経済哲学の本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】

監修

佐藤メバル

佐藤メバル

@shelfy_mebaru

編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ

橘ナナミ

@medias_nanami

編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。

最終更新: 2026年10月

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、今日のテーマは「経済 哲学 本」ですよね。正直、経済学の棚と哲学の棚って、書店でもいちばん離れている気がするんです。同じ記事で扱う意味って、どこにあるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。実はその二つ、もともとは同じ棚にあったんだ。経済学は道徳哲学から生まれた学問で、アダム・スミスもまず人間の感情と正しさを考えた人だった。それが数式とモデルの学問になっていく過程で、「人間の選択とは何か」という問いを哲学サイドに預けてきた。その預けた荷物を、もういちど取りにいくのが経済哲学の読書なんだよ。だから「ビジネスに使える哲学」のブームとも、入口がちょっと違う。

橘ナナミ

橘ナナミ

預けた荷物……。じゃあ、何から読めばいいんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

先に一つ確認しておくと、このジャンルの本は明日の株価を当てる種類のものではない。そのうえで最初の一冊なら『経済学の哲学入門』(ダニエル・ハウスマン/勁草書房)が面白い。ミクロ経済学や厚生経済学、ゲーム理論で使われる「選好」という一語を、科学哲学の立場からとことん考え抜く本だ。数式ではなく、「経済学的な説明とは何か」という問いから入る。経済学の内側から外を見る本と、外から経済学を見る本——この二種類を意識すると、選書で迷いにくくなるよ。

経済哲学の本の選び方

目的別に選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

目的別だと、ニュースを理解したい人と、経営判断に使いたい人で選ぶ本は変わりますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

変わるよ。ニュースの言葉を自分の頭で咀嚼したいなら『サステナビリティの経済哲学』(松島斉/岩波新書)。コモンズやSDGsから「新しい資本主義」「新しい社会主義」という構想まで、新書サイズで見渡せる。倫理と正義の側から入るなら、ロールズとセンを軸に分配的正義の理論を再構築する『正義の経済哲学』(後藤玲子/東洋経済新報社)、福祉国家を哲学から問う『経済と倫理』(塩野谷祐一/東京大学出版会)。経営や投資の言葉を変えたいなら、リベラリズム、コミュニタリアニズム、リバタリアニズム、マルクス主義という経済イデオロギーを明快に解説する『経済倫理=あなたは、なに主義?』(橋本努/講談社選書メチエ)が効く。自分の判断がどの立場に立っているのかが見えるんだ。

レベル別に選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

完全に初心者なんですが、いきなりハウスマンの本は重いですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そういうときは『プレップ経済倫理学』(柘植尚則/弘文堂)。「入門の入門」を掲げて、労働・企業・市場・福祉・環境・消費まで基礎から進み、巻末に読書案内と索引がついている。次の一冊を自分で選べるようになるのが大きい。数式が苦手なら『ミクロ経済分析[第2版]』(佐々木浩二/創成社)で、iPhoneやお掃除ロボ、駅前の再開発を例に、数式をほぼ使わず論点を紹介してくれる。そこから『経済学の哲学入門』を経て、価値・歴史・精神活動を経済学に基礎づけようとする『経済哲学原理』(塩野谷祐一/東京大学出版会)のような大著へ、と段を作るといい。

形式別に選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

新書や対話形式だと、手に取りやすさがだいぶ違いますよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

手軽さなら新書。『サステナビリティの経済哲学』、中山智香子『経済学の堕落を撃つ 「自由」vs「正義」の経済思想史』(講談社現代新書)、竹内靖雄『経済倫理学のすすめ』(中公新書)が並ぶ。物語として読ませるなら、桂木隆夫『市場経済の哲学』で、「市場経済についての対話」から始まる構成になっている。逆に腰を据えるなら、実験経済学の有効性と限界を科学哲学の立場から論じるグァラ『科学哲学から見た実験経済学』のような教科書型になる。

ジャンル別に選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

「経済学」と「経済」と「経済思想・哲学」って、記事によって言葉が混ざっていて混乱します。

佐藤メバル

佐藤メバル

理論を組み立てるのが経済学、いま起きていることを扱うのが経済の時事、そして「そもそも経済とは何か、何を善しとするか」を問うのが経済思想・哲学だ。伊藤邦武『経済学の哲学 19世紀経済思想とラスキン』は、エコノミーとエコロジーを時代に先んじて論じたラスキンを手がかりに、経済学という思想の特徴と限界を哲学的に浮き彫りにする。自分がどの棚の本を読んでいるのかを自覚すると、内容が頭に入りやすくなるよ。

読みやすさと入手性で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

買う前にチェックすべきことってありますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ページ数と価格、そして版の情報だね。塩野谷祐一の本は400ページを超えるものが並び、『ケインズの哲学と『一般理論』』(牧野裕)も392ページある。逆に藤本保太『自由な社会 経済哲学入門』は163ページで、薄い入門として貴重だ。それから『市場経済の哲学』はオンデマンド叢書として提供されていて、紙のページを画像にした電子版は文字だけを拡大できない。タブレットでの閲覧が推奨されている。入手の形まで見てから決めると、買ったのに読めない、が起きにくいよ。

経済哲学の本をひと目で比較

橘ナナミ

橘ナナミ

えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず

#画像名称おすすめ対象価格一言
1
経済学の哲学入門: 選好、価値、選択、および厚生
経済学の哲学入門: 選好、価値、選択、および厚生経済学をひととおり学んだあと、理論の前提を疑いたくなった大学院生。厚生経済学や費用便益分析に関わる政策担当者。心理学や哲学から経済学に接近したい読者。¥3,080選好という概念を哲学する
2
正義の経済哲学: ロールズとセン
正義の経済哲学: ロールズとセンロールズやセンを名前だけ知っている大学院生。社会保障や税の再分配の設計に関わる実務者。正義論と経済学のあいだに橋を架けたい読者。¥5,133分配的正義の理論を組み直す
3
経済哲学原理: 解釈学的接近
経済哲学原理: 解釈学的接近経済学の前提そのものを問い直したい研究者・大学院生。思想史や解釈学に関心のある人文系の読者。効率や合理性の語りに息苦しさを感じている人。¥6,160解釈学で経済を基礎づける
4
「経済」の哲学: ナルシスの危機を越えて
「経済」の哲学: ナルシスの危機を越えて経済学の教科書にどうしても入れなかった読者。思想や文化論の棚から経済に近づきたい人。タイトル買いで未知の議論に飛び込みたい人。¥2,860自己愛から経済を問い直す
5
サステナビリティの経済哲学 (岩波新書 新赤版 2027)
サステナビリティの経済哲学 (岩波新書 新赤版 2027)サステナビリティやSDGsを、標語ではなく制度設計として考えたい人。企業のサステナビリティ経営に関わる実務者。宇沢弘文やオストロムの議論を学びたい学生。¥1,056大義から資本主義を描き直す

経済哲学の本のおすすめ人気ランキング

橘ナナミ

橘ナナミ

一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!

佐藤メバル

佐藤メバル

よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

経済学の哲学入門: 選好、価値、選択、および厚生
1

経済学の哲学入門: 選好、価値、選択、および厚生

ダニエル・ハウスマン 著|勁草書房

¥3,080(税込)

4.8

「選好」という言葉を経済学はどう扱ってきたのか。本書はミクロ経済学や厚生経済学、ゲーム理論の基本概念である選好を、科学哲学の立場から問い直す入門です。序数的効用理論の公理、顕示選好理論、期待効用理論、帰結主義、そして心理学の知見や選好の構築までを整理しながら「経済学的な説明とは何か」へ迫ります。哲学と心理学の比較を通じて経済学の幅を広げ、選好の充足と厚生がなぜ同じでないのかまで踏み込む。類書が経済学史をなぞるのに対し、概念そのものを解剖する点で一線を画します。

こんな人におすすめ

経済学をひととおり学んだあと、理論の前提を疑いたくなった大学院生。厚生経済学や費用便益分析に関わる政策担当者。心理学や哲学から経済学に接近したい読者。

良い点

  • 選好概念を公理から丹念に整理
  • 厚生・パターナリズム論まで射程
  • 心理学との比較で視野が広がる

気になる点

  • 初学者には前提知識が要る
  • 具体例は多くない
  • 通読には時間がかかる

出版社

勁草書房

発売日

2022年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、「選好」って聞くと、なんとなく好みのことだと思っていました。そんなに掘り下げる余地があるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。実はそこが経済学のいちばん面白いところで、選好は好みというより、選択を説明するための理論的な道具なんだ。

この本は序数的効用理論の公理から顕示選好理論、期待効用理論、ゲーム理論の帰結主義まで、その道具がどこで何をしてきたかを科学哲学の目で検証していく。

しかも後半では、選好の充足と厚生は別物だという議論まで踏み込む。政策評価を考える人には効くと思うよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

選好が満たされても幸せとは限らない、というのは身に覚えがあります。テスト前に延々と動画を見てしまう自分とか……。これ、経済学部以外の私でも読めますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

読み通すにはミクロ経済学の基礎があったほうがいいけれど、第9章と第10章の心理学の話——損失回避やフレーミング、選好の構築——だけでも十分刺激的だよ。

人は選択肢をどう評価しているのか、本来どう評価すべきなのかを並べて考える構成になっている。選好は与えられるものか、作られるものかという問いは、マーケティングや公共政策にも直結する。

書店員時代、この手の本は入門と名乗りつつ門が高いことが多かったから、目次で読めそうな章から入るのを勧めているよ。

正義の経済哲学: ロールズとセン
2

正義の経済哲学: ロールズとセン

後藤玲子 著|東洋経済新報社

¥5,133(税込)

4.7

ロールズとセン——正義論と厚生経済学の二つの巨人を、別々の棚に置かず一つの問いとして組み直す大著です。ロールズやセンなどの最新の研究成果を踏まえ、独自の視点から分配的正義の理論を再構築し、理論的考察にとどまらず福祉国家社会の基本原理を根底から検討します。規範理論と制度設計を往復する構成が、哲学の概説書とも経済学の教科書とも違う位置を生んでいます。理論と現実の両方に足を置きたい人に向く一冊です。

こんな人におすすめ

ロールズやセンを名前だけ知っている大学院生。社会保障や税の再分配の設計に関わる実務者。正義論と経済学のあいだに橋を架けたい読者。

良い点

  • ロールズとセンを往復して整理
  • 理論と制度の両方に踏み込む
  • 参照文献としても頼れる

気になる点

  • 分量が多く覚悟が要る
  • 哲学用語の前提が多い
  • 入門書としては不向き

出版社

東洋経済新報社

発売日

2002年7月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ロールズとセン、名前は思想史の授業で聞いたんですが、この二人を一冊で並べて論じる本は珍しいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

いいところに気づいたね。ロールズは正義論の、センは厚生経済学と潜在能力の話として、別々に紹介されることが多い。

この本はそこを分けず、分配的正義という一つの問いとして組み直そうとする。理論の整理と福祉国家の基本原理の検討を同時に進めるので、読む側も正義とは何かと、制度はどうあるべきかを往復させられる。労作と呼ぶにふさわしい厚さだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

福祉国家の基本原理を根底から検討、という一文が重いです。今ある制度を否定する話なんでしょうか?

佐藤メバル

佐藤メバル

否定から入る本ではないよ。むしろ、なぜ再分配を正当化できるのか、その理由をていねいに積み上げる。根拠が弱いまま制度だけが大きくなると、支持を失ったときに一気に崩れるからね。

書店員時代、思想書の隣に社会保障の実務書を並べる棚を作ったことがあるけど、両方を行き来する読者は強かった。この本はその往復を一冊でやってくれる。

経済哲学原理: 解釈学的接近
3

経済哲学原理: 解釈学的接近

塩野谷祐一 著|東京大学出版会

¥6,160(税込)

4.6

経済とは、財貨やサービスを通じて望ましい人間や社会のあり方を実現する活動——この本はその素朴な定義から出発します。望ましい姿と現実が食い違うのはなぜか。見落とされてきた価値・歴史・精神活動に着目し、それらを経済学の土台に据えようと試みます。解釈学という方法に拠った、経済哲学の大胆な構想です。効率や合理性の議論とは別の入口から経済を考えたい人に、代わりになるものがない一冊です。

こんな人におすすめ

経済学の前提そのものを問い直したい研究者・大学院生。思想史や解釈学に関心のある人文系の読者。効率や合理性の語りに息苦しさを感じている人。

良い点

  • 価値・歴史・精神を正面から扱う
  • 方法論としての解釈学が独自
  • 経済哲学の構想力が大きい

気になる点

  • 専門書で難度は高い
  • 具体例は少なめ
  • 通読には相当な集中力

出版社

東京大学出版会

発売日

2009年10月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

解釈学的接近という言葉が、正直ピンとこないんです。経済学に解釈学って、どう関わるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。解釈学はもともと、テキストや行為をその人の意味世界から理解しようとする方法なんだ。経済学はふつう、データから法則を立てて説明する。

でも著者は、人は何を望ましいと思うのか、その意味づけのほうから経済を捉え直そうとする。価値や歴史や精神活動を経済学の土台に据えるという発想が、この本の核だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど……。そうすると、数式で解く経済学とはだいぶ遠い場所にいる感じですね。読む前に何か準備は要りますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

哲学や思想史の素養があると入りやすいけれど、冒頭の、経済とは財貨やサービスを通じて望ましい人間や社会のあり方を実現する活動だ、という一文だけでも、しばらく考え込める。

書店員時代、こういう本は棚で埋もれがちだったから、あえて手に取りやすい位置に平積みしていたのを覚えている。急いで結論を取る本ではないよ。

「経済」の哲学: ナルシスの危機を越えて
4

「経済」の哲学: ナルシスの危機を越えて

荒谷大輔 著|せりか書房

¥2,860(税込)

4.4

この本については、書誌情報以上のことを断定的に語るのは避けたいと思います。ただ、書名が「経済」の哲学と括弧つきになっていること、副題にナルシスの危機を越えてとあること——この二つだけでも、経済を自明の枠として扱わず、自己愛や自己像の問題から問い直そうとする構えが伝わってきます。タイトルの括弧は、疑いの印です。既存の入門書にしっくりこなかった人ほど、この身構えのなさに惹かれるはずです。

こんな人におすすめ

経済学の教科書にどうしても入れなかった読者。思想や文化論の棚から経済に近づきたい人。タイトル買いで未知の議論に飛び込みたい人。

良い点

  • タイトルから問題意識が尖る
  • 254ページで挑みやすい厚さ
  • 既存の入門とは方向が違う

気になる点

  • 内容の事前情報が少ない
  • 用語の当たり外れが読めない
  • 好みがはっきり分かれる

出版社

せりか書房

発売日

2013年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「経済」の哲学って、経済に括弧がついてますよね。これ、どういう意味なんでしょう? わざわざ括弧をつけるのって、疑っている感じがします。

佐藤メバル

佐藤メバル

よく気づいたね。括弧をつけるのは、その言葉を自明のものとして使わない、という合図なんだ。経済とは何かを決めつけず、一度宙に浮かせる。

副題のナルシスの危機という言い方も、自己愛や自己像が揺らぐ場面と経済を重ねて読む構えだろうと受け取っている。

断定はできないけれど、姿勢はタイトルに出る。そういう本は、数ページ読めば自分に合うか分かるよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

たしかに、タイトルや装丁で、これは自分向けだと分かることあります。この本はどんな人が手に取るといいんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

経済学の入門書を何冊か読んで、どれも同じ顔をしているように見えてきた人かな。せりか書房は、学問の境界をまたぐ本を長く出してきた版元だから、既存の棚からはみ出す一冊として並べておきたい。

手に取った時点で半分は読めている、という種類の本だよ。

サステナビリティの経済哲学 (岩波新書 新赤版 2027)
5

サステナビリティの経済哲学 (岩波新書 新赤版 2027)

松島斉 著|岩波書店

¥1,056(税込)

4.3

宇沢弘文を継ぐゲーム理論と情報の経済学の大家が、利己的動機や評判の形成といったアプローチのドグマをあばき、サステナビリティの視点から新しい資本主義と新しい社会主義というシステム構想を打ち出します。コモンズの悲劇とオストロムの原則、センの笛、VCGメカニズムと収奪、介護とトリアージ、気候クラブ、社会的共通資本まで、新書サイズに論点がぎっしり詰まった一冊です。SDGsを標語としてしか知らない読者ほど射程の広さに驚くはずです。

こんな人におすすめ

サステナビリティやSDGsを、標語ではなく制度設計として考えたい人。企業のサステナビリティ経営に関わる実務者。宇沢弘文やオストロムの議論を学びたい学生。

良い点

  • ゲーム理論の大家による新書
  • 資本主義と社会主義を両方構想
  • コモンズ論の整理が明快

気になる点

  • 論点が多く駆け足に感じる
  • 専門用語の密度が高い
  • 結論は議論の入口になる

出版社

岩波書店

発売日

2024年8月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

サステナビリティって、最近は経済学の本でもよく見かけますけど、新書でここまで踏み込むものなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

これが思いのほか踏み込んでいるんだ。著者はゲーム理論と情報の経済学の大家で、宇沢弘文を継ぐ人。利己的動機や評判の話が経済学でどう扱われてきたかを一度剥がして、コモンズの悲劇、オストロムの原則、センの笛と進み、最後は新しい資本主義と新しい社会主義の構想まで行く。

大義を経済学の言葉で語り直す試みだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

大義、という言葉がいいですね。でも新しい社会主義と聞くと、ちょっと身構えてしまいます。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは読んでみると違うんだ。提案されているのは、グローバルコモンズのための国際協力や気候クラブ、プレッジ・レビュー・アプローチのような具体の仕組みで、思想の旗を立てる話ではない。

介護とトリアージの章なんかは、現場の切実さがそのまま論点になっている。理想論と制度論のあいだを埋めようとする本だと思って読むといい。

福祉の経済哲学:個人・制度・公共性
6

福祉の経済哲学:個人・制度・公共性

後藤玲子 著|ミネルヴァ書房

¥4,950(税込)

4.1

本来異質とされてきた福祉学と経済学の視点を交差させながら、福祉の理論的基盤と経済学の新たな方法を探る一冊です。福祉の思想と制度、そして社会的選択手続きの分析を通して、経済学的思考の可能性と拡がりを展望します。福祉を感情の言葉で終わらせず、選択の手続きとして組み立てるのが特徴で、同じ著者の分配的正義の議論と並べると、抽象と現場のつなぎ方が見えてきます。着実に積み上げるタイプの専門書です。

こんな人におすすめ

社会福祉を学びつつ経済学の道具も欲しい学生。社会保障制度の設計や評価に関わる人。社会的選択理論の応用に関心のある読者。

良い点

  • 福祉学と経済学の橋渡し
  • 社会的選択手続きを丁寧に分析
  • 思想と制度の両輪を扱う

気になる点

  • 専門的で通読は重い
  • 数理的な箇所がある
  • 事例より理論が中心

出版社

ミネルヴァ書房

発売日

2015年7月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

福祉と経済学って、なんとなく水と油な気がしていたんですけど、交差させるってどういうことなんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこを突くのがこの本だね。福祉は制度や思想の話、経済学は選択と資源配分の話として、別々に語られがち。

でも著者は、誰に何をどれだけ、をどう決めるかという手続きの設計こそ福祉の核心だと見る。社会的選択の手続きを丁寧に分析しながら、経済学的思考の射程を広げていくんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

手続き、という言い方が効いてきますね。誰がどう決めるかで、実際に届く支援の中身も変わってしまいそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そこなんだ。同じ予算でも、決め方ひとつで誰が救われるかが変わる。この本は福祉の思想史をたどりながら、その決め方の理論を組み立てていく。

同じ著者がロールズとセンを扱った本を出しているから、そちらで全体像をつかんでからこの本に入ると、議論の位置がよく見えるよ。

経済学の哲学 - 19世紀経済思想とラスキン (2011-09-25T00:00:00.000)
7

経済学の哲学 - 19世紀経済思想とラスキン (2011-09-25T00:00:00.000)

伊藤邦武 著|中央公論新社

4.1

時代に先んじてエコノミーとエコロジーを論じた思想家ラスキンを入口に、経済学という思想そのものの特徴と限界を哲学的に浮き彫りにする一冊です。新書のサイズで19世紀の経済思想をたどりながら、経済学が何を前提にして、何を見落としてきたのかを考えさせます。エコロジーという語が今ほど一般でなかった時代に、経済と自然を同じ視野で捉えていた人物がいたことを知るだけでも、読む値打ちがあります。

こんな人におすすめ

環境と経済の関係を思想史から考えたい読者。ラスキンや19世紀思想に関心のある人文系の学生。新書で気軽に経済哲学へ入りたい人。

良い点

  • 新書サイズで入りやすい
  • エコロジー先駆者という視点
  • 思想と経済の橋渡しになる

気になる点

  • ラスキン以外は薄め
  • 入門としては癖がある
  • 現代の政策論ではない

出版社

中央公論新社

発売日

2011年9月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ラスキンって、恥ずかしながら初めて聞きました。たしか美術評論の人ですよね? なぜ経済の本に出てくるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

よく引き出してくれたね。その人が、時代に先んじてエコノミーとエコロジーを論じていた——というのがこの本の入口なんだ。

エコロジーという言葉がまだ一般でなかった時代に、経済と自然を切り離さずに見ていた。経済学という思想の特徴と限界を、その対比から哲学的に浮かび上がらせる。

新書だから、まず手に取りやすいのもいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

19世紀の思想家が、今の環境問題みたいなことを見ていたんですね。この本を読むと経済学の見え方は変わりますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

変わると思うよ。経済学は何を測り、何を測らないことにしてきたのか、その線引きが見えてくる。書店員時代、環境の棚と経済の棚は離れていたけど、この本を両方の棚に置いてみたら、思いのほか動いたのを覚えている。短いけれど、視点を持ち帰れる本だよ。

自由な社会: 経済哲学入門
8

自由な社会: 経済哲学入門

藤本保太 著|多賀出版

3.9

この本も、書誌情報以上のことを断定せずに紹介します。書名は自由な社会——経済哲学入門、163ページ。自由な社会とは何か、それを経済の側から原理的に考える入門として編まれている、というところまでは確かです。入門と名乗る薄さは、往々にして、大きな問いを正面から扱う本の証拠でもあります。分厚い専門書の前の足慣らしにちょうどいい一冊です。

こんな人におすすめ

経済哲学に興味はあるが何から読むか迷う学生。講義の予習や少人数の読書会のテキストを探している人。短時間で論点の見取り図が欲しい読者。

良い点

  • 163ページで負担が軽い
  • タイトル通り論点は明快
  • 最初の一冊に向いている

気になる点

  • 詳細な議論は望みにくい
  • 参照できる情報が少なめ
  • 物足りなさは残る

出版社

多賀出版

発売日

1986年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

自由な社会って、タイトルだけでもう広いですね。経済哲学入門とついていますけど、163ページで足りるんでしょうか?

佐藤メバル

佐藤メバル

いいところを突くね。正直、163ページで自由な社会の全体を論じ切るのは無理だよ。でも入門書の役割は、答えを出すことじゃなく、論点の地図を渡すことなんだ。

薄い入門は問いの数で勝負する。ここで自由とは何かの勘所をつかんでから、後で厚い本に戻ればいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

たしかに、最初から400ページを超える本を開くと心が折れます。読書会のテキストにもよさそうですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、そういう使い方がいちばん向いている。一章ずつ担当を決めて、自由と市場の関係を話し合う。書店員時代、読書会の相談を受けると、まずこういう薄い入門を薦めていた。

全員が最後までたどり着ける本でないと、議論は続かないからね。

現代経済哲学―景気の見方におよぶ (1983年)
9

現代経済哲学―景気の見方におよぶ (1983年)

桑原晋 著|経済往来社

3.9

書名に年号が添えられている通り、1980年代に刊行された本です。副題に景気の見方におよぶとあり、景気という、ふだんは統計と実務の言葉で語られるテーマを、経済哲学の側から眺めようとする構えがうかがえます。今の本にはない時代の目線で書かれているぶん、景気をめぐる語り方がこの数十年でどう変わったかを測る物差しにもなります。古書店で出会ったら手を伸ばしたい一冊です。

こんな人におすすめ

古書店で経済思想の棚を眺めるのが好きな人。景気や経済報道の語り方に関心のある記者や編集者。経済学の現在を歴史から相対化したい読者。

良い点

  • 時代の空気ごと読める
  • 景気という切り口が珍しい
  • 205ページで短い

気になる点

  • 入手はやや難しめ
  • 内容の事前情報が少ない
  • 現在の議論ではない

出版社

経済往来社

発売日

1983年6月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

1983年の本なんですね。図書館で見かけたら借りてみようかなという感じですけど、今読む意味ってあるんでしょうか?

佐藤メバル

佐藤メバル

あると思うよ。景気って、統計の数字と実務の言葉で語られることが多いけれど、この本はそれを経済哲学の側から見ようとしている。

副題の景気の見方におよぶという言い方に、その構えが出ているね。当時の語り方を知ると、今の語り方の癖も見えてくる。

橘ナナミ

橘ナナミ

たしかに、ニュースの景気の話って、なんとなく決まった言い回しがありますもんね。40年ぶんの違いを比べる感じですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、読み方としてはそれでいい。書店員時代、古い経済書は値段がつかずに埋もれていることが多かったけど、こういう本は棚の隅に残しておくと、あとで誰かの役に立つ。

手に入れるのを前提にせず、目次だけでも見ておくといいよ。

市場経済の哲学(現代自由学芸叢書) (創文社オンデマンド叢書)
10

市場経済の哲学(現代自由学芸叢書) (創文社オンデマンド叢書)

桂木隆夫 著|講談社

3.9

優柔不断で場当たり的とみえる戦後の日本人の生き方を普遍的な言葉で語る時、市場経済は一つの社会哲学たりうる——これが本書のメッセージです。自由競争とルール、市場の理性と市民の理性、市場倫理の規範構造、フェアな競争の感覚、そして寛容の戦略まで三部構成で組み立てます。市場経済に参加することが公共的なバランス感覚を養うという主張は、市場を倫理の外側と見る通念をひっくり返します。オンデマンド版は文字拡大や検索が使えない点だけ注意してください。

こんな人におすすめ

市場と倫理を切り離したくない読者。法哲学や公共哲学に関心のある学生・研究者。日本人の生き方と市場をめぐる議論を思想史として読みたい人。

良い点

  • 市場を社会哲学として構想
  • 寛容論まで視野が広い
  • 対話形式の導入が親切

気になる点

  • オンデマンド版は検索不可
  • 文体にクセがある
  • 議論は多岐にわたる

出版社

講談社

発売日

2022年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

市場経済って、哲学になりうるんですか? どちらかというと利潤の計算の話だと思っていました。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこをひっくり返す本なんだ。著者の桂木隆夫さんは法哲学・公共哲学が専門の方で、市場経済を社会哲学として捉え直す。

自由競争とルール、市場の理性と市民の理性、フェアな競争の感覚、そして寛容論まで三部構成で組み立てていく。

市場に参加することが公共的なバランス感覚を養うという主張が軸になっているよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

参加することが倫理になる、というのが面白いですね。第一部が対話形式と聞くと、とっつきやすそうですが、実際どうですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

第一部は市場経済についての対話として書かれているから、そこで導入をつかむのがいい。ただ、オンデマンド版は紙の本のページを画像にした電子書籍で、文字の拡大や検索が使えない。

タブレットサイズの端末での閲読が推奨されているから、環境を整えてから挑むといいよ。

ルソーの経済哲学
11

ルソーの経済哲学

B.フレーデン 著|日本経済評論社

¥926(税込)

3.7

ルソーというと社会契約や教育論が先に思い浮かびますが、この本は書名の通り、彼の経済哲学に焦点を当てた研究書です。268ページ、日本経済評論社から出た一冊で、著者はB.フレーデン。経済思想史の棚にルソーを置き直すという発想そのものが新鮮で、政治思想の文脈でしかルソーを読んだことのない人ほど、見えるものが変わるはずです。内容の細部は手元の情報では断定できないので、そこは実際に開いて確かめてください。

こんな人におすすめ

ルソーを政治思想だけでなく経済から読み直したい学生。思想史の隠れた系譜をたどるのが好きな読者。比較的手に取りやすい価格で専門書に触れたい人。

良い点

  • ルソーを経済から読む視点
  • 268ページの研究書
  • 比較的手に取りやすい

気になる点

  • 翻訳書で読み味は硬め
  • 予備知識があると安心
  • 入門書ではない

出版社

日本経済評論社

発売日

2003年6月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ルソーが経済の本? 意外です。社会契約論とか教育論のイメージでした。経済の話も書いていたんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが面白いところで、この本はルソーの経済哲学に焦点を当てた研究書なんだ。著者はB.フレーデン。経済思想史の棚にルソーを置き直すという発想自体が新鮮で、政治思想の文脈でしか読んだことのない人ほど収穫がある。

細部は手元の情報では断定しないけれど、268ページのしっかりした一冊だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど。でも翻訳の研究書って、けっこう硬いですよね。読む前に何か押さえておくといいことはありますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ルソーの政治思想をひととおり知っていると入りやすいと思う。あとは経済思想史の流れ——重商主義や重農主義のあたり——を軽く眺めておくと、彼が何に反論しているのかが見えやすい。

書店員時代、翻訳書は読めなかったという声をたくさん聞いたけど、たいていは前提の確認で解決するものだったよ。

経済学の再生: 道徳哲学への回帰
12

経済学の再生: 道徳哲学への回帰

アマルティアセン 著|麗澤大学出版会

¥3,260(税込)

3.7

書名がそのまま主張です。経済学を、道徳哲学の長い伝統へ連れ戻す——アマルティア・センがそう問いかける220ページの一冊です。経済学はもともと倫理と不可分だったのに、いつから、そしてなぜ、効率と予測の学問に縮んでしまったのか。倫理学と経済学は別々の学問ではないという視点は、このあとの経済倫理学の本を読むための土台になります。薄めの翻訳書なので、最初の一冊としても手に取りやすい。

こんな人におすすめ

経済学を学び始めて、倫理の話が出てこないことに違和感を持った学生。功利主義や厚生の議論を原典側から押さえたい人。センを初めて読む読者。

良い点

  • 220ページで導入に最適
  • 書名どおり論点が明快
  • 後の倫理書の土台になる

気になる点

  • 翻訳文体は硬め
  • 具体例は多くない
  • 入門の次の一冊向き

出版社

麗澤大学出版会

発売日

2002年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

アマルティア・センって、たしかすごい経済学者、というイメージだけあって、何を書いている人かは正直よく分かっていません。

佐藤メバル

佐藤メバル

それを素直に言えるのは強いね。この本は、経済学がもともと道徳哲学と一体だったのに、いつから効率と予測の学問に縮んでしまったのか、という問いから始まる。

倫理学と経済学は別々の学問ではない——その主張を220ページで丁寧に展開する。センを最初に読むなら、これくらいの厚さがちょうどいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

再生という言葉に、期待と反省の両方が入っている感じがします。読むと経済学の見方は変わりますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

少なくとも、教科書の章立てがそういう配列になっている理由は見えてくるよ。この後、経済倫理学の入門や、市場経済を倫理から論じる本を読むことになるけれど、そのどれもがこの本の延長線上にある。

書店員時代、倫理と経済の棚をつなぐのに、まずこの一冊をあいだに置いていた。

プレップ経済倫理学 (プレップシリーズ)
13

プレップ経済倫理学 (プレップシリーズ)

柘植尚則 著|弘文堂

¥1,760(税込)

3.7

経済倫理学は最近になって始まった学問——著者自身がそう説明する通り、入門書自体が少ない分野で、最も基本的なところから紹介してくれる一冊です。経済倫理の歴史、経済倫理学の歴史、原理、そして労働・企業・市場・経済体制・福祉・環境・消費という章立てで、基礎から現代の重要テーマまで自然にたどれます。読書案内と索引つきで、次に読む本まで見通せる設計も親切です。

こんな人におすすめ

倫理と経済の両方を一冊でつかみたい初学者。大学の教養科目やゼミの指定書を探している学生。経済ニュースの倫理問題を整理したい社会人。

良い点

  • 入門の入門として明快
  • 章立てが網羅的
  • 読書案内がついている

気になる点

  • 議論は薄め
  • 各論は概要にとどまる
  • 物足りなさは否めない

出版社

弘文堂

発売日

2014年10月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

経済倫理学は最近になって始まった学問、という一文にびっくりしました。倫理と経済の関係って、もっと昔から議論されてきたのかと。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいところを読んだね。経済における倫理的な問題は昔からあったけれど、それを体系的な学問として組み立てようとする動きは新しい。

だから入門書も少ない。この本は、その少ない一冊として、歴史、原理、労働・企業・市場・経済体制・福祉・環境・消費まで章を並べてくれる。

入門の入門と名乗るだけのことはあるよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

章の並びが、そのまま現代の論点になっているのがありがたいです。読書案内つきというのも、次に迷わなくてよさそう。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、付録の読書案内と索引があると、入門書は出口になる。読み終えたあとに、この記事で扱っているような専門書へ進めるからね。

書店員時代、入門書は売り場の入口に置くより、専門書のすぐ隣に置いたほうが動いた。行き先が見えるほうが、人は買うんだよ。

現代社会と経済倫理
14

現代社会と経済倫理

永合位行 著|有斐閣

¥2,420(税込)

3.7

製造業の品質偽装、長時間労働と過労死、職場のハラスメント——新聞やニュースで見かける具体的な問題を題材に、企業・労働者・消費者それぞれに何が求められるのか、そして経済社会はどうあるべきかを考えます。抽象的な倫理の議論から入るのではなく、現実の出来事から出発するのがこの本の強みで、落ち着いた教科書的なつくりも安心です。ケースから理論へ向かうので、記憶に残りやすい。

こんな人におすすめ

企業の倫理研修やコンプライアンスの教材を探している実務者。労働やハラスメントの問題を倫理から整理したい人。事例から経済倫理に入りたい学生。

良い点

  • 具体的な出来事を題材にする
  • 企業・労働者・消費者の三方向
  • 教科書として使いやすい

気になる点

  • 理論の深掘りは控えめ
  • 事例中心で抽象度は低め
  • 入門の次に読む位置づけ

出版社

有斐閣

発売日

2018年7月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

品質偽装に過労死、ハラスメント……見出しだけでも重いですね。こういう出来事を倫理の教科書で扱うと、どうなるんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

起きたことを責めるだけでは終わらないのがこの本のいいところだよ。企業・労働者・消費者それぞれに何が求められるかを分けて考え、そのうえで経済社会のあるべき姿へ進む。

現実の出来事から出発するぶん、抽象的な倫理の本より頭に残る。研修の教材としても使いやすいだろうね。

橘ナナミ

橘ナナミ

たしかに、ニュースで見たことのある話なら、自分ごととして考えられます。読み終わったあと、何が変わりそうですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ニュースの見方が一段変わると思う。悪い人がいた、で止めず、制度やインセンティブの設計を疑えるようになる。

書店員時代、経済の棚と社会問題の棚を行き来する読者は、こういう本をよく買っていった。倫理は説教ではなく、仕組みの話でもあると気づける一冊だよ。

経済と倫理: 福祉国家の哲学 (公共哲学叢書 1)
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経済と倫理: 福祉国家の哲学 (公共哲学叢書 1)

塩野谷祐一 著|東京大学出版会

¥7,400(税込)

3.7

先に扱った経済哲学原理と同じ著者、塩野谷祐一による444ページの大著です。書名が示す通り、経済と倫理を並べ、福祉国家という制度を哲学の側から基礎づけようとする構えで、公共哲学叢書の一冊として刊行されています。福祉国家を政策の話ではなく原理の話として扱うところが、実務書との決定的な違いです。理論と制度のあいだで迷っている読者にとって、足場になる一冊です。

こんな人におすすめ

社会保障や税の再分配を原理から考えたい研究者や大学院生。福祉国家の正当化根拠を押さえたい政策担当者。著者の経済哲学を続けて読みたい人。

良い点

  • 福祉国家を哲学から基礎づける
  • 444ページの網羅性
  • 著者の原理論と対で読める

気になる点

  • 専門書で難度は高い
  • 前提となる哲学の素養が要る
  • 通読には相当な時間がかかる

出版社

東京大学出版会

発売日

2002年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

塩野谷祐一さん、さっきの経済哲学原理と同じ著者ですね。あちらは解釈学でしたが、こちらは福祉国家の哲学。

佐藤メバル

佐藤メバル

よく覚えていたね。同じ著者だけど入口が違う。あちらは経済とは何かという原理の問いを解釈学から立てた。

こちらは経済と倫理を並べ、福祉国家という具体的な制度を哲学の側から基礎づけようとする。制度を原理の側から支えるという作業が中心で、公共哲学叢書の一冊として出ている。

橘ナナミ

橘ナナミ

福祉国家って、予算や制度の話だと思っていました。哲学から基礎づける、というのはどう効いてくるんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

根拠がはっきりしていると、制度が揺らぐときに議論が崩れにくいんだ。支持を失った政策は、理由を説明できないまま縮む。

原理から押さえておくと、何を守るべきかが判断できる。書店員時代、厚い理論書は敬遠されがちだったけれど、実務書と並べると意外に売れた。

読む人が、自分の仕事の言葉を探しに来るんだよ。

経済倫理=あなたは、なに主義? (講談社選書メチエ 419)
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経済倫理=あなたは、なに主義? (講談社選書メチエ 419)

橋本努 著|講談社

¥1,760(税込)

3.5

リベラリズム、コミュニタリアニズム、リバタリアニズム、マルクス主義——錯綜する経済イデオロギーを、具体的かつ明快に解説する一冊です。説教ではなく使える倫理を学ぶ、というのが著者の構えで、あなたは何主義かと問いを書名に掲げているところが象徴的です。現代市場社会にどんな倫理があり得るのか、立場の違いを並べて比べられるので、ニュースで対立する意見の背景がつかみやすくなります。

こんな人におすすめ

経済論争の立場の違いを整理したい学生や社会人。討論やディベートの準備をする人。自分の考えがどの主義に近いか確かめたい読者。

良い点

  • 四つの立場を並べて比較
  • 選書メチエで読みやすい
  • 名前を問う構成が刺激的

気になる点

  • 各主義の深掘りは概要どまり
  • 著者の立場がにじむ
  • 原典には自分で進む必要

出版社

講談社

発売日

2008年8月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

リベラリズムとリバタリアニズムの違いが、いつもこんがらがってしまうんです。この本なら整理できますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

うん、まさにそのために書かれたような本だよ。リベラリズム、コミュニタリアニズム、リバタリアニズム、マルクス主義を、具体的かつ明快に並べて解説していく。

錯綜する経済イデオロギーの見取り図として使える。しかも説教ではない使える倫理を学ぼう、という姿勢だから、押しつけがましくない。

橘ナナミ

橘ナナミ

あなたは、なに主義? というタイトルで、いきなり問われるのがいいですね。読んでいると自分の立場が分かってくるんでしょうか?

佐藤メバル

佐藤メバル

分かるというより、揺れると思う。四つの立場それぞれに、言い分の筋が通っていると感じる瞬間があるからね。

その揺れを味わうのがこの本の使い方で、どれか一つに決めなくていい。書店員時代、思想の本は正解を教えてくれる本として買われることが多かったけど、ほんとうは地図を渡す本なんだよ。

経済学の堕落を撃つ 「自由」vs「正義」の経済思想史 (講談社現代新書 2596)
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経済学の堕落を撃つ 「自由」vs「正義」の経済思想史 (講談社現代新書 2596)

中山智香子 著|講談社

¥1,100(税込)

3.5

経済学はなぜ人間の生から乖離し、幸福に役立たなくなったのか——その堕落の跡をたどり、再生の可能性を探る一冊です。科学的客観性やヴァリューフリーを標榜していつしか心を失った経緯を、19世紀後半ドイツの科学化の動き、ハイエク、ゲーム理論、シカゴ学派、そしてクズネッツ曲線をめぐる新自由主義の欺瞞まで、思想史として描きます。自由と正義の相克という軸で、ポランニーやイリイチ、世界システム論の側も同時に見渡せる構成が強みです。

こんな人におすすめ

経済学の講義に違和感を持った学生。経済思想史を新書で一気に押さえたい読者。経済報道や政策論の背景を知りたい記者や編集者。

良い点

  • 新書で思想史を一望できる
  • 自由と正義の対立軸が明快
  • 反対陣営も丁寧に扱う

気になる点

  • 人名が多く追いにくい
  • 論調ははっきり強め
  • 細部は原典で確認が必要

出版社

講談社

発売日

2020年11月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

経済学の堕落を撃つ、ってタイトルがかなり強いですね。ここまで言い切る本は珍しい気がしますが、本当に堕落してるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

タイトルは挑発的だけど、中身は思想史として真面目だよ。19世紀後半ドイツの科学化の動きから、ハイエク、ゲーム理論、シカゴ学派、クズネッツ曲線をめぐる新自由主義まで、どう心が失われたかを順に追う。

自由と正義の相克という軸で、ポランニーやイリイチ、世界システム論の側も同時に見せてくれる。

橘ナナミ

橘ナナミ

両方の陣営を並べるんですね。それなら、どちらかの肩だけを持つ本より、公平に読めそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の使いどころだね。現代新書の288ページだから、通勤や通学の合間に読み進められる。書店員時代、こういう問題提起型の新書は、平積みにすると強い。

ただし人名が多く出てくるから、メモを取りながら読むと迷子にならないよ。

功利主義は生き残るか: 経済倫理学の構築に向けて
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功利主義は生き残るか: 経済倫理学の構築に向けて

松嶋敦茂 著|勁草書房

¥4,030(税込)

3.5

書名は問いの形をしています。功利主義は生き残るか——そして副題に経済倫理学の構築に向けてとある通り、功利主義を経済倫理学の土台として組み直せるかを検討する289ページの一冊です。最大多数の最大幸福という原理は、経済学の効用の考え方と深く関わってきました。その遺産を捨てるのか、手直しして使うのか。経済学と倫理を同時に考えたい読者にとって、避けて通れない論点が並びます。

こんな人におすすめ

功利主義を思想史としてだけでなく理論として知りたい大学院生。厚生経済学や費用便益分析の倫理的前提を考えたい人。経済倫理学の教材を探す教員。

良い点

  • 功利主義を正面から問い直す
  • 経済倫理学の構築をめざす
  • 堅実な学術専門書

気になる点

  • 内容の事前情報は限られる
  • 専門的で難度は高め
  • 入門書ではない

出版社

勁草書房

発売日

2005年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

功利主義って、もう過去の思想だと思っていました。生き残るか、という問いかけが気になります。今でも議論されているんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

その問いの立て方がこの本の勘所だね。最大多数の最大幸福という原理は、経済学の効用の考え方と深く関わってきた。

それを捨てるのか、手直しして使うのか——副題に経済倫理学の構築に向けてとある通り、土台として組み直せるかを真剣に検討する。

問いを残したまま進むのが誠実な本だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

たしかに、道徳の話と経済の計算が同じ言葉を使っているのは不思議です。この本は前提知識がどのくらい要りますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

倫理学の基礎用語と、経済学の効用の考え方を知っていると入りやすい。内容の細部は手元の情報だけでは断定しないけれど、289ページの専門書として功利主義の現在を正面から扱っている一冊だ。

書店員時代、勁草書房の棚はいつか読む本の棚だった。いつかを今日にすると、景色が変わるよ。

ミクロ経済分析[第2版]―利益と共感の社会哲学―
19

ミクロ経済分析[第2版]―利益と共感の社会哲学―

佐々木浩二 著|創成社

¥2,530(税込)

3.5

よりやさしく、より深く、を掲げて初版を大幅改訂した160ページのミクロ経済学です。iPhone、お掃除ロボ、Google、公園、東京駅周辺の再開発、中古車、就職活動、物言う株主——身近な例で論点を紹介し、数式をほぼ使わずに、完全競争、独占、寡占、公共財、ピグー税、コースの定理、逆選択、スクリーニング、不完備契約、市場と組織の境界までおおづかみにできます。計算のしかたではなく、社会の見方を身につけるための本です。

こんな人におすすめ

経済学部に入ったが計算ばかりで幻滅した学生。公務員試験や資格試験の準備で論点を整理したい人。教養として経済学に触れたい社会人。

良い点

  • 数式をほぼ使わない入門
  • 身近な例が豊富
  • 思想の物語としても読める

気になる点

  • 計算問題の対策にはならない
  • 160ページの詰め込み密度
  • 理論の証明は省かれる

出版社

創成社

発売日

2023年9月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

数式をほぼ使わずにミクロ経済学の論点が紹介できるんですか? 私、学部のとき計算で挫折した記憶があるので気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこを救いにいく本だね。iPhone、お掃除ロボ、公園、東京駅周辺の再開発、就職活動、物言う株主——身近な例で論点が並ぶ。

完全競争、独占、公共財、ピグー税、コースの定理、逆選択、シグナリング、不完備契約、市場と組織の境界までおおづかみにできる。

身につけるべきは計算ではなく社会の見方、というのが著者の言葉だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

それはありがたいです。高校生や、はじめて経済学を学ぶ大学生にも向いていると書いてありますね。思想の話にも触れるんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

触れるよ。マキアヴェリ、ホッブズ、ロック、ヒューム、ベンサムといった人たちが何を見て何を考えたかを追いながら、スミスやマーシャル、ピグーらの理論と交錯させる。

経済学を西洋思想の物語として読む構成になっている。書店員時代、経済学部の新入生に薦める本として、この手の薄い入門は重宝した。

経済倫理学のすすめ: 感情から勘定へ (中公新書 950)
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経済倫理学のすすめ: 感情から勘定へ (中公新書 950)

竹内靖雄 著|中央公論新社

3.5

副題の感情から勘定へ、という言い方がこの本の主題をよく表しています。倫理は感情の領域、経済は計算の領域——そう分けてしまうのではなく、感情から出発して勘定の世界へどう橋をかけるかを考える242ページの新書です。説教ではなく分析として倫理を扱うのがこのシリーズらしいところで、経済と倫理の関係を短い距離で見渡したいときの入口になります。詳細は手元の情報では断定できないので、実際に開いて確かめてください。

こんな人におすすめ

経済と倫理を新書でざっと押さえたい社会人。感情と計算の対比という切り口に関心がある読者。経済倫理学の古典的な入門を読み継ぎたい人。

良い点

  • 中公新書で手に取りやすい
  • 副題の切り口が明快
  • 242ページと短め

気になる点

  • 内容の事前情報が少ない
  • 入門でも前提知識は要る
  • 読者を選ぶ文体

出版社

中央公論新社

発売日

1989年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

副題の感情から勘定へ、が妙に刺さります。倫理って感情の話で、経済って数字の話、という対比ですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、その橋をどうかけるかが主題だと思う。感情の領域にある倫理を、勘定の世界と切り離さずに考えていく。

説教ではなく分析として倫理を扱うのがこの新書らしいところで、経済と倫理の関係を短い距離で見渡せる。

細部は手元の情報では断定しないけど、入口としては頼れる一冊だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

中公新書のサイズ感なら通学の電車でも読めそうです。読むときに、何か補っておくといいものはありますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

経済学史の流れを軽く眺めておくと、著者がどの議論と向き合っているかが分かりやすい。あとは、この記事で扱っているような経済倫理学の入門書を並べて読むと、同じ論点が世代をまたいで繰り返されているのが見えてくる。

書店員時代、新書はつなぎ役として棚に置くのがうまい売り方だった。

アマルティア・セン講義 経済学と倫理学 (ちくま学芸文庫 セ 5-1)
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アマルティア・セン講義 経済学と倫理学 (ちくま学芸文庫 セ 5-1)

アマルティア・セン 著|筑摩書房

¥1,210(税込)

3.5

経済学は人を幸福にできるか——多大な学問的・社会的貢献で知られるセンが、その思想の根本を平明に説いた講義です。ちくま学芸文庫で240ページ、書名どおり経済学と倫理学をひとつながりに扱います。当代随一の経済学者自身の言葉で骨格をつかめるので、先に翻訳書で全体像を眺めてから、この講義で論点を確かめる順番が効率的です。文庫なので、手元に置いて何度も戻ってこられるのも助かります。

こんな人におすすめ

センを原典側から読み始めたい学生。倫理学と経済学の関係を短い単位で押さえたい読者。文庫で通学中に読み進めたい人。

良い点

  • 文庫で手に取りやすい
  • セン自身の講義という形
  • 240ページで要点がつかめる

気になる点

  • 講義録なので整理は自分で
  • 前提となる用語はある
  • 入門書の代わりにはならない

出版社

筑摩書房

発売日

2016年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

またセンさんですね。さっきの経済学の再生と、この講義はどう使い分ければいいんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい順番を聞いてくれたね。経済学の再生で経済学と倫理学の関係の全体像をつかんでから、この講義で骨格を確かめる。

書名どおり経済学と倫理学をひとつながりに扱い、経済学は人を幸福にできるかという根本を平明に説く。セン自身の言葉で読めるのが何より大きいよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

文庫で240ページなら通学の電車でも読めそうです。講義の形なので、読み物としても引き込まれますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

講義の形は、本に書き下ろすよりずっと声が残る。読者は教室の席に座った気分で読めるよ。ただし講義録だから、論点の整理は自分でする必要がある。

章立てを頼りに、気になったところへ戻る読み方が向いている。書店員時代、文庫の思想書は何度も戻る本として売れていた。一度読んで終わりにしないのがコツだよ。

負債と贈与の経済学 商品に抗するアナキズム (講談社選書メチエ)
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負債と贈与の経済学 商品に抗するアナキズム (講談社選書メチエ)

大黒弘慈 著|講談社

¥2,640(税込)

3.5

給料は上がらず物価は上がり、老後の不安は個人の資産運用にすり替えられる。人間関係の疲弊と環境破壊まで含めて、これらは絡み合った複合的な危機だ——本書はその息苦しさの正体を、資本の統治のメカニズムとして探究します。負債が私たちを未来に縛りつけ、人間社会の基盤だった贈与の回路を壊す。資本主義の終焉か、人間の終焉か、という二者択一を否定し、価値のシステムそのものを問い直す一冊です。

こんな人におすすめ

新自由主義や負債の問題を思想から考えたい大学院生。マルクスやグレーバーを読み込んできた読者。経済の不安を個人の問題にしない視点が欲しい人。

良い点

  • 負債と贈与の対抗軸が明快
  • 416ページの徹底した思索
  • 現代の不安を正面から扱う

気になる点

  • 難解で時間がかかる
  • 人名や概念が頻出する
  • 結論より過程が長い

出版社

講談社

発売日

2026年11月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

負債と贈与、対になる言葉として並べられると、ちょっと不思議な感じがします。贈与って、お返しを求めるものでもあるのに。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の面白いところだね。資本の統治は負債によって私たちを未来に縛りつけ、人間社会の基盤だった贈与の回路を壊していく。

著者はそれを資本の統治術として分析し、資本主義の終焉か、人間の終焉かという二者択一を否定するところから考える。

負債の論理に贈与の論理を対抗させるのが軸だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど……。老後の不安が個人の資産運用にすり替えられる、というのは、まさにそうだなと感じます。これは学部生にも読めますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

416ページあるから、軽い気持ちで開くと押し流されるよ。マルクスやグレーバー、プルードン、ラトゥールあたりの名前が出てくるので、予習があると格段に読みやすい。

数式ではなく概念の圧で進む本だから、一章ずつ時間をかけて読むといい。書店員時代、こういう本は積読前提で売れたけど、積むなら読む順番を決めてからにしたほうがいい。

科学哲学から見た実験経済学
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科学哲学から見た実験経済学

フランチェスコグァラ 著|日本経済評論社

¥6,184(税込)

3.5

経済学の大きな発展分野である実験経済学について、それを支える実験アプローチの有効性と限界を、科学哲学の立場から論じる包括的な論考です。方法論からの実験経済学入門にもなっているので、実験の結果だけを追うのではなく、実験で何が言えて、何が言えないのかを考えたい読者に向きます。行動経済学や実証研究の論文を読むときの判断基準が、ここで手に入ります。

こんな人におすすめ

行動経済学の実験結果をどう受け取るか迷う学生。研究の方法論を固めたい大学院生。実験経済学の論文を査読・紹介する立場の研究者や編集者。

良い点

  • 実験経済学を哲学から検証
  • 方法論の入門にもなる
  • 先行研究の整理が広い

気になる点

  • 難度は高め
  • 実験の実践手順は扱わない
  • 専門用語が多い

出版社

日本経済評論社

発売日

2013年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

実験経済学って、実際に人が集まってゲームをやるんですよね。それに科学哲学から見るって、どういうことなんでしょう?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。実験で測れることには限りがあるのに、その結果が人間はこうだ、という主張に飛躍することがある。

この本は、実験アプローチの有効性と限界を科学哲学の立場から検証し、方法論からの入門書としても使えるように書かれている。

実験の結果を読む前に、実験で何が言えるのかを学べるわけだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

たしかに、心理学の実験の話を読んでいても、これがどこまで一般化できるのかな、と思うことはあります。記事で引用するときも迷います。

佐藤メバル

佐藤メバル

その迷いは大事にするといい。書店員時代、行動経済学の本が流行ったときに、同じ実験が本によって違う結論に使われているのを見たことがある。

だから記事で紹介するときは、いつも実験の条件に戻って確認していた。この本があると、その手間の意味がはっきりする。

長いけれど、研究者にとっては地図になるよ。

哲学と経済学から解く世代間問題 経済実験に基づく考察
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哲学と経済学から解く世代間問題 経済実験に基づく考察

廣光俊昭 著|日本評論社

¥5,940(税込)

3.5

異なる世代の人々の利害をいかに調整するか——年金、財政、気候変動まで貫くこの問いを、哲学で概念化し、経済学で展開し、実験で検証する272ページです。責務としての世代間倫理とその問題点、互恵性、カントの定言命法を通じた協力、時間割引と道徳律の相互矛盾、そしていまだ生まれざる者を道具としないこと。哲学・経済学・実験の三段構えで一つの問いに挑む構成は、類書にあまりない形です。

こんな人におすすめ

年金や財政、気候変動を倫理から考えたい大学院生や研究者。世代間の公平を扱う政策担当者。実験で規範理論を検証することに関心がある人。

良い点

  • 哲学・経済学・実験を接続
  • 章立てが明快で追いやすい
  • 財政と気候に一般化する

気になる点

  • 専門的で前提知識が要る
  • 実験の詳細は章による
  • 入門書ではない

出版社

日本評論社

発売日

2022年9月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

世代間問題って、年金とか気候変動とか、ニュースで見るテーマですよね。それを哲学と経済学と実験で解く、というのが想像しにくいんですけど。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこを一本の筋にするのがこの本だよ。まず哲学で概念化する——責務としての世代間倫理には限界があるから、互恵性に注目する。

次に経済学で展開し、最後に経済実験で検証する。カントの定言命法を通じた世代間協力、時間割引をめぐる道徳律の相互矛盾、そしていまだ生まれざる者を道具としないことまで進む。

三段構えで一つの問いに向き合う構成だ。

橘ナナミ

橘ナナミ

時間割引の話は、つい将来を軽く見てしまう自分のことみたいで気になります。道徳律の相互矛盾というのも気になりますね。

佐藤メバル

佐藤メバル

ケネス・アローが指摘したその矛盾から、平等処遇原則と両立できる時間割引を考えていく章は読みどころのひとつだね。

財政の実験では、長期の財政問題の解決に向けて考慮すべき点を七つに整理し、気候変動など複数世代に関わる政策全般へ一般化する。

書店員時代、年金の本と哲学の本は別の棚だった。橋をかけるのは、いつも誰かが手でやる仕事なんだよ。

ケインズの哲学と『一般理論』
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ケインズの哲学と『一般理論』

牧野裕 著|日本経済評論社

¥8,800(税込)

3.5

正統か異端か——ケインズの蓋然性論から一般理論へと至る思索活動を詳細に跡づけ、期待と不可実性の経済学がどう創造されたのかを明らかにする392ページの研究書です。一般理論だけを読むと唐突に見える概念が、確率と不確実性をめぐる哲学的な考察から生まれていると分かる。経済学史の本でも哲学の本でもある、二重の読み方ができる一冊です。

こんな人におすすめ

一般理論を読んだが腑に落ちない箇所がある大学院生。ケインズの確率論に関心のある研究者。不確実性をめぐる経済学の基礎を思想史から押さえたい人。

良い点

  • 蓋然性論から跡づける独自性
  • 期待と不可実性が軸になる
  • 392ページの詳細な検討

気になる点

  • 専門書で難度は高い
  • 前提となる経済学の知識が要る
  • 通読には相当な時間がかかる

出版社

日本経済評論社

発売日

2025年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ケインズの哲学、という見出しに惹かれました。経済学者なのに哲学、というつながりが気になります。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の核心だね。ケインズは一般理論より前に蓋然性論という、確率と不確実性をめぐる著作を書いている。

この本はその思索活動を詳細に跡づけて、期待と不可実性の経済学がどう生まれたかを明らかにする。正統か異端かという問いを軸に、理論が組み上がっていく過程を追う392ページだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

期待と不可実性って、聞き慣れない組み合わせです。ふつうの経済学の本を読んだだけでは分からない世界なんでしょうか?

佐藤メバル

佐藤メバル

一般理論だけを読むと唐突に見える概念が、実は哲学的考察から出てきたと分かる。だから経済学史としても哲学の書としても読める。

ただし厚い専門書だから、ミクロ・マクロの基礎とケインズの時代背景くらいは頭に入れてから挑むといい。書店員時代、こういう本はいつか読む棚に積まれがちだった。そのいつかを今日にしてみるのもいいよ。

「自由」と「正義」——思想史の地図に本を置く

橘ナナミ

橘ナナミ

さっき「外から経済学を見る本」という話がありましたが、そういう本は思想史の流れで並べるとどう見えますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

アダム・スミスからマルクス、ケインズ、ハイエク、そして行動経済学へ——という一本の線を頭に置くと、個々の本が点ではなく線で見えてくる。その線上で「自由」と「正義」がどう綱引きしてきたかを描くのが中山智香子『経済学の堕落を撃つ 「自由」vs「正義」の経済思想史』だ。19世紀後半ドイツで始まった経済学の「科学化」、ハイエク、ゲーム理論、シカゴ学派へと至る脱倫理化の強化、そして「クズネッツ曲線」をめぐる新自由主義の欺瞞。その一方で、ポランニー、イリイチ、ウォーラーステインらが社会的公正の理念の復権を模索した流れまでを追っている。

橘ナナミ

橘ナナミ

新書でそこまで行けるんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが読みどころだね。同じ線の上に、ルソーを入口にする B.フレーデン『ルソーの経済哲学』や、資本の統治を「負債」と「贈与」から読み解く大黒弘慈『負債と贈与の経済学』を置くと、経済を「人間関係と道徳の学」として見る視線が補える。西洋の理論だけでなく、石田梅岩の心学や渋沢栄一の経営哲学といった日本の系譜を並べてみると、日本語で読める独自の教養軸が見えてくるよ。

「経済学的な説明とは何か」——方法論と倫理のあいだ

橘ナナミ

橘ナナミ

方法論の本って、正直いちばん縁遠いんですけど、読む価値ありますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

ある。経済学の議論が噛み合わないとき、原因は結論ではなく「何を説明とみなすか」の違いだったりする。『経済学の哲学入門』は選好の諸公理、顕示選好理論、期待効用理論、ゲーム理論と帰結主義、損失回避やフレーミングといった選択の心理学、そして厚生経済学までを一章ずつ進む。第2部が「選好、厚生、規範経済学」になっている構成そのものが、事実の説明と価値判断がどこで繋がるかを教えてくれる。科学哲学の側からは、グァラ『科学哲学から見た実験経済学』が方法論の土台を支える。

橘ナナミ

橘ナナミ

倫理の側からは、どの本が橋をかけてくれますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

功利主義は生き残るのかと正面から問う松嶋敦茂『功利主義は生き残るか』、感情から勘定へという視点で整理する竹内靖雄『経済倫理学のすすめ』、品質偽装や長時間労働、職場のハラスメントを題材に企業・労働者・消費者の行動を考える永合位行『現代社会と経済倫理』。さらに、経済学は人を幸福にできるのかと平明に説く『アマルティア・セン講義 経済学と倫理学』(ちくま学芸文庫)、その議論を世代間の問題へ延ばし、哲学で概念化し、経済学で展開し、実験で検証する廣光俊昭の一冊まで並べると、倫理と経済学の橋はかなり太くなる。

挫折しない読書順と書誌リテラシー

橘ナナミ

橘ナナミ

結局、順番はどう組めばいいんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

3段ロケットで考えよう。1冊目は前提を疑う入門——『プレップ経済倫理学』か『サステナビリティの経済哲学』。2冊目で骨組みを作る——『経済学の哲学入門』か『正義の経済哲学』。3冊目で大著や原典に挑む。このとき、翻訳で読むか原書に当たるかを選ぶことになる。『経済学の哲学入門』は原著がケンブリッジ大学出版の本で、巻末に監訳者あとがき「経済を哲学するために」が置かれているから、訳書のどこが補助線なのかも見えるんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

書誌って、そこまで見るんですね……。私、表紙で買っちゃいます。

佐藤メバル

佐藤メバル

それで失敗した経験なら、書店員時代に山ほどあるよ。文庫化されているか、オンデマンドか、電子版が読みやすいか。たとえば『市場経済の哲学』はオンデマンドで電子版が画像形式だから、文字を拡大できない前提で読むことになる。買う前に「どの形で読むか」まで決める。これだけで積読が一つ減るんだ。

よくある質問

経済学の本は何から読めばいいですか?初心者におすすめの1冊目は?

橘ナナミ

橘ナナミ

経済学の本は何から読めばいいですか?初心者におすすめの1冊目はについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

経済と倫理の境目から入るなら『プレップ経済倫理学』(柘植尚則)が「入門の入門」を掲げていて、労働・企業・市場・福祉・環境・消費まで順に進めます。巻末の読書案内と索引を使えば、次の一冊を自分で選べるようになります。数式に抵抗があるなら、身近な例だけで論点を紹介する『ミクロ経済分析[第2版]』(佐々木浩二)から始めるのも手です。自分の関心が「仕組み」か「善し悪し」かで選ぶと迷いません。

哲学の本は難しくて挫折しがちです。初心者でも読める入門書はありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

哲学の本は難しくて挫折しがちです。初心者でも読める入門書はありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

厚い哲学書に挑む前に、経済と倫理の基本的なところから紹介する『プレップ経済倫理学』や、新書で全体像をつかめる『サステナビリティの経済哲学』(松島斉)を挟むと挫折しにくくなります。ページ数の少ない入門としては、163ページの『自由な社会 経済哲学入門』(藤本保太)も選択肢です。短い本で地図を持ってから厚い本へ進むのが結局は近道です。

経済学と哲学の本は、どちらを先に読むべきですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

経済学と哲学の本は、どちらを先に読むべきですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

順番そのものより、「経済学の内側から外を見る本」と「外から経済学を見る本」を交互に読むのがおすすめです。たとえば『経済学の哲学入門』は選好や厚生という経済学の内側の概念を哲学的に検証し、『経済学の哲学 19世紀経済思想とラスキン』(伊藤邦武)や『正義の経済哲学』(後藤玲子)は外側から経済学の前提を問います。内と外を往復すると、どちらか一方だけを読むより理解が定着します。

ビジネスや経営に役立つ「経済哲学」の本はどれですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

ビジネスや経営に役立つ「経済哲学」の本はどれですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

まず『経済倫理=あなたは、なに主義?』(橋本努)。リベラリズム、コミュニタリアニズム、リバタリアニズム、マルクス主義という立場の違いを明快に整理してくれるので、自分の判断がどこに立っているかが見えます。実務に近い題材なら、品質偽装や長時間労働、ハラスメントを素材に企業・労働者・消費者の行動を考える『現代社会と経済倫理』(永合位行)が向いています。立場を自覚することが意思決定の精度につながります。

経済思想史を体系的に学ぶには、どの本から読めばいいですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

経済思想史を体系的に学ぶには、どの本から読めばいいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

『経済学の堕落を撃つ 「自由」vs「正義」の経済思想史』(中山智香子/講談社現代新書)が入口として優れています。19世紀後半ドイツの経済学「科学化」からハイエク、ゲーム理論、シカゴ学派、クズネッツ曲線をめぐる議論まで、経済学の歩みを「自由」と「正義」の相克として描きます。そこからルソーを扱う『ルソーの経済哲学』や『負債と贈与の経済学』(大黒弘慈)へ広げると、批判の系譜も見えてきます。新書で骨格をつかんでから専門書へ進む順序が安全です。

マンガや図解でわかる経済・哲学の入門書はありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

マンガや図解でわかる経済・哲学の入門書はありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

このテーマの一覧には漫画形式のものは多くありませんが、代わりに図解や身近な例で進む本があります。『ミクロ経済分析[第2版]』はiPhone、お掃除ロボ、Google、駅前の再開発などを例に、数式をほぼ使わずに自由市場、公共財、逆選択、シグナリングといった論点を紹介します。物語や対話の形が好きなら、『市場経済の哲学』(桂木隆夫)が「市場経済についての対話」から始まる構成です。文章が苦手でも入口は選べます。

文庫や新書で手軽に読める経済哲学の本を教えてください。

橘ナナミ

橘ナナミ

文庫や新書で手軽に読める経済哲学の本を教えてください。について教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

新書では『サステナビリティの経済哲学』(岩波新書)、『経済学の堕落を撃つ 「自由」vs「正義」の経済思想史』(講談社現代新書)、『経済倫理学のすすめ』(竹内靖雄/中公新書)、『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社選書メチエ)。文庫なら『アマルティア・セン講義 経済学と倫理学』(ちくま学芸文庫)があります。まず新書で一冊、通勤や休憩の時間で読めるものを選ぶのが続けるコツです。

資本論やケインズ、ハイエクなどの古典は、どの入門書から入るのがよいですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

資本論やケインズ、ハイエクなどの古典は、どの入門書から入るのがよいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

ケインズなら、『蓋然性論』から『一般理論』への思索活動を跡づける『ケインズの哲学と『一般理論』』(牧野裕)が本格的な入口になります。ハイエクや新自由主義の流れは『経済学の堕落を撃つ』で思想史として追え、プルードンとマルクスを対比させるなら『負債と贈与の経済学』が面白い。原典の前に、その人が何を問うたのかを知る一冊を挟むと、古典のハードルはぐっと下がります。

まとめ

橘ナナミ

橘ナナミ

今日の話でいちばん残ったのは、「経済学が預けた荷物を取りにいく」という言い方でした。私、院でメディア論をやっていて、モデルやデータで説明できることだけを説明とみなす癖がついていた気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

それはいいところに気づいたね。研究でも同じで、統計で説明できる範囲を広げるのは強い。でも、その外側に何が残るかを知らないと、説明できないものを無かったことにしてしまう。哲学は、その「残り」を扱う道具だと思えばいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

残り、かあ。ひとり暮らしで毎月の家計を見ていると、数字だけの判断って味気ないなと思うこともあって。「高いから買わない」ではなく、何のために使うお金なのかを考えたいなって。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそれが経済哲学の入口だ。選好は与えられるものではなく、作られていくものでもある。今日挙げた本はどれも、その作られ方を問い続けている。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、まず1冊選んでみます。棚の前で、経済学の内側から見るか、外から見るかを考えながら。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいね。経済哲学の本は、目的地を指し示す地図ではないんだ。むしろ方位磁針に近い。いま自分がどっちを向いて立っているのかを教えてくれる。焦らず、一枚ずつ重ねていこう。

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Editorial Team

編集に関わる専門家