この本を一言で言うと
経営学の第一人者・伊丹敬之が、顔つき・仕事・資質・育ち方・失敗・退き際という6つの視点から「よき経営者とはどのような人物か」を論じた異色の経営者論。
この本の概要
本書は、一橋大学名誉教授で経営学の第一人者である伊丹敬之が、「経営論」ではなく「経営者論」を正面から論じた希少な著作である。著書は30冊を超えるが、経営者そのものを主題にした本はこれが初めてという。
「社長ごっこ」「経営ごっこ」はもうやめよう、という刺激的なプロローグから始まる。著者が長年にわたって接してきた多くの経営者の実像から浮かび上がった「よき経営者の姿」を、顔つき・仕事・資質・育ち方・失敗・退き際という6つの視点で論じる。
顔つきの章では、経営者の顔には「素朴さ」「強さ」「透明感」があるとし、その本質を宮大工の棟梁に見出す。仕事の章では、経営者の役割は「他人に仕事をしてもらうこと」であると定義する。資質の章では、完璧な経営者などいないという前提で、必要な資質を「程度の問題」として人間的に扱う。
特に注目されるのが「育ち方」と「退き際」の章だ。よき経営者は若い時期に「ある程度の環境を任される大きな仕事」を経験することで育つ、という主張は人事・組織開発に直接示唆を与える。そして権力への執着から「醜い退き際」を選びがちな経営者への警告は、日本の組織が抱える課題を鋭く突いている。
後継者育成の議論に必ず使う一冊
人事部門で20年以上キャリアを積んできて、一番難しいのは「次の社長を誰にするか」という問題だと思っている。能力はわかる。でも「よき経営者になれるか」はなかなか見えない。
この本は、その見えない部分を言語化しようとした本だ。経営学者が感情論・精神論に逃げずに「顔つき」「退き際」という曖昧な概念に正面から向き合っている。
「育ち方」の章が特に参考になった。よき経営者は若い時期に「一つの領域を任される経験」をしないと育たないという。そして組織はエリートを選ぶことで「誰かを外す」という小さな悪ができなければ、経営者候補を育てられないとも言う。日本企業の平等主義的文化への直球の批判で、人事担当者として耳が痛かった。
「退き際」の章は読んでいて複雑な気持ちになる。年齢を重ねると権力への執着が強くなりがちで、それが会社を弱らせるという事例が出てくる。自分の組織でも思い当たることがあって、少しざわっとした。
現職経営者が読むと耳が痛い内容が多い。でもそれが正直なところだと思う。HOWTOではないが、考えの軸を作るという意味で、経営に関わる人間が一度は読むべき本。
— 大手メーカーの人事部長・長谷川(55歳)
この本で学べること
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本の目次
- 1プロローグ 「社長ごっこ」はもうやめよう
- 2第1章 顔つき
- 3第2章 仕事
- 4第3章 資質
- 5第4章 育ち方
- 6第5章 失敗
- 7第6章 退き際
- 8エピローグ 新しい経営者世代への期待
良い点・気になる点
良い点
- ○「顔つき」「退き際」など、他の経営書では語られない視点からの経営者論
- ○経営学の第一人者が感情論に逃げず、論理的に「よき経営者」を定義しようとした希少な試み
- ○人事・組織開発の実務に直結する「経営者の育て方」の議論が充実
気になる点
- △具体的な解決策・HOWTOは少なく、思考の枠組みを与える書
- △松下幸之助・本田宗一郎など限られた著名人の事例が中心で、多様性に欠ける
みんなの評判・口コミ
★★★★★5.0
示唆に富む異色の経営者論。曰く言い難い「顔つき」「退き際」という項目が極めて論理的に構成されている。公私混同などの「人格的ゆるみ」についての記述は耳が痛いが、必読の書だと思う。
★★★★★4.5
経営者育成のプログラム設計で参考にした。「育ち方」の章—若い時期に一つの領域を任される経験の重要性—は、人事施策の根拠として活用している。平易な文章で読みやすい点も良い。
★★★★★4.0
クライアントの経営者に勧める本。理想論と言う人もいるが、あるべき姿を知ることが向上の出発点。特に退き際の問題は日本の多くの経営者が抱える課題で、対話のきっかけに使える。
★★★★★3.5
HOWTOではなく思想的な本。具体的な経営手法を学ぶよりも、経営者としての姿勢・倫理を考えるきっかけになる。ケース事例は古いものが多いが、議論の枠組みとしては今でも有効。
著者について
こんな人におすすめ
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よくある質問
Q. 経営学者が書いた本ですが、理論的すぎて実務に使えませんか?▼
A. 著者は意図的に理論と実例のバランスを取っており、抽象的になりすぎないよう実際の経営者のエピソードが豊富に盛り込まれています。理想論と批判されることもありますが、あるべき姿を示すことで現実の経営者に気づきを与える内容です。
Q. 後継者問題や事業承継に悩む経営者にも参考になりますか?▼
A. 「退き際」の章は事業承継・バトンタッチに直接示唆を与える内容です。権力への執着が組織を傷つけるという観点から、適切な時期に潔く退くことの重要性が論じられています。
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