スポーツ経済を学べる本のおすすめ人気ランキング25選【2026年版】
監修

佐藤メバル
@shelfy_mebaru
編集長。あらゆるジャンルの本を年間数百冊読み込む本のプロ。投資・経営から小説・実用書・絵本まで、良書と読者の相性を見抜く。

橘ナナミ
@medias_nanami
編集部の新人インターン。22歳の大学院生で、メディア論を研究中。「それ気になります!」が口癖の天然キャラ。読者の素朴な疑問を代弁する役割で、各メディアの専門家にいろんなジャンルの素朴な質問をぶつけていく。
最終更新: 2026年10月
橘ナナミ
佐藤さん、今回の企画なんですけど……「スポーツ 経済 本」って、書店ではどの棚を見ればいいんでしょう? スポーツコーナーなのか、経済コーナーなのか、正直わからなくて。
佐藤メバル
いい質問だね。そこがこのテーマの面白さで、同時に難しさでもあるんだ。実際、同じテーマの本が二つの棚に分かれて並ぶ。『プロ野球の経済学』のような競技別の本はスポーツの棚に、里麻克彦さんの『スポーツ経済学』のような分析手法の本は経済の棚に、という具合だね。
橘ナナミ
同じ「スポーツ経済」なのに、置き場所が違うんですね。
佐藤メバル
そう。だから最初に知ってほしいのは、この分野には大きく三つの層があるということ。一つ目は経済学の理論としてスポーツを扱う層で、伊多波良雄さんの『スポーツの経済と政策』や里麻さんの『スポーツ経済学』。二つ目は業界の構造とお金の流れを扱う層で、日本政策投資銀行の『スポーツビジネス成長論』が代表格。三つ目が特定の競技を読み解く層で、中島隆信さんの『高校野球の経済学』『大相撲の経済学』、渡辺隆裕さんの『競馬の経済学』などが並ぶ。
橘ナナミ
なるほど……! じゃあ「どれが一番いいか」を決める前に、自分がどの層を必要としているかを見るんですね。
佐藤メバル
まさにそれ。書店員時代、いきなり分厚い理論書を買っていって、数日後に同じ本を抱えて戻ってきたお客さんを何度も見てきたからね。順番さえ間違えなければ、この分野は本当に面白い。
スポーツ経済を学べる本の選び方
目的別に選ぶ:観戦の教養・業界志望・経営実務
橘ナナミ
目的別だと、選び方はどう変わりますか?
佐藤メバル
観戦の教養として読むなら、平田竹男さんの『サクッとわかる ビジネス教養 サッカーの経済学』や小林至さんの『サクッとわかるビジネス教養 野球の経済学』が入りやすい。試合中に浮かんだ「この移籍金はどうなっているの?」という素朴な疑問から入れる。業界志望なら『スポーツビジネス成長論』で資金循環の全体像を先に掴む。経営実務の立場なら、小林さんの『プロ野球 二軍の経済学』のように、二軍球団の新規参入という具体的な変化を追った本のほうが、自組織の判断に引き寄せやすいよ。
レベル別に選ぶ:経済学を学んだことがあるかどうか
橘ナナミ
私、経済学は教養の授業でちょっと触っただけなんですけど、ついていけますか?
佐藤メバル
大丈夫。未習なら入口は二つある。一つは『経済セミナー 2013年 05月号』のように、スポーツの話題からミクロ経済学やマクロ経済学の基本に触れる読み方。もう一つは瀬川久志さんの『スポーツ・エンタテーメントの経済学』で、労働価値説や剰余価値理論といった理論を、実際の事件やチケット転売の事例と重ねながら追う読み方だね。逆に経済学を学んだ経験があるなら、里麻さんの『スポーツ経済学』で分析手法から入るのが近道になる。
内容の型で選ぶ:理論中心か、事例・ケース中心か
橘ナナミ
理論の本と事例の本、どっちから読むべきですか?
佐藤メバル
両方必要で、役割が違うんだ。理論の本は「なぜそうなるのか」を説明する道具をくれる。事例の本は「実際に何が起きたのか」を教えてくれる。たとえばウラジミール・アンドレフの『スポーツの経済学』は、国や自治体のスポーツ予算、くじや広告料、クラブ経営や施設の拡充、スポーツ用品の市場、観客やメディアとの関わりまでを概説する理論寄りの一冊。一方で中島さんの『高校野球の経済学』は、甲子園の外野席が無料なのはなぜか、といった具体的な問いから特殊な構造を解きほぐしていく。理論で枠を作ってから事例で肉付けするのが、いちばん身につく順番だよ。
対象地域で選ぶ:国内のリーグか、海外のリーグか
橘ナナミ
国内の話と海外の話って、分けて考えたほうがいいんでしょうか?
佐藤メバル
できれば両方触れてほしい。国内を知るなら橘木俊詔さんの『プロ野球の経済学』が、年俸問題やキャリア、選手の権利、球団経営をメジャーリーグとの比較で分析している。海外の視点を厚くするなら『スポーツビジネス成長論』で、スペイン、フランス、英国、ドイツの欧州4カ国と米国の歩みを並べて読むといい。日本のスポーツが心身鍛錬や教育の手段として使われてきたぶん、産業としての発展が途上だという指摘は、国内の本だけを読んでいると見落としがちなところだからね。
読みやすさと鮮度で選ぶ:図解か活字か、定番か新版か
橘ナナミ
活字が苦手な人向けの本もあるんですか?
佐藤メバル
あるよ。『サクッとわかる』シリーズは独自のビジュアル解説が中心で、文字だけのテキストが億劫な人に向いている。活字が平気なら、小林さんの『[新装改訂版]スポーツの経済学』のように、選手経験と球団経営経験の両方を持つ著者が、スポーツ庁の発足や大学スポーツ協会の設立といった動きも踏まえて書いた新版を選ぶと、状況の変化まで追える。同じ書名でも版が違えば中身は別物だから、まず版を確認するのが書店員の基本だね。
スポーツ経済を学べる本をひと目で比較
橘ナナミ
えっ、25冊もあるんですか!?まずどう見ればいいんですか?
佐藤メバル
焦らず焦らず(笑)。まずはこの一覧で全体像を眺めてみよう。価格・著者・対象読者をまとめて見られるから、自分に近そうなのが分かるはず
スポーツ経済を学べる本のおすすめ人気ランキング
橘ナナミ
一覧だけだとピンと来ないので...1冊ずつ詳しく教えてください!
佐藤メバル
よし、それじゃあ1位から順に1冊ずつ解説していこう。各冊どんな人に向いてるかも合わせて話すから、自分に合いそうなのを見つけてほしい
![[新装改訂版]スポーツの経済学](https://img.shelf-y.com/items/18909.jpg)
[新装改訂版]スポーツの経済学
小林至 著|PHP研究所
¥3,410(税込)
2015年刊行の同名書の新装改訂版。ラグビーワールドカップ、東京五輪、ワールドマスターズゲームズが同一国で3年連続開催されるという、世界でも例のない好機を背景に、スポーツ庁の発足や日本再興戦略でのスポーツ産業の位置づけ、大学スポーツ協会の設立まで踏まえて「みるスポーツ」=興行の可能性を論じる。著者は東大出身の元プロ野球選手で、球団経営や留学、現地視察の経験も持つ。選手・経営・政策を横断する視点は、理論書にも実務書にもない強みで、スポーツ産業の現在地を掴む一冊。
こんな人におすすめ
スポーツビジネスやスタジアム経営に関わりたい学生・社会人、自治体でスポーツ振興を担当する人、政策と現場の両方を見たい記者や編集者。選手経験と経営経験の両方から語られるため、机上の理論では物足りない読者にも向く。
良い点
- 選手・経営・政策を横断する視点
- 日本の立ち遅れを構造から説明
- 改訂で近年の動向を反映
気になる点
- 価格帯は高めで気軽ではない
- 個別リーグの実務論は少なめ
- 統計は発刊時点の情報
出版社
PHP研究所
発売日
2019年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「スポーツの経済学」って、いま読む意味があるんでしょうか? タイトルだけだと、ちょっと硬そうで身構えちゃいます。
佐藤メバル
それ、いい質問だね。この本は2015年に出た同名書の新装改訂版なんだ。ラグビーワールドカップ、東京五輪、ワールドマスターズゲームズが同じ国で3年続けて開かれるのは世界でも例がない。
スポーツ庁ができ、日本再興戦略でスポーツ産業が重要施策に位置づけられ、大学スポーツ協会も設立された。
「みるスポーツ」が社会に貢献できることを実証する好機だ、という問題意識で書かれているよ。
橘ナナミ
著者の小林至さんって、東大出身のプロ野球選手だった人ですよね。選手と研究者、両方わかる人が書いてるんですね。
佐藤メバル
そう。選手経験、球団経営、留学、現地視察と、視点が多彩なのがこの本の強み。理論だけでなく、現場でどうお金が回っているかを見てきた人の言葉だから、政策の話にも実感がある。
似た入門書は多いけれど、これだけ立場をまたいで語れる人は珍しい。書店員時代、スポーツビジネス志望の学生に真っ先に渡していた一冊なんだ。

スポーツの経済と政策
伊多波良雄 著|晃洋書房
¥3,300(税込)
「経済」と「政策」の両方をタイトルに掲げているのがこの本の特徴。スポーツを市場の側からだけ眺めるのではなく、公共のお金や制度設計の側から捉え直す。晃洋書房という学術系の版元から出た249ページで、市場に任せるだけでは回らない領域を正面から扱う。年俸や興行収益を面白おかしく読むタイプの本ではないため、ビジネス寄りの入門書で全体像をつかんだあとに足すと、視野がぐっと広がる。
こんな人におすすめ
自治体や行政でスポーツ政策に関わる人、スポーツ振興の財源や制度設計を理論から押さえたい大学院生、公共政策とスポーツの接点を探している研究者。ビジネス書では物足りない読者に向く。
良い点
- 経済と政策を一冊で扱う
- 学術系の版元で信頼感がある
- 249ページで見通しがよい
気になる点
- 事例の面白さは期待薄
- 図解や読みやすさは控えめ
- 価格は学術書の相場
出版社
晃洋書房
発売日
2011年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは…「スポーツの経済と政策」。タイトルに「政策」が入るだけで、ぐっと硬くなる気がします。私に読めるんでしょうか。
佐藤メバル
そこが逆に貴重なんだ。スポーツは市場に任せておけば回る、という話ではない。公共のお金がどう入り、どんな政策が働いているかを扱うのがこの本の立ち位置。
経済と政策を一冊で往復する構成で、晃洋書房という学術系の版元から出ている。249ページと、薄すぎず厚すぎず、通読を諦めずに済む厚みだね。
橘ナナミ
なるほど。ビジネス書というより、大学の講義に近い感じですか?
佐藤メバル
そう捉えて構わない。年俸や興行収益を面白おかしく読む本ではないから、最初の一冊には向かない。自治体の予算やスポーツ振興を、政策の言葉で考えたい人向けだよ。
だから読む順番としては、入門書で全体像をつかんだあと、この本で公的な側面を足すのがおすすめなんだ。

スポーツ経済学
里麻克彦 著|北海道大学出版会
¥2,640(税込)
スポーツ系の社会科学の授業ではスポーツマネージメントが主流で、経営学・マーケティング・ファイナンス・リスク管理・法務・会計学・経済学と分野が広い。この本は、まず経済学の分析手法を学び、そのうえで具体的事例で理解する順番をとる。マネジメントに必要な経済学とファイナンスを、道具から積み上げられるのが持ち味だ。事例集を先に読むと応用が利きにくいが、こちらは型を先に渡してくれる。
こんな人におすすめ
スポーツビジネスを志望する大学生・大学院生、卒論やレポートでデータを扱う人、マーケティングや経営の前に経済学の型を仕込みたい実務家。事例より先に道具を学びたい読者に向く。
良い点
- 手法から積み上げる構成
- ファイナンスまで射程に入る
- 事例で理解を確認できる
気になる点
- 通読には根気が要る
- 図解中心の本ではない
- 初学者には硬い印象
出版社
北海道大学出版会
発売日
2011年4月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
著者が里麻克彦さんで、北海道大学出版会から出てる「スポーツ経済学」。大学の教科書っぽい佇まいですね。これ、独学でも読めますか?
佐藤メバル
読めるけれど、順番が大事な本だね。スポーツ系の社会科学ではスポーツマネージメントが主流で、経営学・マーケティング・ファイナンス・リスク管理・法務・会計学・経済学と、守備範囲がとても広い。
この本は、まず経済学の分析手法を学んでから、具体的事例で理解する順番をとっている。マネジメントに必要な経済学とファイナンスを、手法から積み上げられるんだ。
橘ナナミ
事例から入る本のほうが多い気がしますけど、逆なんですね。それはなぜですか?
佐藤メバル
事例だけだと、似た場面で応用がきかないからだね。道具を先に渡してくれる本は、卒論やレポートで数字を扱う学生に効く。
スポーツを「論じる」から「分析する」に一歩進めたい人向けの一冊だよ。読むのに少し体力がいるから、ゼミの輪読で使うのもいいと思う。

スポーツの経済学 (文庫クセジュ 715)
ウラジミールアンドレフ 著|白水社
白水社の文庫クセジュで142ページ。オリンピックやサッカーのワールドカップに代表されるように、今日のスポーツは商業化が著しく進んでいる。この本は、スポーツと経済活動の密接な関係を、国や自治体のスポーツ予算、くじや広告料、クラブ経営や施設の拡充、スポーツ用品の市場、観客やメディアとの関わりまで、多様な側面から分析したはじめての概説書とされる。個別の事例に入る前に、欧米の視点で骨格をつかめるのがありがたい。
こんな人におすすめ
スポーツとお金の関係をまず俯瞰したい人、通学・通勤の合間に読める薄い概説書を探している学生、海外の議論を踏まえて日本の論点を整理したい読者。文庫サイズの手軽さが魅力。
良い点
- 142ページで骨格がつかめる
- 予算・くじ・施設まで広い
- 海外視点の概説として効く
気になる点
- 日本の個別事情は薄い
- 図表や事例は多くない
- 発刊から年数が経つ
出版社
白水社
発売日
1991年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
白水社の文庫クセジュ、「スポーツの経済学」! これ、新書サイズなんですね。著者はウラジミール・アンドレフさんで、外国の方が書いた本なんですね。
佐藤メバル
そう、142ページの概説書だよ。オリンピックやワールドカップに代表されるように、今日のスポーツは商業化が著しく進んでいる。
そのスポーツと経済活動の密接な関係を、国や自治体のスポーツ予算、くじや広告料、クラブ経営、施設の拡充、スポーツ用品の市場、観客やメディアとの関わりまで、多様な側面から分析したはじめての概説書なんだね。
橘ナナミ
はじめての、って言葉がつくくらいには、この分野自体が新しいんですか?
佐藤メバル
そういうこと。日本の個別の話に入る前に、欧米の視点で骨格をつかんでおくと、あとがぐっと読みやすくなる。
文庫サイズで持ち歩けるから、通学の合間に読むのもいいね。書店では新書コーナーではなく文庫の棚にあることもあるから、探すときは少し注意してほしい。

スポ-ツイベントの経済学: メガイベントとホ-ムチ-ムが都市を変える (平凡社新書 145)
原田宗彦 著|平凡社
原田宗彦さんの平凡社新書で、サブタイトルは「メガイベントとホームチームが都市を変える」。オリンピックやワールドカップのような一過性の大きな催しと、日常的にその街にあるホームチーム。この二つを並べて、街に何をもたらすかを考える視点が、他の経済学の本とは違うところだ。ハコモノをどう使うかという、多くの自治体が抱える問いに直結する。222ページの新書で読みやすい。
こんな人におすすめ
自治体でスタジアムやアリーナの活用を考えている人、ホームチームを持つ街の活性化に関わる人、スポーツと都市政策を結びつけて考えたい読者。イベント後の使い道に関心がある人に向く。
良い点
- 街の視点でスポーツを語る
- 新書サイズで読み切りやすい
- イベント後の論点が明確
気になる点
- 理論の網羅性は高くない
- 海外事例は限られる
- 出版からの年数が経つ
出版社
平凡社
発売日
2002年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「スポーツイベントの経済学」、サブタイトルが「メガイベントとホームチームが都市を変える」。都市、なんですね。
街の話だとしたら、行政の人が読む本ですか?
佐藤メバル
原田宗彦さんの平凡社新書で、街を軸にしているのがこの本の持ち味なんだ。オリンピックやワールドカップのような一過性のメガイベントと、日常的にそこにいるホームチーム。
この二つが街に何をもたらすかを並べて考える。ハコモノをどう使うかという、日本の多くの自治体が抱える問いに直結する222ページだよ。
橘ナナミ
スタジアムを作って終わり、じゃないってことですね。作ったあとの話が本になるのが意外です。
佐藤メバル
そこが論点なんだ。作る側の話より、作ったあと地域がどう使っていくか。書店員時代、地方の街の担当者にこの本を薦めたら、後日わざわざ感想を伝えに来てくれたのを覚えているよ。
スポーツに詳しくない人ほど、街の視点で読める一冊だね。

スポーツ・エンタテーメントの経済学
瀬川久志 著|NextPublishing Authors Press
¥1,980(税込)
瀬川久志さんが、スポーツとエンタテーメントを一体のものとして経済学で分析した一冊。キーワードは「情動資本主義への道」で、分析ツールとして『資本論』の労働価値説や剰余価値理論に依拠するという、古くて新しい構えをとる。指導者の体罰は許されるか、卓球ビジネスの光と影、チケット転売、日本版NCAA構想、スポーツガバナンスまで、固有名詞を惜しみなく並べて論じていく。硬い学術書に疲れた人の入口としても強い。
こんな人におすすめ
スポーツとビジネスの生々しい接点に関心がある読者、スポーツ界の不祥事やガバナンス問題を経済の言葉で考えたい人、感情がお金を動かす仕組みを覗いてみたい人。
良い点
- 事例が生々しく具体的
- 独自の理論的切り口がある
- ガバナンス論まで届く
気になる点
- 主張が強く好みが分かれる
- 理論の前提にクセがある
- 版元がやや特殊
出版社
NextPublishing Authors Press
発売日
2022年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「スポーツ・エンタテーメントの経済学」…これ、目次がすごいことになってませんか。体罰、日大アメフト事件、パワハラ…経済学の本なんですよね?
佐藤メバル
瀬川久志さんの本で、キーワードは「情動資本主義への道」。スポーツとエンタメを一体として捉え、『資本論』の労働価値説や剰余価値理論という「古くて新しい」分析ツールに依拠して、事例を検討していく。
指導者の体罰は許されるか、卓球ビジネスの光と影、チケット転売、日本版NCAA構想、スポーツガバナンスまで、固有名詞を惜しみなく並べる。
橘ナナミ
経済学の本なのに、事件の記録みたいな面白さがありますね。読み物としてもいけそう。
佐藤メバル
そこが魅力で、同時に危うさでもある。感情を動かす力こそがお金を動かす、という見方で一貫しているからだね。
硬い学術書に食傷気味の人が、スポーツとお金の生々しさから入るには強い一冊だよ。ただ主張の強い本だから、賛否を自分で確かめながら読むのがいいと思う。

スポーツビジネス成長論: 各国の歩みと資金循環構造の分析から日本のスポーツビジネスの成長可能性を考える (DBJ BOOKs)
株式会社日本政策投資銀行 著|ダイヤモンド・ビジネス企画
¥1,760(税込)
編著者は株式会社日本政策投資銀行。投融資一体型の金融サービスで地域活性化に取り組んできた側から、スポーツ業界をどう見るかという視点が核だ。「大谷翔平に三笘薫…スター選手はなぜいつも海外に?」という問いから、資金循環の実態を可視化する世界でも類を見ない分析へ進む。海外の歴史と比較し、日本のスポーツが心身鍛錬や教育の手段として使われてきたことを踏まえ、少ないながら存在する国内13の企業事例も分析する。
こんな人におすすめ
プロスポーツ経営に関心のあるファン、金融や自治体で地域活性化を担当する人、スタジアム運営やメディア、データ企業まで含めて産業を俯瞰したい実務家。資金の流れから課題を捉えたい読者に向く。
良い点
- 資金循環という独自の切り口
- 海外比較と企業事例が豊富
- スタジアムやメディアまで広く見る
気になる点
- 金融の用語がやや多い
- 選手目線の話は少なめ
- 図表の読み込みが必要
出版社
ダイヤモンド・ビジネス企画
発売日
2025年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
これは編著者が「株式会社日本政策投資銀行」! 銀行がスポーツの本を出してるんですか。しかも、スター選手はなぜ海外に、という問いから始まる。
佐藤メバル
そこが肝なんだ。投融資一体型の金融サービスで地域活性化に取り組んできた側から見ると、スポーツ業界はどう見えるのか。
通常「スポーツ産業」というと選手やクラブを思い浮かべるけれど、スタジアムの所有・管理者、メディア、アパレル、食品、データアナリティクスまで含めた一大産業として捉え、資金循環の実態を可視化する。世界でも類を見ない分析だよ。
橘ナナミ
資金循環って、つまりお金がどこで詰まっているかを見るんですね。歴史の話も入るんですか?
佐藤メバル
入る。第1章でスペイン、フランス、英国、ドイツの欧州4カ国と米国の歩みを振り返り、日本ではスポーツが心身鍛錬や教育の手段として用いられたため産業としての発展が途上だと指摘する。
第3章では少ないながら存在する国内13の企業事例を分析し、第4章で資金の割り振りと人材確保、マインドチェンジが必要だと総括する。
プロスポーツ経営に関心があるなら必読の一冊だね。

スポーツ立国論: 日本人だけが知らない「経済、人材、健康」すべてを強くする戦略
安田秀一 著|東洋経済新報社
¥1,490(税込)
安田秀一さんが、スポーツには国を強くする三つの効能があると整理する。巨額を稼ぎ出して地方と国を豊かにする、教育の質を高めて優れた人材を輩出する、人々を健康にして社会保障費を削減する。読売ジャイアンツの集客力がレアル・マドリード以上という比較、約20年で大リーグは5倍、プレミアリーグは9倍に成長したという数字、GAFAの参入まで、「アマチュアスポーツは稼げない」は日本だけの思い込みだと具体例で畳みかける。五つの柱で処方箋も示す。
こんな人におすすめ
スポーツ政策に関心のあるビジネスパーソン、自治体や教育機関でスポーツ振興を考える人、スポーツ産業に事業や投資の可能性を見ている経営者。数字で政策を語りたい読者に向く。
良い点
- 数字と事例が豊富
- 政策提言が具体的
- 推薦陣も豪華
気になる点
- 主張が強めで通読は体力が要る
- 342ページと長い
- 現場の細部より全体像優先
出版社
東洋経済新報社
発売日
2020年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「スポーツ立国論」。推薦にデービッド・アトキンソンさんの名前があります。国を強くする、って大風呂敷な感じがするんですけど、本当なんでしょうか。
佐藤メバル
アトキンソン氏の推薦がつくあたり、政策論として読ませる本なんだ。著者の安田秀一さんは、スポーツには国を強くする三つの効能があると整理する。
巨額を稼ぎ出して地方と国を豊かにする、教育の質を高めて優れた人材を輩出する、人々を健康にして社会保障費を削減する。
「アマチュアスポーツは稼げない」は日本だけの思い込みだと、具体例を次々に挙げていくよ。
橘ナナミ
読売ジャイアンツの集客力がレアル・マドリード以上、とか。数字が刺激的で、思わず本文を確かめたくなります。
佐藤メバル
数字の使い方がうまいんだ。約20年で大リーグは5倍、プレミアリーグは9倍に成長した、アメリカのスポーツ産業は日本の15倍稼ぐ、GAFAもスポーツ専門メディアに参入している、といった比較が並ぶ。
地方を強くするスタジアム改革から、団体改革、学生スポーツ改革、女性スポーツ改革、メディア改革まで五つの柱で処方箋を示す。
342ページと長いけれど、論点が明快だから引っかからずに進むよ。

経済学者が語るスポーツの力
佐々木勝 著|有斐閣
¥2,310(税込)
佐々木勝さんが、スポーツで得られる効果を経済学の言葉で測る一冊。健康の維持・増進だけでなく、非認知スキルや労働生産性の向上、介護費の減少まで射程に入れ、選手の活躍が人々に感動を与えて社会に大きなベネフィットをもたらす力も扱う。為末大さんが推薦を寄せ、毎日新聞やNumber、週刊エコノミストでも書評が取り上げられた。スポーツの価値を数字に翻訳する作業が、この本の白眉だ。
こんな人におすすめ
スポーツ政策や健康づくりに関わる自治体・企業の人、スポーツの社会的効果を根拠つきで語りたい人、経済学の入門を終えて次の一冊を探している学生。趣味の話を公共の議論に変えたい読者に向く。
良い点
- 効果を経済学で整理
- 書評で評価が確認できる
- 244ページで読み切れる
気になる点
- 競技の実践論ではない
- 数値の前提に一定の知識が要る
- 事例の物語性は薄い
出版社
有斐閣
発売日
2021年10月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「経済学者が語るスポーツの力」。これ、スポーツの「強さ」じゃなくて「力」なんですね。為末大さんの推薦もついてる。
佐藤メバル
有斐閣から出た佐々木勝さんの一冊で、出発点がいいんだ。スポーツで得られる効果は健康の維持・増進だけじゃない、というところから始まる。
非認知スキルや労働生産性の向上、介護費の減少まで、経済学の言葉でスポーツの便益を測る。選手の活躍が人々に感動を与え、社会に大きなベネフィットをもたらす力も射程に入れているよ。
橘ナナミ
介護費の減少まで数字で語られるのは、ちょっと意外です。スポーツって、好きな人の趣味の話じゃないんですね。
佐藤メバル
そこがこの本の白眉だね。スポーツを「好きな人の趣味」で終わらせず、社会のコストと効果の話に翻訳してくれる。
毎日新聞やNumber、週刊エコノミストで書評が取り上げられたのも、その射程の広さゆえだと思う。244ページで、経済学の入門を終えた人が次に読むのにちょうどいい分量だよ。

経済セミナー 2013年 05月号 : スポーツで入門! 経済学
日本評論社
日本評論社の「経済セミナー」の特集号。スポーツの話題を取り上げながら、ミクロ経済学、マクロ経済学をはじめ、経済学で学ぶ内容に触れてみようという趣旨の一冊だ。教科書の一章目をスポーツの話題で読むような感覚で、用語のハードルを下げてくれる。気になる記事から拾い読みできる雑誌ならではの身軽さがあり、分厚い専門書に入る前の肩慣らしに向いている。
こんな人におすすめ
経済学に興味はあるけれど教科書で挫折した人、スポーツを切り口に用語を覚えたい高校生・大学生、入門の入口を探している社会人。気軽に手に取れるのが利点。
良い点
- 拾い読みしやすい
- ミクロとマクロに触れられる
- 肩慣らしに最適
気になる点
- 特集号なので在庫は不安定
- 体系的な教科書ではない
- スポーツの実務論は少ない
出版社
日本評論社
発売日
2013年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
えっ、これは本じゃなくて雑誌ですか?「経済セミナー」のスポーツで入門!経済学。しかも2013年の号なんですね。
佐藤メバル
そう、日本評論社の経済セミナーの特集号なんだ。スポーツの話題を取り上げつつ、ミクロ経済学、マクロ経済学をはじめ、経済学で学ぶ内容に触れてみよう、という趣旨。
教科書の一章目を、野球やサッカーの話題で読むような感覚だね。25冊の中では軽めだけれど、捨てがたい一冊だよ。
橘ナナミ
軽め、というのは、逆に入門にはいいってことですか?
佐藤メバル
そう。いきなり分厚い専門書に入ると心が折れるでしょう。雑誌だから気になる記事から拾い読みできるし、ここで経済学の用語に慣れてから学術書に進むルートが現実的だよ。
書店では新刊の棚ではなく雑誌コーナーにあるから、探すときは注意してね。

行動経済学が勝敗を支配する 世界的アスリートも“つい”やってしまう不合理な選択
今泉拓 著|日本実業出版社
今泉拓さんが、スポーツの名シーンから行動経済学の理論を入り口にする。サッカーのワールドカップのPK戦の決め手を「損失回避バイアス」から読み、日本記録が更新されない男子マラソン界に風穴を開けた「概数効果」、2009年のWBC決勝の劇的タイムリーを呼び寄せた「サンクコスト」を扱う。競技場の形状やファンの声援、コートの工夫まで勝敗の変数として見る。スポーツデータの三つの強み——正確性、明示性、長期的な蓄積——を根拠に、初学者でも楽しみながら深く入れる。
こんな人におすすめ
行動経済学に興味があるけれど数式で止まってしまう人、スポーツ観戦が好きで見方が変わった実感がほしい人、記憶に残る名場面を理論で説明したいファン。
良い点
- 名場面から理論に入れる
- データの信頼性を丁寧に説明
- グラフと表で理解しやすい
気になる点
- 競技ごとの深掘りは浅め
- 理論の網羅は限定的
- スポーツ以外の事例は少ない
出版社
日本実業出版社
発売日
2024年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「行動経済学が勝敗を支配する」! 副題が「世界的アスリートも“つい”やってしまう不合理な選択」。これ、PK戦の話から入るんですよね。
佐藤メバル
今泉拓さんの本で、名シーンから理論がすっと入ってくるのが持ち味だね。サッカーのワールドカップのPK戦の決め手を「損失回避バイアス」から読み、日本記録が更新されない男子マラソン界に風穴を開けた「概数効果」、2009年のWBC決勝の劇的タイムリーを呼び寄せた「サンクコスト」を扱う。
競技場の形状やファンの声援まで勝敗の変数として見るんだ。
橘ナナミ
データが信用できる理由も書いてあるんですよね。そこが気になります。
佐藤メバル
よく気づいたね。スポーツデータは、映像が残っていて正しさを確認しやすい、ルールや判定が一般にも公開されている、100年以上のスコアや成績が蓄積されている。
この三つが揃っているから、行動経済学の教材として理想的だと著者は言う。グラフや表が多くて、初学者でも楽しみながら深く入れるよ。

野球と行動経済学: 監督の決断にひそむ心理とデータの攻防
藤堂智久 著
藤堂智久さんが、野球の采配を行動経済学で読み解く一冊。なぜエースを続投させたのか、どうしてバントを選んだのか、打てない選手をなぜ起用し続けたのか。プロスペクト理論、サンクコスト効果、アンカリング、ナッジといった理論を、監督のリアルな意思決定に当てていく。監督の頭の中を読む方向へ観戦の焦点が移り、野球の見方が「選手を見る」から変わる。数字が全てではないが、感情だけでも勝てない、その間の曖昧で確かなリアルを扱う。
こんな人におすすめ
野球ファンで采配にモヤモヤした経験のある人、データ分析や人間の意思決定に関心がある人、「なぜあの決断」を体系的に考えたい読者。
良い点
- 野球に絞った解像度の高さ
- 理論と実例の距離が近い
- 観戦の楽しみが増える
気になる点
- 野球以外の競技は扱わない
- 専門用語がやや多い
- 結論より過程が中心
出版社
詳細情報なし
発売日
2025年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
また行動経済学の本が来ました。「野球と行動経済学 監督の決断にひそむ心理とデータの攻防」。今度は采配ですか。前のと何が違うんですか?
佐藤メバル
いい質問だね。藤堂智久さんのこの本は、狙っている読者層がはっきりしている。野球を観るのが好きな人、数字やデータ分析に興味がある人、人間の心理や意思決定に関心がある人。
なぜエースを続投させたのか、どうしてバントを選んだのか、打てない選手をなぜ起用し続けたのか。監督の頭の中を読む方向に観戦が変わるよ。
橘ナナミ
あちらは複数の競技を横断していましたけど、こちらは野球だけなんですね。それだけ濃くなる、と。
佐藤メバル
そういうこと。プロスペクト理論、サンクコスト効果、アンカリング、ナッジといった理論を、野球の采配に絞って当てていく。
競技を一つに絞った分、ファンとしての解像度が上がる。「なぜあの采配」のモヤモヤを晴らしたい人にちょうどいい一冊だよ。

オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く
トビアス・J・モスコウィッツ 著|ダイヤモンド社
¥3,646(税込)
トビアス・J・モスコウィッツが、スポーツにまつわる通説を行動経済学で次々に検証する440ページの大著。「ディフェンスを制する者が勝負を制す」「ホームアドバンテージ」に根拠はあるのか、から始まり、動くストライクゾーン、勝つチャンスを自ら手放す判断、ホイッスルを飲み込む審判、過大評価されるドラフト1位、真っ赤なウソをつく統計データ、忠実なファンは敵か味方か。スポーツは行動経済学のネタの宝庫だと、この厚さで押してくる。
こんな人におすすめ
通説を疑うのが好きなスポーツファン、統計やデータの読み方に関心がある人、応援している前提を相対化してみたい読者。分厚いので気になる章から開くのが現実的。
良い点
- 扱う問いが痛快で多い
- 統計の見方が鍛えられる
- 英語圏の議論に触れられる
気になる点
- 440ページは手強い
- 翻訳調でやや重い
- 日本向けの話題は少ない
出版社
ダイヤモンド社
発売日
2012年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く」…タイトルからして強い。440ページもあります。これは読むのに覚悟がいりそう。
佐藤メバル
トビアス・J・モスコウィッツの本で、扱う問いが痛快なんだ。「ディフェンスを制する者が勝負を制す」や「ホームアドバンテージ」に根拠はあるのか、から始まって、動くストライクゾーン、勝つチャンスを自ら手放す判断、ホイッスルを飲み込む審判、過大評価されるドラフト1位、真っ赤なウソをつく統計データ、そして忠実なファンは敵か味方か。
スポーツは行動経済学のネタの宝庫だと押してくる。
橘ナナミ
さっきの2冊より、ずっと穿った見方ですよね。ファンは敵か味方か、なんて聞かれると少し不安になります。
佐藤メバル
そこが読みどころで、応援している前提がどれだけ思い込みか、次々に試される。通説を疑うのが好きな人にはたまらない。
ただ厚いから、最初から通読しようとせず、気になる章から開くのが現実的だよ。索引的に使ってもいい。

サクッとわかる ビジネス教養 サッカーの経済学
平田竹男 著|新星出版社
¥1,650(税込)
平田竹男さんによる、サッカーのお金をビジュアルで追う入門書。トップ選手の年俸やチーム経営にまつわる話題、ワールドカップやチャンピオンズリーグで発生するお金など、サッカーにまつわる経済の話を図解中心で解説する。文字中心のテキストが億劫な人でも、図が先に頭に入って言葉がついてくる設計。上辺の理解ではなく、きちんと会話・説明ができるようになりたいという人にぴったりの160ページだ。
こんな人におすすめ
サッカー観戦が好きでクラブ経営や移籍金の仕組みを知りたい人、会議や雑談で使える教養を手早く仕入れたいビジネスパーソン、図解で手軽に学びたい読者。
良い点
- 図解中心で読みやすい
- サッカーのお金が一望できる
- 160ページで短時間で読める
気になる点
- 深い理論には踏み込まない
- 出典や統計の詳細は控えめ
- 簡潔さゆえ物足りなさも
出版社
新星出版社
発売日
2023年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「サクッとわかる ビジネス教養 サッカーの経済学」。今度はサッカーで、しかもビジュアル解説中心ですか。これなら私でも読めそう。
佐藤メバル
平田竹男さんの本で、世界中で親しまれプロリーグも多いサッカーでは多くのお金が動く、というところから入る。
トップ選手の年俸やチーム経営にまつわる話題、ワールドカップやチャンピオンズリーグで発生するお金など、サッカーにまつわるお金の話を図解で追っていく。
160ページで、通勤の行き帰りでも読み切れる軽さだね。
橘ナナミ
「上辺だけの理解ではなく、きちんと会話・説明ができるようになりたい」という人向け、と書いてあります。まさに私です。
佐藤メバル
そういう読者を想定して作られている。文字中心のテキストが億劫な人でも、図が先に頭に入ってから言葉がついてくる。
専門書の前に、こういう一冊で語彙を仕入れておくと、後の学術書が段違いに読みやすくなるよ。

サクッとわかるビジネス教養 野球の経済学
小林至 著|新星出版社
¥1,292(税込)
同じ「サクッとわかる ビジネス教養」シリーズの野球版で、著者は東大出身の元プロ野球選手、小林至さん。子どもをプロ野球選手にするにはいくらかかるのか、選手の年俸はどう決めるのか、球場の使用料はいくらぐらいなのか。ファンが素朴に抱く疑問に答える形で、日本のプロ野球とメジャーリーグのお金の違いを並べていく。親会社との関係が複雑で全貌が見えにくい球団経営も、図で整理してくれる176ページだ。
こんな人におすすめ
プロ野球ファンで球団経営や年俸の仕組みを知りたい人、大リーグとの違いが気になる人、野球の話題で説明できる教養を身につけたいビジネスパーソン。
良い点
- 疑問形式で頭に入る
- 日米の比較が明快
- 図解中心で短時間で読める
気になる点
- 学術的な深さは控えめ
- 統計の詳細は限られる
- 他競技には触れない
出版社
新星出版社
発売日
2022年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
同じシリーズの野球版ですね。「野球の経済学」。著者は小林至さんで…あ、これ、最初に紹介した新装改訂版と同じ方だ。
佐藤メバル
そう、同じ著者なんだ。こちらは図解中心の入門編で、子どもをプロ野球選手にするにはいくらかかるのか、選手の年俸はどう決めるのか、球場の使用料はいくらぐらいなのか。
普段ファンが素朴に抱く疑問に答える形で、日本のプロ野球とメジャーリーグのお金の違いを並べていく。176ページだね。
橘ナナミ
親会社との関係が複雑で全貌が見えにくい、というのはニュースでも聞きます。そこも図でわかるんですか?
佐藤メバル
そこを図で整理してくれるのがありがたい。同じ著者の新装改訂版が「産業と政策」の俯瞰なら、こちらは「身近な疑問」の入口。
両方並べると、同じ人の視点が上から下までつながるのが面白いよ。まずこの一冊で疑問を解いてから、厚いほうに進むのがおすすめだ。

プロ野球の経済学
橘木俊詔 著|東洋経済新報社
¥2,300(税込)
橘木俊詔さんが、日本のプロ野球を労働経済学の観点で捉えた一冊。年俸問題、キャリア問題、選手の権利問題、球団経営について調査・分析し、メジャーリーグとの比較分析も行う。選手を「労働者」として見ると、見慣れたはずのプロ野球がまるで違う顔を見せる。新たな視点のプロ野球解説書でありながら、プロ野球をケーススタディとした経営・ビジネスの指南書にもなる216ページだ。
こんな人におすすめ
働き方や報酬の仕組みに関心があるビジネスパーソン、プロ野球を経済学で読みたい学生、組織と人の評価をテーマに考えたい管理職。
良い点
- 労働経済学の視点が明快
- 日米比較で論点が立つ
- 経営の教材としても使える
気になる点
- 采配や試合の話は少ない
- ファン向けの華やかさはない
- 数値は発刊時点の情報
出版社
東洋経済新報社
発売日
2016年5月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「プロ野球の経済学」、著者は橘木俊詔さん。労働経済学の先生ですよね、名前を聞いたことがあります。野球を労働の視点で見るんですか?
佐藤メバル
そう、そこが柱なんだ。日本のプロ野球を労働経済学の観点で捉え、年俸問題、キャリア問題、選手の権利問題、球団経営を調査・分析し、メジャーリーグとの比較分析も行う。
選手を「労働者」として見ると、見慣れたはずのプロ野球が別の顔に見えてくるよ。
橘ナナミ
経営やビジネスの指南書にもなる、と書いてあります。スポーツと関係ない仕事にも効きますか?
佐藤メバル
効くよ。プロ野球をケーススタディとして、人の評価と報酬、権利、組織の意思決定を考える。216ページで、経済学の言葉に少し慣れた人なら無理なく読める。
ファンの教養としても、仕事の教材としても使える一冊だね。

高校野球の経済学
中島隆信 著|東洋経済新報社
中島隆信さんが、高校野球を「重要無形文化財」、高校球児を「特別天然記念物」と呼ぶところから始まる一冊。男子高校生の10人に1人が野球部、平日昼間に視聴率20%超という超人気コンテンツには強い仕掛けがあるとして、年間の費用、学校数が多い都道府県は甲子園でも強いのか、審判になるには、特待生が問題視されるのはなぜ、高野連の厳しさの理由、外野席が無料な理由まで問う。他のスポーツと違うのには理由があるとして、100年の歴史を経済学的思考法で体系的に説明する。
こんな人におすすめ
夏の甲子園が好きな野球ファン、学校スポーツや教育の制度に関心がある人、地域とスポーツの関係を考えたい自治体関係者。当たり前を問い直したい読者に向く。
良い点
- 身近な題材を制度から読む
- 問いの立て方が刺激的
- 240ページで読み切れる
気になる点
- 高校野球以外の話題は少ない
- 統計は発刊時点の情報
- 感情的な野球論を求める人には不向き
出版社
東洋経済新報社
発売日
2016年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「高校野球の経済学」。まさか高校野球まで経済学で読めるとは。キャッチコピーが過激です、「重要無形文化財」「特別天然記念物」。
佐藤メバル
中島隆信さんの本で、そこから入るのがうまいんだ。男子高校生の10人に1人が野球部、平日昼間に視聴率20%超という超人気コンテンツには強い「仕掛け」がある。
高校生が野球部に入ると年間いくらかかるのか、学校数が多い都道府県は甲子園でも強いのか、審判になるにはどうするのか、なぜ外野席は無料なのか。
他のスポーツと違うのには理由があるという問いが全編を貫く。
橘ナナミ
特待生が問題視される理由とか、高野連が不祥事に厳しい理由まで入るんですね。夏に見ながら読んだら面白そうです。
佐藤メバル
そう、野球伝来からの歴史を辿りながら、大人たちがどう甲子園という舞台装置を演出してきたかを分析する。
100年続いてきた理由を体系的に説明しようというのが著者の目的だね。夏の甲子園をテレビで観ながら横に置いておくと、見え方が変わるよ。

プロ野球 二軍の経済学 - 「育てる」から「稼ぐ」時代へ - (ワニブックス【PLUS】新書)
小林至 著|ワニブックス
¥1,210(税込)
小林至さんが、ビジネスとしてのプロ野球の二軍を、二軍14球団すべての最新事情を交えて解説する。2024年に二軍球団として新規参入したオイシックスとくふうハヤテが2年目を終えて早くも明暗が分かれ始めていること、既存12球団でも二軍戦のイベントが充実し、ヤクルトやロッテなど複数球団で本拠地の移転やリニューアルが動いていること。プロ野球の「二軍」はひとつのコンテンツになりつつあるという見立てを、元選手で経営にも関わった著者が語る。
こんな人におすすめ
プロ野球ファンでも二軍の試合や育成に注目している人、球団経営や地域拠点の動きを追いたい人、育成と興行の両立を考えたいスポーツ関係者。
良い点
- 二軍という切り口が新鮮
- 14球団の最新事情を網羅
- 経営と現場の両方の視点
気になる点
- 一軍の話は少なめ
- 情報が動く分野で更新が早い
- 選手の技術論ではない
出版社
ワニブックス
発売日
2026年6月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
また小林至さんだ。「プロ野球 二軍の経済学」。二軍って、経済学になるんですか? 育成の場っていうイメージしかないんですけど。
佐藤メバル
なるんだよ、これが。2024年から二軍球団として新規参入したオイシックスとくふうハヤテが、2年目を終えて早くも明暗が分かれ始めている。
既存の12球団でも二軍戦のイベントが充実し、ヤクルトやロッテなど複数球団で本拠地の移転やリニューアルが動いている。
プロ野球の「二軍」はひとつのコンテンツになりつつあるというのが著者の見立てだね。
橘ナナミ
育成の場だと思っていました。「稼ぐ」という言葉がサブタイトルに入っているのが新鮮です。
佐藤メバル
「育てる」から「稼ぐ」へ、という転換を、二軍14球団すべての最新事情を交えて解説していく。東大出身の元プロ野球選手で、ソフトバンクホークスの経営にも携わった人だからこそ書ける現場感がある。
同じ著者の新装改訂版や野球の入門編を読んだ人が、次に手を伸ばすと面白いよ。

大相撲の経済学
中島隆信 著|東洋経済新報社
¥2,816(税込)
中島隆信さんが、大相撲の制度を経済学的視点から解き、その制度が揺らいできている点を指摘する一冊。不足する年寄株、転職に悩む力士。日本経済が抱える問題の縮図がそこにあるという見立てが、この本の核だ。美談や情緒ではなく、ルールとインセンティブから土俵の仕組みを説明する。204ページと短いながら、相撲ファンが普段モヤッとしていることを言葉にしてくれる。
こんな人におすすめ
大相撲ファンで制度や運営に関心がある人、伝統産業や組織の持続可能性を考えたいビジネスパーソン、労働と報酬の仕組みを別の題材で読みたい読者。
良い点
- 制度を経済学で解く視点
- 短く読み切りやすい
- 時事問題との接続がよい
気になる点
- 取組内容の分析は少ない
- 204ページで物足りなさも
- 統計は発刊時点
出版社
東洋経済新報社
発売日
2003年9月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「大相撲の経済学」。年寄株が足りない、転職に悩む力士……。相撲の話なのに、なんだか日本社会の話みたいに聞こえます。
佐藤メバル
まさにそこなんだ。著者の中島隆信さんが、大相撲の制度を経済学的視点から解き、その制度が揺らいできている点を指摘する。
不足する年寄株、転職に悩む力士。日本経済が抱える問題の縮図がそこにある、と。制度を設計する側の論理で読むと、土俵の上の熱戦がまた違って見えるよ。
橘ナナミ
高校野球の本と同じ著者ですよね。この人は、身近なスポーツを制度から読むのが得意なんでしょうか。
佐藤メバル
そこが持ち味だね。感情や美談に寄らず、ルールとインセンティブから説明する。204ページと短いけれど、相撲ファンが普段モヤッとしていることを、言葉にしてくれる本だよ。

経済学で読み解く大相撲300年史 本所、そして両国の磁場
山村英司 著|日本評論社
¥2,640(税込)
山村英司さんが、江戸時代に村の力自慢が集った勧進相撲が、いまや世界の若者が競うプロスポーツになるまでの必然を、経済学とデータで解き明かす。第一部では力士はどこから来たのか、グローバル化は高度経済成長期から始まっていたのか、地縁ネットワークや人気の数値化までを扱い、相撲を労働移動の歴史として読む。第二部は国際ネットワークの形成、怪我の増加、外国出身力士と部屋の関係、昇進の仕組み、「品格」要件の合理性まで踏み込む。
こんな人におすすめ
大相撲の歴史や外国出身力士の増加に関心がある人、労働移動やグローバル化を具体的な題材で学びたい学生、データで歴史を読み直したい読者。コラムも楽しめる。
良い点
- 300年をデータで追う構成
- 労働経済の題材として出色
- コラムが豊富で息抜きになる
気になる点
- 288ページで読み応えが要る
- 相撲史の前提知識があると有利
- 関心が薄いと数字が重い
出版社
日本評論社
発売日
2025年1月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
288ページの「経済学で読み解く大相撲300年史」。江戸時代の勧進相撲から始まるんですね。同じ相撲でも、こちらは歴史ですか。
佐藤メバル
山村英司さんの本で、村の力自慢が集った勧進相撲が、いまや世界の若者が競うプロスポーツになるまでの歴史の必然を、経済学とデータで解き明かしていく。
第一部は力士はどこから来たのか、グローバル化は高度経済成長期から始まっていたのか、職探しと地縁ネットワーク、人気の数値化まで。
相撲を労働移動の歴史として読むのが第一部だね。
橘ナナミ
第二部は外国出身力士の話ですよね。社会主義の崩壊と相撲界のグローバル化、という見出しが気になります。
佐藤メバル
そこが読みどころ。傍流親方が構築した国際労働ネットワーク、体が資本と言うけれどという怪我の話、外国出身力士と部屋のパフォーマンス、昇進の仕組み、そして「品格」要件の合理性まで踏み込む。
さっきの制度論と読み比べると、同じ土俵でも角度がまったく違って面白いよ。

競馬の経済学
渡辺隆裕 著|カンゼン
渡辺隆裕さんが、イラストと図解で競馬のお金の流れをまるごと見せる一冊。競馬場の経済、牧場の経済、ファン・馬主の経済という三部立てで、主催者、騎手、調教師、馬主、生産者、ファンと多くの人で回る巨大エンタメ産業の内側を順に覗く。3兆円を超える収益、月の預託料、調教師や騎手の年収、種牡馬のシンジケート、一口馬主でプラス収支は10%余りといった数字が次々に出てくる。
こんな人におすすめ
競馬を楽しむ人でお金の流れを知りたい人、ギャンブルの仕組みを経済の目で見たい人、馬券の買い方を見直したい読者。イラスト中心で読みやすい。
良い点
- 図解でお金の流れがつかめる
- 牧場や生産の側まで網羅
- 控除率など実用的な知識も
気になる点
- 電子版が前提の作りで図が小さい
- 競馬に興味がないと動機づけが薄い
- データは発刊時点
出版社
カンゼン
発売日
2023年12月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「競馬の経済学」。これは…3兆円を超える収益、月の預託料が70万円以上。数字が次々に出てきますね。競馬ってそんなに大きいんですか?
佐藤メバル
渡辺隆裕さんの本で、イラストと図解で競馬のお金の流れがまるっとわかる構成なんだ。競馬場の経済、牧場の経済、ファン・馬主の経済という三部立てで、主催者、騎手、調教師、馬主、生産者、ファンと、たくさんの人で回っている巨大エンタメ産業の内側を順に覗いていく。
一口馬主でプラス収支は10%余りなんて話まで出てくるよ。
橘ナナミ
馬券の控除率や確定申告の話まで。読んでいたら、ちょっと冷静になれそうです。
佐藤メバル
冷静になるのがこの本の効能のひとつだね。売上の85%がネット投票、3連複と3連単で売上の半分を占める、的中率より回収率、といった話は、遊び方そのものを変える。
競馬場に行く前に読むと、レースの見方が確実に変わるよ。

ゴルフの経済学 (生活人新書 117)
デューク石川 著|NHK出版
NHK出版の生活人新書で219ページ、著者はデューク石川さん。ゴルフは趣味や接待の世界に見えながら、クラブ、コース、会員権、用品、ツアーと、お金の動きはとても大きい。ゴルフという遊びを経済の言葉で捉え直すのがこの本の位置づけで、プレー経験がなくても、業界の慣習がどうお金と結びついてきたかを追うだけで面白い。新書サイズで、他の経済学の本より気軽に手に取れる。
こんな人におすすめ
ゴルフに関わる仕事をしている人、接待や趣味でコースに足を運ぶ人、業界の慣習とお金の関係を知りたい読者。ゴルフ未経験でも読み物として楽しめる。
良い点
- 新書で手に取りやすい
- 業界の慣習を経済で説明
- 未経験でも読める
気になる点
- 内容の詳細は発刊時点
- 統計の更新はされていない
- 競技の技術論ではない
出版社
NHK出版
発売日
2004年8月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ゴルフの経済学」、NHK出版の生活人新書で、著者はデューク石川さん。この名前、ペンネームみたいで気になります。
ゴルフは周りにやる人がいなくて、未知の世界なんです。
佐藤メバル
生活人新書は暮らしに引き寄せたテーマを扱うレーベルで、219ページの新書なんだ。ゴルフは一見、趣味と接待の世界に見えるけれど、クラブ、コース、会員権、用品、ツアーと、お金の動きはとても大きい。
ゴルフという遊びを経済の言葉で捉え直すのがこの本の位置づけだね。
橘ナナミ
プレーしたことがないんですけど、それでも読めますか? 知らない世界だからこそ、逆に面白いかもしれない。
佐藤メバル
むしろ知らない人ほど、産業としての大きさに驚くはず。プレー経験がなくても読めるし、業界の慣習がどうお金と結びついてきたかを追うだけでも面白い。
続けて読むなら、次に紹介する文化経済学のほうが、もっと視点が斜めになるよ。

ゴルフの文化経済学 (文化経済学ライブラリー 10)
片山健二 著|芙蓉書房出版
¥1,870(税込)
片山健二さんによる、文化経済学ライブラリーの一冊。文化産業としての市場分析と、ゴルフによる町おこし、文化振興の将来像を提言する。冒頭に置かれた「文化を忘れたゴルフ市場経済の発展は礼節を失い衰退する」という言葉が象徴的で、儲けの論理だけでは続かないという問題提起が全編を貫く。132ページとコンパクトで、個別の損得ではなく、文化としてのスポーツをどう支えるかを考えさせられる。
こんな人におすすめ
地域おこしや文化振興に関わる自治体・NPOの人、スポーツと文化の関係を考えたい研究者、利益以外の価値を言語化したい読者。
良い点
- 文化経済学という独自の視点
- 132ページで短時間で読める
- 町おこしの論点が明確
気になる点
- ゴルフの実務情報は少ない
- シリーズ前提の内容
- 図表は多くない
出版社
芙蓉書房出版
発売日
2000年11月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
「ゴルフの文化経済学」! 経済学に「文化」がつくと、何が変わるんでしょう。同じシリーズの本なんですか?
佐藤メバル
片山健二さんの本で、文化産業としての市場分析と、ゴルフによる町おこし、文化振興の将来像を提言している。
冒頭に「文化を忘れたゴルフ市場経済の発展は礼節を失い衰退する」という言葉が置かれているのが象徴的で、儲けの論理だけでは続かないという問題提起が全編を貫く。132ページのコンパクトな一冊だよ。
橘ナナミ
利益を追うだけではダメ、という話なんですね。経済学の本なのに、ちょっと倫理の香りがする。
佐藤メバル
そこが文化経済学の面白さだね。経済を「お金の計算」ではなく「文化を支える仕組み」として見る目が養われる。
ゴルフに関心がなくても、地域おこしを考えている人には勧めたい。同じシリーズにスポーツ全体を扱った巻があるから、そちらと並べると視点の違いがよくわかるよ。

スポ-ツの文化経済学 (文化経済学ライブラリー 2)
大鋸順 著|芙蓉書房出版
芙蓉書房出版の文化経済学ライブラリーの一冊で、著者は大鋸順さん、118ページ。個別の競技を扱う経済学が並ぶ中で、スポーツそのものを文化として捉え、その市場や支えられ方を考える立ち位置が独特だ。文化としてのスポーツがどう成り立つかという問いを立てるので、興行収入や放映権の話とは別の土俵で考えたい人に向く。同じシリーズのゴルフ編と並べると、視点の違いがはっきり見える。
こんな人におすすめ
スポーツを文化政策の側から考えたい人、市民スポーツや文化振興に関わる自治体関係者、お金以外の物差しでスポーツを語りたい読者。
良い点
- 競技横断でスポーツを扱う
- 118ページで読みやすい
- シリーズで比較できる
気になる点
- 具体事例は限られる
- 実務の指針にはなりにくい
- 発刊からの年数が経つ
出版社
芙蓉書房出版
発売日
1999年3月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
そのシリーズの「スポーツの文化経済学」ですね。著者は大鋸順さん、118ページと一番薄い。競技の損得ではなくて、文化としてのスポーツがどう成り立つか、ということですか?
佐藤メバル
そういうこと。個別の競技を扱う経済学が並ぶ中で、これはスポーツそのものを文化として捉え、その市場や支えられ方を考える。
文化経済学ライブラリーの一冊として、ゴルフ編と対になる形で読むと、視点の違いがはっきり見えるよ。
橘ナナミ
興行収入や放映権の話とは、まったく別の土俵なんですね。薄いけど、立ち位置がはっきりしてる。
佐藤メバル
そう。稼ぐスポーツの話に疲れたときに、支える側の論理に戻してくれる本だね。ゴルフ編を先に読んでからこちらに来ると、同じシリーズの設計意図がつかみやすい。
市民スポーツに関わる人にこそ手に取ってほしい一冊だよ。

生涯スポーツの社会経済学
杏林書院
杏林書院から出ている256ページの一冊で、競技としての頂点を目指す話ではなく、人が生涯にわたって体を動かすことを、社会と経済の側から見る。誰が、どう支え、いくらかかるのかという問いを立てる構成で、医療や健康の版元から出ていることからも、健康政策と地続きのテーマだとわかる。プロスポーツのお金の話が続いたあとに置くと、視点がふっと生活に戻ってくる。
こんな人におすすめ
スポーツ振興や健康づくりを担当する自治体・企業の人、生涯スポーツの財源や担い手を考えたい研究者、支える側の視点を持ちたい指導者。
良い点
- 生涯スポーツという視点
- 健康政策とつながる
- 256ページで体系的
気になる点
- 派手な話題は少ない
- 図解や読み物性は控えめ
- 入手時は在庫の確認を
出版社
杏林書院
発売日
2003年7月
ページ数
詳細情報なし
橘ナナミ
最後は「生涯スポーツの社会経済学」、杏林書院から。生涯スポーツ、つまり一生続けるスポーツのことですよね。誰がどう支えるか、みたいな話ですか?
佐藤メバル
そう。競技としての頂点を目指す話ではなく、人が生涯にわたって体を動かすことを、社会と経済の側から見る本なんだ。
誰が、どう支え、いくらかかるのかという問いを立てている。杏林書院という医療・健康系の版元から出ているのも、健康政策と地続きだという表れだね。
橘ナナミ
ここまで読むと、プロスポーツのお金の話ばかりだったので、視点がふっと生活に戻ってくる感じがします。
佐藤メバル
そこが25冊を並べる意味でもある。稼ぐスポーツの話と、みんなが動き続けるための話は、同じ経済の裏表だよ。
スポーツ振興や健康づくりに関わる人は、最後にこの一冊を置いておくと視野が広がるね。
お金の流れから読む:スポーツ産業の全体像をつかむ
橘ナナミ
さっき「資金循環」という言葉が出ましたけど、それってどういう意味ですか?
佐藤メバル
スポーツ産業に入ってくるお金が、どこから来てどこへ流れ、どこで滞留しているか、という見取り図のこと。『スポーツビジネス成長論』は、選手やクラブだけではなく、スタジアム・アリーナの所有や管理運営者、興行を報道してファンに届けるメディア、アパレル企業や食品企業、データアナリティクス企業までを含む一大産業としてスポーツを捉える。そのうえで、日本のスポーツ産業は資金循環が目詰まりしている可能性があると指摘し、世界でも類を見ない資金循環フローの可視化と、少ないながら存在する国内の企業事例の分析を通して成長の仮説を組み立てていく。
橘ナナミ
お金の流れを見るだけで、なぜスター選手が海外に行くのかまで見えてくるんですね。
佐藤メバル
そういうこと。安田秀一さんの『スポーツ立国論』も同じ方向で、約20年で大リーグは5倍、プレミアリーグは9倍に成長したという比較や、アメリカのスポーツ産業は日本の15倍稼ぐという数字を並べながら、地方都市を強くするスタジアム改革、税金頼みから脱却するスポーツ団体改革、教育の質を高める学生スポーツ改革、女性スポーツ改革、メディア改革という5つの柱を提示する。数字を先に置いてから改革論を読むと、腹に落ちやすいよ。
経済効果・政策評価・大学スポーツまで視野を広げる
橘ナナミ
経済効果や政策を扱った本はありますか?
佐藤メバル
あるよ。原田宗彦さんの『スポーツイベントの経済学』は、メガイベントとホームチームが都市をどう変えるかを正面から扱っている。伊多波さんの『スポーツの経済と政策』はその名のとおり政策の側から迫る本だね。それと見落とされがちなのが、佐々木勝さんの『経済学者が語るスポーツの力』。健康の維持・増進だけでなく、非認知スキルや労働生産性の向上、介護費の減少といった幅広い効果を経済学で明らかにしようとする一冊で、為末大さんが推薦していることでも知られている。
橘ナナミ
大学スポーツやアマチュアの話はどこで読めますか?
佐藤メバル
瀬川さんの『スポーツ・エンタテーメントの経済学』が、日本版NCAAの創設検討や全米大学スポーツ協会、アメリカ留学のスポーツ奨学金プログラムまで踏み込んでいる。小林さんの新装改訂版も、大学スポーツ協会の設立に触れているね。あとは文化経済学の系譜も忘れたくない。片山健二さんの『ゴルフの文化経済学』は文化産業としての市場分析と町おこしを論じ、大鋸順さんの『スポーツの文化経済学』や『生涯スポーツの社会経済学』は、勝ち負けとは違う軸でスポーツと社会のお金を考えさせてくれる。
行動経済学と原著へ:データに触れるためのブリッジ
橘ナナミ
本を読み終えたあと、データや論文ってどうやって探せばいいんでしょう?
佐藤メバル
まずは行動経済学の本を経由するのがおすすめだよ。今泉拓さんの『行動経済学が勝敗を支配する』は、W杯のPK戦や男子マラソン、WBC決勝といった具体的な場面を、損失回避バイアスや概数効果、サンクコストで読み解く。スポーツデータは正確性・明示性・長期的な蓄積の三点で優れているから、理論を確かめる教材として使いやすい。藤堂智久さんの『野球と行動経済学』は監督の采配を、トビアス・J・モスコウィッツの『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』はホームアドバンテージやドラフト評価まで射程に入れる。ここから統計や一次資料へ渡っていくイメージだね。
橘ナナミ
原著や洋書はハードルが高そうですが……。
佐藤メバル
翻訳から入れば大丈夫。アンドレフの『スポーツの経済学』は文庫クセジュの薄い一冊だし、モスコウィッツも翻訳で読める。原著に当たりたくなったら、まず邦訳で論点を掴んでからで十分だよ。入手方法についても、この分野は新書や文庫が多く、電子で読めるものもある。ただし配信状況は変わるから、買う前にその時点で必ず確認すること。絶版になっているものは図書館や古書を当たり、改訂版が出ていればそちらを選ぶ。版が変わればデータも更新されるので、新旧を見比べるのも立派な勉強になる。
よくある質問
スポーツ経済学の入門書はどれがおすすめですか?
橘ナナミ
スポーツ経済学の入門書はどれがおすすめですかについて教えてください。
佐藤メバル
スポーツの話題から経済学の基本に触れる『経済セミナー 2013年 05月号』や、伊多波良雄さんの『スポーツの経済と政策』は入門の足がかりになります。活字が重いと感じるなら、独自のビジュアル解説が中心の『サクッとわかるビジネス教養 野球の経済学』から入るのも手です。最初の一冊は「読めそうか」で選んでよいと思います。
経済学を学んだことがなくても読める本はありますか?
橘ナナミ
経済学を学んだことがなくても読める本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
あります。瀬川久志さんの『スポーツ・エンタテーメントの経済学』は、労働価値説や剰余価値理論といった理論を、実際の事件やチケット転売といった身近な事例と重ねながら解説しています。原田宗彦さんの『スポーツイベントの経済学』のように、都市とイベントの関係から入る新書も、前提知識なしで読み進めやすいタイプです。
スポーツビジネス本とスポーツ経済学の本は何が違うんですか?
橘ナナミ
スポーツビジネス本とスポーツ経済学の本は何が違うんですかについて教えてください。
佐藤メバル
スポーツビジネスの本は業界の構造や実務的な打ち手を扱い、スポーツ経済学の本は需要と供給や労働市場といった分析の道具を扱います。たとえば『スポーツビジネス成長論』は資金循環の可視化や企業事例の分析を通して成長論を組み立て、里麻克彦さんの『スポーツ経済学』は分析手法を学んだうえで具体的事例を理解する構成です。両者は競合ではなく補完関係にあると考えてください。
スポーツ業界志望の学生が最初に読むべき一冊は?
橘ナナミ
スポーツ業界志望の学生が最初に読むべき一冊はについて教えてください。
佐藤メバル
まずは『スポーツビジネス成長論』で、スタジアムやメディア、アパレルやデータ企業まで含めた産業の裾野と、お金の流れの全体像を掴むのがおすすめです。そのうえで橘木俊詔さんの『プロ野球の経済学』を読むと、年俸やキャリア、選手の権利、球団経営といった個別の論点が立体的に見えてきます。
出版年が古い本でも読む価値はありますか?
橘ナナミ
出版年が古い本でも読む価値はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
あります。ウラジミール・アンドレフの『スポーツの経済学』のように、スポーツと経済活動の関係を国や自治体の予算、くじや広告料、施設の拡充といった多様な側面から分析した概説書は、基礎の部分が古びにくい。一方で統計や制度の記述は更新されるので、同じ書名でも新版や改訂版が出ていれば、まずそちらを確認するのが安全です。
Kindle Unlimitedや電子書籍で読める本はありますか?
橘ナナミ
Kindle Unlimitedや電子書籍で読める本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
電子で読めるものはありますが、読み放題の対象かどうかは時期によって変わります。配信状況は必ず購入前にその時点で確認してください。紙でしか出ていない本、電子はあるけれど閲覧環境に制限がある本もあるので、図書館と併用しながら探すのが現実的です。
図解やマンガでわかりやすく学べる本はありますか?
橘ナナミ
図解やマンガでわかりやすく学べる本はありますかについて教えてください。
佐藤メバル
『サクッとわかる ビジネス教養 サッカーの経済学』と『サクッとわかるビジネス教養 野球の経済学』は、独自のビジュアル解説が中心で、文字だけのテキストが億劫な人に向いています。競馬の経済は『競馬の経済学』がイラストと図解でお金の流れを追う構成です。まず全体像を絵で掴んでから、理論書に進むと挫折しにくくなります。
入門書を読んだ後、次に読むべき本は何ですか?
橘ナナミ
入門書を読んだ後、次に読むべき本は何ですかについて教えてください。
佐藤メバル
理論の土台を作るなら里麻克彦さんの『スポーツ経済学』、政策や経済効果に関心が向いたなら伊多波良雄さんの『スポーツの経済と政策』や佐々木勝さんの『経済学者が語るスポーツの力』へ進むとよいでしょう。競技別の事例で肉付けしたいなら、中島隆信さんの『大相撲の経済学』や山村英司さんの『経済学で読み解く大相撲300年史』のように、歴史とデータの両方を扱う本が次の一段になります。
まとめ
橘ナナミ
今日の話を聞いて、思っていたよりずっと層の厚いテーマだとわかりました。ただ、これだけ冊数があると、正直まだ迷います。
佐藤メバル
迷ったら、目的を一つに絞ることだね。観戦の教養ならビジュアル解説の入門書から。業界志望なら資金循環の全体像を扱う本から。経営実務なら競技別の事例研究から。経済学の土台を作りたいなら理論書から。この四つの入口さえ押さえれば、あとは自然と次の一冊が見えてくる。
橘ナナミ
逆に、いきなり全部読もうとするのは危ないですか?
佐藤メバル
危ないというより、もったいない。理論書と事例本を交互に読むと、頭の中でお金の流れが立体になってくる。数字が苦手でも、行動経済学の本から入れば「人間は合理的じゃない」という前提を先に持てるから、経営の意思決定も腑に落ちやすくなるよ。
橘ナナミ
なるほど……! 選手のプレーだけを追っていたら、見えないものがたくさんあるんですね。
佐藤メバル
そう。経済学のレンズは、競技場のバックネット裏の席みたいなものだ。ピッチャーの球もバッターの打球も同じように見えるけれど、その裏で動いている年俸、放映権、チケット、スポンサーのお金まで視界に入ってくる。一度その席に座ってしまえば、試合の見え方はもう元には戻らない。まずは一冊、自分に合った入口から座ってみることだね。
