に手に取りたい人。著者の他の本と併読したい読者。経済学の初歩を問いの形で学びたい学生にも向きます。
良い点
- 問いの形で考えられる
- 277ページで手頃
- 新書で気軽に読める
気になる点
- 評伝的な厚みはない
- 通史の代わりにはならない
- 著者の他書と重なる部分がある
出版社
平凡社
発売日
2018年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
同じ根井雅弘さんの本が、このリストに何冊か出てきますよね。どう使い分ければいいんでしょう。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。学術文庫版は12人の評伝に絞った厚い本。この平凡社新書は、資本主義とは何か、経済学という学問がどう変わってきたか、学説の違いはどこにあるのかを、問いを立てて答えていく形で説く。
277ページ、1012円。考え方の筋道から入りたい人にはこちらが向いているよ。
橘ナナミ
なるほど! 同じ著者でも、読者を置いていく場所が違うんですね。併読したら理解が深まりそうです。
佐藤メバル
そう、重なる部分も多いけれど、重なっているからこそ定着する。まず新書で問いの形に慣れて、面白くなったら文庫で人物の生涯を追う。
経済思想史家の立場から経済学の初歩を説いた、最初の一冊としてちょうどいいですよ。
「経済史」と「経済学史」、そして「経済学」を一枚の年表に重ねる
橘ナナミ
さっきの経済史と経済学史の話、もう少し聞きたいです。結局どちらから読むべきなんですか。
佐藤メバル
思考の順番としては「経済学史 → 経済史」が入りやすい。経済史の本は統計や制度の説明が多く、前提となる理論の言葉を知らないと数字の意味がつかめないからね。逆に出来事を知っていると、理論が「なぜその時代に生まれたか」が腹に落ちる。だから理想は往復だよ。日本経済史と世界経済史の往復も同じで、日本の変化は世界の変化の一部として起きている。
橘ナナミ
片方だけだと、見えないものがありそうですね。
佐藤メバル
そう。たとえば『近現代経済学史入門』は第V部で近代日本の経済思想を扱っている。西洋の理論をそのまま日本に当てはめると必ずズレが出る。そのズレを見るのがいちばん面白いところなんだ。世界史の知識が不安でも、柳沢哲哉『経済学史への招待』は高校で学ぶ世界史の知識を前提としないで読めるように書かれていると明言している。文明史のベストセラーから入って、次に経済の思想史へ、というルートを取る読者も多いよ。
古典の誤読を防ぐ——原著・翻訳・入門解説の「重ね読み」
橘ナナミ
名著って、要約だけ読むと危ない気がします。
佐藤メバル
その直感は正しい。根井雅弘『経済学の歴史』(講談社学術文庫)は、スミスが本来は絶妙なバランス感覚の持ち主で、決して極端な自由放任主義者ではなかったのに、いつしか自由放任主義哲学の元祖として利用されるようになった、と指摘している。要約だけを読むと、こうした誤読がそのまま入ってしまう。
橘ナナミ
じゃあ、いきなり原著から行くべきですか。
佐藤メバル
いや、3層で重ねるのが現実的だ。まず蔭山克秀やバトラー=ボードンのような要点解説で骨格をつかむ。次にハイルブローナー『入門経済思想史』や松原隆一郎『経済思想入門』で、思想家が生きた時代と格闘を味わう。余裕が出たら原著の翻訳に触れる。順番を守れば、分厚い本にいきなり挑んで積読になる事故が減るよ。
橘ナナミ
積読、まさに私のことです……。
佐藤メバル
対策は単純で、最初から読了を狙わないこと。『経済学41の巨人』のように1話完結の本を枕元に置いて、1日ひとりでいい。読めなかった日は飛ばす。経済学史は暗記科目じゃないから、拾い読みでも十分に力になる。図書館と電子書籍を併用して、手元に置きたい一冊だけ買うのも手だね。
MMT・行動経済学・経済安全保障へ橋を架ける
橘ナナミ
ニュースで見るMMTや経済安全保障は、この分野とつながりますか。
佐藤メバル
つながる。木村雄一『学ぶほどおもしろい 経済学史』はポスト・ケインズ派や異端派、そしてサイモンから行動経済学への流れまで扱っている。財政や中央銀行の議論がケインズの遺産の延長線上にあることが見えてくるよ。行動経済学の系譜も、ここから自分で枝を伸ばせばいい。
橘ナナミ
経済安全保障や地政学は?
佐藤メバル
それは経済学史のど真ん中ではない。ただ、重商主義やドイツ歴史学派のリストの保護貿易論、自由主義と保護主義の対立を押さえておくと、今の政策論が「何度目の議論か」が見える。依田高典『ノーベル賞で語る 現代経済学』も、価格理論から貧困、気候変動まで受賞分野の広がりを追っていて、現代の論点の入口になる。
よくある質問
経済史の本は初心者はどれから読めばいいですか?
橘ナナミ
経済史の本は初心者はどれから読めばいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
まずは中矢俊博『やさしい経済学史』のような、古代から新古典派までを短い分量で眺められる本から始めるのがおすすめです。地形を先に掴むと、次に読む本の位置関係が分かり、挫折しにくくなります。
経済学と経済史の本はどちらから学ぶべきですか?
橘ナナミ
経済学と経済史の本はどちらから学ぶべきですかについて教えてください。
佐藤メバル
理論の言葉に慣れていないうちは、経済学史の入門書から入るほうが飲み込みやすいです。経済史は統計や制度の話が多く、前提となる用語を知らないと数字の意味がつかみにくいためです。慣れたら往復するのが理想です。
マンガや図解だけでも経済史は理解できますか?
橘ナナミ
マンガや図解だけでも経済史は理解できますかについて教えてください。
佐藤メバル
入口としては十分に機能します。蔭山克秀『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』のように図版をまじえて要点を整理した本で骨格をつかみ、そこから人物の思想を扱う入門書へ進むと無理がありません。図解は地図、入門書は実際の道だと思ってください。
大学の教科書は独学でも読みこなせますか?
橘ナナミ
大学の教科書は独学でも読みこなせますかについて教えてください。
佐藤メバル
読みこなせますが、順番が大事です。井上義朗『コア・テキスト経済学史』や木村雄一『学ぶほどおもしろい 経済学史』は体系立っているぶん、前提となる人名と用語が前提になります。短い入門書を1冊挟んでから開くと、格段に読みやすくなります。
日本経済史と西洋経済史はどちらを先に読むべきですか?
橘ナナミ
日本経済史と西洋経済史はどちらを先に読むべきですかについて教えてください。
佐藤メバル
西洋の主脈を先に押さえてから日本へ戻るのがおすすめです。小沼宗一『経済思想史入門』のようにスミスからシュンペーターまで一直線にたどれる本で流れを作り、本郷亮『近現代経済学史入門』で近代日本の経済思想と対比すると、受容のズレまで見えてきます。
原著と翻訳・入門解説書はどう使い分ければいいですか?
橘ナナミ
原著と翻訳・入門解説書はどう使い分ければいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
解説書→入門書→原著の翻訳、の3層で重ねるのが現実的です。根井雅弘『経済学の歴史』が指摘するように、スミスは自由放任主義の元祖として誤って利用されてきた面があります。要約だけで済ませず、時代背景を扱う入門書を必ず挟みましょう。
経済史の名著で挫折しやすい本と対策はありますか?
橘ナナミ
経済史の名著で挫折しやすい本と対策はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
分厚い通史や原典引用の多い本は、最初から読了を狙うと挫折しがちです。日本経済新聞社編『経済学41の巨人』のように人物ごとに1話完結の本を枕元に置き、1日ひとりずつ拾い読みする。読めない日は飛ばす。これだけで積読をかなり防げます。
MMTや経済安全保障など時事系はどこから読めばいいですか?
橘ナナミ
MMTや経済安全保障など時事系はどこから読めばいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
木村雄一『学ぶほどおもしろい 経済学史』でポスト・ケインズ派や異端派、行動経済学への流れを押さえると、財政や中央銀行の議論が立体的に見えます。安全保障や地政学は重商主義やドイツ歴史学派の保護貿易論と並べると、議論の来歴がつかみやすくなります。
まとめ
橘ナナミ
今日の話を聞いて、最初に思っていたよりずっと参加しやすい分野だと感じました。教科書を1ページ目から暗記するものだと思っていたので。
佐藤メバル
経済学史は正解を覚える科目じゃないからね。スミスが何を言ったかより、なぜその時代にそう考えたのか。そこに触れると読書が一気に楽しくなる。
橘ナナミ
まず『やさしい経済学史』で地形を見て、そこから『天才経済学者たちの闘いの歴史』で人物に入る。並行して、ニュースで見た言葉を『学ぶほどおもしろい 経済学史』で引き直す。この順番なら私でも続けられそうです。
佐藤メバル
いい読み方だね。ひとつ足すなら、気になった思想家の名前をメモしておくこと。経済学史は人物のネットワークなので、記録が増えるほど地図がつながっていく。
橘ナナミ
メモ、やってみます。……なんだか経済学史の本って、年表というより、先人たちが残した手紙の束を後から読んでいるみたいですね。宛名は「これからの時代」になっている。
佐藤メバル
いい喩えだ。その手紙は、封を切って読む人が出てこないと意味を持たない。今日の一冊が、その最初の封切りになればいいね。
