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中級者経営

【要約・書評】『合理的なのに愚かな戦略』の評判・おすすめポイント

ルディー和子|||0ページ

4.0
(4件)

この本を一言で言うと

顧客志向・ブランド管理・選択と集中など合理的に見える企業戦略が「逆説的」に失敗するメカニズムを、行動経済学・認知科学で解き明かす。

この本の概要

マーケティング研究者のルディー和子が、優良企業の合理的な戦略がなぜ失敗するのかを行動経済学・脳神経科学・心理学の知見を交えながら分析した異色の経営書。 「顧客志向」「ブランディング」「プライシング」「コミュニケーション」「選択と集中」――これらはどれも経営の教科書が推奨する「正しい戦略」だ。しかし本書はその一つひとつが「逆説的」な形で失敗をもたらしうることを、多数の日本・海外企業の事例とともに示す。 著者が指摘するのは「組織のあり方」と「意思決定者の認知構造」にある問題だ。合理的な戦略が愚かな結果に終わる根本原因は、組織内の政治力学や認知バイアスが意思決定を歪めることにある。特に日本企業に特有の意思決定パターンと6つの逆説的な失敗パターンを体系的に整理しており、自社の意思決定の盲点を発見するための参考書として機能する。

「正しいことをやっているのに、なぜうまくいかないのか」の正体

30年近くマーケティングをやってきて、何度か「正しいことをやっているはずなのに、なぜ結果が出ないのか」と感じた場面があった。この本を読んで、その「もどかしさ」の正体が少し見えた気がした。 著者が言う「6つの逆説」は、どれも「あ、これうちでも起きてる」という話ばかりだった。特に「顧客志向の罠」――顧客の声に忠実に応えすぎることで、むしろ顧客が本当に求めているものを見失うという逆説は、マーケットリサーチへの過度な依存に警鐘を鳴らしている点で刺さった。 行動経済学や脳科学の話が随所に出てくるが、専門的すぎず読みやすい。ルディーさんは翻訳家としても活動していた人なので文章が洗練されている。ただし、「ではどうすれば良いのか」という処方箋がやや薄い。診断はできるが治療法は読者自身が考える必要がある。それが本書の限界でもあり、逆に自分で考えさせる良さでもある。

大手メーカーのマーケティング部長・藤田(50歳)

この本で学べること

合理的な企業戦略が失敗するのは、個々の判断の正しさではなく「組織の意思決定構造」

合理的な企業戦略が失敗するのは、個々の判断の正しさではなく「組織の意思決定構造」と「認知バイアス」に根本原因がある

「顧客志向の罠」

顧客の声に忠実に応えすぎると、市場に存在しないニーズを追いかけるリスクがある

「ブランド管理の逆説」

強いブランドへの過度な依存が、新しい競争への対応を妨げる

「選択と集中の罠」

リソースの過度な集中が組織の柔軟性を失わせ、環境変化への対応力を低下させる

意思決定者の認知構造(メンタルモデル)が戦略の歪みを生み出す主要な要因の一つ

意思決定者の認知構造(メンタルモデル)が戦略の歪みを生み出す主要な要因の一つ

本の目次

  1. 1序章: 合理的な戦略はなぜ失敗するのか
  2. 2第1章: 顧客志向の逆説
  3. 3第2章: プライシングの罠
  4. 4第3章: ブランドの陥穽
  5. 5第4章: コミュニケーションの誤算
  6. 6第5章: イノベーションのジレンマと戦略の失敗
  7. 7第6章: 選択と集中の罠
  8. 8終章: 愚かな戦略を避けるために

良い点・気になる点

良い点

  • 行動経済学・認知科学という新しいレンズで経営戦略を分析した独自のアプローチ
  • 日本企業に特有の意思決定パターンへの言及があり、国内読者に刺さる内容
  • マーケティングと戦略論を横断する視点が新鮮で知的刺激に富む

気になる点

  • 問題の診断は詳細だが、具体的な対処法・処方箋が相対的に薄い
  • 各章の事例が多岐にわたり、論旨の一貫性がやや散漫に感じる部分もある

みんなの評判・口コミ

4.0

「顧客の声に忠実であることの罠」という逆説は、マーケットリサーチに依存しすぎた自分の反省と重なった。診断書として読む分には非常に鋭い。処方箋が薄いのは惜しい。

4.0

クライアントの意思決定の歪みを説明する際の参考書として使っている。行動経済学と経営戦略を接続した視点は珍しく、差別化された知見として活用できる。

3.5

自社の戦略決定プロセスを振り返る機会になった。「6つの逆説」のうち2〜3つは明らかにうちでも起きていた。ただ具体的な解決策が薄いので、続きを自分で考える必要がある。

4.0

行動経済学的な視点で経営戦略を読み解くというアプローチが新鮮で面白かった。難しすぎず、でも読み応えのある一冊。ビジネスパーソンの教養書として良い。

著者について

こんな人におすすめ

「正しいことをやっているのにうまくいかない」と感じている経営

「正しいことをやっているのにうまくいかない」と感じている経営者・事業責任者

組織の意思決定バイアスを理解し、戦略の精度を上げたいビジネス

組織の意思決定バイアスを理解し、戦略の精度を上げたいビジネスパーソン

行動経済学を経営戦略に接続して学びたい好奇心旺盛な読者

行動経済学を経営戦略に接続して学びたい好奇心旺盛な読者

よくある質問

Q. 「イノベーションのジレンマ」と内容は被りますか?
A. 視点は大きく異なります。クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」は産業構造と技術革新のメカニズムに焦点を当てますが、本書はより組織内部の意思決定プロセスと認知バイアスに着目しています。ともに「なぜ優良企業は失敗するのか」を問いますが、補完的な関係にあります。
Q. マーケティング担当者以外でも読む価値がありますか?
A. あります。著者はマーケティングを出発点としながら、組織論・認知科学・行動経済学を横断する視点で経営戦略の盲点を浮かび上がらせています。経営者・経営企画・事業責任者など、戦略的な意思決定に関わるすべての方に示唆があります。

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