地域経済学を学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】

監修

佐藤メバル

佐藤メバル

@shelfy_mebaru

編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ

橘ナナミ

@medias_nanami

編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。

最終更新: 2026年10月

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、今回のお題は「地域経済学」の本ですよね。正直、書店でこの棚の前に立つと、どこから手をつけていいのか分からなくなるんです。タイトルが似すぎていて……。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいところに気づいたね。地域経済学は、書名から難易度がまったく読めないジャンルなんだ。同じ「入門」でも、数式なしで読める新書から、大学院で使う数理モデルの本まで並んでいる。さらに都市経済学、経済地理学、空間経済学という隣接分野が入り乱れている。

橘ナナミ

橘ナナミ

まさにそこです。「地域経済学入門 第3版」と「都市・地域経済学への招待状」、「地域政策の経済学」、全部同じに見えてしまうんですけど、何が違うんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

「地域経済学入門 第3版」は有斐閣コンパクトの定番で、人口減少や高齢社会に対応した大幅改訂が入り、空き家問題や観光による地域経済の活性化、新たな章として「都市政策とまちづくり」まで足されている。理論と政策をバランスよく、というのがこの本の性格だね。一方「都市・地域経済学への招待状〔新版〕」は、「都市で暮らすか、地方で暮らすか」「家賃をとるか、部屋の広さをとるか」という生活に根ざした問いから理論に入る216ページの入門で、統計データが更新され、新型コロナ禍やリモートワークにも触れている。

橘ナナミ

橘ナナミ

暮らしの問いから入る入門があるんですね。じゃあ「地域政策の経済学」はどうですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

林宜嗣の本は、市場と政策、理論と現実を縦糸と横糸に組み合わせて、終盤には産業連関表で経済波及効果を計測する手引きまで置いている。政策を立案する側の視点が強い一冊だ。つまり同じ「地域」でも、どこまで行きたいかで選ぶ本が変わる。まずはその地図づくりから始めよう。

地域経済学を学べる本の選び方

数式・グラフ耐性で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

数式が苦手な人でも読める本はありますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

あるよ。数式を追わずに読みたいなら新書が向いている。「地域再生の経済学」や「地域と人口減少の経済学」はその代表で、後者は「人口1億人目標」や東京一極集中批判といった通説・俗説をデータで洗い直し、スマート・シュリンク=賢く縮むという考え方を示す。グラフは出てくるけれど、筋は言葉で追える。逆に手を動かしたい人には「例題で学ぶ地域経済学入門」がいい。チューネンの地代曲線、ウェーバーの工業立地論、クリスタラーの中心地論などを例題形式で解きながら学ぶ作りだ。

学びの目的で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

目的別だと、どう分ければいいでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

全体像をつかむなら「地域経済学入門 第3版」か「都市・地域経済学への招待状〔新版〕」。政策を設計したいなら「地域政策の経済学」や「地域政策〈第2版〉」。データ分析を手で回したいなら「データでみる地域経済入門」。自分のまちを診断したいなら「サクサクと読み解く『地域経済の勘どころ』」だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

「地域づくりの経済学入門」はどこに入りますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

現場を考える層だね。企業誘致やプロジェクト型開発がなぜ地域を豊かにしなかったのかを検証して、地域内で繰り返し再投資する力=地域内再投資力という見方を差し出してくれる。政策の失敗を先に学べるのは大きい。

自分の立ち位置で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

学生と自治体職員では、読む順番は変わりますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

変わるね。学生なら理論の土台から。「地域経済学入門 第3版」で枠組みを作り、「国際化時代の地域経済学 第4版」で政治経済学の視点を足す。自治体職員なら「地域政策の経済学」の分析パートから入ると実務に直結しやすい。金融機関なら「地域金融の経済学」、まちづくり会社や経営企画なら「地域政策のすすめ」や「地域振興の経済学」が近い。

本の形式で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

新書と教科書、実務書はどう使い分けますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

入り口は新書、骨格は教科書、手足は実務書。新書で論点の見取り図を作り、教科書で理論を埋め、実務書で手順を確かめる。いきなり実務書から入ると、目の前の事例を一般化する道具を持たないまま走ることになるよ。

出版年と改訂状況で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

古い本は避けたほうがいいですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

見るべきは刊行年そのものより、何年版のデータまで対応しているかだね。人口や産業の統計は更新されるから、改訂版が出ているなら必ずそちらを選ぶ。「地域経済学入門」も「都市と地域の経済学」も「国際化時代の地域経済学」も改訂を重ねている。絶版になっている本は、まず図書館で確かめるのが現実的だ。

分量と読了時間で選ぶ

橘ナナミ

橘ナナミ

ページ数だとどのくらいを目安にすればいいでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

200ページ前後の新書なら数日、300〜400ページ超の教科書なら数週間を見ておくといい。地域経済学の教科書は通読より、章単位で必要なところを往復する読み方のほうが身につくよ。

地域経済学を学べる本をひと目で比較

橘ナナミ

橘ナナミ

えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず

#画像名称おすすめ対象価格一言
1
地域経済学入門 第3版 (有斐閣コンパクト)
地域経済学入門 第3版 (有斐閣コンパクト)大学の地域経済学の講義についていくための教科書を探している学生、自治体や地域づくりNPOで政策の言葉を理論から整理したい人、そして空き家や観光振興など個別テーマを一度体系の中に置き直したい実務者。¥2,750地域経済学の標準テキスト
2
地域経済学 (有斐閣ブックス 363)
地域経済学 (有斐閣ブックス 363)地域経済学を「入門」ではなく一冊の体系として通したい人、ゼミや大学院で理論の土台を確認したい人、そして政策本や白書を読む前に用語と枠組みの辞書が欲しい実務者。¥3,730地域経済学の古典的体系書
3
都市・地域経済学への招待状〔新版〕 (有斐閣ストゥディア)
都市・地域経済学への招待状〔新版〕 (有斐閣ストゥディア)経済学の前提知識なしで都市と地域を考えたい学生、進学や就職で住む場所を選ぼうとしている人、テレワークで働き方と住まいの関係が気になり始めた社会人。¥2,200暮らしの問いから入る入門
4
地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論 (現代自治選書)
地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論 (現代自治選書)自治体職員や地域おこし協力隊としてなぜ住民が豊かにならないのかを正面から考えたい人、企業誘致や大型開発の是非を自分の中で整理したい議員や記者、地域経済学を政策批判まで含めて学びたい学生。¥2,970地域内再投資力の教科書
5
地域政策の経済学
地域政策の経済学自治体で政策立案や効果検証を担当していて数字で説明できるようになりたい人、地域経済分析を研究テーマにしたい学生、コンサルや金融機関で地域の事業評価に関わる実務者。¥2,970政策立案までつなぐ一冊

地域経済学を学べる本のおすすめ人気ランキング

橘ナナミ

橘ナナミ

一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!

佐藤メバル

佐藤メバル

よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

地域経済学入門 第3版 (有斐閣コンパクト)
1

地域経済学入門 第3版 (有斐閣コンパクト)

山田浩之 著|有斐閣

¥2,750(税込)

4.8

人口減少や高齢社会という現実に合わせて大きく改訂された入門テキスト。理論と政策をバランスよく、というスタンスが明確で、空き家問題や観光による地域活性化といった新しい論点、そして新設された「都市政策とまちづくり」の章まで、いま地域で起きていることが教科書の側から追いかけられている。366ページという厚みはあるが、有斐閣コンパクトという判型が通読を助ける。似た入門書が理論に寄るのに対し、政策と現場の論点を同時に押さえるのが持ち味だ。

こんな人におすすめ

大学の地域経済学の講義についていくための教科書を探している学生、自治体や地域づくりNPOで政策の言葉を理論から整理したい人、そして空き家や観光振興など個別テーマを一度体系の中に置き直したい実務者。

良い点

  • 理論と政策のバランスが良い
  • 空き家・観光など新しい論点を収録
  • 改訂で都市政策の章を追加

気になる点

  • 366ページで通読には覚悟が要る
  • 価格は新書より高め
  • 独学より講義との併用が向く

出版社

有斐閣

発売日

2018年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「地域経済学」って授業で名前は聞くんですけど、いまいち何を扱う学問なのかつかめていなくて。佐藤さん、最初の一冊はこれでいいんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。この『地域経済学入門』は、人口減少や高齢社会に合わせて大きく改訂された最新版で、理論と政策をバランスよく並べている。

空き家問題や観光による地域活性化もフォローしていて、さらに新しい章として「都市政策とまちづくり」が足された。

教科書としての背骨がはっきりしているから、最初の地図にはちょうどいいよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

366ページ……ちょっと厚いですね。途中で心が折れそうだし、持ち歩けるかどうかも不安です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは有斐閣コンパクトという判型が助けてくれる。小さくて持ち歩けるから、通学の電車で一章ずつ、くらいの読み方でいい。

全部を一気に理解しようとしなくていいんだ。まずは目次を眺めて、いま自分の関心がどこにあるかを決めてから読み始める。そのほうが最後までたどり着きやすいよ。

地域経済学 (有斐閣ブックス 363)
2

地域経済学 (有斐閣ブックス 363)

宮本憲一 著|有斐閣

¥3,730(税込)

4.7

タイトルそのまま、地域経済学の全体を一冊で見渡すための体系書。有斐閣ブックスの378ページで、価格も教科書相場の範囲ながらしっかりめだ。入門書が「いま地域で何が起きているか」から入るのに対し、こちらは学問としての地域経済学の骨格を先に置くタイプで、骨組みを示すことを優先している。手元に置いて、他の入門書や政策本、白書を読むときの辞書のように使うと強い。同じ有斐閣の入門書と並べると、性格の違いがはっきり見える。

こんな人におすすめ

地域経済学を「入門」ではなく一冊の体系として通したい人、ゼミや大学院で理論の土台を確認したい人、そして政策本や白書を読む前に用語と枠組みの辞書が欲しい実務者。

良い点

  • 一冊で全体像を押さえやすい
  • 座右の辞書として使いやすい
  • 入門書の次の一冊になる

気になる点

  • 378ページで通読は重い
  • 入門書より価格が高い
  • 読み物というより教科書

出版社

有斐閣

発売日

1990年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

同じ「地域経済学」というタイトルで、有斐閣から何冊もあるんですね。しかも著者が違う。いったいどう選べばいいんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

いいところに気づいたね。大きくは「入門」とつくかどうかで分けて考えてもらうといい。これは入門がつかないほうで、378ページの体系書だ。

学問としての骨組みを先に固めるタイプだから、さっきの入門書で全体を眺めてから、こちらで土台を掘り下げる順番が合いやすいよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

じゃあ、いきなりこれを最初に読むと失敗しちゃいますか? 分厚いので不安です。通読するべきなんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

失敗というより、迷子になりやすい。ただ、まわりの政策本や白書を読んでいて「この言葉、どこから来たんだろう」と思ったとき、ここに戻ってくると座標が戻るんだ。

通読する本というより、手元に置いて何度も開く辞書として使うと、価格ぶんの仕事をしてくれる。そんな付き合い方をしてほしい一冊だよ。

都市・地域経済学への招待状〔新版〕 (有斐閣ストゥディア)
3

都市・地域経済学への招待状〔新版〕 (有斐閣ストゥディア)

佐藤泰裕 著|有斐閣

¥2,200(税込)

4.6

「都市で暮らすか、地方で暮らすか」「家賃をとるか、部屋の広さをとるか」——生活に根ざした問いから理論へ入っていく入門テキスト。216ページと軽く、新版では統計データが更新され、新型コロナ禍やリモートワークといった新しいトピックにも対応した。他の入門書が学問の地図から始まるのに対し、こちらは自分の引っ越しや家賃の話から始められるのが決定的な違い。通学や通勤のお供にもちょうどいい。

こんな人におすすめ

経済学の前提知識なしで都市と地域を考えたい学生、進学や就職で住む場所を選ぼうとしている人、テレワークで働き方と住まいの関係が気になり始めた社会人。

良い点

  • 216ページで最後まで読める
  • 生活の問いから理論へ入れる
  • コロナ・テレワークも収録

気になる点

  • 理論の深掘りは控えめ
  • 政策の実務手順は少ない
  • 網羅性では大部の教科書に劣る

出版社

有斐閣

発売日

2023年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「家賃をとるか、部屋の広さをとるか」って、完全に私の毎日の悩みです。そんな切り口から経済学に入っていいんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の上手さでね。いま一人暮らしなら、駅からの距離と家賃の関係は体で知っているはずだ。その感覚をそのまま理論の入口に使う。

自分の生活が最初の教材になるから、数式の前に「なぜそうなるのか」が腹に落ちる。新版でコロナ禍やリモートワークも扱っているから、いまの働き方の変化とも噛み合うよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

216ページなら、研究の合間に読めそうでありがたいです。電車の中で少しずつ進めても大丈夫でしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこも大事なポイントだ。厚い教科書は「いつか読む本」になりがちだけど、これは数日で通せる。まず一周して、面白かった章だけ戻る。

そういう読み方ができる本は、結果的にいちばん身につくんだよね。最初から全部覚えようとしないほうがいい。

地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論 (現代自治選書)
4

地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論 (現代自治選書)

岡田知弘 著|自治体研究社

¥2,970(税込)

4.4

目次を見ただけで骨太さが伝わる一冊。コロナショックが病床や保健所の削減、そして東京一極集中の危険性をはっきり示したという問題意識から出発し、「地域内再投資力」=地域の中でお金が繰り返し回る力を軸に据える。企業誘致やプロジェクト型開発がなぜ地域を豊かにしなかったのかを戦後の地域開発政策から検証し、一村一品、由布院のまちづくり、小規模自治体の挑戦まで積み上げていく。政策の失敗から学ぶ構成が独特で、入門書というより地域づくりの現場の教科書だ。

こんな人におすすめ

自治体職員や地域おこし協力隊としてなぜ住民が豊かにならないのかを正面から考えたい人、企業誘致や大型開発の是非を自分の中で整理したい議員や記者、地域経済学を政策批判まで含めて学びたい学生。

良い点

  • 政策失敗の検証が具体的
  • 一村一品や由布院など事例が厚い
  • 地域内再投資力の枠組みが明確

気になる点

  • 404ページで通読は覚悟が要る
  • 批判的な視点が前面に出る
  • 実務の手順書ではない

出版社

自治体研究社

発売日

2020年6月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「地域内再投資力」って、聞いたことのない言葉です。それ自体どういう意味なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね。地域の中で生まれたお金が外に流れ出さず、地域の中で繰り返し投資され、また地域に戻ってくる力のことだよ。

この本は、企業を誘致してもプロジェクトで箱物を建てても地域は豊かにならなかった、という戦後の地域開発政策の検証から始まる。

お金が地域で循環するかどうかを軸に据えるのが特徴で、大分の一村一品や由布院のまちづくりまで具体例が続くんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

目次に「企業誘致で地域は豊かになるのか」という章があって、ちょっとドキッとしました。地元でずっと議論になっているテーマなので。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは丁寧に読んでほしい。結論を押し付けるというより、誘致した企業の利益がどこへ流れるのか、なぜ先端化の話がうまくいかないのかを順に追っていく。

404ページあるから、地域の名前が出てくる章から拾い読みしてもいい。読み終わると、地元のニュースの見え方が変わると思うよ。

地域政策の経済学
5

地域政策の経済学

林宜嗣 著|日本評論社

¥2,970(税込)

4.3

伝統的な地域経済学に地方創生という課題を盛り込み、市場と政策という横糸、理論と現実という縦糸を組み合わせて展開する。前半で地域経済の衰退と活性化戦略、都市の衰退と再生を扱い、後半は産業関連表で経済波及効果を測る、政策の効果を計測するといった分析の手引きになる。読んで終わらず、自分で数字を触るところまで連れていく構成が、似た政策本との大きな違い。政策の効果を最大化する条件まで踏み込むのが頼もしい。

こんな人におすすめ

自治体で政策立案や効果検証を担当していて数字で説明できるようになりたい人、地域経済分析を研究テーマにしたい学生、コンサルや金融機関で地域の事業評価に関わる実務者。

良い点

  • 理論と分析手法を一冊で
  • 産業関連表の使い方まで扱う
  • 政策の効果測定に踏み込む

気になる点

  • 前半と後半で難易度が変わる
  • 分析にはデータ入手が前提
  • 285ページは演習込みの重さ

出版社

日本評論社

発売日

2018年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

目次の後半が「産業関連表で経済波及効果を計測しよう」とか、急に手を動かす話になってきて。これ、経済学部の学生じゃないと無理ですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

大丈夫、そこは入口が丁寧だよ。この本の面白さは、前半で地方創生や都市の再生をめぐる議論を押さえてから、後半で「じゃあ自分の地域ではどう測るのか」に移るところにある。

産業関連表で波及効果を出す、政策の効果を計測する、正しい政策を選ぶ。読み物から作業へ橋をかける構成は、似た本にはなかなかない。

橘ナナミ

橘ナナミ

自治体で働いている友人に、施策の効果を説明するのが大変だって聞いたのを思い出しました。そういう人にも効きますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにその人に向いている。感覚で「にぎわいました」と言うのと、数字で「これだけ回った」と言うのでは、議会での説得力が違うからね。

ただ、データが手に入るかどうかが前提になる。まずは後半の手引きの章を眺めて、自分の地域で何が使えるかを確かめてみるといいよ。

地域再生の経済学: 豊かさを問い直す (中公新書 1657)
6

地域再生の経済学: 豊かさを問い直す (中公新書 1657)

神野直彦 著|中央公論新社

¥57(税込)

4.1

中公新書の191ページ、サブタイトルは「豊かさを問い直す」。地域再生という言葉を、人口や産業の話だけでなく、そもそも豊かさとは何かというところまで引き戻して考える一冊だ。新書サイズで通勤かばんに入るが、扱っている問いは重い。理論書や政策本が「どう再生するか」を急ぐのに対し、こちらは何をもって再生と呼ぶのかを先に問う。地域経済の入り口としても、締めくくりとしても読める。

こんな人におすすめ

地域づくりの活動に参加していてで、何がゴールなのかをもやもや考えている人、経済成長以外のものさしを探している人、新書で気軽に地域経済の本を一冊読んでみたい読者。

良い点

  • 新書で読み切りやすい
  • 豊かさから問い直す
  • 議論の土台づくりに向く

気になる点

  • 具体的な手法は少ない
  • データや事例は控えめ
  • 理論の詳細は他書で補いたい

出版社

中央公論新社

発売日

2002年9月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

サブタイトルが「豊かさを問い直す」って、ちょっと哲学みたいですね。地域経済の本なのに、なぜそこから始まるんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこがこの本の立ち位置なんだ。地域再生というと、人口を増やす、企業を呼ぶ、売上を伸ばす、という話になりがちだよね。

でもその前に、何を豊かと呼ぶのかを決めていないと、数字は動いても人は満たされない。問いの立て方から疑うことが、新書で一冊ぶん書かれている。

191ページだから、通勤の往復で読めるよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

私、大学院でメディア論をやっていて、地域の情報と人のつながりを調べているんです。そういう視点でも読めますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

むしろ相性がいいと思う。人が地域で暮らし続けるとき、何が豊かさの実感になるのか。そのへんは情報や関係性の話とも重なるからね。

地域経済の教科書を読んだあとにこれを挟むと、技術的な話が急に自分の問題になる感じがあるはずだよ。

発展する地域 衰退する地域: 地域が自立するための経済学 (ちくま学芸文庫)
7

発展する地域 衰退する地域: 地域が自立するための経済学 (ちくま学芸文庫)

ジェインジェイコブズ 著|筑摩書房

¥1,760(税込)

4.1

地方はなぜ衰退するのか——この問いを、日本をはじめ世界各地の地方都市を実例に、真に有効な再生法として説いた地域経済論の先駆的名著。ちくま学芸文庫で413ページ、肩肘を張らずに読めるのがありがたい。いまの日本の地方創生の議論でも繰り返し参照される源流で、理論書を読む前にこちらを通っておくと、議論の出発点が体に入る。著者ジェイン・ジェイコブズの視線は都市の観察者そのもので、教科書とはまったく違う読書体験になる。

こんな人におすすめ

地域経済や都市論の古典を一度きちんと読んでおきたい人、地方創生の議論に違和感を覚えている実務者、そして文庫サイズで通読できる一冊を探している読書好き。

良い点

  • 文庫で手に取りやすい
  • 世界各地の地方都市の実例が豊富
  • 現在の議論の源流がわかる

気になる点

  • 現代日本のデータはない
  • 統計的な分析が中心ではない
  • 事例が多くじっくり読む必要

出版社

筑摩書房

発売日

2012年11月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

ちくま学芸文庫から地域経済の本が出ているのが意外でした。これ、小説みたいに読めるんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

読める、というか読み物として面白いんだよ。ジェイコブズは都市を歩いて観察する人で、日本を含む世界各地の地方都市を実例に挙げながら、なぜ発展する地域と衰退する地域に分かれるのかを説いていく。

教科書の理論より先に、この本の観察から入ったほうがいいと言う人もいるくらいの名著だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

413ページ、文庫でこの厚さはけっこう読みごたえがありそうです。通読したほうがいいですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

通読するより、ひとつの章を読んで自分の地域に当てはめてみる、の繰り返しが合うと思う。いまの地方創生の議論で使われている言葉の多くは、この本が源流だったりするんだ。

読んでおくと、会議で出てくる話の元ネタが見えるようになるよ。

国際化時代の地域経済学 第4版 (有斐閣アルマ)
8

国際化時代の地域経済学 第4版 (有斐閣アルマ)

岡田知弘 著|有斐閣

¥2,640(税込)

3.9

地域経済学、地域経済、地域開発、地方自治と地域づくりという四つの柱を立て、グローバル化のなかで変貌する地域経済の実態を具体的に示しながら、政治経済学の立場から解説する第4版。地方分権や東日本大震災など、前版からの動きをふまえた更新が入っている。同じ著者の地域づくり論が「地域の中」を見るのに対し、こちらは世界と地域のつながりを正面から扱うのが違い。340ページ、有斐閣アルマで手に取りやすいのも助かる。

こんな人におすすめ

国際化やサプライチェーンの変化と自分の地域の産業がどう関係しているかを知りたい人、政治経済学の立場から地域を学びたい学生、自治体で地域経済の実態を説明する資料が欲しい職員。

良い点

  • 四つの柱で整理されている
  • 震災や分権など更新が入る
  • 政治経済学の視点が一貫

気になる点

  • 立場のはっきりしたテキスト
  • 数字は刊行時点のもの
  • 実務手順は扱わない

出版社

有斐閣

発売日

2016年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「国際化時代の」ってついているのが気になります。地域の本なのに、なぜ国際化なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこが要点でね。地域の工場が海外に移る、安い輸入品が商店街に並ぶ、外国人労働者が地域の産業を支える。

地域の経済はもう、地域の中だけでは説明できない。この本は地域経済学、地域経済、地域開発、地方自治と地域づくりという四つの柱で、その実態を政治経済学の立場から整理していく。

地域を世界の縮図として見る感じかな。

橘ナナミ

橘ナナミ

第4版ということは、けっこう長く読まれている教科書なんですね。改訂では何が変わったんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

東日本大震災や地方分権といった、前版以降の動きをふまえて更新されている。同じ著者の地域づくりの本と並べると、こちらのほうが外の風を強く感じるはずだ。

地域の産業が海外とどうつながっているかに関心があるなら、こちらのほうが刺さると思うよ。

データでみる地域経済入門: 地域分析の経済学
9

データでみる地域経済入門: 地域分析の経済学

坂本光司 著|ミネルヴァ書房

¥3,810(税込)

3.9

タイトル通り、地域経済をデータから眺めるための入門書。副題に「地域分析の経済学」とあるように、印象論ではなく数字を手がかりに地域を読み解く姿勢を最初に据えている。386ページと厚く、価格も教科書相場の範囲ながらしっかりめだ。理論から入る教科書と違い、手元の統計をどう読むかが軸になるので、自治体の資料や白書を前にしたときに効いてくる。演習やレポートの相棒にもなる一冊。

こんな人におすすめ

地域の統計や白書を読めるようになりたい自治体職員や記者、ゼミや卒論で地域データを扱う学生、地元の数字を自分で確かめてから発言したい市民活動家。

良い点

  • データから入る構成が実践的
  • 分析の作法が身につく
  • レポートや資料作成に直結

気になる点

  • 統計の前提知識が要る箇所
  • 386ページと厚め
  • 事例の物語性は薄い

出版社

ミネルヴァ書房

発売日

2003年10月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

地域の話って、どうしても「うちの町は元気がない」みたいな印象論になりがちじゃないですか。この本はそこを数字で、という感じなんですね。

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそう。副題に「地域分析の経済学」とある通り、データを読むための作法を教えてくれる本だ。人口動態、産業構造、財政、雇用。

数字が語るところまで行ってから解釈するという順番を体に入れておくと、地域の議論でとても強くなる。

386ページあるから、辞書のように使ってもいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

私、研究でアンケートの集計をやっているんですけど、数字の読み方に自信がなくて。そういう人間にも読めますか?

佐藤メバル

佐藤メバル

むしろ読んでほしい層だね。平均値が同じでも中身が違う、母数が小さいと揺れる、といった感覚は、研究でも地域分析でも同じように効く。

まずは自分の地元のデータを一章ぶん追いかけてみて。知っている町を数字で見直すと、驚くことが必ずあるよ。

【新版】例題で学ぶ地域経済学入門
10

【新版】例題で学ぶ地域経済学入門

門川和男 著|学術研究出版/BookWay

¥1,980(税込)

3.9

大学の講義やゼミで使うことを目的とした学習書で、チューネンの地代曲線、ウェーバーの工業立地論、クリスタラーの中心地論、レッシュの経済圏、プロダクト・サイクル理論、リカルドの比較優位論、産業集積論、産業クラスター論、垂直分割と範囲の経済、社会ネットワーク分析まで扱う。特徴は例題を解きながら空間の理論を能動的に学べること。練習問題は理解度の確認にもグループワークにも使える。読みっぱなしにしない教材として貴重だ。

こんな人におすすめ

ゼミで手を動かしながら理論を身につけたい学生、人名つきの用語が飛び交う会議で立ち止まっている実務者、独学で経済地理学の基礎を確認したい社会人。

良い点

  • 例題と練習問題が豊富
  • 立地論の古典を一通り覆う
  • ゼミやグループ学習に最適

気になる点

  • 講義と併用が前提の構成
  • 通読向きの読み物ではない
  • 各理論の深掘りは限定的

出版社

学術研究出版/BookWay

発売日

2020年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

チューネン、ウェーバー、クリスタラー……名前だけは試験で覚えたんですけど、正直、何の役に立つのかわかっていませんでした。

佐藤メバル

佐藤メバル

それ、多くの人が通る道だよ。この本は、そういう人名つきの理論を例題で解きながら自分の手で確かめられるようにしてある。

覚える対象だった理論が、使う道具に変わるのが狙いだね。地代曲線や工業立地論、中心地論から、プロダクト・サイクル理論、産業集積論、社会ネットワーク分析まで、空間にまつわる代表的な理論が並んでいる。

橘ナナミ

橘ナナミ

練習問題はグループワークにも使えますか? ゼミで発表を担当することになりそうなんです。

佐藤メバル

佐藤メバル

使いやすいと思う。例題を解いて、練習問題で確認して、章末のトピックで学説の広がりを見る。一人で黙々とやるより、答えが分かれたところを議論の題材にすると理解が定着するよ。

価格も学生が手を出しやすい範囲なのがありがたいね。

サクサクと読み解く『地域経済の勘どころ』
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サクサクと読み解く『地域経済の勘どころ』

緒方哲 著|鉱脈社

¥1,980(税込)

3.7

「ウィズコロナの時代こそ地方の時代に」という言葉から始まり、新型コロナの地域経済への影響、価値観の変化と経済社会のあり方、これまでにもあった地方回帰の動き、それを本物にする道筋、そして国内外の顧客ニーズに対応できる仕事の創出までを、128ページで一気に論じる。高度経済成長期の日本列島改造、バブルのグローバル化、ふるさと創生と流れを振り返ったうえで、地域経済の見える化を土台にする。薄さと密度のバランスが独特だ。

こんな人におすすめ

地域の仕事に携わりながら全体像を短時間で整理したい人、地方移住や起業を現実的に考え始めた人、会議の前に読んで論点を持ち込みたい自治体職員。

良い点

  • 128ページで一気に読める
  • 歴史の流れを踏まえている
  • 4つの勘どころで整理

気になる点

  • 理論書の代わりにはならない
  • 各地の詳細事例は扱わない
  • 具体的な施策の手順は少ない

出版社

鉱脈社

発売日

2022年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

128ページで1980円……正直、薄いのにこの値段? と思ってしまいました。すみません、浅はかでした。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい質問だね、そこは気になるところだ。でもこの本は薄さが設計でね。地域経済の話は、教科書だと要点にたどり着くまでに何百ページもかかる。

それを4つの勘どころに絞って、新型コロナの影響から、地方回帰を本物にする道筋、顧客ニーズに対応する仕事づくりまで一気に通してくれる。

短時間で現在地を掴むタイプの一冊なんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

地方の時代、みたいな言葉はよく聞きますけど、正直いまいちピンとこなくて。また同じことを言っているのかなと。

佐藤メバル

佐藤メバル

そのもやもやを、日本列島改造からバブル期のグローバル化、ふるさと創生まで振り返って、なぜそのたびに期待が裏切られたのかを確認するところから始める。

だから「また地方の時代か」と思っている人ほど読む価値がある。会議の前に読んで、論点を持ち込む使い方が似合う本だよ。

地域と人口減少の経済学-スマート・シュリンクという選択肢 (中公新書)
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地域と人口減少の経済学-スマート・シュリンクという選択肢 (中公新書)

小峰隆夫 著|中央公論新社

¥990(税込)

3.7

「人口1億人目標」「東京一極集中批判」「コロナショックで人の流れは変わった」——人口減少と地域問題にはびこる通説・俗説や、問題含みの地方創生政策を、著名エコノミストがデータで覆していく。人口が減っても暮らしの質を損なわないための処方箋として提唱するのが、スマートシュリンク=賢く縮むという考え方。行動経済学やマーケットデザインの理論と豊富な経年データをもとに、多くの地域で応用可能な共有型モデルを紹介する。議論の前提を疑う一冊だ。

こんな人におすすめ

「人口が減ったら終わり」という前提にもやもやしている地域関係者、これからのまちの縮め方を考えたい自治体職員、新書で最新の地域経済論を一冊仕入れたい読者。

良い点

  • 通説をデータで検証する
  • 新書で読みやすい
  • スマートシュリンクの視点

気になる点

  • 縮むことを前提にした議論
  • 施策の具体的手順は少ない
  • 反論が気になる人には刺激的

出版社

中央公論新社

発売日

2026年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「スマートシュリンク」って、聞いた瞬間ちょっと暗い感じがしました。縮むのを目指すんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

言葉の印象より中身は前向きだよ。人口が減ることを前提にしたときに、暮らしの質を落とさず、むしろ賢く形を変えていく。

そのほうが、増えることを前提にした政策で疲弊し続けるよりずっと現実的だという主張なんだ。行動経済学やマーケットデザインの理論を使って、共有型のモデルを示してくれる。

前提を置き直すと選択肢が増える、という本だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

でも、地元で「縮む」なんて言ったら怒られそうで、ちょっと怖いです。読むのに勇気がいります。

佐藤メバル

佐藤メバル

その感覚は正直だと思う。ただこの本は、通説や俗説を数字で丁寧に剥がしていくところから始まるから、感情論への対抗馬になりうる。

新書で192ページだから、まず自分の中でこの議論を消化してから、周りと話すといい。読む前と後で、議論の土俵が変わるよ。

しなやかで強い地域経済をつくる―地域経済レジリエンスの理論と実践―
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しなやかで強い地域経済をつくる―地域経済レジリエンスの理論と実践―

辻本勝久 著|晃洋書房

¥3,080(税込)

3.7

気候変動や人口減少で不確実性が常態化するなか、単なる原状回復を超えて、危機を契機に新たな成長へ移行する「適応的レジリエンス」を掲げる。経済・法・福祉・交通を横断し、由布院の観光まちづくり、農協の取り組み、商店街のデジタル活用、歩く人目線の地域デザイン、伊賀地域の公共交通再生まで現場の章が続く。理論と実践の両輪で、戻すのではなく進めるという発想が全編を貫いている。

こんな人におすすめ

災害や人口減でどう立て直すかに悩む自治体や商店街の関係者、観光や交通を横断して地域を考えたい実務者、複数分野をまたぐ研究をしたい大学院生。

良い点

  • 理論と現場事例の両方が厚い
  • 観光・農協・商店街・交通を横断
  • 適応という視点が実務的

気になる点

  • 価格は高めの部類
  • 各分野の詳細は専門書が要る
  • 章ごとにテーマが大きく変わる

出版社

晃洋書房

発売日

2026年8月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「レジリエンス」って最近よく聞くんですけど、地域の文脈だと何を指すんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

簡単に言えば、揺さぶられても折れずに戻る力。さらに進めば、危機をきっかけに形を変えて前に進む力だよ。

この本が面白いのは、単なる原状回復ではなく「適応的レジリエンス」を掲げている点だね。由布院の観光まちづくり、農協、商店街のデジタル活用、歩く人目線の地域デザイン、伊賀地域の公共交通再生まで、現場の章がたっぷり続く構成なんだ。

橘ナナミ

橘ナナミ

分野がばらばらに見えるんですけど、経済と法と福祉と交通をいっぺんに扱うって、読んでいて混乱しませんか?

佐藤メバル

佐藤メバル

そこはこの本の主張でもある。災害や人口減は、ひとつの分野だけでは起きないからね。だからこそ横断して考える必要がある。

200ページでコンパクトにまとまっているから、まず全体を通してから、自分の関心のある章——観光か交通か商店街か——に戻る読み方が効率的だよ。

人間復興の地域経済学: 地域とくらしの歴史・理論・政策
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人間復興の地域経済学: 地域とくらしの歴史・理論・政策

岡田知弘 著|株式会社自治体研究社

¥3,960(税込)

3.7

経済のグローバル化や多発する自然災害を背景に、日本の経済社会が大きな転機を迎えているという認識から出発する。地域を土台に人びとのくらしを立て直す「人間復興」という観点から、日本だけでなく中国、米国、フィリピンのさまざまな地域とクロスさせながら、地域形成の諸課題を政治経済学の視点で追究する。448ページと最も厚い部類で、海外の地域と並べることで自国を相対化する。比較でしか見えない輪郭を浮かび上がらせる一冊。

こんな人におすすめ

地域を国内の文脈だけでなく国際比較の中で考えたい研究者や大学院生、災害復興と地域経済の関係を追っている実務者、地域づくりの思想的な土台を求めている市民活動家。

良い点

  • 海外事例との比較が入る
  • くらしからの視点が一貫
  • 災害と地域を結びつけて扱う

気になる点

  • 448ページと最も厚い
  • 価格も高めの部類
  • 政治経済学の立場が前面

出版社

株式会社自治体研究社

発売日

2024年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

中国、米国、フィリピンの地域と並べて日本を見るって、ちょっと想像がつかないです。なぜ海外なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

自国の常識は、外から見ないと輪郭が見えないからだね。この本は「人間復興」——地域を土台に人びとのくらしを立て直す——という観点を持って、日本の各地域を海外の地域とクロスさせながら課題を掘っていく。

比較するから見える構造があるというわけだ。448ページと厚いけれど、その往復にページを使っている。

橘ナナミ

橘ナナミ

グローバル化と災害を同時に扱うのがすごいですね。私の研究も災害報道を扱っていて、地域の立て直しの話と近い気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

それならなおさら刺さると思う。災害は地域経済の弱さを一気に露出させるから、この本の問題意識と直結するんだ。

読むときは、自分の地元に置き換えながら読むと理解が速い。全部を覚えようとせず、比較の章だけをつまんでいくのもいい読み方だよ。

都市と地域の経済学 新版 (有斐閣ブックス 391)
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都市と地域の経済学 新版 (有斐閣ブックス 391)

黒田達朗 著|有斐閣

¥2,750(税込)

3.7

都市や地域の盛衰をはじめ、住宅、産業立地、地域間格差、交通、環境、地方財政まで、多岐にわたる都市と地域の問題を解明する。バブル経済の崩壊や平成の大合併に伴ってデータを更新するだけでなく、発展の著しい空間経済学の理論を取り入れて全面的に改訂したのがこの新版だ。住宅や交通など生活実感のあるテーマから、地方財政のような制度の話まで一冊でつながる。論点の網羅性では群を抜く。

こんな人におすすめ

住宅・交通・環境など個別テーマの経済学を一冊で押さえたい学生、都市政策を担当する自治体職員、学位論文やレポートで都市経済学の全体像を確認したい大学院生。

良い点

  • 住宅から財政まで網羅
  • 空間経済学を取り入れた更新
  • テーマごとに拾い読みしやすい

気になる点

  • 338ページは通読に時間がかかる
  • 各テーマの深さは専門書に譲る
  • 事例は理論の補助的程度

出版社

有斐閣

発売日

2008年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

住宅、交通、環境、地方財政……テーマが多くて、逆にどこから読めばいいのか迷いそうです。

佐藤メバル

佐藤メバル

その場合は、いま自分が困っているテーマから入るのがいい。この本は都市と地域の問題を広く覆う構成だから、章が独立していて拾い読みがしやすいんだ。

新版ではバブル崩壊や平成の大合併に伴うデータ更新に加えて、発展の著しい空間経済学の理論が取り入れられている。そこが旧版との大きな違いだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

空間経済学、また聞き慣れない言葉が出てきました。それってどういう意味ですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

簡単に言うと、経済活動がどこに集まるのか、なぜ都市と地方に分かれるのかを、地理的な距離を組み込んで考える理論だよ。

この本は、そうした理論を住宅や交通といった身近なテーマの説明に使っている。だから抽象論ではなく、自分の住んでいる町の話として読める。

まず目次を眺めて、いちばん気になる章を開いてみて。

都市と地域の経済理論 空間的市場群の分析 (創文社オンデマンド叢書)
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都市と地域の経済理論 空間的市場群の分析 (創文社オンデマンド叢書)

中込正樹 著|講談社

3.5

国境を越えた広域的な階層的市場構造を分析し、産業空洞化や市場間分業、流通構造の変化を統一的に解明しようとする理論書。競争市場と不完全競争のモデルから出発し、市場地域の半径と賃金格差、近代的部門と伝統的部門、製品差別化分業、工程間分業、貿易と垂直的取引制限へと積み上げていく。空間的市場群という概念で地域経済圏の成長と空洞化を同じ枠組みで語るのが持ち味。行動経済学を専門とする著者による本格的な理論書だ。

こんな人におすすめ

大学院で空間経済や産業立地の理論を本格的に学びたい人、産業空洞化や分業構造の変化を理論から理解したい研究者、企業の立地や流通の分析に関わる実務家。

良い点

  • 市場構造の理論分析が本格的
  • 空洞化と分業を統一的に扱う
  • 流通・貿易まで射程に入る

気になる点

  • 数式中心で難度が高い
  • 学部の入門には向かない
  • 事例や政策提言は中心でない

出版社

講談社

発売日

2022年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「空間的市場群」って、聞いたことのない言葉です。造語なんですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

一言でいえば、国境を越えて階層的に重なる市場のまとまりを捉えるための概念だ。この本は、市場地域の半径と賃金格差がどう決まるか、製品差別化分業や工程間分業がどう進むか、貿易と流通の垂直的取引制限が何をもたらすかを、理論モデルで積み上げていく。

産業空洞化と地域経済圏の成長を同じ枠組みで語ろうとするのが野心的なところだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

私にはかなり難しそうです……。学部の入門を終えたあたりで読む感じでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

その位置づけでいい。数式が中心だから、地域経済学の教科書を一通り読んでから挑むほうが迷わない。ただ、著者は行動経済学を専門とする人で、これはその著者による本格的な理論書という位置づけになる。

理論の厚みを体験したいときに手に取ってみてほしい。

地域経済の計量分析 (地域経済学大系)
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地域経済の計量分析 (地域経済学大系)

金子敬生 著|勁草書房

3.5

タイトルが示す通り、地域経済を計量的に分析するための一冊。346ページ、勁草書房という学術系の出版社から出ていることからも、統計モデルとデータで地域を扱いたい読者を想定した作りだとわかる。政策論や事例紹介の本が多いなかで、推計して確かめるという手続きに重心を置くのは貴重だ。地域の統計を自分で動かしたい人にとって、座標軸になる一冊になる。

こんな人におすすめ

経済学の計量分析を地域データで実践したい大学院生、自治体やシンクタンクで統計的な政策評価を担う人、地域研究に数字の裏付けを与えたい研究者。

良い点

  • 計量分析に焦点を絞る
  • 346ページの学術的な厚み
  • 統計的な政策評価に直結

気になる点

  • 計量経済学の前提知識が要る
  • 事例や物語は期待しにくい
  • 初学者には入り口が高い

出版社

勁草書房

発売日

詳細情報なし

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

地域経済の本にも、計量分析みたいな統計ガチのものがあるんですね。正直、読む人がいるのか想像できませんでした。

佐藤メバル

佐藤メバル

必要としている人は確実にいるんだよ。たとえば、施策の効果を統計的に確かめたい人、地域のデータでモデルを動かしたい大学院生。

この手の本は数が少ないから、あって助かるというタイプだ。数字で地域を語る訓練をしたいなら、ここは避けて通れない。

346ページぶんの手続きが詰まっている。

橘ナナミ

橘ナナミ

私の研究はインタビューが中心なので、ずいぶん遠い世界の気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

遠いと思ったままでも大丈夫。ただ、質的な研究をしている人ほど「この解釈は数字で支持されるのか」と問われる場面がある。

手元に一冊あると、自分の主張の強さを確かめる道具になるよ。まずは目次で、いまの自分に読めそうな章を探してみて。

地域の経済分析
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地域の経済分析

井原健雄 著|中央経済グループパブリッシング

3.5

「地域の経済分析」というタイトルの通り、地域をデータで分析する入口を扱う一冊。224ページと、同種の分析系の本のなかでは軽めで、通読しやすい分量にまとまっている。中央経済グループパブリッシングという経済・経営系の教科書を多く出す出版社からの刊行で、学術書と実務書の中間に位置する作りだ。厚い理論書の前の一歩として、あるいは自治体の資料作成の相棒として使いやすい。

こんな人におすすめ

地域データの分析をまず一冊でつかみたい自治体職員や学生、統計の本は重すぎて挫折した経験のある人、会議資料に数字を足したい実務者。

良い点

  • 224ページで取り組みやすい
  • 分析の入口を広く扱う
  • 実務と学習の中間にある

気になる点

  • 高度な手法は他書が必要
  • 理論的な深掘りは控えめ
  • 事例の量は多くない

出版社

中央経済グループパブリッシング

発売日

1996年2月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

224ページなら、私でも最後まで行けそうな気がします。でも逆に、これで足りるのかなとも思ってしまって。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい読み方だね。足りるかどうかで言えば、入口としては足りる。逆に、いきなり計量の専門書を開いて心が折れる人のほうが多いんだ。

まず全体の地形を掴むために224ページはちょうどいい。そのうえで物足りなくなったら、より専門的な本に進めばいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さんの書店員時代、この手の本はどう売れていたんですか? やっぱり買って終わりだったりするんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

この手の本は、講義で必要になった学生と、研修で必要になった社会人が多い印象だったな。ただ、買った人が後で戻ってきて「これは手元に置いておきます」と言う種類の本でもある。

読み切るより、必要な章に何度も戻る。そういう付き合い方がいちばん長持ちするよ。

地域金融の経済学:人口減少下の地方活性化と銀行業の役割
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地域金融の経済学:人口減少下の地方活性化と銀行業の役割

小倉義明 著|慶應義塾大学出版会

¥2,970(税込)

3.5

第62回エコノミスト賞を受賞した一冊。地銀・信金信組といった地域金融機関を、消滅論ではなく地域経済を守る支柱として捉え直し、収益力の低下や熾烈な融資競争、自然災害や疫病といった困難な環境を、経済学の手法で丁寧に分析する。ミクロの金融ビッグデータを使った実証を取り込みながら、専門家以外や地方金融機関の実務家にもわかるように書かれている。地銀は生き残れるか、という問いの立て方自体を疑うのが特徴だ。

こんな人におすすめ

地域金融機関に勤める実務家、地域の資金循環をデータで理解したい研究者や大学院生、事業性評価や金融行政に関わる人、地域経済を支える金融の役割を政策として考えたい自治体職員。

良い点

  • エコノミスト賞を受賞
  • 金融ビッグデータの実証が厚い
  • 実務家にも読める書きぶり

気になる点

  • 金融の基礎用語は必要
  • 272ページは内容が濃い
  • 他業態の話は中心でない

出版社

慶應義塾大学出版会

発売日

2021年7月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

地域金融って、ふだんあまり意識しないんですけど、地元の銀行がなくなったら困るんだろうな、くらいの認識です。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこからで十分だよ。この本は、地銀や信金が消滅すると言われる時代に、実は地域経済を守る支柱でもあるという二面性から始まる。

融資競争が激しくなり、利鞘が縮み、災害や疫病が追い打ちをかける。そのなかでリスクを取るとはどういうことかを、ミクロの金融データを使って実証している。第62回エコノミスト賞の受賞作だよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

実務家にもわかるように書かれている、というのが気になります。専門書だと途中で置いていかれそうで。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこは配慮が行き届いている。アカデミックな手法を使いながら、専門家以外の読者や地方金融機関で働く人にも現状が伝わるように書かれているんだ。

経営統合やフィンテックへの適合といった課題も章で扱われる。金融機関に友人がいるなら、ぜひ教えてあげてほしい一冊だね。

地域経済学と地域政策
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地域経済学と地域政策

H.アームストロング 著|流通経済大学出版会

¥6,043(税込)

3.5

H.アームストロングによる地域経済学と地域政策の本格テキスト。555ページ、6043円というのは、この分野では明らかに研究・教育向けの装いで、入門書や新書とは読者層が違う。タイトルが理論編と政策編の二本立てを示しており、地域経済学の理論と地域政策を一冊で往復する構成が想像できる。海外で書かれた体系書を日本語で読めるのは、この分野では貴重だ。

こんな人におすすめ

地域経済学を研究レベルで体系的に押さえたい大学院生や研究者、海外のテキストで理論と政策の枠組みを確認したい人、蔵書として手元に置いておきたい実務家。

良い点

  • 理論と政策を一冊で往復
  • 555ページの本格的な体系
  • 海外の視点が入る

気になる点

  • 価格が高く個人には重い
  • 分量が多く通読は困難
  • 日本の制度の説明は薄い

出版社

流通経済大学出版会

発売日

2005年1月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

6043円……。正直、学生が気軽に手を出す値段ではないですよね。

佐藤メバル

佐藤メバル

そう、これは気軽に買う本ではない。図書館で出会うか、研究で必要になってから買うか、という一冊だ。ただ、555ページあるということは、それだけの内容を一冊に収めているということでもある。

理論と政策を往復する構成を日本語で読めるのはありがたい。地域経済学を本気でやるなら、いつか脇に置いておきたい本だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

翻訳書だと、日本の話が出てこないのが寂しい気もします。実感が湧くんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

それはある。日本の制度や事例は別の本で補う必要があるね。でも逆に、海外の理論書を先に読むと、日本の教科書がどこを強調しているかが見えてくる。

橘さんがメディア論で海外の文献を読むのと同じで、比較の物差しになるんだよ。

地域政策〈第2版〉 (ベーシック+)
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地域政策〈第2版〉 (ベーシック+)

山﨑朗 著|中央経済グループパブリッシング

¥2,640(税込)

3.5

地域政策の対象、目的、手段、政策主体といった基本を、具体例を織り込みながら解説する好評テキストの第2版。デジタル化、テレワーク、電気自動車といった新しい動きや産業がフォローされているのが更新の要点だ。272ページと講義一冊ぶんの分量で、政策の「そもそも何を対象にしているのか」から丁寧に始まる。政策の語彙をそろえるのに向いていて、実務者にも学生にも効く。

こんな人におすすめ

自治体で地域政策に携わり始めた若手職員、地域政策の基本用語を整理したい議員や記者、テレワークや電気自動車など新しい動きが制度とどう関わるか知りたい人。

良い点

  • 政策の基本を体系的に整理
  • デジタル・テレワークを収録
  • 具体例つきで読みやすい

気になる点

  • 理論の掘り下げは控えめ
  • 事例は網羅的ではない
  • データは刊行時点のもの

出版社

中央経済グループパブリッシング

発売日

2022年12月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

地域政策って、対象も目的も手段も、政策主体もいる。登場人物が多すぎませんか?

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそれを整理する本だよ。政策には、誰が、何のために、どの手段で、という基本の型がある。それを具体例を織り込みながら説明していく。

第2版ではデジタル化、テレワーク、電気自動車といった新しい動きや産業もフォローしている。政策の語彙をそろえるのにちょうどいい272ページだね。

橘ナナミ

橘ナナミ

テレワークが地域政策の話に出てくるのが意外です。単なる働き方の話だと思っていました。

佐藤メバル

佐藤メバル

働く場所が変えられるというのは、人の流れを変える力を持つからね。だから政策の論点になるんだ。この本のいいところは、そうした新しい話も基本の枠に位置づけて説明するところだ。

自治体に入ったばかりの人が、最初の半年で読むと強いよ。

地域振興の経済学
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地域振興の経済学

H.アームストロング 著|晃洋書房

¥5,323(税込)

3.5

同じ著者による地域経済学の体系書とは別に、地域振興という目的を正面に据えた一冊。388ページ、晃洋書房からで、価格は研究書の帯だ。タイトルが示す通り、政策の理念より「振興」という実務的な目標から地域経済を組み立てる姿勢が読み取れる。同じ著者の理論書と読み比べると、抽象と実践の間でどこを強調しているかの違いが見えてくる。地域づくりに関わる人が座右に置く種類の本だ。

こんな人におすすめ

地域振興の施策を経済学の言葉で説明したい実務者、地域開発や産業振興の評価を学びたい大学院生、海外のテキストで政策の組み立て方を確認したい人。

良い点

  • 振興という目的が明確
  • 388ページのまとまった体系
  • 理論書と読み比べられる

気になる点

  • 価格が高く入手しにくい
  • 翻訳ゆえ日本の制度は薄い
  • 入門には向かない

出版社

晃洋書房

発売日

1991年7月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

さっきの『地域経済学と地域政策』と同じ著者ですよね。両方読む必要があるんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

必要というより、興味の向きで選ぶといい。こちらは「地域振興」という目的がタイトルに立っている。388ページで、地域をどう振興するかという実務的な問いから経済学を組み立てていく。

同じ著者の理論書と並べると、強調点の違いが見えるから、研究している人には面白い読み比べになるよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

5323円は、やっぱり図書館で探す感じですかね。個人で買うには勇気がいります。

佐藤メバル

佐藤メバル

まずは図書館で確かめて、必要なら手元に、という順番でいいと思う。この手の翻訳テキストは、必要な章だけを繰り返し読む使い方が現実的だ。

地域振興の計画づくりに関わっているなら、序盤の枠組みの章だけでも読む価値があるよ。

地域経済政策学入門
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地域経済政策学入門

帝京大学地域経済学科 著|八朔社

¥3,080(税込)

3.5

地域経済の衰退だけでなく、地域社会そのものの維持が難しくなる地域が急増しているという問題意識から始まる、大学の学科による入門書。冒頭に「何を教育目標として掲げるか」という問いが置かれているのが特徴で、単なる理論の解説ではなく、この分野を学ぶ意味から組み立てる教科書になっている。334ページ、複数の教員が関わる学科の本だけに扱う範囲も広い。地域で働くことを考え始めた学生の地図になる。

こんな人におすすめ

地域経済学科や政策系学部に進んだ1・2年生、地域で働く道を考え始めた高校生とその保護者、地域をテーマにした授業を組み立てる教員。

良い点

  • 学ぶ意味から説き起こす
  • 学科の総力で範囲が広い
  • 進路を考える材料になる

気になる点

  • 単独の理論書ではない
  • 章ごとに著者が異なる
  • 研究用途には浅い箇所も

出版社

八朔社

発売日

2017年5月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

大学の学科がまるごと書いた教科書って、珍しい気がします。いったい誰が読むんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

まずはその学科で学ぶ学生だね。この本は「地域社会そのものの維持が難しくなる地域が急増している」という現実から始まって、では何を教育目標に掲げるかを問うところから組み立てられている。

学ぶ意味から入る教科書は意外と少ない。334ページで、地域経済政策という分野の見取り図になる。

橘ナナミ

橘ナナミ

高校生が進路を決めるときにも使えそうですか? 弟がちょうど学部選びで悩んでいて。

佐藤メバル

佐藤メバル

使えると思う。オープンキャンパスの冊子より、ずっと具体的にこの学科で何を学ぶのかが見えるからね。保護者の人が「地域経済って就職あるの」と心配しているなら、これを渡すのがいちばん早いかもしれない。

読み物としても、地域で働くとはどういうことかを考えさせてくれるよ。

地域自立の経済学 第2版
24

地域自立の経済学 第2版

中村尚司 著|日本評論社

3.5

「地域自立」という言葉をタイトルに掲げた204ページの一冊。第2版として更新されていることからも、息の長い議論として読まれてきたことがうかがえる。中央からの支援や外からの投資ではなく、地域が自ら立つとはどういうことかを経済学の言葉で考える。自立という言葉を合言葉で終わらせない構成で、コンパクトなぶん論点が絞られている。地域づくりの思想的支柱を探す人に向く。

こんな人におすすめ

地域づくりに関わりながら自立って何だろうと立ち止まっている人、補助金に依存しない地域のあり方を考えたい実務者、コンパクトな一冊で地域経済の思想に触れたい読者。

良い点

  • 204ページで読み切りやすい
  • 自立という軸が明確
  • 版を重ねた議論の厚み

気になる点

  • 具体的な分析手法は少ない
  • 事例やデータは限られる
  • 実務の手順書ではない

出版社

日本評論社

発売日

1998年3月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「地域自立」って、よく聞くわりに、人によって言っていることが違う気がするんです。

佐藤メバル

佐藤メバル

そこを突きつめてくれる本だね。中央からもらう、外から投資してもらう、ではなく、地域が自分で立つ。その「立つ」の中身を経済学の言葉で考える。

204ページでコンパクトだから、合言葉を概念に変える作業に向いている。第2版まで出ているということは、それだけ長く問われ続けてきたテーマだということだよ。

橘ナナミ

橘ナナミ

補助金なしでやっていく、みたいな厳しい精神論の話ですか? だとしたら少し身構えます。

佐藤メバル

佐藤メバル

精神論に寄せる本ではないよ。ただ、自立の意味を定義しないまま「自立しよう」と言っても、現場は動かない。

この本はそこを言葉にするところから始める。地域おこしの活動をしている人なら、自分の言葉を点検するつもりで読むと収穫があるはずだ。

地域政策のすすめ
25

地域政策のすすめ

大阪経済大学地域政策学科 著|法律文化社

3.5

大阪経済大学の地域政策学科が編んだ192ページの一冊。タイトルが「入門」ではなく「すすめ」なのが効いていて、制度の解説より、地域政策という営みに読者を招き入れる姿勢が前に出ている。コンパクトなぶん、学問の入口を広く見せることに紙幅が割かれている。類書が制度の網羅を目指すなかで、こちらはなぜ学ぶのかに重心があるのがわかる。進路や学部選びの時期にも手に取りやすい。

こんな人におすすめ

地域政策を学ぶ学部生や進学を考えている高校生、地域に関わる仕事に就きたいと考え始めた社会人、学科の紹介やガイダンスの資料を探している教員。

良い点

  • 192ページで軽い
  • すすめという招待の姿勢
  • 学問の入口を広く見せる

気になる点

  • 制度の詳細は他書が要る
  • 専門的な分析は少ない
  • 章ごとの分担で濃淡がある

出版社

法律文化社

発売日

2002年4月

ページ数

詳細情報なし

橘ナナミ

橘ナナミ

「入門」じゃなくて「すすめ」なんですね。タイトルでそこを変える意味ってあるんでしょうか。

佐藤メバル

佐藤メバル

あると思うよ。入門は「わからない人が基礎を身につける」という響きだけど、すすめは「一緒にやりませんか」という誘いだ。

この本は大阪経済大学の地域政策学科が編んだ192ページで、制度の網羅より学びの入口を広く見せることに紙幅を使っている。

これから学ぶ人、進路を迷っている人に手渡しやすい一冊だね。

橘ナナミ

橘ナナミ

私も大学院を選ぶとき、学科の紹介資料を何冊も読みました。そういう使い方をする本ですか?

佐藤メバル

佐藤メバル

まさにそういう使われ方が似合う。ただ、社会人が自分の地域を見直すのにも向いているんだ。読み終わったら、次は理論書か事例集に進むといい。

この本はゴールではなく扉だと思って、気軽に開いてみてほしい。

地域経済学・都市経済学・経済地理学・空間経済学の関係を一枚の地図にする

橘ナナミ

橘ナナミ

名前が似た4分野、結局どう違うんですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

幹は「空間を入れた経済学」で、枝が4本あると考えてみよう。「地域経済学」は地域の産業・雇用・財政・政策をまとめて扱う総合系で、山田浩之の「地域経済学入門 第3版」や宮本憲一の「地域経済学」がその幹に近い。都市経済学は都市の内部構造——住宅、立地、地域間格差、交通、環境、地方財政——を扱う。黒田達朗の「都市と地域の経済学 新版」はその両方を橋渡しする本で、改訂で空間経済学の理論も取り入れている。

橘ナナミ

橘ナナミ

経済地理学と空間経済学は?

佐藤メバル

佐藤メバル

経済地理学は、産業立地や集積を歴史と地理の実態から見る系統だ。「例題で学ぶ地域経済学入門」はチューネンやウェーバー、クリスタラー、レッシュといった立地論の古典に、ヴァーノンやマークセンのプロダクト・サイクル理論、産業集積論、産業クラスター論まで例題でたどるから、ここを体系的に学べる。空間経済学は、集積がなぜ起きるかを数理モデルで説明しようとする系統で、中込正樹の「都市と地域の経済理論」が該当する。アームストロングの「地域経済学と地域政策」「地域振興の経済学」は、この理論群を政策に接続する教科書だね。

「理論→分析→現場」の3層ラダーで読む

橘ナナミ

橘ナナミ

読む順番を、層で考えることはできますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

できる。第1層が理論、第2層が分析、第3層が現場だ。理論は入門書と教科書で「立地均衡」「集積の経済」といったコア概念を押さえる。分析は「地域政策の経済学」のように産業連関表で波及効果を計測するパートを持つ本や、「地域経済の計量分析」「地域の経済分析」のような計量系の本で手を動かす。

橘ナナミ

橘ナナミ

実データはどこから触ればいいんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

RESASやe-Statのような公開データ、そして産業連関表と地域経済循環分析の流れだね。地域経済循環分析は「生産→分配→支出」の循環を可視化する手法で、地域内再投資力の議論とそのままつながる。「データでみる地域経済入門」は、その入口として地域を数字で読む練習になる。読んで終わりにせず、自分の地域の数字を1つ確かめる。ここが到達点だよ。

古典と失敗本、書誌の鮮度——事例信仰に陥らないために

橘ナナミ

橘ナナミ

古典は今読んでも意味がありますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

あるよ。ジェイン・ジェイコブズの「発展する地域 衰退する地域」は、日本を含む世界各地の地方都市を実例に、地域が自立するための経済学を説いた地域経済論の先駆的名著で、ちくま学芸文庫で読める。地方はなぜ衰退するのかという問いを、人口減少やリモートワークの時代に読み直すと、地域内で産業が重なり合うことの意味がよく見えてくる。

橘ナナミ

橘ナナミ

逆に、読むときの注意はありますか。

佐藤メバル

佐藤メバル

成功事例の本だけを読むと、うまくいった原因を施策に決め打ちしてしまう。因果の誤認だね。だから「地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論」のように企業誘致やプロジェクト型開発の失敗を検証する本、「人間復興の地域経済学」や「国際化時代の地域経済学 第4版」のように政治経済学の立場から長期の変化を整理する本を、必ずセットで読んでほしい。理論書と批判本を並べることで、はじめて事例が判断できる材料になる。

橘ナナミ

橘ナナミ

書誌の鮮度はどう見ればいいですか。

佐藤メバル

佐藤メバル

版と刊行の情報は必ず確認して。改訂版があれば新版を、絶版なら図書館を。電子書籍や音声、図書館の活用で入手のハードルは下げられる。重い教科書は紙で手元に、新書は電子で移動中に、という併用もいいよ。

よくある質問

地域経済学の本は初心者ならどれから読めばいいですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

地域経済学の本は初心者ならどれから読めばいいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

最初の1冊は「地域経済学入門 第3版」か「都市・地域経済学への招待状〔新版〕」が無難です。前者は理論と政策のバランス型、後者は暮らしに近い問いから入る構成で、どちらも改訂を重ねた入門です。自分の生活に引き寄せて考えたいなら後者、政策まで見通したいなら前者を選ぶとよいでしょう。

地域経済学と都市経済学、経済地理学、空間経済学は何が違うのですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

地域経済学と都市経済学、経済地理学、空間経済学は何が違うのですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

空間を扱う経済学の枝分かれです。地域経済学は産業・雇用・財政・政策をまとめて扱う総合系、都市経済学は都市内部の住宅・立地・交通・地方財政、経済地理学は産業立地や集積を地理と歴史の実態から見る系統、空間経済学は集積の発生を数理モデルで説明する系統です。「都市と地域の経済学 新版」は複数を橋渡しする位置にあります。

数式が苦手でも読める地域経済学の入門書はありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

数式が苦手でも読める地域経済学の入門書はありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

あります。「地域再生の経済学」「地域と人口減少の経済学」のような新書は、数式を追わずに論点をつかめます。グラフやデータは出てきますが、文章で筋を追えるものが中心です。逆に数式を避けたまま理論書に入ると挫折しやすいので、まず新書で地図を作るのが安全です。

地方創生やまちづくりの実務書から先に読んでもよいですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

地方創生やまちづくりの実務書から先に読んでもよいですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

構いませんが、単独で読むと事例の因果を施策に決め打ちしやすくなります。「地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論」のように失敗を検証する本、「地域政策の経済学」や「地域政策〈第2版〉」のように政策の枠組みを与える本を並べると、現場の経験が一般化できるようになります。

産業連関分析やRESASを独学で学べる本はありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

産業連関分析やRESASを独学で学べる本はありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

「地域政策の経済学」は産業連関表で経済波及効果を計測する手引きと、都市・地域経済分析のためのデータ収集まで扱っています。「地域経済の計量分析」「地域の経済分析」も計量系の入口です。RESASやe-Statといった公開データと併用し、まずは自分の地域の1指標を再現してみるのが近道です。

『地方消滅』など出版年の古い本は今読む意味がありますか?

橘ナナミ

橘ナナミ

『地方消滅』など出版年の古い本は今読む意味がありますかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

あります。当時の推計が何を当て、何を外したかを確かめる読み方ができるからです。「地域づくりの経済学入門 地域内再投資力論」には「増田レポート」と「地方創生」、国土形成計画の見直しを扱う章があり、批判的な検証とセットで読めます。古い本は結論ではなく前提を学ぶつもりで読むとよいでしょう。

自治体職員・金融機関・まちづくり会社におすすめの本はどれですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

自治体職員・金融機関・まちづくり会社におすすめの本はどれですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

自治体職員は「地域政策の経済学」「地域政策〈第2版〉」「地域政策のすすめ」、金融機関は「地域金融の経済学」、まちづくり会社や経営者は「地域振興の経済学」「サクサクと読み解く『地域経済の勘どころ』」が入口になります。共通の土台として「地域経済学入門 第3版」を1冊置いておくと、部署が違っても話が噛み合うはずです。

新書と教科書はどちらを先に読むべきですか?

橘ナナミ

橘ナナミ

新書と教科書はどちらを先に読むべきですかについて教えてください。

佐藤メバル

佐藤メバル

新書が先です。新書で論点の見取り図を作り、教科書で理論を埋める順番が挫折しにくい。200ページ前後の新書なら数日、300ページ超の教科書は数週間を見込み、章単位で往復しながら読むと定着します。いきなり分厚い教科書の1ページ目から始める必要はありません。

まとめ

橘ナナミ

橘ナナミ

佐藤さん、最初は「タイトルが似すぎて選べない」と言っていたんですが、いまは選び方の軸が手元にある気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

それで十分だよ。理論の入門書を1冊、分析の本を1冊、現場の本を1冊。まずは3冊でいい。

橘ナナミ

橘ナナミ

3冊なら、私でも読めそうです。でも、地方創生やまちづくりの実務書から先に読むとどうなるんでしょう。

佐藤メバル

佐藤メバル

現場の解像度は上がるけれど、目の前の事例を一般化する道具を持てないままになる。新書で論点の地図を作ってから現場に降りると、同じ事例がまったく違って見えるはずだよ。失敗を検証した本を並べておけば、なおさらね。

橘ナナミ

橘ナナミ

なるほど……。地域経済学の本って、地図というより、等高線を書き込むための定規みたいですね。自分のまちという見慣れた風景に、初めて線を引ける気がします。

佐藤メバル

佐藤メバル

いい例えだね。等高線が引ければ、どこが急斜面で、どこに水が集まるのかが見えてくる。最初の一本を、今日選んでみよう。

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Editorial Team

編集に関わる専門家