世界経済史を学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
「世界 経済 史 本」で検索してみたら、岩波新書のような入門から名古屋大学出版会の大著までずらっと並んでいて……正直、どれから手をつければいいのか分からなくなりました。
佐藤メバル
いい質問だね。まず最初に整理したいのは、経済史・世界史・経済思想史は別物だということ。世界史は政治も文化も宗教も含めた全体像、経済思想史はスミスやマルクスの理論そのものの歴史。経済史は「経済というレンズで過去を読む」学問で、本の選び方もこの3つでまったく変わってくる。
橘ナナミ
えっ、そこから違うんですか。じゃあ経済史の本を選ぶときは、何を基準にすればいいんでしょう。
佐藤メバル
目的と、前提知識と、あとは「どの地域・どの論点を知りたいか」。この3つが決まれば、棚は一気に絞られるよ。順に見ていこう。
世界経済史を学べる本の選び方
目的別
橘ナナミ
目的って、たとえばどんな分かれ方をするんですか?
佐藤メバル
純粋な教養なら、水野和夫さんの『世界経済史講義』のように宗教と資本主義の関係から語ってくれる読み物が向く。大学の講義や試験対策なら金井雄一さんらの『世界経済の歴史〔第2版〕』のように通史編とテーマ編で整理された教科書。仕事の実務知なら『経済で読み解く世界史』のように金利や財政の視点で歴史を引ける本が便利だよ。
レベル別
橘ナナミ
レベルで選ぶなら、どう並べればいいですか?
佐藤メバル
前提知識ゼロなら杉山伸也さんの『グローバル経済史入門』のような新書。次に北川勝彦さんの『概説世界経済史 改訂版』のような通史、その上で中村勝己さんの『世界経済史』のように古代から両大戦後まで論じる学術文庫。注と統計を読む段階ならマディソンの『世界経済史概観』。三段のラダーで考えるといい。
地域別
橘ナナミ
欧米中心の本が多い気がするんですが、そこはどう補うんですか?
佐藤メバル
中村勝己さんの『世界経済史』は、日本や中国も含めた広い視野で従来のヨーロッパ偏重を正した名著なんだ。北川さんの本はアフリカ経済の章を増補している。各地域の産業化を比較するならE・L・ジョーンズの『経済成長の世界史』も外せないね。
形式別
橘ナナミ
文庫や新書と、教科書はどう使い分けるんですか?
佐藤メバル
新書・文庫は通読向き。板谷敏彦さんの『金融の世界史』は新潮選書で、金融という一本の線で通史をたどれる。教科書は索引と目次で辞書的に引く。図録や統計は本文の隣に置いて座標を確かめる用途だね。まず新書で流れをつかんで、教科書で肉付けする順番が挫折しにくい。
論点別
橘ナナミ
「マルサスの罠」「大いなる分岐」という言葉をよく見かけるんですが、それはどの本ですか?
佐藤メバル
クラークの『10万年の世界経済史』が切り口にした論点だね。産業革命がなぜイギリスで起きたかは、ジョーンズやマーク・コヤマの『「経済成長」の起源』が正面から扱っている。逆にバブルや通貨崩壊から入るなら『バブルの世界史』『ハイパーインフレの世界経済史』。知りたい争点から逆引きすると迷わないよ。
理論と実証の比率
橘ナナミ
理論から入るか、データから入るか、という違いもあるんですね。
佐藤メバル
そう。マディソンの『世界経済史概観』は紀元1年からの実質GDP推計という実証の側から世界を描く。一方でB・ファン・バヴェルの『市場経済の世界史』は市場そのものを理論的に捉え直す。実証と理論を一冊ずつ持っておくと、片方に偏らずに済むよ。
世界経済史を学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
世界経済史を学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい

世界経済史 (講談社学術文庫 1122)
中村勝己 著|講談社
¥1,551(税込)
ギリシア・ローマから現代までを、日本や中国も含む広大な視野で描く一般経済史の名著です。宗教改革を契機に醸成された近代資本主義の精神と本質を明らかにし、産業革命の地域別発展、発展途上国の近代化、両大戦と大恐慌が露呈した資本主義の危機、社会主義の成立と崩壊までを論究します。欧州中心の物語を組み替える視点が全編を貫き、世界経済の骨格をつかむ土台になります。
こんな人におすすめ
経済史を初めて体系的に学びたい学生、欧州中心の世界史に違和感を覚えた社会人、講義の副読本を探している人、古典で基礎を固めたい読者に。通史の背骨として手元に置きたい一冊で、章ごとに区切って読むのがおすすめです。
良い点
- 古代から現代まで一冊で通せる
- 日本や中国も視野に入る
- 資本主義の精神まで踏み込む
気になる点
- 文庫でも444ページと厚い
- 文体は学術文庫らしく硬め
- 図表や注は控えめ
出版社
講談社
発売日
1994年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、『世界経済史』って講談社学術文庫ですよね。名前からして硬そうで、私みたいな初学者が手を出していいものか迷うんですけど……。
佐藤メバル
いい質問だね。たしかに学術文庫だから身構える気持ちはわかる。でもこの本、ギリシア・ローマから始めて、日本や中国も視野に入れながら中世・近世へ進んでいく。
宗教改革を契機に醸成された近代資本主義の精神を軸に据えて、産業革命の地域別の発展、両大戦と大恐慌、社会主義の成立と崩壊まで論じる。
欧州偏重を正した通史として読む価値があるよ。
橘ナナミ
社会主義の崩壊まで一人で? それはすごい範囲ですね。古代から全部つながって見えてくるんでしょうか。
佐藤メバル
つながって見えるからこそ名著と言われる。産業革命ひとつをとっても、地域ごとに立ち上がり方の条件が違うことを丁寧に描いている。
発展途上国の近代化の難しさにも触れられていて、いまのニュースを読む下地にもなる。まず通史の背骨を通したい人に向いているよ。

10万年の世界経済史 (ちくま学芸文庫ク-41-1)
グレゴリー・クラーク 著|筑摩書房
¥2,310(税込)
世界経済はなぜこれほど不均衡に発展したのか。その問いを「マルサスの罠」と「大いなる分岐」という二つの切り口から一望する壮大な試みです。10万年という超長期のスケールで人口と所得の関係をたどり、産業革命がなぜ一地域から始まったのかを問い直します。数字で経済史を語る快感があり、小野塚知二による解説が読後の理解を助けてくれます。
こんな人におすすめ
長期の視点で経済を考えたい社会人、産業革命の起源に関心がある読者、データで歴史を捉えたい学生、『格差の世界経済史』と併せて読みたい人に。腰を据えて読む時間を確保してから開くとよいでしょう。
良い点
- 超長期の視点が手に入る
- 「マルサスの罠」が明快
- 文庫で解説も充実
気になる点
- 640ページとかなり重い
- 数字の記述が多く進みにくい
- 結論には議論の余地がある
出版社
筑摩書房
発売日
2026年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、『マルサスの罠』って言葉を聞いたことはあるんですけど、人に説明できる自信がなくて。この本を読めばわかりますか?
佐藤メバル
うん、そこがこの本の入口だね。マルサスの罠は、所得が増えても人口が増えて結局一人あたりの暮らしは元に戻ってしまう、という長い時代の枠組み。
この本はそれを10万年というスケールで追いかけながら、なぜ一部の地域だけがそこを抜け出せたのか——大いなる分岐を考えていく。分厚いけれど、論点はとても明快だよ。
橘ナナミ
なるほど、罠から抜け出せた地域と、抜け出せなかった地域がある、という見方なんですね。地図が頭に浮かびそうです。
佐藤メバル
そうそう。だから読み終えると、いまの豊かな国とそうでない国の差が、昨日今日できたものではないと実感するはず。
文庫で640ページあるから、章ごとに区切って読むといい。巻末の解説も道しるべになるよ。

世界経済の歴史〔第2版〕―グローバル経済史入門―
金井雄一 著|名古屋大学出版会
¥2,970(税込)
グローバル・ヒストリーなど最新の成果をもとに、欧米だけでなくアジアや世界各地域の発展プロセスをバランスよく解説した入門書です。通史編とテーマ編の二部構成で、出来事を追うだけでなく論点からも学べるのが特徴。教科書として組まれた構成なので独学でも道に迷いにくく、改訂で内容が更新されている点も心強い最初の一冊です。
こんな人におすすめ
経済史を大学の講義のように体系的に学びたい人、独学で全体像をつかみたい社会人、輪読やゼミのテキストを探している学生、最新の議論を押さえたい読者に。最初に読む一冊として安心できます。
良い点
- 通史編とテーマ編の二部構成
- 欧米以外の地域も厚い
- 改訂で内容が更新された
気になる点
- 2970円で新書より高い
- 教科書的な堅さがある
- 演習問題などは付かない
出版社
名古屋大学出版会
発売日
2020年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、これタイトルに『第2版』ってついていますけど、初版と何が違うんでしょうか? 改訂って聞くと、買い直すべきか迷ってしまいます。
佐藤メバル
いいところに気づいたね。改訂版は、グローバル・ヒストリーなど新しい研究成果を反映して内容を見直した版。
通史編とテーマ編の二部構成で、前半で流れを追い、後半で論点から掘る形になっている。だから用語を覚えるだけで終わらず、なぜそうなったかを考えながら読める。
教科書として作られているぶん、独学でも迷いにくいよ。
橘ナナミ
二部構成なら、前半で流れをつかんでから後半で深掘りできるんですね。輪読のテキストにも向いていそうですし、独学でも使えそうです。
佐藤メバル
そう、ゼミのテキストにも使いやすい。欧米だけでなくアジアや世界各地域をバランスよく扱っているから、世界史の授業で日本史中心だった人ほど視野が広がる。最初の一冊に選んで損はないよ。

グローバル経済史入門 (岩波新書)
杉山伸也 著|岩波書店
¥1,100(税込)
地域や国によってなぜ所得や生活水準に大きな格差があるのか、また国際的な通貨問題や金融危機にはどんな背景があるのか。14世紀半ばから現代までを、国民経済の枠組みでは捉えきれないグローバル・ヒストリーの視角から描きます。岩波新書の272ページというコンパクトさで長期の見取り図が手に入るのが最大の魅力です。
こんな人におすすめ
通勤や休憩の合間に世界経済の流れを押さえたい人、格差や金融危機の背景を知りたい社会人、分厚い専門書の前におおづかみしたい学生、新書で手軽に教養を足したい読者に。まず薄い一冊から始めたい人向けです。
良い点
- 新書サイズで持ち歩ける
- 14世紀から現代まで一冊
- 金融危機の背景も扱う
気になる点
- 272ページで記述は圧縮
- 専門用語は注頼み
- 各国の詳細は省かれる
出版社
岩波書店
発売日
2014年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、新書で『グローバル経済史入門』ってありますけど、こんなに薄いのに世界経済の全体がわかるものなんですか?
佐藤メバル
そこがこの本の狙いなんだ。14世紀半ばから現代まで、所得や生活水準の格差、国際通貨の問題、金融危機の背景を、国民経済の枠を越えた視角で描いている。
詳しさより見取り図を優先した設計で、通勤の合間に読めるのがいい。分厚い専門書に入る前の助走に向いているよ。
橘ナナミ
先にこれで地図を作ってから、重い専門書に挑むわけですね。順番を変えるだけで、挫折しにくくなりそうです。
佐藤メバル
そう。細かいデータや各国の細部は省かれているから、そこは別の本で補えばいい。いきなり分厚い通史に挑んで心が折れるより、まずこの一冊で流れをつかんでから深掘りするほうが、結果的に速い。
書店でも、この本を買ってから専門書に戻ってくるお客さんは多かったよ。

世界経済史講義 (ちくま新書 1830)
水野和夫 著|筑摩書房
¥1,375(税込)
経済学者の水野和夫が、宗教学者の島田裕巳を聞き手に、経済の誕生から資本主義の終焉までを語りつくす対話形式の講義です。利子、帝国、法人の誕生、バブルの発生、世界恐慌、戦争と経済成長までを幅広く扱い、宗教と資本主義の密接な関係にも触れます。会話で進む経済史なので、用語でつまずきにくいのが大きな利点です。
こんな人におすすめ
経済史の本で挫折した経験がある人、宗教と経済の関係に関心がある読者、通勤中に読み進めたい社会人、抽象的な議論を対話で理解したい学生に。読み物として楽しみたいときに最適な一冊です。
良い点
- 対話形式で読み進めやすい
- 宗教と資本主義の関係に迫る
- バブルや恐慌まで幅広い
気になる点
- 網羅的な通史ではない
- 著者の主張が前面に出る
- データは多くない
出版社
筑摩書房
発売日
2024年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、対話形式の経済史って、ちょっと珍しいですよね。聞き手がいるだけで読みやすくなるものなんでしょうか?
佐藤メバル
そこがこの本の売りだね。経済学者の水野和夫さんが、宗教学者の島田裕巳さんを聞き手に、経済の誕生から資本主義の終焉までを語っていく。
利子や帝国、法人の誕生、バブル、世界恐慌、戦争と経済成長まで扱うんだけど、聞き手が素朴に質問してくれるから、こちらも置いていかれない。
橘ナナミ
聞き手がいるだけで、ぐっと入ってきやすくなりますね。タイトルにあった宗教と資本主義の関係も、やっぱり出てくるんですか?
佐藤メバル
出てくるよ。宗教改革とマックス・ウェーバーの章もあるし、宗教と資本主義が密接に関わってきたことが繰り返し語られる。
網羅的な通史ではないけれど、読み物として一気に読める。数字で詰めたい人より、物語として経済史を味わいたい人に向いているな。

世界経済史入門: 欧米とアジア
長岡新吉 著|ミネルヴァ書房
¥3,520(税込)
タイトルに「欧米とアジア」を掲げ、両地域を並べて世界経済の歩みを扱う入門書です。310ページで価格は3520円、学術系の出版社であるミネルヴァ書房から出ている一冊。欧州だけ、アジアだけと切り分けずに並べて眺めたい人に向く構成です。ただ内容紹介が流通上ほとんど出ていないので、書店で目次とまえがきを確かめてから選ぶのが確実です。
こんな人におすすめ
欧米とアジアを横並びで見たい人、講義のテキストとして探している学生、比較の視点で世界経済を捉えたい社会人に。目次で構成を確かめてから買うのがおすすめで、図書館で試し読みしてから手元に置く選び方も向いています。
良い点
- 欧米とアジアを並べて扱う
- 310ページで分量は適度
- 学術系の出版社からの一冊
気になる点
- 3520円と値は張る
- 内容紹介が流通上少ない
- 読了には背景知識が要る
出版社
ミネルヴァ書房
発売日
1992年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
この『世界経済史入門: 欧米とアジア』って、ネットに内容の説明があまり出てこないんですけど、大丈夫なんでしょうか?
佐藤メバル
いい質問だね。そういう本は、書店で目次とまえがきを確かめるのがいちばん確実だよ。タイトルを見るかぎり、欧米とアジアを並べて世界経済の歩みを扱う入門書で、310ページだから分量も極端ではない。
ただ値段は張るから、図書館で試してから買うという選び方も十分ありだと思う。
橘ナナミ
なるほど、説明文が短い本は、タイトルと目次で買うかどうかを決めるんですね。図書館で試すのも手ですか?
佐藤メバル
そう。佐藤も書店員の頃、説明文が短い本ほど中身を開いて確かめる癖がついた。この本は欧州だけ、アジアだけと切り分けずに並べて見たい人が対象だから、自分の関心がどちらに寄っているかを確認してから選ぶと、後悔が少ないよ。

概説世界経済史 改訂版
北川勝彦 著|昭和堂
¥2,530(税込)
経済史を学ぶための理論と方法に始まり、日本・欧米・アジア・アフリカの各地域までを、バランスよくコンパクトにまとめた入門書です。改訂版ではアフリカ経済の構造調整期から現代までが増補され、データや参考文献も更新されました。アフリカまで一冊で視野に入る経済史入門は多くなく、そこが大きな違いになっています。
こんな人におすすめ
「なぜ経済史を学ぶのか」から始めたい初学者、地域別に整理して理解したい学生、アフリカ経済にも目を向けたい読者、講義の補助教材を探す人に。地域ごとに棚を作って読み進めたいときに向いています。
良い点
- 理論と方法から始まる構成
- アフリカの章が増補された
- 295ページで全体像が掴める
気になる点
- 2530円で新書より高い
- 各章はあっさりしている
- 図版は多くない
出版社
昭和堂
発売日
2022年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、『概説世界経済史』の改訂版って、どこが変わったんでしょうか? わざわざ改訂版を選ぶ意味を知りたいです。
佐藤メバル
アフリカ経済のところが増えたのが大きいね。構造調整期から現代までを第VI章で補っている。日本・欧米・アジア・アフリカを並べて扱う入門書は多くないから、アフリカまで視野に入る通史を探していた人にはありがたい改訂だよ。
橘ナナミ
アフリカって、経済史の本だと最後にちょっとだけ触れられる印象でした。章として立っているのは確かに違いますね。
佐藤メバル
そう、そこがこの本の持ち味だね。前半は理論と方法、つまり時代区分の考え方から入る。だから用語や枠組みを先に整えてから地域史に進める。
295ページと薄めだから、通学の合間に一章ずつ読むのもいいよ。

世界経済史概観 紀元1年~2030年
アンガス・マディソン 著|岩波書店
¥8,140(税込)
長期経済推計の第一人者による大著です。第I部で西暦1年から2003年までの世界経済の輪郭を描き、第II部で数量的経済分析の歴史とそこで交わされた論争を紹介、第III部では2030年の世界経済を予測します。世界各地域の実質GDPの歴史統計に基づいた著者ならではの集大成で、数字を突き合わせたい人には代えがたい一冊です。
こんな人におすすめ
統計で世界経済を捉えたい学生、長期の経済予測に関心がある投資家や政策担当者、データブックとして手元に置きたい人、経済史の論争を追いたい読者に。値段は張るので、図書館で確認してからでも遅くありません。
良い点
- 紀元1年からの長期推計
- 2030年予測まで収録
- 分析史の論争も解説
気になる点
- 8140円と高価
- 528ページの重量級
- 統計の記述が中心
出版社
岩波書店
発売日
2015年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『紀元1年~2030年』ってタイトルを見て、ちょっと驚いちゃいました。そんなに昔から数字があるんですか?
佐藤メバル
そこがマディソンの仕事の凄みなんだ。第I部では西暦1年から2003年までの世界経済の輪郭を描き、第II部でその数量的な分析がどう積み上げられ、どんな論争があったかを紹介する。
そして第III部では2030年の世界経済を予測する。実質GDPの歴史統計をここまで束ねた本は貴重だよ。
橘ナナミ
でも8140円ですよね……。私のような学生が手を出すには、やっぱり勇気がいります。図書館で探すべきでしょうか?
佐藤メバル
正直に言うと、最初から買う必要はないと思う。図書館で第I部だけ読んで、自分の関心に合うと確信してから手元に置くのがおすすめだよ。
統計を眺めるのが苦にならない人なら、十年単位で使える一冊になる。

経済で読み解く世界史 (扶桑社新書)
宇山卓栄 著|扶桑社
¥1,100(税込)
物価、GDP、生産性、株や債券といった経済の目で世界史を見直す一冊です。古代のギリシアやローマ、漢王朝の経済論争から、イスラムの力の源泉、オランダの覇権、イギリスの財政危機、そして現代の財政政策と金融政策の比較まで、問いを立てて答えていく形式でテンポよく進みます。新書サイズで1100円という入口の軽さも魅力です。
こんな人におすすめ
ビジネスに効く歴史を知りたい社会人、金利や物価から時代の変わり目を読みたい投資家、通勤中に一冊読み切りたい人、世界史の授業が苦手だった読者に。手軽な入門として最適で、次に重い通史へ進む足がかりにもなります。
良い点
- 新書で1100円と手軽
- 金利や物価から歴史を見る
- 現代の政策論まで届く
気になる点
- 通史の網羅性は薄い
- 著者の見方が色濃い
- 出典の明示は少なめ
出版社
扶桑社
発売日
2025年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、『世界500年の金利動向』っていう触れ込みですけど、金利の数字をずっと追いかける本なんですか?
佐藤メバル
いや、そこが面白いところで、数字の羅列ではないんだ。古代のギリシアやローマ、漢王朝の経済論争から始まって、イスラム、オランダ、イギリスの財政危機、そして現代の財政政策と金融政策まで、問いを立てて答えていく形式で進む。
物価やGDP、株、債券という目で世界史を見直す本だね。
橘ナナミ
新書で1100円なら、取っつきやすそうですね。分厚い専門書の前に、通勤のお供として試してみようかな。
佐藤メバル
そう、そこが魅力だね。ただ網羅的な通史ではないから、これ一冊で世界経済史が終わるわけじゃない。まずこれで面白さに火をつけてから、次に重い通史へ進む。そういう順番が読みやすいと思う。

お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力・・・・・・はこう「動いた」
大村大次郎 著|KADOKAWA
¥1,990(税込)
「ローマ帝国は脱税で滅んだ」「ナポレオンは金融破綻で敗れた」——そんな切り口で、お金・経済・権力の5000年の動きを追跡する一冊です。歴史を事件ではなくお金の流れから読み直す構成で、派手な合戦や政変の裏にどんな金の動きがあったのかを見せてくれます。256ページと短く、重い通史の前に手を伸ばしやすい入門です。
こんな人におすすめ
歴史の裏側にあるお金の話が好きな人、教科書の世界史に物足りなさを感じた社会人、通勤中や寝る前に一気に読みたい読者、投資や経済の視点を増やしたい人に。とっつきやすさ重視ならまずこれです。
良い点
- 256ページで短く読める
- 事件の裏のお金に迫る
- タイトルどおり筋が通る
気になる点
- 専門的な検証は薄め
- 通史としては粗い
- 図表は多くない
出版社
KADOKAWA
発売日
2015年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『ローマ帝国は脱税で滅んだ』って、帯に書いてあったら絶対に手に取っちゃいますよね。こういうの、信じていいんでしょうか?
佐藤メバル
そういう惹きが強い本だね。危うさもあるけど、事実としてお金の流れから5000年を追う構成になっている。
合戦や政変の裏の入出金に目を向けると、世界史の見え方が変わる。それを短いページ数で体験させてくれる。
橘ナナミ
256ページなら、私でも読み切れそうです。でも、こういう刺激的な主張は、どこまで信用していいんでしょうか?
佐藤メバル
そこは使い分けだね。面白さの入口としてはいいけれど、細かい数字や解釈を突き詰めるなら別の本で確かめたほうがいい。
佐藤の場合は、こういう本で興味を持ったお客さんに、次の一冊として重い通史を勧めることが多かったよ。

世界〈経済〉全史 「51の転換点」で現在と未来が読み解ける
宮崎正勝 著|日本実業出版社
¥1,760(税込)
世界の経済とお金がどう動いてきたかを、51の転換点から読み解く一冊です。紙幣はどのように生まれ、なぜ皆が使うのか、バブルはなぜ発生するのか、各国の経済政策はどんな影響をもたらすのか。転換点ごとにキーワードを1ページで示し、出来事の背景を「経済を読むPOINT」で解説する。近現代を重点的に置いた構成が使いやすいところです。
こんな人におすすめ
教養として経済史を押さえたいビジネスパーソン、投資の指針になる歴史を知りたい人、通読が苦手で要点から入りたい読者、世界史と経済を同時に学びたい学生に。拾い読みにも向く構成です。
良い点
- 51の転換点で区切りが明確
- キーワード1ページで掴める
- 近現代が手厚い
気になる点
- 歴史記述は最小限
- 深掘りは少なめ
- 図版は控えめ
出版社
日本実業出版社
発売日
2017年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『51の転換点』って、目次を見るだけで流れがつかめそうですね。通読しなくても大丈夫なんでしょうか?
佐藤メバル
その通りで、転換点ごとにキーワードを1ページで示してくれる。だから通読しなくても、気になる場所から拾い読みできる。
近現代を重点的に置いているのも、いまのニュースとつながるから使いやすいところだね。出来事の裏の狙いや思惑を「経済を読むPOINT」で解説しているのも助かる。
橘ナナミ
やさしい語り口って書いてありますけど、経済史の本ってやっぱり難しくないですか? 挫折したことがあるので不安です。
佐藤メバル
この本は、歴史の記述をあえて最小限にして、興味深いエピソードを交えながら経済とお金の動きを説明する方針なんだ。
だから経済史の教科書で挫折した人ほど向いている。投資やビジネスの視点で読むと、また違う面白さがあるよ。

金融の世界史 (新潮選書)
板谷敏彦 著|新潮社
¥1,925(税込)
シュメール人が発明した文字が貸借記録の必要から生まれたという話に始まり、ルネサンス期の銀行と保険業、大航海時代がもたらした自由な金融市場、国家間の戦争が株式や債券の基を創ったこと、そしてデフレ・インフレ・バブルの反復までを描きます。金融を人間の営みとして通史で俯瞰する試みです。
こんな人におすすめ
金融の歴史を一冊で押さえたい社会人、株式や債券の成り立ちを知りたい投資家、新潮選書で読み応えを求める読者、経済史のなかでも金融に絞りたい人に。288ページで見通しよく読めます。
良い点
- 金融に絞った通史
- 新潮選書で読みやすい
- 文字の起源から始まる
気になる点
- 金融以外の分野は薄い
- 数式や図表は少ない
- 地域的な偏りはある
出版社
新潮社
発売日
2013年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
佐藤さん、文字が貸借記録のために生まれたって、本当ですか? なんだかロマンがありますね。それって、お金の力が文明を作ったということでしょうか?
佐藤メバル
そこから始まるのがこの本の面白さだね。シュメール人の文字が貸借の記録の必要から生まれたという話から入って、ルネサンス期の銀行と保険、大航海時代の自由な金融市場、戦争が株式や債券の基を創った流れを追っていく。
人間の欲望と叡智の足跡が両方見えてくるよ。
橘ナナミ
デフレやインフレが繰り返されるっていうのは、いまのニュースの話そのものですよね。結局、人間は同じことを繰り返しているんでしょうか?
佐藤メバル
そう、そこがこの本の落としどころ。進化したはずの国際市場で、相変わらずデフレ・インフレ・バブルが繰り返されると著者は見る。
288ページと新潮選書らしい分量だから、金融史の最初の一冊としてちょうどいいと思う。

交易の世界史 上 (ちくま学芸文庫)
ウィリアム・バーンスタイン 著|筑摩書房
¥1,540(税込)
絹、スパイス、砂糖——新奇なもの、希少なものへの欲望が世界を動かし、文明の興亡を左右してきた。数千年にわたる交易の歴史を一望する試みです。モノへの欲求を軸に置くことで、宗教や政治の物語とは違う角度から世界史が見えてきます。上下に分かれたうちの上巻から、世界がどうつながったかを追える構成です。
こんな人におすすめ
交易や物流から世界史を見たい人、香辛料や絹の話が好きな読者、経済史の中でもモノの動きに関心がある学生、通史に少し飽きた社会人に。上巻から始める読み方がしやすい一冊です。
良い点
- 交易という軸が明快
- ちくま学芸文庫で読みやすい
- 文明の興亡と重ねて読める
気になる点
- 上巻のみで完結しない
- 地域の偏りはある
- 数字は多くない
出版社
筑摩書房
発売日
2019年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
絹とかスパイスとか砂糖って、やっぱり昔から人を夢中にさせたんですね。モノへの欲望だけで歴史が動くんでしょうか?
佐藤メバル
そう、この本はそこを軸にする。新奇なもの、希少なものへの欲望が世界を動かし、文明の興亡を左右してきたという見方で、数千年の交易史を一望するんだ。
宗教や政治の物語とは違う角度から世界史が見えるから、通史に飽きた人ほど面白がると思う。
橘ナナミ
上巻だけでも読めますか? 上下揃えないと意味がないのかなと、少し構えてしまうんですけど、まず一冊だけ試すのはありですか?
佐藤メバル
上巻だけでも十分読めるよ。まずは交易という切り口が自分に合うかを確かめて、合えば下巻へ進めばいい。ちくま学芸文庫で384ページだから、持ち歩いて少しずつ読むのにも向いているし、書店でも上下を並べて置くと手に取ってもらいやすかったな。

会計の世界史: イタリア、イギリス、アメリカ-500年の物語
田中靖浩 著|日本経済新聞出版
¥2,300(税込)
数字のウラに隠された人間ドラマを描く「会計エンターテインメント」です。ダ・ヴィンチ、レンブラント、エジソン、ケネディ、ビートルズなど意外な人物が次々登場し、簿記、決算書、財務会計、管理会計、ファイナンス、国際会計基準の仕組みが物語とともに見えてきます。細かい数字はいっさい出てこないと明言された構成が、会計が苦手な人の背中を押します。
こんな人におすすめ
会計や簿記の勉強でつまずいた人、ビジネス書を物語として楽しみたい読者、企業とお金の話から経済史に入りたい社会人、研修の副読本を探す人に。数字が苦手でも読み切れるのが最大の利点です。
良い点
- 数字なしで会計が学べる
- 有名人の逸話が豊富
- イラストや図が満載
気になる点
- 会計の網羅性は薄い
- 423ページと厚め
- 実務には別途教材が必要
出版社
日本経済新聞出版
発売日
2018年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
会計の本なのに、数字がいっさい出てこないって書いてあるんです。それで本当に学べるんでしょうか? 逆に不安になります。
佐藤メバル
そこが面白いところで、簿記や決算書の仕組みを、人物の物語と図で理解させる設計なんだ。ダ・ヴィンチ、レンブラント、エジソン、ケネディ、ビートルズまで出てくる。
会計ルールが生まれた現場を追いながらだと、なぜその仕組みが必要だったかが腹に落ちるんだよね。
橘ナナミ
なるほど。私、簿記の参考書で何度も挫折しているので、こっちから入るのもよさそうですね。遠回りに見えて、実は近道な気がしてきました。
佐藤メバル
まさにそういう人向けだね。ただし会計の実務を全部これで済ませようとすると足りない。歴史と物語で全体像をつかんでから、必要なら問題集に戻る。
順番を変えるだけで、ずいぶん楽になるよ。

帳簿の世界史 (文春文庫)
ジェイコブ・ソール 著|文藝春秋
アダム・スミス、マルクス、ウェーバーが口を揃えて主張していた「帳簿」の力とは何か。スペイン帝国の繁栄と没落、フランス革命、アメリカ独立の成功、日本の列強への追いつき——その裏に帳簿を駆使した会計士たちがいたと描きます。会計を権力の物語として読み解く、これまでの歴史家が見逃してきた角度の一冊です。
こんな人におすすめ
会計と歴史を同時に味わいたい社会人、国家の盛衰を別の角度から見たい読者、文春文庫で読みやすい教養書を探す人に。日本版特別付録の「帳簿の日本史」と山田真哉さんの解説があり、日本の読者への導線も親切です。
良い点
- 帳簿という切り口が斬新
- 文庫で持ち歩ける
- 日本版付録と解説つき
気になる点
- 会計の実務書ではない
- 論点がやや散らかる
- 細部の検証は読者側の宿題
出版社
文藝春秋
発売日
2018年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『権力とは財布を握っていることである』って、この一文だけで読みたくなりますね。これは誰の言葉なんですか?
佐藤メバル
そうだね。スミスもマルクスもウェーバーも、そろって帳簿の力を指摘していた。それをスペイン帝国の没落やフランス革命、アメリカ独立の裏側から解き明かしていく。
歴史家が見落としてきた角度で、会計士たちが何をしていたかが見えてくるよ。
橘ナナミ
へえ、日本についても書かれているんですか? 海外の話だけだと思っていました。日本版の付録があるなら、身近に読めそうです。
佐藤メバル
文庫版には日本版特別付録として「帳簿の日本史」が付いているし、山田真哉さんの解説もある。なぜ日本が急速に列強へ追いつけたのかという問いも立てられているから、日本の読者にはうれしい構成だね。

バランスシートで読みとく世界経済史
ジェーングリーソンホワイト 著|日経BP
複式簿記が先か、資本主義が先か。14世紀のヴェネツィアで広まった複式簿記が「富を測定したい」という人間の欲望を実現し、資本主義の飛躍的な膨張をもたらした——という問いを軸に据えます。バランスシートという装置から世界経済史を読み直す、ジャーナリストによる切り口の新しい一冊です。
こんな人におすすめ
会計と資本主義の関係を考えたい社会人、『帳簿の世界史』を読んで物足りなかった読者、貸借対照表の意味を歴史から掴みたい人、骨太な経済書を好む読者に。視点の新しさを味わいたいときに向きます。
良い点
- 複式簿記から資本主義を読む
- 問いの立て方が挑戦的
- 会計と経済史の橋渡し
気になる点
- 会計の実務知識は要る
- 会計に馴染みがないと掴みにくい
- 図表は多くない
出版社
日経BP
発売日
2014年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『複式簿記が先か、資本主義が先か』って、問い自体が気になりすぎます。答えはどっちなんですか? そもそも簿記って、そんなにすごいものだったんですか?
佐藤メバル
そこは読んで確かめてほしいところだけど、著者の立場ははっきりしている。14世紀のヴェネツィアで広まった複式簿記が、富を測定したいという欲望を実現し、資本主義を大きく膨張させたという見方だ。
ジャーナリストの筆致で、会計と経済史のあいだに橋を架けてくれる。
橘ナナミ
でも、会計の知識がないと読み進めるのは難しいでしょうか? 恥ずかしながら、貸借対照表もまだ怪しいんです。
佐藤メバル
貸借対照表の形が頭に入っていれば、ぐっと読みやすくなる。逆に言えば、この本を読むとバランスシートという装置がなぜ世界を変えたのかが見えてくる。
会計を実務ではなく思想として眺めたい人に向いているよ。

格差の世界経済史
グレゴリー・クラーク 著|日経BP
前著『10万年の世界経済史』で産業革命の謎に挑んだ著者が、今度は姓名を手がかりに世界各国の歴史データを分析します。医者や弁護士の名簿に並ぶ名前が世代を超えてほとんど変わらない——アメリカ、スウェーデン、イングランド、インド、中国、日本や韓国まで、格差は維持されてきたという結論を導きます。推理小説のような興奮がある実証です。
こんな人におすすめ
社会の流動性や階層に関心がある読者、統計を使った分析を楽しみたい学生、教育や採用の現場で格差を考えている社会人、クラークの前著を読んだ人に。データを読み解く時間を確保してから開くとよいでしょう。
良い点
- 姓名という手がかりが独創的
- 世界各国を比較できる
- 前著の問いを引き継ぐ
気になる点
- 520ページと長い
- 統計の説明が続く
- 結論の受け止めは分かれる
出版社
日経BP
発売日
2015年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
名前で格差がわかるって、どういう仕組みなんですか? 姓を数えるだけで社会の階層が見えてしまうんでしょうか?
佐藤メバル
そこがこの本の仕掛けだね。医者や弁護士の名簿に載る名前を世代ごとに追うと、上層の名前がほとんど入れ替わっていない。
社会階層はほぼ固定化しているという結論が、アメリカでも中国でも日本でも出てくる。まさに推理小説を読むような気分になるよ。
橘ナナミ
日本でも同じだっていうのは、ちょっと身につまされますね。他人事じゃない気がします。自分の名前はどうなんだろう、なんて考えてしまいました。
佐藤メバル
そう感じる人は多いだろうね。ただし520ページあるから、結論だけを急いで拾うより、データの積み上げ方を味わってほしい。
格差を感情で語る前に、数字の扱い方を学べる本だと思う。

経済成長の世界史
E・L・ジョーンズ 著|名古屋大学出版会
¥4,180(税込)
経済成長の諸起源を、ヨーロッパ、日本、中国などから析出し、遍在する成長への性向とともに、その発展を抑制した諸要因の除去こそが決定的だと示します。産業革命の核心的テーゼに挑戦し、諸地域の経済的勃興を新たな世界史的視野で描いたグローバルヒストリーの先駆的著作です。246ページと比較的コンパクトなのも助かります。
こんな人におすすめ
経済成長の条件を理論的に考えたい学生、産業革命の通説に疑問を持つ読者、学術系の出版社の翻訳書に慣れている人、先行研究として押さえたい研究者志望者に。骨のある議論を読みたいときに向きます。
良い点
- 産業革命の通説に挑む
- 246ページで密度が高い
- グローバルヒストリーの先駆
気になる点
- 4180円と高価
- 翻訳の文体は硬め
- 図表は多くない
出版社
名古屋大学出版会
発売日
2007年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『遍在する成長への性向』って、つまり人間はどこでも成長しようとするものだ、という前提なんですか?
佐藤メバル
そう読んでいいと思う。だからこの本の焦点は、成長する力そのものではなく、それを抑えていた要因がどう取り除かれたかに置かれる。
ヨーロッパ、日本、中国などを並べながら、産業革命の核心的な説明に挑戦していく。246ページだけど密度は濃いよ。
橘ナナミ
でも4180円は、学生にはちょっと痛いですね……。図書館で探すべきでしょうか? 買うなら覚悟がいります。
佐藤メバル
そこは図書館を味方につけるのがいいよ。学術書はまず借りて読み、手元に置きたいと確信してから買う。判断のために、序章と訳者解説から読むのがおすすめ。
佐藤も書店員時代、お客さんにはよくそう案内していたな。

「経済成長」の起源: 豊かな国、停滞する国、貧しい国
マーク・コヤマ 著|草思社
¥3,740(税込)
いま生きる人の大半は、200年前のどんな人間よりも裕福になった。その経済成長はどう達成されたのか。なぜ産業革命は18世紀の英国で始まったのか、なぜ他国は続けたのか、なぜ貧しいままの地域があるのか。地理、制度、文化、人口、植民地という要因を最新理論で検証するグローバルヒストリーで、ダロン・アセモグルも推薦の言葉を寄せています。
こんな人におすすめ
経済成長の条件を多角的に知りたい社会人、開発経済や途上国支援に関心がある学生、制度か文化かという議論を追いたい読者、『国家はなぜ衰退するのか』の次を探す人に。論点を整理して考えたいときに。
良い点
- 地理・制度・文化を横断
- 章立てが整理されている
- 推薦の言葉も著名
気になる点
- 448ページと長め
- 3740円と高価
- 結論は単純でない
出版社
草思社
発売日
2023年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
地理、制度、文化、人口、植民地……要因を全部並べたら、答えは『どれも大事』で終わっちゃいませんか?
佐藤メバル
いいところを突くね。実際、万能薬はないと著者も書いている。ただ、持続的な成長が始まる場面には共通して見られる要因があると丁寧に示していく。
第II部では北西ヨーロッパ、産業革命、後発国のキャッチアップと章を分けて具体的に見ていくから、総論で終わらないんだ。
橘ナナミ
目次に『なぜオランダではなくイギリスだったのか』という章があって、そこが気になります。産業革命の話ですよね?
佐藤メバル
そこが読みどころのひとつだね。コヤマは一つひとつの説を公平に検討してから自分の見解を出す。だから読み終えると、「経済成長」という言葉をめぐる議論の地図が頭にできる。
分厚いけれど、議論を整理したい人には価値があるよ。

テクノロジーの世界経済史 ビル・ゲイツのパラドックス
カール・B・フレイ 著|日経BP
ビル・ゲイツが語った「イノベーションが次々生まれているのに人々は将来に悲観している」というパラドックスから始まります。大停滞、産業革命と大分岐、ラッダイト運動、電気による第二次産業革命と大平等、そしてコンピュータ導入後の大反転へ。AIによる自動化の先まで見据えたテクノロジー文明史です。
こんな人におすすめ
AIと雇用の未来に関心があるビジネスパーソン、技術史を経済と重ねて読みたい学生、ラッダイト運動の現代的意味を知りたい読者、骨太な経済書を好む人に。未来の働き方を考える材料になります。
良い点
- 技術と格差を長い射程で見る
- ゲイツの問いから入る
- 雇用の未来の議論につながる
気になる点
- 専門的な技術史の記述
- 悲観的な見通しが濃い
- 図表は多くない
出版社
日経BP
発売日
2020年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ビル・ゲイツのパラドックスって、要するに何が矛盾しているんですか? 技術は進んでいるのに、という話ですよね。
佐藤メバル
技術はかつてない勢いで生まれているのに、人々は将来に悲観的だというねじれだ。この本はそれを、新石器時代からの大停滞、産業革命と大分岐、電気による大平等、コンピュータ導入後の大反転という局面で説明していく。
橘ナナミ
『仕事の半分が消える』という論文の著者ですよね。ということは、今後の話もかなり出てくるんですか?
佐藤メバル
そこが後半の核心だね。AIによる自動化が人間の労働に取って代わる可能性に触れ、ラッダイト運動が再来する可能性も警告する。
技術が人を豊かにしてきた時代と、そうでなかった時代の差を、歴史の側から考えさせられるよ。

バブルの世界史 ブーム・アンド・バストの法則と教訓
ウィリアム・クイン 著|日経BP 日本経済新聞出版
¥3,850(税込)
バブルは予測できる——金融史・経済史の研究者が、1720年代のパリとロンドン、1820年代のラテンアメリカ、1880年代のメルボルン、1920年代のニューヨーク、1980年代の東京、1990年代のシリコンバレー、2000年代の欧米、上海・深圳までを旅しながら、原因と帰結を分析します。良いバブルと悪いバブルがあるという視点が、従来の議論とひと味違うところです。
こんな人におすすめ
投資家として歴史から学びたい人、日本の1980年代を相対化したい社会人、金融史の決定版を探す読者、イノベーションと投機の関係に関心がある学生に。次のバブルを考えたい人に向きます。
良い点
- 世界の巨大バブルを横断
- 良い悪いの基準を提示
- 予測の章まで踏み込む
気になる点
- 3850円と高価
- 400ページと骨太
- 歴史の細部は圧縮
出版社
日経BP 日本経済新聞出版
発売日
2023年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
バブルは予測できるって言い切っているのが気になります。本当に予測できるものなんですか? しかも良いバブルがあるって?
佐藤メバル
そこがこの本の主張の核だね。投資家や投機家が新しい技術や政治的な動きに反応してバブルが始まるというパターンを示して、最後に「バブルを予測する」章を置いている。
良いバブルと悪いバブルがあるという区別も、単純な警告本とは違うところだよ。
橘ナナミ
東京のバブルも一章になっているんですよね。当事者じゃない世代ですけど、その章は読んでみたいです。
佐藤メバル
1980年代の日本は「政治の意図的バブル興し」として扱われている。当時を知らない世代が読むと、いまの自分の環境と重ねられるはずだ。
400ページあるから、関心のある章から拾って読むのもいいよ。

ハイパーインフレの世界経済史
賀力平 著|九夏社
¥3,960(税込)
古代中国の王莽からローマ帝国、宋・女真・モンゴルの紙幣、フランス革命のアッシニア紙幣、南北戦争、1920年代のドイツとロシア、ハンガリー、戦後の日本、そしてジンバブエ、ベネズエラ、北朝鮮まで。2000年を俯瞰するハイパーインフレ全史です。原因、影響、安定化政策の成否を分けた要素まで踏み込む、類書の少ない一冊です。
こんな人におすすめ
通貨や金融政策に関心がある社会人、経済史のなかでも極端な事例から学びたい投資家、財政と貨幣の関係を考えたい学生、ジンバブエやベネズエラの事例を知りたい読者に。破局のメカニズムを知りたい人向け。
良い点
- 2000年を一冊で俯瞰
- 安定化政策の比較まで扱う
- 類書が少ないテーマ
気になる点
- 3960円と高価
- 400ページで情報量が多い
- 図表は限られる
出版社
九夏社
発売日
2026年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
ハイパーインフレって、まず何をもってそう呼ぶんですか? ただの物価高とは違うんですよね? 定義から知りたいです。
佐藤メバル
そこから丁寧に説明してくれるのがこの本のいいところだね。定義、原因、影響、そしてどう終わるのかまで扱う。
古代中国の王莽の事例から、宋やモンゴルの紙幣、フランス革命のアッシニア紙幣、1920年代のドイツやハンガリー、戦後の日本、そしてジンバブエやベネズエラ、北朝鮮まで並べていく。
橘ナナミ
日本も戦後に物価が急騰した時期があるんですよね。歴史の話なのに、他人事ではない気がします。
佐藤メバル
そう、第4章に日本の戦後の物価急騰が扱われている。安定化政策の成否を分けた要素まで比較するから、いまの金融政策を考える材料にもなる。
400ページと重いので、関心のある時代から入るといいよ。

市場経済の世界史―見えざる手をこえて―
B・ファン・バヴェル 著|名古屋大学出版会
¥5,940(税込)
ユーラシアにおける市場経済の展開を、中世に遡る超長期的なスケールと、異なる地域・時代を包摂する統一的視座で捉えます。成長から自壊に至るメカニズムを、気候変動や感染症ではなく市場内部の性質から解明するのが最大の特徴。イラク、イタリア、低地諸国、イングランドと事例を積み、近代と経済をめぐる通説に挑みます。
こんな人におすすめ
市場の働きを原理から考えたい学生、経済史の理論に関心がある社会人、ファン・バヴェルを初めて読む人、学術系の翻訳書に慣れている読者に。時間をかけて読む覚悟が必要です。
良い点
- 市場内部の性質から説明する
- 地域と時代の比較が厚い
- 訳者解説が充実
気になる点
- 5940円と非常に高価
- 学術書で文体が硬い
- 予備知識が要る
出版社
名古屋大学出版会
発売日
2024年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
5940円ですか……。学術書って、ここまでするものなんですね。内容的にそれだけの価値があるんでしょうか?
佐藤メバル
そう、大学出版の翻訳専門書はこの価格帯になる。ただ内容はそれに見合う挑戦的さがある。ユーラシアの市場経済を中世まで遡って捉え、成長が自壊に向かう仕組みを、気候変動や感染症ではなく市場そのものの内部の性質から説明しようとするんだ。
橘ナナミ
気候や疫病のせいじゃないっていうのが意外です。最近は温暖化の話ばかり見ているので、市場そのものが原因という発想に驚きました。
佐藤メバル
そこが新鮮なところだね。イラク、中部・北イタリア、低地諸国、イングランドと事例を積み上げていく。まずは図書館で訳者解説を読んでみて、合うと確信してから買う。そういう付き合い方でいい本だと思う。

経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える
ダニエル・コーエン 著|作品社
¥3,150(税込)
経済成長は人類を幸せにしたのか。ヨーロッパを代表する経済学者が、経済学というコンパスを持って世界史・人類文明史を旅します。古代文明の人類初のグローバリゼーションから現在のグローバル経済へ、1930年代の世界大恐慌から2009年の世界金融危機へ、アダム・スミス、マルクス、ケインズ、ハイエクらとともに人類の過去と未来を辿ります。
こんな人におすすめ
『銃・病原菌・鉄』が好きだった読者、経済と文明の関係を大きな視野で考えたい社会人、21世紀の課題を整理したい学生、物語として経済史を読みたい人に。教養としての一冊を求めるならこれ。
良い点
- 1万年を一冊で旅できる
- 経済学者の巨匠が次々登場
- 306ページで読み切りやすい
気になる点
- 3150円とやや高価
- 各国の詳細は省かれる
- 著者の主張が強い
出版社
作品社
発売日
2013年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
『銃・病原菌・鉄』を超えるって帯にありますけど、ほんとですか? ハードルが高すぎませんか? 比べられてしまうのは気の毒な気もします。
佐藤メバル
そこは受け取り方だけど、この本の狙いは似ている。経済成長が人類を幸せにしたのかという問いを軸に、古代文明の人類初のグローバリゼーションから現在まで、経済学のコンパスで旅をする。
アダム・スミス、マルクス、ケインズ、ハイエクも次々に登場するよ。
橘ナナミ
でも306ページなら、1万年を扱うにしては短く感じますね。駆け足にならないんでしょうか? 気になります。
佐藤メバル
そう、そこが読みやすさの理由だね。細部を詰めるより、大きな流れと問いを渡してくれる本だから、一気に読める。
1930年代の世界大恐慌から2009年の世界金融危機までをつなげて見せるところは、いま読む意味があると思うよ。

世界史は99%、経済でつくられる
宇山卓栄 著|扶桑社
国家はインフレで借金を踏み倒すのか、金利低下は終わりの始まりなのか。バブル、金融政策、不採算部門のカット、マーケットのコントロールといったビジネスで見慣れた言葉に置き換えながら、歴史を「カネ=富」の観点から捉え直す通史です。ビジネスにも役立つという著者の狙いが、古今をつなぐ問いの並びに表れています。
こんな人におすすめ
ビジネスの言葉で歴史を理解したい社会人、新書の入門を読んで物足りなかった人、日本経済の行く末を歴史から考えたい読者、元予備校講師の語り口を楽しみたい人に。カネの視点で通史を一本通したいときに。
良い点
- ビジネス用語で歴史を語る
- 286ページで簡潔
- 古今をつなぐ問いが多い
気になる点
- 著者の主張が強い
- 一次資料の提示は薄い
- 通史の網羅性は限られる
出版社
扶桑社
発売日
2016年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
あれ、これ宇山卓栄さんの本ですよね。さっき紹介した『経済で読み解く世界史』と同じ著者じゃないですか?
佐藤メバル
よく気づいたね。同じ著者で、扱う問いは重なる部分も多い。違いは造りで、こちらは扶桑社の単行本、286ページ。
ビジネスで見慣れた言葉に置き換えて、歴史をカネの観点から通していく。インフレで借金を踏み倒すのか、金利低下は終わりの始まりか、といった問いが並ぶ。
橘ナナミ
同じ著者なら、いったいどちらから読めばいいんでしょう? 両方買うのはさすがに迷ってしまいます。
佐藤メバル
手軽さで選ぶなら新書のほう、腰を落ち着けて一本の通史として読みたいならこちら、という選び方でいいと思う。
どちらも同じ著者の語り口だから、片方が合えばもう片方も楽しめる。書店では並べて置くと、比較して選んでもらいやすかったな。
読む順番と学習ロードマップ
橘ナナミ
結局、どの順番で読めば挫折しないんでしょう?
佐藤メバル
まず杉山伸也さんの『グローバル経済史入門』で14世紀半ばから現代までの流れをざっとつかむ。次に金井雄一さんらの『世界経済の歴史〔第2版〕』か北川勝彦さんの『概説世界経済史 改訂版』で通史を一本通す。ここまでで全体の骨格ができる。
橘ナナミ
そのあとは興味のある分野に散ればいいんですね。
佐藤メバル
そう。金融なら『金融の世界史』、会計なら『会計の世界史』や『帳簿の世界史』、交易なら『交易の世界史 上』。テーマ別に一本入れると、通史が急に立体になる。マディソンやジョーンズ、コヤマの専門書は、そのあとで開くほうが頭に入るよ。
学派と方法論の違いを踏まえて読み比べる
橘ナナミ
同じ経済史でも、説明の仕方が本によって違う気がします。
佐藤メバル
そこが面白いところでね。クラークは『10万年の世界経済史』と『格差の世界経済史』で、長期の統計と名前の分析から社会階層の固定性に迫る。B・ファン・バヴェルは『市場経済の世界史』で、気候や感染症ではなく市場内部の性質から成長と自壊を説く。マーク・コヤマは地理・制度・文化・人口・植民地という要因を並べて検証する。
橘ナナミ
同じ問いに対する答えが違うから、読み比べると議論の形が見えてくるんですね。
佐藤メバル
対立する視点をペアで持つのがコツだよ。片方だけ読むと「これが経済史だ」と思い込んでしまうからね。
非欧米圏とデータ・年表で死角を埋める
橘ナナミ
中国やイスラームの経済史は、どの本で補えますか?
佐藤メバル
宇山卓栄さんの『経済で読み解く世界史』は、漢王朝の経済論争、唐・宋の市場統制、イスラームの力の源泉、オスマン帝国のグローバル・リンケージ・システムまで論点を並べている。『ハイパーインフレの世界経済史』は古代中国の王莽からローマ帝国、ジンバブエやベネズエラまで、貨幣の失敗を通史でたどる。
橘ナナミ
データや年表は、本文とどう組み合わせるんですか?
佐藤メバル
実質GDPの長期統計は『世界経済史概観』のような推計本で確認し、年表と地図で座標を合わせる。読み物と数字を往復すると、印象論で終わらない読書になる。電子か紙かで迷ったら、統計表や図版の多い本は紙、通読タイプは電子や文庫を選ぶと進めやすいよ。翻訳書は訳語の統一感が違うから、同じテーマを二冊並べるときは意識してみるといい。
よくある質問
世界経済史の本は初心者なら何から読めばいいですか?
橘ナナミ
世界経済史の本は初心者なら何から読めばいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
まずは杉山伸也さんの『グローバル経済史入門』のような新書で流れをつかむのがおすすめです。14世紀半ばから現代までをグローバル・ヒストリーの視角から描いた入門書で、前提知識がなくても全体像がつかめます。次に北川勝彦さんの『概説世界経済史 改訂版』のような通史へ進むと、日本・欧米・アジア・アフリカをバランスよく押さえられます。
経済史と世界史の本はどう違うのですか?
橘ナナミ
経済史と世界史の本はどう違うのですかについて教えてください。
佐藤メバル
世界史は政治・文化・宗教まで含めた全体像を扱い、経済史は経済というレンズで過去を読む学問です。さらに経済思想史はスミスやマルクスの理論そのものの歴史を扱うので、この3つは別物だと考えてください。たとえば『経済で読み解く世界史』は世界史の出来事を金利や財政から読み直す本で、経済史の側の入口になります。
大学の経済史の授業についていくにはどの教科書がおすすめですか?
橘ナナミ
大学の経済史の授業についていくにはどの教科書がおすすめですかについて教えてください。
佐藤メバル
通史編とテーマ編の二部構成で、欧米・アジアや世界各地域の発展プロセスをバランスよく解説する金井雄一さんらの『世界経済の歴史〔第2版〕』が使いやすいです。理論と方法から日本・欧米・アジア・アフリカまでコンパクトにまとめた北川勝彦さんの『概説世界経済史 改訂版』も、講義の予習復習に向きます。
日本経済史と西洋経済史はどちらから学ぶべきですか?
橘ナナミ
日本経済史と西洋経済史はどちらから学ぶべきですかについて教えてください。
佐藤メバル
どちらか一方というより、世界の中に日本を置く本から入ると理解が早いです。北川勝彦さんの『概説世界経済史 改訂版』には国際関係のなかの日本経済の展開を扱う章があり、中村勝己さんの『世界経済史』も日本や中国を含めた広い視野で書かれています。興味のある地域から入って、あとで行き来するのが現実的です。
サピエンス全史のような教養書だけで経済史は学べますか?
橘ナナミ
サピエンス全史のような教養書だけで経済史は学べますかについて教えてください。
佐藤メバル
大きな流れをつかむには役立ちますが、経済史は統計や史料で実証する学問なので、それだけでは手法が身につきません。マディソンの『世界経済史概観』のように紀元1年からの実質GDP推計を扱う本を一冊併せて読むと、教養書の主張を数字の側から確かめられます。
経済史の本が難しくて挫折するのですが、読みやすい順番はありますか?
橘ナナミ
経済史の本が難しくて挫折するのですが、読みやすい順番はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
新書で流れをつかむ、通史の教科書で骨格を作る、テーマ別に一本深掘りする、最後に専門書へ、という順番が挫折しにくいです。いきなり分厚い学術書を開くと用語で止まってしまうので、まず杉山伸也さんの『グローバル経済史入門』や北川勝彦さんの『概説世界経済史 改訂版』を通し読みしてみてください。
文庫・新書・教科書・図録はどう使い分ければいいですか?
橘ナナミ
文庫・新書・教科書・図録はどう使い分ければいいですかについて教えてください。
佐藤メバル
新書や文庫は通読向き、教科書は索引と目次で辞書的に引く、図録や統計資料は本文の座標を確かめる用途です。たとえば板谷敏彦さんの『金融の世界史』は新潮選書で金融の通史を一本の線として読めます。統計表や図版が多い本は紙、通読タイプは電子や文庫を選ぶと進めやすくなります。
非欧米圏(中国・イスラームなど)の経済史を学ぶのにおすすめの本はありますか?
橘ナナミ
非欧米圏(中国・イスラームなど)の経済史を学ぶのにおすすめの本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
宇山卓栄さんの『経済で読み解く世界史』は、漢王朝の経済論争、唐・宋の市場統制、イスラームの力の源泉、オスマン帝国のグローバル・リンケージ・システムなど、非欧米圏の論点をまとめて扱っています。貨幣の失敗から入るなら、古代中国の王莽からジンバブエやベネズエラまでをたどる『ハイパーインフレの世界経済史』も有効です。
まとめ
橘ナナミ
今日のお話を聞いて、経済史の本棚って「入門→通史→専門」の階段みたいだなと思いました。
佐藤メバル
階段でもいいんだけど、僕は倍率の違うレンズが入った道具箱だと思っているんだ。一万年を遠くから眺めるクラークやマディソン、産業革命の一点を拡大するジョーンズやコヤマ、バブルやハイパーインフレという一瞬を捉える『バブルの世界史』や『ハイパーインフレの世界経済史』。
橘ナナミ
レンズ……確かに、同じ世界なのに見えるものが全然違いそうです。
佐藤メバル
書店員として経済史の棚を作っていたとき、いつも思っていたのは、この棚は「答えの棚」じゃなくて「距離の棚」だということ。今の自分が知りたいのは遠景なのか、近景なのか。それで一冊目は変わっていいんだよ。
橘ナナミ
じゃあ、最初の一冊を決めきらなくてもいいんですか?
佐藤メバル
いいんだよ。世界経済史の本は、遠くから見れば一本の滑らかな線に見える為替チャートの、倍率を切り替えてくれる道具だ。近づけば無数の取引が刻まれていると分かる。まずは自分が見たい倍率を選んで、その一冊を開いてみてほしい。
