実験経済学の本のおすすめ人気ランキング17選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
「実験経済学」という言葉は聞いたことがあるんですけど、実際は何をしている学問なんですか? 経済学に実験があるというのが、まだうまく想像できなくて。
佐藤メバル
いい質問だね。ひと言でいえば、実際の人間を被験者にして、実験室で経済理論を検証する分野だよ。かつては「経済学は物理や化学のように実験できない」と考えられていた。その常識を覆してこの分野を確立したのがヴァーノン・スミスで、その業績により2002年にノーベル経済学賞を受賞している。ロス・M・ミラー『実験経済学入門~完璧な金融市場への挑戦』は、スミスが市場実験の手法を確立していく過程をたどりながら、実験室でバブルや暴落を再現できる仕組みを解説した本だよ。
橘ナナミ
暴落まで実験室で再現できるんですか。では行動経済学とは何が違うんでしょう?
佐藤メバル
ここは混ざりやすいところだね。実験経済学は「実験という手法」、行動経済学はそこから得られた知見という住み分けで捉えると整理しやすい。亀井憲樹『はじめての実験経済学』にも、実験結果の蓄積が行動経済学に直結し、両者が密接に関わりながら発展してきたと書かれている。両者の研究成果と相違点をテーマごとに並べてくれるのが、和田良子『実験経済学・行動経済学15講』だよ。
橘ナナミ
なるほど。でも、いきなり専門書はハードルが高そうです。私のような初心者はどこから入ればいいんでしょうか。
佐藤メバル
亀井憲樹『はじめての実験経済学』は経済学の予備知識は不要とうたっていて、実験の設計で考慮すべき点から、競争市場、資産市場とバブル、囚人のジレンマ、公共財、交渉と信頼まで事例を追いながら学べる。もっと軽い入口なら、二本杉剛『プレステップ経済学―経済実験で学ぶ』で、大学生4人の物語を追いながら教室でできる経済実験を体験できるよ。
橘ナナミ
物語から入れるのは嬉しいです。数学はどのくらい必要になりますか?
佐藤メバル
選ぶ本で差が大きい。川越敏司『実験経済学』は方法論的基礎から社会的選好や学習理論、行動ゲーム理論まで踏み込む本邦初の本格的テキストで、ミクロ経済学の基礎があると心強い。実験データの分析まで進むと、ピーター・G・モファット『経済学のための実験統計学』のように、実験計画法から有限混合モデルまで扱い、統計ソフトウェアSTATAのプログラム例まで示す本が必要になってくる。
実験経済学の本の選び方
目的別に選ぶ
橘ナナミ
目的別だと、どう分ければいいですか?
佐藤メバル
全体像をつかむなら亀井本かミラー本、大学の授業対策なら二本杉本や和田本、研究・論文執筆なら『実験経済学: 研究と実践の手引き』、ビジネス・政策応用なら依田高典『データサイエンスの経済学』が対応する。目的が決まれば候補は一気に絞れるよ。
レベル別に選ぶ
橘ナナミ
レベル別だとどうでしょう?
佐藤メバル
完全初心者は亀井本かプレステップ本。経済学部生なら下村研一『実験経済学入門』のようなコンパクトな入門や、小川一仁『実験ミクロ経済学』——ミクロ経済学の基礎的な概念を実験を通じて学べる教科書だね。大学院生・研究者なら川越本や『実験経済学: 研究と実践の手引き』になる。
形式別に選ぶ
橘ナナミ
読み物か教科書か、という違いもあるんですか?
佐藤メバル
あるよ。読み物として楽しむならスミスの物語をたどるミラー本やストーリー仕立てのプレステップ本、体系的に学ぶなら和田本や下村本。手を動かすワークブック的に使うなら西野成昭『マルチエージェントのための行動科学』で、NetLogoを使って実験と同じ状況のシミュレーションを自分でプログラミングできる。
必要な数学・統計の前提知識で選ぶ
橘ナナミ
数学が苦手な人はどの本を選べばいいでしょう?
佐藤メバル
亀井本は予備知識不要をうたっているから安心していい。逆に川越本はミクロ経済学の基礎があると読みやすく、データ分析まで踏み込むならモファット本の統計の装備が要る。自分の現在地から一段上を目指す選び方がいい。
理論を読むのか、自分で実験するのか
佐藤メバル
理論の検証に関心があるなら川越本、方法論を哲学から考えたいならフランチェスコ・グァラ『科学哲学から見た実験経済学』。自分で実験を設計したいなら『実験経済学: 研究と実践の手引き』が、計画から実施、データ分析に至るプロセスを詳述しているよ。
日本語の翻訳書・入門書か、原著・英語文献か
橘ナナミ
英語の本も視野に入れるべきでしょうか?
佐藤メバル
邦語の入門書で骨格を作ってからでいい。ただ『実験経済学: 研究と実践の手引き』は Experimental Economics: Method and Applications の全訳だし、モファット本やグァラ本も翻訳。翻訳で読める範囲を押さえ、論文や原著で補うのが現実的だね。
実験経済学の本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、17冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
実験経済学の本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

はじめての実験経済学: やさしくわかる意思決定の特徴
亀井憲樹 著|オーム社
¥3,520(税込)
「経済学の予備知識は不要」と明言された、実験経済学の入門決定版。競争市場のメカニズムから資産市場のバブル、ゲーム理論、公共財供給、交渉、労働・組織、政治経済学まで、実験が適用された事例を11章にわたって紹介する。行動経済学と実験経済学が密接に関わりながら発展してきた流れも見える。特筆すべきは実験の適用限界まで書いている点で、理論の万能感を戒めながら読ませる誠実さがある。324ページの教科書でありつつ、経済学を専門としない社会人が意思決定を学ぶのにも向く。
こんな人におすすめ
経済学を専門としない社会人が意思決定の仕組みを学びたいとき、大学で実験経済学の教科書を探しているとき、行動経済学の土台を予備知識ゼロから知りたいときに。11章を順に追えば、実験経済学の全体地図が頭に入る。
良い点
- 予備知識なしで読み始められる
- 市場から政治まで11章の網羅性
- 実験の適用限界まで正直に書く
気になる点
- 324ページで通読は骨が折れる
- 利得表や数式が苦手だと重い
- 入門書としては価格が高め
出版社
オーム社
発売日
2024年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「実験経済学」って言葉は聞くんですが、そもそも経済学って実験できるものなんですか? 物理や化学ならまだしも、人の行動を実験室で再現するなんて想像がつきません。
佐藤メバル
いい質問だね。昔は「経済学は実験できない」と本気で信じられていた。それを覆したのが実験経済学で、実際の人間に被験者になってもらって、市場やゲームのルールを設計し、意思決定を観察する。
この本は経済学の予備知識なしで読めるように書かれていて、競争市場の実験からバブル、ゲーム理論、公共財、交渉、労働、政治まで11章で地図を描いてくれる。
しかも実験の適用限界まで正直に書いてあるのがいい。
橘ナナミ
適用限界まで書いてある本って、逆に信頼できますね。でも11章もあると、初学者が最後までたどり着けるか心配になります。
佐藤メバル
324ページあるからね、通読には覚悟がいる。ただ、各章が「実験デザイン→結果→そこから何が言えるか」の型で揃っているから、興味のある章から拾い読みしても迷子にならない。
行動経済学の土台を知りたい人が、予備知識ゼロから最初の一冊にするなら、これ以上に親切な入門はなかなかないと思うよ。

プレステップ経済学―経済実験で学ぶ (プレステップシリーズ 16)
二本杉剛 著|弘文堂
¥1,980(税込)
4人の大学生が恋愛や就活に悩みながら、生活の中に隠れた経済のしくみに気づいていくストーリー仕立ての入門テキスト。読み物として面白いだけでなく、ゲーム感覚で楽しめる経済実験が5点、実施要項と充実した研究データ付きで用意されているのが強み。グラフを描いたり表を埋めたりする書き込み式の課題も各章にあり、知識の定着まで面倒を見てくれる。160ページと薄く、基礎から将来の可能性まで見通せる。
こんな人におすすめ
大学の講義で経済学を学ぶ学生、教室で実験を試したい教員、理論の名前は知っているけれど実感がない人に。短いストーリーを追うだけで、抽象的な理論が体でわかるようにできている。
良い点
- 実験5点と提出用シート付き
- 書き込み課題で知識が定着
- 160ページで授業に使いやすい
気になる点
- 辞書代わりの網羅性はない
- 物語が合わないと読みにくい
- 独学より授業との併用向き
出版社
弘文堂
発売日
2013年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これ、経済学の本なのに表紙からして小説みたいですね。恋愛や就活をしながら経済を学ぶ大学生が出てくるって書いてあります。
佐藤メバル
そう、4人の大学生が生活の中に隠れた経済のしくみに気づいていくストーリー仕立てなんだ。読み物として面白いだけで終わらせないのがこの本の強みで、ゲーム感覚で楽しめる経済実験が5点、実施要項とデータ付きで用意されている。
教室で手を動かせば、目に見えない理論が体でわかる。各章にはグラフを描いたり表を埋めたりする書き込み式の課題もあって、定着まで見てくれる。
橘ナナミ
実験の実施要項とデータまで付いているの、教える側からするとありがたいです。私、レポートでデータをどう扱うかでいつも悩むので。
佐藤メバル
そこがこの本の実践的なところだね。160ページと薄いから、講義の副読本としても無理なく回せる。卒論やレポートで「理論はわかるけど、自分の手で確かめる方法がわからない」という段階の人には、ちょうどいい橋になる。
価格も手頃だから、最初の一冊というより「授業と一緒に使う一冊」として選ぶといいよ。

実験経済学への招待
西條辰義 著|エヌティティ出版
¥4,430(税込)
実験経済学が、ゲーム理論やオークション、株式市場の分析、公共財の供給といった幅広い問題でどう応用されているかを、この分野で活躍する研究者たちが分担して紹介する一冊。従来の経済理論では予想されなかった事実が観察され、そこから新しい理論を創出する試みが始まっていることも伝えてくれる。アカデミックな研究を基礎にしながら一般の人にもわかるように書かれ、現在地を掴む入門書として読める。
こんな人におすすめ
入門書を一冊読んだあとに、この分野が今どこへ向かっているのかを知りたい人。複数の研究者の視点を比べたい大学院生や、研究テーマの見取り図が欲しい人に向く。
良い点
- 最前線のテーマを複数視点で
- 理論が生まれる過程まで見える
- 一般読者にも配慮した記述
気になる点
- 220ページで価格はやや高め
- 分担執筆のため温度差がある
- 最初の一冊には向かない
出版社
エヌティティ出版
発売日
2007年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「招待」ってタイトルが上品ですね。著者の名前が一つではなく、複数の研究者が書いていると聞きました。
佐藤メバル
そう、一人の著者が通して書いた教科書ではなく、この分野で活躍する研究者たちが今ホットなテーマを分担して紹介する形になっている。
ゲーム理論やオークション、株式市場の分析、公共財の供給で実験がどう使われているか、さらに従来の理論では予想されなかった事実が観察され、そこから新しい理論を作る動きまで書かれている。
アカデミックな研究を基礎にしつつ、一般の人にもわかるように書かれているのがいいね。
橘ナナミ
理論が現実と合わなかったところから、新しい理論が生まれる……。それって、失敗が研究になるってことなんですか?
佐藤メバル
まさにそう。実験経済学の面白さは、人間が理論どおりに動かないことを誤差で片づけず、そこに新しい原理を探しに行くところにある。
220ページで価格はやや張るけれど、入門書を一冊読んだあとにこの分野は今どこへ向かっているのかを知りたい人にちょうどいい。
執筆者たちが今後も注目される研究者だという点も含めて、現在地を掴む一冊だよ。

実験経済学・行動経済学15講 (ライブラリ経済学15講 APPLIED編 4)
和田良子 著|新世社
¥2,970(税込)
実験経済学と行動経済学という、人間の経済行動と理論の対応を追究した2つのアプローチを、テーマごとに並べて解説する入門テキスト。研究成果だけでなく相違点まではっきり示し、現実の問題への応用や手法にも触れている。イラストを交えた図表豊富な2色刷のビジュアルな構成で、322ページありながら視覚的に頭に入っていく。実験経済学だけを扱う入門書と違い、行動経済学との関係を軸に整理できるのが持ち味だ。
こんな人におすすめ
「実験経済学と行動経済学の違いがわからない」と感じている人、大学の講義テキストを探している教員、図や色分けで理解したいタイプの学習者にちょうどいい。
良い点
- 2つの学問の違いを並べて理解
- 2色刷と図表で読み進めやすい
- 応用や手法の紹介まで届く
気になる点
- 第一冊目としては情報量が多い
- 322ページで通読に時間がかかる
- 数式が苦手だと一部つらい
出版社
新世社
発売日
2020年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
実験経済学と行動経済学って、名前が似すぎていて違いがわからないんです。この本は両方を扱うんですか?
佐藤メバル
そこを正面から扱ったのがこの本で、2つのアプローチをテーマごとに並べ、研究成果と相違点を解説してくれる。
イラストも交えた2色刷で図表が豊富だから、322ページと読み応えはあるけれど視覚的に頭に入っていく。
実験経済学だけを扱う入門書と違って、行動経済学との関係を軸に整理できるのが持ち味だね。
橘ナナミ
似ているけど違う、というのを並べて見せてもらえるの、混ざりがちな自分にはありがたいです。章ごとに何を見比べればいいんでしょう?
佐藤メバル
章ごとに、同じ問いを2つの学問がどう違う角度から照らすかを見比べていく形になる。現実の問題への応用や手法の紹介もあるから、学問の地図を描きながら読み進められる。
最初の一冊というより、実験経済学の入門を読んだ人が二手目に進むための本。価格を考えると、大学の講義テキストとしても使いやすいと思うよ。

実験経済学入門 (ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端=アドバンスト・コース 1)
下村研一 著|新世社
¥1,980(税込)
「ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端=アドバンスト・コース」シリーズの第1巻にあたる、コンパクトな実験経済学の入門。シリーズ名が示すとおり、基礎(コア)から最先端(アドバンスト)へ橋を架けることを狙っていて、その入口として160ページに凝縮されている。薄さを武器にした一冊で、まず全体の輪郭を掴み、面白いと感じた章を厚い本で深掘りする使い方ができる。1980円という価格も、試しに手を出すハードルの低さにつながる。
こんな人におすすめ
まず全体の見取り図が欲しい人、厚い専門書の前に薄い一冊で予習したい人、シリーズで体系的に学び始めたい学生に向く。手軽さを優先したいときに。
良い点
- 160ページで全体像を掴める
- 1980円で試しやすい
- シリーズで次に進める
気になる点
- 一冊だけでは完結しない
- 詳しい解説や事例は限られる
- 独学だと物足りなく感じる
出版社
新世社
発売日
2015年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
この本、160ページで1980円ですって。タイトルもずばり「入門」で、シリーズの1冊目なんですね。
佐藤メバル
そう、このシリーズは「コア・テキスト&最先端=アドバンスト・コース」という名前で、基礎から最先端へ橋を架けることを狙っている。
その第1巻として、実験経済学の入口を160ページに凝縮した形だね。薄い入門書は物足りなくなりがちだけど、シリーズの骨格に沿って読めば次に進む道が見える。手頃な価格で試せるのは大きいよ。
橘ナナミ
でも160ページで足りるんでしょうか。薄い入門書って、親切な分だけ物足りなく感じることもあって。
佐藤メバル
そこは正直に言うと、この一冊だけで実験経済学の全体を覆うのは無理がある。だからこそ「入門」と銘打って、まず全体の輪郭を渡すことを優先しているんだと思う。
薄い一冊で見取り図を手に入れて、面白いと感じた章を厚い本で深掘りする。そういう順番で使うのが、この本のいちばん良い使い方だよ。

実験経済学入門~完璧な金融市場への挑戦
ロス・M・ミラー 著|日経BP
¥2,200(税込)
実験経済学という分野を確立し、2002年にノーベル経済学賞を受賞したヴァーノン・スミスが、市場実験の手法を築いていく過程をたどる一冊。実験室でバブルや暴落を再現できる仕組みをわかりやすく解説する。2006年1月の東京証券取引所の全面停止、1997年の「ブルーマンデー」、1987年の「ブラックマンデー」を分析し、実験の成果を応用して惨事を避ける「賢い」市場の可能性を探る。金融と実験をつなぐ物語として読めるのが違いだ。
こんな人におすすめ
金融のプロ、一般の投資家、そして金融と経済学の接点を学びたい学生に。実際の暴落と実験室の暴落を見比べたい人に向く。
良い点
- 市場実験確立の過程が追える
- 暴落と実験の接続が具体的
- 2200円で読み物として面白い
気になる点
- 440ページで読みごたえがある
- ゲーム理論の解説は基礎的
- 理論の網羅性は教科書に劣る
出版社
日経BP
発売日
2006年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「完璧な金融市場への挑戦」……副題からしてもう物騒じゃないですか。暴落の話なんですか?
佐藤メバル
その通り。この本は、実験経済学という分野を確立したヴァーノン・スミスが2002年にノーベル経済学賞を受賞するまでの歩みをたどりながら、実験室でバブルや暴落を再現できる仕組みを解説していく。
2006年1月の東京証券取引所の全面停止、1997年のニューヨークの「ブルーマンデー」、1987年の「ブラックマンデー」を分析し、実験の成果を応用して惨事を避ける「賢い」市場の可能性を探っている。
ゲーム理論や経済心理学の解説も丁寧だよ。
橘ナナミ
実際に起きた暴落と、実験室の中の暴落を重ねて見るんですね。投資をしている人向けの本ですか?
佐藤メバル
金融のプロはもちろん、一般の投資家や学生も対象に置かれている。440ページと読みごたえはあるけれど、価格は2200円と抑えめで、読み物としても面白い。
実験が金融の現場とどうつながるかを知りたい人には、入門書というより「物語として読める実験経済学」として薦めたい一冊だね。

実験経済学
川越敏司 著|東京大学出版会
¥4,180(税込)
実験経済学の方法論的な基礎を明らかにし、実験経済学者が使う「思考の道具箱」を詳細に記述する、本邦初の本格的テキストとされる一冊。実験によって見えてきたゲーム理論の問題点を、不平等回避や互恵性といった社会的選好、学習理論などの限定合理性、非期待効用理論に基づく行動ゲーム理論でどう乗り越えるかを示す。理論と実験がぶつかり合う現場を描き、今後の課題と将来まで論じる。
こんな人におすすめ
自分の研究で実験を設計したい大学院生、行動経済学の理論がどこから来たのかを知りたい人、方法論を固めたい研究者志望者に。読み物ではなく骨格から学ぶ一冊。
良い点
- 方法論の基礎から積み上げられる
- 行動ゲーム理論の全貌が見える
- 今後の課題まで論じている
気になる点
- 専門書で入門には向かない
- 通読には根気が要る
- 4180円で気軽ではない
出版社
東京大学出版会
発売日
2007年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
東京大学出版会から出ている『実験経済学』。タイトルがシンプルすぎて、逆に何が書いてあるのか気になります。
佐藤メバル
これは本邦初の本格的なテキストと言われている一冊で、実験経済学の方法論的な基礎から入って、実験経済学者が使う「思考の道具箱」を丁寧に記述していく。
ゲーム理論が実験とぶつかって見えてきた問題点をどう乗り越えるか、不平等回避や互恵性といった社会的選好、学習理論などの限定合理性、非期待効用理論に基づく行動ゲーム理論まで、全体像を明らかにしてくれる。
橘ナナミ
「思考の道具箱」って言葉が素敵です。これって、研究者を目指す人向けの本なんでしょうか。読み物としても楽しめますか?
佐藤メバル
骨格はテキストだから、読み物としてするする読めるタイプではない。けれど、自分の研究で実験を設計したい大学院生や、行動経済学の理論がどこから来たのかを知りたい人には代えがたい。
最新の課題と将来についても触れられているから、二手目、三手目に進む人ほど価値がわかる本だよ。

実験経済学の原理と方法
Friedman 著|同文舘出版
¥4,910(税込)
書名どおり、実験経済学の「原理」と「方法」に焦点を絞った一冊。実験をどう設計し、どう位置づけるかという土台の部分を正面から扱うタイプの本で、235ページとこの分野の専門書としては比較的コンパクトにまとまっている。物語や図解で引き込む入門書とは性格が異なり、方法をきちんと押さえたい段階で効いてくる。価格は4910円なので、まず図書館で確かめるという選び方も現実的だ。
こんな人におすすめ
入門書を何冊か読んだあとに実験の設計を学びたい人、論文の方法部分を読み解きたい大学院生、原理と方法を手元に置きたい研究者に向く。
良い点
- 原理と方法に絞った構成
- 235ページで見通しがよい
- 方法論の確認に使える
気になる点
- 中身の詳細は事前に確認を
- 入門書としては硬い
- 4910円で気軽には買いにくい
出版社
同文舘出版
発売日
1999年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
著者名がアルファベットで「Friedman」とだけ書かれています。書名も「原理と方法」と、ずいぶんストイックですね。
佐藤メバル
書名どおり、実験経済学の「原理」と「方法」に焦点を絞った一冊だね。235ページと、この分野の専門書としては比較的コンパクトにまとまっている。
中身の章立てまでは手元の情報だけでは踏み込めないけれど、方法論をきちんと押さえたい人が手に取るタイプの本だよ。
橘ナナミ
こういう、装飾の少ない本は、どんな人が読むんでしょう。入門書を何冊か読んだあとですか?
佐藤メバル
そうだね、物語や図解で引き込むタイプの入門書を一通り読んだあと、実験を自分で設計したり、論文の方法部分を読み解いたりする段階で効いてくる。
価格は4910円なので、まずは図書館で確かめてから手元に置くかを決めるのもいい。原理と方法を正面から置いておきたい人の、辞書代わりの一冊という位置づけだよ。

実験経済学: 研究と実践の手引き
N.Jacquemet 著|朝倉書店
¥9,900(税込)
実験経済学の全体を学べる決定版テキストとされる「Experimental Economics」の全訳。528ページに、実験の計画から実施、データの分析までの一連のプロセスが順を追って記されている。実験が未経験の研究者や学生でも読みこなせるよう平易に書かれ、方法論的な議論と数多くの実験事例も収録。実験を始める前に読む一冊として、実験室実験の実際から外的妥当性、より良い公共政策までを4部構成で見渡せる。
こんな人におすすめ
これから実験を研究手法として使いたい大学院生、ゼミや演習で実験を回す立場の教員、手順の抜け漏れを防ぎたい人に。研究の相棒として置いておきたい。
良い点
- 計画から分析まで一冊で追える
- 未経験者にも平易な記述
- 事例と方法論の両方が厚い
気になる点
- 528ページと物理的に重い
- 9900円と価格が高い
- 入門には情報量が多すぎる
出版社
朝倉書店
発売日
2024年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
528ページで9900円。これ、もう本というより設備投資ですよね。何がそんなに詰まっているんですか?
佐藤メバル
「Experimental Economics」の全訳で、この分野の決定版テキストと言われている。いいところは、実験が未経験の研究者や学生でも読みこなせるように平易に書かれている点で、実験の計画から実施、データの分析までの一連のプロセスが順を追って説明される。
方法論の議論と数多くの実験事例を、4部構成で見渡せるようになっているよ。
橘ナナミ
計画から分析まで一冊で終わるなら、逆に安い買い物なのかもしれないですね。自分で実験をやるなら、これ一冊あれば迷わないんでしょうか。
佐藤メバル
迷わない、とまでは言い切れないけれど、道しるべにはなる。特に「実験実施のはるか以前」から当日の手続きまで時系列で書かれている部分は、いざ自分でやろうとしたときに何が抜けがちかがわかって助かる。
価格は覚悟がいるので、ゼミで実験を回す立場の人、これから実験を研究手法として使いたい人が、必要な投資として選ぶ一冊だね。

実験ミクロ経済学
小川一仁 著|東洋経済新報社
ミクロ経済学の基礎的な概念を、実験を通じて学べるように配慮した教科書。実際に実験に参加してもらうことで経済学への興味を引き出すねらいがあり、実験に不慣れな先生のための資料も充実している。企業行動、市場均衡、市場構造、消費者行動、不確実性、情報の経済学、オークション、ファイナンス、外部性、公共財と共有地の悲劇まで15章。手を動かして理論を確かめる構成が講義の理解を助ける。
こんな人におすすめ
大学でミクロ経済学を学ぶ学生、グラフとにらめっこでつまずいた経験のある人、講義に実験を取り入れたい教員に。かつて挫折した人のやり直しにも。
良い点
- 15章でミクロの主要論点を網羅
- 実験の指導資料が充実
- 情報の経済学まで実験で扱う
気になる点
- 独学より授業との併用向き
- 実験の準備に手間がかかる
- 理論の深掘りは別途必要
出版社
東洋経済新報社
発売日
2012年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「実験ミクロ経済学」。私、ミクロ経済学の授業ってグラフとにらめっこの記憶しかないんですが、実験で学べるんですか?
佐藤メバル
そこを変えようとした教科書だね。ミクロ経済学の基礎的な概念を実験を通じて学べるように配慮していて、実際に実験に参加してもらうことで経済学への興味を引き出す構成になっている。
企業行動、市場均衡、市場構造、消費者行動、不確実性、異時点間の選択、情報の経済学、オークション、ファイナンス、外部性、公共財と共有地の悲劇まで15章。
実験に不慣れな先生のための資料も充実している。
橘ナナミ
逆選抜やモラルハザードまで実験で扱うんですか。名前を聞くだけで身構えてしまう単元なので、救われます。
佐藤メバル
情報の経済学は特に、理屈だけ聞いても実感が湧かない分野だからね。共有地の悲劇なんて、実験で一度体験すると忘れられなくなる。
授業の教科書としてだけでなく、昔ミクロ経済学でつまずいた人が、もう一度やり直すための一冊としても面白いと思うよ。

実験マクロ経済学
川越敏司 著|東洋経済新報社
マクロ経済学に関連する実験を集めた、世界初と謳われる一冊。紙幣とインフレーション、貨幣錯覚、期待形成、価格の粘着性、経済政策の裁量とルールといった抽象度の高い概念を、実験で学べるようにしている。30以上の実験が紹介され、重要かつ先端の実験を一覧できる便利さがある。マクロを体感に落とし込むという、他にほとんど例のない試みが読みどころだ。
こんな人におすすめ
マクロ経済学の概念がつかみにくいと感じている学部生、大学院で実験的手法を学ぶ人、同じ出版社の『実験ミクロ経済学』と併せて読む人に。
良い点
- 30以上の実験を一覧できる
- マクロの抽象概念を体感できる
- ミクロ版と併読で効果的
気になる点
- ミクロ版を先に読む方が安心
- マクロの体系全体は覆わない
- 実験の再現には準備が必要
出版社
東洋経済新報社
発売日
2014年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
今度はマクロ。さっきの『実験経済学』と同じ著者の本ですね。マクロを実験で? 国全体の動きなんて実験できない気がします。
佐藤メバル
そこに挑んだのがこの本で、マクロ経済学に関連する実験を集めた本としては世界初だと謳われている。紙幣とインフレーション、貨幣錯覚、期待形成、価格の粘着性、経済政策の裁量とルール、といった重要な概念を実験で学べるようにしている。
紹介されている実験は30以上。学部生のためのテキストとしてだけでなく、大学院生にも読んでほしいと書かれている。
橘ナナミ
紙幣とインフレーションの実験って、いったいどうやるんでしょう。想像がつかなくて、そこだけ読みたくなりました。
佐藤メバル
そこがミソでね、貨幣の発生するところから実験で追いかけられるように組まれている。同じ東洋経済新報社から出ている『実験ミクロ経済学』と併せて読むと、ケーススタディ集として情報量がぐっと増える。
ミクロの入門で実験に慣れてからマクロへ進む、という順番がおすすめだよ。

経済学のための実験統計学
ピーター・G・モファット 著|勁草書房
数多くの実験事例を題材に、基礎的な実験計画法や処理効果の検定といった伝統的な手法から、有限混合モデルといった最新の手法まで網羅的に扱う一冊。統計ソフトウェアSTATAによるプログラム例も提供され、ほとんどの実験データに対処できるとされる。実験と統計はセットだと気づかせてくれる、実験経済学の研究を進めるためのバイブル的位置づけの本だ。
こんな人におすすめ
実験データの分析で手が止まった大学院生、STATAを使って実験結果を処理したい研究者、手法の引き出しを増やしたい実証分析者に。長く使う辞書として。
良い点
- 伝統的手法から最新手法まで網羅
- STATAのプログラム例付き
- 事例題材で具体的に学べる
気になる点
- 統計の素養が前提になる
- 実験の設計自体は扱わない
- 電子版は閲覧環境を選ぶ
出版社
勁草書房
発売日
2018年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「経済学のための実験統計学」。これ、統計の本なのか実験の本なのか、タイトルからだと判断できません。
佐藤メバル
両方だね。数多くの実験事例を題材にしながら、基礎的な実験計画法や処理効果の検定といった伝統的な手法から、有限混合モデルといった最新の手法まで網羅的に扱っている。
統計ソフトウェアSTATAによるプログラム例も提供されているから、ほとんどの実験データに対処できる。
実験経済学の研究を進めるためのバイブル、という位置づけの本だよ。
橘ナナミ
STATAと聞くと、文系の私には敷居が高く感じます。実験をする人は、みんなここを通るんでしょうか。
佐藤メバル
実験をやるだけなら通らなくても済むけれど、出てきたデータを意味のある結果にするには、必ず統計の審判が要る。
そういう意味では実験と統計はセットだね。入門書を読み終えて、自分のデータをどう分析するかで止まってしまった人が開くと視界が開ける。手元に置いて長く使う類の本だよ。

科学哲学から見た実験経済学
フランチェスコグァラ 著|日本経済評論社
¥6,184(税込)
経済学の最大の発展分野とされる実験経済学について、それを支える実験アプローチの有効性と限界を、科学哲学の立場から論じた初の包括的論考。方法論から入る実験経済学の入門書としても読めるように作られている。実験の結果をそのまま受け取る前に、それは何を明らかにしたことになるのかを考えたい人に向く、391ページの骨太な一冊だ。
こんな人におすすめ
研究を始める大学院生、方法論の章を書く必要がある人、実験の結果を批判的に読みたい人、哲学と経済学の接点に関心がある読者に。
良い点
- 有効性と限界の両方を論じる
- 方法論からの入門書にもなる
- 批判的思考を鍛えられる
気になる点
- 6184円と価格が高い
- 哲学の素養があると望ましい
- 実践手順は学べない
出版社
日本経済評論社
発売日
2013年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「科学哲学から見た実験経済学」。哲学と経済学って、どうつながるんでしょう。想像がつきません。
佐藤メバル
実験経済学の実験アプローチには、どこまでが有効でどこからが限界なのか、という問いがつきまとう。それを科学哲学の立場から論じた、初の包括的な論考がこの本だと言われている。
391ページと厚いけれど、方法論からの実験経済学入門書としても読めるように作られているんだ。
橘ナナミ
「なぜ実験と言えるのか」を哲学から詰めるって、ちょっと背筋が伸びる感じがします。誰向けの本ですか?
佐藤メバル
実験の結果をそのまま信じる前に、そもそもこれは何を明らかにしたことになるのかを考えたい人に向いている。
研究を始める大学院生が方法論の章を書くときにも支えになる。価格は6184円なので、まずは図書館で手に取って、自分の研究に必要な一冊かどうか確かめてからでも遅くないよ。

マルチエージェントのための行動科学:実験経済学からのアプローチ (マルチエージェントシリーズ A-6)
西野成昭 著|コロナ社
¥3,080(税込)
実験経済学のアプローチを土台に、マルチエージェントシミュレーションにおける意思決定主体の行動モデルの作り方を学ぶ教科書。実験を経験しながら進められ、同じ状況のシミュレーションをNetLogoで自分で書けるように丁寧に解説している。市場タイプとゲームタイプの2つの流れで、ダブルオークションや美人投票ゲーム、公共財ゲームの実験とモデルを並べて見ていく。実験とシミュレーションを往復する構成が新鮮だ。
こんな人におすすめ
理工系・社会科学系の学生、行動モデルをどう組むか悩んでいるシミュレーション研究者、文理融合の研究を目指す大学院生に。入門レベルの経済学の知識がある人向け。
良い点
- NetLogoで手を動かして学べる
- 実験とモデルを往復できる
- 200ページで見通しがよい
気になる点
- ミクロ経済学の基礎知識が前提
- プログラミング未経験だと重い
- 経済学の体系は覆わない
出版社
コロナ社
発売日
2021年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
表紙にNetLogoと書いてあります。経済学の本なのに、プログラミングの教科書みたいで不思議な感じがします。
佐藤メバル
これは実験経済学のアプローチを土台に、マルチエージェントシミュレーションで意思決定主体の行動モデルをどう作るかを学ぶ教科書なんだ。
いくつかの章では実際に実験を経験しながら進められ、実験と同じ状況のシミュレーションをNetLogoで自分で書けるように丁寧に解説されている。
市場タイプとゲームタイプの2つの流れで、美人投票ゲームや公共財ゲームの実験とモデルを並べて見ていく。
理工系と社会科学系の学生を対象にした、文理融合の一冊だよ。
橘ナナミ
理系の人が経済実験を、文系の人がシミュレーションを。両側から同じ山に登るような本なんですね。
佐藤メバル
そう、そこが気に入っている。200ページで価格も3080円と手に取りやすい。入門レベルのミクロ経済学やゲーム理論の知識があることが前提になっているので、まったくの初学者には少し早いかもしれない。
でも逆に、シミュレーション側から社会科学に入りたい人には、実験経済学が最高の入口になると思うよ。

人間行動の経済学: 実験および実証分析による経済合理性の検証 (明治大学社会科学研究所叢書)
塚原康博 著|日本評論社
¥4,299(税込)
人が本当に経済合理性に従って行動しているのかを、実験と実証分析の両面から確かめようとする研究書。明治大学社会科学研究所叢書の一冊として、日本評論社から刊行されている。行動経済学が「人は合理的ではない」と示したあと、それでも合理性の仮定をどう扱うのかを、実証の側から問い直す位置づけになる。実験と実証を並べて検証する構成は、類書が多くないだけに貴重だ。
こんな人におすすめ
行動経済学を一通り学んだあとに「実際どう確かめるのか」へ進みたい人、ゼミで実証研究の文献を読みたい学生、合理性の仮定を考え直したい研究者に。
良い点
- 実験と実証を両輪で扱う
- 合理性の仮定を問い直す
- 290ページでゼミにも使いやすい
気になる点
- 統計・分析の記述は専門的
- 入門書としては硬い
- 4299円で気軽ではない
出版社
日本評論社
発売日
2003年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「人間行動の経済学」。副題が「実験および実証分析による経済合理性の検証」……経済合理性を、検証し直すんですか?
佐藤メバル
そういうことだね。人が本当に合理的に選んでいるのかを、実験と実証分析の両方から確かめようとする本で、明治大学社会科学研究所叢書の一冊として出ている。
290ページ、日本評論社。行動経済学が「人は合理的ではない」と示したあと、それでも合理性の仮定をどう扱うかを、実証の側から問い直す位置づけになる。
橘ナナミ
合理性を検証するって、答えが出ているようで出ていない問いですよね。読み解くのは難しそうですか?
佐藤メバル
学術書なので、統計や分析の話はそれなりに出てくる。ただ、実験と実証の両方を並べて見ている本は案外少ないから、行動経済学を入門書で一通り学んだ人が、じゃあ実際どう確かめるのかに進むための一冊として面白いと思う。
価格は4299円。ゼミの文献としても選びやすい厚さだよ。

データサイエンスの経済学 調査・実験,因果推論・機械学習が拓く行動経済学
依田高典 著|岩波書店
¥3,740(税込)
ビッグデータと人工知能の時代に、データサイエンスを駆使した経済学を求める一冊。著者の20年間の研究を踏まえ、因果推論や機械学習といった分析手法だけでなく、適切にデータを取得する調査・実験の手法から解説する。序章では行動経済学の再現性問題や実験倫理まで触れ、アンケート調査、フィールド実験、因果推論・機械学習の3部構成で、分析の前の設計から学べるのが持ち味だ。
こんな人におすすめ
アンケートやフィールド実験でデータを取りたい人、ナッジや政策効果を測りたい実務家、因果推論と機械学習を経済学で使いたい学生に。
良い点
- データ取得の設計から解説
- 調査・実験・機械学習を一冊で
- 実例が豊富で実務的
気になる点
- 計量経済学の素養が要る
- 実験室実験は中心ではない
- 手法の網羅には別途専門書
出版社
岩波書店
発売日
2023年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『データサイエンスの経済学』。序章が「行動経済学の死から再生へ」って、物々しいタイトルです。
佐藤メバル
そこがこの本の入口でね、ビッグデータや人工知能が叫ばれる中で、行動経済学の再現性問題や実験倫理まで正面から論じている。
構成は3部で、アンケート調査の経済学、フィールド実験の経済学、因果推論・機械学習の経済学。離散選択分析やコンジョイント分析、無作為比較対照試験、コウザル・フォレストといった手法が出てくるけれど、著者の20年間の研究を踏まえて、手法だけでなく適切にデータを取得するところから解説している。
橘ナナミ
分析の前に、データの取り方から書いてあるの、珍しい気がします。調査票の作り方から学べるんですか?
佐藤メバル
まさにそこ。電気通信分野のアンケート調査や、けいはんな学研都市、横浜市で行われたフィールド実験が事例として出てくる。
274ページ、3740円で、岩波書店の本としては実務的だね。アンケートや実験でデータを取って分析したい人、ナッジや政策効果を測りたい人にとって、字引のように使える一冊だよ。

経済実験のフロンティア 経済セミナーe-Book
花木伸行 著|日本評論社
経済セミナーの特集「経済実験のフロンティア」の記事だけを収録した電子書籍。実験は実験室を飛び出し、現実社会で暮らす人を対象にしたフィールド実験、アンケートを活用したサーベイ実験へと広がっている。鼎談に始まり、oTreeを使ったオンライン実験の進め方、サーベイのツール、行動開発経済学の展開、実験・調査のベストプラクティス、教育実践まで、最前線の動向を一気に眺められる。
こんな人におすすめ
実験経済学の今の潮流を短時間で掴みたい人、オンライン実験やサーベイを始めたい研究者、実験を授業に取り入れたい教員に。現在地の確認に。
良い点
- 最前線の動向をまとめて把握
- オンライン実験の実践がわかる
- 電子書籍で手軽に読める
気になる点
- 特集記事のみで連載は未収録
- 体系的な教科書ではない
- 電子書籍の閲覧環境が必要
出版社
日本評論社
発売日
2024年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは電子書籍で、『経済セミナー』の特集記事だけを収録したものなんだそうですね。雑誌の記事をまとめた一冊、ということですか?
佐藤メバル
そう、735号の特集「経済実験のフロンティア」の記事だけを収録した一冊だね。実験は実験室を飛び出して、現実社会で生活する人を対象にしたフィールド実験、アンケートを活用したサーベイ実験へと広がっている。
鼎談から、oTreeを使ったオンライン実験の進め方、サーベイのツール、行動開発経済学の展開、実験・調査のベストプラクティス、教育実践まで、最前線の動向を一気に眺められる。
橘ナナミ
教育実践の記事まで入っているのが意外です。授業で実験を使いたい人にも関係があるんですね。
佐藤メバル
そう、実験経済学は研究の道具であると同時に、教える道具でもある。これは電子書籍で、連載など他のコンテンツは含まれていないから、特集部分だけを気軽に読めるのが利点だね。
まず全体の傾向を掴んでから、興味のあるテーマの専門書に進む。この一冊を現在地の確認に使うのがおすすめの読み方だよ。
実験経済学の実験手法 — 何をどう試すのか
橘ナナミ
具体的にはどんなゲームをするんですか?
佐藤メバル
代表的なくつがそろっているのが亀井憲樹『はじめての実験経済学』だね。競争市場ならチェンバリンによる市場メカニズム実験とスミスによるダブル・オークション実験。そこから資産市場とバブル、囚人のジレンマゲーム、公共財ゲーム、スタグ・ハント、最後通牒ゲーム、信頼、センティピードゲーム、独裁者ゲームによる不平等を嫌う選好まで、章ごとに設定と結果が並んでいる。
橘ナナミ
公共財ゲームや独裁者ゲームって、名前だけでは何を測っているのかわからないです。
佐藤メバル
公共財ゲームは、みんなで負担してつくる財にどれだけ協力するか、フリーライドがどこまで起きるかを見る実験。独裁者ゲームは、受け取ったお金を相手にどう分けるかを一人で決めるもので、相手に拒否権はない。利己的なら渡さないはずなのに渡す人がいる——この差が社会的選好の証拠になる。『実験経済学: 研究と実践の手引き』では、この独裁者ゲームを追加的な統制と尺度として理解を深める方法が論じられている。
ノーベル賞の系譜と、実験経済学が生まれた背景
橘ナナミ
なぜ今、実験経済学が重要なんですか?
佐藤メバル
西條辰義『実験経済学への招待』は、実験経済学がゲーム理論、オークション、株式市場分析、公共財供給といった幅広い問題に応用され、従来の理論では予想されなかった事実が観察され、そこから新しい理論を創出する試みも始まっていると伝えている。ヴァーノン・スミスの受賞はその流れの象徴だね。
橘ナナミ
学問としての正しさはどう担保するんでしょう?
佐藤メバル
そこを正面から論じるのがフランチェスコ・グァラ『科学哲学から見た実験経済学』で、実験アプローチの有効性と限界を科学哲学の立場から論じた包括的論考であり、方法論からの入門書でもある。
再現性・限界と、実務・政策への応用
橘ナナミ
最近よく聞く再現性の問題は、実験経済学にもあるんですか?
佐藤メバル
ある。依田高典『データサイエンスの経済学』は序章を「行動経済学の死から再生へ」と題して、再現性問題、実験倫理、内的妥当性と外的妥当性、異質性を論じている。限界の議論は『実験経済学: 研究と実践の手引き』も最終部で外的妥当性や再現を扱っているよ。
橘ナナミ
逆に、役に立つ側面は?
佐藤メバル
ナッジと市場設計だね。依田本には、けいはんな学研都市の強制型フィールド実験や横浜市の承諾型フィールド実験を通じて、ナッジの意義と限界、デフォルト・バイアスを確かめた研究が収められている。『実験経済学: 研究と実践の手引き』もマッチング市場や行動公共政策を公共政策のたたき台として論じているし、ミラー本は暴落を回避する“賢い”市場の可能性を探っていた。
橘ナナミ
オンライン実験の話も聞いたことがあります。
佐藤メバル
花木伸行『経済実験のフロンティア』は、実験が実験室を飛び出し、フィールド実験やサーベイ実験が活発になった現状を扱っている。oTreeによるオンライン実験の進め方や、オンライン・サーベイの実践方法とツールといった内容が収録されているよ。
橘ナナミ
日本語の本が少ない気がするのはなぜでしょう?
佐藤メバル
主要な成果が英語の論文や書籍として蓄積されてきた分野だから、日本語で読めるのは入門書と翻訳書が中心になる。実際、ここで挙げた中にも Experimental Economics: Method and Applications の全訳や、モファット本、グァラ本といった翻訳が含まれている。邦語の入門書で土台をつくり、原著や論文で補う前提で考えるといい。
よくある質問
実験経済学と行動経済学の違いは何ですか?
橘ナナミ
実験経済学と行動経済学の違いは何ですかについて教えてください。
佐藤メバル
実験経済学は「実験という手法」に注目した呼び方で、行動経済学はそこから得られた人間の意思決定の特徴を扱う領域です。亀井憲樹『はじめての実験経済学』にも、実験結果の蓄積が行動経済学に直結し、両者が密接に関わりながら発展してきたと書かれています。両者の研究成果と相違点をテーマごとに並べて解説しているのが、和田良子『実験経済学・行動経済学15講』です。
実験経済学の入門書で一番おすすめの1冊はどれですか?
橘ナナミ
実験経済学の入門書で一番おすすめの1冊はどれですかについて教えてください。
佐藤メバル
経済学の予備知識なしで始めるなら、亀井憲樹『はじめての実験経済学』を挙げます。実験の設計で考慮すべき点から、競争市場、資産市場とバブル、ゲーム理論、公共財、交渉と信頼、労働・公共経済への応用まで、実験事例を追いながら学べます。大学等における実験経済学の教科書としても使える構成で、抽象的な理論を実感したい人に向いています。
実験経済学を学ぶには数学の知識が必要ですか?
橘ナナミ
実験経済学を学ぶには数学の知識が必要ですかについて教えてください。
佐藤メバル
入門書には経済学の予備知識が不要とうたうものもあり、最初から数式が必要になるわけではありません。ただし川越敏司『実験経済学』のように社会的選好や学習理論、行動ゲーム理論まで踏み込む本は、ミクロ経済学の基礎があると読みやすくなります。実験データの分析まで進むなら、モファット『経済学のための実験統計学』のように実験計画法や検定、統計ソフトウェアSTATAのプログラム例を扱う本が必要です。レベルに応じて段階を踏むのが現実的です。
実験経済学の日本語の本が少ないのはなぜですか?
橘ナナミ
実験経済学の日本語の本が少ないのはなぜですかについて教えてください。
佐藤メバル
主要な研究成果が英語の論文や書籍として蓄積されてきた分野であるため、日本語で読めるものは入門書と翻訳書が中心になります。たとえば『実験経済学: 研究と実践の手引き』は Experimental Economics: Method and Applications の全訳で、モファット『経済学のための実験統計学』やフランチェスコ・グァラ『科学哲学から見た実験経済学』も翻訳です。原著や論文で補う前提で、邦語の入門書を足がかりにするのが現実的です。
大学の授業で実験経済学を履修する前に読むべき本は?
橘ナナミ
大学の授業で実験経済学を履修する前に読むべき本はについて教えてください。
佐藤メバル
二本杉剛『プレステップ経済学―経済実験で学ぶ』が向いています。大学生4人が恋愛や就活を通して経済学を学ぶストーリーを追いながら、教室でできる経済実験に触れられ、グラフを描く・表を埋めるといった書き込める課題も用意されています。履修前の予習としても、授業で実験に参加するときの心構えとしても使えます。
実験経済学は独学でも学べますか?おすすめの順番は?
橘ナナミ
実験経済学は独学でも学べますか?おすすめの順番はについて教えてください。
佐藤メバル
独学でも学べます。順番としては、亀井憲樹『はじめての実験経済学』か二本杉剛『プレステップ経済学』で全体像をつかみ、和田良子『実験経済学・行動経済学15講』で隣接分野との違いを整理し、川越敏司『実験経済学』で方法論に入り、必要ならモファット『経済学のための実験統計学』でデータ分析に進む流れが無理がありません。自分の問いに近い章からつまみ読みするのも有効です。
実験経済学の名著・ロングセラーにはどんなものがありますか?
橘ナナミ
実験経済学の名著・ロングセラーにはどんなものがありますかについて教えてください。
佐藤メバル
定番として名前が挙がるのは、西條辰義『実験経済学への招待』、川越敏司『実験経済学』、ロス・M・ミラー『実験経済学入門~完璧な金融市場への挑戦』あたりです。西條本はゲーム理論やオークション、株式市場分析、公共財供給への応用を一般向けに伝え、川越本は本邦初の本格的テキストとして位置づけられ、ミラー本はスミスが手法を確立していく過程をたどります。目的が異なる3冊なので、読み比べる価値があります。
実験経済学はビジネスや仕事に役立ちますか?
橘ナナミ
実験経済学はビジネスや仕事に役立ちますかについて教えてください。
佐藤メバル
役立つ場面はあります。依田高典『データサイエンスの経済学』には、節電のフィールド実験を通じてナッジの意義と限界やデフォルト・バイアスを確かめた研究が収められており、制度設計や施策の効果測定を考える際の参考になります。『実験経済学: 研究と実践の手引き』も、マッチング市場や行動公共政策を公共政策のたたき台として論じています。施策の効き目を測る目を鍛えたい人に向いています。
まとめ
橘ナナミ
今日の話で、実験経済学の全体像がだいぶ見えました。市場もバブルも公共財も、実験室で確かめられるんですね。
佐藤メバル
そう。だからこそ読む順番が大事でね。まず亀井憲樹『はじめての実験経済学』や二本杉剛『プレステップ経済学』で「実験で何がわかるのか」を体感する。次に和田良子『実験経済学・行動経済学15講』で隣接分野との違いを整理し、川越敏司『実験経済学』で方法論の骨格を入れる。分析まで進むならモファット『経済学のための実験統計学』だね。
橘ナナミ
いきなり専門書から入るのは、やっぱり危険ですか?
佐藤メバル
書店員だった頃、勢いで難しい専門書を買って、用語の壁で三日で止まった経験があるよ。だから自分の問いに近い章から始めるのがいい。協力や公共財に関心があるなら亀井本の該当章、マクロの貨幣や期待形成なら川越敏司『実験マクロ経済学』、ミクロの理論を実験で確かめるなら小川一仁『実験ミクロ経済学』、自分でプログラミングするなら西野成昭『マルチエージェントのための行動科学』というふうに。
橘ナナミ
目的から逆算して選ぶんですね。
佐藤メバル
まさに。そして、実験経済学の本棚は、自分の中に小さな実験室を建てるためのキットのようなものだ。まずは入門書という設計図どおりに組み立てて、慣れてきたら「自分ならこの条件を変えてみたい」とオリジナルの実験を設計してみる。その瞬間から、あなたは読者ではなく実験者になる。
